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ピケティ、拡大の一途をたどる格差:NYタイムス

 21世紀の資本論

拡大の一途をたどる富の格差   NYタイムス 4/7 現代ビジネス

  富は平均化されるという説は間違い

これからの数年、あるいは数十年にわたり格差が拡大し続けるとしたら、(世界は)どうなるだろうか。
たとえば、上位1%の富裕層の所得が、現在の国家の収入の5分の1から4分の1になったとしたら、あるいは半分になったとしたらどうなるか?

パリ・スクール・オブ・エコノミクスのトマ・ピケティ(Thomas Piketty)教授の説を信じるなら、これは将来的にあり得るという程度のことでなく、その可能性はかなり高いようだ。

先ごろ米国の書店に並んだばかりのピケティ教授のエッジの効いた近著、『21世紀の資本論(Capital in the Twenty-First century:未邦訳)』の中で、彼は世界経済史を斬新かつ広範な視点から分析し、市場経済の仕組みに関する多くの中核的な教義に疑問を投げかけている。

もっとも驚くべき新説は、格差の拡大傾向は最終的に安定化し、自然にやわらぐといった、長年にわたって支持されてきた自由市場資本主義の教義は間違いだという見解だ。
やわらぐどころか、さらに多くの富や経済的諸力が一握りの運のいい者に経済的諸力が集中し、かなりの長期間にわたって維持されるのがほぼ確実だと言う。

  格差拡大の流れは政治的措置でも変えられない

所得格差は「われわれの時代を決定づける課題である」と主張するオバマ大統領のような政治リーダーが本腰で取り組めば、その傾向は減速し、もしかしたら流れを変えることができるかもしれない。

ピケティ教授は「政治的措置によって、この流れを変えることは可能だ」と私に語った。
しかし教授は、これまでの歴史を振り返ると「普通選挙権と民主的制度は、システムを反作用させるのに充分ではなかった」とし、政治的措置が実際に流れを変えるという希望はあまり持てないと付け加えた。

容赦なく拡大する格差に関する教授の説明は、おそらく、今日世界がどう動いているかについて多くのアメリカ人がもっている直感的な理解と一致しているのではないだろうか。

しかし、20世紀後半に主流となり、今日なお幅を利かせている経済通説に対抗するのは容易なことではない。
この経済通説は、ベラルーシ出身のアメリカ人経済学者サイモン・クズネッツが冷戦初期に構想したものだ。

クズネッツは所得申告書の納税データを丹念に整理し、米国で初めて所得税が導入された1913年から第二次世界大戦直後の1948年までの間の上位10%のアメリカ人富裕層の所得が、国家収入に占める割合は、半分弱から約3分の1へと大きく減少したと推定している。

ピケティ
抑制しがたい格差
世界中どこを見ても、所得と富の集中度が高まりつつある。これは米国のトップ投資家や企業幹部の、単に上昇していると言うだけでは済まないような莫大な報酬によって促されている。
先進諸国では投下資本のリターンが経済成長率を上回るため、富裕層が手にする経済的見返りの割合がさらに拡大することになる。


クズネッツは、1954年にデトロイトで開かれた米国経済学会の年次総会の会長講演で、後に「クズネッツ曲線」として知られるようになった見解を「経済成長の初期段階である産業革命前から産業文明への移行期おいて、格差はもっとも急速に広がった。その後しばらく安定し、やがて後期になると格差は縮小した」と概説している。

  富の分配意識に興味が向かなくなった背景

クズネッツの結論は、当時、ソビエト連邦と対立していた米国における資本主義の士気を大いに高めることになった。
それは、国が強力な介入をしなくても、市場経済がその成果を平等に分配できることを示唆していたからだ。

これにより、以後、経済学者たちは、富の分配意識の問題にはほとんど関心を示さなくなった。
経済理論は、経済のバランスがとれていれば賃金と利益は同じペースで上昇するものと想定され、関心はもっぱらビジネス・サイクルの上下動に向けられるようになった。

