小沢氏7/1会見:単なる閣議で解釈改憲の無法、法治国家ではない
2014-07-04
閣議決定で集団的自衛権行使を容認するなら、日本は法治国家・民主主義国家ではない 7/1 小沢一郎代表 記者会見 「銅のはしご」氏及び「生活の党」から
先ほど,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされたと聞きましたけれども,安倍政権が今日の閣議決定を根拠として,これから 日本が直接関わりのない世界の国のあるいは地域の紛争に,自衛隊を,軍を派遣するということになるとすればですね,
それは,安倍総理がどのような言葉で,このことを正当化しようと思っても,そのような行動,行為が行なわれるとすれば,
まさに国民の命を守る,救うということではなくして,国民の皆さんの命と日本のこれからの将来を危うくする結果になってしまうだろうと私は思います。
日本国憲法は,日本が直接攻撃を受けた場合すなわち正当防衛にのみ,自衛権の行使を許しておりまして,それ以外の国際紛争に,直接戦闘行為を行なうかどうかは別にして,軍を,自衛隊を派遣するということは,憲法9条で固く禁止しているところであります。
ですから,単なる閣議決定で集団的自衛権の行使という名の下に,海外に自衛隊を派遣する,海外派兵を事実行為として実行するとすれば,それはもはや,もう日本は憲法あって無い社会,国家ということになります。
すなわち,日本は法治国家,民主主義国家ではない,ということになってしまうわけでありまして,
このような考え方,そしてこのような政治の手法は,国民のために,日本の将来のために,絶対許されてはならないということだと思います。
一昨年の総選挙で,国民は安倍政権を,結果として選びました。
その安倍政権は,今言ったように,非常に危険な道を歩み始めております。
これを阻止するのは,国民皆さんの一票一票しか,ありません。
このような,憲法を完全に無視して,安倍内閣の閣議決定のみで自衛隊の海外派兵をやろうというような政権を許してはならないということであるならば,
国民の皆さんはぜひとも,次の機会に,この政権に替わる,本当に平和を愛し,そして国際協調の下で日本の平和と世界の平和を守っていこうという,そういう考え方の政権を作りあげていただきたいと思います。
私共も,こういう,まさに無謀な政権に替わって,言葉通り,本当に国民の命を守り,暮らしを守り,平和を守る,そういう受け皿になるグループを,しっかりと次の総選挙までに作り上げていかなくてはならない。
そう思っております。
国民皆さんの賢明なご判断を,私としてはぜひ,お願いしたいと思います。
以上です。
【 記者質疑 】
NHK ; 今回,与党協議を経ての閣議決定となっているが,公明党の対応についてはどのようにお考えか。
小沢一郎 代表
公明党が,今回の安倍総理の意向に関わるところの閣議決定を容認したということは,たいへん私は驚いております。
他党のことでありますけれども,此間の会合でも連立離脱論も含めて多くの疑義が,全国の幹部の皆さんからも出たと聞いております。
そもそも創価学会は,日蓮上人の立正安国の理念の下に存在する宗教団体ですし,初代の創価学会会長(牧口恒三郎)は権力に阿(おもね)ず,結果として獄中で亡くなる,というように本当に平和の信念を主張し守り続けてきた方だと聞いております。
その原点に戻るということ,あるいは,もう一度考え直すということが大事なことかなあと,そのように思います。
朝日新聞 ; 3点お伺いします。1点目。先ほど冒頭で代表が仰ったが,そもそも安倍政権の「集団的自衛権」を前の衆院選,参院選で争点にしていませんでした。解散して,衆院選に訴えるべきなのかどうか。 2点目。こういうテーマを含めて,時の政権に全権委任をしていいものかどうなのか。 3点目。国会は,そもそも憲法に代わって歯止めになるものかどうなのか。
小沢一郎 代表
総選挙によって負託された政権ですから,その意味においては,自らの政策を実行するということは任されていると,原則的には考えるべきだと思います。
ただ,このように,憲法の理念を無視して,日本の将来を行く末を危うくするような大問題でありますので,それは,解散ということも一つ(の選択肢)ですけれども,やはり憲法問題ですから,憲法9条の改正を発議して国民に問うということが(正当だ)。それが,解散という手段になるかどうかは別にしてですね,少なくとも国会で9条改正の発議をしていくべきだろうと思っております。
3点目はなに?
朝日新聞 ; 3点目は,国会は,そもそも憲法(9条)に代わる(武力行使の)歯止めになるかどうなのかという根本的な質問ですが...
小沢一郎 代表
憲法に代わる歯止め? どういう意味?
