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もうすぐ北風が強くなる

地球温暖化の終わり:田中宇

第四氷期
 第四氷河期の氷床
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   地球温暖化の終わり  1/29  田中宇

 昨今の世界的な大寒波の原因について、太陽の活動が劇的に低下していく傾向の始まりであり、世界はこれから17世紀後半に起きたような「小氷河期」になる可能性が高まっているという指摘が、学者の間から出ている。
 黒点など太陽の活動は、11年周期のピークにあるが、ピークの高さが異様に低く、これから太陽の活動が低下していくと、マスコミや政府が喧伝する「地球温暖化」とは逆の「地球寒冷化」「小氷河期」が起こるという分析が出ている。 (Scientists baffled as Sun activity falls to century low) (Is a mini ice age on the way? Scientists warn the Sun has 'gone to sleep' and say it could cause temperatures to plunge)

 米政府(大統領府)は、この冬に米国などを繰り返し襲っている、北極の気流のうず(極渦)が引き起こす大寒波について「地球温暖化のせいで起きているようだ」と発表している。
 「地球が温暖化すると、地球は寒冷化する」という学説を大まじめで主張する学者もいるが、オバマ政権が、地球温暖化懐疑派が多い連邦議会を回避しつつ炭素税を導入したがっていることから考えて、米政府のコメントは、政治目的の歪曲だろう。 (White House says `polar vortex' likely caused by global warming) (House slams door on carbon tax_) (Global Warming: The Wall Street Party Has Begun)

(オバマ政権は、米議会の反対を無視して地球温暖化対策をやろうとしているだけでなく、水に関する政府の行政介入を強めようとしている。
 水に関する事業の民営化、事実上の価格引き上げ、水道水でなくミネラルウォーター利用の奨励、水など環境関係の大企業の利益拡大の誘導を目論んでいるように見える。
 TPPによって、大企業の権限を拡大して政府を超越する存在にしようとしているのと同根だ。世界的な水問題の政治化は、人類にとってプラスになりそうもない) (Obama's Climate Task Force Is a Treaty Trap) (Climate Change Hysteria Falters. Water Is The New Target) (The World Bank Is Quietly Funding a Massive Corporate Water Grab) (Water is "The Enemy" in Gatorade Video Game)

 太陽は、宇宙の恒星の中で、非常に安定している方で、11年周期の太陽活動における光量の変化は0・1%にすぎない。
 しかし、太陽が地球に与えるエネルギーの総量は、地球上の他の動きによって発生するエネルギーの合計量の2500倍も大きい。
 だから、太陽の活動が少し変化しただけで、地球の気候に与える影響も非常に大きいものになると、米コロラド大学の学者が言っている。 (Is Polar Vortex Start of Little Ice Age?)

 政府やマスコミ、学界が喧伝する「地球温暖化人為説」は、恣意性の高いコンピュータモデルしか根拠がなく、科学的に正しい可能性がかなり低い。これまでの研究を読むと、二酸化炭素の増加が地球を上げる要素なのか下げる要素なのかも確定的に言うことは困難だ。
 NASAでは昨年、二酸化炭素が気温の低下要因になっているとする研究結果が出された。
 それらを踏まえつつ、万に一つ、地球の二酸化炭素量が人為理由で増加し、それが地球を温暖化する要素として働いているとしても、その要素は、17世紀後半のマウンダー極小期のように小氷河期が来て太陽の活動が低下することによる地球寒冷化の規模をはるかに下回り、結果として地球は今後数十年間、寒冷化することになる。 (NASA report verifies carbon dioxide actually cools atmosphere)

「ならば数十年後、百年後に再び温暖化するに違いない。その時に備え、今のうちに二酸化炭素を減らすべきだ」と言う者がいそうだが、そもそも二酸化炭素増が温暖化の要因だと確定できないし、人為説も政治誇張の可能性がある以上、それは詭弁にすぎない。
 二酸化炭素削減先にありきで、人為説が確定的に論じられ、それを疑問視する人々を政治的に排除する近年の状況は、非常にいかがわしい。 (Report: World Entering a Period of Global Cooling) (地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(2)

