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もうすぐ北風が強くなる

国債の貨幣化(財政ファイナンス)はどこまで続くか?野口

紙幣の山
 インフレの匂い

 アベノミクスとやらの異次元金融緩和を、未だに「景気対策」と思っているおめでたい人もいるようだ。
 このブログでも一昨年から度々行ってきたことだが、目的は「デフレ脱却」でも「景気対策」でもない。

 国債買い入れの形でいくら通貨を増刷しても、デフレを作り出している消費需要の減少が止まらなければ企業は設備投資できないので、資金需要は伸びず銀行貸出増にならないかぎり流通通貨(マネーストック)に反映しない。
 逆に財政ファイナンス(国債の貨幣化)により公共事業部門がインフレになる。円安による原材料高騰と相乗するインフレ圧力である。
 「異次元金融緩和」の目的効果はせいぜい実体経済とは遊離した株価の期待上昇であり、海外金融資本の売り抜けに好都合なくらいである。
 財政ファイナンスと金利抑圧が目的なのだが、米国の金融緩和縮小の肩代わりと民間も含めた米国債買い入れにきわめて好都合な環境作りなのは言うまでもない。

 国債の貨幣化(財政ファイナンス)はどこまで続くか? 
 出口戦略のない異次元金融緩和は、取り返しがつかないほどのインフレが始まるまでやるつもりのようだ。
 つまり、家計、企業、政府の共倒れ破綻である。

 日本の経済と勤労者の生活にとっては、極めて危険な政策が行われている。  
 ーーーーーーーーーーーーー
   国債の貨幣化はどこまで続くか?  野口悠紀雄  週間ダイヤモンド2014年5月24日号
(※ )は北風による補足注釈。

 国債の残高は増え続けているので、常識的に考えると、利回りが上昇するはずだ。
 そうなれば、国債の市中消化は難しくなる。そのため、増税や歳出削減を行わざるを得なくなる。
 つまり、歳出を国債で賄っていたとしても、際限なく財政赤字を拡大できるわけではなく、それを抑制するようなメカニズムが働くはずだ。

 ところが、日本の現実を見ると、そうはなっていない。国債の利回りは、上昇していない。それどころか、低下を続けている

 日本の財政状況は極めて厳しい。消費税を増税したものの、財政赤字は目立っては縮小しない。
 他方で、社会保障費を中心として歳出は増加し続ける。従って、財政赤字が今後拡大することはあっても、縮小することはあり得ない。
 こうした背景を考えると、現在のような低い金利で資金を調達できるのは、不自然な状態なのである。

 これまでは物価上昇率が低かったことで低い金利を説明できた。
 しかし、円安によって物価は上昇している。それでも金利は上昇しない。現在では実質利子率はマイナスになっており、異常な状態だ。

 これまで日本の銀行は、貸し出しを減らし他方で国債を増やすことで、バランスさせてきた。
 そのため、金利を上昇させずに国債を市中消化することができたのである。
 しかし、このメカニズムには限度がある。実際、貸し出しの中でも住宅ローンは簡単には減らせない。
 ここ数年は、消費税増税前の駆け込み住宅需要もあって、住宅ローンは増大してきた。これを考えても、金利が上昇しないのは不自然なことと考えざるを得ない。

   異次元緩和の目的は財政ファイナンス

なぜ不自然な状態が継続しているのか?
 それは、日本銀行が国債を購入しているからだ。
 それによって、国債を市場から隔離しているため、市場メカニズムによる金利上昇が生じないのである。

 2009年12月から13年12月までの間に、国債残高は148.3兆円増えた(以下で「国債残高」とは、日銀の資金循環統計における国債・財融債の残高)。
 しかし、預金取扱機関(ほぼ「銀行」に一致する)の残高は16.1兆円しか増えていない。
 これは、日銀が保有国債残高を93.4兆円増加させたからだ。
 これがなかったら、金利は上昇していただろう

 日銀の国債購入は、13年4月に導入された異次元金融緩和によって、顕著に増加した。13年3月から12月までの期間で、日銀保有国債残高は、49.8兆円増加した。
 この間の国債残高増加は19.5兆円だから、それを約30兆円も上回る購入を行ったわけだ。

 他方、預金取扱機関の国債残高は、13年3月をピークとして減少している。
 13年3月から12月までに27兆円ほど減少した。全体としての国債残高は増加しているのだから、異常な現象だ。
 資金需要がない中で、国債は銀行にとっての重要な運用対象である。
 それが減っているのだから、価格は高くなり、利回りは低下する。