朝日新聞 ; 今回,集団的自衛権が解釈改憲によってなされてしまった。(武力行使については)本来であれば国会で審議された上でということがよく言われていると思うんですが。
小沢一郎 代表
もちろん,審議しなくちゃあならないし,何でも国会で審議すべきだし,こんな大事なことは,審議するのは当然ですけれども。
今言ったように,審議するのは,憲法9条の改正を通じて議論すべきだと。
そうだからって,いくら審議したって,意味ないでしょ。最後は多数決だもん。
ただ,この筋道の議論。少なくても,安倍さんがそういう基本的な考え方を持っているならばですね,私は国民に,国会,そして国民に当然問うべきだと思っております。
ただ,安倍内閣は,事実行為としてやっていこうということなんじゃないですか。
憲法9条改正ということを正面から取り上げると,国民の反発が強いと。
だから,「いや,平和を守るために,おじいちゃん,おばあちゃんを守るために,命守るために,やるんですから」というような,言葉の綾=誤魔化しで,閣議決定をしたことを根拠にして,事実行為として,やっていこうということじゃないでしょうか。
政府は,国家権力を持ってますから,決して民主国家では許されない。
こういうやり方は,許されないはずなんですけれども,事実行為として,やっていくということが,あり得ますので。今のこの安倍さんのやり方では(あり得ます)。
ですから,そういうやり方では,それを変えるのは,国民の一票しかない,と。
次の総選挙で,もし,これは国民にとって日本にとってよろしくないということであれば,安倍政権に替わる政権を,国民は選択すべきであろうと思います。
共同通信 ; 閉会中に生活の党として,どのように対応していくのかと,臨時国会では自衛隊法の改正など,個別法の審議になると思うが,そこで生活の党として,どのように対応していくのかを。
小沢一郎 代表
どのようにも,このようにも,ないんだけれども,我々は今言ったように,安倍内閣のやり方は,民主主義のルールをまったく無視したことであり,そしてまた,国民の暮らし,命,日本の将来にとっても非常に危険な政権である,ということを,それぞれが,あらゆる機会に,国民皆さんに説明していくことだろうと思います。
具体的な法案が,秋の臨時国会で仮に出たとすれば,そのときに,それは,国民に向けてですね(発信していく)。
安倍さんに何言ったって,此間のクエスチョン・タイムを見てましたけれども,もうまったく質問に答えずに,単なる自分の宣伝文句を並べ立てておりましたから。
国会の議論ちゅうのは,国民皆さんに聞かせるためにやることですから。
これを通じて,あるいは皆さんのようなメディアを通じて,国民にお話しする,そういう国会の論戦にすべきだろうと思います。
共同通信;(7月)14日,15日と(予算委員会)集中審議が入ったが,そこでも生活の党としての攻め方。どういったことから,問題点を衝いていくかを。
小沢一郎 代表
それは,今言ったのと同じでしょ。
安倍さんはもう,まったく非論理的な,単なる情緒的な,気持ちに訴えるということで言葉を羅列しているでしょ。「おじいさん,おばあさん助けるには,しょうがないんだ」とかね。
15事例も,まったくあり得ないことやら,何やら,色んなことを並べ立てて,いかにも国民の命を守り国の将来を守るかの如きことを言ってますけれども,まったくいい加減な話でして。
議論の手法としては,安倍総理のそういった誤魔化しの言動を明らかにしていけば,いいんじゃないですかね。
NHK ; 命,暮らしを守る受け皿となる○○を作るというお話がありましたが,この集団的自衛権の問題をめぐっては,野党の間でも立ち位置がバラバラで,野党が共闘していけないところがあったりするが,秋の臨時国会でどのように,政権与党に野党が協力して対峙していくのか。
小沢一郎 代表
まあ,与党の中でも,ゴチャゴチャ,ゴチャゴチャ色々意見が違うんですから,野党の中にもニュアンス,スタンスが異なるということは,仕方ないことなんですけれども。
私は,多分,今日の閣議決定を受けて,安倍さんの会見を受けて,国民皆さんから,やはりこれは非常にムチャクチャな政権だと。
将来を,そして,自分たちの命,暮らしを危うくする政権だという意識が,国民の皆さんの間でも強くなるんじゃないかと思います。
そういう中で,各党ニュアンスは多少違いますが,まあ,石原慎太郎さんのところは別にしまして,その他の政党としては,だいたい大枠としては整理がついてくるんじゃないかと,そう思います。
ですから具体的に秋の臨時国会で法律案が出てきたときには,大方,足並みが揃ってくるんじゃないかと思います。
朝日新聞 ; 代表は,解釈改憲による集団的自衛権の容認というものには反対で,よろしいのか。
小沢一郎 代表
(首を傾げつつ)解釈改憲というのは,あり得ない。
といのは(憲法の)明文に,逐条に,書いてなければ,解釈する以外ないんだけれども。
