小沢、堀茂樹対談Vol3(1)堀前説、秘密保護法
2013-12-26

衆議院議員小沢 一郎 生活の党 代表 vs 堀 茂樹 慶應大学教授
ちょっと硬派な対談 Vol.3
「議会制民主主義について」2013/12/12(その1)前説 書き起こし「銅のはしご」氏から
堀 茂樹 教授
堀でございます。(堀氏・礼) こんにちは。
今日いま,ご案内がありましたように,3回目の小沢(一郎)さんとのトーク・セッションをやらせていただくということでありまして...
何で私が(苦笑しつつ),こんな場に出てきて公開で小沢さんと話しをするのかって...
最初に,1回目の時も言いましたけどね,本当に自分でも人生何が起こるか分からないと思ってます。
先程お話しがあったように4月(5日金曜日)に1回目『政治とは何か』というのをやって,2回目が,6月の19日(水曜日)だったと思うんですが,憲法についての話しをいたしました。
今日は 「 なぜ,議会制民主主義なのか 」と。
言うまでもなく,ご存知の方が多いと思いますけれども,小沢一郎さんは,ほとんどライフ・ワークのように「日本に議会制民主主義を根付かせる」と「(日本に議会制民主主義を)定着させる」と,これが,やりたいんだと言って,それができなければ死んでも死にきれないというぐらいのね,気合いで,言ってらっしゃる方なんで,そこん処を伺うつもりであります。
ただまあ私がどうして,こういうことをしているのかと言うのは,本当にですね,基本的に私は文学畑で,それから(仏に)留学してから思想史に専門が移りましたけれども,文学だとか思想だとか最近では哲学っぽいようなことが,私の専門なんですけれども。
2009年(平成21年)に,政権交代が夏に起こった2009年ですが,その春からですよね。いわゆる「西松事件」「陸山会事件」というのがあって,それで,本当に遅まきながら目醒めたと言うか,本当にこれは,おかしい,と思いまして。
何か自分の遠い所のフランスのことやなんかに私は注目がずうっと行ってたんですが,自分の足許の日本がおかしいぞ,というふうに思いだしたのが,2009年の「西松事件」「陸山会事件」のあり方を見ていてですね。それでもう頭ん中で,キレちゃったんですね。
これは,おかしい,っていうことで,何で小沢一郎って人は,これほどまでにアンフェアーに,方々から四方八方からバッシングと言うか,攻撃を受けるんだろうということで,それで小沢さんの本,それから小沢さんについて称賛的に書いた本,それから特に小沢叩きの本,無数,無数とは言いませんけれども,何十冊もあるんですねえ。それを古本で買い集めてですね。
それから雑誌も,まあ本当に開いた口が塞がらないような誹謗中傷を書き連らねた雑誌も沢山ありますね。
これを集めて,それを読んで,つまり小沢批判の本を読んで,むしろかえって小沢一郎という政治家に,私は興味を持ちました。
私の見るところ,その時から考えているのは,これは日本では稀に見る論理的な骨格つまり背骨のある,ね,政治家である,と。それから…….。
堀 茂樹 教授
ようこそお出で下さいました。
小沢 一郎 代表
どうも有り難うございます。(ご両人とも頭を下げ礼)
堀 茂樹 教授
それじゃ今日は,このセッションの3回目になるんですが,タイトルが「なぜ議会制民主主義か」ということです。
先ほどもちょっと前説で言ったんですけれども,日頃から小沢さんが,日本に議会制民主主義を定着させるというのが,最大・究極の自分のライフワークのように仰っていると理解しておりまして(小沢氏・頷く),それは根本的に,何となく御題目で民主主義だからいいんだって言うんじゃなくて,
何故,それが必要か,と。
何故,そこに意義があるかということを,そういう問題に迫って,お話しを伺ってみたい。こう思ってるんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ただ,この対談では長持ちのするテーマを,根本的な処を伺うっていうのが,本旨なんです。
ですから,あまりアクチュアルな状況に,いわばジャーナリスティックに入って行くということは避けようと思いますけれども,今,こんにち一番話題になりましたのは,法案が成立してしまいましたけれども「特定秘密保護法」が成立してしまったわけです。
国会も閉会しましたが,4党合意と言うかですね,4党の(苦笑)つまり自民・公明だけじゃなくて,維新もみんなの党も,(特定秘密保護法の)提案者なんですよね。
これが,通ってしまいました。
で,生活の党としては,これは廃案をすべきだという立場だったと理解しておりますが,今この状況でですね,この法案のこと,それから成立したことを,小沢さんのこの問題についての考え,ちょっと一言お話しいただけますか。
小沢 一郎 代表
はい。去年の暮れに,国民皆さん=主権者が与えた議席ですから,最終的に議席の多数で決するっちゅうことは,受け入れざるを得ないんですね。
ただ,今回の秘密保護法の場合は,その内容が非常に曖昧であると同時に,官僚の裁量の幅を,結果として非常に広げる。
なかんずく,刑事罰を科す,ということですので,結局それを実際に執行するのは検察・警察ということになりますんで,それが(廃案をすべきだという大きな理由)。
秘密というのも,何が秘密かも曖昧ですし,これは,役所が全部決める話しです。
それから,何が犯罪になるのか。例えば刑法でも,刑事罰を科すには,きちっと,犯罪構成要件と言いますけれども,こうこう,こういう行動をすると罰則されますよちゅうことが,できる限りはっきりと法律に書いておかなくちゃいけない,という罪刑法定主義の考え方もありますが,そこも,はっきりしてない。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
ですから非常に,内容に,曖昧でいい加減な,官僚の権力の濫用を可能にするような,あるいは,助長するような,法律なんですね。
ということは,国民の基本的人権,国民の生活を脅かす可能性が非常に強い,ということなんですが。
だから内容的にも,我々としては受け入れられない。
それから,国会の状況ですけれども...
堀 茂樹 教授
ちょっとその国会の状況の前に,内容のことですが。
小沢 一郎 代表 代表
はい。
堀 茂樹 教授 教授
私,もう 1つ,官僚の=役人の裁量で「これは秘密だ」と決められる,と。行政の(裁量で決められる)。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
これは,非常に問題だと思いますし,それから,第三者機関というのも,首相か,首相が任命した人が第三者機関というのは(苦笑)どういう(つもり)か,何を言ってるのか,という話しですし,更にもう1つ,このことは如何でしょうか。
国家機密というものが安全保障上必要になることがあることは,これは受け入れざるを得ないと思うんですね。
しかしアメリカの例が典型的ですが,年限が来れば,30年,年限が来れば,基本的に公文書を公開するというようなことが決められているんですが,今回の日本のこの法律の場合は,一部30年,結局修正で60年になったんですね。
この,公開するっていうことが,定められていないという,この点も問題じゃないでしょうか。
小沢 一郎 代表
はい,そうですね。基本的にすべての情報は,国民皆さんに公開する。いわゆる国民が共有するということで,初めて,主権者である国民の皆さん一人ひとりが,自分の考え・判断をできるということになりますが。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
今でもそうなんですが,ほとんど何も知らされていない。(苦々しげに)
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
それが益々ですね...
堀 茂樹 教授
書類が廃棄されることもある。
小沢 一郎 代表
はい。それで,これが秘密であるかどうかちゅうことは,各省の大臣あるいは総理大臣を含めてですが,そういう政治家が判断するわけじゃないし,あるいはまた次官や局長や,そういう上のポストの人が判断するわけでもないんですね。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
要は,担当者が必要に応じてマル秘のハンコを押す,と。今でも役所の書類だと,もう,マル秘のハンコが,ベタベタ,ベタベタ,どうでもいいような書類に押してあるんですが。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
それがさらに,刑事罰を伴ったマル秘事項になっちゃうわけですね。
堀 茂樹 教授
はあ,はあ。
小沢 一郎 代表
ですから,本当にこれはね,危険だと,私は思いますしね。
堀 茂樹 教授
警察,特に警察・検察ですよね。
小沢 一郎 代表
検察・警察。そう,そう。
堀 茂樹 教授
(検察・警察が)何でもできちゃいます。
小沢 一郎 代表
そう,そう。
秘密というのは,何だか,国民は分からないじゃないですか。
堀 茂樹 教授
ですから,例の事件で幸いにして小沢さん,判決では無罪判決が下りましたけれどもね。この法案を 適用してですね,やったら... 元秘書の石川(知裕 いしかわ ともひろ)さんの裁判の時もそうですけど,嘘のっていう...
小沢 一郎 代表
嘘の,捜査報告書。
堀 茂樹 教授
嘘の,捜査報告書がありましたですよね。
そういうことも含めて,いったい,小沢一郎さんが何かその,起訴なり強制起訴なりされたら,何故,されたのか。いや,それは秘密ですっていうことにならないかと思ってね...
小沢 一郎 代表
すべてが秘密になっちゃうんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それで今でさえ,僕のようなケースもある。 あるいは,厚生省(=厚労省)の村木(厚子 むらき あつこ)さんみたいなケースもある。他にもいっぱい,ありますわね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
警察がしっかりした証拠もなしに,特定の人を強制捜査する,と。
捜査の対象にする,ということが,今でも行なわれているわけですから。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
ましてや,これが通りますと,何でも,警察・検察で気に入らないことについては,誰でもこう,皆,やられるという話しになっちゃいます。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。あの事件の反省が全く無いどころか,逆に行ってるんですよね。
小沢 一郎 代表
ですから,これはねえ,もう,安倍さん自身,個人をどうのこうの言うんじゃないですけど,政治家も結局は,天に唾する話しですよ。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
多分,総理も国務大臣もね,ほとんど知らされてないですよ。今でも,情報は。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
役人は,やっぱね,僕はもうかなり与党・政府にもいたから分かるんでけど,自分に都合の悪い情報は絶対ね,政治家には知らせないし,また,政治家はあまり信用してないし(笑)。
ですからね,益々これは,官僚というか,個々人の官僚じゃなくて官僚機構が,ね,完全に支配権を強くして行く,という社会になると思いますね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
ですから「西松事件」「陸山会事件」の時もですね,有名なところでは,弁護士の郷原(信郎 ごうはら のぶお )さんがですね,非常に専門的な明快な説明をして下さって,我々市民も色々判って行ったってことがありましたし,それから市民の中でも八木(啓代 やぎ のぶよ)さんとか,非常に勇気を持って立ち上がった方がおられて,で,色んな力で,何とかやっと,この事柄を,何て言うんでかすか...一応の解決をすることができたのに,これ,非常に危険なものが,成立しちゃったと思います。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
それから,先程(仰った)国会での決め方ですか。その問題で何か。
小沢 一郎 代表
ええ。もう1つ,今のことに関連して,先生が仰ったように,アメリカでは(情報)公開を30年先ですか,やるということになってる。
と仰ってますがね,まあ皆なもそう思っていますが,アメリカ人のね,ジャーナリストに聞きましたらね,日本では原発の事故に関連ししながら原子力マフィアという政・官・業のこの力が非常に大きい,と。
したがって,事実も全然知らされない,と。
僕は現実にほとんど,肝心なことは国民に知らせてないと思います。
また,メディアもマスコミも全然報道しないし。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
ところがですね,アメリカでは,安全保障に関するマフィア。これが,もの凄い強大になってるんだそうですよ。
堀 茂樹 教授
ああ,成程。
小沢 一郎 代表
ですから,国家の安全保障に関することだ,って言うと,皆な誰もが文句言えないような状況になってしまっていると言ってました,アメリカ人の記者が。
堀 茂樹 教授
アメリカでもそう。
小沢 一郎 代表
アメリカでも,そうだと。
ましてや,日本のように官僚機構が非常に強いところはね,完全にそういう,ある意味でものも言えぬような社会になる可能性が強いっていうことですね。
だからその意味において,僕はたいへん,危うさ,危険性を感じております。
堀 茂樹 教授
成程。
小沢 一郎 代表
国会のことですけど,まあとにかくね,あれだけ議席があるんだから,1週間や10日,何も慌てる必要もね,ないと思うんですけれども。
堀 茂樹 教授
自民党の立場に立てばね。
小沢 一郎 代表
ええ。
それで,予算編成もね,昔と違って,そんな時間かかりませんから。それをね,恰好だけつけてね,2日間延長します,と。土曜日と日曜日(笑)をね,延長して。
これも多分,前代未聞だと思います。
堀 茂樹 教授
はああ。
小沢 一郎 代表
それで,審議の時間延長しましたよ,と。(審議)やるんなら,土曜日・日曜日やんなさいよ,みたいな話しですよね。
さすがもう,与野党共やりたくないもんだから,前の晩に終えちゃいましたけれども。
そういう,与党の傲慢さと言うか強引さと言うか。そういうことと同時に,野党が,あまりにも自分達の主張,自己主張,自分達の考え方を,ほとんどの政党が,言えない,と。
言わないというか言えないというか。
というその姿がね,僕は非常に残念だったですね。まあ,社会党,共産党は別としても。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
その他では,はっきりとイエス・ノーを言ったのは,我々(=生活の党)だけです。
堀 茂樹 教授
そうですね。はい。
ーーーーーーーーー
小沢、堀茂樹対談Vol3(2)へ続きます。
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小沢、堀茂樹対談Vol3(2)前代未聞の野党、自己主張がなければ民主主義はない
2013-12-26
小沢、堀茂樹対談Vol3(1)からの続きです。
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小沢 一郎 代表
その他では,はっきりとイエス・ノーを言ったのは,我々(=生活の党)だけです。
堀 茂樹 教授
そうですね。はい。
小沢 一郎 代表
そういう国会の状況は,数の問題じゃなくて,非常に僕は残念に思います。
ただ,1つ良いことは,第3極と称して自民党と対峙するかのように言っておられた維新の会とみんなの党が,ほぼ自民党と同じだと。
考え方,政治スタンスが(自民党と同じだ)ということが,はっきりしたことですね。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
秘密保護法は,自民党・公明党・維新の会・みんなの党の共同提案です。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
ですから私は国民の皆さんはね,何となく(維新の会・みんなの党は)第3党的なイメージで,自民党とは違う,こういうきちっとした,よりマシな主張と政治をやってくれるんのかなあ,という期待感で,多分ね,維新の会にもみんなの党にも(票を)入れたんだろうと思いますけれども。
まあ実態は,今度の国会で明らかになったことは,所詮,(彼等は)自民党と同じ,ということが分かったということ。
これは良かったですね。
堀 茂樹 教授
ああ,成程,分かります。
今日の本題じゃないですけど,参議院の議決の時にですね,いやいや,衆議院の議決のときもそうですが,維新の会は(秘密保護法の)提案者ですよね。
でね,議決・評決の時に棄権したんだ,と。
小沢 一郎 代表
前代未聞強調文ですよ。
堀 茂樹 教授
それも,議場から,いなくなって。
小沢 一郎 代表
共同提案者になっててね。
そんだったら,もっと自民党にね,開き直って文句言やあ,いいことを。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
共同提案者がねえ...(議場から)いなくなっちゃうってのはねえ...(全く呆れたという様子で)
堀 茂樹 教授
それから,参議院の(採決の)ときは...
