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もうすぐ北風が強くなる

プーチン3/18演説:クリミアの復帰について(全文翻訳)

 プーチン

 3/18のプーチン演説については、先に3/19にノーボスチ通信社がまとめた声明要旨を「ロシアぶろぐ」氏の翻訳により掲載しました。
 「プーチン3/18声明:クリミアとロシアの団結

 3/18のプーチン氏演説は上下両院の全議員、地方首長、市民団体などを一同に集めて、クリミアのロシア復帰とそれに伴う西側の制裁という損失を踏まえながらもクリミア住民を含むロシア国民の一致と団結を呼びかけたものでした。
 クリミア住民とロシア国民の意志、民族問題、ウクライナの極右勢力、西側との国家間問題などについての大変に詳細な説明を行っています。
 だが、この演説(声明)はこれらにに尽きるものではありません。

 ウクライナ、そしてクリミアとロシアについての説明が、同時に旧ソ連の対外方針、ソ連崩壊後の今に至る対外方針を踏まえて、現在の新たな世界情勢つまり米国覇権の衰退と新興国諸国の台頭といった欧米帝国主義の相対的な弱体化のなかで、ロシアにとっての対外戦略はどのようなものであるか。
 このことを初めて、基調的に解説したものである点で極めて重要なものとなっています。

 つまり、ロシアのこれからの対外方針を方向づける声明として、記憶されるものとなるでしょう。
 旧共産圏ほどの欧米に対抗する力はないロシアですが、BRICSなど新興国諸国の台頭と欧米の相対的な弱体化のなかで、世界の多極化を推進し、加速する牽引力となることは間違いのないところでしょう。
   
 このプーチン演説の解題といってよいルキヤノフの小論「ロシアの非欧米転換は世界の多極化を牽引する」と思います。

 駐日ロシア大使館のHPに全文翻訳が掲載されていたので転載します。
 全文翻訳で読んでおく価値は十二分にあると考えます。
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プーチン声明

   ロシア議会上下院、地方首長、市民団体の代表に向けたV.V.プーチン大統領の演説(クリミアの復帰に関して、全文)  2014年3月18日、クレムリン 3/25 駐日ロシア連邦大使館

こんにちは、尊敬する上院議員、尊敬する下院議員!
尊敬するクリミア共和国とセバストポリ市の代表者たち!
ロシア国民!
彼らは、クリミアとセバストポリ市の住民は、ここに、私たちの間にいます!

尊敬する友人たち、今日私たちは、私たち全員にとって極めて重要な意味を持ち、歴史的意味を持つ問題でここに集まりました。
3月16日、クリミアで住民投票が行われました。住民投票は民主的手続きと国際法の規定に完全に合致したものでした。

有権者の82%以上が投票に行きました。
96%以上がロシアへの復帰に賛成票を投じました。この数字は極めて説得力のあるものです。

どうしてこのような選択がなされたのかは、クリミアの歴史を知れば、またクリミアにとってロシアがどのような意味を持ち、ロシアにとってクリミアがどのような意味を持つのか知れば理解できます。

クリミアでは文字通りすべてに私たちの共通の歴史、共通の誇りが息づいています。
ここには聖ウラジーミル公が洗礼を受けた古代のケルソネス市があります。
彼の宗教的偉業―正教の受け入れ―はロシア、ウクライナ、ベラルーシをひとつに結びつける共通の文化、価値観、文明の基盤となりました。
クリミアにはロシア兵士の墓地があります。1783年、その兵士の勇敢な戦いにより、クリミアはロシア帝国の傘下に入りました。
クリミアといえばセバストポリ市です。伝説の都市、偉大なる運命の都市、要塞都市であり、ロシア黒海艦隊の故郷です。
クリミアといえばバラクラヴァ市とケルチ市であり、マラコフ・クルガンの高地とサプン・ゴラの高地です。
このひとつひとつの場所が私たちにとっては神聖であり、ロシアの軍事的栄誉の象徴であり、大いなる武勲の象徴です。

クリミアは様々な民族の文化と伝統のユニークなるつぼでもあります。
その意味でクリミアはロシア本土とよく似ています。
ロシア本土もまた、数世紀の間、ひとつとして民族が消失したり溶解したりしたことはありません。
ロシア人もウクライナ人も、クリミア・タタール人もその他の民族も、皆が自分たちの慣習や伝統、言語や宗教を守りながらクリミアの地で仲良く暮らし、働いてきました。

ちなみに、現在220万人いるクリミアの人口のうち、ほぼ150万人がロシア人であり、35万人が主にロシア語を母語だと考えるウクライナ人です。
29万から30万人がクリミア・タタール人であり、その大部分が、住民投票から分かる通り、ロシアを志向しています。

確かに、クリミア・タタール人が、ソビエト連邦のある他の民族と同様に、残酷な不平にさらされた時期もありました。
ひとつ言っておきます。当時、様々な民族の数百万人が弾圧を受けましたが、その筆頭は当然ロシア人でした。
クリミア・タタール人は故郷の地に戻ったのです。
クリミア・タタール民族の更生プロセスを完遂させるのに必要なすべての政治的・法的決定がなされるべきであり、彼らの権利と名誉を完全に回復させる決定がなされるべきだと思います。

私たちはクリミアに住むすべての民族に敬意を抱いています。
クリミアは彼らの共通の家であり、故郷です。
ですから、これはクリミアの住民も支持していますが、クリミアにロシア語、ウクライナ語、クリミア・タタール語の3言語が国語として同等に存在することが正しいのです。

尊敬する同僚たち!
人々の心の中、意識の中では、クリミアは常にロシアの不可分の一部でした。
真実と正義に基づいたこの確信はゆるぎないものであり、世代から世代へと受け継がれてきたものです。
この確信の前には時間も情勢も無力であり、私たちが体験してきた、20世紀を通して私たちの国が体験してきた劇的な変革でさえもすべてが無力です。
革命後、ボリシェビキはさまざまな理由から、歴史的にロシア南部であった領土の大部分をソビエト連邦ウクライナ共和国に編入しました。
ボリシェビキは神の裁きを受けることでしょう。
この決定は住民の民族構成を考慮せずになされたものであり、それが現在のウクライナ南東部です。
そして1954年、さらにクリミア州もウクライナ共和国に引き渡すという決定がなされました。
同時に、当時は連邦直轄都市だったはずのセバストポリ市も引き渡されました。
これを発意したのはソビエト連邦共産党のトップであったフルシチョフ本人です。
何が彼を突き動かしたのか―ウクライナ特権階級の支持を得たかったのか、はたまた30年代のウクライナでの大弾圧の罪を償いたかったのか―それは歴史学者が調べることでしょう。

私たちにとって重要なのは別の視点です。
この決定は当時の憲法の規定にさえ明らかに違反していました。
非公式に内輪で勝手に決めたことなのです。
全体主義国家では、クリミアやセバストポリ市の住民が意見を尋ねられることは当然ありませんでした。ただ事実を突き付けられたのです。
当時でも、人々は当然ながら、どうして突然クリミアがウクライナに編入されたのかと疑問を持ちました。
しかし正直なところ、―皆知っていることですから、率直に言いましょう―、正直なところ、この決定は単なる形式的なものだと捉えられていました。
なにしろ、領土はひとつの大きな国の枠内で引き渡されたのです。当時は、ウクライナとロシアが一緒でなくなり、別々の国家になることなど想像することもできませんでした。
しかし、そうなったのです。