 予測されている寒冷化と関係あるとは言い切れないが、地球の平均気温は、すでに1997年から横ばい状態が続き、それまでの上昇傾向が止まっている。
 温暖化人為説の「総本山」である国連のIPCC(国連気候変動パネル)は、ようやく昨年からその傾向について認め始めた。
 しかし、その一方でIPCCは、97年以前の温暖化傾向の原因が、人為に基づく二酸化炭素の増加である可能性が95%だと発表した(以前は90%の確率と言っていた)。
 IPCCは「今は温暖化の傾向が止まっているが、今後再びひどい温暖化が起きるのは確実だから、二酸化炭素の削減が必須だ」と主張し続けている。 (Warming Plateau? Climatologists Face Inconvenient Truth) (95 per cent of intelligent people know the new IPCC report is utter drivel)

 曖昧な根拠しかないのに「地球の温度は15年間横ばいだが、今後必ずまた上がる」と断言することが許されるのなら、太陽活動の傾向を根拠に「これから17世紀後半に起きたような小氷河期が来る」と断言することも許されるはずだ。
 「地球の気候変動の歴史を見ると、大きな寒冷化が来る前に、小さな温暖化の時期があることが多い。今回もそれだろう」と言っている学者もいる。 (Is `global cooling' the new scientific consensus?)

 ドイツの学者は、太陽活動の循環説に立ち、今後の寒冷化を予測している。
 気候変動の主因は人為でなく、太陽を含む自然活動の変化であり、その中には循環的なものが多い。そう考えるのが妥当だ。
 人類が出す二酸化炭素が地球を破滅的に温暖化するという理論は極論だ。極論を「真実」のように扱った学者が国際的に権威を持ち、それに対して科学的に反論しようとする学者が冷遇される時代が続いている。
 こうした状態は最終的に、学界や大学の全体の権威を落とすことになる(すでに多くの大学は、非常にくだらない存在になっているが)。 (German Scientists Show Climate Driven By Natural Cycles - Global Temperature To Drop To 1870 Levels By 2100!)

 地球温暖化は、極地の氷が溶けて海面上昇を引き起こし、標高が低い土地が大半の小島群からなる島嶼の諸国が沈んでしまうと懸念されている。
 しかし実際のところ、モルジブでは海面上昇の懸念を無視して、海面すれすれのところに新空港が作られた。トンガでは海面が低下している。 (Maldives So Worried About Sea Level Rise, That They Are Building A New Airport Next To The Sea) (The UN Global Warming Hoax is Slowly Dying)

 逆に今後もし小氷河期が来るとしたら、緯度の高い地域での生活が困難になり、それが大きな問題になる。
 娯楽の面では、たとえば日本アルプスの槍穂高や白峰三山など3千メートル級の山々や、北海道の大雪山系の主脈などが万年雪に覆われ、夏山登山ができなくなるおそれがある。登山が好きな人は、早めに飽きるまで登っておいた方が良いかもしれない。

 英国とオーストラリアは最近、政府予算の中の地球温暖化対策費を、相次いで大幅に削減した。英豪とも、今の保守系の政権が地球温暖化対策に反対しており、そのため予算削減したというのが表向きの事情だ。
 しかし英国や、外交面で英米の影響が強い豪州のようなアングロサクソン諸国は、長期的な覇権戦略を重視し、国際的に重要と考える事柄について、誰が政権をとってもあまり変わらない政策を続けるのが通常だ。 (UK gov't slashes global warming spending by 41 percent)

 米国はもともと議会が温暖化対策に反対している。
 日本も昨秋、2020年までに行うはずの温室効果ガス排出削減の目標を達成できない(する気がない)と発表した。カナダは3年前に京都議定書からの離脱を宣言した。
 このように、英米など先進諸国が温暖化対策に消極的になっている理由は、地球が温暖化していないという物理的な事象だけでなく、国際政治面で、かつて先進国が握っていた地球温暖化対策の主導権を、中国が引率する途上諸国が奪い、先進諸国が途上諸国に金を出さねばならない事態になっているからだ。 (Last-minute deal saves fractious UN climate talks)