小沢 一郎 代表
参議院のときは,両方ともいなくなっちゃった。
堀 茂樹 教授
両方ともいなくなっちゃった。
小沢 一郎 代表
ちょっと信じられないですね。どういう考え方しているかちゅうのが,まったく,僕なんか分かりませんね。
共同提案者っていうのの重みをね,まったく感じてないんじゃないですかね。「秘密保護法」の共同提案者ですよ。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は本当にね,そこでビックリしたと言うか,何か...ほんとに唖然としました。
堀 茂樹 教授
いくつか委員会の委員長を解任して取り替えるとかですね,そういうことも含めて,異例のことが幾つか国会の中であったわけですね。
小沢 一郎 代表
ありました。
それから,野党,代表的なのは民主党ですが,民主党も最後になって,担当の国務大臣の不信任を出してたのが,直前になって内閣不信任に変えてきたんですね。
これも,僕等にも誰にも相談しないで,ピョーンと(=突拍子もなく単独で)出したもんですから。
普通は,内閣不信任案ですから,記名投票なんですよ。それぞれが皆な,あれ書いてね,札(議員名が予め書いてある)持って行くんですけれども。結局,起立採決で,チョーンと(=簡単に否決)されちゃったんです。
堀 茂樹 教授
はああ。
衆議院規則153条,参議院規則139条
記名投票は問題を可とする議員が白色の票(衆議院規則では白票,参議院規則では白色票という)を,問題を否とする議員は青色の票(衆議院規則では青票,参議院規則では青色票という)を投票する。それぞれの色の木札は各議席に用意されており,白票(白色票)には黒い字で,青票(青色票)には赤い字で予め議員の氏名が記名されている
小沢 一郎 代表
内閣不信任案が起立採決でケリ付けられたのは,これは30数年ぶりですよ。
戦後3例目の「内閣不信任決議案」起立採決
1975年 7月 3日
三木武夫内閣 不信任決議案(否決)
1982年 8月18日
鈴木善幸内閣 不信任決議案(否決)
2013年12月 6日
安倍晋三内閣 不信任決議案(否決)
(下部参考 ※1 )
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
それほどもう,歯牙にもかけない。バカにされちゃって,もう。(笑 )
記名投票もできないという話しでね。
これもまた,まあ,みっともない話しでしたねえ。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
そうするとね,やはりこの(特定秘密)保護法案が通って,成立してしまったことを,この経緯も含めて,やっぱり議会制民主主義が危うい,と。
日本に議会制民主主義がどの程度定着していたのかは,これはまた考えなきゃいけないけれども,しかし一層危機的な状況にあるということは確かだと。そう思われますか。
小沢 一郎 代表
そう思います。
ただ,そう思いますけれども,このまんまで推移すりゃあ本当に日本の将来はないと,僕は思いますが。
ただ私自身が非常に,ある意味期待してますのは,やはり4年前の夏の選挙で,半世紀以上も続いた自民党長期政権をね,国民は,変えましたよね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
私は,この政権交代というのはね,民主党の失敗で「なあんなの!もう,やる必要なかった」みたいなことを言う人も「意味無かった」と言う人もいますけど,そうではないと思います。
僕はやっぱり,国民・日本人自身がね,自民党政権というのはもう,ずうっと続くんだと思ってた,ほとんどの日本の国民がね,やっぱり,自分の意思で政権,変えられるんだ,という認識をね,持ったと,僕は思います。
ですから,その意味では非常に良かった。
それでまあ民主党政権が成功すりゃあ,もっと良かったんですけど。(笑)
堀 茂樹 教授
そうですね...私は...
小沢 一郎 代表
それでも,僕は良かったと思います。
堀 茂樹 教授
私は,あと1年か2年でも続いていたらと思いますね,ええ。
小沢 一郎 代表
その話しするとまた長くなるから。(笑)
堀 茂樹 教授
ご存知だと思いますが,ネットの方でツイッターっていうものがありますよね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ツイッターで知り合った,会ったこともない方ですが,ロンドンにいる若手のお医者さん,優秀な方だと思いますが,ロンドン大学(UCL)で医学部で研究室を持っている人で,小野(昌弘 おの まさひろ)さんという方がいらして,此間もそのことを振り返って,民主党政権の失敗で,何か,国民の間に「政治的自律」これに対する敵意さえ呼び起こしてしまった,と。それが今の状況につながったんじゃないかと言ってましてね。
だから今,小沢さんが仰った,やっぱり自分達の選挙によって政権交代を成し遂げたということの意義も,私も今も続いていると思うんですが,一方で民主党政権のいわゆる失敗と見做されているもの,まあ,見做さざるを得ないものに対して,国民が非常にですね..何て言うか,失望が...
小沢 一郎 代表
まあ,失望感がある。
期待が大きかっただけに,失望のほうがもの凄い大きい,その反動として。そりゃあ,その通りですけど。
私は,だけど,繰り返しますけど,国民皆さんは,その,政権を自分の手で変えられるという経験を積んだわけですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
これは,非常に,大きいと思います。
ですから,私はそう悲観的に見てません。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
その1つの事実として,総選挙で,自民党の支持票は増えてません。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
参議院(選挙)でも同じです。
堀 茂樹 教授
確かに。はい。
小沢 一郎 代表
ただ,1割以上・1千万人以上の人が,棄権しました。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それからまあ,私共の責任ですけれども,票が,受け皿が分散しちゃって,それで自民党に大量の議席を与えたんですけど,私は現実を見ると,非常に国民皆さんなりに期待してますし,楽観してます。
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
と言うのは,総選挙後もね,ほとんど首長選挙・自公と 1対 1の首長選挙は,全部,自公以外が勝ってますよ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
つい此間の,川崎の(市長)選挙。 (※2 )
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
小沢 一郎 代表
これまた,民主党,何考えてんだろうと思うけど,(落選した候補者は)自公民で推薦ですよ。
堀 茂樹 教授
そうでしたね。
小沢 一郎 代表
それなのに,無所属候補に負けてんだから。
兵庫県神戸市もそうですよ。あと数千でもって,自公民(推薦候補)が負けるところだったんですよ。 ( ※2 )
ですから,それだけ民主党に対する失望がうんと大きかったですけども,だからと言って(国民は)自民党,自公の政治が良しとしているわけでは決してないと。
だから,私がさっき言ったように,維新とみんなの党は,もう自民党と同じ考え方・政治スタンスなんだということがハッキリしましたから,自公に対立する受け皿っていうのは,それ以外のグループで作ればいいんだし,
また,維新の中にもみんな(の党)の中にも自民党と擦り寄るっつうのは良くないと考えてる人達もきっといると思います。
そういう人達も含めて,あるいは政権党だから割れませんけれども自民党の中にも,安倍さんのね,やってること良いと思ってない人が,僕はいると思う。
だから,そういう意味で,今も基本的な(政策である)秘密保護法にしろ,原発にしろ,TPPにしろ,消費税にしろ,税制にしろ,本当に国民生活に直接大きな影響を及ぼす,大きなテーマが控えてますんで,そのテーマに対する意見・賛否で以って,ある程度色分けできるんじゃないかというふうに僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
成程。
もちろん,そういう強い確信を持っていただいてるのは,私ももちろん,政治の方針,オリエンテーションは,まったくそちらの方に賛成なので,市民としては力強く感じるんですけれども。
まあ正直なところは,個人的には,いやあ,なかなか難しい(苦笑)と思ってるんですね。
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。ミッテランが大統領になった。あれはフランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。
ミッテランが大統領になった。あれは,フランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ミッテランという人,こう言っちゃ何だけど,なかなかの狐のような人で。
小沢 一郎 代表
かなりの < 聞き取り不明 > ですね。
堀 茂樹 教授
ええ。なかなか分からない人なんだけれども,とにかく政権交代が起こってですね,あん時バスティーユに,もう本当に,人びとが集まって,歌ったり演説したりっていう渦の中に,私,立ち会いましてね。
政権交代っていうのは,こういうふうにして起こるのかと思ったことあるんですね。
そして,その後のフランス社会党政権は,サッチャー・中曽根・リーガン時代の環境の中で,完全に失敗しましたけれども,
経済政策では失敗したけれども,政権は維持してですね,そしてその後,何度も政権交代が起こり得るという態勢に態勢に戻っているんですね,フランスは。
で,あん時に,選んだほうが正しいか正しくないかってのは,歴史が最終的には決めるだろうけれども,しかし自分達の意思で多数派を形成して,政治を,国政を動かせるんだっていう実感をね,あの時,フランス人達は改めて(持った)。
まあ歴史を遡れば,フランスには政権交代があったわけですけれども。それを感じただろうというふうに(見えた)。それを立ち会ったことがあるんです。
それから見ると,今,私にとって大事なのは何と言ったって日本なんですけれども,我々の社会生活においてもですね,やはりその異論を述べる,何か体制と違うことを異議を申し立てる,ということ自体を,割とまるで悪いことのように見られることが多くて,
それで,いっぱしの社会人の何か勉強もした人達の社会生活の社交の中で,実際のところ,政治や社会のことが話題になることは,無いんですね。
避けてる。
小沢 一郎 代表
うん。そうですね。うん。
堀 茂樹 教授
だから,そういう,政治文化そのものの未成熟っていう問題が根本にあるので,なかなか今仰ったことも一理あると思いながら,まあ難しいなあとか,私は思うんですけれども。
それで,そういうことから考えると,果たして我々この日本人,日本市民は,民主主義ってのをね...