信じられないと思われたことが、残念ながら現実のものとなりました。
ソビエト連邦は崩壊したのです。
事態の進展はあまりにも急激で、当時起こっていた出来事やそれがもたらす結果の重大性を完全に把握している国民はほとんどいませんでした。
ロシアでもウクライナでも、さらに他の共和国でも、人々の多くはそのときにできあがった独立国家共同体(CIS)が新たな国家の枠組みになるものと期待していました。
何しろ共通の通貨を持ち、ひとつの経済圏を形作り、共通の軍隊を持つと約束されていた
のです。
しかし、それは単なる約束に終わり、大国は消失しました。
そして、クリミアが突然として外国のものになってしまったとき、その時になってロシアはただ盗みにあったのではなく、強奪されたのだと実感したのです。

しかし、ロシア自身も「主権のオンパレード」を始動させたことでソ連崩壊を促進しましたし、ソ連崩壊の手続きではクリミアのこと、黒海艦隊の主要基地であるセバストポリ市のことを忘れてしまっていた事実は率直に認めなくてはなりません。
何百万人ものロシア人がひとつの国で眠りにつき、目を覚ますと外国にいたのです。
彼らは一瞬にして旧ソ連共和国で民族的少数派になってしまったのです。
ロシア人は世界最大のひとつ、世界最大と言ってもいいくらいの分断された民族となったのです。

現在、それから長い年月が過ぎ、つい最近になってクリミアの人々が、1991年のあのとき、自分たちは袋に入ったジャガイモのようにあちらからこちらへと引き渡されたのだと話しているのを聞きました。
これには同意せざるを得ません。
あのとき、ロシアはいったいどうしたのでしょう?ロシアは?
うなだれて、受け入れ、この屈辱をぐっと堪えたのです
私たちの国はひどい苦境にあり、自国の利益を守ることさえできない状態でした。
しかし、人々はこのひどい歴史的不正を受け入れることはできませんでした。
この間、国民も多くの社会活動家も何度となくこの問題を提起し、クリミアはロシア固有の土地であり、セバストポリ市はロシアの都市だと言ってきました。
それはよく分かっていましたし、心で感じていることでした。
しかし現実に立脚して、新たな基盤のもとに独立ウクライナとの善隣関係を築かなければなりませんでした。ウクライナとの関係、兄弟であるウクライナ国民との関係は、一切の誇張を抜きにして、これまでも、そしてこれからも私たちにとって最も大切で重要なものです。

今日となっては率直に話すことができます。
皆さんと2000年代初頭に行われた交渉の詳細を共有したいと思います。
当時、ウクライナのクチマ大統領からロシア・ウクライナ国境画定のプロセスを加速させるよう私に要請がありました。
当時までこのプロセスはほとんど進んでいませんでした。ロシアはクリミアをウクライナの一部と認めたようであり、それでいて国境画定交渉は行われていませんでした。
このプロセスが困難であることは分かっていましたが、私はすぐにロシア側の省庁に作業を活発化するよう指示しました。
国境画定に合意することで、私たちが実質的にも法的にもクリミアをウクライナ領として認めようとし、それによりこの問題に終止符を打とうとしていることが誰にでも分かるようにするための国境画定作業です。

私たちはクリミアの問題だけではなく、アゾフ海海域とケルチ海峡の国境線画定といった極めて難しい問題でもウクライナに譲歩しました。どうしてでしょうか?
ウクライナとの良好な関係が私たちにとっては最も重要なものであり、それが行き詰った領土問題の人質になっていてはいけないという思いからです。
しかしこのとき、ウクライナが今後も当然私たちのよき友人であり続けると考えていましたし、特にウクライナ南東部とクリミアに住むロシア人やロシア語を話すウクライナ国民が友好的で民主的な文明国家に暮らし、彼らの法的利益が国際法の規定に従って保障されるものと考えていました。

しかし、状況は別の方向に進み始めました。
ロシア人から歴史的記憶を奪おうとする試みが次々と行われ、時には母語を奪おうとすることも試みもありました。
ロシア人に同化を強制しようとしたこともありました。
また当然のことながら、ロシア人は、ほかのウクライナ国民と同様に、20年以上にわたってウクライナを揺るがし続けている恒常的な政治的・国家的危機に苦しめられてきました。

どうしてウクライナの人々が変革を望んだのか、よく理解できます。
「独立」し、自立してからのこの年月、いわば人々は政権に「うんざり」したのであり、あきあきしたのです。
大統領、首相、議会の議員は変わっても、彼らの自国と自国民に対する考え方は変わりませんでした。
彼らは権限や資産、資金の流れを巡ってお互いに争いながら、ウクライナを「搾り取って」いったのです。
政権等は一般市民が何をもってどんな暮らしをしているのか、どうして数百万人のウクライナ国民が自国では自分の将来に展望を見いだせず、日雇い労働のために外国へ出て行かなくてはならないのかにはほとんど興味がありませんでした。
指摘しておきますが、シリコンバレーへの就職ではなく、日雇いの出稼ぎです。
昨年のロシアだけでも、そういった人々が300万人も働いていました。
2013年に彼らがロシアで稼いだ金額は200億ドル以上であるという試算もあり、これはウクライナのGDPの12%にあたります。

繰り返しますが、汚職や非効率な国家運営や貧困に反対し、平和的なスローガンを掲げてマイダン広場に集まった人たちのことは良く理解できます
平和的なデモ活動の権利、民主的手続き、選挙は人々が納得いかない政権を変えるためにこそ存在しています。
しかし、ウクライナでの最近の出来事を裏で操っていた人々は別の目的を追求していました。
彼らは何に対しても決してひるむことなく、また新たなクーデターを準備し、政権奪取を企てていました。
テロも殺人も略奪も活用されました。クーデターの主要な実行者となったのはナショナリスト、ネオナチ、ロシア恐怖症の人々と反ユダヤ主義者たちです。
まさにその彼らが今日に至るもまだ、様々な意味でウクライナでの生活を決定づけているのです。

いわゆる新「政権」が最初に行ったことは、言語政策の見直しに関する恥ずべき法案の提出であり、この法案は民族的少数派の権利を真っ向から侵害するものでした。
ただし、今日「政治家」となった人々の海外スポンサーであり、「政権」の後見人である人々はすぐにこの企ての発案者をたしなめました。
彼らは賢い人間であり、そこは評価しなくてはなりません。民族的に純粋なウクライナ国家を建設しようとする試みが何をもたらすのかを彼らはよく理解しています
法案は延期され、脇へ退かされましたが、明らかに万一の時に備えて残してあるのです。
法案が存在する事実を今は押し黙っていますが、おそらく人間の記憶が短いことをあてにしているのでしょう。
しかし、第二次世界大戦時のヒトラーの協力者であるバンデーラの思想継承者たちがウクライナで今後いったい何をしようとしているのかは、今や誰が見ても明白です。

また、ウクライナには正統な政権がいまだになく、話をする相手がいないこともまた明白です。
国家機関の多くは身元詐称者が占拠しており、彼らは国を全くコントロールしておらず、むしろ彼ら自身が、―これは強調しておきたいのですが―、彼ら自身が往々にして過激派の支配下に置かれているのです。
現政権の大臣の中には、マイダン広場の武装勢力の許可を得なければ面会さえできない大臣もいるのです。
冗談ではなく、これが今日の現実なのです。

