報道しないマスコミ、日米指紋共有!
2014-03-10

明らかに危うい、アメリカとの「指紋情報」共有 3/7 huffington post
■警察庁が持つ約1000万人の指紋情報がアメリカに
安倍首相の靖国参拝に対して「失望した」と声明を発表した米国政府、それに対して「アメリカは失望したというが、むしろ我々が失望だ」とした衛藤晟一総理補佐官、歴史認識に端を発して日米関係のグラつきが報じられている。
4月のオバマ大統領の訪日は、当初の2泊の予定が、「ちょっと待った」コールで横入りしてきた韓国の要請に応える形で日本に1泊、韓国に1泊と短縮されてしまった。
アメリカとの距離が開きつつある......という見方は間違いではないんだろうけども、それこそ特定秘密保護法にしろ沖縄基地問題にしろ、アメリカ主導の施策に素直に応じるジャパニーズのスタンスは、どうしたってチェンジしようが無い。
その新たなる象徴的事例が、なぜか詳しく報じられることのなかった「日米間での指紋情報の共有」ではないか。
日本とアメリカの捜査当局が持つ指紋情報を日米間で相互提供する法案「PCSC協定」が先月末に閣議決定された。
日本の警察庁が管理する約1000万人の指紋情報をアメリカが、アメリカのFBIと国土安全保障省が管理する約7000万人の指紋情報を日本が、それぞれオンライン上で照会できるようになる。
あれほど騒いだ特定秘密保護法案と異なり、新聞各紙があまりにスムーズにこの報道をやりすごしてしまったのが、いささか奇妙だ。
指紋共有はアメリカからの強い要請、アメリカが「短期ビザを免除している37の国と地域に協定の締結を求めていて、これまで日本だけが締結していませんでした」(テレ朝NEWShttp://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000021073.html)という。
言うまでもなく、指紋や犯罪歴はこれ以上ない最もデリケートな個人情報だ。
テロ対策に有用とはいえ、最たる個人情報の取り扱いを国と国で共有できるようにした、という事実を前に、もう少し丁寧に議論を深めるべきではなかったのか。
■「実行されたと信ずるに足りる」と判断されれば提供される
日米重大犯罪防止対処協定(正式名称:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)についての発表資料を読み込んでみよう(こちらhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000027051.pdf←PDFが開きます)。
条文の気になる箇所を引っ張り出してみる。
情報提供における特例を記した部分だ(以降、【 】の強調は著者による)。
第六条 要請がない場合の情報の提供
いずれの一方の締約国政府も、【事前の要請がない場合においても】、個別の事案において、重大な犯罪(特にテロリズム及び関連する行為)が実行される又は【実行されたと信ずるに足りる理由があるとき】は、重大な犯罪の防止、探知及び捜査のため、自国の法令に従い、国内連絡部局を通じて他方の締約国政府に情報を提供することができる。
無論、気になるのは、「実行されたと信ずるに足りる理由があるとき」の部分だ。
この指紋共有の対象となるのは「長期3年以上の懲役・禁錮に当たる犯罪と、殺人予備などテロにつながりかねない犯罪などで、重要未解決事件の遺留指紋も照会できる」(日本経済新聞http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25009_V20C14A2CR0000/)という。
34項目の犯罪(先ほどのPDFの末尾に掲載)については、3年以上の拘禁刑ではなく、1年以上の拘禁刑が対象となる。
特定秘密保護法案のあちこちに「その他」の明記が残されて問題視されたのと同様、極めて主観的なのにもかかわらずその具体が示されない「信ずるに足りる理由」という言葉はどうしたってひっかかる。
■国家間レベルでの監視対象であり続けるべきなのか
そして、適合する指紋情報があった場合、「指紋情報が適合する者に関する【追加的な情報の提供】を要請することができる」(第五条 追加的な情報の要請及び提供)という。これまたひっかかる。
なぜなら、この「追加的な情報」が何を指すのかについても、一切記載が無いから。
前段落から繋げると、「信ずるに足りる理由」、くだけた言い方に変換してみれば「うーん、おそらく彼が怪しいと思うんだよね...」と名指しされた人間の指紋がその1000万人のデータに該当すれば、その人間についての「追加的な情報」を、国から国へと渡してしまって構わない、ということになる。
再犯者率は平成9年から上昇を続け、平成24年は45.3%(平成25年度版・犯罪白書)と高まっている現在ではあるが(ちなみに「率」は高まっているが「再犯者数」は減っている)、「犯罪者は刑期を終えようとも国家間レベルで監視の対象であり続ける」という態度には違和感を覚える。
特定秘密保護法の際には「一般の方々には関係ないですよ」と逃げてみせたが、今回は「約1000万人」と数値が出ているわけだ。
この分母を「普通の人に関係ない」とは言わせないし、「犯罪者」ではなく「犯罪者だと思われる人」にも適用されるのであれば、なおさらその詳細を問いたくなる。
■なぜメディアはこの一件をそのままにしておくのだろうか
エドワード・スノーデンの告発により明らかとなったアメリカ国家安全保障局(NSA)による個人情報収集の手口、そして、アメリカの情報機関がドイツのメルケル首相の電話を盗聴していた疑惑が報じられた一件など、傍若無人なアメリカの情報収集癖を恐れつつも呆れるわけだが、
これらの行為についてだって、いざ当人達が口を開けば、「数多くのテロ計画の阻止に役立った。
(中略)我々は市民の権利やプライバシーも、この国も守ろうとしていることを、米国民に理解してほしい」という強いメッセージへと姿を変えてしまう(NSA・アレキサンダー長官・朝日新聞デジタルhttp://www.asahi.com/international/update/0613/TKY201306130223.html?ref=reca)。
自国の情報収集の手段として指紋共有が進められ、まったく謎めいた「追加的な情報」も手渡すことになる。どうぞご自由に、と言えるだろうか。
それにしても、特定秘密保護法案であれだけ騒いだメディアは、なぜこの件に黙り込むのだろう。
1000万人の指紋及び追加情報を渡せる体制を組みました、に、なるほど了解です、でいいのか。
テロ防止は確かに国家間の協力が必要だ。
しかし、明確な基準を設けずに、ケース・バイ・ケースでの対応ができる余白を存分に残したまま「指紋情報+α」を提供し合う、というこの法案には大いに疑問が残る。
アメリカの諜報機関の実態についてはいくらでも具体例が出ているし、もちろん中には信憑性の薄い憶測レベルのもの数多く流されているが、「どうぞ」と素直に手渡してはいけない相手だということくらい分かる。
日本政府にその相手と向き合う体制が敷かれているかどうかは、メルケル首相の盗聴疑惑が出た際の記者会見で、菅官房長官が「(安倍首相の携帯は)全く問題ない」と即答してしまうことから分かるように、ちっとも万全とは言えない。
法案には不正アクセスを防止することが盛り込まれたが、ならば安心、ではなく、そもそも情報を受け渡す(&受け取れるようになる)こと自体について、もっともっと危機感を持つべきではないのか。
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小出:原発事故3年、報道されないこと
2014-03-10

<原発事故3年>放射能は今も出てる?どれ位の量?どの地域に?黒い物質って?アルプスは?汚染水は?炉心は?小出裕章氏3/7報道するラジオ 文字起こし「kiikochan.blog」氏から
「メディアが伝えていない福島第一原発事故3年」
3年経つ今、放射能は出ていますか?