1回,やっぱり 2009年には多数の日本人が,これは,希望を持ったと思うんですが。「やった!」とおもったと思うんですが。
つまり政治主導と仰った,小沢さん,リーダーでしたから。
それから,政治主導ってことは国民主導ってことですから。
言うまでもなく,取りも直さず,国民主権ということですから。
これでやって行こう,と。
別に官僚を敵視するとかいうことじゃないけれども,決定権は国民にあるんだっていうことで,やろうとしたわけですよね。それがちょっと上手く行かなかったことで...
もう一度ですね,やっぱり何か,上の人に,お上に任せた方が良いっていうふうな,そういうリアクションが起こってきているように思えてならず,ですね。
いったい,日本人が,その民主主義っていうものを本気でやる気があるのか,と。
それを確かめるためには,考えるためには,民主主義とは何ぞや。
何故,民主主義を採るべきか,と。
それから,その次の問題として,何故,議会制民主主義・代表民主主義を採るべきか,という問題もあると思うんですが,まずはその,やっぱり日本も色々な伝統・文化があるけれども,民主主義という,これ発祥は西欧近代ですけれども,これを採用してやって行くべきだと,小沢さんがお考えになっているんだと思いますけれども,それは,何のために,何故,そういうふうにお考えになりますか。
小沢 一郎 代表
日本にも,古来から民主主義が無かったということではないと私は思うんですね。
ただ日本は,何千年か何万年か分かりませんけれども,非常に古代は,より温暖な気候で,より豊かだったと言われてますし,
日本の歴史に大陸諸国家のように血みどろの争いというのは,ほとんど無いんですね。
権力者同士の争いはありましたけれども,一般の人が参加した民族と民族の争いとか,国と国の争いみたいなものは,ほとんど必要無かったんだと思うんですけれども,それだけ平和で豊かであったと思う。
だから,コンセンサス社会なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
全会一致のコンセンサス社会で,それでやって来れたんですね。僕はそう思います。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
ですから,コンセンサス社会の中では,自己主張はできるだけしない方が良いんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
今の日本社会も,そうじゃないですか。
色んな会社でも何でも,何か意見一生懸命言うと,あの野郎ばっかり喋る,って言うでしょ。
堀 茂樹 教授
「空気を読めない」って言う...
小沢 一郎 代表
(両腕で丸く収める所作をしながら)そうすると「まあ,まあ,まあ」ってこうなるんですね,すぐね。
それでやって行けるならば,僕はそれは良いと思います。
日本的な民主主義で。
堀 茂樹 教授
はあ,はあ。
小沢 一郎 代表
だけどやっぱり特に世界が段々だんだん,グローバルな形になって来て,日本も明治維新を経て,という近代化の中でね,結局,単なる鎖国の,日本の鎖国政策で日本人だけで丸く丸くでは,もう納まらない。
近代社会の中で日本は生きていかなきゃなんない。
そういうことになって,最初は良かったんだけど,結局は,戦争というあれで失敗してしまったということなんですが。
堀 茂樹 教授
確かに戦争に突っ込んでしまったあの歴史は,あの過程は,自由な議論を,対立した勢力が自由に議論をすると言うか,そういうことではなくて,大政翼賛会になって,体制に迎合して行くっていうことになりましたので。
小沢 一郎 代表
非常に心情的なものごとに,日本人は動かされるんですね。
右というと右,左というと左,みたいな,その時の雰囲気。
まあ小泉さんがよく雰囲気って言葉使ったけど。それに流されるんですね。
要するに,自己主張というのが無い。
自分自身で考え,自分自身で判断し,自分自身で結論を持って行動をするという,いわゆる自立ですね。
僕がいつも言ってるんだけど。
自立心がまだまだ足りない。
ですから,民主主義というのは,個人個人の自立があって成り立つわけですよ。
だから,そういう意味でね,日本は,世の中が,地球社会が,世界が,変わっちゃってるんですから,それの中で生き延びていくためには,やはりきちんとした自己主張を持って,世界の国々・世界の人たちと接して行かなきゃならない。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
ですから,それはその即ち民主主義だということと同義語なんですね。ギリシャの昔にもね,民主主義というのは衆愚政治だと。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
要するに手続きは,メンドくさいしねえ。一々,皆なの話し聞いてたんでは,ロクな結論出ない,と。
衆愚政治だというふうに言われるんですが,確かに衆愚政治の面があって。ソクラテスでしたか? 哲人政治を...
堀 茂樹 教授
プラトンです。
小沢 一郎 代表
プラトンが,哲人政治を一番良いわけだと。神様がやってくれるんなら,一番良いわけですね。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
だけどそんな(神様のような)のは,人間はいないわけですから,結局皆なでやって,衆愚的な要素はあるけど,独裁よりも大きく間違うことはない,という処に,民主主義のね,良いとこあるわけですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,時間はかかる,手間暇かかる。まあ,さっぱ結論が出ない,という欠点あるんだけど,大きな間違いはしない,
という処に私は民主主義の良いところがあって,そのためには皆なが自分自身の考えをきちっと持って,それで自己主張しなきゃいけないんですね。
それが無いと,もう民主主義は成り立たないで,日本は今なお,僕はそうだと思ってるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。ええ。
それとね,こういうことは如何ですか。
もちろん私,小沢さんの本,全部読んでますからね。書いておられたのを思い出したから言うんですけれども,民主主義っていうのは,やっぱり,仰る通り,市民が皆な自分で考えて,自由な議論を通して合意形成をして,ですね。だから,最初にコンセンサスがあるんじゃなくて,コンセンサスを見つけるように議論をして行く,と。
コンセンサスは初めに無いというのが前提で,対立衝突があるのは当たり前と。
これを受け入れて,そしてフェアーに議論をして,最近はそれを熟議とか言ったりもしますけれども,それをして,合意形成をして行く,と。それでコンセンサスに至る,と。
で,このコンセンサスが強いんだ,ということを,仰ってたと思うんですよ,書いておられたと。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
つまり,自分たちが決めたんだと。自分たち,集団的に決めたんだ,ということが,これは強いよ,と。
やっぱり,その,権威に従って,上から言われるからって,従ってた,そういう集団は...
小沢 一郎 代表
弱いです。脆いです。
堀 茂樹 教授
戦争の時は言うまでもなく,ですね。平和の時も,脆いと。この点。これも 1つの理由なんじゃないですか,民主主義の。
小沢 一郎 代表
うん。私は,本当に,そう思います。
自分たちで議論し,自分たちで決めた,と。これほど強いものはないんですね。だからそこに民主主義の強さがあって。
僕,時々ね「話しせい」って言われた時に,昔『戦場にかける橋 』って(映画が)あったんですよ。(テーマ曲が)「クワイ河マーチ」のね。
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
戦場にかける橋
The Bridge on The River Kwai
1957年公開の英・米合作映画。主題歌:クワイ河マーチ
小沢 一郎 代表
あれは,日本人をバカにした映画だと言う人もいたけども...
堀 茂樹 教授
ははは(笑)
小沢 一郎 代表
そんな詰まんないことを見てないで。 あの時に,日本軍があそこ占領してて,アメリカやオーストラリアの兵隊を捕虜にしてましたね。
ある時,英国の部隊が捕虜としてやって来るんですね。ところがもう,整然として,それこそ「クワイ河マーチ」をね,口笛吹いて,指揮官は指揮官のままで,来るんですね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
そして,(日本軍が捕虜となった英国軍に)「橋造れ」って労働させるんだけど,これはジュネーブ条約によって,将校は労役を課せられない,ということを,その指揮官はね(主張し)もう絶対言うことを聞かないわけ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それでね,独房に入れられて1週間もやられたんだけど,それで頑張って...それに対して兵隊皆ながね,拍手喝采で迎える。
日本が敗れた時はね,日本人の捕虜の話しありますが。
堀 茂樹 教授
ええ。『 アーロン収容所 』。
小沢 一郎 代表
『 アーロン収容所 』から何から色んなのあるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,ありますね。
『 アーロン収容所 』 中公文庫
会田雄次(あいだゆうじ)歴学者
1916(大正5)年 3月5日(日)― 1997(平成9)年 9月17日(水)
小沢 一郎 代表
だけどもう,そうなった途端にね,世界一の軍規を誇った帝国陸軍,特に陸軍が,そうなっちゃうと,もうメチャクチャになって,上下関係もなけりゃ何も無いというようなことで,白人に笑われたんですけれども。
それは何故かと言うと,やっぱ,権力によって権威によって作られた階級なんですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,俺達認めたわけじゃないぞ,という意識がどうしてもありますから,権威がなくなった途端に烏合の衆になっちゃうんです。
ところがその『戦場にかける橋 』の英国人。僕は英国人ってあんま好きじゃないんですけども。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
だけども,彼等はやっぱ,偉いんですね。自分たちで決めたルールだと。
堀 茂樹 教授
うん,そうなんですね。
小沢 一郎 代表
将校も,自分たちの決めたルールに従って将校になり指揮官になってるんだと。これは,捕虜になったって,このルールはきちんと守るんだと。
その意識の違いが,僕は,日本人と彼等の違いだと思いますね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから日本人はもう少しやっぱり,主権者って言われんだから。
自分たちも時々,私たちは主権者だ,なんて言うんだから。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
自分で言う限りはね,主権者らしく振舞わなきゃ駄目ですよ。
だから,そういう意味で,私は,日本にもう少し民主主義,即ち日本人の自立を,ぜひお願いしたい。
堀 茂樹 教授
成程。
ーーーーーーーーーーーーーー
小沢、堀茂樹対談Vol3(3)へ続きます。
ーーーーーーーーーーーーーー
小沢 一郎 代表
その他では,はっきりとイエス・ノーを言ったのは,我々(=生活の党)だけです。
堀 茂樹 教授
そうですね。はい。
小沢 一郎 代表
そういう国会の状況は,数の問題じゃなくて,非常に僕は残念に思います。
ただ,1つ良いことは,第3極と称して自民党と対峙するかのように言っておられた維新の会とみんなの党が,ほぼ自民党と同じだと。
考え方,政治スタンスが(自民党と同じだ)ということが,はっきりしたことですね。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
秘密保護法は,自民党・公明党・維新の会・みんなの党の共同提案です。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
ですから私は国民の皆さんはね,何となく(維新の会・みんなの党は)第3党的なイメージで,自民党とは違う,こういうきちっとした,よりマシな主張と政治をやってくれるんのかなあ,という期待感で,多分ね,維新の会にもみんなの党にも(票を)入れたんだろうと思いますけれども。
まあ実態は,今度の国会で明らかになったことは,所詮,(彼等は)自民党と同じ,ということが分かったということ。
これは良かったですね。
堀 茂樹 教授
ああ,成程,分かります。
今日の本題じゃないですけど,参議院の議決の時にですね,いやいや,衆議院の議決のときもそうですが,維新の会は(秘密保護法の)提案者ですよね。
でね,議決・評決の時に棄権したんだ,と。
小沢 一郎 代表
前代未聞強調文ですよ。
堀 茂樹 教授
それも,議場から,いなくなって。
小沢 一郎 代表
共同提案者になっててね。
そんだったら,もっと自民党にね,開き直って文句言やあ,いいことを。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
共同提案者がねえ...(議場から)いなくなっちゃうってのはねえ...(全く呆れたという様子で)
堀 茂樹 教授
それから,参議院の(採決の)ときは...
