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もうすぐ北風が強くなる

強力なレジスタンスと崩壊し始めた政府軍

政府軍と住民

   ウクライナ軍 ドネツクで軍事作戦開始 6/19 ロシアの声

 19日、ウクライナの軍及び治安維持諸機関は、同国南東部ドネツク州クラスヌィ・リマン地区で、義勇軍に対する軍事作戦を開始した。ウクライナの軍事作戦担当報道官ヴラヂスラフ・セレズニョフ氏が、記者団に伝えた。

セレズニョフ報道官によれば、19日未明、ウクライナ軍は義勇軍に対し投降するよう求める最後通牒が書かれたビラを撒いたが、誰もそれに応じなかったため「敵を封鎖する」行動を実施している。
一方ドネツク義勇軍参謀本部は、19日ドネツク州アルチョモフスク市周辺で集中的な戦闘が始まったと伝えた。セヴェルスク市、ザコトノエ村も、砲撃にさらされた。義勇兵らはこれに反撃し、現在激しい戦闘が続いている。なおウクライナ軍部隊は、重火器を使用している。

これに先立ち19日朝、スラヴャンスクがウクライナ軍に砲撃され、1人死亡したとの情報も入っている。  
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 IMFの要求で東部制圧に必死のウクライナ大統領は最後通牒を出したが、反クーデター派住民は拒否  6/20 櫻井ジャーナル

 ウクライナのクーデター政権を引き継いだペトロ・ポロシェンコ大統領は6月18日、反クーデター派に対し、武装解除の要求に応じるように通告した。
 これを「西側メディア」は「和平案」と表現しているが、要するに降伏を求める「最後通牒」。反クーデター派が応じるはずはなく、空爆を含む住民への攻撃は続く。

 キエフの制圧作戦を振り返ると、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問して14日にはアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が制圧作戦を承認、
 22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった。
 6月2日にはデレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りし、作戦の調整作業を行ったとも言われている。

 空爆のほか地上軍も投入されているが、その中にはネオ・ナチのほか、アメリカの傭兵会社アカデミ(旧社名はブラックウォーター)から派遣された戦闘員(事実上、アメリカの特殊部隊員)やポーランドの現内務大臣が創設した軍事会社ASBSオタゴの戦闘員も東部の制圧作戦に参加、
 1995年から2005年までポーランド大統領の治安担当顧問を務めたイエルジ・ドボルスキが地上部隊を指揮しているとも言われている。

 東部や南部の制圧を要求しているのはIMFだが、軍事的に制圧できたとしても修復不能の傷が残る。
 ポロシェンコ政権にしろ、ポーランド政権にしろ、その背後にいるアメリカの支配層にしろ、「平和的な統一」は諦めているとしか考えられない。
 すでに多くの住民が難民としてロシアへ逃れているが、これを狙っている可能性がある。

 かつて、似たことをしたグループが存在する。1948年4月4日、「イスラエル建国」を目指すシオニストはアラブ系住民を追い出すために「ダーレット作戦」を開始、6日にはハガナ(後にイスラエル軍の中核になるシオニストの武装集団)の副官がイルグンとレヒ(別名、スターン・ギャング)の代表とエルサレムで会い、カスタルを攻撃する作戦で手を組むことになり、ハガナはイルグンとレヒに武器を供給している。

 8日にハガナはカスタルを占領、9日の早朝、男が仕事でいない時を狙ってイルグンとレヒはデイル・ヤシン村を襲撃して住民を虐殺している。まだ眠っていた女性や子どもが殺されたわけだ。

 国際赤十字によると、254名が殺され、そのうち145名が女性で、35名は妊婦だった。そのとき、イギリスの高等弁務官はパレスチナに駐留していたイギリス軍の司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されている。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしなかった。つまり、虐殺を認めていた。

 この虐殺を見て多くのアラブ系住民が避難、約140万名いたパレスチナ人のうち、5月だけで42万3000名がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住、それから1年の間に難民は71万から73万名に達したと見られている。それに対し、イスラエルとされる地域にとどまったのは11万2000名だという。

