非合法政権のスラヴャンスク攻撃はヘリ3機撃墜で頓挫した。
2014-05-03

他人の足を踏んだり、背中から蹴ったりさんざん乱暴をしながら、「あいつが踏んだ。あいつが蹴った。」と叫びまわる醜態な男。米国とそのマスコミだ。
そそのかされたキエフ非合法政権は、5/2の朝からスラヴャンスク市への攻撃を開始したが、ヘリ3機を撃墜された。
ヘリの使用を停止した。
攻撃作戦の停止は確認されていないが、2日中に新たな奪取箇所はなかった模様なので事実上の停止と思われる。
住民側の被害が少なくて安堵する。
軍には住民と戦う意志は少いだろう。ネオナチ志願兵は姑息な謀略しかできないだろう。
キエフの非合法政権が徴兵制をしくと言明したが、ネオナチ武装兵以外に誰が応じるのか、仮に100人くらいが追加で応じても誰が訓練するのか、誰が指揮するのか?
彼ら非合法政権の無能さを露呈するばかりである。
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ロシア大統領報道官「キエフ当局はジュネーヴ合意への期待を台無しにした」 5/2 ロシアの声
1日、ロシアのドミトリイ・ペスコフ報道官は、キエフ当局を、様々な兵器、装甲車両そして航空機を使ってウクライナ南東部で犯罪的な「懲罰作戦」を実施したと非難した。
報道官は「プーチン大統領は、ウクライナ南東部で展開されている出来事に関し、オンラインで適宜情報を受け取っている」と伝え、次のように続けた―
「1日、大統領の命令により、ウクライナ南東部には、同地で拘束された欧州安保協力機構(OSCE)軍事オブザーバーの解放に関する交渉実施のため、ウラジーミル・ルキン大統領特使が派遣された。しかし、今のところ彼との連絡が取れず憂慮している。
キエフ当局は、懲罰作戦を開始し、これは事実上、ジュネーヴ合意の息の根を止めるもので、最後の希望がついえた。」
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ウクライナ軍、スラヴャンスク攻撃開始 5/2 ロシアの声
スラヴャンスク自衛団より2日早朝、ウクライナ軍による攻撃が開始されたとの報告が寄せられた。
自衛団広報担当がリア・ノーボスチに明かしたところによれば、ウクライナ軍が複数の検問を同時に攻撃し始めた。
「ロシア24」テレビによれば、市上空にウクライナ軍のヘリが認められた。
間欠的にサイレンが鳴る。攻撃の開始を住民らに知らせているのである。
自衛団幹部によれば、地上部隊からも上空部隊からも銃砲が発せられている。
人的被害については報告されていない。
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ウクライナ軍はウクライナ南東の街スラヴャンスクにおける軍事オペレーションを停止した。 5/2 ロシアの声
連邦化を求める市民勢力の情報では、自衛団に対してヘリ20機が出動したという。
人口16万の街が完全に封鎖され、全ての道路が装甲車や兵士らに閉鎖されている。
「ロシア24」テレビによれば、ウクライナ治安機関は、自衛団がヘリ3機を撃ち落としたことを受け、ヘリの使用を停止した。
キエフ側によれば、作戦で撃墜されたヘリのパイロット二名が死亡している。
さらに、負傷者も数人出ているという。
ロシアは1日、スラヴャンスクにおける軍事行動を厳しく批判した。ロシア外務省は、そうした行動はウクライナの危機的状況を一層悪化させるだけだ、と述べた。
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米国民 ウクライナ危機への米の介入に反対 4/30 ロシアの声
米国のニュースポータルサイトBloomberg.comに載ったインターネット世論調査の結果によれば、米国市民の大部分が、ロシアはウクライナ領内に侵攻するつもりだとは見ていない。
「あなたは、ロシアがウクライナ領内への大規模な侵攻を行うと思いますか?」という質問に対し、52%が「思わない」と答えている。
またオンライン投票での「米国は、もしロシアがウクライナへの武力行使に踏み切った場合、介入すべきですか?」という問いに対しては、最も多い答えは「いいえ、もし他の国が介入したら、危機は深まってしまう」だった。
