オリンピックへ、排除と犠牲、国威発揚
2013-09-10

聖火ランナーはナチス支配下のベルリン・オリンピックに始まる。
国威発揚に活用されてきたオリンピックは、同時に民族主義の高揚、挙国一致の国家主義にも活用されてきた。
ナチス・ドイツの下に開催されたベルリン・オリンピック「民族の祭典、美の祭典」がよい例である。
昔の東京オリンピックの準備では、ゴミ箱と共に路上生活者も一掃された。
今度のオリンピックに向けて、また路上生活者が壊滅させられるのは明らかだ。
挙国一致、国威発揚が狂気の盛り上がりを見せることも疑いない。
オリンピック開催に都合の悪いことは、すべて排除される可能性。
これからはとんでもない暴論が公然と主張される…,,だけではなく、実行される危険性が高くなる。
原発に反対したり、放射能汚染の事実を啓発したり、子どもを被曝から守ろうとする運動などが規制され、報道されず、そんな事実は無いかの如くに排除、葬り去られる危険がある。
要は、政府、マスコミと経済界は安全、平和、繁栄に見せかけたいので、都合の悪い事実は徹底的に排除抹殺してくるだろう。
「政府は開催までの7年間に原発事故を本腰入れて収束させよ。」という意見があるようだが、そんな甘いものではない。
金銭亡者、権力亡者はそんな甘い者たちではない。
そこに挙国一致と国威発揚の「大義」が発生するのであるから、まったく遠慮なしに異論封殺排除、勤労大衆の犠牲、ホームレスの抹殺を進める「根拠」となる。
オリンピック開催国は、概ね開催前に暴動が起きるのはそのためなのだが、日本の場合は暴動なしで完全制圧される危険さえあるだろう。
「1968年メキシコ・オリンピックのこと」の末尾にオリンピック10日前の大虐殺。
先月はブラジルで貧困を放置してのオリンピックに抗議し、万単位の大デモがあった。
「大阪弁で世情を語る」氏が挙国一致、国威発揚のいやらしさと共に、路上生活者の危機となるだろうことを指摘している。
少し甘いと感じるが、政府に勝手な期待などしていないところが優れている。
ーーーーーーーーーーーー
オリンピックが来たら… 9/9 「大阪弁で世情を語る」から
「なんで東京でオリンピックやねん!」…と憤慨する、なんでやねん五郎と
「やった! 東京にオリンピックがやってくる!」…と喜んでる、五郎の幼なじみの次郎との会話…
次郎…オリンピックが来たら、子どもたちに夢を与えられるで~
五郎…う~ん、俺、ゼネコンとか、広告会社とか、メディアとか、ホテルとか、
そういう人らが子どもの何倍も大きな夢を見ると思うけどな…
次郎…そんでも、日本代表選手たちが一生懸命競技してる姿を子どもたちが間近で見たら
励みになるんやかないか…?
五郎…俺もな、自国開催で観客の声援が選手の後押しをして、いつも以上の力が出る…とか
そういうのやったら、見ててもええ感じすんねんけどな、
でも、きっと自国開催ってことで、今まで以上に「(金)メダル至上主義」がはびこって
子どもたちを励ます前に、選手が擦り切れてしまわへんか、俺、そんな心配するわ…
次郎…そんなこと言うたかて、順位は一つでも高い方がええやんか
五郎…そんでもな、順位というもんは、あくまでも結果やと思うねん
それやのになんや、さっそく文部科学省は2020東京オリンピックでは
「金メダル獲得数」で世界3~5位という「目標」を掲げてるそうやで
こんなん、モロに「金メダル至上主義」やんか…
次郎…なんか、オマエ、ケチばっかりつけてるなぁ…
そんでも、オリンピックが来たら、被災地が元気になるで~
五郎…いやいや、オリンピックのために被災地の回復が後回しになって、
きっと、被災地の人たちはオリンピックに浮かれてる首都圏(…というか日本全体)の
雰囲気を感じながら疎外感(取り残され感)を感じると思うで…
次郎…そんでも、オリンピックが来たら、東京のインフラが整備されてますます快適になるで~
五郎…まぁ、東京はますます便利、快適になるやろうけど、
そうなったらますます地方との格差が拡がるやろな…
次郎…そんでも、快適になるのはええことやんか
五郎…というたかて、それはどこまでいっても東京の快適さやから
俺らにはほとんど関係ない話やで…
次郎…そんでも、とにかく街が綺麗になんのはええことやん
五郎…「街が綺麗に」…かぁ
俺、その言葉を聞いて、なんか心配になってきたで
次郎…おまえ、変なやっちゃな、「街が綺麗に」って言葉で、いったい何が心配になんねん?