 ウクライナでは5月2日にオデッサで反クーデター派の住民が虐殺されている。
 50名弱が殺されたと伝えられているが、反クーデター派は120名から130名が殺されたと主張している。多くに人たちが地下室で虐殺され、死体はどこかへ運び出されたという。
 この虐殺にキエフが送り込んだ警察の幹部や治安部隊が関与していることは映像などで確認できる。
 オデッサの虐殺で中心的な役割を果たしたと言われている人物は、イゴール・コロモイスキー。イスラエル系(シオニスト)の「オリガルヒ」で、ドニプロペトローウシクの知事に任命されている。

 こうした虐殺を見てロシア軍が出てくれば「西側メディア」を総動員して「軍事侵略」だと宣伝、場合によってはNATO軍を出しただろうが、住民が恐怖で逃げてくれることも願っていたはずだ。

 ここで「西側」の好戦派、例えばネオコンやメディアは計算違いをした。
 ロシアが挑発に乗らず、自重したことだけでなく、住民の強いレジスタンスの精神だ。
 勿論、子どもを抱える親などは避難しているが、ファシストと戦うという強い意志も持っている人も少なくない。
 実際、キエフの制圧軍が住民を銃撃した際、住民側は携帯電話のカメラで対抗している。

 そこで空爆に力を入れているのだが、ウクライナ軍から離脱した兵士、退役軍人、警察/治安機関の元メンバーなどが反クーデター派にはいて、簡単には制圧できない。
 撃墜された航空機も少なくない。
 苦戦の理由はレジスタンスにあるのだが、そうとは言えないキエフの政権や「西側」は「ロシアの介入」と言わざるをえないが、勿論、証拠を示すことはできない

 集団的自衛権を日本に命令しているアメリカのマイケル某(※米国戦争屋エージェントのマイケル・グリーン)は、ウクライナ問題に対する日本政府の対応に不満も口にしているようだ。
 ロシアとの対決姿勢を鮮明にしろというわけだが、その日本では「リベラル派」や「革新勢力」はウクライナやリビア、シリアなどの問題でマイケル某たちの思惑通りに発言してきた。
 こうした人びとが集団的自衛権の危険性を理解、本気で阻止しようとしているとは思えない。
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   ドネツク人民共和国の義勇軍 220台以上の戦車を手に入れ、戦車師団結成へ  6/20 ロシアの声

独立を宣言した「ドネツク人民共和国」は20日、ドネツク州アルテモフスクにあるウクライナ軍の戦車基地を管理下に置いたと発表した。インターファクス通信が伝えた。

スラヴャンスクから約30キロに位置するアルテモフスクの戦車基地は、深夜に占拠された。
義勇軍によると、戦車221台、装甲兵員輸送車288台、自走砲12台、自走多連装ロケット砲「グラード」18台、歩兵戦闘車183台、迫撃砲12門を手中に収めたという。
 情報センター「南部・東部戦線」のコンスタンチン・クヌィリク氏が、インターファクス通信に電話で伝えた。

「南部・東部統一軍」はインターネットで、ドネツク人民共和国指導部筋の情報として、ドネツク人民共和国が戦車師団の志願者を募集していると伝えた。
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 ※ ウクライナ政府の「停戦発表」とは民兵への「最後通告」でもある。
  だが、ネオナチと傭兵を除くウクライナ正規軍の動きが極めて鈍いところからは、かなり多くの寝返りや投降者が続出しているとも考えられる。
 義勇兵は住民のレジスタンス運動となっている。
 政府軍のルガンスクに出動した戦車が20台で、義勇兵側に制圧されたアルテモフスクの戦車基地にあった戦車が221台というのも、政府軍の実態を裏付けるものだろう。

 「停戦発表」は「最後通告」どころか、レジスタンスによる政府軍の解体と崩壊を食い止める時間かせぎの可能性もある。 
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※ ウクライナ政変とロシア欧米関係のページ