水野:
報道するラジオ、今日の特集テーマは「メディアが伝えていない福島第一原発事故3年」です。
今度は京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに伺います。
小出さんに質問が早速リスナーの方からきておりまして、
「安倍総理は7年後の東京オリンピックが開催されるころまでには、原発による放射能汚染について問題なく解決しているんだという様な意味の事をおっしゃられているように聞きました」というふうにおっしゃられているんです。
「本当に大丈夫なんでしょうか?今放射能の心配はしなくていいのでしょうか?」
と、いうご質問なんですけれども、
小出さん、今、もう3年経とうとしているんですが、
放射能は出ているんですか?
小出:
はい、もちろん出ています。
原子炉が壊れてしまっている訳で、
格納容器という放射能を閉じ込めるための最後の防壁も、多分あちこちで穴が開いてしまっていまして、
水を入れてもみんな漏れてきてしまうという状態ですので、
今でも放射性物質は大気中、あるいは汚染水としてあちこちに漏れています。
水野:今も出続けていると。
小出:そうです。
どの位の量ですか?
水野:
で、これまでに福島第一原発事故で放出されたセシウムの量というのは、
今までの物と合わせるとどれぐらいになるんでしょう?
小出:
はい。えー、どこまで正確化はよく分からないのですが、
日本国政府がIAEA国際原子力機関という原子力を推進する団体に提出した報告書があります。
それによりますと、1.5×10の16乗ベクレルという数字が書かれていまして、
それは広島原爆がまき散らしたセシウム137に比較すると、168発分に相当しています。
水野:広島に落とされた原爆の168発分のセシウムがもうすでに、
小出:大気中だけなのですけれども、
水野:あ、これはじゃあ、「海に流れているものとは別で」ですか?
小出:
全く別です。
そして私はこの168発というのも、多分過小評価だと思っています。
なぜなら日本国政府というのは、「福島第一原子力発電所が安全だ」といってお墨付きを与えた張本人です。
で、重大な責任があるわけですし、
私は「責任」という言葉では甘過ぎると思っていて「犯罪」だと思っています。
犯罪者が自分の罪を正確に申告する道理はないのであって、
なるべく自分の罪を小さく見せようとしてはじき出した数字がこの168発分という数字です。
多分それの2倍とか3倍が大気中に既に出たと思いますし、
それとあまり違わない程のものが多分、汚染水として海に向かって流れていると思います。
水野:
あ、そうですか。はぁ~!
大気に出されたものと同じくらいの量のセシウムが海にも流れだしていく事になるであろうと。
小出:
敷地の中にもうそれぐらいは流れているはずで、
敷地というのは土がある訳ですから、
すぐにジャージャーと海へ流れていく訳ではありませんけれども、
多分敷地の中は今も、大気中に出たのと同じくらいのセシウムがあちこちに汚染水として浸みこんでいると思います。
水野:
そうしますと、今の小出さんのお話を荒っぽく計算したら、
広島に落とされた原爆の300発以上分のセシウムが、
様々なところ、地球に移されてしまうと、そういう事になりますよね。
小出:そうです。
放射性物質はどの地域にどの位?
水野:はぁ・・・・
あのそして、皆さん本当に気にしていらっしゃる、
放射性物質はどの地域にどの位の量であるのか?っていうところですね。
小出:
はい。
皆さんご承知だと思いますけれども、
日本というこの国は「北半球温帯」というところにあります。
そこでは「偏西風」という大変強い西風が吹いているのです。
そして福島第一原子力発電所というのは、福島県の太平洋に面しているところに建っていた訳で、
福島第一原子力発電所から放出された放射性物質、セシウムも含めてですけれども、
殆どのものは偏西風に乗って太平洋に向かって流れていきました。
そのため多分、放出された放射能の8割から9割は太平洋に向かって流れて、
北アメリカ大陸の西海岸をかなり汚染しています。
そして残りの1割から2割が、場合によっては東風の日もあったし、南風、北風という日もあって、
福島県を中心とした東北地方、関東地方に降り注いだという事だと私は思います。
水野:東北地方に、関東地方も加わっているんですか
小出:そうです。
水野:具体的にはどの程度の汚染がどういった県でみられているんでしょうか?