デビッド・リカードやカール・マルクスのような19世紀の思想家たちを駆り立てた所得や富の分配に関する深い問題意識は、成長のダイナミックスを誤って理解していたためとされた。
そしてそれは、「レ・ミゼラブル」や「オリバー・ツイスト」を生んだ、とてつもない富と悲惨な生活が並存する時代がもたらした、悲観主義によって膨らんでいったものと見なされた。

もちろん今日では、19世紀の悲観主義者が完全な誤りだったとは決して言えない。

現在のアメリカから歴史を振り返ると、クズネッツ曲線はターゲットから外れているように見える。
何年にもわたって賃金が抑制された状態にもかかわらず、国民所得に占める利益の割合は1930年以来最大となっている。
経済のパイで上位10%のアメリカ人富裕層の富の割合は、南北戦争後のいわゆる「金の時代」の最盛期である1913年よりも大きいのだ。

  経済を上回る富の成長速度

この現象は、アメリカに限ったものではない。
多くの先進諸国においても、21世紀の経済的な見返りの分配はあきらかに19世紀の特徴に似ている。

ピケティ教授は、(著書の)『21世紀の資本論(Capital in the Twenty-First century)』の中で、富の分配を再び分析の中心に据えた、資本主義の一般理論を展開している。
グローバルな所得分配の専門家であるニューヨーク州立大学大学院センターのブランコ・ミラノヴィッチは、この本を「経済思想の流れを変える一冊」と称した。

クズネッツの分析と同様に、ピケティの分析もデータに基づいている。
ただしピケティの場合は、クズネッツよりはるかに多くのデータ、つまり、10数カ国のデータだけではなく、何世紀にもわたるデータを分析している。
彼はその中から、単純な歴史的規則性を抽出した。大きく分けて、機械、土地、金融手段、住宅、その他の「資本」からのリターン率は、通常、経済成長率より高いという事実だ。

それは、経済が本格的に成長していなかった産業革命以前に特に当てはまるが、19世紀に経済成長がはじまった後も依然として見られた。

これは、富からの収入は賃金より速く成長することを意味している。
資本からのリターンは再投資されるため、受け継がれた富は経済より速く成長し、僅かな者に多くの富が集中することになる。
この傾向は、資本の所有者が収入の大半を消費にあて、それほど多くを再投資しなくなるまで続く。
(※ 北風:利益の再投資(生産では再生産)は最も基本的で重要な原理。金融による信用創造(与信融資)がこの拡大再循環を保証する。
資本家一般が収入の大半を消費に当てて再投資しなくなることは一般理論としてはあり得ないため、正常な資本主義経済で賃金と利益は同じペースで上昇するもあり得ない。)

クズネッツの誤解を招く曲線は、こう考えれば容易に理解できる。
彼は、歴史の中で例外的な時期のデータを使ったのだ。

例外的とはつまり、大恐慌、ふたつの世界大戦、そして高いインフレ率が世界の資本ストックの大きな部分を破壊した時期に当たる。
第二次世界大戦後の急成長と富裕層に課された高い税率
も相まって、1970年代までには収入の配分が平坦化されたわけだ。
(※ 北風:戦時統制経済と国家社会主義政策、国債の大量発行、戦後のインフレを思い起こす。)

  21世紀末、富の集中は世界収入の7年分となる

しかし、この例外的な時代はとうの昔に終わり、軌道は修正されている。

ピケティの推定によると、膨大な収入と富が集中した時期である「金の時代」(※第一次大戦前)の世界の私的資本は、世の中の収入の約5年分以上にもなったという。
1950年までには3年分以下に低下したものの、2010年までに再び4年分に戻っている。
今世紀末までに、それは約7年分になるだろうとピケティは予測している。

アメリカ人は、この説明は米国には当てはまらないと言うだろう。
なぜなら、アメリカの富の多くは稼ぐものであり、相続されるものではないからだ。
アメリカの富豪とは、マイクロソフトのビル・ゲイツやゴールドマンサックスのロイド・ブランクフェンのような「創造者」であり、彼らは社会への経済貢献によって報酬を得ているというわけだ。