 もともと地球温暖化問題の本質は、経済が成熟化して環境技術も高いため二酸化炭素などの排出量が減った先進諸国が、これから排出量を増やして経済成長(金儲け)しようとする途上諸国から資金をピンハネするための国際政治詐欺だった。
 ところが、米国の影響力の低下、中露などが率いる途上諸国の台頭、覇権の多極化により、09年のCOP15を境に「これまで二酸化炭素をさんざん排出した先進諸国が、途上諸国に金を出せ」という要求が国際的に強まった。 (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題)

 ワルシャワで行われているCOP19の準備会合では、昨秋来、金を出すのを渋る先進国を途上国が非難して議事が進まなくなっている。
 先進国は、降参して金を出すか、それとも温暖化問題自体の存在を無視して離脱するしかなくなっている。
 その流れの中で、英豪で政権をとった保守派が、温暖化懐疑派を気取ることで、金を出すのを拒否している。 (Poor countries walk out of UN climate talks as compensation row rumbles on) (世界経済の構造転換)

 どうせ、もともと温暖化人為説が詐欺なのだから、温暖化対策が世界的に頓挫しても、人類の生活に何ら悪影響はなく、むしろ詐欺に乗ったマスゴミや学者の権威が失墜して好都合だ
 (米英では、クライメートゲートなどで関連学者の権威が落ちたところがあるが、学界後進国の日本では、温暖化人為説を声高に主張していた学者らが、まだのうのうと大学で給料をもらい続け、権威も低下していない)。

 地球温暖化は、温度上昇の停止や太陽活動の低下といった現実面と、先進国が途上国との綱引きに負けたという国際政治面の両方において、終わりになりつつある。 (地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1)
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※ (もうすぐ北風)
 これから小氷期に向かうのか、第五氷河期に向かうのかはわからない。
 それが分かるのは少なくとも数千年が必要である。
 現在の特徴は、メキシコ暖流の弱まり、降水量の減少と大陸の干ばつ、日射量の増加による猛暑、冬季の大寒波と両極の海氷面拡大と氷床の増大である。

 例えば、地球上で稀なほどの高緯度に大都市が発達する北西ヨーロッパは、メキシコ暖流と南西からの偏西風によって冬の寒冷が異様に緩いことの賜物である。
 夏はその高緯度なりの冷涼な気温であるが、冬の暖かさがかつかつとはいえ農業人口と産業を可能にしてきた。
 暖流がそのまま弱まるなら、スイス以北のヨーロッパの冬はその緯度なりの寒冷な気温となるだろう。
 つまり北フランス、中部ドイツ、中欧などは零下十数度の「大寒波」が冬中続くことななる。英蘭、北ドイツ、北欧は農業が壊滅し、産業も撤退することになる。実際、世界で北緯50数度以北の大都市などは存在しないのである。

 これが小氷期の場合の例えである。イギリスは飢餓状態の農民が「囲い込み運動」で死に追いやられ、オランダは氷漬けとなり、ペストと魔女狩り、三十年戦争の傭兵による殺戮が荒れ狂った時代である。

 日本は天保、亨保の大飢饉、富士の噴火と続いた。
 それだけで十分だ。
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アベノミクスは愚民政策-インフレと円安の結末:盛田

ハンガリー王宮
 ハンガリー国会議事堂

 著者は法政大学教授から野村総研、ブダペスト経済大学。ハンガリー在住の経済学者。技術、経営を支援する立山ハンガリー研究所社長。
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   アベノミクスは愚民政策-物価上昇と円安が惹き起こす結末  盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者) 1/28 リベラル21

 アベノミクスを信奉する学者は、消費者の合理的行動に期待して、消費者物価の上昇を見込んだ消費活動の活性化が、生産拡大(GDP成長)をもたらすと信じている。
 しかし、そもそも消費者が合理的に行動するという前提自体が間違っている。
 経済学の空理空論を構築する前提条件だが、その前提そのものが間違っている。
 現実の経済社会で、消費者は合理的に行動しないしできない

 国民は消費税の3%引き上げで騒いでいるが、その何倍もの影響に晒される円相場が3割(30%)以上も安くなったことに大きな反応を示さない。
 円安が国の経済を助けるという政府の愚民政策を信じている。
 どう考えても、消費者の反応は合理性に欠ける。