小出:
数字でちょっと話させていただきたいのですが、
1平方mあたり60万ベクレルを超えてセシウムが降り積もったという地域が、
およそ1000平方kmあります。
関西のみなさんは琵琶湖はご存じだと思います。
大変大きな湖というか、海のように見える湖ですけれども、
琵琶湖が1.5個入ってしまうというぐらいの広大なところです、1000平方km。
そこが1平方mあたり60万ベクレルを超えて汚染されまして、
今現在10万人を超える人々が追い出されてしまったという地域です。
そしてその周辺にももちろん、汚染の程度が低くなっているところがずーーーっと繋がっている訳です。
そして、私は京都大学原子炉実験所というところで、放射能を相手に仕事をして給料をもらっています。
そしてそういう人間に限って入っていいいという場所を「放射線管理区域」と呼びます。
普通のみなさんは入れないんですけれども、
その「放射線管理区域から外に持ち出すことのできる汚染の程度」というのは、
1平方mあたり4万ベクレルなのです。
「それ以上汚れているようなものはどんな物でも放射腺管理区域の外側に存在してはいけない」というのが、
これまでの法律でした。
もし、1平方mあたり4万ベクレルを超えている地域というものの面積を求めていくとすると、
たぶん、1万4000平方kmだと思います。
水野:どれぐらいの広さっていうことですか?
小出:
日本が38万平方km。
本州だけで24万平方km位だったと思いますので、
本州の数%、5%は超えているというぐらいのものだと思います。
水野:ふ~~~ん・・・
平野:
これ、先生のご本の原発ゼロというデータによると、
東京都心の葛飾区でも4万ベクレル/平方km、こういう数字が出ていますよね。
という事は、「東京の中でも放射線管理区域があった」ということですね。
小出:そうです。
水野:今もあるんですか?
小出:
はい、今もあります。
私のデータではなくて、それは日本国政府のデータなんですが、
東京の下町、葛飾区あるいは江戸川区の一部というところは、
放射線の管理区域にしなければならないほどの汚染を受けています。
平野:なにもやっていないですよね?現実的には。
小出:
はい。
もう、日本国政府は「どうしようもない」と。
これまでは通常時として法律があったけれども、
「今は緊急時だから、元々は放射線管理区域にしなければいけない地域にも人々は住め」
という事を言っている訳でして、
1平方kmあたり60万ベクレルを超えているような、先ほど聞いていただいたところは
さすがに人は住めないけれども、
そうでないところは人が住んでもいいし、「一度逃がした人々もそこにまた戻れ」と日本国政府が言っています。
水野:
東京都の一部も、また、千葉県や埼玉県の一部もそうした放射線管理区域のレベル。
で、今もあり続けているという状況なんですね。
小出:そうです
黒い物質
水野:
そうした地域で、黒い物質というものが見つかっていると聞きましたが、
小出さん、これはどういうものですか?
小出:
みなさんもちょっと想像していただきたいのですが、
例えば駐車場の隅っこの水たまりのあたりに、「なにか黒く干からびたものが堆積している」という様なもの。
あるいは、雨どいの下になにかコンクリートの様なものがあるとすると、
「その上に黒く干からびたものが残っている」という、そういうものです。
水野:小さい、小さい、粒子の様なものが固まっている感じですか?
小出:
要するに、泥がちょっと固まっているという、
あるいはコケがなんか干からびたという、そんな感じです。
水野:それは一体何なんですか?
小出:
私は生物学者ではないのですけれども、
神戸大学の山内さんという私の知り合いが調べてくれたところでは、
「らん藻類の死骸だ」と私は聞きました。
水野:らん藻類ってなんですか?
小出:ええ、苔の様なものだと私は思うのですけれども、
水野:藻類ですね。
小出:
そうです。
そういうもの、あるいは細かい土が雨で集まったとか、そういうものの集合体だと思います。
水野:は。それで、それを小出さんが検査なさったんですね。
小出:
私もやりましたし、山内さんもやっているし、
沢山の人が検査をしてくれています。
水野:なにが検出されたんでしょう?
小出:
えー、今問題になるのはセシウム134とセシウム137の2種類の放射性物質です。
・・・・猛烈な濃度、でした。
水野:猛烈な濃度!
小出:
はい。
たとえば1kgあたり1万ベクレルという濃度を超えているようなセシウムは、
放射性物質として厳重に管理をしなければいけないのですが、
たとえば福島県内の南相馬、あるいは飯舘村というようなところで集めてきた黒い物質の中には、
1kgあたり数100万ベクレルのセシウムがありましたし、
東京都の葛飾区、先ほどちょっと放射線管理区域だと私は聞いていただきましたけれども、
そういうところでも1kgあたり何10万ベクレルという、
水野:何10万ベクレル!
小出:
はい、ものがあります。
そして東京都のいわゆる下町ですね、東の端っこ、千葉県に近いところが汚れている訳ですし、
あるいは西の端っこの奥多摩も汚れているのですが、
水野:へぇ・・・・
小出:
中央部は比較的汚染が少なくて済んだのです。
その比較的汚染が少なかった東村山市というところがあるのですが、
そこの学校から集めてきた黒い物質にも1kgあたり2万ベクレルを超えるセシウムがありました。
水野:はぁ・・・
小出:
つまり、放射性物質にしなければいけないようなものが、
子どもたちが遊ぶ学校の校庭にあるという、そういう状態です。
水野:
はぁ、これ、子どもたちの傍にこういった物質があるという事は、
ずっと子どもたちは被曝し続けることになるんですか?
小出:
そうです。
たとえば、JRの平井駅という駅があってですね、その近くでも黒い物質というものがありましたけれども、
その黒い物質、地面に薄く黒く広がっている訳ですが、
そこは子どもが指でこすった跡すらがあるという、そんな状態になっていました。
水野:これは除去しなければいけないですよね。
小出:もちろんです。
平野:こういうデータを自治体とか政府の担当省は聞いても、要するに何も手を打たない訳ですか?
小出:
そうです。
例えば学校の方は、「そんな面倒なものを持ってきてくれるな」と。
むしろその・・試料を集めようとする人たちを排除するという様な学校が多いわけですし、
国の方はもちろん、知らぬ存ぜずを決めこみたいのですから、
なかなか調査もしてくれないという状態になっています。
平野:もう自衛するしかないけれども、なかなか見えないもので難しいですね。
小出:
そうです。
放射能は目に見えませんし、放射能を測るという事はなかなか難しい事でもありますので、
「自衛しろ」といっても出来ないと私は思いますし、
やはり政府、あるいは行政、自治体というところが
本腰を入れて子どもたちを守るという事をやらなければいけないと思います。
アルプスって期待できる?