例えば,自然権としての自衛権は,書いてないわね。だけど,これは,どこの国の憲法にも,書いてない。
当然の正当防衛の自衛権はあると見做されているから,問題ないわね。
ただ,日本国憲法では,9条で(日本と)関係のない国際紛争で軍事的手段(の放棄),武力の行使(の放棄)と9条には書いてあるけれども,武力の行使というのは,直接ドンパチするだけじゃないからね。それこそ後方支援か何か一体となったものが,武力行使だからね。
だから,そこはダメよ,と明文に書いてあるんだから,解釈改憲の余地はない。
いわゆる「解釈改憲」と言うより,解釈の余地はない。
だから(憲法)改正する以外ない。
解釈改憲という言葉は,僕はちょっと必ずしもしっくりしてない。
要するに,政権は,事実行為として,そこへ持っていこうということじゃないですか。まあ,そう思います。
その,振り付け,理由付けに,やってるということだな。 いいかな。はい,有り難う。
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※ 小沢氏の言うとおり、既に「解釈」の拡大は限界であり、あとは「違法な解釈」、「違法な法律」、「違法な運用」がぞろぞろ連なって出てくる。
解釈で改憲などという考えからして憲法違反なのである。
従って「解釈改憲」などという言葉自体が詐欺的な誤魔化し言葉である。政治家として婉曲な言葉になっているが、しっくりしないのは当然である。
まさしく恣意的な「無法国家」であり、恣意的な法律と恣意的な運用となるわけであり、世界のなかでも信用されない無法国家の類となるわけだ(例えばエジプトのクーデター政権)。
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ナチスの「焦土戦術」を用いるウクライナ軍
2014-07-04
キエフの政権は大量の軍を投入しても、東部南部のレジスタンス義勇兵を制圧できていない。
正規軍は非武装住民を殺戮したがらないので、ネオナチ「国家親衛隊」と傭兵を使っているようだが、強力なレジスタンス勢力に阻まれている。
制圧作戦の再開後は、非武装の住宅街、公共施設、避難民等への攻撃と破壊が目立っている。
このことで、住民の憎しみはますます強くなり、抵抗は盛んになるだろう。
ポロシェンコにとってもEUにとっても、ウクライナの内戦の泥沼化は破壊的である。
ポロシェンコにとって唯一の展望は停戦し、レジスタンス側と交渉に入ることだ。
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ナチスの『焦土戦術』を用いるウクライナ軍 7/3 ロシアの声
ウクライナ南部・東部の出来事は、所謂「反テロ作戦」再開後、キエフ当局には、現実を見つめ、時の流れにより実証された真実、つまり「民衆に勝利する事は出来ない」という真実を認める能力のない事を、又もやはっきり示すものとなった。
「ウクライナ軍は、一般市民の住むアパートを攻撃しない、女性や子供、高齢者の生命を脅威にさらさない」というポロシェンコ大統領の約束は、案の定、空しいものに終わった。
武器をうまく取り扱えないからか、正確な諜報データが不足しているからか、それとも故意によるものか、今「反テロ作戦」を実施しているウクライナの軍人達は、重砲やロケットランチャー(ロケット弾を発射する多目的強襲兵器)、さらには爆撃機を使って自分達の国の南部・東部地域の市町村にある一般市民が住む家々を攻撃している。
一方ウクライナのマスコミは、何百人もの「親ロシア派分離主義者やテロリスト」や彼らの陣地を殲滅したと伝えている。
しかし、現地で撮影された映像を見ると、犠牲者は相変わらず、「武装したテロリスト」などではなく主として「普通に暮らしている一般市民達」である。
いくつかの村では、一般市民の住む家々が建ち並ぶ通り全体が姿を消した。
一昼夜と少しの間に、工場や学校、病院が次々と破壊された。
犠牲者の数は、百人単位とまではいかないが、それでも何十人にも上っている。
英国の新聞「Daily Mail」の特派員達は「こうした作戦は、ナチスドイツ軍が第2次世界大戦中にソ連領内で用いた『焦土作戦』だ」と報道した。
今のウクライナ軍にとって見れば、ナチスとの比較は「嬉しいもの」かもしれない。
それにもかかわらず、抵抗を続ける人々を抑え込める見通しは立っていない。
所謂「休戦」期間中、キエフ当局は、南部・東部地域に4万5千までの戦闘員を集め、400もの迫撃砲や大砲、戦車150両、何十もの多連装発射ロケット砲システムなどを集結させたにもかかわらずだ。
ウクライナ国防省のデータを基にした専門家らの意見によれば、弾薬は、積極的に使っても最大限10日は十分持つとの事だ。
空軍について言えば、8人ものウクライナの現役パイロットが、義勇兵達が上手く対空防衛手段を用いているとして、飛行を拒否している。
