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人口オーナス社会と経済:吉田(上)

生産年齢人口

 生産年齢人口の減少が低成長あるいはマイナス成長を招くことは、「デフレの正体」を著した藻谷浩介氏が主張したところである。
 大胆に私なりの骨子を述べるなら、
 資本主義経済はグローバル化の道を進んでいるが、基礎的な資本循環は一国内である。
 それは労働生産を制御するため、物的流通と通貨、金融、財政、強制暴力装置などが一国単位の構造をとっているために当然となっている。
 これを一応「国民経済」と呼んでいる。
 従って、一国の労働生産に最大の影響を及ぼす生産年齢人口などの人口構成の推移は、「国民経済」に長期であるが確実な影響を及ぼす。
 というものである。

 それが経済のすべてではないが、長期には極めて大きな要因となることは当然であると考える。
 藻谷氏の人口経済論については、「御用経済学」の側から多大な批判を受けている。
 だが、「独立系エコノミスト」からはほとんど批判を受けていない。
 というより、多くのエコノミストが藻谷氏と同様の人口論を述べている。

 生産年齢人口の核を成すのはもちろん勤労者(いわゆる労働者階級と中間層)である。
 労働生産のほとんどを担うとともに、生活の維持と子どもの育児、教育は労働力と新たな労働力の再生産構造である。
 この層が消費需要と国民公共負担(税収と社会保険負担)の核である。
 この層が増加傾向か減少傾向かは、有効需要のすべてにわたって影響するので、もっとも確実、堅実な基礎的条件を成している。
 統計の「勤労家計」はほぼ同じ意味である。

 今回は、藻谷氏と基本的な骨子は同様ですが、またやや異なる観点からである吉田繁治氏が、この生産年齢人口の減少社会とその経済について述べているので紹介します。
 吉田氏は経済の基礎的な概念も労を惜しまず説明しています。
 ために長文になっていますので上下に分けて掲載します。
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
   人口オーナス社会 1/24 吉田繁治

本稿のテーマは、人口オーナス(onus)の社会と経済です。20年前の1990年代、日本は2010年代から、激しく生産年齢人口の減少する社会に入ると言われたものでした。

そして、2014年、実際に人口オーナス(onus)期に入ると、マスコミもあまり言わなくなっています。そこで、本稿です。

1.日本の人口オーナス期
2.生産性と労働人口
3.実質GDPの増加と、政府の政権維持の立場
4.実質GDPゼロ成長を、決して言えない政府になった
5.世界の人口ボーナス期の転移
6.資産バブルは、人口ボーナスの末期5年に起こる
7.生産年齢人口の頂点からの、ピークアウトする時期は、共通に資産バブルの崩壊
8.生産年齢人口の長期推移と、人口オーナス:2010年→2040年

  ■1.日本の人口オーナス期

人口オーナスは、生産年齢人口の減少が、経済にマイナス要素になる時期を言います。

人口ボーナスは、人口オーナスの逆です。
生産年齢人口(15歳~65歳)がどんどん増えて、働く人が増えるため、生産性が高まると、実質GDPが大きく増加する時期になります。

GDPとはその国で生産された商品とサービスの総額です。
商品は店舗で売る有形のものです。
サービスは、物理的な形のない商品であり、具体的には医療、ホテル、観光、交通、通信、電気、教育など、お金で売買されるものです。
実質GDP=1人当たり生産性×労働者数、です。
この生産性は、1人当たりの有形の商品及びサービスの生産額です。

▼GDPの三面等価

GDPは3面等価です。以下の(1)~(4)は480兆円で等しい。

(1)需要面のGDP=
(5200万世帯+260万企業+中央・地方政府+海外)の需要

(2)所得面のGDP=
個人所得 +企業の利益+減価償却費+間接税-補助金

(3)生産面のGDP=
企業と個人事業の生産高-中間財投入=商品生産の付加価値額

(4)生産性で見たGDP=
商品の1人当たり付加価値生産性×労働人口×(1-失業率)

(注)小売・流通業では、売上高-仕入高=売上総利益=付加価値高=GDPです。
製造業では、商品生産高-原材料費=付加価値高=GDPです。
サービス業でサービス生産高-仕入高=付加価値額=GDPです。

以上の、需要面のGDP=所得面のGDP=生産面のGDP=生産性で見たGDP=商品の1人当たり付加価値生産性×労働人口×
(1-失業率)