クーデターに抵抗した者にはすぐに弾圧と懲罰をちらつかせた脅しが始まりました。
その先頭にいたのは当然クリミア
です。ロシア語圏のクリミアです。
そのため、クリミアとセバストポリ市の住民はロシアに対し権利と生命の保護を求めました。
またキエフで、そしてドネツク市やハリコフ市やその他のウクライナの町で起こっていることを波及させないよう求めたのです。

当然、私たちはこの要請を拒否することはできませんでした。
クリミアとその住民を見捨てることはできませんでした。そんなことをすれば、ただの裏切りです

まず最初に、平和で自由な意思表示ができる環境を整備し、クリミアの住民が史上初めて自らの運命を自分で決定できるよう支援する必要がありました。
しかし、今日、私たちは西欧や北米の同僚からいったい何と言われているでしょう?
私たちは国際法の規定に違反していると言われているのです。
第一に、彼らが国際法の存在を思い出しただけまだましです。
思い出さないよりは遅くなってしまってもいいのですから、それだけでも御の字です。

第二に、これが最も重要ですが、私たちがいったい何に違反しているというのでしょうか?
確かに、ロシア連邦大統領は軍をウクライナで使用する権利を議会上院から取り付けました。
しかし、厳正に言えば、その権利はまだ行使されてもいないのです。
ロシア軍はクリミアに進軍してはいません。彼らは国際条約に基づき、元々そこにいたのです。
確かに、私たちは兵力を強化しました。
しかし、―ここは強調したいところで、皆さんに良く聞いてもらいたいのですが―、私たちはクリミア駐留軍の兵力定数を超えて増強したりはしていません。
定数は2万5000人ですが、今までそこまでの必要がなかっただけのこと
です。

さらに言いましょう。クリミア最高議会は独立を宣言し住民投票を発表するにあたり、民族自決権を謳った国連憲章を根拠としました
思い出していただきたいのですが、当のウクライナもソビエト連邦脱退を宣言するにあたり、同じこと、ほぼ文字通りに同じことをしたのです。
ウクライナではこの権利を行使したのに、クリミアには拒否しています。なぜでしょうか?

また、クリミア政府は有名なコソボの先例にも立脚しました。
その先例は西側のパートナーたちが自ら、いわば自らの手で作り出したものであり、クリミアと全く同じ状況で、セルビアからのコソボ分離を合法と認め、一方的な独立宣言には中央政府の許可は一切必要ないことを皆に知らしめたのです。
国際司法裁判所は国連憲章第1条第2項に基づきこれに同意し、2010年7月22日付の決定に次のように記しました。
「安全保障理事会の慣例からは一方的独立宣言に対するいかなる一般的禁止も推論されない。」そして、さらに「一般国際法は独立宣言について適用可能な禁止事項を含まない。」すべてきわめて明瞭です。

私は引用が好きではありませんが、しかし仕方ありません。
もう一つ公式文書の抜粋を挙げましょう。
今度は、2009年4月17日付のアメリカ合衆国の覚書で、コソボ審理に関連して当の国際司法裁判所に提出されたものです。再び引用します。「独立宣言は、往々にしてそうであるように、国内法に違反することがある。しかし、それは国際法違反が起こっていることを意味するものではない。」引用おわり。
自らこのように書き、世界中に吹聴し、皆に「同意させて」おきながら、今度は憤慨しています。
何に腹を立てているのでしょう。
クリミア住民の行動はこの「マニュアル」とでも言うべきものにぴったり一致しています。
なぜコソボのアルバニア人に許されたことが(私たちはアルバニア人には敬意を抱いています)、クリミアのロシア人やウクライナ人やクリミア・タタール人には禁止されるのでしょうか?
再び同じ疑問です。
なぜでしょうか?


当のアメリカやヨーロッパはまたしてもコソボは特殊なケースなのだというようなことを言っています。
私たちの同僚はいったい何が特殊だと考えているのでしょうか?
それが、コソボ紛争で多くの人的被害が出たことが特殊だというのです。これが法的な論拠だとでもいうのでしょうか?
国際司法裁判所の決定にはそんなことは何も書かれていません。これはもうダブルスタンダードでさえありません。
驚くほどに稚拙で無遠慮な皮肉か何かです。
このように乱暴に何もかもを自分の利益に合うように整え、同じひとつのものを今日は白と呼び、明日は黒と呼ぶようなことはあってなりません
つまるところ、すべての紛争は人的被害が出るところまで持って行かなくてはならないということでしょうか?

率直に言いましょう。もしもクリミア自衛軍が時宜を得て状況をコントロールしていなければ、犠牲者が出てもおかしくはありませんでした。
幸いなことに、そうはなりませんでした!
クリミアでは武力衝突は一度も起こらず、人的被害もありませんでした。
なぜだと思いますか?
答えは簡単です。なぜなら、国民とその意思に反して戦うことは難しく、むしろ事実上不可能だからです。
これについては、私はウクライナ兵に感謝したいと思っています。
兵員数はかなりの数で、完全武装兵が2万2000人です。
流血の惨事を避け、自らを血で汚さなかったウクライナ兵に感謝したいと思います。
これについては、当然、別の考えも浮かびます。
ロシアのクリミア介入だとか、侵略だとか言われていますが、これを聞くと奇妙な感じがします。
歴史を見ても、ただの一発も発砲せず、一人の犠牲者も出さずに行われた軍事介入など、私は思い出すことができません

尊敬する同僚たち!
ウクライナを巡る情勢には、現在世界で起こっていること、さらにはこの数十年にわたって世界で起こってきたことが鏡のように映し出されています

二極体制の消失後、世界から安定が消えました。
主要な国際機関は強化されるどころか、残念ながら往々にして退化しています。
アメリカ合衆国を筆頭とする西側のパートナーたちは政治の実践において国際法ではなく、力による支配に従うことを好んでいます。
彼らは自分が選ばれし特別な存在であると信じ切っており、世界の運命を決めるのは自分であり、常に自分だけが正しいのだと信じ切っています

彼らは思いつくままに行動しています。
あちこちで主権国家に対して武力を行使し、「ついてこない者は敵である」の原則に従って同盟を築いているのです。
侵略を合法的に見せるため、国際機関から必要な決議を「引き出し」、何らかの理由でそれがうまくいかない場合は、国連安全保障理事会も国連そのものをも全く無視するのです。

ユーゴスラビアの時がそうでした。
私たちは1999年のそのときのことをよく覚えています。
信じがたいことでした。自分の目が信じられませんでした。
20世紀末、ヨーロッパの首都のひとつ、ベオグラードの町が数週間にわたってミサイル攻撃にさらされ、その後、本格的な軍事介入が行われたのです。
はたしてそのような行動を許可する国連安保理決議があったでしょうか?
そんなものはありませんでした。
その後、アフガニスタンがあり、イラクがあり、リビアに関する国連安保理決議のあからさまな違反がありました。
飛行禁止区域を守るのではなく、またしても空爆が始まったのです。

また、操作された一連の「カラー」革命もありました。
この出来事が発生した国々では、人々が圧政や貧困、展望の見えない状態に疲れ切っていたことはよく分かります。
しかし、その感情は皮肉にも利用されたのです。
これら国々は民族の生活様式にも伝統にも文化にも全く合わない基準を押しつけられました。
その結果、民主主義と自由のかわりに生まれたのは混沌、暴力の爆発、度重なるクーデターです。
「アラブの春」は「アラブの冬」に取って代わられたのです。