(それに対して)ピケティは、アメリカの企業のトップや投資家の巨額の報酬は、本当に彼らの貢献を反映したものなのか、という疑問を投げかけた。
ちなみに、彼らの報酬は1980年以来、上位の収入層の税率が下がったことでさらに拡大した。
加えて留意すべきは、米国の相続による格差が低くなっているのは、おもに、独立当時300万人だった人口が今や3億人へと急増し、とてつもない経済発展を推進したからだと指摘した。

しかし、この人口急増は繰り返されることはない。
国家収入に占める資本シェアの主要な部分となっている企業利益の割合は、すでに急上昇
している。

つまりこれは、米国での将来の格差がふたつの力で推進されていくことを意味している。
まず、国家収入に占める資本所有者の富の割合は拡大し続ける
そして残りの労働収入のうち、所得スケールの頂点に立つ企業幹部や高い報酬を得ているスターたちの取り分も増大し続けるということだ。

  この流れを変える手段はあるのか?

これに対する、政治的に可能な解毒剤はあるのだろうか。
ピケティ教授は、万人のための教育という標準レシピでは、相続される富をますます拡大させている強力なパワーにとても太刀打ちできないとする。

もちろん、それを抑えるうえでもっとも実行可能な手段は税金だ。
経済成長率と釣り合いがとれるよう、累進課税によって税引き後のリターンが資本に還流するのを抑制するのだ。

しかし、政治的に「収入をバランスよく平等に分配するための財務上の諸制度は、大きなダメージを受けてきた」とピケティ教授は私に語った。

富の所有者は弱者集団ではないから、たとえ置き去りにされた人民主義者の衝動的行為から、資本主義を守るために必要であったとしても、そうした政治的対処の動きには断固抵抗する。

ピケティ教授は、20世紀初頭のフランスを例に挙げて、このように言った。

フランスは民主主義であったにもかかわらず、そのシステムは信じられないような富の集中と格差に対応しなかった。エリートたちは無視を決め込んでいたのだ。
そして、何もかも自由市場が解決してくれると主張し続けた


もちろん、そうはならなかった。

(文:エドワルド・ポーター / 翻訳:松村保孝)
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ピケティ、資本主義と民主主義:エドソール

 ピケティ

 2013/1/27の記事「金持ちは税金を、労働者は公正な賃金を:クルーグマン」ではクルーグマンによるピケティの紹介を掲載しました。

 資本主義経済は放置すれば資本のみが肥大化して労働者との格差が無限に拡大する。過剰蓄積が勤労階級の窮乏化を招くことで循環恐慌を作り出す。
 このこと自体は早くも19世紀末から現象的に確認されてきたことだ。

 「経済成長が富を作り、いずれその富が循環して勤労大衆の豊かさに波及する。」などという資本家に都合の良い「俗説」は何の根拠もない。
 300年にわたる税務データを分析した結果はその逆であることを示している。
 ピケティらは両大戦間と戦後冷戦期が資本の正常な「発展」としては「異常な期間」であったこと。
 正常な資本主義の「発展」は経済成長以上の相乗的な資本蓄積を必至とするので、格差は無限に拡大し続け生活水準の下落と恐慌に至ること。
 を明らかにした。

 「国民経済」は強力な所得の再分配によって、公正を図ることによって持続する。
 そうでなければ、放置すれば国民経済は崩壊する。

   資本主義 vs民主主義
「資本市場が完全であればあるほど格差は拡大する」
トーマス・ エドソール(コロンビア大学ジャーナリズムスクール教授) NYタイムス 2/21 現代ビジネス

  格差拡大は避けられない

フランスのある新聞が「政治的、理論的ブルドーザー」と評したトマ・ピケティの新刊書『21世紀の資本論』は、貧富の格差が開くのは、自由市場資本主義の避けられない結果だとして、左派、右派両方の正説に真っ向から挑んでいる。