付加価値額は、売上から仕入原価を引いた粗利益です。売上総利益とも言う。

GDP=商品の1人当たり付加価値生産性×労働人口×(1-失業率)です。

  ■2.生産性と労働人口

・労働人口(生産年齢人口)が1年に2%増え、
・商品の1人当たり付加価値生産性が3%高まるときは、
その国の実質GDPは、5%増加します。

逆に、生産年齢人口が、現在の日本のように年1%減っていると、生産性の上昇が1%のとき、GDPの増加は0%です。

6000万人は、農林漁業、製造業、流通・交通・通信・電気・教育・サービス業、公務、医療等で働きます。

働く人1人当たりの生産性を、経済学では全要素生産性と言います。

新しい仕事の仕方、または機械や設備の買い替え等による機械生産効率の向上による、人的な生産性の向上です。
企業では、この全要素生産性は、[売上総利益額(粗利益額)÷8時間労働に換算した社員数]で計ります。
生産性を高めることは、企業でもっとも肝心なことです。

日本経済では、国全体の、1人当たり全要素生産性は、以下の推移でした。

GDP=全要素生産性×生産年齢人口×(1-失業率)です。

【10年毎の、全要素生産性上昇率/1年間】

1960~70年 3.3% (高度成長期)
1970~80年 1.7% (オイルショック期)
1980~90年 1.1% (資産バブル経済期)
1990~00年 0.2% (資産バブル崩壊期)
00年~10年 0.7% (2006年~2010年平均
:OECD)

この推移から、全要素生産性は、今度、もっとも高く希望しても、+1%/年が上限であることがわかるでしょう。

2%伸びたのは、東京オリンピックもあった1960年代の後期です。
50年前のような経済の高度成長の再来は、わが国の2010年代にはあり得ません

一方で、生産年齢人口は、今後10年、毎年60万人(1%)ずつ減少します。
誰がどう言っても、どう見ても、未来の事実として確定しています。

そうすると日本のGDPは、[全要素生産性上昇で最大1%×生産年齢人口(-1%)=±0%]です。
現在の実質GDPが続くことが、最良です。

(注)物価が2%上がれば、名目GDPは、実質GDP×(1+2%)=1.02で2%増加します。
しかし名目GDPは、物価が上がることによる金額だけの増加です。商品購買数が増える成長ではない。

実質GDP成長率=需要=生産=所得=生産性×労働人口=0%
名目GDP成長率=物価上昇=+2%


  ■3.実質GDPの増加と、政府の政権維持の立場

・・・ところが、実質成長率0%では、政府の税収は40~45兆円規模のままで、増えません。

▼社会福祉費と国債金利

【増えづける社会福祉費】
他方で、政府負担の社会福祉費は、最低でも毎年1%(1兆円)ずつ増えて行きます。

医療費は、単価(診療費+医薬品費)を1年に3%の割合(2年毎の改定期に-6%)で切り下げ続けないと、1年に3%以上増えてしまいます。

理由は、1人当たり医療費が1年に68.7万円と大きな65歳以上の人口の増加です。
医療費は、65歳未満の1人当たり平均は16.3万円ですが、65歳以上になると、1人当たりでその4倍に増えます。

65歳になって突然増えるわけではない。
60歳を超えるころから、慢性の生活習慣病のため、徐々に、しかし急な上昇カーブで増えて行きます。

1人当たりの医療費は、60歳代が40万円ですが、70歳代68万円、80歳代以上は104万円です。
(注)公的保険で70%~90%を支給するため、個人の負担は保険料を含んでも12万円から20万円くらいと少ない。
他の世代の保険料から、及び赤字国債、そして税での負担が増えるのです。

【増える国債の利払い】
金利は現在、史上最低(10年債の金利は0.6%)です。
1000兆円の政府債務と国債の利払いは、9.9兆円(2013年度)と極めて低い。

この金利が仮に1.6%に上がると、増加利払いの1%分(10兆円)が、満期が来る度に、増えてゆきます。

国債を増発しなければならない政府にとって、実質GDP増加の0%は、税収が増えないことでもあるので経済政策面では認めることができない

  ■4.実質GDPゼロ成長を、決して言えない政府になった

実質GDPの増加をゼロとすると、政府にとっては所得税の増加がない。
他方、社会保障費は、経済成長の低下や景気には関係なく、財政支出として増え続けます。
このため、国債の増発しかなくなる。

財政赤字の構造的な増加によって、1年に43兆円以上の新規国債の増発が続き、翌年は44兆円、次は45兆円、3年目は46兆円・・・と
増えるとなれば、100%、国債リスクが起こり、金利上昇の恐れが強くなる。