水野:
では次に伺いたいのは、福島第一原発の現在行われている作業についてなんですけれども、
汚染水の問題が大変深刻です。
で、アルプスという浄化装置がありますよね。
これが上手く動いてくれればかなり良くなるなんていう話も聞くんですが、
アルプスにはどれぐらい期待していいもんでしょうか?
小出:
え・・・まず、私はあまり期待していません。
福島第一原子力発電所の敷地の中は今猛烈な被ばく環境になってしまっていまして、
そこでちゃんとした装置を組み立てるという事もなかなか難しい、のです。
みんな要するに、なんかやろうとすればみんな被ばくをしてしまうという、そういう状況ですので、
きっちりとした機械をその場所で組み立てるということがまず難しい。
水野:現場で組み立てるものなんですか?アルプスって。
小出:
そうです。
巨大な装置ですので、トラックに乗っけて持っていけるようなものではありませんので、
水野:置く訳じゃないんですね。
小出:そうです。
水野:という事は作業員の方の被ばくを伴う作業なんですね、置くだけでも。
小出:
そうです。
アルプスを作り上げるだけでも被ばくをしながらみなさんがやっている訳です。
ですから本当であれば、たとえば配管で繋がなければいけないというようなところも、
「そんな事をしている余裕がない」という事で、ホースで繋いでいたりするわけです。
そうすると、「あちこちで漏れてしまいまして、なかなかアルプスという装置自身が動かない」
という状態で今日まで来ている訳です。
そして仮に動いたところで「本当に汚染が除去できるか?」というと、
私は多分「出来ない」と思っています。
水野:どうしてでしょう?
小出:
汚染水の中に入っている放射性物質で、重要な放射性物質は3種類です。
セシウムとストロンチウムとトリチウムと呼んでいる放射性物質です。
で、汚染水の中から、セシウムはこれまでも除いてきたのです。除去してきました。
ゼオライトという粘土鉱物にくっつけて、汚染水の中から取り除こうとしてきました。
でも、セシウムがなくなった訳ではなくて、ゼオライトに猛烈にセシウムがくっついていってきたわけですね。
で、そのゼオライトを今は保管をしている訳ですけれども、
セシウムを猛烈に含んだゼオライトはたぶん数100度という温度にもうなっている。
それが保管されているという状態だと思います。
ただし汚染水の中から、セシウムはまがりなりにものぞかれた訳ですが、
まだ、ストロンチウムとトリチウムは全く除かれないまま汚染水にある訳です。
それがタンクに溜められまして、
次々とタンクが満水になってまたあふれてしまったり、あるいは漏れたりしているわけですけれども、
ある時に漏れたタンクから漏れた汚染水の中には、
「ストロンチウムという放射性物質が1リッターあたり8000万ベクレルあった」
という事が確か1年ぐらい前にあったと思います。
つい最近では、「2兆何千万ベクレル」というストロンチウムを含んだ汚染水が漏れたと報道がありました。
で、ストロンチウム90という放射性物質は
環境に放出する時には1リットル当たり30ベクレルでないといけないという、
水野:桁がいくつも違う・・・
小出:
はい、そうです。
ですから、今ある汚染水の中からストロンチウムを除去していって海に流せるような濃度にしようと思うと、
何100万分の1にしなければいけない。ということなんですが、
私自身も放射性の廃液から放射性物質を除去しようという仕事に日々従事している人間なんですが、
1000分の1にしようと思えば、多分出来ます。
で、1万分の1にしろと言われれば、「やってみよう、多分出来るだろう」と思います。
10万分の1に綺麗にしろと言われると、「う・・・・ん」と、私はやっぱり考えてしまうし、
「出来ないかもしれない」と思います。
それを「100万分の1、あるいはもっときれいにしなければいけない」という事な訳でして、
「おそらく出来ない」と思います。
そうなると、
綺麗にできないままのストロンチウムを含んだ排水を海に流すという事になると思いますし、
もう一言いってしまいますと、トリチウムという放射性物質は、アルプスでは全くとれないのです。
水野:全くとれない。
小出:
他の集団を使っても、全くとれません。トリチウムに関しては。
ですから、いつか、必ず海へ流すという日が来ます。
平野:
先生、これは一部の研究者は「害があるのか分からない」という様な事を言っていますけれども、
これ「無い」という事は立証されていないですよね?
小出:必ず害はあります。
平野:あります
小出:
はい。
放射能はもちろん、どんな放射能も必ず害があるのです。
トリチウムという放射性物質は大変弱いベータ線しか出しませんので、
害の程度は小さいという事は確かだと、私は思います。
しかし先程から聞いていただいているようにトリチウムに関する限り、
人間がそれを捕まえようとしても、全く捕まえる事が出来ないのです。
水そのものになってしまうという、そういう性質の放射性物質です。
地球というのは水の惑星と言われているように、水で生きている星な訳で、
その水が汚されてしまうという事は、私はかなり深刻な問題だろうと思いますし、
トリチウムをなんとか、海へ流したりしないようにしなければいけないとは思うのですけれども、
もう、ここまで来てしまうともうどうしようもないと、私も思います。
平野:
これは、汚染水の管理がもう限界に達しているという見通しが出ていますけれども、
先生も前からおっしゃっていますが、
「やがては海に流すしかしょうがなくなるんじゃないか」という様な見方を述べられていますけれども、
これはもう、それが、限界に近付きつつあるという分析ですかね、今は。
小出:
はい。
今福島第一原子力発電所の敷地の中に約40万トン分の汚染水が存在しています。
それで東京電力はこれからもタンクを増設していって、80万トン分はなんとか入れようと言っている訳ですけれども、
でもそれにしたって、どんどん今、汚染水が増えてきていますし、
1日400トンずつ増えている訳ですから、いつか破たんする。
「結局海へ流すしかなくなる」という事は確実です。
溶け落ちた炉心はどうなっているの?