同じようなシナリオがウクライナでも展開されました。
2004年、大統領選挙で自分たちに必要な候補者を通すために、法律に規定されていない第3回決選投票なるものが行われました。
これは全くばかげたことであり、憲法を愚弄したものです。
そして今回は、事前に訓練され、周到に装備した武装勢力の軍隊を投入してきたのです。

私たちは何が起こっているのか、よく分かっています。
この行動がウクライナに矛先を向け、ロシアにも向けていること、ユーラシア圏の統合に向けているものであることは分かっています。
そして、これはロシアが誠実に西側の同僚たちとの対話を目指していたのに起こったのです。
主要な問題において、私たちは常に協力を提案しています。信頼関係のレベルを向上させたいのです。私たちの関係が対等で、オープンで、誠実なものであってほしいのです。
しかし、相手側からの歩み寄りはありませんでした。

それどころか、私たちを次々と騙し、私たちのいないところで決定を下し、私たちには既成事実を突きつけたのです。
NATOの東方拡大のとき、ロシアの国境付近に軍事インフラを配備したときもそうでした。私たちに対してはいつも同じことを繰り返していました。
「あなた方には関係しませんよ」と。
関係しないなんて、簡単に言ってくれたものです!

ミサイル防衛システム展開の時もそうでした。
私たちの懸念を無視して、機械は進み、動いています。
査証交渉の終わりの見えない長期化もそうですし、公平な競争とグローバル市場への自由なアクセスについての約束もそうです。

今、私たちは制裁に脅かされていますが、そうでなくとも私たちは多くの制約の下に暮らしています。
私たちにとって、ロシア経済にとって、私たちの国にとってはきわめて重大な制約です。
たとえば、「冷戦」期にアメリカが、それに続いて他の国々も、いわゆるココムリストを作成し、多くの技術や設備について、ソ連への販売を禁止しました。
現在、このリストは形式的には廃止されていますが、それはあくまで形式的なものであり、実際には多くの禁止事項がいまだに機能し続けています

一言で言えば、18世紀、19世紀、20世紀を通してロシアに対して実施された悪名高き抑止政策は今日もまだ続いていると考えるのが妥当です。
私たちが独立した立場をとり、その立場を守ろうとし、偽善者ぶらずに物事を言うので、私たちを常にどこかの片隅に追いやろうとしているのです。
しかし何事にも限度があります。
ウクライナの場合、西側のパートナーたちは一線を越え、乱暴で、無責任で、そしてプロ意識にかける振る舞いをしました。

ウクライナにもクリミアにも数百万人のロシア人が住んでいることを彼らはよく知っていました
いったいどれほどの政治的感覚と節度を失えば、自分の行動の結果が見えなくなるのでしょう!
ロシアはもう後に引くことのできない限界に立たされたのです。
バネを限界まで押さえつければ、いずれは跳ね返ります。それを肝に銘じておく必要があります。

今日必要なことは、ヒステリーを止め、「冷戦」期の修辞から離れ、明白な事実を認めることです。
ロシアは国際社会における独立した積極的な参加者なのであり、ロシアにも他の国と同様に国益があり、それは考慮され、尊重されなければなりません。

私たちはクリミアでの私たちの行動に理解を示してくれたすべての人に感謝しています。
中国の国民に感謝しています。
中国指導部はウクライナとクリミアの情勢をその歴史的、政治的全体像を考慮しています。
インド自制した、客観的態度を高く評価しています。

今日、私はアメリカ合衆国の国民に言いたいと思います。
彼らは建国以来、独立宣言を採択して以来、自由至上主義を誇りとしてきました。
自分の運命を自由に選択したいというクリミア住民の欲求は同様な価値のあるものではないのですか?
私たちを理解してください。

ヨーロッパ人、とりわけドイツ人も私を理解してくれると信じています。
東西ドイツ統一に関する政治協議が、控えめに言って専門家レベルで、しかし極めて高いレベルで行われていた時、ドイツの同盟国である国、そして当時同盟国であった国のうち、統一という考えそのものを支持した国は多くはありませんでした。
しかし私たちの国はそれとは逆に、ドイツ人の誠実で押さえることのできない民族統一の欲求をはっきりと支持したのです。
そのことをあなたたちは忘れていないと確信しています。
そしてドイツ国民もまた、ロシア世界の、歴史的ロシアの統一を復活させたいという欲求を支持してくれると期待しています

ウクライナ国民に言います。
あなたたちが私たちを理解してくれることを心から望んでいます。
私たちはあなたたちに害を及ぼそうとか、国民感情を侮辱しようなどとは決して思っていません。
私たちは常に大国ウクライナの領土の一体性を尊重してきました
自分たちの政治的野心のためにウクライナの一体性を犠牲にした人々とは違います。
彼らは偉大なるウクライナを謳ったスローガンを掲げて着飾っていますが、国を分断するためにすべてを行ったのは彼らなのです。
今日の内紛はすべて彼らの責任です。
親愛なる友人たち、あなたたちに私の話を聞いてほしいのです。
ロシアを使ってあなたたちを脅し、クリミアの次はほかの地域だと叫ぶ人々を信じないでください
私たちはウクライナの分裂を望んではいません。
そんなものは私たちには必要ないのです。
クリミアについては、これまでもそしてこれからもロシアのものであり、ウクライナのものであり、クリミア・タタールのものです。

繰り返しますが、これまで何世紀にもわたってそうであったように、クリミアはこれからもそこに暮らすすべての民族にとっての故郷です。
決してバンデーラ主義者のものにはなりません!

クリミアは私たちの共通の財産であり、地域安定の重要なファクターです。
このような戦略的領土は強く安定した主権の下にあるべきで、それは実際、今日においてはロシアの主権下でしかあり得ません。
親愛なる友人たち(ウクライナとロシアに言っているのです)、そうでなければ、私たち―ロシア人とウクライナ人―は、歴史的に見て近い将来、クリミアを完全に失うことになるかもしれません
この言葉をどうかよく考えてみてください。

キエフではすでにウクライナが近くNATOに加盟するという声明が出ています
この展望がクリミアとセバストポリ市にとって何を意味するでしょうか?
ロシア軍の栄光の町にNATOの艦隊が現れるようなことになれば、ロシア南部全域にとっての脅威となるでしょう。
この脅威は幻でも何でもなく、きわめて身に迫る脅威です。
実際に起こったかもしれないことはすべて、クリミア住民の選択がなければ本当にすべて実際に起こったかもしれません。
クリミア住民に感謝しています。

ちなみに言えば、私たちはNATOとの協力に反対しているわけではありません。
全く反対ではありません。私たちが反対しているのは、軍事同盟が、様々な内部プロセスはあってもNATOは軍事組織ですから、その軍事組織がうちの柵の近くで、我が家の近所で、私たちの歴史的領土の中で我がもの顔をしていることに反対しているのです。
たとえば、私たちがセバストポリに行ってNATOの海軍兵士に客人として迎えられるなど、私には想像もできません。
彼らの多くはすばらしい青年たちです。
しかし、セバストポリでは私たちが彼らを客人として迎える方がよいのです。

率直に言いましょう。
私たちは今ウクライナで起こっているすべてのことに、人々が苦しんでいることに、彼らが今日をどのように生き、明日はどうなるのか分からないでいることに心を痛めています。
私たちが心配するのもよく分かります。
何しろ私たちは単なる隣人ではなく、私が何度も言っているとおり、事実上、ひとつの民族なのです。
キエフはロシアの町にとっては母なる都市です。
古代ルーシは私たちの共通の起源であり、私たちはいずれにせよお互いがいなければやっていけないのです。