それだけでなく、パリ・スクール・オブ・エコノミクス教授のピケティは、資本主義に内在するダイナミクス自体が、民主主義社会を脅かす強大な力を駆り立てると主張する。

ピケティによると、資本主義は、近代国家および近代化しつつある国家の両方に、ジレンマを突きつけることになる。
つまり起業家たちは、労働力しか持っていない者に対し、どんどん優勢になってゆくのだ。
新興国は短期的にはこの論理を打ち破ることができるが、長期的には、「没収なみの課税率」が導入されない限り、「報酬を決める者が自分の報酬を設定するのだから、もう際限がない」とピケティは見ている。

ピケティの本は4カ月前にフランス語で出版され、3月に英語版が出る予定だ。
この本の中でピケティは、従来型の支出、課税および規制に関するリベラルな政府の政策では、格差の緩和を実現できないとしている。
本のほかに、彼は一連の講義を行い、それをウェブ掲載し、自分の説をフランス語と英語で概説している。

ピケティ1
図1:税引き後の収益率vs成長率(トマ・ピケティ)

保守的な読者はピケティの本を読んで、政府の介入による歪曲から解き放たれた自由市場が、「経済発展の成果をすべての人に分配する。これが、過去2世紀にわたり労働者の立場が大きく改善した秘密だ」という有名なミルトン・フリードマンの言葉に異議を唱えるものだと理解するだろう。

しかし、そうではない。
ピケティは、格差はまさに望ましい形で機能している市場を反映して拡大するものだと言っているのだ。
これは、市場が不完全であることとは何の関係もない。
資本市場が完全であればあるほど、資本収益率は経済の成長率より高くなる。
そして、資本収益率が高いほど、格差も大きくなる
というわけだ。

すでに議論を巻き起こしているジャーナル・オブ・エコノミック・リテラチャー誌の6月号では、世界銀行調査部門のエコノミストであるブランコ・ミラノヴィッチが20ページにわたる書評で以下のように言明している。

「私は、トマ・ピケティの新刊書『21世紀の資本論』を、過去数十年に書かれた中でもっとも優れた経済書のひとつだと言うことを躊躇する。
そうではないと考えているわけではないが、好意的な書評があまりにも多いこと、さらに、今を生きている人は往々にして最終的に何が大きな影響を与えるかを適切に判断できないものだということから、私は慎重なのだ。
この2つの注意点を踏まえたうえで、今、経済の考え方を大きく変えるような本の1つが現れたと私は言いたい」。

  過去30年で資本家に有利に変化した所得分配

ピケティの本には、鍵となる議論がいくつかある。
そのひとつは、第一次世界大戦開戦の頃からはじまり、1970年代初頭まで60年間にわたり西欧諸国で見られた格差縮小への流れは特異なものであり、再び起こる可能性は非常に少ないということだ。
この期間は、格差拡大という、より根源的にあるパターンの例外的現象が見られのだとピケティは言う。

ピケティによると、繁栄を極めた過去60年間は、2つの世界大戦と世界大恐慌の結果なのだ。
この間、富と所得のピラミッドの頂点に立つ資本家は、一連の壊滅的な打撃を受けた
この打撃には、市場が崩壊したことで失墜した信頼性と権威、第一次世界大戦、第二次世界大戦の両方がヨーロッパ中の資本にもたらした物理的破壊、戦争資金を調達するための、特に高額所得者を対象とした増税、債権者の資産価値を減退させた高いインフレ率、英国とフランス両国における主要産業の国営化、そして、元植民地の国々における産業と資産の収用などが含まれる。
(※ 北風:戦時統制経済、国債発行、戦後のインフレを思い起こす。)

