沖縄は野党が全勝するも、全国政治では平和憲法の危機
2014-12-15
沖縄、野党が全勝 「辺野古反対」民意再び 12/15 琉球新報
第47回衆院選は14日に投開票され、自民、公明両党は3分の2(317)を上回って計325議席となり、安倍政権の継続が決まった。
一方、沖縄の4選挙区は、1区で共産前職の赤嶺政賢氏(66)、2区で社民前職の照屋寛徳氏(69)、3区で生活前職の玉城デニー氏(55)、4区で無所属新人の仲里利信氏(77)が当選した。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する野党側が全てを制し、翁長雄志氏が大差で勝利した11月の知事選に続き移設反対の民意が示された。

自民、維新5氏 比例復活
県内選挙区で敗れた自民前職の国場幸之助氏(41)、宮崎政久氏(49)、比嘉奈津美氏(56)、西銘恒三郎氏(60)、維新元職の下地幹郎氏(53)の5人は、比例代表九州ブロック(定数21)でいずれも復活当選した。比例を含めた県選出の当選者は改選前の7人を上回る9人となり、過去最多となった。
県内選挙区の投票率は52・36%で2012年の前回を3・66ポイント下回り、過去最低を更新した。
1区の赤嶺氏は知事選で翁長氏を推した「オール沖縄」カラーを前面に出し、全国で18年ぶりとなる共産の小選挙区議席を得た。