もうひとつ言いましょう。
ウクライナには今も、そしてこれからも数百万人のロシア人、ロシア語話者である国民が暮らしていきます。
そして、ロシアは常に政治的、外交的、法的手段を使って彼らの利益を保護していきます。
しかし、まずは当のウクライナがこういった人々の権利と利益が保証されるよう関心を払わなければなりません。
それがウクライナの国家としての安定と領土の一体性の基礎となる
のです。

私たちはウクライナとの友好を望んでいます。ウクライナが強く、主権を持った、自立した国家になることを願っています。私たちにとってウクライナは主要なパートナーのひとつなのです。私たちには多くの共同プロジェクトがあり、何があったとしても、これらのプロジェクトの成功を私は信じています。そして何よりも、私たちはウクライナの地に平和と融和が訪れることを願っています。そのためには他国とともに最大限の協力と支援をする用意があります。しかしもう一度繰り返します。自分の家に秩序をもたらすことができるのは他でもないウクライナ国民だけなのです。

尊敬するクリミアとセバストポリ市の住民の皆さん
ロシア全土があなたたちの大胆さと威厳と勇気に感動しました。
あなたたちがクリミアの運命を決めたのです。
この数日間、私たちはこれまでにないほど身近になり、お互いを支え合いました。
あれは真の連帯の気持ちでした。
あのような決定的な歴史的瞬間にこそ、民族の成熟度と精神力が試されるのです。
ロシア国民はすばらしい成熟度とすばらしい力を発揮し、団結して同胞を支えました。

ロシアの外交における強気は数百万人の人々の意思、民族全体の団結、主要な政治・社会勢力からの支持に立脚していました
皆さんのその愛国心に感謝します。
例外なくすべての人に感謝します。
しかし、ロシアの前に立ちはだかる課題を解決するため、今後もこの団結力を維持することが私たちには重要です

私たちは明らかに外国の反発に遭遇することになります。
しかし、私たちは自分のために決めなくてはなりません。
首尾一貫して国益を守り続ける用意があるのか、それとも、永遠に国益を諦め続け、どこまでも後ろに下がり続けるのか
西側の政治家の中には、制裁だけではなく、国内問題の先鋭化の可能性を語って私たちを怖がらせている人もいます。
彼らが何のことを言っているのか知りたいものです。
第5列員なるもの―様々な国家反逆者―の活動のことでしょうか、あるいはロシアの社会経済情勢を悪化させることで人々の不満を誘発することができると考えているのでしょうか。
このような発言は無責任で明らかに攻撃的なものであると見なし、しかるべき方法で対処していきます。
しかし、私たち自身は東側でも西側でも、決してパートナーとの対立を目指すことはせず、現代世界の決まり通り、先進的な善隣関係を築くために全力を尽くしていきます

尊敬する同僚たち!
住民投票で、クリミアはウクライナに残るのか、ロシアに入るのかという、きわめて率直ではっきりした質問を設定したクリミア住民の気持ちがよく分かります。
そして、確信を持って言うことができます。
クリミアとセバストポリの指導部や立法機関の議員は住民投票の質問を作るにあたって、派閥や政治的利益を超越し、人々の根源的利益だけを指針として、それだけを最重要視したのです。
これ以外の住民投票であったなら、それが一見したところいかに魅力的に映ったとしても、この領土の歴史的、人口構成的、政治的、経済的特性のために中庸で一時的で揺らぎやすいものになっていたでしょうし、間違いなくクリミア情勢のさらなる悪化へつながったでしょうし、最悪の形で人々の生活に反映していたことでしょう。
クリミア住民は厳しく、妥協のない、一切の中途半端さのない質問を設定しました。
住民投票はオープンに誠実に行われ、クリミアの人々ははっきりと説得力を持って自分の意思を表明しました。
彼らはロシアに入ることを望んでいるのです。

ロシアもまた、国内外のファクター全体を考慮して、困難な決定をしなければなりません。
今のロシアの人々の意見はどうなのでしょう。
ここでは、他のあらゆる民主主義社会と同じように、様々な視点があるでしょう。しかし、絶対的な、―強調しておきますが―、絶対的多数の国民の考え方は、こちらも一目瞭然です。

つい先日ロシアで実施された最新の世論調査をご存じでしょう。
95%もの国民が、ロシアはクリミアに住むロシア人とその他の民族の利益を保護すべきであると考えています。95%です!
83%以上が、たとえそのような態度が他国との関係を複雑化させるとしても、ロシアはこれを実施すべきだと考えています。
国民の86%がクリミアは今に至るまでもロシアの領土であり、ロシアの土地であると確信しています。そして、とても重要な数字で、クリミアの住民投票のものと完全に相関しているのですが、ほぼ92%がクリミアのロシア編入に賛成しています。

このように、クリミア住民の大多数も、ロシア国民の絶対的多数も、クリミア共和国とセバストポリ市のロシア連邦への復帰を支持しています。

残すはロシアの政治的決定です。
これは国民の意思に基づくことしかできません。
なぜなら、いかなる政権であってもその源となるのは国民だけ
だからです。

尊敬する上院議員!
尊敬する下院議員!
ロシア国民とクリミアとセバストポリ市の住民たち!
クリミアで行われた住民投票の結果に基づき、国民の意思に立脚して、本日、ロシア連邦議会に、ロシアに2つの新たな連邦構成主体、クリミア共和国とセバストポリ市を受け入れる合憲的な法案を提出し、審議を要請すると共に、クリミア共和国とセバストポリ市のロシア連邦への編入に関する署名の準備が整えた条約の批准を要請します。
皆さんの支持を迷わず確信しています!
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
ロシア

 ウクライナ政変とロシア欧米関係のページ

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プーチン3/18声明、クリミアとロシアの団結
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ウクライナ軍兵士「我々はもうロシア軍だ」
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ウクライナ危機が示した米国の弱体化、ロシア敵視と対中融和:田中
ロシアの非欧米転換は世界の多極化を牽引する
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   西側の覇権なき世界  3/27  フョードル・ルキヤノフ ロシアNOW

  ウクライナ情勢はロシア政治史の区切りとなった。

 ソ連時代末期の1980年代末からほぼ四半世紀続いた行動モデルを、ロシア政府は事実上放棄した。
 いかなる隔たりもない世界とヨーロッパを夢見始めた時から、西側諸国との良好な関係を保つことは最重要目標となり続け、欧米の希望に明らかに反する行動をとった時でも、関係の傷が最小限になるように、かけひきの余地を残していた。
 西側重視の方針は、ロシアの安全、発展、幸福の担保と見なされていた

  世界の多様化、多極化を背景に

 ロシア政府は今年、これまでとは異なる行動を取った
 西側諸国からの要請、呼びかけ、警告、脅しをすべて無視し、クリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市をロシア連邦に編入。
 ロシアは利益を理解し、それを守るために最後まで突き進むことはないと考えていた欧米は、即座に反応し、ロシアの考え方の根拠や立場の妥当性を一切加味することなく、制裁に向けて動き始めた

 ロシアが得た主な教訓は、世界が西側に限定されているわけではないということである。
 世界は多種多様化し、一極集中や一国による支配が不可能になった
 それぞれに特別な対応を必要としている、影響力のある新たな国が多数出現したため、欧米との関係が常に最優先となる世界のシステムを採用することは困難になった。
 数百年もの間、西方ばかりを見つめてきたロシアにとって、これは重大な転換点である。