 ちょっと考えて見ればよい。1000兆円の国民貯蓄が2年前にはまだ10兆ユーロの価値をもっていたが、円が対ユーロで3割安くなったために、現在の為替評価では7兆ユーロの価値しかもたなくなっている。
 3兆ユーロの減価である。
 日本のGDPの1年分だ。
 日本からユーロ圏に旅行する人や出張者の費用も3割も高くなっている。3%どころの話ではない
 しかし、一般消費者には、30%ものユーロの上昇より、3%の消費税引上げが焦眉の問題だ。
 戦争で何千何万の人が犠牲になることより、身近で起こる殺人事件の方がよほど大きな関心事であるのと良く似ている。
 個人的環境を超える事件や出来事は、どれほど重大でも、適切な関心を払うことができない
 個人の消費行動が経済合理性や合理的期待にもとづくという前提は空理空論で、現実の分析には役に立たない

  なぜ物価上昇が政策目標になるのか

 そもそも、物価上昇を経済政策目標することが間違っている
 経済目標は国民生活の向上と安定にあるはずなのに、それが「物価上昇」にすり替えられている。
諸悪の根源はデフレにあるから、インフレにすれば景気が良くなる」という庶民の無知を誘導するイデオロギーが、物価上昇政策を合理化している。
 しかし、デフレもインフレも、実体経済が生み出す現象に過ぎない。
 デフレをもたらす実体経済の解明なしに、「通貨量を増やして、インフレになれば、景気は良くなる」という単純な議論で、経済政策を展開されてはたまらない。

 安倍政権は3%の物価上昇と1%の実質GDP成長を目標にしているが、ここにもトリックがある。
 実質生産が1%しか上昇しないのに、物価が3%も上昇したらどうなるか。
 通貨の購買力、したがって所得の実質価値が2%減少するだけだ。
 アメリカの経済学者クルーグマンなどは、無責任にも、思い切って4%の物価上昇を実現するように通貨量を増やせと提言している。ここに大きな落とし穴がある。

 増税政策で国の債務を削減するのは政治的に非常に難しい。
 消費税の3%程度の引上げですら、国民の大きな抵抗に合う。
 国民の不満を和らげるために、増税で税収を増やす一方で、他方で現金をばら撒くから、純増収分は消費税の2%にも満たない。
 このような増税政策を何度繰り返しても、政府の巨額の借金(公的債務)を大きく削減することはできない。
 そこで頭の良い連中が考えるのが、インフレで借金を棒引きする方法だ。

 インフレになれば通貨の価値が下がる。
 したがって、借金の負担も通貨が減価した分だけ減る。
 たとえば、年金の物価スライド制を廃止し、物価上昇が起きても、年金の名目額を引き上げなければ、年金の実質価値を下げることができ、年金財源の減少をその分だけ食い止めることができる。
 しかも、そうやって年金を減らしても、増税する時のような抵抗に会うことはない。
 国民は個人的な税負担には声を上げるが、通貨の減価に声を上げることはない
 この事実も消費者の合理的行動を否定するものだ。

 何のことはない。物価上昇を惹き起こす経済政策を一番歓迎しているのは、財務省なのだ。
 安倍首相は金融緩和政策が株式市場を押し上げて得意満面だが、アベノミ(ッ)クスが惹き起す弊害が明々白々になれば、事態は一挙に逆転する。
 好事魔多し。あまり調子に乗らない方が良い。

  金融緩和の資金は株式市場へ

 東京証券取引所の株価(時価総額)が1年間で5割も上昇するという異常な高騰で、景気が良くなっているような気になっているが、沸いているのは金融投資家と一部の輸出事業者だけ。
 国民は「物価上昇と円安が日本経済を救う」などというアベノミクス・イデオロギーで「目くらまし」を食らい、株価が上がり円安が進行しているから、景気が良くなるのではと信じている。
 しかし、経済成長に裏付けられた株式高騰でないから、証券会社や自動車会社は賃上げできても、一般の会社は賃上げなどできない。
 円安で物価だけが上昇しているから、生活は確実に悪化している。