五郎…そやかて、「路上生活者」がいてたら街が綺麗に見えへん…ということで
きっと路上生活者が排除されるんと違うか…?
次郎…そんなことまでするかなぁ…?
五郎…するのは確実やで… そやかて、今でも公園とかから必死で排除してるもんな…
次郎…ホンマか、それ…?
五郎…ホンマやって…
公園のベンチは人が寝そべれないようにギロチンみたいなしきいをしてることがあるし
公共空間で地面が平坦なトコは、なんや、無理矢理デコボコのオブジェみたいなもんを
こさえてるし、こんなんみんな、目につくトコから路上生活者を追い出す作戦やで
次郎…そんでもまぁ、少なくとも東京都民にとってはオリンピックは「ええ話」とちゃうか…?
五郎…おいおい、乱暴なこと言うたらアカンで
排除される路上生活者も東京都民やで!
次郎…オマエ、さっき、被災地の回復が遅れるって言うとったけど
少なくとも東京は、「金銭面」では国には頼らんでもできるで~と、言うとったで
五郎…うん、うん、東京はなんかそんなこと言うてるな
次郎…オリンピックの費用として、もう既に4000億円も積み立ててるって言うからな
五郎…そんでもな、その4000億円は空から降ってきたんと違うやん
ほな、そんな大金、どっから工面してきたと思う?
次郎…そら、まぁ、行政改革とかやって節約したんと違うか?
五郎…「行政改革」かぁ… その節約の一例を挙げると、
東京都は都内の区市町村の国保財政への独自支援額を
320億円から43億円(→なんと1/8)に減額したそうやで… ※1
次郎…そらまた、すごい「節約」やな…
五郎…俺な、こういう予算の「節約」の結果が4000億円ちゃうんかな…と思てるで
それにな、この4000億円の他にも「招致費用」として既に約100億円予算計上してんねんで
次郎…約100億円ってすごい額やな…
五郎…これだけで驚いたらアカンで、前回立候補した2016年オリンピックの招致費用も足したら
優に200億円を超えんねんで ※2
次郎…なんか俺、オマエの話きいてて、頭クラクラしてきたな…
五郎…俺なんか、東京に2度目のオリンピックを招致しようと言い出したときから
頭がクラクラしっぱなしやで…
・・・ ここで、ともに頭がクラクラしてきた二人は、しばし会話を中断 ・・・
(気を取り直して再開…)
五郎…ところで、2020東京オリンピックって、そもそも何のためにするんやろな…
次郎…そら、なんか「開催の理念」っちゅうのがあるんやろ
五郎…オマエ、オリンピックが来るで~って喜んどったのに、
2020東京オリンピックの「開催理念」も知らんのか…?
次郎…俺、昔から細かいことには関心ないねん…
五郎…「開催理念」が細かいこと…って、そんなええ加減な…
次郎…ほな、今からでも調べるやん、ちょっと待っててや…
あっ、あった、あった、こんなんや↓ ※3

五郎…俺も今、初めて知ったんやけど、なんや、ようわからん理念やな
次郎…ちなみに、イスタンブールは「欧州とアジアとイスラムの共存」
マドリードは「経済危機からの回復」やったんやって…
五郎…マドリードが経済危機から回復することが、なんで世界の人たちと共有する理念になんのか
俺、ようわからんけど、東京の理念はもっとようわからんな
次郎…そうかなぁ…、これ、「くれるくれるの法則」で、めっちゃわかりやすいと思うんやけどなぁ
そやかて、
「オリンピックは夢をくれる」→「夢は力をくれる」→「力は未来をくれる(つくる)」…と
めっちゃわかりやすいやん、この「くれるくれるの法則」…
五郎…そんでもなんかこれ、「力がすべて」で、力がなかったら未来もない…と
そんな身も蓋もないこと言うてるんと違うか?
それに、後に続く言葉を読んでたら、結局
「日本が一つになって強くなること」…が目的みたいなことになってるけど
オリンピックやねんから、「世界は一つ」ってアピールせなアカンのとちゃうか?
俺、そやから、こういうのは世界の人に呼びかける理念にはなり得ないと思てたら
最後の最後に、「日本の強さ」を世界に知らしめることが、世界の勇気になる…と
かなり強引なこじつけになってるやんか…
次郎…そう言えば、「力がすべて」…っていう言葉で思い出したけど
昔、タイガーマスクというTVアニメの歌に
強ければそれでいいんだ
力さえあればいいんだ
ひねくれて星をにらんだ、ぼくなのさ~
…っていう歌詞があったんやけど、これって、かなり「ひねくれた」考えってことやんな
五郎…うん、俺もそない思うで
次郎…ほな、なにか…?、この2020東京オリンピックの理念っていうのは
「日本は一つになって(みんなで)ひねくれよう!」って、そんなスローガンになってんのか!