 アジアへの転向は、これまでも多く語られてきた。
 ウラジーミル・プーチン大統領は最近、これを21世紀のロシアの最優先事項と呼んだ。
 西側諸国がロシアに対する経済的、政治的圧力を加え始め、冷戦のごとく制限をかけようとすれば(投資、技術、金融市場、融資資金の利用可能性、接触の寸断、市場の閉鎖、支払いシステムのブロックなど)、ロシアにとって「西側なしの世界」は客観的現実になる可能性がある。
 そしてアジアへの転向が非西側化の転換点になり、幅広い活動に変わるのだ。
 西側は金融的、技術的にもはやモノポリーではなくなっている一方で、「第三世界」市場は果てしなく広い

  ロシアの大転換

 他の経済的中心に向きを変えることは、大変動である。
 第一に、本音を言えば、比較的最近まで世界で政治的に周縁または、主体というよりは客体と考えられてきた国々と対等な関係になり、完全な相互活動を行うことに、ロシアは慣れていないため。
 ソ連はパトロンであったし、アジア、アフリカ、中南米の国々への影響をめぐり、アメリカと対抗していた。
 ソ連崩壊後しばらくは各国との関係が途絶えていたが、その後復活させようと努力した。

 第二に、アメリカは依然として、そのような国々に対する立場を変えておらず、ロシアとは組むな、と積極的に「アドバイスする」ことが明らかであるため。
 25~30年前と比べて状況は変化しているから、「禁止する」ことは難しいが、だからといって西側を甘く見ていいとは限らない

  ロシアの新たな外交政策

 第三に、中国は現状において自然なオプションとなるが、別の側面を無視できないため。
 ロシアは経済的に、中国にかなり譲歩しており、政治的にもどんどん密接になっている。
 中国政府は積極的にロシア政府を支持しようとしているし、金融・経済的支援を行おうとしているが、これにはロシアの中国への依存度が高まるという代償がついてくる
 両国の利益はいつでも一致しているわけではないが、ロシアは決定を行う際に、中国の意見をより重視しなければいけなくなる

 ロシアは自国の新しい立場を均衡化するために、西側諸国以外の多様な国との関係を発展させなければいけないのだから、なおさらだ。
 世界中の多くの人が、西側の支配に偏っていることに飽き飽きしている
 ロシアはクリミア編入の公式な承認を得られないだろう。
 国境の問題は多くの国にとって、あまりにもデリケートだからだ。
 だが、ロシア包囲はうまくいかないとの確信を持っていい。
 新興・発展途上国はぴったりと足並みをそろえるどころか、自国の立場を強化するために、不和を利用しようとさえしている

  たかが西側されど西側

 西側諸国が世界で最強かつ最も影響力の強いことに変わりはなく、代わりが現れない可能性も高い
 科学、技術、教育分野では特にそうだし、ヨーロッパの文化的魅力も、ロシアや世界は否定できない。
 ロシアは、西側と衝突したり、西側から隔絶したりするつもりもない。
 協力というものは、いかなる条件下でも成立するわけではないという、単純な話にすぎない
のだ。

 21世紀の世界では、非西側との確固たる関係なしに成功はあり得ない
 したがって経済制裁が行われたら、むしろそれに感謝すべきであろう。
 転向の機は、ずっと前から熟していたのだから。
 偏狭な西側的見方をロシアが否定することは、世界にとって完全な多極性の発生を意味する
 誰も無視できない多極化である。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
※ 西側に仕掛けられたウクライナの政変によってクリミアを解放したことは、ロシアにとっての今後長く続くであろう対外関係の大転換を意味する。
 欧米は未だに世界に覇権をとなえる帝国主義のつもりでいたようだが、二枚舌を活用する偏狭な欧米の考えは新興国諸国には通らないことが明らかになった。

 欧米が一致して「右」といえば世界の7割が「右」という時代は、ほぼ過ぎ去ろうとしている。
 転向の機は、ずっと前から熟していたのであり、もう後戻りはない。
 誰も無視できない、世界の多極化である。
 ロシアは多極世界へ向けた流れを加速し、その先頭を牽引することとなる。
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ウクライナ危機が示した米国の弱体化、ロシア敵視と対中融和:田中

   ウクライナ危機は日英イスラエルの転機(2)  3/25  田中宇

 ロシアのクリミア併合を米国が阻止できないことが露呈した直後の3月17日、イスラエルのヤアロン国防相が、大学での講演で「イラン、中国、ロシア、ウクライナなどの問題で、米国は弱さを見せてしまっている。イスラエルは米国に頼れない以上、独力でイランと対決せねばならない」と発言した。
 米政界は「米国はイスラエルのためにイランやパレスチナなどの問題に全力で取り組んできたのに侮辱された」「ネタニヤフ首相もヤアロンの発言を半ば黙認しており、ひどい」と発言を非難している。 (Israeli Defense Minister: U.S. Is Projecting `Weakness') (U.S. says disappointed at no apology from Israeli defense chief)

 実のところ米国がやってきたことは、表向き親イスラエルだが実質的にイスラエルを追い詰めている。
 米国は「イラクに侵攻すると占領の泥沼にはまる」というイスラエル側の懸念を無視して「イスラエルのため」と言ってイラクに侵攻し、案の定、泥沼の占領にはまった。
 米国はその挙げ句、イラクを民主化してシーア派主導の親イランの国にしてから占領を放棄し、結果的にイスラエルの仇敵であるイランを強化した。 (「イランの勝ち」で終わるイラク戦争)

 米国はその後、イスラエルに引っ張られてイラン敵視を強めたが、昨年シリア空爆計画の自滅的失敗を機にイランを許す方向に突然転換し、シリアとイランがロシアの傘下で復活する流れを作った。
 そして先日、米国はウクライナのネオナチに政権転覆させ、プーチンがロシアと露系住民の安全を守るためクリミアを併合せざるを得ないよう仕向け、米露対決を強めた。
 しかしBRICSは米国のやり方に不信感を強めて対露制裁の拒否を決議し、欧州も対露制裁に消極的な国が多い。
 ウクライナ危機は米国の国際信用を落とし、ロシアを反米・親イランに押しやっている。 (BRICS rejects sanctions against Russia over Ukraine) (プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動)

 米軍は今年アフガニスタンを撤退する。
 アフガンからの搬出路はパキスタン経由、中央アジア・ロシア経由、イラン経由の3本だが、米国はイランと敵対しているので3本目が使えず、米パキスタン関係も不安定だ。
 そして米国は今回、ロシアとの対決を始めたので2本目のロシア経由が危うくなっている。
 米国はロシアと対立を強められる状況にないのに対立している
 米国の傀儡指導者のはずだったアフガンのカルザイ大統領は、ロシアのクリミア併合を正式に支持した。
 もはやカルザイにとってすら、米国よりロシアの方が頼りになる状態だ。
 こうした現状を見ると、ヤアロンが「米国は弱さを見せているので頼れない」と思うのは当然だ。 (Karzai snubs West, backs Russian annexation of Crimea) (Putin Has Many Ways to Strike Back at Sanctions)