 統計を見ても、「異次元緩和」で景気の上向きを感じている事業者は2割程度にすぎない。
 アベノミクス効果で潤っているのは証券会社を初めとする金融事業者と輸出代金が事業収入に占める割合が大きい事業者だけ。
 あとの8割の事業者には「異次元緩和」の恩恵がないどころか、逆に売上が増えないのに、輸入価格の高騰によってコストが上がるから、経営は苦しくなっている。

 日銀が市場に流し続ける通貨は、実体経済に向かうことなく、金融投資に回っている。
 実体経済に資金需要がないから、安易な金融投資に向かっているだけのことだ。
 金融緩和資金と株式市場の活況を見込んだ投資資金が流れ込んだ結果、東京証券取引所の時価総額は300兆円弱から450兆円までに急上昇した。
 GDPが1%程度しか増加していないのに、金融投資だけが異常に膨れ上がっている。
 安倍首相は時価総額が50%も上昇したので「どや顔」だが、所詮、株式投資は合法カジノ。
 実体経済の成長がないのに金融投資だけが膨れ上がる現象はバブル以外の何物でもない。これこそ、「異次元」の金融緩和という禁じ手が惹き起こした現象である。

 いずれ、日銀はバブルの進行を食い止めるために、金融緩和政策の手仕舞いを考えなければならなくなる。
 しかし、アベノミクスの根幹をなす金融政策を転換するのは簡単でない。
 だから、頂点に達するまでバブルが進むだろう。
 そして、日本は再び20年数年前と同じ状況に戻る。
 こうやって、バブル生成と崩壊の歴史が繰り返されるが、バブルへの道を敷いた政治家や政策責任者が責任をとった試しはない。
 腹が痛くなって引退する程度で許されることではない

  対ユーロ円安基調の原因

 失われた20年という表現や、円高が経済不況の元凶という議論もまことしやかに流されている。
 しかし、リーマンショック前までの数年間は、空前の円安が続き、株式時価総額も400兆円を超えていた。
 しかも、この20数年のほとんどは自民党政権の時代であり、第一次安倍政権は円安の真っ只中に成立した。
 ところが、そんな過去などなかったかのように、今までの政権にできなかった経済政策を展開し、第二次安倍政権が日本経済を救うかのような幻想を与えている。
 民主党政権の無様さを見せつけられた国民は、救世主のように安倍政権を信じて止まないが、現在の状況はリーマンショック前に戻っただけのこと。
 しかも、国債発行の日銀引受けという禁じ手を使って。禁じ手を使った「付け」は、倍返しどころか、何倍にもなって国民の負担になってくるはずだ。

 すべての経済現象が「アベノミクス」によって生み出された政策魔術のように宣伝されているが、それは買いかぶりだ。
 安倍政権が円安誘導政権だという投資家の見通しが円安基調を加速したことは事実だが、基本的な円安の流れは、国際金融投資資金のユーロ投資への回帰によって惹き起こされた

 リーマンショックによって、ユーロ圏のバブルが弾け、ユーロ圏諸国が軒並み経済危機に陥った。
 そのため、国際投資資金はリスクオフで、資金をユーロ圏から引き揚げ、ユーロ下落と円高の基調を作った
 ギリシア、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの経済状況は、今もなお、芳しくない。
 ところが、一昨年央以降、次第に資金がユーロ圏に戻り始め、2012年第4四半期から資金の本格的な還流が顕著になり、為替は円安ユーロ高基調へと転換した。
 そこに安倍政権が成立し、円安促進政策でこの基調を後押しした。
 時期的な一致が「魔術」であるかのような幻想をもたらしているが、アベノミクスそのものが対ユーロ円安基調を生み出したのではない

 欧州中央銀行が、経済危機に陥った諸国の国債を無制限に引き受けることを決定した結果、ユーロ圏の金融投資がリスクオンになった。
 ユーロ圏の実体経済が回復しているどころか、回復の見通しはほとんど見えないが、当面、欧州中央銀行がユーロ圏の国債を保証するから、投資するのに躊躇はない。
 経済危機にある国の国債は利回りが良いから、欧州中央銀行が保証してくれるなら、これほど美味しい投資はない
 それが異常なユーロの高騰を帰結している。

