通貨戦争(67)奈落に向かう世界戦争
2013-11-10

金貨チョコ。無記名有価証券である現代通貨は需要を越えて過剰生産すると価値は金貨チョコ以下になる。
欧州中央銀利下げ、0・25%に…過去最低水準 11/7 読売新聞
【ロンドン=五十棲忠史】欧州中央銀行(ECB)は7日の理事会で、ユーロ圏17か国に適用する政策金利を0・5%から、0・25%に引き下げた。
ECBの利下げは今年5月以来半年ぶりで、0・25%は過去最低の水準となる。
10月31日に発表されたユーロ圏の消費者物価(10月)は、前年同月比0・7%の上昇にとどまった。
ECBが政策運営の目標としている「2%未満だが2%に近い水準」を大きく下回り、デフレに陥る可能性が高まったことなどから、利下げに踏み切った。
ECBのドラギ総裁は、理事会後の記者会見で、利下げに踏み切った理由について、「消費者物価の上昇率が1%を下回った」ことなどを挙げた。
今後については「必要がある限り(金融緩和を)続ける」と述べた。
マネーという怪物 欧州中央銀利下げ、過去最低水準 11/7 「ひょう吉の疑問」氏から
世界中が金融緩和だらけ。
アメリカも、日本も、そしてヨーロッパも。
アメリカは、QE3の継続による量的金融緩和。
日本はアベノミクスと黒田日銀の量的金融緩和。
ヨーロッパは金利引き下げによる金融緩和。
ジャブジャブのマネーは今後どうなるのか。
世界中がジャブジャブになったとき何が起こるのか。
これは通貨安競争でもある。
まず最初にドルが下がった。これはドル・ショック以来続いている。
つづいて日本の円が下がった。これがアベノミクスである。
今度はユーロが下がる。
通貨安競争は近隣窮乏化策などと言われるが、近隣どころか、世界中が窮乏化する恐れがある。
ヨーロッパ(EU)は、アベノミクスに当初から日本に対して批判的であった。
そのことは十分理解できる。
ユーロだけが高くなるのだから。
自国通貨が高くなれば輸出が伸びない。
そんな中でアメリカの株価だけが最高値を更新している。
日本は今まで富をアメリカに奪われていたが、昨年からのアベノミクス効果により、今年日本企業は息を吹き返しつつある。
先進国ではユーロ圏だけが出遅れている。
アメリカがして、日本がしていることを、ヨーロッパがしていけないわけがない。
だからこのことを批判することはできない。
しかし世界中にお金がジャブジャブにあふれた時一体どうなるかは、正確に言い当てた人はいない。
正確には言えないが、このような国際金融の状態は何かおかしい。
物を作らず、お金を刷るだけで、またはお金をまき散らすだけで、世界経済がよくなるとは思えない。
(※いくら金融緩和で通貨増刷しても勤労所得に跳ね返らない限り消費需要の増加、設備投資の増加、信用増の成長循環にはならない。
投機市場と後進国にまわり、食いつぶす。)
誰もが思う素朴な疑問だと思う。
今先進国だけが潤おうとしている。
東南アジアなどの発展途上国にしわ寄せが来るだろう。
ドル安・円安・ユーロ安とくれば、東南アジアなどの自国通貨は切り上がるだけだからだ。
日本の安倍政権はべったりとアメリカにへばりついているが、ヨーロッパはアメリカに対して対抗姿勢をみせているようだ。
アメリカがドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していたことなどとも関係があるかも知れない。
日本は今、日本版NSCなる言葉でごまかされようとしているが、国家安全保障会議なるものが設置されようとしている。
それと抱き合わせる形で、特定秘密保護法案なるものも国会で審議されようとしている。
要はアメリカの戦争を擁護するためのものだ。
ヨーロッパもその仲間入りをしようとしているのか、それともアメリカとの対決姿勢を明らかにしようとしているのか、どちらなのかはわからないが、
今の世界情勢が、経済的にも軍事的にも非常に不安定な状況にあることは見て取れる。
日本は民主党政権誕生時にはそのようなことから距離を置こうとしていたが、菅直人が首相になった時から方向が変わった。