 ヤアロンの発言で私が注目した点は、彼の発言に「米国は、意図して弱く見えるようにしている」という意味が感じ取れることだ。
 ヤアロンはヘブライ語で演説したのだろうが、各種の英文報道では「弱く見せる」という部分が 「Obama portrays weakness」「Washington has been showing weakness everywhere」「U.S. projecting weakness」「broadcasting weakness」となっており、米国が意図して自国を弱く見せている感じが、明瞭でないものの、にじみ出ている。
 ヤアロンは、講演でこの点をさらりとしか言っていないようで、この点を詳述した報道はない。 (Defense minister leans toward Israeli operation in Iran, as Obama portrays 'weakness') (Israel's defense chief says U.S. projecting weakness)

 すでに書いたように、米国は911以来の13年間、強硬策をやりすぎて外交力(国際信頼性)や経済力を自滅的に落とすことを繰り返してきた
 01年の時点で、米国は弱体化する必然性が全くなかった。
 その後のアフガン侵攻もイラク侵攻も、昨夏のシリア空爆撤回も、イランに対する制裁とその後の許容も、今回のウクライナ危機も、中国包囲網強化も、公的支援に依存した米金融救済策(QE3など)も、すべて米政府が意図して始めた能動的な策だ。
 いずれも、手法をもっと考えてやるべきだったのに、実際は稚拙に過剰にやって失敗し、米国の覇権を自ら崩している。 (不合理が増す米国の対中国戦略) (ドル過剰発行の加速)

 私は、戦後の米国の中枢に、自国の覇権を意図的に崩すことで、世界で経済発展(政治台頭)する地域を発展途上・新興諸国の方に大きく広げ、長期的な世界経済の発展基盤を拡大したい勢力(資本家の一部。ロックフェラー系など)がいると考え、こうした動きを、米中枢で米国の覇権を強化するふりをして実は多極化を進める(こっそりやらないと中枢にいられない)という意味で、イラク占領の失敗が確定した05年ごろから「隠れ多極主義」と呼んできた
 私はその後、多くの人に嘲笑されつつも、国際政治を詳細に読み続けるほど、米国が隠れ多極主義に動かされているようだとの見方を強めている(今後、米国が違う方向に動き出したら、私の見方は変わる)。 (隠れ多極主義の歴史) (資本の論理と帝国の論理)

 ニューヨークなどの国際資本家の多くはユダヤ人で、彼らは米国籍を持っていても、米国より世界全体の経済成長を重視している。
 宮廷ユダヤ人は、スペインやオランダ、英国、米国といった各時代の覇権国の中枢にいて、覇権が移るたびに移動してきた。
 ここ20年以上、米政界で最も強い勢力は右派ユダヤ人のAIPACだった。
 イラクやイラン、アラブ(いわゆるアルカイダ)への敵視策を立案してきた中心もネオコンなどユダヤ人だったし、ウクライナ政権転覆を画策したヌーランド国務次官補もネオコン系ユダヤ人だ。
 イスラエルは40年以上、隠れ多極主義の動きに巻き込まれている。
 ヤアロンが「米国は意図して弱く見せている」と示唆しても、何の不思議もない。
 米国の隠れた策を示唆したヤアロンを、米政府の高官たちが非難してみせるのも当然だ。 (覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク) (Where was the U.S. Jewish outrage over Ya'alon?)

 単独覇権主義をふりかざした米国のブッシュ前大統領は、イスラエル(パレスチナ)へのキリスト再臨を信じる「キリスト教原理主義」で、それがゆえに当時の米国は親イスラエルなのだと喧伝されていた。
 だが最近、米国の原理主義的なキリスト教徒たち、特に若手信者の間で、キリストが再臨するのはパレスチナ(西岸)なのでイスラエルでなくパレスチナを支援する動きが広がっている。
 米国のキリスト教原理主義が、いずれ反イスラエル・親パレスチナになるとの予測も出ている。
 米国は政治的に詭弁の国だ。依存するといつの間にか裏切られ、ひどい目に遭う。 (Israel is losing its grip on evangelical Christians)

イスラエルは米国に頼れず、独力でイランと対決せねばならない」というヤアロンの発言は、目新しいものでない。
 この手の発言は911以来、イスラエル中枢で何度も発せられている。
 イランがまだ弱かった以前は、この手の発言に現実味があった。
 しかし今、前回の記事に書いたように、イランは中東の国際政界で急速に台頭している。
 イランは、イラク侵攻まで孤立していたが、今ではイラク、シリア、レバノン、カタール、オマーン、ガザといった、アラブの半分近い地域を傘下に入れ、アフガニスタン、中央アジア諸国、アゼルバイジャン、アルメニアにも影響力を持ち、トルコやロシアとも親密だ
 イランはもはや、イスラエルが単独で対決して勝てる相手でない
 イスラエルは、自国の滅亡を覚悟しない限り、イランと戦えない。 (アルジャジーラがなくなる日) (ユーラシアの逆転) (自立的な新秩序に向かう中東)

 イスラエルは地下資源に乏しいが、イランは傘下に入れたイラクを含め、世界有数の石油ガスを埋蔵しており、こんご地政学的な強国になるだろう。
 今後の何年かで、西アジアにおいて、イランの台頭と、米国の撤退がさらに顕在化し、イスラエルの不利が増す
 イスラエルは、イランを軍事的に破壊できない以上、今後イランと政治的に和解していくしかない。
 イランと敵対したままだと、イスラエルはいずれイラン傘下のハマスとヒズボラから戦争を挑まれ、軍事的に潰される
 イスラエルは従来、レバノンのヒズボラよりずっと強かったが、米国の軍事支援が減る今後は、しだいに形勢が逆転する。 (ヒズボラの勝利)

 イスラエルがイランと和解するには、まずパレスチナ和平を具現化せねばならない。
 パレスチナ人がイスラエルを敵視しなくなれば、アラブやイランはイスラエルを敵視する理由が減り、イスラエルとイスラム世界との和解が俎上にのぼってくる。
 かつて和平に絶対反対の右派だったイスラエルのネタニヤフ首相は、今年に入って「平和の配当」「和平の果実」といった、和平支持の左派や中道派が使ってきた用語を演説の中で使うようになった。
 ネタニヤフは右派の与党リクードを率いているが、イスラエル国家の存続に和平が不可欠なので、右派から中道派に目立たないように転換している。 (Netanyahu's AIPAC speech: A red alert for settlers)

 ネタニヤフが米国に仲裁させて進めている中東和平交渉が「枠組み合意」として結実するかどうか、4月中に見えてくるはずだ。
 和平交渉継続の前提として3月末に予定されていた、イスラエルによる4回目のパレスチナ政治犯釈放が行われるかどうかが、まず注目される。 (Obama desperately needs a Plan B)

 安保上の唯一の後ろ盾だった米国が弱さを見せるので国家戦略を転換せざるを得なくなっているのは、イスラエルだけでない。日本も同じだ。日本は、戦後の国是だった(官僚独裁制を維持するための)対米従属を延命させるための策として、尖閣諸島の国有化を皮切りに、南京大虐殺など誇張的な東京裁判史観の否定、首相の靖国訪問などによって中国との敵対を煽り、竹島問題や従軍慰安婦問題否定で韓国との敵対を煽ってきた。 (民主化するタイ、しない日本) (日本の権力構造と在日米軍)