実際この2昼夜だけで、ウクライナ空軍は、少なくとも対地攻撃機2機を失った。
陸軍部隊はどうかというと、補充できるなら誰でもいいというわけで駆り出された刑事犯らを含め、戦いを拒否している。麻薬やアルコールを持ってしても、彼らの士気を高める事は出来ない。
そんなものを食べて人間は生きるわけではないからだ。
一方戦場で負傷しても、治療は自腹を切らなくてはならない。
国家が拠出したか、あるいは住民から集められた軍のための資金は、すっかり盗まれてしまっている。
ロシアが侵略しているとのウクライナのマスコミの作り話を信じ、自主的に南部・東部に向かった人達でさえ、現地に到着した後は、地元の一般市民との戦いが行われているのを目の当たりにし、事実を理解している。
止む事のない砲撃や空爆は、キエフ側の軍人に対する、また国民に敵対する戦争に彼らを送るポロシェンコ大統領に対する住民の憎悪を高めるだけだ。
それゆえ、義勇軍に志願する人々の数は、どんどん増えている。
ウクライナ南部・東部の問題は、交渉を通じてのみ解決が可能である事は、全くもって明らかだ。多分この事は、ポロシェンコ大統領自身も理解しているだろう。
すでに「反テロ作戦」再開後、彼は再停戦の可能性について言及した。
また昨日2日にベルリンで開かれたロシア、ドイツ、フランスそしてウクライナ外相による緊急会合も、危機脱出の道を模索する試みとなった。
ドイツとフランスは、ロシア・ウクライナ国境地帯にあるロシアの検問所(チェックポイント)に、ウクライナの国境警備隊員と欧州安保協力機構(OSCE)の査察官を派遣するというロシアの提案を支持した。
彼らはそこで、国境を通過するのは、ロシアの軍人あるいはテロリストなどではなく、難民達である事を自分達の目で確認し納得するに違いない。
しかし、ラヴロフ外相は「こうした事は停戦がなされて初めて、行う事ができる」と指摘し、キエフ当局に対し休戦を急ぎ決断するよう強く求めている。
なぜなら「反テロ作戦」が続けば続くほど、毎日確実に何十人もの尊い人間の命が失われてゆくからだ。
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ロシア 人命を保護するために民間施設への砲撃を停止するようウクライナ政府に求める 7/3
ロシアは、人命を保護するために、民間施設への砲撃を停止するよう、ウクライナ政府に強く求めている。ロシア外務省が3日、発表した。
ロシアのラヴロフ外相は、モロッコのメズアール外相との会談を総括した記者会見で、欧米は、ベルリンで採択されたウクライナ東部の情勢解決に関する声明を順守するよう、ウクライナを説得しなければならないと強調した。
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ルガンスク人民共和国 キエフ政権が米国製の爆弾を使用しているとの見方を表す 7/3
ウクライナ軍が、ルガンスク郊外で米国製の爆弾を使用した。
独立を宣言したルガンスク人民共和国のイノゴロツキー広報担当責任者が、リア・ノーヴォスチ通信に伝えた。
イノゴロツキー氏によると、ウクライナ軍の攻撃機スホイ25のパイロンが、北大西洋条約機構(NATO)の弾薬用にかえられているのが何度も目撃されているという。
イノゴロツキー氏は、「空爆された建物の鎮火には非常に長い時間がかかった。はじめはその原因がわからなかった」と述べ、だが「現場に専門家が到着したとき、米国製の爆弾が使用されたことがわかった」と語った。
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ウクライナ軍 スラヴャンスクで孤児院を破壊 7/3
ウクライナ軍がスラヴャンスクにある未就学児のための孤児院を破壊した。ロシアの児童権利問題全権 代表のアスタホフ氏が明らかにした。
アスタホフ氏は3日、Instagramに、「(ウクライナ大統領の)ピョートル・ポロシェンコ氏の『攻撃と解放』が続けられている。ウクライナ軍は、スラヴャンスクにある第2番未就学児のための孤児院『トポレク』を破壊した。『英雄』に栄光を?」と書き込んだ。
クラマトルスクにある別の孤児院の職員は6月、孤児たちを避難させることができないと発表し、孤児院の建物がある地域での軍事行動を停止するよう願い出た。
職員たちは、ウクライナ東部の紛争当事者たちに、子どもたちの健康や生命を脅かす戦闘行為を地域で一切行わないよう呼び掛けた。
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噛むこと、口から食べることの大切さ
2014-07-04
口から食べられなければ栄養物を直接胃に入れよう、あるいは血管に入れようとの処置が多いようです。
