戦争責任も戦後責任も曖昧にした「昭和天皇実録」なる代物
2014-09-11

沖縄上陸
<社説>昭和天皇実録 二つの責任を明記すべきだ 9/10 琉球新報
沖縄の運命を変えた史実は、十分解明されなかった。
宮内庁は昭和天皇の生涯を記録した「昭和天皇実録」の内容を公表した。
米軍による沖縄の軍事占領を望んだ「天皇メッセージ」を日本の公式記録として記述した。
しかし、沖縄の問題で重要とみられる連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサーとの会見記録や、戦争に至る経緯などを側近に述懐した「拝聴録」は「見つからなかった」との理由で、盛り込まれなかった。
編さんに24年かけたにしては物足りず、昭和史の空白は埋められなかった。
昭和天皇との関連で沖縄は少なくとも3回、切り捨てられている。
最初は沖縄戦だ。
近衛文麿元首相が「国体護持」の立場から1945年2月、早期和平を天皇に進言した。
天皇は「今一度戦果を挙げなければ実現は困難」との見方を示した。
その結果、沖縄戦は避けられなくなり、日本防衛の「捨て石」にされた。
だが、実録から沖縄を見捨てたという認識があったのかどうか分からない。
二つ目は45年7月、天皇の特使として近衛をソ連に送ろうとした和平工作だ。
作成された「和平交渉の要綱」は、日本の領土について「沖縄、小笠原島、樺太を捨て、千島は南半分を保有する程度とする」として、沖縄放棄の方針が示された。
なぜ沖縄を日本から「捨てる」選択をしたのか。この点も実録は明確にしていない。
三つ目が沖縄の軍事占領を希望した「天皇メッセージ」だ。
天皇は47年9月、米側にメッセージを送り「25年から50年、あるいはそれ以上」沖縄を米国に貸し出す方針を示した。
実録は米側報告書を引用するが、天皇が実際に話したのかどうか明確ではない。「天皇メッセージ」から67年。
天皇の意向通り沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中して「軍事植民地」状態が続く。
「象徴天皇」でありながら、なぜ沖縄の命運を左右する外交に深く関与したのか。
実録にその経緯が明らかにされていない。
私たちが知りたいのは少なくとも三つの局面で発せられた昭和天皇の肉声だ。
天皇の発言をぼかし、沖縄訪問を希望していたことを繰り返し記述して「贖罪(しょくざい)意識」を印象付けようとしているように映る。
沖縄に関する限り、昭和天皇には「戦争責任」と「戦後責任」がある。
この点をあいまいにすれば、歴史の検証に耐えられない。
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※ イタリアはレジスタンスによってムッソリーニを処刑し、ドイツは国防軍がヒトラーを暗殺しようとするが失敗し、全土が廃墟となる。
その後も日本のみが世界と戦争を続けて、大空襲、沖縄戦、二個の原爆投下によって、ようやく無条件降伏に至る。
降伏の引き伸ばしは、昭和天皇の「国体護持」と米英の「戦後反共防波堤の必要性」との妥協すり合わせのためであった。
結果として戦争責任はA級戦犯の処刑で「手打ち式」とされ、天皇皇族は一切責任を問われなかった。
天皇皇族が靖国神社に参拝などしないのは、もとより当然なので、参拝できないのである。
そして、敗戦は終戦と言い換えられ、戦争責任はあたかも陸軍幹部の独走であったかのごとくに扱われ、同時に原爆も誰が投下したのかはタブーとなって、両方共にまるで「自然現象」であったかのように言われ、書かれることとなった。
敗戦後69年間にわたってまかり通ってきた虚構は、「第二次世界大戦で日本の天皇は実質的に軍と官僚を指揮しておらず、名目的な君主制だった」という「神話」である。
明治維新から始まる連続する戦争、沖縄処分、台湾併合、朝鮮征服、日清、日露戦争、満州侵攻、中国侵攻はすべて天皇皇族が積極的に推し進めた政策的な行為であることは言うまでもない。
「陸軍の独走」などでできるわけがないのである。
戦争の責任、そして戦後の責任にまったく言及しない「昭和天皇実録」なるものは、宮内庁という組織利害のみによって作られた、本当の「歴史」とは無縁の代物。
虚構の現代史、現代の「日本書紀」、神話でしかない。
編纂に24年もかけたことは、深いこの国の「病」というほかに言葉がない。
敗戦の誤魔化し、戦争責任の誤魔化しについて。
A級戦犯の代わりに罪を問われなかった最高責任者
永続敗戦論からの展望:白井聡
永続敗戦論、白井氏インタビュー
原爆は誰が投下したのか?
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