 リーマンショック前のユーロバブル期の最後には、1ユーロ=180円近くまでユーロが上昇する超円安だったが、ヨーロッパに住む者の生活実感として、1ユーロ=140円ですら異常相場だ。
 BigMac指数でみると、対ユーロで日本円は35%以上も過小評価されている。現在のユーロ相場がいつまた暴落するか分からない
 ドイツ経済を除き、ユーロ圏の実体経済に好転の見通しはないから、ユーロが高止まりすれば、ユーロ圏の輸出が落ち込み、実体経済の回復などますます期待できないからだ。
 欧州中央銀行も、無制限に国債引受けを続けることができないことも自明なことだ。
 いずれまた、危機処理のコスト負担やユーロ圏からの離脱をめぐって、大きな議論が沸き上がろう。
 その時にはリーマンショック以上の危機が到来するだろう。なぜなら、ユーロ圏自体が抱える根本的矛盾を解決することなく、小手先の政策で危機の先送りをしているだけだからである。先送りしただけ、危機処理のコストは大きくなる

  円の過小評価と貿易収支の悪化

 今日の為替相場は巨大化した国際的金融投資資金の移動に左右される。
 投資資金は短期的な売買益や利ざやが稼げるところを狙うから、経済状況が堅固な国より、リスクの高い国を中心に資金を回す

 今議論になっている問題の一つに、円安基調が1年以上も持続しているのに、日本の輸出額が増えず、貿易収支の赤字が増え続けていることがある。
 アベノミクスの想定では、円安によって輸出が増加し、国内の生産活動が活発化するというシナリオだった。
 しかし、実際の貿易取引では、輸出は増えず、エネルギー資源を中心として輸入が大幅に増えて、貿易赤字が増え続けている。
 国民経済レベルでは円安メリットより、円安デメリットの方が大きくなっている

 もちろん、現地通貨建てで輸出し、円が下がった分だけまるまる為替差益を享受した会社は、笑いが止まらない。
 何もしなくても、売上げが3割も4割も増えたからだ。しかし、ここに輸出が増えないからくりがある。

 円安になっても、相手国通貨建ての輸出価格を維持しようとすれば、輸出数量を増やすことはできない。現地の販売価格が変わらないからだ。
 輸出数量を上げるためには、円安に応じて現地の販売価格を下げなければならない。そのために、まず相手国通貨建ての輸出価格を下げる必要がある。
 しかし、輸出価格を下げれば輸出数量は増えるかもしれないが、為替差益が薄くなる。
 先進国への輸出の多くは成熟した市場への販売だから、為替が有利になったからといって、輸出価格を下げて、数量を増やす販売戦略に切り替えるのはリスクが大きい。
 数を売って儲けるより、現在の数量を維持しながら、儲けを増やす方がビジネスとしては確実だ。
 だから、円安になったからといって、すぐに輸出価格を切り下げて、数量を増やそうという選択にはならない。
 (※ もうすぐ北風:それと日本の場合は元々「内外価格差」の問題がある。つまり、長年にわたって輸出品は国内価格より低い価格で輸出してきた事実があり、国内主体の利益構造となっている。円安になったからといって価格を下げると企業の輸出部門は社内で身の置きどころがなくなることは言うまでもない。)

 こう考えると、アベノミクスの円安誘導政策には大きな限界があるばかりか、この先も貿易収支の赤字が続けば、円の信認がますます落ちる
 そうなれば、日本経済は一時代に戻ってしまう。
 財界首脳がこれ以上の円安に警告発している理由である。
 もう日本経済は、通貨を切り下げて儲けようという時代を卒業しているのだ。
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世界を襲っている大寒波

ネブラスカ
 ネブラスカ州で火災の消火後

 この冬も世界は繰り返し大寒波に襲われている。
 近年、日本のマスコミはほとんど欧米の大寒波を報道しないが、読者も検索してみるとわかるが大変な異常寒波である。
 夏の干ばつと洪水、冬の異常寒波はここ8年ほど北半球の恒例になっている。
 すでに暖房用油とガスが高騰し始めている。

 日本のマスコミがほとんど報道しないのは、地球温暖化に水を差すからであろう。
 世界で唯一、「温暖化」を論議の対象でなく、「定説」とし、エコとやらを道徳運動にしている政府とマスコミである。

 ざっと目につく記事を集めてみた。
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  米中西部・東部に再び大寒波、航空便に乱れ 1/21 ロイター 