怪我などの短期間はともかく、術後後遺症や高齢誤嚥などの数か月にもなる「咀嚼の安静」は身体の生体水準を著しく低下させ、栄養失調状態での免疫力低下、感染症併発へと進みます。
近年になって噛むこと、口から食べることが脳を通じて身体の様々な機能に関わっていることが見直されているようです。
食べることが、身体の回復に重大な影響を及ぼすという所見です。
週刊朝日から二つの症例を紹介します。
ページが大きくなるので三つのうち症例1を省略しています。時間のある方はこちらも読まれると興味深いものがあります。
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実例リポート 歯を治したら寝たきりから立ち上がった 認知症も気胸も改善 7/2 週刊朝日
いま歯科医療の現場で、歯の健康が全身の健康と関係していることが明らかになりつつある──。なかでも、かむ力の回復は食べることだけでなく、歯を通して脳に刺激が行き、記憶ややる気の回復にもつながるという。歯を治したり、入れ歯を変えたりすることで、寝たきりや認知症などが改善した事例を取材した。
かむ力を回復させて、寝たきりや車いすの人が歩けるようになる──。そんな治療を成功させている歯科医師がいると聞き、大分県佐伯市で開業する河原英雄歯科医師を訪ねた。
(※ 症例1を省略しています。)
40年前にじん肺(粉塵やアスベストなどを吸い込むと起こる肺の病気)患者に認定された高橋忠さん(仮名・78歳)は、呼吸困難などが悪化し、07年には両肺が重症の気胸になった。
気胸は肺に穴が開いて空気が漏れてしまう状態で、半年間入院して治療を受けたものの、退院後は24時間酸素吸入が必要。さらに歯がボロボロでかめないため、体重は38キロまで落ちていた。
「主治医に『食べられないままだともっと痩せちゃうから、すぐに歯医者に行きなさい』と言われてね」
と高橋さん。河原歯科医師の診察を受けにきたときは、歩くのもやっと。酸素吸入器を手放せないため、10カ月かけて慎重に治療した。
歯の治療が終わり、かめるようになると、妻が栄養のあるものをたくさん食べさせたこともありメキメキと回復。1年6カ月後の定期検診では体重が11キロも増えた。
栄養状態を示す総たんぱくやアルブミンの値も基準値に達したという。
スタスタと歩いて私たちの前に現れた高橋さんは、
「今は肉がおいしくてね。酸素吸入器なしで階段も上れるし、自分で車を運転してカラオケに行けるようになりました」
と笑顔で話してくれた。河原歯科医師が「今の元気な姿からはとても想像ができないでしょう」と、初診当時の記録映像を見せてくれたほどだ。高橋さんは誇らしげに歯を見せながらこう言った。
「ほら、きれいでしょ。昔は歯みがきもいい加減だったけど、今は時間をかけてするようになりました。大事な歯だからね」
なぜ、かめるようになると、からだまで元気になるのだろうか。
「かんでのみ込む『咀嚼』を含めた、『食べる』という一連の動作は、さまざまな器官を使う高度な作業です。近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきました」
と、河原歯科医師は言う。
保険診療でも合う入れ歯を
人間はまず、食べ物を見て、においをかいで、過去の経験に照らし合わせて安全か否か、栄養価が高いかどうかを判断し、口に入れる。
唇や舌は、それが何かを認識しようと働き始め、昔のおいしかった味を思い出す。ここまででも五感をフル活用する作業だ。
さらに食べ物をかむために、頬の筋肉やあごの関節、唾液を分泌する唾液腺などたくさんの器官が働く。
かんだ刺激は歯の根にある歯根膜が感じ取り、三叉神経を通って脳へと伝わっていく。
その結果、脳の血流が活性化し、病気や老化で衰えていた運動機能や感覚、認知機能、そして意欲(やる気)などの回復が期待できるという。
かむために「歯」は不可欠。年を取ってもいい状態で維持できれば理想的だが、加齢とともにむし歯や歯周病で状態が悪くなり歯を失う人も多いのが現実だ。
失った歯を補う方法には、入れ歯やインプラントがあるが、河原歯科医師が扱うのは、入れ歯のみ。しかも完全保険診療で、自費診療はいっさいおこなっていない。
実は河原歯科医師は、30年以上、福岡市の中心部で歯科医院を開業していた。自費診療も積極的におこない、保険外の入れ歯やインプラント、審美歯科のよさもよくわかっている。
「還暦を機に以前からの夢だった地域医療をするため、ここ佐伯市郊外で開業しました。小さなコミュニティーで、高齢になるほど住民同士の支え合いが必要になります。
そんな場所で自費診療を導入したら、住民同士の軋轢(あつれき)を生んでしまう。それならば、保険で患者さんに満足してもらえる入れ歯を作ろうと思いました」(河原歯科医師)
保険であろうとなかろうと、大切なのは患者に合った入れ歯を作ること。入れ歯を咬合器にのせ、薄い咬合紙であたりをチェックしながら少しずつ削っていく様子は「職人」を彷彿とさせる。