ウクライナの政変
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ウクライナ情勢、ロシアの声他
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プーチン3/18声明、クリミアとロシアの団結
孫崎3/13インタビュー岩上:異例な米国日本支配とウクライナ
クリミアの住民を否定し、ネオナチを支援する欧米
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プーチン3/18演説:クリミアの復帰について(全文翻訳)
マイダン広場の闘いはすべて(悪徳)政治家のためだった
プーチン4/17公開質疑:何も恐れる必要はない
非合法政権は住民占拠を排除できず、謀略戦に注意
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キエフ非合法政権が虐殺と挑発を再開
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不正な法人減税、不正な成長戦略

   法人税減税に正義はない 公平な税制を歪めた成長戦略  6/19  山田厚史 ダイヤモンド・オンライン

 安倍政権は、すごい政権である。
 憲法を変えない限り無理とされた海外での参戦を「憲法解釈」で出来るようにする。放射能汚染水の垂れ流しは「アンダーコントロール」と世界に説明した。

 それに比べれば「消費税は上げて法人税は下げる」なんて軽いかもしれない。
 税と社会保障の一体改革を叫びながら、減税財源を示さないまま法人税を下げるのは乱暴だ。
 企業への優遇税制を残し、税率だけを下げるのはフェアでない。
 公正な受益と負担という財政の根幹を揺さぶるものだ

 (※ 企業が労働力の有効活用によって剰余価値を生み出すことは、少なくとも労働者の労働力維持しつつなので「搾取」であるが、「税」とは国家権力による「強制収奪」である。
 従って、いわゆる民主制度の政治体制では「公正な受益」すなわち富める者から貧しい者への所得の再配分機能が必須となっている。
 企業が最低でも労働者に保障する生活水準は通常は現在の労働力維持なので(それさえもしない企業も多いが)、将来の労働力維持(結婚、出産、育児、教育など)には足りない。そのために生産社会の維持としては富める者から貧しい者への所得再配分であって、社会保障と税制は最も重要な機能である。
 「税」が強制収奪である以上、その「公正な受益と負担」の機能を果たさなければ、大衆の納得は得られず選挙で敗退するか、革命で政権が倒れるという近代の歴史経験である。)

「私がやると決めたからやるんだ」といわんばかり首相の態度は納税者を舐めていないか。

  ネット上で話題となったトヨタの決算

 自民党税政調査会で法人税が議論されていた時、ネットでは「5年間納税(法人税)ゼロ」の会社が話題になっていた。トヨタ自動車である。
 5月8日にトヨタが発表した2014年3月期決算は、営業利益が前年より73.5%増え2兆2921億円と、史上最高の好決算となった。

 売上でなく利益が2兆円である。驚くべき決算だが、もっと驚く事実を豊田章男社長は明らかにした。

「うれしいことは日本でも税金を納めることです」

 決算会見の冒頭でこう述べた。

「社長になって国内で一度も税金を払っていなかった。企業は税金を払うのが使命。納税ができる会社としてスタートラインに立てたことを素直に嬉しく思う」

 トヨタはどん底の経営が続いていたのか、と思ってしまうが、そんなことはない。
 昨年度も1兆3208億円の営業利益を出し、一株90円の配当を行っていた。圧倒的な好決算に潤いながら税金を払っていない、とは一体どういうことなのか。

 法人税は利益に対する課税だ。1兆円を超える営業利益を稼いだなら、相当額の税金を納めてしかるべきだと思える。

「1兆円儲けても無税」の仕組みをトヨタは明らかにしない。社長が「払えて嬉しい」というのだから、税金をごまかしていたわけではないだろう。
 合法的に課税を逃れた結果である。税制がトヨタのような「大儲け」に寛大な仕組みになっている、ということである。

  損失の繰り越しだけではない優遇措置

 税務の専門家は「トヨタは損失の繰り越しを行った」とみている。ある会計年度に多額の損失(赤字)が発生した場合、向こう9年間に渡り、損失を利益から控除できる。

 トヨタはリーマンショックで多大な損失を出し08年度(2009年3月期)は、税引き前利益が5604億円の赤字に陥った。この損失が09年度以降に繰り越しされた。

 しかし翌09年度には立ち直り、トヨタの業績は回復に向かった。税引前利益で見ると09年度は2914億円、10年度5632億円、11年度4328億円、12年度1兆4036億円もの黒字を稼ぎ出している。