小沢 一郎 代表
参議院のときは,両方ともいなくなっちゃった。
堀 茂樹 教授
両方ともいなくなっちゃった。
小沢 一郎 代表
ちょっと信じられないですね。どういう考え方しているかちゅうのが,まったく,僕なんか分かりませんね。
共同提案者っていうのの重みをね,まったく感じてないんじゃないですかね。「秘密保護法」の共同提案者ですよ。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は本当にね,そこでビックリしたと言うか,何か...ほんとに唖然としました。
堀 茂樹 教授
いくつか委員会の委員長を解任して取り替えるとかですね,そういうことも含めて,異例のことが幾つか国会の中であったわけですね。
小沢 一郎 代表
ありました。
それから,野党,代表的なのは民主党ですが,民主党も最後になって,担当の国務大臣の不信任を出してたのが,直前になって内閣不信任に変えてきたんですね。
これも,僕等にも誰にも相談しないで,ピョーンと(=突拍子もなく単独で)出したもんですから。
普通は,内閣不信任案ですから,記名投票なんですよ。それぞれが皆な,あれ書いてね,札(議員名が予め書いてある)持って行くんですけれども。結局,起立採決で,チョーンと(=簡単に否決)されちゃったんです。
堀 茂樹 教授
はああ。
衆議院規則153条,参議院規則139条
記名投票は問題を可とする議員が白色の票(衆議院規則では白票,参議院規則では白色票という)を,問題を否とする議員は青色の票(衆議院規則では青票,参議院規則では青色票という)を投票する。それぞれの色の木札は各議席に用意されており,白票(白色票)には黒い字で,青票(青色票)には赤い字で予め議員の氏名が記名されている
小沢 一郎 代表
内閣不信任案が起立採決でケリ付けられたのは,これは30数年ぶりですよ。
戦後3例目の「内閣不信任決議案」起立採決
1975年 7月 3日
三木武夫内閣 不信任決議案(否決)
1982年 8月18日
鈴木善幸内閣 不信任決議案(否決)
2013年12月 6日
安倍晋三内閣 不信任決議案(否決)
(下部参考 ※1 )
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
それほどもう,歯牙にもかけない。バカにされちゃって,もう。(笑 )
記名投票もできないという話しでね。
これもまた,まあ,みっともない話しでしたねえ。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
そうするとね,やはりこの(特定秘密)保護法案が通って,成立してしまったことを,この経緯も含めて,やっぱり議会制民主主義が危うい,と。
日本に議会制民主主義がどの程度定着していたのかは,これはまた考えなきゃいけないけれども,しかし一層危機的な状況にあるということは確かだと。そう思われますか。
小沢 一郎 代表
そう思います。
ただ,そう思いますけれども,このまんまで推移すりゃあ本当に日本の将来はないと,僕は思いますが。
ただ私自身が非常に,ある意味期待してますのは,やはり4年前の夏の選挙で,半世紀以上も続いた自民党長期政権をね,国民は,変えましたよね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
私は,この政権交代というのはね,民主党の失敗で「なあんなの!もう,やる必要なかった」みたいなことを言う人も「意味無かった」と言う人もいますけど,そうではないと思います。
僕はやっぱり,国民・日本人自身がね,自民党政権というのはもう,ずうっと続くんだと思ってた,ほとんどの日本の国民がね,やっぱり,自分の意思で政権,変えられるんだ,という認識をね,持ったと,僕は思います。
ですから,その意味では非常に良かった。
それでまあ民主党政権が成功すりゃあ,もっと良かったんですけど。(笑)
堀 茂樹 教授
そうですね...私は...
小沢 一郎 代表
それでも,僕は良かったと思います。
堀 茂樹 教授
私は,あと1年か2年でも続いていたらと思いますね,ええ。
小沢 一郎 代表
その話しするとまた長くなるから。(笑)
堀 茂樹 教授
ご存知だと思いますが,ネットの方でツイッターっていうものがありますよね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ツイッターで知り合った,会ったこともない方ですが,ロンドンにいる若手のお医者さん,優秀な方だと思いますが,ロンドン大学(UCL)で医学部で研究室を持っている人で,小野(昌弘 おの まさひろ)さんという方がいらして,此間もそのことを振り返って,民主党政権の失敗で,何か,国民の間に「政治的自律」これに対する敵意さえ呼び起こしてしまった,と。それが今の状況につながったんじゃないかと言ってましてね。
だから今,小沢さんが仰った,やっぱり自分達の選挙によって政権交代を成し遂げたということの意義も,私も今も続いていると思うんですが,一方で民主党政権のいわゆる失敗と見做されているもの,まあ,見做さざるを得ないものに対して,国民が非常にですね..何て言うか,失望が...
小沢 一郎 代表
まあ,失望感がある。
期待が大きかっただけに,失望のほうがもの凄い大きい,その反動として。そりゃあ,その通りですけど。
私は,だけど,繰り返しますけど,国民皆さんは,その,政権を自分の手で変えられるという経験を積んだわけですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
これは,非常に,大きいと思います。
ですから,私はそう悲観的に見てません。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
その1つの事実として,総選挙で,自民党の支持票は増えてません。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
参議院(選挙)でも同じです。
堀 茂樹 教授
確かに。はい。
小沢 一郎 代表
ただ,1割以上・1千万人以上の人が,棄権しました。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それからまあ,私共の責任ですけれども,票が,受け皿が分散しちゃって,それで自民党に大量の議席を与えたんですけど,私は現実を見ると,非常に国民皆さんなりに期待してますし,楽観してます。
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
と言うのは,総選挙後もね,ほとんど首長選挙・自公と 1対 1の首長選挙は,全部,自公以外が勝ってますよ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
つい此間の,川崎の(市長)選挙。 (※2 )
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
小沢 一郎 代表
これまた,民主党,何考えてんだろうと思うけど,(落選した候補者は)自公民で推薦ですよ。
堀 茂樹 教授
そうでしたね。
小沢 一郎 代表
それなのに,無所属候補に負けてんだから。
兵庫県神戸市もそうですよ。あと数千でもって,自公民(推薦候補)が負けるところだったんですよ。 ( ※2 )
ですから,それだけ民主党に対する失望がうんと大きかったですけども,だからと言って(国民は)自民党,自公の政治が良しとしているわけでは決してないと。
だから,私がさっき言ったように,維新とみんなの党は,もう自民党と同じ考え方・政治スタンスなんだということがハッキリしましたから,自公に対立する受け皿っていうのは,それ以外のグループで作ればいいんだし,
また,維新の中にもみんな(の党)の中にも自民党と擦り寄るっつうのは良くないと考えてる人達もきっといると思います。
そういう人達も含めて,あるいは政権党だから割れませんけれども自民党の中にも,安倍さんのね,やってること良いと思ってない人が,僕はいると思う。
だから,そういう意味で,今も基本的な(政策である)秘密保護法にしろ,原発にしろ,TPPにしろ,消費税にしろ,税制にしろ,本当に国民生活に直接大きな影響を及ぼす,大きなテーマが控えてますんで,そのテーマに対する意見・賛否で以って,ある程度色分けできるんじゃないかというふうに僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
成程。
もちろん,そういう強い確信を持っていただいてるのは,私ももちろん,政治の方針,オリエンテーションは,まったくそちらの方に賛成なので,市民としては力強く感じるんですけれども。
まあ正直なところは,個人的には,いやあ,なかなか難しい(苦笑)と思ってるんですね。
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。ミッテランが大統領になった。あれはフランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。
ミッテランが大統領になった。あれは,フランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ミッテランという人,こう言っちゃ何だけど,なかなかの狐のような人で。
小沢 一郎 代表
かなりの < 聞き取り不明 > ですね。
堀 茂樹 教授
ええ。なかなか分からない人なんだけれども,とにかく政権交代が起こってですね,あん時バスティーユに,もう本当に,人びとが集まって,歌ったり演説したりっていう渦の中に,私,立ち会いましてね。
政権交代っていうのは,こういうふうにして起こるのかと思ったことあるんですね。
そして,その後のフランス社会党政権は,サッチャー・中曽根・リーガン時代の環境の中で,完全に失敗しましたけれども,
経済政策では失敗したけれども,政権は維持してですね,そしてその後,何度も政権交代が起こり得るという態勢に態勢に戻っているんですね,フランスは。
で,あん時に,選んだほうが正しいか正しくないかってのは,歴史が最終的には決めるだろうけれども,しかし自分達の意思で多数派を形成して,政治を,国政を動かせるんだっていう実感をね,あの時,フランス人達は改めて(持った)。
まあ歴史を遡れば,フランスには政権交代があったわけですけれども。それを感じただろうというふうに(見えた)。それを立ち会ったことがあるんです。
それから見ると,今,私にとって大事なのは何と言ったって日本なんですけれども,我々の社会生活においてもですね,やはりその異論を述べる,何か体制と違うことを異議を申し立てる,ということ自体を,割とまるで悪いことのように見られることが多くて,
それで,いっぱしの社会人の何か勉強もした人達の社会生活の社交の中で,実際のところ,政治や社会のことが話題になることは,無いんですね。
避けてる。
小沢 一郎 代表
うん。そうですね。うん。
堀 茂樹 教授
だから,そういう,政治文化そのものの未成熟っていう問題が根本にあるので,なかなか今仰ったことも一理あると思いながら,まあ難しいなあとか,私は思うんですけれども。
それで,そういうことから考えると,果たして我々この日本人,日本市民は,民主主義ってのをね...
1回,やっぱり 2009年には多数の日本人が,これは,希望を持ったと思うんですが。「やった!」とおもったと思うんですが。
つまり政治主導と仰った,小沢さん,リーダーでしたから。
それから,政治主導ってことは国民主導ってことですから。
言うまでもなく,取りも直さず,国民主権ということですから。
これでやって行こう,と。
別に官僚を敵視するとかいうことじゃないけれども,決定権は国民にあるんだっていうことで,やろうとしたわけですよね。それがちょっと上手く行かなかったことで...
もう一度ですね,やっぱり何か,上の人に,お上に任せた方が良いっていうふうな,そういうリアクションが起こってきているように思えてならず,ですね。
いったい,日本人が,その民主主義っていうものを本気でやる気があるのか,と。
それを確かめるためには,考えるためには,民主主義とは何ぞや。
何故,民主主義を採るべきか,と。
それから,その次の問題として,何故,議会制民主主義・代表民主主義を採るべきか,という問題もあると思うんですが,まずはその,やっぱり日本も色々な伝統・文化があるけれども,民主主義という,これ発祥は西欧近代ですけれども,これを採用してやって行くべきだと,小沢さんがお考えになっているんだと思いますけれども,それは,何のために,何故,そういうふうにお考えになりますか。
小沢 一郎 代表
日本にも,古来から民主主義が無かったということではないと私は思うんですね。
ただ日本は,何千年か何万年か分かりませんけれども,非常に古代は,より温暖な気候で,より豊かだったと言われてますし,
日本の歴史に大陸諸国家のように血みどろの争いというのは,ほとんど無いんですね。
権力者同士の争いはありましたけれども,一般の人が参加した民族と民族の争いとか,国と国の争いみたいなものは,ほとんど必要無かったんだと思うんですけれども,それだけ平和で豊かであったと思う。
だから,コンセンサス社会なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
全会一致のコンセンサス社会で,それでやって来れたんですね。僕はそう思います。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
ですから,コンセンサス社会の中では,自己主張はできるだけしない方が良いんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
今の日本社会も,そうじゃないですか。
色んな会社でも何でも,何か意見一生懸命言うと,あの野郎ばっかり喋る,って言うでしょ。
堀 茂樹 教授
「空気を読めない」って言う...