さらに患者に入れ歯を装着させて、不具合が見つかると外し、削って調整してはまた口の中に入れて確かめる、という根気のいる作業を繰り返す。
診察室にはりんごやピーナツを常備。実際の食べ物をかんでもらって能力を確かめ、ようやく「かめる入れ歯」が完成する。
「入れ歯のメンテナンスも不可欠。人間は生き物だから、加齢や生活状況とともに口の中の状態も変わっていく。一度入れたら終わりではなく、不具合が生じれば調整が必要です。
歯を失っても、合った入れ歯があればしっかりかんで、おいしく食べられますからね」(同)
海が近いのどかな田園地帯に歯科医院を構えて12年。当初、近所の人からは「歩いて通える歯医者さんができて助かる」と喜ばれたが、周辺の地域では、徒歩で通える歯科医院がなく車の運転ができないため歯科治療を諦める高齢者もいる、と知った。
一人でも多くの人に食べる喜び、生きる喜びを味わってほしいと、車で送迎する取り組みも始めているという。
「世の中にはさまざまな健康法がある。その中でいちばん安くて健康になる方法が口を清潔にしてかむことなんです」(同)
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寝たきりが回復し海外旅行まで! 口から食べることの重要性〈週刊朝日〉 7/2
家族の病気を通して「口から食べることの大切さ」を痛感し、多くの人に伝えようと活動をしている歯科医師がいる。
2000年7月、当時福岡歯科大学病院に勤務していた塚本末廣歯科医師は、神戸市に住む妻の母、呉本秀子さん(当時68歳)が倒れ、市内の病院に救急搬送されたと知らせを受けた。
「急性心筋梗塞および脳梗塞」と診断された秀子さんだが、いったんは回復。しかし9月になると血尿や発熱が続くようになり、だんだん弱っていった。
11月に塚本歯科医師が見舞うとベッドに寝たきりで、熱が続いているせいか目もうつろ。
「さらに病院からは、腎がんの可能性、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染、敗血症を起こしている、といったネガティブな検査結果が次々伝えられていて、これはもう死ぬんじゃないかと感じました」と、塚本歯科医師は振り返る。
歯科医師として何より気になったのは、入院以来ずっと栄養を流し込むIVH(中心静脈栄養)のカテーテル(管)が血管内に留置され、口からは何も食べていなかったことだ。食べられないからIVHを装着しているはずなのに、なぜか薬は口からのんでいる。
「食べさせていないだけで、本当は食べることができるんじゃないか」
そんな疑問が湧き上がった。とはいえ、何カ月も使っていない秀子さんの口の中はパリパリに乾燥し、口腔カンジダ症になっていた。免疫力が落ちたために、常在真菌のカンジダが異常に増殖した状態だ。
しかし、塚本歯科医師は大学病院に障害者歯科を立ち上げた経験から、「口腔ケアをすれば食べられるようになる」と確信した。
そこで12月初旬、秀子さんを福岡市内のリハビリテーション病院へ転院させた。自ら通って秀子さんのケアができると考えたからだ。
転院してから秀子さんの容体は劇的に好転する。
きっかけは、前の病院でずっと入れられていたIVHや尿を出すためのカテーテル、薬剤を投与する動脈内カテーテルをすべて抜いたこと。しつこく続いていた熱がスッと下がったのだ。
「抜いたカテーテルの先端、つまりからだの中に入っている部分にびっしりついていたバイオフィルム(細菌のかたまり)を検査してみたら、どれからもカンジダが検出されました。
感染源のカテーテルを入れっぱなしにしていたら、発熱が続くのは当たり前です」(塚本歯科医師)
熱が下がって楽になった秀子さんは、翌日からペースト食を食べられるようになった。
同時に口の中をきれいにする口腔ケアや、合わなくなっていた部分入れ歯を調整し、かむためのリハビリもスタートした。
ほどなく粗めの刻み食へステップアップ。
「食べる」という喜びを得たことで秀子さんは、リハビリにも積極的に取り組んで、みるみる回復した。
年が明けた1月末には、元気に歩いて退院。
その翌月には、海外旅行に行くまでになった。
その経過を追った画像や写真を見せてもらった。
回復ぶりもさることながら、かめるようになってからは別人のように明るい笑顔ばかりだった。
秀子さんは、その後穏やかに生活し、退院の10年後に別の病気で亡くなったという。
「IVHのように口や腸管を使わずに栄養補給する方法が長引けば、かむ、のみ込むといった口の機能が衰えるだけでなく、全身状態まで悪化させてしまいます。
人間らしく、幸せに生きるためには口から食べることが基本だということを、心に留めておいてほしいと思います」
※週刊朝日 2014年7月11日号より抜粋