 これだけの利益を08年度の損失の「繰り越し」で消すのは無理がある。他にもっと大きな「税制上の控除」がなければ法人税はゼロにはならない。注目されるのが「租税特別措置」だ。

 租税特別措置は、特定企業に対する税制上の優遇策である。例えば、研究開発費をたくさん使った企業は税をまけてやる、というふうに政府の方針に沿う企業へのご褒美である。
 補助金は現金を与えるが、租税特別措置は税の控除を通じて行う政策誘導だ。

 毎年、税制改正が行われる年末になると、財界は租税特別措置や補助金の拡大・維持を求めて大騒ぎする。
 業界団体は各社の社長・会長を先頭に自民党有力者を回る。政治献金は、優遇税制を「おねだり」する交際費である。

研究開発費だけではない。企業の海外展開も政府の方針に沿っている、ということで海外で納めた税金は控除される。
 この他、雇用の維持や、設備投資など大小さまざまな租税特別措置があり、日本を代表する巨大企業には税金が安くなる仕組みが満載されている。

 その結果、1兆円を超える利益を上げながら、トヨタは「税金が払えなかった」のである。

 何も悪いことはしていない。トヨタは忠実に税法を守ることで「税金を払わなくていい」企業でありえた。

  依然続く政官財の支え合い

 この仕組みはある日突然できたものではない。
 財界・業界は長年政界にロビー活動を行い、実績を重ねてきた。
 年初の恒例行事である自動車工業会の新年会には総理大臣、経産相、国土交通相が招かれ挨拶する。自民党税制調査会の有力者をはじめ大勢の国会議員が集まることで有名だ。

リーマンショックで税金を払えなくなっても、自動車業界は政治献金を続けてきた。

 財界は1988年に起きたリクルート事件をきっかけに政治献金を廃止した。
 復活を決めたのは経団連会長だった奥田碩(ひろし)トヨタ自動車社長(当時)だった。
 奥田氏は経済財政諮問会議の民間委員を務め、政府方針の策定に参加し、小泉政権を支える財界の柱だった。

租税特別措置や補助金は民間企業の働きかけだけでは獲得できない。所轄官庁の協力が必要だ。
 業界と一心同体になって制度づくりに動いてくれる官僚機構を抜きに優遇措置はありえない。

「納税復活」を語った決算会見には、章男社長の傍らに経産官僚だった小平信因氏が寄り添っていた。
 資源エネルギー庁長官で退職し、冷却期間をおいてトヨタに再就職し今は副社長である。

 日米自動車摩擦が起きた1980年ころは、自動車課の課長補佐としてメーカー各社に対米輸出の「自主規制枠」を割り付けるなど、若いころから業界に縁の深い人だ。
 トヨタの経営に加わることは自動車官僚としての人生の到達点かもしれない。

1兆円儲けながら、税金ゼロ、という世間常識を超えた「仕組み」を支える構造はトヨタや自動車会社に限った話ではない。

 税制は国の根幹である。決めるのは国会であり、与党である自民党の税政調査会が強い力を持ってきた。
 背後には大企業のロビー活動や官僚による政策づくりがあり、政官財が一体となって税制が形作られている。

  庶民、零細企業には負担を強いる

 企業が法人税を下げてくれ、というのは当然の要求である。税金が安いのはありがたいことで、国際競争にさらされる企業にとって死活問題かもしれない。
 一方、庶民にとって消費税が上がることは楽しいことではない。増税分を価格に転嫁することが難しい中小零細の事業者も「消費増税大反対」だ

 税は立場によって利害損得が複雑で、皆が納得する税制は難しい。
 そこで日本は税制に関して「公平・中立・簡素」をうたい文句にしてきた。バランスを欠く税制はよくない、という考えだ。