同時に、世界大恐慌の結果、米国ではニューディール政策の協調体制が生まれ、それが反政府の労働運動を強化した。
戦後は大きな成長と生産性の向上が見られ、労働組合運動と与党である民主党の強い支援をバックに、労働者たちはその恩恵を受けることになった。
リベラルな社会政策、経済政策への支持があまりに強かったため、2度の選挙に楽勝した共和党大統領であるドワイト・D. アイゼンハワーでさえ、ニューディールを攻撃してもムダだとの認識をもっていた。
もし、社会保障制度や失業保険、労働法や農村プログラムの廃止などを試みる政党があったとしたら、政治史の中で、その政党の声をふたたび聞くことはないだろう」とアイゼンハワーは語っている。
(※ 戦後の米ソ冷戦による共産主義との対決は、同時に一定の労働者保護と賃金上昇、生活向上を必要とした。)

1914年から1973年にかけての60年間は、経済成長率が税引き後の資本収益率を上回るため、過去、将来において突出した時期となっているとピケティは指摘する。
それ以後は、経済成長率が低下する一方で、資本収益率の方は第一次世界大戦前の水準にまで上昇している

書評の中で、ミラノヴィッチは以下のように述べている。

「ピケティの説で鍵となっている格差の関係は、もし資本収益率が恒久的に経済成長率を上回ると、その結果、所得の分配機能は資本に有利なかたちに変わるというものだ。
そして資本的収入の集中度が労働からの収入の集中度より高くなると(ほとんど議論の余地のない事実)、個人所得の配分格差は広がることになり、実際、これが過去30年間に起こってきたことなのだ」。

ピケティは、この重要なポイントを示すために図1のグラフを作成している。

このプロセスを止める唯一の方法は、富に対してグローバルな累進課税をすることだと彼は主張する。
そうした課税がない国に資産を移さないようにするため(そのほかの目的もあるが)、それはグローバルなものでなければならない。
このスキームでは、グローバルな税金が富の集中を制限し、所得が資本に流れるのを抑制するわけだ。

ピケティは、通常は売却されるまで課税されない株式や債券、不動産、そのほかの資産に対し、年間の累進税を課すことを提案している。収益配分の率や算出方法については言及していない。

  保守派の政策と対立するピケティの論説

ピケティの診断は、近年、国民所得に占める労働からの収入の割合が低下し(図2を参照)、資本からの割合が上昇しているのを説明するうえで役立つものだ。

またピケティの分析は、世界中で見られる失業者数の上昇の解明にも役立つ。
国連機関であるILO(国際労働機関)は最近、2012年から2013年の間に失業者の数は500万人増加し、昨年末には約2億200万人に達したと報告している。
さらにその数は、2018年までに2億1500万人に達すると予想されている。

ピケティが提唱する富裕税による解決策は、トップ層の税率を下げ相続税を廃止するという、これと正反対の公共政策を唱える近年の米国保守派たちが標榜する原則と、真っ向から対立するものだ。これはまた、投資誘致の目的で意図的に低い税率を制定している諸国の利益にも反する。このようにグローバルな富裕税が実行不可能であるということ自体、格差拡大が不可避であるとするピケティの議論を支持強化するものと言えよう。

リベラル派の中にも、同様にピケティの説を歓迎しない者がいる。

ピケティ2
図2:非農業事業セクター:労働比率(米国労働省)

経済政策研究センター(Center for Economic and Policy Research)の創立者の1人であるディーン・ベイカーは、私への電子メールの中で、ピケティは「あまりにも悲観的過ぎる」と書いている。
ベイカーは、格差を改善するうえで役立つと思われる、これよりはるかに穏健な措置はたくさんあると主張する。

「米国で、私が支持する金融取引税や、IMF(国際通貨基金)が提唱する金融活動税などといった金融関係の税金が導入されることは、本当にあり得ないことなのだろうか」。

ベイカーはさらに、われわれの資産の多くは知的資産に密着しており、特許法の改革によって薬品その他の特許の価値を制限し、同時に消費者コストを下げることが出来ると述べている。

経済政策研究所(Economic Policy Institute)所長のローレンス・ミシェルは、ピケティに関する見解を尋ねる私の電子メールに対して、以下のように返答している。

「われわれは、この現象は賃金上昇の抑制と関係があるので、幅広い賃金上昇をもたらす政策が対処手段となるとの見解をもっている。
そしてこうした政治経済下では、これらの税金を実施するための政治力を得るために、強固な労働運動など、一般市民や組織の力を動員することも必要となる」。