小沢 一郎 代表
(両腕で丸く収める所作をしながら)そうすると「まあ,まあ,まあ」ってこうなるんですね,すぐね。
それでやって行けるならば,僕はそれは良いと思います。
日本的な民主主義で。
堀 茂樹 教授
はあ,はあ。
小沢 一郎 代表
だけどやっぱり特に世界が段々だんだん,グローバルな形になって来て,日本も明治維新を経て,という近代化の中でね,結局,単なる鎖国の,日本の鎖国政策で日本人だけで丸く丸くでは,もう納まらない。
近代社会の中で日本は生きていかなきゃなんない。
そういうことになって,最初は良かったんだけど,結局は,戦争というあれで失敗してしまったということなんですが。
堀 茂樹 教授
確かに戦争に突っ込んでしまったあの歴史は,あの過程は,自由な議論を,対立した勢力が自由に議論をすると言うか,そういうことではなくて,大政翼賛会になって,体制に迎合して行くっていうことになりましたので。
小沢 一郎 代表
非常に心情的なものごとに,日本人は動かされるんですね。
右というと右,左というと左,みたいな,その時の雰囲気。
まあ小泉さんがよく雰囲気って言葉使ったけど。それに流されるんですね。
要するに,自己主張というのが無い。
自分自身で考え,自分自身で判断し,自分自身で結論を持って行動をするという,いわゆる自立ですね。
僕がいつも言ってるんだけど。
自立心がまだまだ足りない。
ですから,民主主義というのは,個人個人の自立があって成り立つわけですよ。
だから,そういう意味でね,日本は,世の中が,地球社会が,世界が,変わっちゃってるんですから,それの中で生き延びていくためには,やはりきちんとした自己主張を持って,世界の国々・世界の人たちと接して行かなきゃならない。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
ですから,それはその即ち民主主義だということと同義語なんですね。ギリシャの昔にもね,民主主義というのは衆愚政治だと。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
要するに手続きは,メンドくさいしねえ。一々,皆なの話し聞いてたんでは,ロクな結論出ない,と。
衆愚政治だというふうに言われるんですが,確かに衆愚政治の面があって。ソクラテスでしたか? 哲人政治を...
堀 茂樹 教授
プラトンです。
小沢 一郎 代表
プラトンが,哲人政治を一番良いわけだと。神様がやってくれるんなら,一番良いわけですね。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
だけどそんな(神様のような)のは,人間はいないわけですから,結局皆なでやって,衆愚的な要素はあるけど,独裁よりも大きく間違うことはない,という処に,民主主義のね,良いとこあるわけですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,時間はかかる,手間暇かかる。まあ,さっぱ結論が出ない,という欠点あるんだけど,大きな間違いはしない,
という処に私は民主主義の良いところがあって,そのためには皆なが自分自身の考えをきちっと持って,それで自己主張しなきゃいけないんですね。
それが無いと,もう民主主義は成り立たないで,日本は今なお,僕はそうだと思ってるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。ええ。
それとね,こういうことは如何ですか。
もちろん私,小沢さんの本,全部読んでますからね。書いておられたのを思い出したから言うんですけれども,民主主義っていうのは,やっぱり,仰る通り,市民が皆な自分で考えて,自由な議論を通して合意形成をして,ですね。だから,最初にコンセンサスがあるんじゃなくて,コンセンサスを見つけるように議論をして行く,と。
コンセンサスは初めに無いというのが前提で,対立衝突があるのは当たり前と。
これを受け入れて,そしてフェアーに議論をして,最近はそれを熟議とか言ったりもしますけれども,それをして,合意形成をして行く,と。それでコンセンサスに至る,と。
で,このコンセンサスが強いんだ,ということを,仰ってたと思うんですよ,書いておられたと。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
つまり,自分たちが決めたんだと。自分たち,集団的に決めたんだ,ということが,これは強いよ,と。
やっぱり,その,権威に従って,上から言われるからって,従ってた,そういう集団は...
小沢 一郎 代表
弱いです。脆いです。
堀 茂樹 教授
戦争の時は言うまでもなく,ですね。平和の時も,脆いと。この点。これも 1つの理由なんじゃないですか,民主主義の。
小沢 一郎 代表
うん。私は,本当に,そう思います。
自分たちで議論し,自分たちで決めた,と。これほど強いものはないんですね。だからそこに民主主義の強さがあって。
僕,時々ね「話しせい」って言われた時に,昔『戦場にかける橋 』って(映画が)あったんですよ。(テーマ曲が)「クワイ河マーチ」のね。
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
戦場にかける橋
The Bridge on The River Kwai
1957年公開の英・米合作映画。主題歌:クワイ河マーチ
小沢 一郎 代表
あれは,日本人をバカにした映画だと言う人もいたけども...
堀 茂樹 教授
ははは(笑)
小沢 一郎 代表
そんな詰まんないことを見てないで。 あの時に,日本軍があそこ占領してて,アメリカやオーストラリアの兵隊を捕虜にしてましたね。
ある時,英国の部隊が捕虜としてやって来るんですね。ところがもう,整然として,それこそ「クワイ河マーチ」をね,口笛吹いて,指揮官は指揮官のままで,来るんですね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
そして,(日本軍が捕虜となった英国軍に)「橋造れ」って労働させるんだけど,これはジュネーブ条約によって,将校は労役を課せられない,ということを,その指揮官はね(主張し)もう絶対言うことを聞かないわけ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それでね,独房に入れられて1週間もやられたんだけど,それで頑張って...それに対して兵隊皆ながね,拍手喝采で迎える。
日本が敗れた時はね,日本人の捕虜の話しありますが。
堀 茂樹 教授
ええ。『 アーロン収容所 』。
小沢 一郎 代表
『 アーロン収容所 』から何から色んなのあるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,ありますね。
『 アーロン収容所 』 中公文庫
会田雄次(あいだゆうじ)歴学者
1916(大正5)年 3月5日(日)― 1997(平成9)年 9月17日(水)
小沢 一郎 代表
だけどもう,そうなった途端にね,世界一の軍規を誇った帝国陸軍,特に陸軍が,そうなっちゃうと,もうメチャクチャになって,上下関係もなけりゃ何も無いというようなことで,白人に笑われたんですけれども。
それは何故かと言うと,やっぱ,権力によって権威によって作られた階級なんですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,俺達認めたわけじゃないぞ,という意識がどうしてもありますから,権威がなくなった途端に烏合の衆になっちゃうんです。
ところがその『戦場にかける橋 』の英国人。僕は英国人ってあんま好きじゃないんですけども。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
だけども,彼等はやっぱ,偉いんですね。自分たちで決めたルールだと。
堀 茂樹 教授
うん,そうなんですね。
小沢 一郎 代表
将校も,自分たちの決めたルールに従って将校になり指揮官になってるんだと。これは,捕虜になったって,このルールはきちんと守るんだと。
その意識の違いが,僕は,日本人と彼等の違いだと思いますね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから日本人はもう少しやっぱり,主権者って言われんだから。
自分たちも時々,私たちは主権者だ,なんて言うんだから。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
自分で言う限りはね,主権者らしく振舞わなきゃ駄目ですよ。
だから,そういう意味で,私は,日本にもう少し民主主義,即ち日本人の自立を,ぜひお願いしたい。
堀 茂樹 教授
成程。
ーーーーーーーーーーーーーー
小沢、堀茂樹対談Vol3(3)へ続きます。
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小沢、堀茂樹対談Vol3(3)反対で支持する矛盾、首相リコール制
2013-12-26
小沢、堀茂樹対談Vol3(2)からの続きです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
堀 茂樹 教授
成程。
今度は逆にその点で,やっぱり日本も,今にそうなって来るっていう...楽観的なこと言いますとね。
やっぱりね,この,日本の,日本人の社会生活の,あるいは家族生活のあり方も変化しておってですね。
私,大学で若い子相手にしてますけれども,例えば自分の結婚相手は絶対自分が選ぶんだと(笑)。
何か親に言われたからとか世間様がとかって言うことで,配偶者を決められたらそれはもう彼女たち,彼等にとっては,論外なんですね,今や。
ですから,やっぱり自分のことは自分で決めたいっていう気持ちは,抗い難く日本人のメンタリティの中に浸透しておって,社会生活にも浸透して来て,そういうものは進んでいると思うんですね。
で,逆に,そういうものが抗い難く進んでいるから,これは,言わば,私はそれを「個人主義化」とは必ずしも言わないで「個人化」と言ってるんですけど。つまり個人の自律につながるような可能性がね,生まれてきている,と。
ただし,これにも罠があって,ある形の「個人主義化」をしていくと,危険になると思ってますけれども。
しかし「個人化」という現象は,もう抗い難く進んで来ているので,かつては,女の人は男に従うと言うか,旦那に従うとか,お父さんに従うっていうことが多かったと思いますし,そういうのも変わってきてます。
それこそ小沢さんのところの党には女性議員が大勢いることからも分かるようにですね,変わってきてるんで。
じゃあ,その人たちの意識がもうちょっと,もう少しの勇気でね,もう少し勇気を持てば,自分たちが責任を持って担うんだ,と。
その,責任を持って担うっていうことは,ただ自分たちの好きなことはできる,っていうのが自由なんじゃなくてですね,「 わたくし 」あるいは「 わたくしの利益 」「 特殊な利益 」を越えて,できるだけ越えて,自分で自分の意識で公の立場に立って考えるって言うか...そういう政治家を選ぶ。そういうことが進んで行く素地は,日本の社会にも十分できてんじゃないかと。
ただ,これまでの権威主義的な,画一的に周りに合わせるっていう習慣が,非常にやっぱり根強くあって,これが日本の社会の一体感を作っていると同時に,本当の深い・強い一体感につながってないんじゃないか,と思いましてね。
だから,これ,もう少しの勇気で,市民の勇気で変わってくるんじゃないかというふうにも,思うんですけどね。
小沢 一郎 代表
うん。何が欠如してるかって言いますと,僕は男でも女でもね,別に親の言う通り決めたっていいし,あるいは自分等の好きなの決めたっていいし,結婚はですよ。
そんなのいいけど,自分の決断で以って,親の言う通りしたんで。
堀 茂樹 教授
そうです。もちろん、そうですね。
小沢 一郎 代表
そうなら,いいんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
そうじゃない,何か,人に言われてそうした,と。それでブツブツ,ブツブツ文句言うと。
堀 茂樹 教授
そう,逆にね。
小沢 一郎 代表
これは,いけないですね。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
何でも,どういう形で以って決断しようが,決断するのは個人でもちろん構わないんだけれど,問題は,決断したその結果に責任を自分が持つということですよ。
堀 茂樹 教授
そうですよ,ええ。
小沢 一郎 代表
今(仰った)「個人主義的」。本当の意味の個人主義が,まだね(日本には根付いていない)。
堀 茂樹 教授
ええ,そこが問題なんですね。
小沢 一郎 代表
自立っていうのは,自己責任ですからね。
そういう意味で,上手く行かなかったからって,人のせいにするとか,社会のせいにするとか,それではいけないんでね。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
自分の判断でやることは,大いに結構だけど,やっぱその尻拭いを自分でしなきゃ( なら )ない。そこさえ自覚できれば,僕は,日本人は大丈夫だと思いますね。
堀 茂樹 教授
だから,あれでしょ,そこが恐らく,小沢さんが(矛盾だと仰っている),例えば安倍政権の今の基本的な政策に全部多数派の日本人は反対だって(世論)調査で出しているんだけど...
小沢 一郎 代表
安倍内閣支持してる...