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ウクライナ東部の衝突の拡大 5/2 イランラジオ
ウクライナ暫定政府に反対する親ロシア派が、ウクライナ東部で軍のヘリコプター3機を撃墜したことを明らかにしました。
一つ目のヘリコプターは、2日金曜未明、スラビャンスクで撃墜されました。
また、情報筋は、ウクライナ軍のヘリコプター1機が、スラビャンスクの郊外で打ち落とされたと報じています。
これについて、親ロシア派の指導者の一人は、スラビャンスク郊外でこのヘリコプターを撃墜したことを明らかにしました。
さらに3つの目のヘリコプターはこの町で、親ロシア派の軍によって撃墜されました。
親ロシア派は、この3つのヘリコプターの操縦士の一人の身柄を拘束したといわれています。
現在、スラビャンスクの各地、その周辺の地域では衝突が散発しています。
各報道によりますと、ウクライナ東部でのウクライナ軍による対親ロシア派の作戦が継続される中、2名が死亡しました。
これについて、ドネツク州の親ロシア派は、2日金曜、スラビャンスクで、ウクライナ軍のヘリコプターの操縦士と親ロシア派1名ずつか死亡したことを明らかにしました。
同日さらに、ウクライナ軍のヘリコプターの操縦士1名を含む7名が負傷しました。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ軍は同国東部から撤退すべきだ、と強調しました。
プーチン大統領は、ドイツのメルケル首相との電話会談で、「ウクライナ軍の部隊の東部からの撤退は重要な問題だ」と語りました。
プーチン大統領はこれ以前、イギリスの首相との電話会談で、ウクライナ情勢に関するジュネーブ宣言の無条件の実行を強調していました。
ウクライナ東部はここ数日、親ロシア派とウクライナ軍の衝突の舞台となっています。
ウクライナでの緊張は、3月にクリミア半島がロシアに編入されたことを受けて高まりました。
住民投票実施後に行われたウクライナからのクリミアの分離は、ウクライナの東部や南部の大都市で親ロシア派によるデモを引き起こしました。
住民の多くがロシア系であるこの地域は、3月から連邦制を支持するデモの舞台となりました。
抗議者は、クリミアと同様の住民投票の実施を求めています。
このグループは東部の一部地域で、庁舎を占領しています。
ウクライナ暫定政府も、反テロ作戦を地域で実施しています。
アメリカとEUは、ロシアがウクライナでの緊張を煽っていると主張し、ロシアとクリミアの関係者に対する制裁を決定しました。
こうした中、IMF国際通貨基金は1日木曜、ウクライナ政府が東部をコントロールできなくなった場合、ウクライナへの支援を見直す、と発表しました。
IMFは、声明の中で、地域の衝突は、収入を減少させ、投資の展望を損なう可能性があるとしています。
ウクライナの経済状況と予算の展望は、予想以上に悪化する可能性があります。
ウクライナは現在、ウクライナの産業の中心であるドネツクの親ロシア派に対抗するために軍隊を結集しています。

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安倍政権の慰安婦検証は世界を敵に回す気違い沙汰:ブルマ
2014-05-03

原爆投下の責任はトルーマンにある。
一方で無条件降伏を引き伸ばすことで沖縄戦と原爆を招いたのは、国体護持を冷戦を取引した「最高責任者」でもある。
「国体護持」のために敗戦をあいまいにし、妥協の手打ちで東京裁判を決着させ、戦争があたかも自然災害であったかのようなムード作りは67年を経て、ゴロツキ右翼の花を咲かせた。
米国には負けたが、アジアには負けたわけでも残虐な戦争犯罪を犯したわけでもないと妄想を主張する。
戦争政治が大好きでかつ国境の外には無知無関心、という世界的に極右共通の特徴ももっている。
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「世界中を敵にまわす日本」 イアン・ブルマ 4/11 蘭NRCハンデルスブラット紙 村岡崇光(ライデン大学)訳 4/22 「明日うらしま」梶村太一郎氏から抜粋。(※ )は北風の補足注釈。