 世界多極化の一環として、東アジアは長期的に見て、冷戦構造(米覇権)から脱却して中国中心の国際秩序に移行する途上にある。
 韓国や北朝鮮、東南アジア諸国は、すでに中国の傘下に入る傾向が顕在化している。
 日本がこの流れに抵抗せず、中国や韓国と良好な関係を保っていると、日本は中国中心の東アジア国際体制を容認したと米国からみなされ、いずれ日米安保体制を解かれ、沖縄駐留米軍にグアムに撤退され、対米従属ができなくなっていく。
 日本の権力(官僚)機構がこれを阻止するには、中国や韓国、北朝鮮との敵対関係をできるだけ永続するのがよい。
 日本が中韓朝と仲違いしている限り、米国は日米安保体制を崩しにくい
 このような構図の上に、中韓朝との対立が扇動されてきた。 (日中韓協調策に乗れない日本) (まだ続き危険が増す日本の対米従属)

 しかしウクライナ危機で米露対立が激化するのと前後して、日本政府は中韓朝との敵対を緩和する動きを開始している。
 最大のものは、これまで韓国の朴槿恵大統領と会わないようにしてきた安倍首相が3月26日、オランダでの核安保サミットで、米オバマ大統領の仲裁のもと、今政権で初めての日韓会談を行ったことだ。
 これは4月に予定されているオバマの日韓訪問を前に、米国が日本に「韓国と仲直りしてくれないとオバマが訪日しにくい」と圧力をかけた結果とも考えられ、4月のオバマ訪日後、日本政府は再び韓国と仲を悪くするような策を講じるかもしれない。 (US draws together South Korea and Japan)

 しかし安倍は3国会談で、韓国語を話して朴槿恵の気を引こうとするなど、米国の圧力でいやいやながら日韓会談したと考えるには、サービスしすぎだ。
 韓国語を発して気を引こうとする安倍に対し、朴槿恵は真顔で冷たく対応したと報じられている。
 こうした構図から見えるのは、米国の圧力で日本がいやいや日韓会談したのでなく、日本が米国に頼んで韓国との関係改善に転換したという経緯だ。 (South Korean president unimpressed by Japanese PM's attempt to speak Korean)

 安倍は朴槿恵に会談を受けてもらうために、日本が「戦争犯罪」について謝罪した93年の河野談話と95年の村山談話の撤回をしないと決定している。
 2つの談話の撤回を検討してきた安倍政権が、撤回しない決定を下したのだから、これは不可逆的で、安倍は今後、同じ件で韓国を怒らせる策を再発動できない。
 安倍が、オバマ訪日後に韓国との敵対を再開したいなら、こんな手は採らない。 (South Korea expresses relief over Abe's comments on Japan war apologies)

 日本政府は、北朝鮮との交渉再開も模索している。
 安倍政権は、拉致問題を解決するためと言って、北朝鮮との早期に交渉再開したいと表明している。
 日本政府はこれまで、拉致問題は解決したいが、北朝鮮はウソをつくし、軍事的脅威を日本に与えているので交渉を再開できないと言っていた。
 北朝鮮は最近、ウクライナ危機を境に中露の結束と米国の覇権衰退が起こり、北朝鮮問題の解決が米国でなく中露の手に委ねられることに対する不満を表明するためか、さかんに短距離ミサイルを試射し、威嚇している。
 日本政府が「北朝鮮と交渉できない」とさじを投げて当然の状況だ。
 しかし日本政府は逆に「北朝鮮との次官級協議を予定どおり行う」と表明している。
 日本にとって、急いで北と交渉せねばならない状況になっている感じだ。 (Japan's Abe: Hope to resume formal talks with North Korea soon)

 3月17日には、拉致被害者の横田めぐみさんの両親がモンゴルでめぐみさんの娘のキム・ウンギョンさんと面会した。
 安倍政権内でも飯島勲・内閣官房参与は、めぐみさんはすでに死んでいるとの北朝鮮の主張を日本側が認めたことになりかねないとして、この面会が政府の戦略として良くないと反対する姿勢を示している。
 飯島は17日の時点で、日朝の次官級交渉にも否定的だった。
 面会はもっと上層部の、おそらく安倍首相自身の意志で行われた感じだ。

 対米従属策としては北朝鮮との恒久対立が好ましいので、外務省など官僚機構は面会に反対したのだろうが、安倍自身は、模範とする小泉元首相が成し遂げられなかった拉致問題の解決を自分がやることで歴史に名を残すことを優先しているのだろう。
 安倍の姿勢の背景に、日本はもう対米従属を続けられないのだから、北との恒久対立をやめて拉致問題を解決しても良いはずだ、という見方がありそうだ。 (安倍靖国参拝の背景)

 3月26日には石原慎太郎が講演で、12年の尖閣諸島の国有化について「中国を刺激してしまう間違った政策だった」という趣旨の発言をしている。
 尖閣の国有化はもともと石原自身が都知事時代に渡米したとき、米国のヘリテージ財団にそそのかされて「尖閣の土地を東京都が買い取って公有地にする」と宣言し、石原に中国敵視の道具に使われるぐらいなら国有化した方がましだという野田政権の判断で、国有化されている
 。米国の傀儡として尖閣国有化への道を扇動した中国敵視の石原自身が、国有化は中国との対立を煽ったので失敗だったと言うとは、全く馬鹿げている。 (尖閣問題と日中米の利害) (中国敵視は日本を孤立させる)

 石原発言で注目すべきは「石原はけしからん」という点でない(彼は、敵から「けしからん」と言われることを成功と思う人だ)。
 米国とつながっている、尖閣紛争の原点たる石原が「中国敵視を煽った尖閣国有化は失敗」と宣言したのは、米国がもはや中国敵視策や尖閣紛争を歓迎していないこと、米国の後ろ盾を失った日本が尖閣紛争で中国敵視を続けるのが得策でないと石原ですらが思っていることを示している。 (頼れなくなる米国との同盟)

 日本をめぐるこれらのことを総合して考えると、
 ウクライナ危機勃発後、オバマ政権がまだ中国包囲網策を維持しているかどうか、確かめるべき状況になっている。
 米国はロシアとの敵対を最重視し、中国敵視策をすべてやめる決定をしずかに下し、それを日本政府の上層部に伝えてきた可能性がある。
 米英ではすでに、米国がロシア敵視のために中国を宥和しそうだという記事が出ている。
 そのような前提で考えないと、安倍が朴槿恵に韓国語でおべっかを言いつつ会談してもらうとか、日朝交渉を再開するとか、石原が中国敵視の尖閣紛争の扇動を自己否定する発言を放つことの説明がつかない。
(Obama will meet Xi Jinping of China in attempt to isolate Russia over Ukraine) (Hoping to Isolate Russia, US Woos China on Ukraine)

 米国がロシア敵視策を理由に中国と和解し、日本がはしごをはずされるのだとしたら、それは1972年にニクソン政権が、ロシア敵視を理由に中国と和解した時と同じ構図だ。
 この米中接近の後、中国は国際的な優位性を増し、ベトナムから西沙諸島を軍事的に奪っている。
 今の状況で米国が中国敵視をやめたら、国際的に日本の弱体化と中国の台頭が加速し、中国は日米同盟の強さを試すことも兼ねて、軍事的に尖閣諸島を奪いにくるかもしれない。 (中国は日本と戦争する気かも)

 とはいえ中国では最近、テレビなどが反日的な放送を控えるようになったとも伝えられている。
 中国は、尖閣を奪うよりも、米国にはしごを外されて困窮する日本を諭しつつ許してやり、日本人を自発的に土下座へと誘導するのが得策だろう。
 日本人は世界の大きな動きを知覚できないまま、長期の対米従属の後、しずかに長期の対中従属に入るのかもしれない。
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