そしてそれが安倍政権になってアメリカべったりになった。
まさに第二の小泉政権さながらである。
次には中国が金融緩和に動き出すだろう。
中国のシャドーバンキングの実態はよくわからないが、日本では中国経済の景気減速が必要以上に伝えられている。
そもそもシャドーバンキングなる言葉が一体誰が名づけたのかさえよくわからない。
中国のPM2.5の被害状況もことさらに強調されているように思える。
これから冬場にかけて日本にそれが西風に乗って流れてくることをマスコミは一大事だとばかりに伝えているが、本当にそうなのかどうかはわからない。
ヨーロッパが金利を引き下げれば、理屈上はユーロ安になる。それは裏を返せば日本の円がユーロに対して高くなることでもある。つまり円高になることである。
今TPPなどの貿易面でも、日米間の軍事面でも、通貨安競争という金融面でも、何か大がかりな操作が行われている。
日本に設置されようとしている国家安全保障会議は議事録さえ残さないという。
特定秘密保護法案とあわせて、国家ぐるみで秘密を作ろうとしているように思える。
国民には何も知らされないまま、怪物のように国家が動き出そうとしている恐ろしさを感じる。
まずはマネーという怪物が暴走しそうだ。
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消費増税、嘘は平気で責任はとらない安倍政権:耕助
2013-11-10

消費税の悪影響 11/7 「耕助のブログ」から
安倍首相は予定通り消費税を来年4月に8%に引き上げると発表をした。
日本の経済指数は好転しているというエコノミストもいる。しかし東京オリンピック招致の成功というつかの間のニュースで株価が上昇したことは、実体経済とは何の関係もない。
9月はじめに内閣府は4~6月期のGDPが1~3月期に比べて0.9%増加したと発表したが、消費税を5%から8%に増税すればそのプラス分はすぐに消し飛ぶどころか、1997年に3%から5%に増税した時以上の悪影響を日本経済に及ぼすことは間違いない。
なぜこうも断定できるかといえば、これまでの消費税増税の経緯を振り返ればよい。
私からすれば日本経済が20年以上にわたり低迷してきたことと、消費税の導入となぜ関連付けて考えないのか不思議なくらいだ。
日本の経済を支えているのは国内消費である。GDPの約70%は国内消費で、残りの30%のうちの29%は総資本形成、つまり企業などが行う設備投資である。
その29%のうちの70%が国内消費に応えるためだと考えると、日本のGDPの約90%は国内消費関連だといえる。
消費税の増税は、その90%に罰を与えるようなものだ。
国は国民から税を徴収する権利を有する。
それは個人が国から受けるサービスへの対価であり、公共の利益を維持するためでもある。
誰もが払うべき税金は公平なものでなければならない。公平というのは一人一律いくら、ではなく、各人の負担能力に応じて配分されるべきだということだ。
しかし近年、どんな税制が最も公平かという議論がなされたという話は聞いたことがない。
そのかわりに、気が付けば政府に対して政治献金などで影響力を持つ財界のために法人税が減税され、一般国民から広く浅く消費税をとり、さらにそれを増税しようというのが平成になってからのパターンである。
消費税増税でさらに景気が後退すれば、企業が倒産し失業者が増え、または正社員の替わりにアルバイトを雇うなどして企業は人件費削減に励むであろう。
8月に総務省が発表した労働力調査によれば、すでに日本のパートなど非正規労働者数は1881万人と過去最多に、正社員雇用は前年同期比から53万人減少して3317万人になったという。
消費税増税を自身が決断すれば、その結果にも責任を持たなければならないと安倍首相は語ったというが、どのようにして責任をとるつもりだろう。
首相の答弁はIOC総会でのプレゼンテーションを思い出す。「福島は私が保証する、状況はアンダーコントロールだ」と述べた。