【1区】 赤嶺氏6選
2区の照屋氏は革新地盤の強みを生かし、翁長知事を支持した一部保守層も取り込み、終始安定した選挙戦を展開した。

【2区】 照屋氏5選
3区の玉城氏は知名度の高さに加え、普天間飛行場の辺野古移設に反対する有権者からの支持を受け、序盤からリードした。

【3区】 玉城氏3選
4区の仲里氏は自民出身ながら辺野古移設反対を訴えた。翁長氏らの全面的な支援を得て、無党派層に支持を広げて接戦を制した。

【4区】 仲里氏初当選
前回衆院選で小選挙区の4議席中、3議席を獲得した自民は普天間飛行場の辺野古への移設作業に反発する県民世論が逆風となり、苦しい戦いを強いられた。
比例九州に単独立候補していた自民新人の安里政晃氏(46)、共産新人の伊礼一美氏(67)は及ばなかった。公明前職で党沖縄方面議長の遠山清彦氏(45)は比例で当選した。
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<社説>安倍政権に信任 平和憲法が危機に オール沖縄の民意尊重を 12/15 琉球新報
第47回衆院選は自民党が絶対安定多数を獲得し、大勝した。
自民党は政権公約に「憲法改正を目指す」と明記した。選挙結果を受けて安倍晋三首相は「改憲の必要性を訴えていく」と述べた。
改憲勢力の協力が得られれば、憲法改正の発議に必要な「3分の2」議席を超え、憲法改正の動きが加速する恐れがある。
国民投票などの関門がまだあるとはいえ、国民は危機感を持つ必要がある。
平和憲法に込めた「不戦の誓い」が戦後70年を前に揺らぎ始めているのである。
私たちは今、大きな岐路に立っていることを自覚せねばならない。
政権運営は謙虚に
自民大勝の要因は政権批判の受け皿が無かったことの裏返しともいえる。
安倍政権が信任を受けた形だが、対立軸を打ち出せなかった野党のふがいなさに負うところが大きい。戦後最低の投票率からもそのことがうかがえる。
安倍首相の党内での存在感が増し、長期政権となる公算が大きい。改憲に積極的な他党議員が協力すれば、衆院の「3分の2」を確保する可能性もある。
そうなれば、憲法9条改正が射程に入る。日本が戦争のできる国へとまた一歩近づく危険性が高まることを危惧する。
歴代内閣が堅持した憲法解釈を国会議論も経ずに変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍首相である。
憲法改正まで一気に突き進む可能性がある。
ただ、憲法改正の発議には参院でも「3分の2」以上の賛成が必要で、発議後の国民投票では、有効投票総数の過半数の賛成が改憲の要件となる。
2016年の参院選が大きなヤマ場となる。憲法を改正すべきか否か。国民一人一人が真剣に考えることを求めたい。
共同通信が10、11日に実施した世論調査では憲法改正に反対が45・6%、賛成は36・2%だった。国民が望むことが憲法改正でないことは明らかである。
遅々として進まない福島の復興、持続可能な社会保障制度の確立、人口減少社会への対応、子育て世代への支援、疲弊した地域経済の立て直しなどに安倍首相は全力を挙げるべきだ。
連立政権を組む公明党と合わせて与党の議席が3分の2を上回り、巨大与党が誕生する。
与党は参院で提出法案が否決されても衆院で再可決できる。再可決が乱用されれば、参院の存在意義が問われかねない。
安倍首相はこの2年、強引な政権運営に終始した。巨大与党だからこそ、謙虚かつ丁寧な政権運営を心掛けてもらいたい。
反基地の民意三度
沖縄選挙区では、政府が推し進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する4氏全員が当選した。
移設推進の自民党4氏全員は支持を得られなかった。
県民は「沖縄のことは沖縄が決める」と自己決定権を行使し、政府与党に辺野古移設拒否をあらためて突き付けたことになる。
知事選に続き「オール沖縄」で反新基地の民意が示されたといえる。
政権公約に地元が三度(みたび)反対を明確に打ち出したこと、さらには衆院選沖縄選挙区で自民党公認が全敗したという現実を安倍政権は重く受け止め、移設を断念すべきだ。
地元の民意をこれ以上無視することは民主主義国家として許されない。
選挙区で落選し、比例で復活した自民党の4氏は政府与党と歩調を合わせた辺野古移設の公約が有権者から支持を得られなかった事実を真摯(しんし)に受け止めてほしい。
「普天間の危険性除去」の一方で、辺野古に新たな危険をもたらす移設を沖縄の政治家が推進していいのか。「一日も早い危険性除去」なら普天間飛行場の即時閉鎖しかない。
沖縄の代表として、過重な米軍基地負担を沖縄だけに押し付ける差別政策を今後も認めていいのかを、いま一度考えてもらいたい。
第47回衆院選は14日に投開票され、自民、公明両党は3分の2(317)を上回って計325議席となり、安倍政権の継続が決まった。
一方、沖縄の4選挙区は、1区で共産前職の赤嶺政賢氏(66)、2区で社民前職の照屋寛徳氏(69)、3区で生活前職の玉城デニー氏(55)、4区で無所属新人の仲里利信氏(77)が当選した。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する野党側が全てを制し、翁長雄志氏が大差で勝利した11月の知事選に続き移設反対の民意が示された。

自民、維新5氏 比例復活
県内選挙区で敗れた自民前職の国場幸之助氏(41)、宮崎政久氏(49)、比嘉奈津美氏(56)、西銘恒三郎氏(60)、維新元職の下地幹郎氏(53)の5人は、比例代表九州ブロック(定数21)でいずれも復活当選した。比例を含めた県選出の当選者は改選前の7人を上回る9人となり、過去最多となった。
県内選挙区の投票率は52・36%で2012年の前回を3・66ポイント下回り、過去最低を更新した。
1区の赤嶺氏は知事選で翁長氏を推した「オール沖縄」カラーを前面に出し、全国で18年ぶりとなる共産の小選挙区議席を得た。