 このため、前述のメカニズムは働いていない。
 金利上昇というシグナルが生じないから、財政規律が弛緩する

 中央銀行が国債を購入することを通じて赤字財政をやりやすくすることを、「国債の貨幣化」あるいは「中央銀行による財政ファイナンス」という。異次元緩和の本当の目的は、経済活動の活性化ではなく、国債の貨幣化なのだ。

 ただし、現在の国債の貨幣化は、分かりにくい。負担がないように見えるのだ。

 日銀券を増発して、国債を購入すれば、(※ 正常な経済成長であれば)マネーストックが増加して、インフレになる。しかし、日本の現状では、そうはなっていない。
 (※ 賃金抑圧によるデフレ循環は変わりないため、設備投資の資金需要(銀行側の信用創造)が増えない。)
 異次元緩和以降、マネーストックの増加率は顕著には上昇していないのである。物価は上がっているが、円安のためであり、マネーストックが増えたためではない。

 こうなる理由は、日銀負債の増加が、日銀券の増加でなく、当座預金の増加で生じていることにある。当座預金はマネーストックに入らないので、インフレ圧力にならないのだ。
 (※ 日銀の銀行当座預金は銀行の貸出として使われることで、流通通貨となる。使われなければ準備金のままで流通通貨は増えない=ブタ積み。)

   不自然な状態は何かのきっかけで崩れる

 では、負担なしに財政を拡張できる状態を、いつまでも続けられるだろうか?

 できないはずだと、誰でも思うだろう。それは、常識で考えれば明らかだ。
 一方において財政支出が拡大している。それは、受益する人々に経済的な利益を与える。しかし、負担はどこにも発生しない。
 こんな「うまい話」は、あり得ない。誰かが必ず負担を負うはずだ。どこかにおかしいところがあるに違いない。

 その通りであって、いまの状態は、実は不自然なのである。
 不自然なことが成り立っているカラクリを説明しよう。

 日銀当座預金は、銀行にとっては本来は貸し出し準備だが、いまの残高の大部分は過剰準備である。
 つまり、積み立てておく必要がないものだ。しかも、本来は金利ゼロのはずだから、利子収入のある国債を売って当座預金にするのは、不合理な行動のはずである。

 では、銀行はなぜ国債売却に応じるのか?
 一つは、当座預金に付利しているからだ。
 もう一つの理由は、利回りが低下してきたため、国債を売れば利益が出るからだ。

 しかし、これは安定的な状態ではない。
 仮に銀行からの当座預金の払い戻し要求があったら、日銀は日銀券を増発するしか対応の方法がない
 日銀券はマネーストックに含まれるので、マネーストックが増えてインフレになる
 つまり、現在は、潜在的に日銀券が多くなった状態なのであり、潜在的なインフレ状態なのである。

 実際の数字を見ると、マネタリーベース(日銀当座預金と日銀券の合計)は、13年3月から14年3月までの間に73.9兆円増えた(増加率は54.8%)。その大部分は日銀当座預金で、70.5兆円増えた(148.9%の増加)。

 このように、幾つかの非常に分かりにくい仕組みによって、本来はあり得ない状態が続いているのだ。

 これは安定的な均衡とはいえず、何かのきっかけで崩れる。それが崩れれば、本来の姿があらわになるだろう。

 崩壊のシナリオとしては、幾つかのものが考えられる。
 近い将来であり得るのは、金利高騰だ。それは、アメリカのQE3(量的緩和第3弾)終了で始まる可能性がある。
 アメリカの金利が上がったとき、日米金利差が広がって円安になるのでなく、為替レートは不変で、日本の金利が上がることがあり得る。13年5月には、まさにそのことが生じた。将来、これが再現する可能性がある。

 こうなれば、現在の微妙なバランスが崩れてしまう。
 まず、銀行は国債を日銀に売らなくなるだろう。
 これまでは金利が下がってきたから、売れば利益が出た。しかし、金利が上昇する局面では、国債を売却すると損失が発生する。

 また、金利が上がれば、付利しているとはいえ低い金利の当座預金は、不利になる。だから、過剰準備の払い戻しを求めるだろう。

 他方で、財政規律は簡単には変わらないから、国債の発行は続く。しかし、消化が難しいので、金利はさらに上がる。また、国債の利払い費が増える

 こうして、危機はドミノ倒し的に進行するだろう。現在の状況は不安定なものであることが認識されなければならない。
 (※ 不安定というよりは正しく「危険な」異次元金融緩和なのである。)
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