安倍政権は外から見れば「気違い沙汰」を行っているのに、国内ではそうではないのか。
相次ぐ世界中からの安倍政権批判の典型のひとつとして紹介。(梶村)
「世界中を敵にまわす日本」 イアン・ブルマ
安倍首相が何を狙っているのかは理解に苦しむことがある。彼が最近考え出したことは気違い沙汰と言っても過言ではなかろう。
1993年に時の日本政府が戦時中日本軍の性奴隷とされた女性たちに謝罪したことは果たして正しかったかを検証するために歴史家から成る委員会を設置しなければならない、というのである。
最近安倍の何人かの助言者達が、あの謝罪は正当ではなかったという発言をしたことからして、日本政府には日本軍の慰安所に関しては何らの責任も無く、よって謝罪は撤回してしかるべきである、という結論は前記の委員会には自明のこととなろう。
しかし、これに対する反響には相当厳しいものがあり、あの時の謝罪は謝罪として残す、と約束せざるを得なくなったが、しかし彼がこういうことを持ち出したということから首相が祖国の歴史をどのように捉えているかは明らかになった。
自国の過去の歴史のなかのあまり芳しからぬ側面をぼかそうとするのは勿論日本だけに限らない。
日本が降伏してからオランダがインドネシアで行ったことに対してどこまで謝罪すべきかは今なお争われている。
スターリンによる大量虐殺についてはウラディミール・プティンの政権下の国粋主義的な歴史記述では触れられることがない。
天安門広場や中国の多くの他の場所に於ける虐殺についても公式の歴史からは消されている。
しかしながら、日本は思想表現の自由を許された民主国家である。
1993年の謝罪は、日本人のある歴史学者が、戦地での慰安所には日本が国家として直接に関与していたことを証拠だてる文書を発見したことに端を発する。
当時の日本軍の上層部は、日本軍兵士によって大多数の女性が中国で強姦されたことによって中国人男性たちから激しい抵抗があったことを甚だしく憂慮した。
それ故、占領地においては、インドネシアを含めて、女性を強制あるいは誘拐して前線の日本兵のための慰みに使う方が得策である、と結論された。
日本政府はこの点を公式に認めた。とすれば、この厄介な問題を今頃になって安倍は何故またもや持ち出すのであろうか?
日本と近隣諸国との関係は、そうでなくてさえ既に長いこと悪化したままになっているのにである。
謝罪の撤回は中国と韓国との関係を今より遥かに悪化させるに決まっている。
安倍やその同志達の言動は、彼等が他の国に対して多少とも理解あるいは関心をもっていることを示していたのであれば、確かに謎と言わなければならない。
しかし、政治家、ことに右翼の国粋主義者にあってはまま見られるところであるが、彼らの関心は自国の国境の先まで届かないのである。
安倍のような日本の国粋主義者達が歴史を書き換えようとするのはフィリッピンやインドネシアは言わずもがな、中国や韓国とは大して関係ないのである。
彼らの関心は日本国内の政敵に向けられているのである。
日本人が自国の現代史をどのように見るかは彼らの政治期的視点によって著しく規定されており、その視点には互いに正反対のものが多い。
戦時中の歴史についての論争は日本が連合軍によって占領されていた40年代に遡る。
米国は日本を根本的に変革して今後は戦争に走ることは考えられないようにしよう、と願った。
天皇の神格化は廃絶された。教育からは軍国主義的、封建的要素は一切払拭されなければならなかった。
米国は、軍事力に訴えることを不可能にするような平和主義的新憲法を起草した。日本軍の指導者達は極東裁判において、ニュールンベルグのナチと同様に、「平和に対する蕃行」、「人間性に対する犯罪」を基準として裁かれた。
(※ 戦勝4か国占領下にあっては戦争犯罪の追及に妥協の余地はなかった。だが、東京裁判は米国の単独占領下での冷戦志向と「国体護持」の妥協であった結果として、「平和に対する罪」「人道に対する罪」は正式には訴因とされなかった。)
大多数の日本人は、戦争に疲れていたので、この点において大して問題を感じなかった。しかし、少数ながらこういった処置を日本に対する侮辱と受け取った国粋主義者達がいた。
彼等の目からすれば、日本はその尊厳を、そしてもっと重要なことは、その主権を剥奪された、というのであった。