(注)2014年度の、16兆円の財投債を含む、実質的な新しい国債の発行は59.4兆円です。
一方では、返済の満期が来る国債が122.1兆円分あります。
政府財政が赤字で返済ができないため、政府は、借り換え債を発行しますがこれが122.1兆円です。
合計で181.5兆円という巨額な新規債の発行があります。

財務省と新聞は、財投債(16兆円)と借り換え債(122.1兆円)を含まない43.4兆円の発行だと強調しますが、実際はその4倍です。

国債発行の増加が招く金利の上昇を防ぐには、財政支出を減らし、経済が更に不況になることを受容せねばならない

しかし毎年が、社会福祉費や政府支出を減らす緊縮財政で、不況の連続では、内閣がもたない
経済ももたない
このためGDPの見通しを、政府は、常に高くします

GDP計算でも、誤差とは言いながら、「鉛筆なめ」があります。
サンプリングでの統計データでは、これがある程度は可能です。
(注)中国のGDP集計を見てください。

▼政府の「呪術(じゅうじゅつ)」になったGDP成長

政府は、実質GDPは、1%は伸びる。物価は1.5%~2%上がる。
このため、実質GDPは1%増え、名目GDPは2.5~3%増える、と言わざる
を得ない

言いたくなくても、言わねばならない。

【高い経済成長への願望】
とりわけ2000年代の後期(08年9月リーマン危機以降)、政府のGDP目標は、民間の予想より一段高いことを続けています

安倍政権は、今後10年で、実質GDPの成長において、平均2%という高い目標値(本当は、呪術の願望値)を掲げています。

1990年以降、23年間の平均成長率はせいぜい0.9%でしかなかった。
何をどうすることで、毎年2%成長させるのか。お分かりになる方、おられますか?

【マネーの増発は、実質経済の成長にはならない】
2013年4月以降、異次元緩和として、毎月8兆円のマネタリー・ベースを増やしている日銀によるマネー増発は、直接に、円安とインフレ要素ではありますが、経済の実質的な成長要素ではありません

ただしインフレになることによって、設備投資が増え、その後の実質GDP成長が高くなるという可能性はないとは言えません。

しかし安倍政権が言うのは、1年や2年間の2%成長ではない。驚くべきは、10年間の2%成長(1.22倍)であることです。

・今後の全要素生産性(最大で+1%:10年で+10%)と、
・生産年齢人口(毎年1%減少が確定:10年でマイナス10%
)によ
って、不可能なことです。

しかし主流の経済マスコミは、不可能とは言わず、迎合しています。
当方なぜか、少数派側の見方になります。

【2014年度の対比】
2014年度の政府経済見通し
・・・実質GDP +1.4% :名目GDP+3.3%:物価上昇1.9%

民間エコノミスト41人の平均予想
・・・実質GDP+0.8%:名目GDP+2.3%:物価上昇1.5%
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131221/fnc13122121210005-n1.htm
(注)GDP増加=全要素生産性の増加×生産年齢人口の増加、です。

一体、なぜかな? と不思議に思うのです。

政府に、科学的な、言い換えれば数値的な根拠を、聞いてみたい。
根拠は数値的なものでしかあり得ないはずです。
 ーーーーーーーーーーーーー
 人口オーナス社会と経済:吉田(下)へ続きます。
関連記事

人口オーナス社会と経済:吉田(下)

 人口オーナス社会と経済:吉田(上)からの続きです。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  ■5.世界の人口ボーナス期の転移

人口のボーナスの時期と、その後の人口オーナスへの転換期には、世界各国で、決まったものがあります。

以下は、33年前の1980年からの、10年毎の生産年齢人口の変化です。

▼各国の人口ボーナスの頂点年度とその後

各国で、生産年齢人口がもっとも多くなった人口ボーナスの頂点の年を*で示します。
人口ボーナスの頂点年を臨界点に、その国の経済の転換が起こっています。
経済成長がなくなるのが、人口ボーナス期の頂点のあと、つまり人口オーナス期です。

    1980年  90年  2000年   10年  20年  30年  40年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本     68%  *70%   68%   64%  59%  57%   53%
米国     66%   66% *67%  *67%   64%   61%   61%
中国     60%   66%  67%  *73%  *72%   69%   63%
スペイン   63%   66%  *68%  *67%   65%  63%   57%
アイルランド59%  62% *67%   *66%   64%  64%  60%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【人口ボーナスの頂点と、その後のバブル崩壊】