堀 茂樹 教授
安倍内閣にはずっと続いてほしいって人の方がまた多数派なんですよ。
小沢 一郎 代表
続いてほしいかどうか分からないけども,あのマスコミの調査では支持するというの多いでしょ。
堀 茂樹 教授
多いですね。それは何なんでしょうね。
小沢 一郎 代表
ホント,日本人っつうのはね,この自己矛盾を平気なんですよ。
だって「安倍内閣の基本的な政策は皆反対です」って言ってるんでしょ。
(それでは)何で安倍内閣を支持するんだ?っつうんですよ。
ホントこれ,ちょっとおかしい。
堀 茂樹 教授
それは,お任せ主義なんだと思うんですよ。「お任せした人がまあ何とか良くやってくれるだろう 」から,「 1つひとつ見ると本当に困ったことだ 」と,「危険かもしれない」と,思うけれども,何かそういうのに「真っ向から反対だって言うのは,ちょっとねえ...」って,こういう感じがあるんですよ。
小沢 一郎 代表
(国民が正直に)言えないんですよ。
メディアの調査の方法もいけないんですけど,それに同調するような(論理の)転倒をしてたんではね,僕はおかしいと思いますねえ。
ホントに,信じられない。筋道通んないですもんね。
堀 茂樹 教授
それでね,今度じゃあ,小沢さんね,そうするとやはり民主主義というものが,近代人の,自律心のある近代人が共同生活をして,そして集団の意思をどっかで,例えば日本国民の意思はこれだっていうことを決めて行かなきゃならないですが,そのコンセンサスを・強いコンセンサスを作るためには,民主主義をやはり採用すべきだということだと思うんですが。
更にですね,今,こういう考え方もあるんですね。
それはOKなんだと。それはOKなんだけれども,だんだん市民として目醒めてくると,より一層,自分たちの,もちろん地方自治体のレヴェルでもそうですが,国政のレヴェルでも,自分たちが選んだ議員が,マニフェストや公約ではこう言っていたのに,いったん役職に就くと,議員になると,違うことをやってる,というようなことが多々ある,というのが大きな原因でですね。
それで,間接民主主義,つまり代表民主主義に対する不満と言うのも,大きく最近は目立ってきていると思います。
で,私の考えでは,そのことの1つの顕れだと思うのは,例えば一部では非常に人気を博している議員になった人が,自分は選挙で選ばれて国民・有権者に対して責任があるはずなんだけれども,そっち(=主権者)の方に向いてじゃなくて,天皇陛下に何かお願いするかのような行動に走ってですね,それが結構肯定されているとか...
それから,どうせもう議員ってのは嘘つきだ,と言うような言説がしばしばインターネットのブログなどにもありましてね。「ウンザリしている」と言う...まあ,ウンザリするだけの裏切りがあったっていうことも事実だと思うんですが。
小沢さんはどう思われるかは分かりませんが,私は,ちょっとこれは危険だと思ってるんですね。
つまり,その信頼関係を損なった原因が,選ばれた議員の方にあることも,多々そういう例があると思いますが。
議員が選ばれる過程。それから,議会で議論するという過程を通して,然るべきコンセンサスを見出していくっていうのが,代表民主主義だと思うんですが,この,直接民主主義か代表民主主義か。この件について,どうお考えになってるでしょうか。
特に「議会制民主主義を」というふうに小沢さん仰っているから,この点について,どうお考えになってるでしょう。
小沢 一郎 代表
本来の直接民主主義は,今,近代国家ではスイスしかないですけどね。1億2千万の人口と,これだけの国土で,直接民主主義というのは事実上不可能ですから,そうすると,じゃあ,大統領制か議会制民主主義かという形になるんだと思います。
スイス連邦:人口 約787万人(2010年)
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
首長は今,まあ言わば大統領制ですわね。直接選びます。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
じゃあ国の責任者も,直接選ぶという方法を採るべきなのか,どうか,ということですが,これは言わば,言葉を変えると共和制なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
君主制を変える以外にないです,そうすると。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
日本の場合に,その君主制を廃止して天皇制を廃止して大統領制にする,それだけの...まあ多分色んな混乱と抵抗があるから,それをやってまで,そんなにプラスが大きいだろうかという話しが1つと,やっぱりそこは障碍になって,僕はそれまでの必要はないだろうと(考える)。
ということになると,やっぱり代議制の議会政治に期待する以外にないんだろうと,僕は思うんです。
堀 茂樹 教授
議員のリーダシップに,やっぱり,期限を区切って預けるしかないんだという処については,どう思われますか。
小沢 一郎 代表
それ以外に方法が無い。
堀 茂樹 教授
(方法が)無い,と。そういうお考えですか。
小沢 一郎 代表
例えば今度の特定秘密保護法案というのが,安倍さんが別に選挙の時にも喋らない,公約にも何にも無い。それをピャーッと出してきたわけです。
こういうことに対して,じゃあ日本人が,本当に怒りの行動をしてるか,と。ほぼ無いんですよね。
堀 茂樹 教授
ううん。まあ,まったく無いわけでもないわけじゃないですか。
小沢 一郎 代表
国会周辺(に反対の人びとが)集まったというけど,数千人ですよね。あれ,他の国だったらね,大変な,もう,市民のね,大デモになりますよ。
だけど日本人は,そこまでは絶対なんないね。
ですから,そうすっと,総理あるいは為政者は「なあんだ。まだ大丈夫だ」と「何やったって大丈夫だ」という感じに,どうしても,なっちゃうんですね。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
そういう意味で私は,基本的には,任期が来た時に自分たちで言ったこと違うことをやった人を,選挙で変えるという以外に方法ないんですけど,こういう大きな危険な問題については,もっと大衆が行動すべきだと,僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
小沢さんは,いわゆるデモ,デモとか集会とか,こういう行動,これが西欧では日常茶飯にありますけれども,これを別に悪いことだとは思わない?
小沢 一郎 代表
思いませんよ。(左手を大きく横に振って)
それで日本人はそういうこと,あまりやりたがらないから。
それならば,僕は,大きな問題については,国民の何%の賛成あれば,「国民投票」にかける,というのも,1つの手だと思います。
堀 茂樹 教授
はああ,はい。リコールですか。
小沢 一郎 代表
リコールというか,この政策は,ダメだと,イエス・ノーでね。
あるいは内閣までをも,ノーって言っても良いかも知れませんが。
事実,地方自治法では「首長のノー」あるでしょ。住民投票で不信任が(ある)。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
だからそれをね,国政に取り入れると,直接民主主義の1つの良いところが入り込むことになりますから。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は,天皇制を廃止して大統領制にするなんていうことは,日本にとっては決してプラスにならない(から採用できない)。
堀 茂樹 教授
昔,中曽根さんと,何かその件で議論されたことがある...
小沢 一郎 代表
中曽根先生もね,もう皆な偉い人も,学者も何も皆な,間違えてんですよ。
中曽根先生は「首相公選制 」って言ったんですね。
堀 茂樹 教授
そうそう。
小沢 一郎 代表
「首相公選制」ちゅうのは大統領制なんですよ。じゃあ,天皇陛下との関係どうするつったら「天皇陛下が,選ばれた大統領を認証すりゃいいんだ」と,こう言ったんですよ。
そんなバカなこと,ないんですよ。
主権者が直接選んだ人を,天皇陛下がもう一度認めるということは,あり得ないです。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
大臣とかなんかは,主権者が直接選んだんじゃないから,天皇陛下が国民に代わって(認証)手続きするんですよね。
堀 茂樹 教授
国民の象徴としてね。ええ,そうですよね。それは,論理的です。
小沢 一郎 代表
主権者が直接選んだ人がね,天皇陛下が認証する,そんなバカな話し,ないです。
堀 茂樹 教授
主権者の上に,天皇がいることになる。
小沢 一郎 代表
そう,そう,そう。じゃあ,国民主権じゃ,なくなっちゃう。
だから,中曽根先生でさえ,そういうバカな間違いをしてるんですよ。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
今のね,集団的自衛権であれ何であれ,皆ね,もう全然間違った議論してるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
困ったもんですね。(優しく「やれやれ」という口調で)
堀 茂樹 教授
わはははは(大笑,会場拍手と笑,小沢氏・笑)
そうすると,地方の首長さんやなんかが問題起こした時に,リコールするってのがありまして。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
極端に言えば,今仰ったことは,手続き ・どういう条件でそれを国民投票やるかっていう問題があるかと思いますけれども,それをちょっと措いとくと,究極的には首相を国民投票でリコールするってことは,そういう制度もあり得るということですか。
小沢 一郎 代表
直接民主制の要素を,一定の条件で,入れたら良いと。
堀 茂樹 教授
(それを)入れると。代表民主制に。
小沢 一郎 代表
憲法も変えなきゃならないですけどね。
堀 茂樹 教授
成程ね。それは,私は面白いと思いますね。
つまり,誰が首相であるかを選ぶんじゃなくて,直接に選ぶんじゃなくて,現在,議員内閣制で首相になってる人を,今度は国民投票でノーを言う,ということですね。
小沢 一郎 代表
(大きく頷く)
堀 茂樹 教授
ノーを言う権利を国民に直接に持たしても良いんじゃないかということですね。
小沢 一郎 代表
不信任案ですよ。
堀 茂樹 教授
不信任案ですね。成程ね。それは,面白いですね。
それとね,直接民主主義への要求・要請が強いというのは,別の言葉で言うと,参加型民主主義をやりたいってことなんですね。
これ世界的にもですね,参加型の民主主義か,自由主義的民主主義か,ってよく言われるんですね。
自由主義的民主主義ってのは,国家はできるだけ小さい方が良くて,で,基本的人権を守る,と。 国民の内心の自由を守る,と。 そういう自由主義なんですね。
ただ,それでは不十分だっていう考え方があって,更に市民が積極的に政治生活に参加して,いわゆる参加型の民主主義で。
選挙も1つの参加型なんです,選挙だけじゃなくて,例えば地域をどういうふうに管理してやって行くかってことに,市民が参画するとかね。そういうことで参加型って言われていましてね。
これは,国政ではね,私はっきり言って無理だと思いますが,地方ではどうですか。
小沢 一郎 代表
いや,僕はね,そうじゃないと思いますよ。
堀 茂樹 教授
そうじゃないですか。
小沢 一郎 代表
例えば欧米ではね,国民のかなりの多くの部分が政党に入ってますよ。
堀 茂樹 教授
ああ! そういうことは言えますね。
小沢 一郎 代表
うん。だから(国民のほぼ)皆なが党員ですよ。オレは共和党だ,オレは民主党だ,保守党だ,労働党だ,とかね。
堀 茂樹 教授
ああ,はい。それ,いますよ。
小沢 一郎 代表
そういう中で,やっぱり候補者選ぶにも,まあ,ある程度本部のリーダー・シップの元に選ぶんですけど,やっぱり党員が全部が参加して選んでく,と。
堀 茂樹 教授
ああ,成程。
小沢 一郎 代表
アメリカ大統領もそうでしょ。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。そうですよね。
小沢 一郎 代表
だからそういう政治参加というのは,議会制民主主義の中でも十分できるんですよ。
堀 茂樹 教授
ああ,そういう意味でね。
小沢 一郎 代表
イギリスもそうですよね。各支部に本部から3~4人の良いやつを,候補者出して,そこで,党員の前でスピーチしたりなんかしたりして,その数人の中から選ぶ,という形を採って候補者をつくってんですね。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
それはもう非常に大きなね,参加意識を持てるんじゃないですかね。
堀 茂樹 教授
そうですね。政党政治に参加するということですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
そうですね。私は,地方レヴェルの行政に市民の参加っていうようなことも,いわゆる最近のNPO,NGO等を通してですね,市民のそういう参加型の実現があるんじゃないかと思いましたけれども,それもあるとは思いますが,その,政党に参加するっていうのは,そうですね。
だから,日本でねえ...この,政党に(参加して)党員ですってのは,なんか,どうかすると,何かもう新興宗教のね...