五郎…なんか俺、また、頭がクラクラしてきたな…
次郎…俺もや… もうそろそろお終いにしよ
五郎…うん、これ以上は無理やわ、これでお終いにしよ。。。
※1
『しんぶん赤旗』
「東京23区 高すぎる国保料に悲鳴 「払えない」「限界」 役所に殺到」参照
※2
前回、2016年夏季オリンピック招致費用は、約150億円で
今回の招致費用が約100億円です
で、この「招致費用」がどんなことに使われたのか…というたら↓
IOC(国際オリンピック委員会)評価委員会のクレイグ・リーディー委員長は三月七日、二〇二〇年オリンピック招致を目指す東京の現地調査を終え、~「オリンピックは数十億ドル(数千億円)規模のビジネス……。われわれが来日したことでIOCも東京もメリットを享受し、オリンピック運動に役立った」と悪びれず応えた。
ちなみにNPO法人・東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、三月四~七日のIOC評価委来日の「おもてなし」で約六億円かかったと公表した。
(『週刊金曜日』「東京都の積み立て基金は約4000億円――五輪開催よりも雇用や福祉を」参照)
これって、単純計算で1日1億円以上の「おもてなし」やね…
(ちなみに、IOC評価委員会のメンバーは11人で、そのうちの何人が来日したかは不明です)
※3
『TOKYO 2020』
「メッセージ・コンセプト」参照
※4最後に…
路上生活者排除の予感をつぶやくtweetをいくつか紹介しておきます
単純な話、過去日本に限らずオリンピック開催された都市では必ず野宿者排除が起こる。2020年より少し前に私がホームレスになってたらと思うとぞっとするわけですよ。5年以上先に自分がどうなってるかなんてわからないでしょ。
ロンドン五輪では、福祉や障害者支援の予算をガンガン削る一方で、パラリンピック発祥の地ロンドンみたいなナショナリズムに利用したのよね。
東京オリンピックが決まって、まず脳裏に浮かんだのは竪川河川敷のテント村の人々のこと。都内各地で野宿の人々への排除圧力が強まるのは確実でしょう。原発事故も含め、問題を不可視化させる力にどう対抗できるかが、問われています。
東京オリンピック開催が決定。 路上生活者は、インフラ整備、治安管理、保安体制、景観整備などの名目で排除される可能性が。 半世紀前には精神科病院に収容された。 私たちは、ホームレス支援の旗を掲げた以上、支援をしますよと手を差し伸べた以上、絶対に国都合の排除を容認するわけにはいかない
1964年東京オリンピックのときに、路上生活者排除との関わりで、
全国に精神病院が乱立したとの情報がありますが、
この出来事について何らかの情報がインターネット上にございましたら
コメント欄より、是非、ご一報下さいませ
ーーーーーーーーーー
※ 「もうすぐ北風」へでもかまいません。転送します。
- 関連記事
-
- ゆっくりと進んだ国民監視:情報保全隊訴訟 (2013/10/08)
- 米国国務、国防長官が千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花 (2013/10/04)
- 中韓どころか米国からも拒絶される安倍政権 (2013/09/26)
- 秘密保全法の危険性!岩上IWJ (2013/09/17)
- 特定秘密保護法案とは? (2013/09/17)
- オリンピックへ、排除と犠牲、国威発揚 (2013/09/10)
- 広瀬隆:侵略の歴史、竹島尖閣はどこの領土か? (2013/08/25)
- 狂乱の安倍:まるで「宣戦布告」の追悼式式辞 (2013/08/17)
- 安倍某、侵略の賛美礼賛が日本の伝統か! (2013/08/15)
- 麻生が学ぶ、ナチスの暴力と世論操作 (2013/08/04)
- 麻生のナチス礼賛発言に世界の怒り (2013/08/03)
リー氏遺稿:米国での論文審査、学会発表
2013-09-10
故リー湘南クリニック院長の遺稿「異端医師の独り言」から
ロチェスター大学医学部時代
★ 論文の審査 2011年11月07日
アメリカ時代(1985~90年)、ある日、一流誌から僕宛に、誰かの「論文原稿」を送りつけてきた。
開けてみると:原稿を査読し、1 このまま掲載、 2 批判を加え、批判に正当に回答した場合掲載、 あるいは、批判を加えた上 3 不掲載、にチェックし送り返せという内容。
また「査読できない場合は、査読にふさわしい科学者に、このまま転送してください」と記されていた。
「なんじゃこれ」と研究室のボス Dr.Slussに聞いたら、彼は大笑いしながら、「これは大変に名誉なことだよ」と教えてくれた。
その後、送りつけられて来た論文原稿を 3編ほど査読した。無償である。
翻ってこの島国、バカが論文を密室で審査する不透明さ、科学性の欠如、巨大製薬会社よりの姿勢。だから、いつまでたってもこの島国の医学雑誌は、四流なの。
ーーーーーーーーーーーーー
★アメリカで初めての学会発表 2009年12月16日
ロチェスターはオンタリオ湖に面した、のんびりした田舎町。コダック発祥の地で、創始者の寄付で建てられたイーストマン博物館が観光スポットである。
在米 6ヶ月目、初めての学会、会場はイーストマン博物館という?