日本は自国の安全に関して米国にすっかり依存することになったので、アメリカの属国になった、というのであった。
(※ 敗戦後70年近くもこうした考えが始終飛び出す原因は、東京裁判に典型的だが敗戦交渉(降伏の引き伸ばしを図り原爆投下の機会を作った)と占領の過程で冷戦準備と「国体護持」の妥協が成立し、「敗戦」をあいまいにする工作がおこなわれたことによる。
最高責任者の責任を不問として、陸軍A級戦犯が身代わりの最高責任者とされ、敗戦をあいまいにしたままの官僚制と統制が継続した。
「A級戦犯の代わりに罪を問われなかった最高責任者」、「永続敗戦論からの展望:白井聡」。)
上記の少数派の国粋主義者の一人が岸信介であった。彼は、当初は戦犯として逮捕されたが、後年総理大臣になった。 彼の目指したのは平和憲法を改定し、ふたたび学校教育で愛国心を涵養することによってアメリカが導入した改革をある程度まで無効にしよう、というにあった。
しかし、大多数の日本人は多少とも軍国主義に匂いのするものは一切受け付けなくなっていたので、この試みは挫折した。
さらにまた、80年代までは学校教育のみならず、一部の新聞、雑誌も相当左翼的な思想に支配されていた。
身の毛のよだつような戦争中の体験は教育及び律法の場で歴史修正主義を抑制する方向に働いた。
これに対抗して、右翼国粋主義者達は日本軍による蕃行に関する話しは甚だしく誇張されており、外国人がでっち上げたものもある、と主張した。
1937年の南京大虐殺や日本軍の慰安所の性奴隷に関する出版物は自虐的史観の産物、あるいは極東裁判の時の宣伝に過ぎない、と片付けられた。
日本の現在の国粋主義の根底に横たわるものがまさにここにある:アジアのために戦った輝かしい日本の戦いを黒く塗りつぶすことによって「左派のエリート達」は日本国民の精神的支柱を覆そうとしている、というのである。
日本の左派は、西欧世界に於けると同じように、ソ連邦の崩壊後、相当な痛手を蒙り、右翼が謂うところのこの「左派のエリート達」の影響力は著しく後退し、それにかわって右翼の発言力はいよいよ強まるようになっている。
戦地における慰安所には別に問題はなかったとか、南京大虐殺はでっち上げられた嘘に過ぎないというようなことをへいちゃらで公言出来るような友人をNHKの理事に安倍が任命出来るのも驚くにあたらない。
何が真実か、というようなことは問題でない。
すべては政治の問題に帰する。
ここで安倍がやっているゲームは危険なゲームである。
こういう言動によって彼はアジアの同盟国に真っ向から対立することになり、米国も不快感を表明しており、中国との関係はいよいよ厳しい試練に立たされている。
その結果、日本はアジアに友人を失い、いよいよ孤立を深めている。
中国の勢力が日増しに増大しているのだから尚更問題である。
日本の安全を保障出来るのは合衆国だけである。こうして日本はかつての仇敵にいよいよ依存せざるを得なくなるのであるが、その米国が日本に戦後導入した改革をもとに戻そうとする安倍の政策は狂気の沙汰としか呼べない。
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TPPは企業利益のための窮乏化協定:スティグリッツ
2014-05-03

ジョセフ・スティグリッツ「グローバリゼーションの悪い面について」 NYタイムス 4/21 現代ビジネス
TPP交渉が非公開で行われる理由
貿易協定を話題にすると、読者は目をトロンとさせがちだが、ここは私たちの誰もがかなり注意しなければならないところだ。
現在、進行中の貿易協定案は、多くのアメリカ人をグローバリゼーションの悪い面に追いこむ恐れがある。
オバマ大統領の語り口からは計り得ないが、貿易協定に関する相反する見方が実際に民主党を引き裂いている。
たとえばオバマ大統領は一般教書演説で、「雇用をさらに生み出す」であろう「新しい貿易連携」について穏やかに言及した。
喫緊の問題は、TPPすなわち環太平洋戦略的経済連携協定であり、これは環太平洋地域の12カ国を、世界最大の自由貿易圏としてまとめようとするものだ。
米国通商代表部によれば、2010年にはじまったこのTPP交渉の目的は、参加国の関税および他の貿易障壁を軽減することによって、貿易や投資を増加させようとするものだ。