水野:小出先生、元々の溶け落ちた炉心がどうなっているのか?これはどうなんでしょう?
小出:
わかりません。
事故を起こした発電所がもし火力発電所であったとすれば、事故現場に行って調べればいいのです。
どこがどんなふうに壊れてしまった。
ここをこうやって直せるだろう、といって直していけば、
運転を再開することだってそんなに難しいものではないのですけれども、
壊れているのが原子力発電所ですので、現場に行かれない。のです。
水野:
そうですよね。
ただ東電はね、ドロドロになった一つの塊、それを取り出していくんだという計画を立てていますでしょ?
小出:そうです。
水野:小出先生はどういう見立てですか?
小出:
東京電力と国は「確かに炉心は溶けてしまった」と、
で、炉心を入れていた圧力がま、
「原子炉圧力容器という鋼鉄製の厚さが16cmもある圧力がまの底も抜けてしまった」と、
国も東京電力も言っています。
では、その後どうなったか?というと、
「放射能を閉じ込める最後の防壁である格納容器という容器の床に落ちたんだ」と、彼等は言っています。
勿論そうだと私も思いますけれども、
彼らが今想像している状態というのは、
上から落ちてきた溶けた炉心が、格納容器の床の上にまんじゅうのように堆積しているという、
そういう事を彼等は想像しているのです。
私はそんな事は決してないと思っています。
溶けて、猛烈な水をかけながらですね、それでも溶けてしまって、
蒸気がもうもうと噴き出すというようなそういうような、
言ってみれば動的環境と私が呼ぶような環境の中で、
水野:固まっていないっていうことですか?
小出:
はい。
溶け落ちたのであって、私たちがスラッジとかスラリーとか呼ぶような、
いわゆる泥水のような形で多分溶け落ちているし、
あちこちに流れたり、壁に張り付いたりしてしまっていると私は思います。
水野:あちこちに細かく分散して飛びちっているような状況、
小出:多分そうだと思います。ただし、
平野:
地中に混ざったのであれば、またそこに地下水がまた流れてきますよね、
それがまた海の方へ流れるっていうおそれがありますよね?
小出:
そうです。
ただし東京電力は、
格納容器というのは厚さが3cmの鋼鉄製なんです。
で、もし溶けた炉心がその鋼鉄に接触してしまうと簡単に格納容器の鋼鉄は穴が開いてしまうのですけれども、
「溶け落ちた炉心は格納容器の床に落ちた」
床には実はコンクリートの内張りがしてあって、
そのコンクリートが確かに溶けた炉心で破壊されていったけれども、
「70cm分しか破壊されていないで、まだ溶け落ちた炉心は格納容器の中にある」
というのが東京電力の主張なのです。
でも私はその主張を聞いた時に、「あなた達は見てきたのですか?」と聞きたくなりました。
彼等は「計算した」と言っているのですけれども、
そんな計算は全く根拠がない計算なのであって、信用できません。
場合によってはすでに、格納容器の床に張ってあったコンクリートが破壊されてしまって、
「格納容器が、すでに底が抜けている。そして溶けた炉心が地面にめり込んで行っている」
という可能性すらあると私は思っています。
水野:
小出さんが想像するような炉心の状態であれば、
それは、取り出す事ってできるんですか?
小出:
出来ないです。
東京電力と国はなんとかして溶け落ちた炉心を掴み出そうという事をロードマップに書いているのですけれども、
その作業をしようと思うと、大変な被ばく作業になるはずだと私は思います。
で、たとえば100溶けた炉心のうちの、大変な被ばくをしながら50を取り出したとしても、
50が残ってしまうのならば、やはり私はもう同じ事だと思います。
大変な被ばくをするぐらいであるなら、もう取り出す事を全て諦めて、
水野:諦めて、
小出:
はい。
その場で封じ込めるのがいいのではないかと私は思っています。
水野:封じ込めるというのは、いわゆるチェルノブイリの様な、覆ってしまう。
小出:石棺です。
水野:石棺。棺(ひつぎ)って書くんですね、石の棺。
小出:
そうです、おっしゃって下さった通り、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故の場合には、
「もう炉心を取り出すことは諦める」という事にしまして、
石の棺、石棺というもので封じ込めるという事をやったわけです。
ただ、事故から28年経ちまして、チェルノブイリの石棺はすでにボロボロです。
そのために今、始め作った石棺をまた丸ごとさらに大きな石棺で封じ込めようという計画が進んでいまして、
第二石棺というのを現在作っています。
ですから福島の場合も、多分私は石棺を作ることになると思います。
その石棺が何年後に出来るのかわかりませんが、
私は多分死んでいるんじゃないかと、私自身は多分もう死んでいて見る事が出来ないかもしれないと思っています。
ただし、仮に私が生きている間にその石棺が出来たとしても、
30年、40年経てば、またその石棺がボロボロになっていってしまって、
新たな石棺を作らなければならなくなるはずだと思います。
多分その時には、私は確実に生きていません。
水野:・・・・・、はい、ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーー
※ 炉心の状態について、最も妥当と思われる概念図。

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片山氏、佐藤弁護士3/7インタビュー:岩上
2014-03-10

1年前の報道
岩上安身による片山祐輔被告・佐藤博史弁護士 独占インタビュー 「晴耕雨読」氏から
3月7日(金)「岩上安身による片山祐輔被告・佐藤博史弁護士 独占インタビューインタビュー」の模様を実況します。
PC遠隔操作事件で約1年ぶりに保釈された片山氏に、拘置所での経験、今後の裁判の展望などをうかがいます。