【1区】 赤嶺氏6選
2区の照屋氏は革新地盤の強みを生かし、翁長知事を支持した一部保守層も取り込み、終始安定した選挙戦を展開した。

【2区】 照屋氏5選
3区の玉城氏は知名度の高さに加え、普天間飛行場の辺野古移設に反対する有権者からの支持を受け、序盤からリードした。

【3区】 玉城氏3選
4区の仲里氏は自民出身ながら辺野古移設反対を訴えた。翁長氏らの全面的な支援を得て、無党派層に支持を広げて接戦を制した。

【4区】 仲里氏初当選
前回衆院選で小選挙区の4議席中、3議席を獲得した自民は普天間飛行場の辺野古への移設作業に反発する県民世論が逆風となり、苦しい戦いを強いられた。
比例九州に単独立候補していた自民新人の安里政晃氏(46)、共産新人の伊礼一美氏(67)は及ばなかった。公明前職で党沖縄方面議長の遠山清彦氏(45)は比例で当選した。
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<社説>安倍政権に信任 平和憲法が危機に オール沖縄の民意尊重を 12/15 琉球新報
第47回衆院選は自民党が絶対安定多数を獲得し、大勝した。
自民党は政権公約に「憲法改正を目指す」と明記した。選挙結果を受けて安倍晋三首相は「改憲の必要性を訴えていく」と述べた。
改憲勢力の協力が得られれば、憲法改正の発議に必要な「3分の2」議席を超え、憲法改正の動きが加速する恐れがある。
国民投票などの関門がまだあるとはいえ、国民は危機感を持つ必要がある。
平和憲法に込めた「不戦の誓い」が戦後70年を前に揺らぎ始めているのである。
私たちは今、大きな岐路に立っていることを自覚せねばならない。
政権運営は謙虚に
自民大勝の要因は政権批判の受け皿が無かったことの裏返しともいえる。
安倍政権が信任を受けた形だが、対立軸を打ち出せなかった野党のふがいなさに負うところが大きい。戦後最低の投票率からもそのことがうかがえる。
安倍首相の党内での存在感が増し、長期政権となる公算が大きい。改憲に積極的な他党議員が協力すれば、衆院の「3分の2」を確保する可能性もある。
そうなれば、憲法9条改正が射程に入る。日本が戦争のできる国へとまた一歩近づく危険性が高まることを危惧する。
歴代内閣が堅持した憲法解釈を国会議論も経ずに変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍首相である。
憲法改正まで一気に突き進む可能性がある。
ただ、憲法改正の発議には参院でも「3分の2」以上の賛成が必要で、発議後の国民投票では、有効投票総数の過半数の賛成が改憲の要件となる。
2016年の参院選が大きなヤマ場となる。憲法を改正すべきか否か。国民一人一人が真剣に考えることを求めたい。
共同通信が10、11日に実施した世論調査では憲法改正に反対が45・6%、賛成は36・2%だった。国民が望むことが憲法改正でないことは明らかである。
遅々として進まない福島の復興、持続可能な社会保障制度の確立、人口減少社会への対応、子育て世代への支援、疲弊した地域経済の立て直しなどに安倍首相は全力を挙げるべきだ。
連立政権を組む公明党と合わせて与党の議席が3分の2を上回り、巨大与党が誕生する。
与党は参院で提出法案が否決されても衆院で再可決できる。再可決が乱用されれば、参院の存在意義が問われかねない。
安倍首相はこの2年、強引な政権運営に終始した。巨大与党だからこそ、謙虚かつ丁寧な政権運営を心掛けてもらいたい。
反基地の民意三度
沖縄選挙区では、政府が推し進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する4氏全員が当選した。
移設推進の自民党4氏全員は支持を得られなかった。
県民は「沖縄のことは沖縄が決める」と自己決定権を行使し、政府与党に辺野古移設拒否をあらためて突き付けたことになる。
知事選に続き「オール沖縄」で反新基地の民意が示されたといえる。
政権公約に地元が三度(みたび)反対を明確に打ち出したこと、さらには衆院選沖縄選挙区で自民党公認が全敗したという現実を安倍政権は重く受け止め、移設を断念すべきだ。
地元の民意をこれ以上無視することは民主主義国家として許されない。
選挙区で落選し、比例で復活した自民党の4氏は政府与党と歩調を合わせた辺野古移設の公約が有権者から支持を得られなかった事実を真摯(しんし)に受け止めてほしい。
「普天間の危険性除去」の一方で、辺野古に新たな危険をもたらす移設を沖縄の政治家が推進していいのか。「一日も早い危険性除去」なら普天間飛行場の即時閉鎖しかない。
沖縄の代表として、過重な米軍基地負担を沖縄だけに押し付ける差別政策を今後も認めていいのかを、いま一度考えてもらいたい。
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不況と円安地獄、円の実質実効価値は1ドル265円当時に下がっている
2014-12-15
円安:実質実効為替レート、過去30年でも最安値水準 12/5 毎日
円相場は対ドルでは約7年4カ月ぶりの安値だが、通貨の総合的な実力を測る「実質実効為替レート」でみると、円は過去30年で最も安い水準となっている。
実質実効為替レートは主要輸出相手国との為替相場を貿易額に応じて調整(加重平均)し、競争力に影響を与える物価の動きも考慮した指標。
一般の為替レートが円とドルなど2通貨間の交換比率を示すのに対し、複数の通貨に対する円の「総合力」が分かる。
2010年1月を100とし、数値が大きいほど円高、小さいほど円安を示す。
日銀が発表した9月の円の実質実効為替レートは74.82で、1982年11月(74.56)以来の円安水準。
円の総合的価値は対ドル円相場が1ドル=265円台だった当時と同程度ということになる。
10月は75.03と円高方向に戻したが、今月発表される11月のレートは下落している可能性がある。
ただ、テレビや自動車などを日本で生産して輸出していた80年代に比べて、日本企業は海外への生産拠点の移転を進めており、円安のメリットは当時ほどではない。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「円安の追い風があっても輸出の増加は限定的かもしれない。
一方、輸入物価上昇など円安のデメリットは見た目以上に厳しくなっている可能性もある」と指摘する。
ーーーーーーーーーーーーーーー
実質実効為替レートの推移 11/7更新 社会実情データ図録から