 政府が掲げる税と社会保障の一体改革は、社会保障制度を維持するために増税をお願いする、ということである。
 社会保障の予算を切り詰め、サービスは低下するが、それでも財政は厳しいから負担増は避けられない、という身もふたもない方針だ。
 そこまで日本の財政は傷んでいる、ということである。

国家財政の非常時に、なぜ法人税だけが優遇されるのか

 安倍政権は16日決めた「骨太の方針」に、法人税の実効税率を現行の35.64%(東京)から20%台に引き下げる、と盛り込んだ。

 法人税率を1%下げると国庫は5000億円の減収になるという。10%下げれば5兆円だ。
 来年消費税を10%に引き上げても帳消しになりかねない税額である。

 法人税を払っているのは黒字に潤っている大企業だ。トヨタでも昨年まで払えなかったのだから、法人税は優良企業への課税といっていいだろう。

 日本で利益を稼げるのは、日本社会の支えがあってのことで、儲けの一部を社会に還元することは企業の使命、という思想に裏打ちされている。

 21世紀に入って日本では企業が儲けても従業員の取り分は減り、給与総額は縮小している。反対に企業の内部留保や株主への配当は膨らんでいる。
 グローバル競争にさらされる企業の多くは、社会への還元を抑制し、経営者・資本家に配慮する経営へと舵を切った。

法人税の引き下げはこうした流れを国家レベルで進めることである。

 庶民の税負担を重くし、儲かっている企業の言い分に従う政策だ。
 危機的な財政状況で皆が我慢を強いられているとき、経団連のわがままを聞くことがはたして妥当だろうか。税制改正のポイントはここにある。

  苦しむ赤字法人に課税も

 異論は財務省内部からも上がっている。

「経団連の言い分は分かるが、この局面で法人税減税を進める大義はない。首相は取り巻きに経産省出身者が多く、経済界の言い分が反映しやすい」(財務官僚)

 政府税制調査会からも「法人税を引き下げるなら、租税特別措置など既存の優遇措置も同時に見直すことが必要になる」という声が出ている。
 政府税調の太田弘子座長は法人税減税に理解を示しながら「多くの企業に薄く広く税を負担してもらうよう検討する」と言っている。

 そこで登場するのは赤字企業への課税だ。利益への課税では赤字企業は徴税されない。
 資産や従業員の数など「企業の規模」に課税する外形標準課税が浮上した。いわゆる「赤字法人への課税」だ。

 税金ゼロはトヨタだけではない。政府のてこ入れで再生したJALは、世界一の高収益エアラインになって今も税金を払っていない。
 公的資金で生き延びたメガバンクも数年前までは税金を免れていた。
 赤字法人の課税が実現すれば、こうした企業からも徴税できる、というのである。

 ところが中小企業が反発している。
 課税逃れの大企業と違い、中小企業は本当に苦しいから税金を払えない。
 消費税も実際に納税する義務があるのは消費者ではなく事業者だ。
 多くの中小零細企業は、消費増税を価格に転嫁しきれず負担増になっている
 そんな時に、法人税を軽くするしわ寄せで赤字企業課税まで導入されたら生きていけない、というのである。

儲かっているのに税金を払わないで済む仕組みを変えなければいけないのに、大企業に手を出せないから赤字企業までというのは天下の悪政だ。中小企業はもっと怒るべきです」

 立教大学の山口義明教授はあきれている。

 租税特別措置は民主党政権の時に見直す動きがあった。経済界の反対が強く、実現しなかった。
 経団連など財界の有力者は「既得権にメスを入れる改革を」などというが自らの既得権である税の優遇は手放さない。

 数兆円規模になる法人税の実効税率の引き下げは、減税財源が見当たらないまま、骨太の方針に書き込まれた。

「法人税が下がれば、企業が元気になって税収が増える。増えた税金を財源にすればいい」。そんな気楽な言い分が経済界に広がっている。
 不確かな楽観論を根拠に、自分の儲けだけは確実に増やす。日本の財界人はいつから自分の庭先しか考えなくなったのか。

税の歪みをますます大きくする法人税が「成長戦略」という国家に未来はあるのだろうか。
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