ではなぜ汚染水が漏れるのか。
なぜ福島の方々がふるさとへ帰れないのか。
景気を上向かせるためにオリンピックを招致したい、そのためにどんなうそをつくこともいとわない、それが本音ではないだろうか。
20年デフレは消費税導入から始まった。
8%になればどんな景気刺激策をしてもさらに経済は悪化するだろう。
しかし原発事故による放射能汚染も、人々が土地や仕事を失い、今も家に帰れないことなどなかったように振る舞うこの国の首相は、消費税増税で失業者が増えても、それでも日本はうまく管理されている(アンダーコントロール)と言い続けるかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 以下はビル・トッテン(賀茂川耕助)氏関係のページ。
信用創造と言えば聞こえは良いが
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
マスコミが誘う戦争へのシナリオ
サイバー戦は現実の問題だ
16兆1千億ドルを金融資本に融資したFRB
アメリカ全土に広がる抗議行動
1%の金持ちと99%の我々:ビル・トッテン
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通貨戦争(45)カダフィの通貨構想:トッテン
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内部告発者を抹殺し、米軍に共同実質改憲へ:山田
2013-11-10

沖縄密約の闇を暴いた英雄。西山太吉記者
公共の利益を盾に表現の自由を制約 秘密保護法の狙いは内部告発者とメディア 11/7 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
特定秘密保護法案の審議が始まる。自民党は今国会で成立を目指す。
28年前、中曽根政権で廃案となった秘密保全法制(当時はスパイ防止法と呼ばれた)が、安倍首相の下で制度化されようとしている。
役所が勝手に機密を決め、未来永劫封印することも可能で、国民の「知る権利」を無視した法案だ。
「スパイ」から秘密を守ろうとした中曽根政権とは違い、今回の狙いは内部告発者とメディアを封ずることにある。
安倍首相は「日本を守るため」外交・安保の司令塔・国家安全保障会議(日本版NSC)を設けて、米国や英国と軍事情報を共有するという。
それには日本から機密が漏れない仕組みが必要というのだ。
「あのこと」はどうなっているか
テロ対策や中国・ロシアの情報を米国からもらうには機密法制の整備が欠かせない。
もっともらしいが、「あのこと」はどうなっているのだろう。
米国の諜報機関がドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領など友好国の首脳まで盗聴していたことだ。
米国は「今はやってない」と逃げながらも、過去の盗聴は認めた。
友好国の首相と笑顔で肩を抱き合いながら、裏でそんなことがありなのか、と驚いた人は少なくないだろう。
政府は「日本は問題なし」という。本当だろうか。
メルケル首相は私用電話まで盗聴されていた。
安倍首相の私用電話は聞かれてはいないのか。普通に考えれば「盗聴されている」はずである。だが日本政府から抗議の声は上がらない。理由は3通り考えられる。
①盗聴されていない。
②盗聴されているかどうか分からない。
③盗聴されてもアメリカに抗議できない。
①の盗聴が行われていない、としたら米国にとって日本の政治や政治家は「盗聴に値しない」と判断されている、ということだろう。
首都が他国の軍隊に囲まれている世界に稀な国柄だ。盗聴しようと思えばすぐできる。
していないなら日本の首相は忠実な子分と見なされている、ということではないか。
②だとすると、日本には秘密は守る仕組みができていない。
ドイツやフランスは調査して発見できた。
出来ないなら日本は、秘密漏えいする人を厳罰に処す以前の段階である。
そんな国に米国が機密情報を提供するだろうか。