怪我などの短期間はともかく、術後後遺症や高齢誤嚥などの数か月にもなる「咀嚼の安静」は身体の生体水準を著しく低下させ、栄養失調状態での免疫力低下、感染症併発へと進みます。
近年になって噛むこと、口から食べることが脳を通じて身体の様々な機能に関わっていることが見直されているようです。
食べることが、身体の回復に重大な影響を及ぼすという所見です。
週刊朝日から二つの症例を紹介します。
ページが大きくなるので三つのうち症例1を省略しています。時間のある方はこちらも読まれると興味深いものがあります。
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実例リポート 歯を治したら寝たきりから立ち上がった 認知症も気胸も改善 7/2 週刊朝日
いま歯科医療の現場で、歯の健康が全身の健康と関係していることが明らかになりつつある──。なかでも、かむ力の回復は食べることだけでなく、歯を通して脳に刺激が行き、記憶ややる気の回復にもつながるという。歯を治したり、入れ歯を変えたりすることで、寝たきりや認知症などが改善した事例を取材した。
かむ力を回復させて、寝たきりや車いすの人が歩けるようになる──。そんな治療を成功させている歯科医師がいると聞き、大分県佐伯市で開業する河原英雄歯科医師を訪ねた。
(※ 症例1を省略しています。)
40年前にじん肺(粉塵やアスベストなどを吸い込むと起こる肺の病気)患者に認定された高橋忠さん(仮名・78歳)は、呼吸困難などが悪化し、07年には両肺が重症の気胸になった。
気胸は肺に穴が開いて空気が漏れてしまう状態で、半年間入院して治療を受けたものの、退院後は24時間酸素吸入が必要。さらに歯がボロボロでかめないため、体重は38キロまで落ちていた。
「主治医に『食べられないままだともっと痩せちゃうから、すぐに歯医者に行きなさい』と言われてね」
と高橋さん。河原歯科医師の診察を受けにきたときは、歩くのもやっと。酸素吸入器を手放せないため、10カ月かけて慎重に治療した。
歯の治療が終わり、かめるようになると、妻が栄養のあるものをたくさん食べさせたこともありメキメキと回復。1年6カ月後の定期検診では体重が11キロも増えた。
栄養状態を示す総たんぱくやアルブミンの値も基準値に達したという。
スタスタと歩いて私たちの前に現れた高橋さんは、
「今は肉がおいしくてね。酸素吸入器なしで階段も上れるし、自分で車を運転してカラオケに行けるようになりました」
と笑顔で話してくれた。河原歯科医師が「今の元気な姿からはとても想像ができないでしょう」と、初診当時の記録映像を見せてくれたほどだ。高橋さんは誇らしげに歯を見せながらこう言った。
「ほら、きれいでしょ。昔は歯みがきもいい加減だったけど、今は時間をかけてするようになりました。大事な歯だからね」
なぜ、かめるようになると、からだまで元気になるのだろうか。
「かんでのみ込む『咀嚼』を含めた、『食べる』という一連の動作は、さまざまな器官を使う高度な作業です。近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきました」
と、河原歯科医師は言う。
保険診療でも合う入れ歯を
人間はまず、食べ物を見て、においをかいで、過去の経験に照らし合わせて安全か否か、栄養価が高いかどうかを判断し、口に入れる。
唇や舌は、それが何かを認識しようと働き始め、昔のおいしかった味を思い出す。ここまででも五感をフル活用する作業だ。
さらに食べ物をかむために、頬の筋肉やあごの関節、唾液を分泌する唾液腺などたくさんの器官が働く。
かんだ刺激は歯の根にある歯根膜が感じ取り、三叉神経を通って脳へと伝わっていく。
その結果、脳の血流が活性化し、病気や老化で衰えていた運動機能や感覚、認知機能、そして意欲(やる気)などの回復が期待できるという。
かむために「歯」は不可欠。年を取ってもいい状態で維持できれば理想的だが、加齢とともにむし歯や歯周病で状態が悪くなり歯を失う人も多いのが現実だ。
失った歯を補う方法には、入れ歯やインプラントがあるが、河原歯科医師が扱うのは、入れ歯のみ。しかも完全保険診療で、自費診療はいっさいおこなっていない。
実は河原歯科医師は、30年以上、福岡市の中心部で歯科医院を開業していた。自費診療も積極的におこない、保険外の入れ歯やインプラント、審美歯科のよさもよくわかっている。
「還暦を機に以前からの夢だった地域医療をするため、ここ佐伯市郊外で開業しました。小さなコミュニティーで、高齢になるほど住民同士の支え合いが必要になります。
そんな場所で自費診療を導入したら、住民同士の軋轢(あつれき)を生んでしまう。それならば、保険で患者さんに満足してもらえる入れ歯を作ろうと思いました」(河原歯科医師)
保険であろうとなかろうと、大切なのは患者に合った入れ歯を作ること。入れ歯を咬合器にのせ、薄い咬合紙であたりをチェックしながら少しずつ削っていく様子は「職人」を彷彿とさせる。