より中道派であるMITの経済学者ダロン・アジェムオールは、ピケティがデータを慎重に入手していること、および彼が格差を形成する富の分配よりも経済の力と政治的確執を重視している点を評価している。
アジェムオールは電子メールの中で、さらに以下のように続けている。

「彼の解釈には、賛同できない点もある。
ピケティは“資本家”経済には、本来、大きな格差を生む性向があり(私は資本家という言葉を好まない)、また、ある種の特殊な出来事(世界大戦、世界恐慌およびそれに対応する政策)が、一時的に格差を縮小させたと主張する。
そして、収入格差および資本と労働の間の格差の両方が「正常な」水準に逆戻りつつある、としている。

私は、データに基づき、このような結論を導き出すことはできないと思う。
そこに示されているのは単なる下降、上昇のパターンに過ぎず、世の中では、このほかにも様々なことが起こっている。それはピケティが言っていることと辻褄が合うと同時に、格差の拡大を生んだある種の技術変化や不連続性(またはグローバリゼーション)とも一致するもので、それらは向こう数十年間に安定化される、または流れを逆行させるものなのかも知れない。
さらに、それは政治的な力の変化の動向とも合致するもので、これが先進諸国で格差が拡大した主要な要因となっている。
我々が目にしているのは、ピケティがひとつだけ取り上げて特筆する、ショックの後に起こる平均を元に戻す動きではなく、むしろ、いくつかの異なる大きなショックが原因となる、いくつかの異なるトレンドの一部分なのかもしれない
(※ いわゆる「懐疑論」てのは何も生み出さない。)

  全員を資本家に変えるという格差への改善策

一方、ピケティに拍手喝采を送るリベラル派も少なくない。

格差、労働組合、雇用パターンの専門家であるハーバードの経済学者リチャード・フリーマンは、私宛ての電子メールで以下のように書いている。
「私は100%ピケティに同意する。そして、労働に見られる格差の多くは、高所得者がストックオプションおよび資本の所有権を通して収入を得ていることに起因するという点を付け加えたい」。
(※ 誰も高級専門職など論点にしていないのですが、困ったものです。)

フリーマンと、ラトガース大学の労働、管理関係学部教授のジョセフ・ブラシとダグラス・クルースは、2013年の共著『市民のシェア:所有権を再び民主主義へ(The Citizen’s Share: Putting Ownership Back into Democracy)』の中で、グローバルな富裕税の代替策があると主張する。
彼らは、「改善の方法は、米国ビジネスの構造を、労働者が、かなりの資本所有権からの利益と意味のある資本的収入、および利潤分配で賃金を補えるような形態にするよう改革することだ」としている。
(※ どうも派遣、パート、季節労働者、清掃人夫などは全く頭に無いようである。国民経済では消費性向の高い下層労働の可処分所得こそが重要なのにである。)

つまり、すべての人を資本家にしようと言うわけだ。

ピケティは、労働者の所有権を解決策とは考えない
彼は、一般に小口の改革は、今世紀の残りの期間1~1.5%くらいに留まると見られる世界の経済成長に、わずかな効果しか生まないとして、それらを退けている。

ピケティはほかの多くの学者とともに、グローバルな経済システムが、ロボット工学、労働市場の空洞化、アウトソーシング、グローバル競争などの現象にどのように対処するかに関して重要な疑問を投げかけている。

彼の診断は非常に暗いものだ。
彼が政治的に非現実的だと認めるところのグローバル富裕税の導入が期待できない中、米国およびその他の先進諸国は、格差が、深刻な社会崩壊をもたらしかねない水準にまで達する道を辿っていると見ている。

ピケティの説にある問題、および説自体に対する最終的判断は、時間とともに明らかになるだろう。
なぜなら、もし彼が主張することが正しいなら、格差はさらに広がり、先制的措置をとることがさらに困難になるからだ。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
※ トマ・ピケティ
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