年明けに記録的な寒波に見舞われた米中西部と東部に再び寒冷前線が急速に接近し、21日は中西部で気温が大幅に低下する見通しであるほか、東海岸の一部では最大30センチの積雪が予想されている。

米人事局(OPM)が早朝に送った電子メールによると、ワシントンでは連邦政府機関が閉鎖されている
また、航空機の運航状況を調査しているウェブサイトによると、21日朝の時点で約2000便が欠航となっている。

気象予報のアキュウェザーによれば、寒冷前線の影響でフロリダ州北部でも気温が氷点下に下がる見通しで、ミネソタ州周辺では21日の日中も氷点下18度を下回る状況が続くとみられている。

米中西部や北東部などは年明けの大寒波で少なくとも9人が死亡し、航空便など交通網に大きな乱れが出たばかり。
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  大寒波で海が一瞬にして凍結!? 逃げ切れなかった魚群とヘラジカが無残な姿に=ノルウェー 1/17  東京BREAKING NEWS

 ノルウェー海では「瞬時に海が凍った」として大きく話題になっている。沿岸部ロブンドという町では、海が凍っていく速度があまりに速く、凍結から逃れられず一瞬にして冷凍魚になってしまったニシンの大群の姿が撮影されている。

 地元の漁師によると、「沿岸部に寄ってきたものの、沖に戻れなくなって凍ってしまったのだろう」という。また、ノルウェー内陸部のコスモ湖では、地元民に愛されていたヘラジカも湖の凍結から逃れられず、無残に冷凍化されてしまった。
 異常気象が続くノルウェーではこの未曾有の大寒波に対して、国民に注意を呼び掛けているという。

凍った魚群 凍ったヘラジカ
 ーーーーーーーーーーーー
  寒い!中国で氷点下45.9℃を記録 日テレ

 寒波の影響で、中国・内モンゴル自治区の根河市では11日、最低気温が氷点下45.9℃まで落ち込んだ。

 町は一面、真っ白の雪に覆われ、走っているバスも見えづらいほど。地元テレビ局のレポーターがひもをペットボトルの水でぬらし、振り回すと、あっという間に凍ってしまった。ポットのお湯をまき散らしても一瞬にして氷になる。

 地元の気象台によると、内モンゴル自治区では、14日頃まで寒波の影響が続くという。
 ーーーーーーーーーーーー
  タイで「寒波」、63人死亡 1/23 時事

熱帯の国タイが異例の寒波に見舞われている。
北部や東北部で最低気温が10度以下となったほか、保健省が23日明らかにしたところによると、過去約3カ月で寒波の影響による死者は計63人に達した。
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  NY原油先物時間外:小動き-寒波で暖房油需要は急増 1/27 ブルームバーグ

米本土に寒波が到来しヒーティングオイル(暖房油)需要が急増した。
先週の上昇率は2.4%。ヒーティングオイル相場は5カ月ぶりの高値に上昇した。米コモディティ・ウェザー・グループは米本土では1月としては今世紀に入って最も寒くなるとの予報を出した。
(後略)
 ーーーーーーーーーーー
  天然ガス買い越し、06年以降で最高-寒波で暖房費が上昇 1/27 ブルームバーグ

ヘッジファンドによる天然ガス相場上昇を見込む買い越しは少なくとも2006年以降で最高 となった。寒波で暖房費が3年ぶりの高値に上昇した。
米商品先物取引委員会(CFTC)の週間建玉報告によると、ファンドなど大口投機家のガスの買い越しは21日終了週に21%増えた。CFTCは06年に統計を開始した。

天然ガス相場は先週、10年6月以来初めて100万BTU(英国熱量単位)当たり5ドルを超えた。2月初旬まで北極圏並みの天候が続くとの予報を反映した。コモディティ・ウェザー・グループによると、アラスカ州を除く米本土48州では1月としては1994年以降で最も寒冷な天候となっている。昨年10月31日から1月17日までのガスの在庫からの取り崩し量はこの時期としては過去最高。
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NYヒートオイル
 リーマンショック前の最高値に近づく暖房油価格。チャートはフジ・フューチャーズ
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Author:もうすぐ北風
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