(「図録」に説明から)
円の対米ドル・レートだけを見ていても、円が本当に円安か円高かは分からない。
すなわち、ドルに対して円とは別にレートが変動している欧州のユーロや韓国ウォン、中国元などとの貿易取引も多くなっているからである。
そこで様々な国との為替レートを貿易取引のウエイトで総合した為替の指数が作られている。
これを実効為替レートと呼ぶ。
さらに、相手国とのインフレ度の違いが、名目の為替レートでは測れない通貨の実力の違いを生む。
例えば、同じく1ドル=100円で不変であったとしても、日本ではインフレが進んでおらず米国ではインフレによってドルの価値が半分になったとしたら、日本円で半分の米国商品しか買えないのだから円の通貨価値はドルに対して実質半分になったと考えるべきであろう。
実際、日本の通貨価値は長期的に米国やユーロ圏の通貨に比してインフレ度合いが低く推移してきている(図録4730参照)ので、見かけよりも円安が進んでいたのである。
様々な通貨に対してこうした調整を行った後の実効為替レートを実質実効為替レートと呼び、調整前の値を名目実効為替レートと呼ぶ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
※ 対外的なその通貨についての実質価値を示すと言い切って良い。
国際的に1ドル265円当時の水準に「円の価値」が下がった。ということ以外の何者でもない。
国内価値ではない。ただ日本は食用米以外の食料、原材料、エネルギーのほとんどを輸入にたよる産業構成である。
国民の窮乏化によって消費者物価が下降していたのは日本のみで、海外は緩やかな物価上昇(通貨価値下落)が普通なので、円安は為替の名目+相手国の物価上昇が差損となる。
つまり、名目1ドル120円になったから原材料が50%高騰ではない。
例えば概ねの例だが、ドルの場合20年くらいで50%下落=輸入品が20年で50%上昇、ここにさらに50%がかぶさるわけである。
はっきりしていることは、実質価値の下落した円は誰も持ちたくないということ。
相対取引は例えば円建てでの輸入はまったく不可能になり、輸出産業は予想以上に利益を上げることになる。
国際的には日本の賃金も商品もサービスも非常に安く感じられるはずである。
輸入では価格交渉力が減退するのは当然となるし、株式などはさっぱり停滞したままに見えることだろう。
要は円通貨しかない私たちは、世界の貧乏人になっているということ。
円安地獄も窮乏化もこれからさらに本格化するということだ。
円相場は対ドルでは約7年4カ月ぶりの安値だが、通貨の総合的な実力を測る「実質実効為替レート」でみると、円は過去30年で最も安い水準となっている。
実質実効為替レートは主要輸出相手国との為替相場を貿易額に応じて調整(加重平均)し、競争力に影響を与える物価の動きも考慮した指標。
一般の為替レートが円とドルなど2通貨間の交換比率を示すのに対し、複数の通貨に対する円の「総合力」が分かる。
2010年1月を100とし、数値が大きいほど円高、小さいほど円安を示す。
日銀が発表した9月の円の実質実効為替レートは74.82で、1982年11月(74.56)以来の円安水準。
円の総合的価値は対ドル円相場が1ドル=265円台だった当時と同程度ということになる。
10月は75.03と円高方向に戻したが、今月発表される11月のレートは下落している可能性がある。
ただ、テレビや自動車などを日本で生産して輸出していた80年代に比べて、日本企業は海外への生産拠点の移転を進めており、円安のメリットは当時ほどではない。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「円安の追い風があっても輸出の増加は限定的かもしれない。
一方、輸入物価上昇など円安のデメリットは見た目以上に厳しくなっている可能性もある」と指摘する。
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実質実効為替レートの推移 11/7更新 社会実情データ図録から