岩上「このインタビューでは『被告』ではなく片山『さん』で通したい。生のインタビューは初めて」
片山氏「先日の記者会見を経験したので思ったほど緊張していない。写真なんて一枚撮れば良いのに、何枚も撮られて眩しかった」
岩上「保釈に至った感慨は?」
片山氏「4日に保釈と決まって『良かった』と思って待っていたが、『最高裁で保釈は出たが、検察が特別抗告をした』と言われた。『でもおそらく最高裁は保釈許可を出すだろうと』言われ、もんもんとしていた」
佐藤弁護士「なぜ特別抗告が出たのかは、解説が必要。裁判長は『抗告が恐くて裁判官が務まりますか』と言ってくれたので安心していたが、認められないとなった。
その後裁判所から保釈金の打診があり、急いでお金を積んだ」
佐藤弁護士「しかし特別抗告により執行停止に。
高検しか特別抗告の権限はないが、書類をみたら権限のない地検の検事が特別抗告が出されていることが分かった。これは検察の明らかなミスだった」
岩上「保釈金、お母さんが1000万円用意したことについては?」
片山氏「老後の蓄えから苦労して集めたということを聞いて、何もなければ戻ってくるお金だが、母にはとても感謝している」
岩上「普通は親族との面会ができるが、約1年も接見禁止。苦しさは?」
片山氏「接見禁止については、苦痛以外の何ものでもなかった。
これまでこんなに家族と会わないことはなかった。母の健康、弟の仕事への影響など心配ばかりだった。
母は1年で老けこんだ」
片山氏「父は5年前に亡くなった。
自分が母を支えなければとずっと思っていた。結婚しても母と暮らそうと。
『祐輔、大丈夫?』と声をかけてくれた母は声に張りがなくなり、外見的にも肉体的にも一番ダメージを受けたのは母だろう」
岩上「自宅に帰って睡眠は十分取れた?」
片山氏「拘置所は10時就寝7時起床なので10時には寝られると思っていたが寝られなかった。
平穏に暮らせるのはいつになるのか、有罪になったらまた収監されるのか、という恐怖」
岩上「なぜ生インタビューを受ける気になった?」
片山氏「何もやましいことは無いので、求められた取材には応じようと割り切っている」
岩上「事件について。自分が捜査線上に浮かんでいると知ったのはいつなのか?」
片山氏「ヤフーニュースの記事位は普通の人並に知ってはいた。しかし自分が関わるとは思ってもみなかった。
ある日、何十人もの捜査員が押しかけてきた」
片山氏「捜査のリーダーのキャリア官僚のような人が自分を見つけるなり、第一声『会いたかったよ』と言われた。
捜査令状を読み上げられてが、その後の逮捕状でも、『愛知県のとある会社のPCを使用して脅迫した』というものだった」
岩上「家宅捜査の時はどういう反応をした?」
片山氏「愛知県の会社のPCを、と言われた時に『そんな会社行ったこともないし知りませんよ』と言ったら、『黙って聞け』と高圧的に言われた。
頭真っ白で愕然としていた」
岩上「弁護士へのコンタクトを考えた?」
片山氏「家宅捜索時は弁護士へのコンタクトは考えてもいなかった。まさか逮捕状まで一緒に出されるとは思ってなかった。
自室を捜索され自分は居間で待機させられ、2時間後突然、逮捕状を読み上げられた」
逮捕状の執行、手錠をかけられた話から、片山氏には前科があり、過去に経験があるという話へ。
片山氏「2005年の秋、ネット掲示板に脅迫文を書き込むという事件を起こしてしまった。自分の人生にイライラして、憂さ晴らし的な動機でやってしまった」
岩上「この前科の件は、今回の事件に影響あると思うか?」
。片山氏「私の顔写真が警察にデータがあるということが、防犯カメラの映像を照合した時に、捜査線上に早い段階で自が上がったのだろう」
片山氏「家宅捜索までは分かる。
しかし、大勢のマスコミを引き連れて、逮捕状まで持ってきた。家宅捜索後に押収した物を分析し、自分を任意で取り調べをすれば、証拠に多くの矛盾があることが分かったはずだ。
そういうプロセスを一切無視して逮捕された」
岩上「大勢のマスコミが待ち構えていた?」
片山氏「手錠をはめられ外に出たら、一斉にストロボを浴びせられた。捜査員は『我々がリークしたのではない。マスコミも警察と同じように我々を尾行してるんだよ』と言ったが、リークしたのだろう」
片山氏「最初は湾岸署留置所に4ヶ月半いた。
初日は捜査本部のあった麹町署で取り調べがあった。山口警部補に身上調書を取られたが、やさしかった。
『我々には証拠がある』と言われたが、その後も警察・検察から証拠を見せられることはなかった」
片山氏「過去の経験から当番弁護士制を知っていたので、留置所の係員に『急ぎ弁護士と接見できるように』と訴えた。
来てくれた竹田弁護士には『この事件は毎日接見が必要。取調官よりも先に我々と信頼関係を作らなければならない』とアドバイスを受けた」
佐藤弁護士「竹田弁護士から共同弁護の依頼を受けた。竹田弁護士は足利事件でも関わった。
片山さんの印象はどう?と聞いたら竹田弁護士は『まあオタクですね』と(笑)。
しかし実際自分が会ってみたら印象が違った」
佐藤弁護士「急いで帰って新聞を全て並べて見比べた。
すると報道各社によって言っていることが違っていることが分かった。
特に防犯カメラの映像については、各社全く違った報道をしていた。これはおかしいと」
佐藤弁護士「被疑者との接見後にぶら下がり取材に応じる、という異例の事を行った。
カメラの前で『証拠とされる防犯カメラ映像はない』と言ってみた。
捜査員が笑って証拠を出してきて片山さんも観念するのかも、と思ったが、なんと翌日取り調べは行われなかった」
岩上「佐藤弁護士についてどう思った?」
片山氏「『やっていない』と言う自分を無条件で信じてくれる。これが弁護士なのかな、と思った」
岩上「佐藤弁護士はどのように片山さんが真犯人かどうか試したのか?」
佐藤弁護士「片山さんが本当の犯人だったら、本当の事と違う事を言って私を騙そうとする。