小沢 一郎 代表
特殊な人間みたいに見られる(笑)
堀 茂樹 教授
そんなところがあるんじゃないですかね。それね,私は,その政党に参加していても,自分の意見を旗幟鮮明にする,と。 鮮明に打ち出す,ということとね,リベラルな討論をすることとは,まったく両立することですよ。自分の意見はこうだっていうことを言うのと,対立するする意見を排除するってこととは,まったく違いますよね。
小沢 一郎 代表
違います。全然違いますよ。
そこの仕分けが,日本人には割り切りできないんですよ。
堀 茂樹 教授
そこが,ええ。
小沢 一郎 代表
日本人,議論するとね,感情的になっちゃうでしょ。「 アイツは,こんなこと言った 」とかね。そういう感情的になったんじゃ,全然成り立たないですよ,民主主義は。
堀 茂樹 教授
成り立たないです。
小沢 一郎 代表
僕は,日米同盟交渉に,2度,3度行きましたけれどね。もう,ものっ凄い議論なんですよ。
堀 茂樹 教授
はい,ええ。
小沢 一郎 代表
それで,連中はねえ,ちょっとこっちが黙ってたら,どこまででも来ますからね。
堀 茂樹 教授
そう,そう,そう。
小沢 一郎 代表
だから,こっちも言わなきゃならないですよ,バンバン。喧嘩みたいにしてウヮンワン,ウヮンワン議論して,それで合意を得る,と。
後はもう,合意を得た時は「お互い良く頑張ったねえ」つってね,握手してニコニコして別れる。
堀 茂樹 教授
ええ。つまり,敵は敵なんだけど,敵ながら天っ晴れみたいなことですね。
小沢 一郎 代表
( 頷きながら )それでやっぱり自己主張するということが,非常に大事だというふうに彼等は(考え),自分の意見の無い人間,日本人はノッペラボウだって言われるように,自分の意見の無い人間っていうのは,もの凄い軽蔑されるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,分かりますよねえ。ええ。
小沢 一郎 代表
だから,その点ね,グヮングヮン,グヮングヮンね,正論である以上,言った方が,彼等にね,尊敬される。
堀 茂樹 教授
成程,それは,その通りですね。ええ。
それでね,参加型ということで,もう1つ伺っておきたい。
我々が正当に選挙で民主的に選んだのは,議員さん達ですね。代議士さんとか。
ところが最近ですね,今の政府なんか典型的ですけれども,政府に政府委員ってのが,よくいるんですね。非常にしばしば(いる)。いて悪いわけじゃないんですけど。
それから,民間議員と称してですね,「議員」って言うけれども,民主主義的な正当性を担った,つまり選挙で選ばれた人じゃ,全然なくて,ただ省庁の官僚の方にピックアップされた人達だと思うんですね。この人達が,教育再生会議だとか,成長戦略会議だとか何だとか,作ってですね,そしてそこで,結構,国会どころか,そこで色んな政策を決めていく,と。
そしてマスメディアも,まあ国民もそうなんですけど,その会議の「民間ナントカ」っていうような人の言動に,もの凄く脚光を浴びせるんですね。
キャスティング・ヴォートを握っているのは,何処やらの会社の社長であると。 それだけで,何ら民主的な正当性を担っていない人が,そういう地位に就いて,恰もそれが,市民社会が国家に関与する何か民主的なことであるかのように,提示されている。
こういう口調で言えば,私はもう,非常にそれに憤っているということが明らかかも知れませんが,これ,どう思われますか。
おかしいんじゃないですか。
小沢 一郎 代表
これもね,日本的な仕組みの1つなんですよ。今,民間の人と仰ったけど,その調査会とか審議会とか,いっぱい,できてますね。
あんなの,全部,役人ですよ。
堀 茂樹 教授
(役人が)決めている?
小沢 一郎 代表
事務局長は,事務局は,全部役人ですから。
それで,役人が自分が矢面に立たずに,ああいう人達に原稿やって,話させて,それで政治家も役人も「いやあ,客観的なああいう学識経験者とか偉い人が決めたことだから,正しいんです」という類いの,イクスキューズに使うんですね。そして,隠れ蓑に(使う)。
ですからね,これは,非常に,良くないと思います。
スタッフとして,政治家が民間人を使うというのは,僕は構わないと思いますよ。
ただ,自分の責任を逃れるために,しかも官僚によって全部動かされている,と。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
今,政府委員の話し出ましたが,国会も全部,僕は政府委員廃止論で,一度廃止したんだけれど,また元の通りになっちゃって。
ほとんどがもう,官僚が答弁ですから。
だから,立法府も行政府も司法もですよ,今や。
完全に官僚に握られてる。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
ーーーーーーーーーーーーー
小沢、堀茂樹対談Vol3(4)へ続きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
堀 茂樹 教授
成程。
今度は逆にその点で,やっぱり日本も,今にそうなって来るっていう...楽観的なこと言いますとね。
やっぱりね,この,日本の,日本人の社会生活の,あるいは家族生活のあり方も変化しておってですね。
私,大学で若い子相手にしてますけれども,例えば自分の結婚相手は絶対自分が選ぶんだと(笑)。
何か親に言われたからとか世間様がとかって言うことで,配偶者を決められたらそれはもう彼女たち,彼等にとっては,論外なんですね,今や。
ですから,やっぱり自分のことは自分で決めたいっていう気持ちは,抗い難く日本人のメンタリティの中に浸透しておって,社会生活にも浸透して来て,そういうものは進んでいると思うんですね。
で,逆に,そういうものが抗い難く進んでいるから,これは,言わば,私はそれを「個人主義化」とは必ずしも言わないで「個人化」と言ってるんですけど。つまり個人の自律につながるような可能性がね,生まれてきている,と。
ただし,これにも罠があって,ある形の「個人主義化」をしていくと,危険になると思ってますけれども。
しかし「個人化」という現象は,もう抗い難く進んで来ているので,かつては,女の人は男に従うと言うか,旦那に従うとか,お父さんに従うっていうことが多かったと思いますし,そういうのも変わってきてます。
それこそ小沢さんのところの党には女性議員が大勢いることからも分かるようにですね,変わってきてるんで。
じゃあ,その人たちの意識がもうちょっと,もう少しの勇気でね,もう少し勇気を持てば,自分たちが責任を持って担うんだ,と。
その,責任を持って担うっていうことは,ただ自分たちの好きなことはできる,っていうのが自由なんじゃなくてですね,「 わたくし 」あるいは「 わたくしの利益 」「 特殊な利益 」を越えて,できるだけ越えて,自分で自分の意識で公の立場に立って考えるって言うか...そういう政治家を選ぶ。そういうことが進んで行く素地は,日本の社会にも十分できてんじゃないかと。
ただ,これまでの権威主義的な,画一的に周りに合わせるっていう習慣が,非常にやっぱり根強くあって,これが日本の社会の一体感を作っていると同時に,本当の深い・強い一体感につながってないんじゃないか,と思いましてね。
だから,これ,もう少しの勇気で,市民の勇気で変わってくるんじゃないかというふうにも,思うんですけどね。
小沢 一郎 代表
うん。何が欠如してるかって言いますと,僕は男でも女でもね,別に親の言う通り決めたっていいし,あるいは自分等の好きなの決めたっていいし,結婚はですよ。
そんなのいいけど,自分の決断で以って,親の言う通りしたんで。
堀 茂樹 教授
そうです。もちろん、そうですね。
小沢 一郎 代表
そうなら,いいんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
そうじゃない,何か,人に言われてそうした,と。それでブツブツ,ブツブツ文句言うと。
堀 茂樹 教授
そう,逆にね。
小沢 一郎 代表
これは,いけないですね。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
何でも,どういう形で以って決断しようが,決断するのは個人でもちろん構わないんだけれど,問題は,決断したその結果に責任を自分が持つということですよ。
堀 茂樹 教授
そうですよ,ええ。
小沢 一郎 代表
今(仰った)「個人主義的」。本当の意味の個人主義が,まだね(日本には根付いていない)。
堀 茂樹 教授
ええ,そこが問題なんですね。
小沢 一郎 代表
自立っていうのは,自己責任ですからね。
そういう意味で,上手く行かなかったからって,人のせいにするとか,社会のせいにするとか,それではいけないんでね。
堀 茂樹 教授
ええ。
小沢 一郎 代表
自分の判断でやることは,大いに結構だけど,やっぱその尻拭いを自分でしなきゃ( なら )ない。そこさえ自覚できれば,僕は,日本人は大丈夫だと思いますね。
堀 茂樹 教授
だから,あれでしょ,そこが恐らく,小沢さんが(矛盾だと仰っている),例えば安倍政権の今の基本的な政策に全部多数派の日本人は反対だって(世論)調査で出しているんだけど...
小沢 一郎 代表
安倍内閣支持してる...
堀 茂樹 教授
安倍内閣にはずっと続いてほしいって人の方がまた多数派なんですよ。
小沢 一郎 代表
続いてほしいかどうか分からないけども,あのマスコミの調査では支持するというの多いでしょ。
堀 茂樹 教授
多いですね。それは何なんでしょうね。
小沢 一郎 代表
ホント,日本人っつうのはね,この自己矛盾を平気なんですよ。
だって「安倍内閣の基本的な政策は皆反対です」って言ってるんでしょ。
(それでは)何で安倍内閣を支持するんだ?っつうんですよ。
ホントこれ,ちょっとおかしい。
堀 茂樹 教授
それは,お任せ主義なんだと思うんですよ。「お任せした人がまあ何とか良くやってくれるだろう 」から,「 1つひとつ見ると本当に困ったことだ 」と,「危険かもしれない」と,思うけれども,何かそういうのに「真っ向から反対だって言うのは,ちょっとねえ...」って,こういう感じがあるんですよ。
小沢 一郎 代表
(国民が正直に)言えないんですよ。
メディアの調査の方法もいけないんですけど,それに同調するような(論理の)転倒をしてたんではね,僕はおかしいと思いますねえ。
ホントに,信じられない。筋道通んないですもんね。
堀 茂樹 教授
それでね,今度じゃあ,小沢さんね,そうするとやはり民主主義というものが,近代人の,自律心のある近代人が共同生活をして,そして集団の意思をどっかで,例えば日本国民の意思はこれだっていうことを決めて行かなきゃならないですが,そのコンセンサスを・強いコンセンサスを作るためには,民主主義をやはり採用すべきだということだと思うんですが。
更にですね,今,こういう考え方もあるんですね。
それはOKなんだと。それはOKなんだけれども,だんだん市民として目醒めてくると,より一層,自分たちの,もちろん地方自治体のレヴェルでもそうですが,国政のレヴェルでも,自分たちが選んだ議員が,マニフェストや公約ではこう言っていたのに,いったん役職に就くと,議員になると,違うことをやってる,というようなことが多々ある,というのが大きな原因でですね。
それで,間接民主主義,つまり代表民主主義に対する不満と言うのも,大きく最近は目立ってきていると思います。
で,私の考えでは,そのことの1つの顕れだと思うのは,例えば一部では非常に人気を博している議員になった人が,自分は選挙で選ばれて国民・有権者に対して責任があるはずなんだけれども,そっち(=主権者)の方に向いてじゃなくて,天皇陛下に何かお願いするかのような行動に走ってですね,それが結構肯定されているとか...
それから,どうせもう議員ってのは嘘つきだ,と言うような言説がしばしばインターネットのブログなどにもありましてね。「ウンザリしている」と言う...まあ,ウンザリするだけの裏切りがあったっていうことも事実だと思うんですが。
小沢さんはどう思われるかは分かりませんが,私は,ちょっとこれは危険だと思ってるんですね。
つまり,その信頼関係を損なった原因が,選ばれた議員の方にあることも,多々そういう例があると思いますが。
議員が選ばれる過程。それから,議会で議論するという過程を通して,然るべきコンセンサスを見出していくっていうのが,代表民主主義だと思うんですが,この,直接民主主義か代表民主主義か。この件について,どうお考えになってるでしょうか。
特に「議会制民主主義を」というふうに小沢さん仰っているから,この点について,どうお考えになってるでしょう。
小沢 一郎 代表
本来の直接民主主義は,今,近代国家ではスイスしかないですけどね。1億2千万の人口と,これだけの国土で,直接民主主義というのは事実上不可能ですから,そうすると,じゃあ,大統領制か議会制民主主義かという形になるんだと思います。
スイス連邦:人口 約787万人(2010年)
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
首長は今,まあ言わば大統領制ですわね。直接選びます。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
じゃあ国の責任者も,直接選ぶという方法を採るべきなのか,どうか,ということですが,これは言わば,言葉を変えると共和制なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
君主制を変える以外にないです,そうすると。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
日本の場合に,その君主制を廃止して天皇制を廃止して大統領制にする,それだけの...まあ多分色んな混乱と抵抗があるから,それをやってまで,そんなにプラスが大きいだろうかという話しが1つと,やっぱりそこは障碍になって,僕はそれまでの必要はないだろうと(考える)。
ということになると,やっぱり代議制の議会政治に期待する以外にないんだろうと,僕は思うんです。
堀 茂樹 教授
議員のリーダシップに,やっぱり,期限を区切って預けるしかないんだという処については,どう思われますか。
小沢 一郎 代表
それ以外に方法が無い。
堀 茂樹 教授
(方法が)無い,と。そういうお考えですか。
小沢 一郎 代表
例えば今度の特定秘密保護法案というのが,安倍さんが別に選挙の時にも喋らない,公約にも何にも無い。それをピャーッと出してきたわけです。
こういうことに対して,じゃあ日本人が,本当に怒りの行動をしてるか,と。ほぼ無いんですよね。
堀 茂樹 教授
ううん。まあ,まったく無いわけでもないわけじゃないですか。
小沢 一郎 代表
国会周辺(に反対の人びとが)集まったというけど,数千人ですよね。あれ,他の国だったらね,大変な,もう,市民のね,大デモになりますよ。
だけど日本人は,そこまでは絶対なんないね。
ですから,そうすっと,総理あるいは為政者は「なあんだ。まだ大丈夫だ」と「何やったって大丈夫だ」という感じに,どうしても,なっちゃうんですね。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
そういう意味で私は,基本的には,任期が来た時に自分たちで言ったこと違うことをやった人を,選挙で変えるという以外に方法ないんですけど,こういう大きな危険な問題については,もっと大衆が行動すべきだと,僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
小沢さんは,いわゆるデモ,デモとか集会とか,こういう行動,これが西欧では日常茶飯にありますけれども,これを別に悪いことだとは思わない?