さらに患者に入れ歯を装着させて、不具合が見つかると外し、削って調整してはまた口の中に入れて確かめる、という根気のいる作業を繰り返す。
診察室にはりんごやピーナツを常備。実際の食べ物をかんでもらって能力を確かめ、ようやく「かめる入れ歯」が完成する。
「入れ歯のメンテナンスも不可欠。人間は生き物だから、加齢や生活状況とともに口の中の状態も変わっていく。一度入れたら終わりではなく、不具合が生じれば調整が必要です。
歯を失っても、合った入れ歯があればしっかりかんで、おいしく食べられますからね」(同)
海が近いのどかな田園地帯に歯科医院を構えて12年。当初、近所の人からは「歩いて通える歯医者さんができて助かる」と喜ばれたが、周辺の地域では、徒歩で通える歯科医院がなく車の運転ができないため歯科治療を諦める高齢者もいる、と知った。
一人でも多くの人に食べる喜び、生きる喜びを味わってほしいと、車で送迎する取り組みも始めているという。
「世の中にはさまざまな健康法がある。その中でいちばん安くて健康になる方法が口を清潔にしてかむことなんです」(同)
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寝たきりが回復し海外旅行まで! 口から食べることの重要性〈週刊朝日〉 7/2
家族の病気を通して「口から食べることの大切さ」を痛感し、多くの人に伝えようと活動をしている歯科医師がいる。
2000年7月、当時福岡歯科大学病院に勤務していた塚本末廣歯科医師は、神戸市に住む妻の母、呉本秀子さん(当時68歳)が倒れ、市内の病院に救急搬送されたと知らせを受けた。
「急性心筋梗塞および脳梗塞」と診断された秀子さんだが、いったんは回復。しかし9月になると血尿や発熱が続くようになり、だんだん弱っていった。
11月に塚本歯科医師が見舞うとベッドに寝たきりで、熱が続いているせいか目もうつろ。
「さらに病院からは、腎がんの可能性、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染、敗血症を起こしている、といったネガティブな検査結果が次々伝えられていて、これはもう死ぬんじゃないかと感じました」と、塚本歯科医師は振り返る。
歯科医師として何より気になったのは、入院以来ずっと栄養を流し込むIVH(中心静脈栄養)のカテーテル(管)が血管内に留置され、口からは何も食べていなかったことだ。食べられないからIVHを装着しているはずなのに、なぜか薬は口からのんでいる。
「食べさせていないだけで、本当は食べることができるんじゃないか」
そんな疑問が湧き上がった。とはいえ、何カ月も使っていない秀子さんの口の中はパリパリに乾燥し、口腔カンジダ症になっていた。免疫力が落ちたために、常在真菌のカンジダが異常に増殖した状態だ。
しかし、塚本歯科医師は大学病院に障害者歯科を立ち上げた経験から、「口腔ケアをすれば食べられるようになる」と確信した。
そこで12月初旬、秀子さんを福岡市内のリハビリテーション病院へ転院させた。自ら通って秀子さんのケアができると考えたからだ。
転院してから秀子さんの容体は劇的に好転する。
きっかけは、前の病院でずっと入れられていたIVHや尿を出すためのカテーテル、薬剤を投与する動脈内カテーテルをすべて抜いたこと。しつこく続いていた熱がスッと下がったのだ。
「抜いたカテーテルの先端、つまりからだの中に入っている部分にびっしりついていたバイオフィルム(細菌のかたまり)を検査してみたら、どれからもカンジダが検出されました。
感染源のカテーテルを入れっぱなしにしていたら、発熱が続くのは当たり前です」(塚本歯科医師)
熱が下がって楽になった秀子さんは、翌日からペースト食を食べられるようになった。
同時に口の中をきれいにする口腔ケアや、合わなくなっていた部分入れ歯を調整し、かむためのリハビリもスタートした。
ほどなく粗めの刻み食へステップアップ。
「食べる」という喜びを得たことで秀子さんは、リハビリにも積極的に取り組んで、みるみる回復した。
年が明けた1月末には、元気に歩いて退院。
その翌月には、海外旅行に行くまでになった。
その経過を追った画像や写真を見せてもらった。
回復ぶりもさることながら、かめるようになってからは別人のように明るい笑顔ばかりだった。
秀子さんは、その後穏やかに生活し、退院の10年後に別の病気で亡くなったという。
「IVHのように口や腸管を使わずに栄養補給する方法が長引けば、かむ、のみ込むといった口の機能が衰えるだけでなく、全身状態まで悪化させてしまいます。
人間らしく、幸せに生きるためには口から食べることが基本だということを、心に留めておいてほしいと思います」
※週刊朝日 2014年7月11日号より抜粋
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