しかし片山さんはヤバい事でも事実であれば全て認めた」
岩上「片山さんはある時から『可視化をしなければ応じない』と、一転して取り調べに応じなくなった。この経緯は?」
片山氏「当初は、取り調べでは不当な取り調べとは感じなかった…」
片山氏「3日後から山口警部補からの本格的な取り調べが始まった。
江ノ島で『首輪は付けていません』と言った途端、突然スイッチが入って『子供じゃないんだから』などと詰問モードになった」
片山氏「その夜『見て欲しい画像がある』と言われ、
3枚の自分のPCに保存した友人との写真などを出された。『これはあなたが売っ払ったスマホのデータを復元したんだよ』と言われた。
手持ちのカードがたくさんあるとほのめかしたのだろう」
片山氏「弁護士に、否認しているのなら調書のサインは全て断るように、と言われた。
3日目の詰問モードの山口警部補にそれを伝えたところ、特に強要されることもなかった。
詰問モードはその日だけで、その後の取り調べはほぼ雑談だった」
片山氏「その後、初日の身上調書の取られ方に問題があったことが分かった。
自分が業務で使えるプログラミング言語を聞かれ、CとC++とJAVAですと答えた。C♯は?と聞かれ、『テスト工程だけなら』と答えたら、それが『経験した言語』とされてしまった」
佐藤弁護士「真犯人の自作したプログラム『アイシス・エグゼ』はC♯で書かれている。
片山さんにC♯は使えるの?と聞いたら『使えない』と。
じゃあそれで君が犯人じゃないことが証明されるじゃないか、と言ったら片山さんは『そうですね』と」
佐藤弁護士「すると、先の身上調査の事で片山さんが『C♯を使えると取られてしまった可能性がある』と。
これではトリッキーな取り調べが行われている可能性がある。きちんと録音・録画をしない限り取り調べに応じないようにアドバイスした」
佐藤弁護士「録音・録画をすれば黙秘権を行使しない、とまで言った。これは異例のことだが、警察が応じなかった」
岩上「『録音・録画がない限りは』という部分を省いて、ただ片山さんが取り調べ拒否、という報道を行ったメディアが多かった」
佐藤弁護士「真犯人だったら『C♯を使えますがそれが問題ですか?』と言う。
しかし片山さんは『自分の周りの誰に聞いても僕が使えないと言うでしょう』と言った。
真犯人だったらこんなディフェンスはしない。
結局彼のPCからC♯で書かれたものは出なかった」
片山氏「一回だけ、C#のサンプルを持っていたので、少し改変して人に渡したことがある。
しかし警察の調書ではその人が『私の目の前でC♯をスラスラと書き始めた。彼がC♯を書けないのは信じられない』と言ったという。
事実でない事が含まれている調書」
岩上「どこかで勉強したのでしょう?という攻防があったと」
片山氏「特捜出身の水倉検事の詰問のこと。一番キツい取り調べだった。『やってるから認めるか、やってないけど認めるか、どうするのが得か考えてみな』と直接的なゆさぶりをいくつもかけられた」
片山氏「また『無実というなら、無実を証明できるようなものがあるなら教えてよ』と言われた。だから『自分の周りの人間に聞けば僕がC♯を使えないことが証明できる』と言ったら、検事は『隠れて勉強したんだろ』と。それは『悪魔の証明だ』と言い返した」
片山氏「そもそも水倉検事には、弁解録取(容疑者の犯罪事実に対する弁解内容を記す文書)の作成を無視された。
これを無視することは違法だということが違法だと後で知った。
水倉検事は『これも弁解録取の手続きだよ』などと弁解した」
片山氏「『アイシス・エグゼ』を作るには『ビジュアルスタジオ』というプログラムを作るプログラムを使う必要がある。
しかし自分は業務では『エクリプス』を使っていた。
職場でエクリプス以外を使えば、画面が全然違うので隣のブースの人におかしいと思われる」
岩上「アイシスというのは片山さんにとってどの程度難しいプログラム?」
片山氏「相当な技術がいる。それだけでなく私とは方向性が違う。
私は業務用のプログラムしか作ったことがないが、アイシスはそうしたシステムをかいくぐるもの」
岩上「重要なポイントとして『江ノ島』『雲取山』、そして捜査には関係ないが『猫カフェ』がある」
片山氏「猫が好き。湘南方面をバイクで走りたいと思い『江ノ島の猫スポット情報』などを調べていた。
PCを監視していた犯人がそれを利用した可能性はある」
片山氏「江ノ島へ行くことは親しい人にも誰にも話していない。
江ノ島に行って、猫に触ったり触ろうと逃げられたりした。問題の頂上を散歩して、釜揚げしらす丼を食べて帰った」
岩上「典型的な観光客ですね」
岩上「その頃犯人は猫に首輪を付けた。
片山氏が防犯カメラに写っているものの、『この時猫に首輪を付けた』という検察の主張と、このカメラの映像は微妙に食い違う…。
冒頭陳述で片山さんは防犯カメラの映像におかしい部分があると言われたとか」
片山氏「防犯カメラは前年12月に設置された解像度の良い最新型。かなりの鮮明さがある。
この鮮明な映像の元データがあるはず。
しかし検察が出してきたのは鮮明さが1/6になった不鮮明なDVDだった。
元データを出して欲しいと要求しているが出てこない」
片山氏「検察は『手持ち証拠には存在しない』と。
解像度の良い映像を見れば、写った自分が、何をどのように持って猫の写真を撮ったかどうか分かるはず。
検察の出した映像は豆粒みたいにしか映っていない」
佐藤弁護士「カメラ映像の片山さんは白い毛糸の手袋をしている。
猫に接触したシーンで手袋を取った様子は見られない。この手袋をはめたままスマホで写真は撮れない」
佐藤弁護士「検察側の再現実験は、右手でデジカメで行われた。
しかし片山さんはスマホを左手で操っていた。
また彼は当時富士通製の『allows X』を使っていた。同機種で再現実験を行なったがかなり使い勝手が悪く、中々写真が撮れなかった」