しかしTPP交渉は非公開なので、われわれは提案された条項についてはリークされた草案に依拠して推測せざるを得ない。
同時に、米国議会は今年、議事妨害を阻止できる早期承認手続きの権限を与える議案をホワイトハウスに提出した。
それが承認されれば、議会は提出された貿易協定がどのようなものでも、改定や修正はできない。単に承認するか却下するかしかなくなるのだ。
議論が噴出したのも無理はない。
リークに基づけば、また過去の貿易協定が決着した歴史を鑑みれば、TPPの全体像を推測することはたやすく、その結果はかんばしくないからだ。
米国と世界のエリートというごく少数の富裕層に、それ以外のすべての人々を犠牲にして利益を与えるという現実のリスクがあるのだ。
このような計画が進行中であるという事実そのものが、経済政策が格差にいかに深い影響をおよぼしているかという証左だと言える。
規制の調和は底辺への競争のはじまり
さらに悪いことに、TPPのような協定は、より大きな問題、すなわちグローバリゼーションという、われわれのひどいミスマネジメントのひとつの側面でしかないのだ。
まず歴史を振り返ってみよう。
一般に、今日の貿易交渉は、第二次大戦後に数十年間にわたって行われたものとは著しく異なる。
当時の交渉の焦点は関税の引き下げだった。
関税があらゆる面で引き下げられて貿易が拡大し、各国それぞれの強い分野での発展によって結果的に生活水準は向上した。
雇用は部分的には失われたが、新しい雇用も創造された。
ところが今日では、貿易協定の目的が異なる。
世界中の関税はすでに低く、焦点は「非関税障壁」へと移った。
なかでも、協定を推進する企業の利益にとって重要なのが規制である。
巨大な多国籍企業は、各国で食い違う規制がビジネスを割高にしているとクレームをつける。
しかし規制の多くは、たとえそれらが不完全なものであったとしても、存在するだけの理由がある。
すなわち、労働者や消費者、経済や環境を保護するためなのだ。
それだけではない。それらの規制は、各国の政府が市民からの民主的な要求に応えて導入したものなのだ。
貿易協定の新たな推進者たちは遠回しに、自分たちは単に規制の調和を追い求めているのだと主張する。
そう言えばその主張は、効率を促進する無害な計画という意味となり、クリーンに響く。
もちろん、いたる所で規制を高い基準に合わせ強化することで規制の調和をはかることはできる。
しかし企業が調和を提唱するとき、実際にそれが示すところは、底辺への競争(※)である。
各国が同様に規制の最小化に合意し、TPPのような協定が国際貿易に適用されれば、多国籍企業は、大気浄化法と水質浄化法がそれぞれ1970年と1972年に立法化される以前、さらには最近の金融危機に見舞われる前に一般的であったやり方に復帰することができる。
どんな企業であっても、企業の利益にとって規制の撤廃は望ましいということに心から同意するだろう。
貿易の交渉者らは、これらの貿易協定が、貿易や企業利益にとって有益だと納得するであろう。
しかし大損害を受ける者がいる。それは文字通り、残りのわれわれすべてだ。
(※)底辺への競争:国家が外国企業の誘致や産業育成のため、減税、労働基準・環境基準の緩和などを競うことで、労働環境や自然環境、社会福祉などが最低水準へと向かうこと。自由貿易やグローバリゼーションの問題点とされる。
アヘン戦争を思い起こすフィリップ・モリスの補償請求
これらの大きな利害関係こそ、非公開で貿易交渉を進めることが危険である理由だ。
世界中の通商関連省が、企業と金融の利害に取り込まれている。
そんななかで交渉が秘密裏に進められると、これらの協定がもたらすマイナス効果を制限するために必要なチェックアンドバランスを、民主主義的な方法で行使することが不可能になる。
この秘密主義は、TPPに関して重大な議論を引き起こすに十分な理由である。
知る限りではその詳細も、われわれの不快感を深めるばかりである。
最悪なものの一つは、不当な強制収用に対してだけでなく、規制のおかげで得るべき利益が減ったという申し立てに対しても、企業が国際裁判所で補償請求することを認めていることだ。
これは理論上の問題ではない。世界最大のタバコメーカーであるフィリップ・モリスは、すでにウルグアイに対してこの戦術を使った。