③なら日本は米国の植民地同然である。
米国の諜報機関は、安倍首相の私用電話を盗聴しているだろう。親しい人との無防備な会話にこそ、人格やものの考え方がにじみ出るものだ。
オバマ政権が安倍首相に冷ややかなのも、盗聴から得た情報が影響しているのではないか。
憲法改正や核武装について安倍さんの本音を聞き「危ない政治家」と判断したのかもしれない。
もしかして米国は、日本人が知らない安倍さんの一面を知っているのかもしれない。
核の傘に入っているように、諜報活動も米国の傘に組み込まれている、と考えれば分かりやすい。
例え首相が盗聴されても、抗議さえ起こらない仕組みになっている、ということである。
そんな日本の安倍首相が、米国と情報連携を深めるために「機密の厳罰化」を急ぐ。
アメリカからの情報が漏れないように体制を固めろ、と言われたからだろう。
権力に脅威なのは告発者やメディア
米国は日本の現状を熟知していたはずだ。
なぜ今になってそんなことを言い出すのか。ショックな出来事が最近起きたからである。
CIAで働いていたスノーデンの一件である。大量に機密を貯めこんでいる「親会社(アメリカ)」から情報流出が起きた。つながっている「子会社(日本)」でも起こらないとは限らない。
重要機密が外部に漏れないよう体制を強化せよ、と本社から指示が出たのである。
スノーデンが流出させたのは国家という権力が、スパイ活動とは無縁の人たちまでコンピューターを覗いたり、電話を盗聴していたという事実である。
米政府が自国民に向けられた諜報活動ではないと釈明すると、次は「友好国の首脳」への盗聴が暴露された。
米国の国家権力のやりたい放題が明るみに出たのである。
権力に脅威なのは他国の権力やテロリストだけではない。
内部にひそむ告発者やそれを伝えるメディアが脅威である。
電子情報を流出させたウィキリークスのアサンジや確信犯スノーデンのような内なる敵との戦い。
特定秘密保護法は、そうした文脈から持ち上がった。狙いは内部告発者でありメディアなのだ。
同法案の21条の2にこうある。
「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とする」
報道機関の知る権利に配慮しているような表現だが、ここがポイントだ。
例えばスノーデンのような内部告発者が新聞社に、原発反対運動の市民団体代表の電話を盗聴しているような事実を持ち込んだとしよう。
その情報が「テロにつながる恐れ」として特定機密になっていたとしたら、漏らす行為は法令違反になる。
違法行為を通じて得た情報は「正当な業務」と認めらない。
つまり機密の内部告発をメディアが報ずることを縛ることができる。
「公益を図る目的」であっても取材過程に法律違反が絡めば、報道できないようにかんぬきが掛かっているのだ。
スノーデンが機密情報の提供を英国紙ガーディアンの専門記者に委ねたのは、アメリカのメディアでは危ないと判断したからだ。
9.11以降、米国メディアは政府による監視が厳しくなり、機密の暴露に腰が引けている。
暴露は「違法行為」であることから訴追を受ける覚悟が必要になる。
米国の法が及ばない英国紙を選んだのだ。
例えば朝日新聞に機密情報が持ち込まれたらどうなるか。そのまま記事にすれば「違法行為」に加担したことになる。
新聞社は、特別チームを編成し「情報の裏取り」に走るだろう。本当に盗聴活動がなされたのか、何時、どの組織が、何回、どんな内容を盗聴したか、など取材し、確認できれば記事になる。
だが当局は「特定秘密」を盾に事実を語ることを拒否するだろう。
誰かが話せば「漏えい」で違法行為とされる。
そうやって記事を葬り去ることができる。
沖縄返還密約・西山事件が物語ること
1971年の沖縄返還の裏で結ばれた日米密約を毎日新聞の西山太吉記者がすっぱ抜いた。
国会で野党が取り上げ問題になったが、西山記者がこの情報を外務省審議官付きの女性事務官から入手し、二人は「国家公務員法違反」で逮捕・起訴され有罪になった。