日本 1990年・・・土地・株の資産バブル経済の最終年
米国 2000年・・・ドットコム・バブル崩壊
2008年・・・サブプライムローン・バブル崩壊
中国 2010~2015年・・・2014~15年不動産バブル崩壊
スペイン2000年~2010年・・・ユーロ・バブルの発生と崩壊
アイルランド2000年~2010年・・・同上
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【原則】
人口ボーナスの頂点の年に向かう前の20年間くらいが、各国で実質GDPが4%くらい、物価が2~3%上昇する時期になります。

この時期は、高い経済成長になります。実質GDPで+3~4%、名目GDPで+5~7%の増加です。

被雇用者の賃金も、毎年5~6%は上がる。
貯蓄率も高く、金融資産も増加率が高い。(日本では1980年代初期まで)

ところが人口ボーナスの末期5年になると、生産年齢人口の増加率が低くなり、頂点の年から、マイナスに向かいます。
日本では、これが1990年でした。

  ■6.資産バブルは、人口ボーナスの末期5年に起こる

人口ボーナスの、頂点の前の約5年は、生産年齢人口の増加率が低下しほぼゼロに向かうため、企業の設備投資は、減ります
将来の経済成長が低くなると予測されるからです。

他方で、この時期は、人口がもっとも多い中心世代が40歳台の後期になり、賃金も金融資産も大きくなる時期です。

生涯の賃金での最高額は、世界共通に49歳~50歳前後です。
この時期は、生涯最高に、預金が増える時期ででもあります。

銀行預金や生命保険として増えた金融資産(預金)は、何かで運用されねばならない。ここで、ほぼ必ず、
・不動産と株資産への、
・投機的な投資
が起こります。
(注)資産とは、不動産、株、及び債券です。

投機的とは、売り抜けて値上げ益を得ることが目的の、投資を言います。投機で勝つには、相手を出し抜かねばならない。

この時期が、資産バブルの最後の時期です。

  ■7.生産年齢人口の頂点からの、ピークアウトする時期は、共通に資産バブルの崩壊

・日本では1990年から1992年、
・米国では2000年と2008年、
・スペインでは2000年から2010年、
・アイルランドで2000年から2010年でした。

これらはまさに、生産年齢人口がもっと多い、人口ボーナスの最終年です。
人口ボーナスがピークアウトに向かう時期に、資産バブルの崩壊が起こる。
これは経済の原理、変わらぬ原則、あるいは鉄則と断じていいことでしょう。

中国のことを言います。
不動産バブルの崩壊が、他国と同じように人口ボーナスが終わる2014年~2015年に、(確実に)来ます。
その後は、2013年は実質GDPで7%、名目GDPで10%成長の中国も一段、経済成長が、一段低くなる時期が来ます。実質GDPで4~5%でしょう。
その後、2020年から、中国もGDPの低成長期に入ります。中国の資産バブル崩壊からの転落は、一人っ子政策のつけで、激しくなります。
(注)ただし、中国の中央政府の負債は、2013年でGDPの比23%と少ない。
省政府がこれと別に300兆円で、名目GDP($8.2兆:820兆円:日本の1.7倍:2012年)に対し37%、中央政府との合計でGDP比60%と少ない。
日本が、GDP比238%、ギリシア156%、イタリア126%、米国102%、フランス90%、英国88&%、スペイン56%です。

中国の政府負債の統計が正しい数値なら、中国政府は、バブル崩壊対策として、最大400兆円くらいをとれるため、不動産バブル崩壊は「崩壊年度を長くする緩和」ができるでしょう。
しかし、そうすると、今度は、政府対策が終わる時期に、また資産バブル崩壊が来ます。

中国の、大きな問題は、人民銀行の信用規模の大きさ、つまり人民元発行量の過大です。
2013年10月時点で、GDP(820兆円)比で70%の560兆円もあります。

比較すれば、日銀は224兆円でGDP(480兆円)比47%、米国FRBは$4.1兆(410兆円)でGDP($16兆:1600兆円)比で26%です。
人民銀行の、通貨(元)の発行の、異常な多さが目立ちます。中国は、「金融の近代化(=銀行振り込み決済)」が、まだまだであるため、買い物や仕入に、現ナマを積んで、多く使う社会とは言え、人民銀行の通貨発行額は、インフレを大きくするくらい多い。

この人民銀行の人民元発行も、国家の負債と見ることができます。
このため中国の政府部門の、実際的な負債のGDP比は、[中央政府23%+地方政府(省)37%+人民銀行70%]=GDP比130%と大きくなります。