(「図録」に説明から)
円の対米ドル・レートだけを見ていても、円が本当に円安か円高かは分からない。
すなわち、ドルに対して円とは別にレートが変動している欧州のユーロや韓国ウォン、中国元などとの貿易取引も多くなっているからである。
そこで様々な国との為替レートを貿易取引のウエイトで総合した為替の指数が作られている。
これを実効為替レートと呼ぶ。
さらに、相手国とのインフレ度の違いが、名目の為替レートでは測れない通貨の実力の違いを生む。
例えば、同じく1ドル=100円で不変であったとしても、日本ではインフレが進んでおらず米国ではインフレによってドルの価値が半分になったとしたら、日本円で半分の米国商品しか買えないのだから円の通貨価値はドルに対して実質半分になったと考えるべきであろう。
実際、日本の通貨価値は長期的に米国やユーロ圏の通貨に比してインフレ度合いが低く推移してきている(図録4730参照)ので、見かけよりも円安が進んでいたのである。
様々な通貨に対してこうした調整を行った後の実効為替レートを実質実効為替レートと呼び、調整前の値を名目実効為替レートと呼ぶ。
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※ 対外的なその通貨についての実質価値を示すと言い切って良い。
国際的に1ドル265円当時の水準に「円の価値」が下がった。ということ以外の何者でもない。
国内価値ではない。ただ日本は食用米以外の食料、原材料、エネルギーのほとんどを輸入にたよる産業構成である。
国民の窮乏化によって消費者物価が下降していたのは日本のみで、海外は緩やかな物価上昇(通貨価値下落)が普通なので、円安は為替の名目+相手国の物価上昇が差損となる。
つまり、名目1ドル120円になったから原材料が50%高騰ではない。
例えば概ねの例だが、ドルの場合20年くらいで50%下落=輸入品が20年で50%上昇、ここにさらに50%がかぶさるわけである。
はっきりしていることは、実質価値の下落した円は誰も持ちたくないということ。
相対取引は例えば円建てでの輸入はまったく不可能になり、輸出産業は予想以上に利益を上げることになる。
国際的には日本の賃金も商品もサービスも非常に安く感じられるはずである。
輸入では価格交渉力が減退するのは当然となるし、株式などはさっぱり停滞したままに見えることだろう。
要は円通貨しかない私たちは、世界の貧乏人になっているということ。
円安地獄も窮乏化もこれからさらに本格化するということだ。
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