岩上「次に雲取山の件。なぜ雲取山に行ったのか?」
片山氏「登山が趣味で前年には尾瀬に行っている。
1ヶ月前から下調べもしていたので、江ノ島以上に犯人が『こいつここに行こうとしているな』と分かるだろう。
これも誰にも話さず行った」
片山氏「水倉検事の取り調べの時に、『雲取山なんてマイナーな山に行ってるなんて偶然だね』などと追及してきたが、『何を言ってるんですか。東京都最高峰ですよ。登山に興味がある人なら誰でも知ってますよ』と言い返した」
片山氏「山頂付近では常に他の登山客が3人以上いた。誰かが常にカメラで撮っているような、かつ見晴らしの良い木陰でもなんでも良い場所で、スコップで穴を掘って何かを埋めるなんて無理」
佐藤弁護士「検察は埋められたのは『12/1頃』と。
公判で『片山さんがUSBを埋めた証拠はないでしょ』と聞いたら検察も『ない』と。片山さんが雲取山に登ったのは12/1だけなんだから『頃』はおかしい、と追及したら…(続)」
佐藤弁護士「そうしたら検察は『情報を知らない第三者に埋めさせた可能性がある』と言ってきた。
情報を知る第三者は共犯者だが、情報を知らない第三者なら一般人。普通名乗り出るでしょう。
片山さんが犯人だったら、そいう前提の無理のあるストーリー」
岩上「警察・検察がいくら証拠を探しても出なかった。しかし一つだけ、FBIから情報が提供された。背景には、2012年に出されたアーミテージレポートで『サイバーセキュリティの強化』が提言され、『ウィルス作成罪』が創設されるなどの動きがあった」
岩上「明けて2013年の日米首脳会談で、日米間のテロ対策強化が確認され、同月2月28日に東京で日米テロ対策協議が開かれ、米国主導のサイバーテロ対策に日本の捜査機関が追従しろ、という体制が強化された」
岩上「そんな矢先に、ハイジャック防止法に引っかかるようなこの事件が起こった。米国FBIからも情報提供があった。日本側としては犯人をあげないと、外交安全保障上のメンツがたたない。本来、日米捜査協力の深化において、いわばお手柄のモデルケースになるはずだった」
佐藤弁護士「最後の切り札として出てきたのが、このFBIの情報。
しかしふたを開けてみたらただ『(片山さんとは関係ない)Dropboxからウィルスが見つかった』というだけだった。
それを『片山さんのPCから痕跡』などとメディアは報じた」
片山氏「様々な国の大きな動きの流れのなかに、私というただのIT土方だった一個人が重要なキーパーソンとしている、というのが実感が湧かない。
ただ、ここまで検察が意地になっていることの合点はいきます」
岩上「もう一つの問題は、今回警察はこの事件の捜査のために、企業や自治体の掲示板などの履歴を90億件も解析していること」
佐藤弁護士「ロッキード事件の時に警察は色んな企業を漁って、10年分のネタを得たと言われている。一つの事件を取っ掛かりにする」
岩上「さらに『黒子のバスケ』脅迫事件の時も警察は43億5000万件のIPアドレスのアクセス履歴を解析して犯人逮捕につながったとしている。
産經新聞はこれを同じ記事に掲載し、『だから犯人逮捕には警察のこうした行為が必要だよね』と正当化している」
ここで待機していたITジャーナリストの三上洋氏から質問。
三上氏「犯人からのラストメッセージで『私は前回無実の罪で起訴されたが罪を認めたため刑務所に行かずに済んだ』とあるが、これは片山さんとは矛盾している。
この情報はネットには出ていないとか」
片山氏「過去の私の名前で検索すると、法廷ウォッチャー・阿曽山大噴火さんの当時の私の裁判レポートが出てくる。しかしWeb上のどこを探しても、その後私が実刑を食らったことは出てこない。
真犯人は私が服役した情報を知り得なかったから間違えたのだろう」
岩上「つまり片山さんは『無実の罪』ではないし、『多くの人に迷惑をかけた』と反省している。
犯人の『無実の罪による怨恨』というストーリーは、ネット上の情報だけで作り得たものだったということですね」
岩上「今回特捜の水倉検事が出てきたが、通常こうした事件で特捜が出てくることがあり得る?」
佐藤弁護士「通常あり得ない」
再び三上氏からの質問。
三上氏「今回犯人はメールを繰り返し送ったり、複数人を遠隔で操ったり、かなり手を出している。
ここまでたくさんの事をやったにも関わらず、直接的な痕跡は今回検察から出ているのか?」
佐藤弁護士「一つも出ていない」
佐藤弁護士「黒子のバスケ事件でも、犯人を捕まえてみたら犯行を示す痕跡がたくさん出てきた。
しかし今回片山さんのPCからは一切の痕跡が出ていない。
決定的証拠が出なかったら今回検察は間接事実だけを積み上げて立証せざるを得ない」
片山氏「取り調べ初日に諭されるように『証拠はいくらでもある。
我々は時間をかけて一つ一つ説明していかなければならない』と言われたが、その後一回も証拠を見せてもらっていない」
岩上「犯人に言いたいことは?」
片山氏「第一にまず自首して欲しい。
でもここまでやっている犯人なので、それは0.01%も望めないだろうなと思っている。
せめて『片山氏は犯人ではないですよ』というメールを送って欲しいという希望が、1%くらいある」
岩上「メディアに対して思う事は?」
片山氏「まずメディアスクラムで悪意ある書き方は止めて欲しい。
そして警察の嘘のリークに騙されないで欲しい。
警察とメディアの癒着システム全体を正して欲しい。
逮捕当初、100%私が犯人という書き方をされた」
岩上「最後に大事な話。仕事も失い生活が厳しい状況で1000万円の工面をされたことで、お金が厳しくなっている事に対し、支援をしたいという声があったとか」
佐藤弁護士「片山さんにとってありがたい話。事務所で急ぎバックアップの体制を作る」
岩上「編集無し、ぶっつけ本番のこのインタビューで、片山さんの素が見れたと思う」
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