世界保健機構から賞賛を得たウルグアイの禁煙目的の規制が、スイスとウルグアイの二国間貿易協定に違反し、利益を不公平に損なっていると申し立てている。
この意味で、最近の貿易協定はアヘン戦争を思い起こさせる。
当時、西欧の列強国は、中国のアヘンへの門戸開放が大規模な貿易不均衡に陥らないために必須と考え、中国に要求して認めさせたのだ。
貿易諸協定にすでに組み込まれた条項は、環境や他の規制を掘り崩すためにこれ以外でも使われる。
発達途上国は、これらの条項を許諾することで高い代償を払うことになるが、その代わりとしてさらなる投資を得られるといった証拠は乏しく、論議の的となっている。
これら途上国は明らかな犠牲者だが、同じことが米国の問題となる可能性もある。
米国企業はおそらく、いずれかの環太平洋国家に子会社を創立し、その子会社経由で米国に投資することが可能だ。
「外国」企業として米国内では持ち得ない権利を得て、今度は米国政府を訴える行動に出るのである。
繰り返すが、これは単なる理論的な可能性ではない。
政府に関しては、企業は、どの国の法的立場がもっとも強いかということに基づき、海外への投資を絞り込んでいるという証拠がすでにある。
有害な条項はほかにもある。
米国はヘルスケアに関しての費用を減らすことに取り組んできた。
しかしTPPによって、ジェネリック医薬品(特許切れの後発医薬品)の導入はさらに困難となり、医薬品の価格は上がる。
これは最貧国にとって、単純に金を企業の金庫に移すという話ではない。
何千人もがムダ死にするということだ。
もちろん、研究者は償われなくてはならない。
特許制度があるのはそのためだ。
しかし特許制度は、知的所有権保護の利得とそのほか別の価値ある目的とを注意深く照らし合わせることになっている。
つまり知識へのアクセスはよりたやすくならなければならない。
私は以前に、女性の乳がんの素因となる遺伝子の特許を得ようとする人々によって、特許制度がいかに濫用されているかを書いた。
最高裁判所はそれらの特許を却下した。
しかしそれは、多くの女性が不必要に苦しんだ後のことだ。
貿易協定は、特許権濫用の機会をさらに増やすことになる。
失業と低賃金のスパイラルにのまれる労働者
不安はつのる。
リークされた交渉記録は、読みようによっては、TPPによって米国の銀行がリスクの高い金融派生商品を世界中に売りやすくなると示唆している。
おそらくわれわれは、今回の大不況に導いたのと同様の危機に遭遇させられることになる。
それにもかかわらず、TPPや類似の協定を熱烈に支持する人々も存在し、そのなかにはエコノミストも多い。
何を根拠に彼らが支持しているかと言えば、間違いが明らかになったニセモノの経済理論である。
これらがいまだ流布している理由の大半は、富裕層の利益に役立つからである。
自由貿易は、経済学の初期段階においてはその中心的な信条であった。
世の中には勝者と敗者が存在するが、この理論によれば、勝者は常に敗者を補償することが可能だ。
だから、自由貿易はWIN-WINの関係を築くことができる。
いや自由であればあるほど双方のプラスになるという。
この結論は、しかし残念ながら、おびただしい仮定に基づくもので、それらの多くは単なる間違いである。
たとえば旧来の理論ではリスクを無視し、労働者は職種の間で途切れることなく移動できると想定している。
ここでは完全雇用が当然と考えられており、グローバリゼーションによって解職された労働者は、すぐに生産性が低い業種から生産性が高い業種に移れるとされている。
(低生産性のセクターがそれまで栄えていたのは、単純に外国の競争相手が関税やほかの貿易制限によって食い止められていたからだ)。
しかし失業率が高いときには、そして特に失業者の過半数が長期にわたって失業している場合は、(これが今の状況だが)そうのんびりとはしていられない。
米国では現在、2000万人程がフルタイムの仕事を望みながらもそうはなっていない。何百万人もが求職活動をやめてしまっている。
したがって保護された生産性が低い業種の雇用から外れた個々人が、ついには巨大な失業人口のなかの生産性ゼロ層の一員となる現実的な危険がある。
高い失業率が賃金を下落させる圧力となり、これは被雇用者さえ傷つけることになる。