これは、2010年に資産バブル崩壊と財政危機があった、イタリア並みの政府の負債率ですから、バブル崩壊期に必要になる、巨大な公共事業の余力は、日本よりはあっても、イタリア並みでしかない。
結論を言えば、2014年から15年の、中国の不動産バブル崩壊は、日本にとっては、08年、09年のリーマン危機の1/3くらいの、相当な経済ショックになります。

  ■8.生産年齢人口の長期推移と、人口オーナス:2010年→2040年

人口オーナス
 2010年 2040年 減少ポイント GDP低下
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本   64% 53% 11ポイント 大
米国   67% 61% 6ポイント 中
中国   73% 63% 10ポイント 大
スペ イン   67% 57% 10ポイント 大
アイルランド 66% 60% 6ポイント 中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(生産年齢人口15歳~65歳の人口構成比)

今後の、長期の経済成長で言えば、以下が言えます。

(1)日本は、世界で最初に、世界でいちばん大きな人口オーナス期にはいり、2014年、2015年からGDPの実質成長が、ほとんどなくなる

マネー増発で物価は上がるが、実質的な経済成長はほとんどない。物価上昇を引いたあとの実質GDPで、間歇的には、1%、2%くらいの上昇がある。
これから10年の、平均経済成長(実質GDP)は、0%~0.5%程度でしかないだろう。

日銀が、2015年に、異次元の量的緩和(年間80兆円の円の増発)からの、出口政策に失敗すれば、2015年の円安($1=140~150円付近)からの、悪い物価上昇になる。

(2)米国は、日本に18年くらい遅れ、人口オーナス期に入っている。しかし、移民のため、生産年齢人口の減少幅は、日本の1/2である。

このため、実質GDPの低下、減少は、日本の半分程度である。
ただし、米国経済も、今後は実質で1~2%しか成長しなくなる。

(3)中国は、2014年~2015年が、人口ボーナスの頂点になる。従って、遅くとも2015年から、高くなっている不動産価格の大きな低下が起こって、中国不動産バブルは崩壊する。

その後、中国は、かつての一人っ子政策のつけがあらわれ、巨大な人口オーナス期にはいる。

2014年から2020年までは数%(+5~+6%)の実質GDPの成長はあるが、2020年以降、低成長時代(実質GDPで+2~+3%:現在の米国並)に向かうことが確実である。

(4)欧州は日本に近い。GDPの面では(米国+日本)/2が欧州。

実質GDPの増加=全要素生産性の増加×生産年齢人口の増減、です。

全要素生産性の増加は、高い年でも、一次産業、二次産業、三次産業の加重平均である国全体の産業では、1%~2%しかない。

このため、その国で、人口ボーナスの頂点年で描いたように、生産年齢人口が減少に向かうとき、その国の実質GDPの成長(実質所得の増加)は、低下することが確実になります。

願うことは、安倍首相と同じように「高い経済成長率」です。しかし、それには「定量的な根拠」が必要です。

生産年齢人口が毎年1%減る中で、実質2%のGDP成長には、全要素生産性が、1年に3%上がる必要があります。

1960~70年 全要素生産性の上昇=3.3% (高度成長期)。

この1960年代です。1964年が東京オリンピックでした。50年前です。
この時期の、平均年齢の若さの、活力の時代に戻れるでしょうか。

東京オリンピックの前は、新幹線もなかった。TVも白黒で、パソコンはもちろんない。クーラーや自動車をもっている人も稀でした。
1960年代は、日本が、実質7%成長の時代で、10年で、実質で2倍の経済、所得でした。どんどん買う物が増えていた時代です。

その時代が、再来するかどうか。全要素生産性が1年に3%上がることができるかどうか、にかかっています。とても無理に思えます。

無理と思えるなら、今後のGDPの増加に対して、願望的な期待をすべきではない
政府は、全要素生産性の2%~3%増加によって、再来させると言っていますが・・・どう考えても無理です。
政府(内閣府)から、理由の説明が聞きたい。
政府は、あからさまな嘘を言っています。
安倍首相は、過去と現在の全要素生産性を知っているのでしょうか?


(注)1年は、公共投資の増額により、3%成長も可能でしょ
う・・・しかし政府は、10年続けると言っています。

 ーーーーーーーーーーーーーー
 吉田繁治氏の関連ページ。

動乱の2012年(1)金融危機、通貨増刷:吉田
動乱の2012年(2)ホルムズ海峡、増刷で逃げる通貨:吉田
動乱の2012年(3)通貨と国債、デレバレッジ:吉田
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吉田繁治:金融・経済・仕事への質問回答集
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