小沢 一郎 代表
思いませんよ。(左手を大きく横に振って)
それで日本人はそういうこと,あまりやりたがらないから。
それならば,僕は,大きな問題については,国民の何%の賛成あれば,「国民投票」にかける,というのも,1つの手だと思います。
堀 茂樹 教授
はああ,はい。リコールですか。
小沢 一郎 代表
リコールというか,この政策は,ダメだと,イエス・ノーでね。
あるいは内閣までをも,ノーって言っても良いかも知れませんが。
事実,地方自治法では「首長のノー」あるでしょ。住民投票で不信任が(ある)。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
だからそれをね,国政に取り入れると,直接民主主義の1つの良いところが入り込むことになりますから。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は,天皇制を廃止して大統領制にするなんていうことは,日本にとっては決してプラスにならない(から採用できない)。
堀 茂樹 教授
昔,中曽根さんと,何かその件で議論されたことがある...
小沢 一郎 代表
中曽根先生もね,もう皆な偉い人も,学者も何も皆な,間違えてんですよ。
中曽根先生は「首相公選制 」って言ったんですね。
堀 茂樹 教授
そうそう。
小沢 一郎 代表
「首相公選制」ちゅうのは大統領制なんですよ。じゃあ,天皇陛下との関係どうするつったら「天皇陛下が,選ばれた大統領を認証すりゃいいんだ」と,こう言ったんですよ。
そんなバカなこと,ないんですよ。
主権者が直接選んだ人を,天皇陛下がもう一度認めるということは,あり得ないです。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
大臣とかなんかは,主権者が直接選んだんじゃないから,天皇陛下が国民に代わって(認証)手続きするんですよね。
堀 茂樹 教授
国民の象徴としてね。ええ,そうですよね。それは,論理的です。
小沢 一郎 代表
主権者が直接選んだ人がね,天皇陛下が認証する,そんなバカな話し,ないです。
堀 茂樹 教授
主権者の上に,天皇がいることになる。
小沢 一郎 代表
そう,そう,そう。じゃあ,国民主権じゃ,なくなっちゃう。
だから,中曽根先生でさえ,そういうバカな間違いをしてるんですよ。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
今のね,集団的自衛権であれ何であれ,皆ね,もう全然間違った議論してるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
困ったもんですね。(優しく「やれやれ」という口調で)
堀 茂樹 教授
わはははは(大笑,会場拍手と笑,小沢氏・笑)
そうすると,地方の首長さんやなんかが問題起こした時に,リコールするってのがありまして。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
極端に言えば,今仰ったことは,手続き ・どういう条件でそれを国民投票やるかっていう問題があるかと思いますけれども,それをちょっと措いとくと,究極的には首相を国民投票でリコールするってことは,そういう制度もあり得るということですか。
小沢 一郎 代表
直接民主制の要素を,一定の条件で,入れたら良いと。
堀 茂樹 教授
(それを)入れると。代表民主制に。
小沢 一郎 代表
憲法も変えなきゃならないですけどね。
堀 茂樹 教授
成程ね。それは,私は面白いと思いますね。
つまり,誰が首相であるかを選ぶんじゃなくて,直接に選ぶんじゃなくて,現在,議員内閣制で首相になってる人を,今度は国民投票でノーを言う,ということですね。
小沢 一郎 代表
(大きく頷く)
堀 茂樹 教授
ノーを言う権利を国民に直接に持たしても良いんじゃないかということですね。
小沢 一郎 代表
不信任案ですよ。
堀 茂樹 教授
不信任案ですね。成程ね。それは,面白いですね。
それとね,直接民主主義への要求・要請が強いというのは,別の言葉で言うと,参加型民主主義をやりたいってことなんですね。
これ世界的にもですね,参加型の民主主義か,自由主義的民主主義か,ってよく言われるんですね。
自由主義的民主主義ってのは,国家はできるだけ小さい方が良くて,で,基本的人権を守る,と。 国民の内心の自由を守る,と。 そういう自由主義なんですね。
ただ,それでは不十分だっていう考え方があって,更に市民が積極的に政治生活に参加して,いわゆる参加型の民主主義で。
選挙も1つの参加型なんです,選挙だけじゃなくて,例えば地域をどういうふうに管理してやって行くかってことに,市民が参画するとかね。そういうことで参加型って言われていましてね。
これは,国政ではね,私はっきり言って無理だと思いますが,地方ではどうですか。
小沢 一郎 代表
いや,僕はね,そうじゃないと思いますよ。
堀 茂樹 教授
そうじゃないですか。
小沢 一郎 代表
例えば欧米ではね,国民のかなりの多くの部分が政党に入ってますよ。
堀 茂樹 教授
ああ! そういうことは言えますね。
小沢 一郎 代表
うん。だから(国民のほぼ)皆なが党員ですよ。オレは共和党だ,オレは民主党だ,保守党だ,労働党だ,とかね。
堀 茂樹 教授
ああ,はい。それ,いますよ。
小沢 一郎 代表
そういう中で,やっぱり候補者選ぶにも,まあ,ある程度本部のリーダー・シップの元に選ぶんですけど,やっぱり党員が全部が参加して選んでく,と。
堀 茂樹 教授
ああ,成程。
小沢 一郎 代表
アメリカ大統領もそうでしょ。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。そうですよね。
小沢 一郎 代表
だからそういう政治参加というのは,議会制民主主義の中でも十分できるんですよ。
堀 茂樹 教授
ああ,そういう意味でね。
小沢 一郎 代表
イギリスもそうですよね。各支部に本部から3~4人の良いやつを,候補者出して,そこで,党員の前でスピーチしたりなんかしたりして,その数人の中から選ぶ,という形を採って候補者をつくってんですね。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
それはもう非常に大きなね,参加意識を持てるんじゃないですかね。
堀 茂樹 教授
そうですね。政党政治に参加するということですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
そうですね。私は,地方レヴェルの行政に市民の参加っていうようなことも,いわゆる最近のNPO,NGO等を通してですね,市民のそういう参加型の実現があるんじゃないかと思いましたけれども,それもあるとは思いますが,その,政党に参加するっていうのは,そうですね。
だから,日本でねえ...この,政党に(参加して)党員ですってのは,なんか,どうかすると,何かもう新興宗教のね...
小沢 一郎 代表
特殊な人間みたいに見られる(笑)
堀 茂樹 教授
そんなところがあるんじゃないですかね。それね,私は,その政党に参加していても,自分の意見を旗幟鮮明にする,と。 鮮明に打ち出す,ということとね,リベラルな討論をすることとは,まったく両立することですよ。自分の意見はこうだっていうことを言うのと,対立するする意見を排除するってこととは,まったく違いますよね。
小沢 一郎 代表
違います。全然違いますよ。
そこの仕分けが,日本人には割り切りできないんですよ。
堀 茂樹 教授
そこが,ええ。
小沢 一郎 代表
日本人,議論するとね,感情的になっちゃうでしょ。「 アイツは,こんなこと言った 」とかね。そういう感情的になったんじゃ,全然成り立たないですよ,民主主義は。
堀 茂樹 教授
成り立たないです。
小沢 一郎 代表
僕は,日米同盟交渉に,2度,3度行きましたけれどね。もう,ものっ凄い議論なんですよ。
堀 茂樹 教授
はい,ええ。
小沢 一郎 代表
それで,連中はねえ,ちょっとこっちが黙ってたら,どこまででも来ますからね。
堀 茂樹 教授
そう,そう,そう。
小沢 一郎 代表
だから,こっちも言わなきゃならないですよ,バンバン。喧嘩みたいにしてウヮンワン,ウヮンワン議論して,それで合意を得る,と。
後はもう,合意を得た時は「お互い良く頑張ったねえ」つってね,握手してニコニコして別れる。
堀 茂樹 教授
ええ。つまり,敵は敵なんだけど,敵ながら天っ晴れみたいなことですね。
小沢 一郎 代表
( 頷きながら )それでやっぱり自己主張するということが,非常に大事だというふうに彼等は(考え),自分の意見の無い人間,日本人はノッペラボウだって言われるように,自分の意見の無い人間っていうのは,もの凄い軽蔑されるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,分かりますよねえ。ええ。
小沢 一郎 代表
だから,その点ね,グヮングヮン,グヮングヮンね,正論である以上,言った方が,彼等にね,尊敬される。
堀 茂樹 教授
成程,それは,その通りですね。ええ。
それでね,参加型ということで,もう1つ伺っておきたい。
我々が正当に選挙で民主的に選んだのは,議員さん達ですね。代議士さんとか。
ところが最近ですね,今の政府なんか典型的ですけれども,政府に政府委員ってのが,よくいるんですね。非常にしばしば(いる)。いて悪いわけじゃないんですけど。
それから,民間議員と称してですね,「議員」って言うけれども,民主主義的な正当性を担った,つまり選挙で選ばれた人じゃ,全然なくて,ただ省庁の官僚の方にピックアップされた人達だと思うんですね。この人達が,教育再生会議だとか,成長戦略会議だとか何だとか,作ってですね,そしてそこで,結構,国会どころか,そこで色んな政策を決めていく,と。
そしてマスメディアも,まあ国民もそうなんですけど,その会議の「民間ナントカ」っていうような人の言動に,もの凄く脚光を浴びせるんですね。
キャスティング・ヴォートを握っているのは,何処やらの会社の社長であると。 それだけで,何ら民主的な正当性を担っていない人が,そういう地位に就いて,恰もそれが,市民社会が国家に関与する何か民主的なことであるかのように,提示されている。
こういう口調で言えば,私はもう,非常にそれに憤っているということが明らかかも知れませんが,これ,どう思われますか。
おかしいんじゃないですか。
小沢 一郎 代表
これもね,日本的な仕組みの1つなんですよ。今,民間の人と仰ったけど,その調査会とか審議会とか,いっぱい,できてますね。
あんなの,全部,役人ですよ。
堀 茂樹 教授
(役人が)決めている?
小沢 一郎 代表
事務局長は,事務局は,全部役人ですから。
それで,役人が自分が矢面に立たずに,ああいう人達に原稿やって,話させて,それで政治家も役人も「いやあ,客観的なああいう学識経験者とか偉い人が決めたことだから,正しいんです」という類いの,イクスキューズに使うんですね。そして,隠れ蓑に(使う)。
ですからね,これは,非常に,良くないと思います。
スタッフとして,政治家が民間人を使うというのは,僕は構わないと思いますよ。
ただ,自分の責任を逃れるために,しかも官僚によって全部動かされている,と。
堀 茂樹 教授
ええ,ええ。
小沢 一郎 代表
今,政府委員の話し出ましたが,国会も全部,僕は政府委員廃止論で,一度廃止したんだけれど,また元の通りになっちゃって。
ほとんどがもう,官僚が答弁ですから。
だから,立法府も行政府も司法もですよ,今や。
完全に官僚に握られてる。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
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小沢、堀茂樹対談Vol3(4)へ続きます。
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