それでは、なぜ経済が想定通りに動かないのかという議論になる。
はたしてそれは総需要の欠如によるものなのか。
それとも銀行が、投機や市場操作にもっぱら関心を示して、十分な資金を中小規模の企業に与えていないためなのか、と。
しかしその理由がどうあれ、現実的にこれらの貿易協定には失業を増加させる危険があるのだ。
「長期的には、われわれはみな死ぬ」
状態がこれほどひどくなった理由の1つは、われわれがグローバリゼーションへのマネジメントを間違ってしまったためだ。
米国政府の経済政策は仕事のアウトソーシングを奨励している。
海外の安い労働力によって生産された製品は米国に安価で引き取られる。
したがって米国の労働者は、自分たちが海外の労働者と競争しなければならないこと、また、自分たちの交渉力が弱体化していることを理解している。
これが、正規雇用で中流層の男性労働者の所得が40年前よりも低い理由の一つである。
今日の米国の政治には、これらの問題が複合している。
最善の状況でも旧来の自由貿易理論が述べていることは単に、勝者は敗者を償うことができると言うだけで、償う、とは言っていない。
償ったことはないのだから実際はその逆である。
貿易協定の推進者は、米国が競争力を保持するには賃金カットだけではなく、税金や、特に一般レベルの市民にとって利益となる計画への支出もカットされるべきだとしきりに話す。
彼らは、短期的な苦痛を堪え忍ぶことが、全員の長期的な利益になると述べる。
しかし、ケインズがほかの文脈で指摘して有名になった言葉の通り、「長期的には、われわれはみな死ぬのである」。
この場合、貿易協定がより早くより大きな成長を導くという証拠はほとんどない。
TPPを批判する者が数多いその理由は、TPPのまわりを固めるそのプロセスや理論も破たんしているからだ。
反対者が続出するのは米国国内だけではない。アジアも同じで、会談は行き詰まってしまった。
TPPの一括承認手続きの権限を大統領に与えることに絶対の反対を訴えているリーダーである上院多数党院内総務のハリー・リード(民主党)は、
われわれ全員にしばしの休息をもたらしたようだ。企業利益のために99%が犠牲となるのが貿易協定だと考える人々は、この小競り合いに勝利したようだ。
しかし、多くのアメリカ人の生活水準を上げるための、貿易政策や、より一般的に言えば、グローバリゼーションの設計を保障するための大規模な戦いが残っている。
この戦いがどうなるかは、いまだ予測できない。
「トリクルダウンによって潤う」は神話
この格差シリーズで私は、2つの点を強調してきた。
最初のポイントは、今日の、米国における甚だしいレベルの格差と、ここ30年間でのその増大が、一連の政策、計画、法律の累積された結果だということだ。
仮にも大統領自身が、格差は米国にとって最優先の課題であると強調したからには、あらゆる新規の政策、計画、法律が、その格差に与えるインパクトの視点から吟味されなければならない。
TPPのような協定は、この格差の重要な一因となってきた。
企業は利益をあげるだろうし、保証はできないが、GDP(国民総生産)が従来の計算で言えば増える可能性すらある。
しかし普通の市民の幸福は損害を受けそうだ。
そしてこの事実は、私がこれまで繰り返し強調してきた2つ目のポイントに導く。
トリクルダウン経済学(※)は神話だ。
企業を太らせることは、TPPのように、必ずしも中間層を助けることにならない。
ましてや最下層の人々にとっては言うまでもない。
(※)トリクルダウン経済学:「トリクルダウン(trickle down)=したたり落ちる」の意。大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、ひいては国民全体の利益となる」とする仮説。主に新自由主義政策などの中で主張される。
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・ 世界通貨戦争(17)米国TPPはジャイアン
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・ 世界通貨戦争(20)TPPは日米不平等条約
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