沖縄返還で米国が負担すべき基地地権者への地代を日本政府が肩代わりする密約だったが、政府は「密約はない」と否定した。
検察は「男女関係を利用した秘密漏えい事件」として取材のモラルに話をすり替え国家ぐるみで密約を隠蔽した。
後に米国の情報公開で密約の存在は明らかにされる。だが記者生命をかけて機密を暴いた西山の「国家公務員法違反」は消えていない。
西山事件が物語るのは、ことさら秘密保護法など作らなくても「国家公務員法」で漏えいを処罰できるということだ。
「公務員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」
という同法の規定で十分ではないのか。なぜ厳罰化を急ぐのか。
興味深い「テロ」の定義
今回の法案の構成は、「特定秘密」という国家の最上級の秘密を「行政の長」が定める。
特定秘密を扱うのは「適性評価」をパスした職員(民間人を含む)に限る。漏らしたら厳罰。
特定秘密は5年ごとに見直されるが更新を繰り返せば永遠に封印することができる。
特定秘密は4つの分野に分かれる。
①防衛、②外交・安全保障、③特定有害活動(スパイ)防止、④テロ防止。以上に関する情報が対象になる。
公務員の活動全般に守秘義務を課した国家公務員法の上に、さらに厳罰の秘密を上乗せした作りになっている。
法案は特定機密を扱う公務員や民間人への厳重な調査・監視を求めている(第5章、適性評価)。
スノーデンのような人物が出ないように、特定有害活動(スパイ活動)やテロリズムとの関係について本人だけでなく、配偶者の親族まで調べることを行政の長や県警本部長に義務づけている。
興味深いのが「テロ」の定義だ。
「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」とある。
フェンスを壊して原発施設に侵入しようとすればテロと見なされるかもしれない。
テロを拡大解釈すると市民運動もその対象になる。
この規定なら、グリーンピースなどテロ組織と認定されてもおかしくない。
表現の自由を公共の利益で制約する
自民党は1985年、中曽根首相に時に「スパイ防止法」と呼ばれた秘密法制を目指し市民運動などの反撃で廃案に追い込まれた。
当時はスパイ防止が狙いだったが、時代が代わり権力内部からの告発や漏えいに神経を使うようになった。
30年余前は米ソの冷戦があり、機密を脅かすのは他国のスパイだった。
冷戦が終わり失業の危機に陥った諜報機関は、友好国や市民など身内を新たな標的に仕立て上げ、職場を確保した。
「国家機密」を隠れ蓑に、平穏に暮らす市民や友好国の首脳にまで監視や盗聴を続ける。
そんな現実にやりきれなくなった内部関係者が告発に踏み切る。
重要書類をかばんに詰めてひそかに受け渡す、といった古典的な手口は映画の世界だけ。電子化された大量情報が一気に流出する時代である。
内部に潜む敵と戦おうというのが特定秘密保護法である。
米国を中心としたこうした傾向に日本的な味付けをしたのが安倍政権だ。
「ニッポンを取り戻す」を合言葉に、政権のゴールに憲法改正を置いた。
憲法9条を空洞化し、表現の自由を公共の利益で制約する改憲である。
とはいえ根付いている平和憲法を国会の三分の二を取って覆すのは難しい。
一歩後退し「改憲せず改憲状態を」という戦略を進めている。「平和憲法に手をつけず、戦争の出来る国に」である。
憲法解釈を変え集団的自衛権を認める。
アメリカの戦争を遂行した国家安全保障会議(NSC)をまねた日本版NSCを設立する。
防衛基本計画を見直して先制攻撃が出来る装備体制を作る。
アメリカの戦争に協力し、地球の裏側まで進撃できる体制作り。
これが出来あがれば平和憲法は空洞化する。状況を追認する実質的な改憲は抵抗なく進む、という目算だ。
安倍流ともいえる「反動法制」が、高支持率を背に一気に進もうとしている。
報道機関や野党の反撃に30年前のような力がこもっていないことが気がかりである。
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