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もうすぐ北風が強くなる

中東の再分解を画策する米国、サウジ、イスラエル同盟

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 かつて英仏帝国主義はドイツとオスマン帝国を第一次大戦の罠に嵌め、米国を巻き込むことで勝利した。
 この結果ロシアはソビエト革命によって帝国主義列強のライバルでなくなり、ドイツは巨額の賠償と内乱状態に追い込まれ、オスマン帝国は20数か国に分解させられた。

 欧米帝国主義のほとんど習性といっても良いことの一つに、相手をできうる限り分解して弱小国にする、という方策がある。
 このために民族や宗教、方言までが活用される。

 例えば、オスマン帝国はイスラム法による統合国家であるが他宗教を含み、許容する他宗教多民族国家でもあった。
 第一次大戦の戦後処理として、民族、宗教、方言から地方部族差までを総動員して20数か国に分解したのである。
 現在のトルコからイランのクルド人地域を含めて、レバノン、シリア、ヨルダン、イラク、サウジと湾岸諸国などはその分解国家の最たるものである。
 クルド人地域は未来の仕掛け火種として、国境を無視された4国に分断されたのだろう。

 そして、今また米英の帝国主義は、レバノンからシリア、ヨルダン、イラクにかけてのさらに細かい分断国家化を仕掛けている。
 欧州の旧社会主義国とりわけユーゴスラビアが追い込まれたようにである。

 アラブ人もペルシャ人も、そもそもは民族国家の概念が薄かった人々である。
 中国の半分から西はモロッコまで、南はインドネシア、アフリカ東岸、サハラの南辺までがイスラム法の世界だったのだから。
 
 欧米帝国主義に対して、誘導されないで真っ向から闘うためには、「民族主義」という罠にはまらないことなのだろう。
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   ISISをシリアが空爆、イラク首相は歓迎すると語り、米国政府はシリアに手を出すなと警告した意味   6/26  櫻井ジャーナル

 イラクの北西部を制圧しつつあるISIS(イラク・シリアのイスラム国、ISIL/イラク・レバントのイスラム国やIEIL/イラク・レバントのイスラム首長国とも表記)をシリア軍が空爆したことが確認された。
 当初、アメリカの無人機が攻撃したとも伝えられたが、アメリカ政府がすぐに否定していた。

 この攻撃をイラクのノウリ・アル・マリキ首相は歓迎すると語っているが、アメリカ政府はシリアに対し、国境を越えた攻撃をするなと警告している。
 国境など関係なく、世界中を荒らし回っているアメリカ政府が言える台詞ではないはずだが、そうしたことを気にしないところがアメリカ的だ。

 本ブログでは繰り返し書いていることだが、現在、ISISを動かしているのはサウジアラビアのアブドゥル・ラーマン・アル・ファイサル王子。
 長い間、アル・カイダを指揮していた同国のバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官が背後へ隠れ、担当者が替わったということだろう。

 このISISにアメリカ/NATOやペルシャ湾岸の産油国が資金や武器を提供していたことは公然の秘密。
 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すための地上部隊としてISISを使ってきたのである。
 マリキ首相も今年3月にサウジアラビアやカタールを反政府勢力へ資金を提供していると批判している。

 2012年にはヨルダン北部に設置された秘密基地でアメリカのCIAや特殊部隊がISISの主要メンバーを訓練していたともいう。
 ISISのメンバーはアメリカのパスポートを持っていると主張する人もいるが、真偽は不明。
 ただ、ありえない話ではない。

 1980年代の後半、サウジアラビアのジェッダにあるアメリカ領事館では、国務省高官からの命令で不適切な人びとにビザを発行させられていたという。
 アメリカでCIAが訓練するため、入国させる必要があったのだという。

 また、ファルージャから始まったISISの軍事作戦をアメリカの情報機関や軍が事前に察知していなかったということはありえないとも言われている。
 上空にはスパイ衛星、その下には偵察機、勿論、地上にも情報網が存在しているわけで、事前に知っていたと考えるのが自然。
 知っていながら何もしなかったということだ。

 ISISが石油施設を占領しているのも奇妙な印象を受ける。
 これまでアメリカは石油施設の警備に力を入れていたはずだが、今回、都市や石油施設をISISが制圧する際、抵抗らしい抵抗がなかったとも言われている。
 ISISは石油をARAMCO経由で売っているとも伝えられている

 第2次世界大戦が始まった後、SOCAL(スタンダード石油カリフォルニア)、テキサコ、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー、ソコニー・バキューム(後のモービル)が出資して作った会社がARAMCO。
 重役の多くがCIAとつながっていることでも有名
だ。

 アメリカとサウジアラビアにイスラエルを加えた「三国同盟」がシリアやイランをターゲットにした秘密工作を始めたと2007年にニューヨーカー誌で書いたのは調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュ。
 現在、イラクで展開されているISISの作戦の背後にもこの同盟は存在している。

 この「三国同盟」に加え、サダム・フセイン派の残党もISISに加わっているとも言われている。
 その指揮官はイサト・イブラヒム・アル・ドゥリ元革命指導評議会副議長で、アメリカによるとシリア、イラクの情報ではカタールにいるというのだが、2005年に白血病で死亡したという情報も伝わっている。
 ドゥリがアメリカに捕まらなかったのか、アメリカが捕まえなかったのかは不明だ。

 ISISがアル・ヌスラ戦線と一緒になったとも言われているが、これは不思議でも何でもない。
 シリアで体制転覆を目指して戦っているのはイスラム戦線、アル・ヌスラ戦線、そしてISISだが、いずれに対してもサウジアラビアは支持を表明していた。

 ロビン・クック元英外相も主張していたように、アル・カイダとはCIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル、つまり傭兵の登録リストにすぎない。
 その傭兵を雇っているのがサウジアラビアやアメリカだということであり、イスラエルを攻撃しないわけだ。問題は「雇い止め」になってからだ。

 イラクでマリキ政権と戦っているISISをシリアが攻撃、マリキ首相は歓迎し、アメリカ政府は怒った。興味深い反応だ。
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