学会が近づくにつれ研修医達の緊張が高まる、全米から大物教授が集まるからだ。
私も発表を命じられ、原稿をこさえ、同僚・Garyに録音してもらい、それを何十回も聞き練習した。
Lと Rをうまく発音できないので Lか Rを含む単語は、極力はずし、他の単語に置き換えた。
本番前の予演会(大学のスタッフや開業医、40人くらいが聴衆)、研修医と私、計 9人が 10分の持ち時間で演説し、質問をうける。
私の演説が終わると、主任教授・Cockettが手を挙げ「なぜ、Ladies and Gentlemenで始まらない。」「?」
Cockettが後ろを振り返り「今の演説を聞き取れた者は手を挙げろ」。
ぼそっとGaryと Bobが手を挙げてくれた。
Cockett「研修医に原稿を録音してもらい、練習しろ」…。
イーストマン博物館での学会本番、講演が終わると、驚いたことにカーテンが開きオーケストラが演奏をはじめ、カクテルパティーが始まった。念のためスーツを持参してよかった。
ゲストは全米からの教授 20人くらい。ホストはロチェスター大学のスタッフ 6人と、発表者 9人。Kaufmann に挨拶に行った、UCLAの教授で「カウフマン 型、 型法」という手術を次々に考案し、世界で最も著名な泌尿器科医である。
ダンディーで陽気な方で、彼も私を見つけ「How do, KAN-EI」「Hi Dr Kaufmann」と挨拶を交わし、日本でのこととか思い出話をした。
Kaufmannは私の英語を理解し、下手なジョークも受け、2人で大笑いをした。
翌日、Garyが「何で Kaufmannを知っているの、みんな腰を抜かしていたぜ。」演説の時、声が震えていなかったけど「インデラル」のんだ?
Kaufmannが日本泌尿器科学会の招きで、奥さんと、その後愛人と来日した時、小柴教授の命令でカバン持ちしをたし、カリフォルニアに遊びに行った時、会ったから。
インデラルは血圧の薬だが「研修医はアガリ止めに内服していることを知った」、以来、大舞台では内服するようにした。
ーーーーーーーーーーーー
☆★★ 科学者として最高の瞬間 2010年08月10日
1990年秋帰国後、1991年スイスの田舎町で「血管新生」に関する小さなシンポジウムがあった。ちなみに、シンポジウム(Synposium「シンポージィウム」と発音)とは「飲み食いしながら討論する」ギリシャ語が語源らしい、夕方からはワインが振舞われた。
僕が発表するセッションのチェアマン(司会者)は、私がもっとも尊敬する科学者の一人 J. Folkmanで、冒頭「質疑応答の時間は決めないで、討論しよう」と提案した。
普通、各演者が持ち時間内で発表し、質問を受けるが、時間は「5分」とか決められていて、十分な討論はできない。
演者は 10数人と記憶している。当時は、血管新生(angiogenesis)と「その阻害」に関し、世界中で研究が始まった黎明期である。
「悪性度が高い癌ほど血管新生能力が高い」と信じられていたが、私の研究結果は「膀胱癌の悪性度と血管新生能力の多寡は相関しない」というものだった。
質疑応答で、私はそれこそ袋叩きにあい、全員が私の研究結果に異を唱えた。
助け舟を出してくれたのは、Folkmanだった。
「この青年は、私達より先にいるのだよ」とコメントした。
科学に対し、真摯で謙虚な姿勢に強く胸をうたれた。(2006年12月の記事、校正)
☆★Jainからの申し出
シンポジウムの夕食会で、Folkmanの右腕 Jainから「ハーバードに来ないか」と誘われた。
Jainは新進気鋭の工学博士で「なぜ固形がんに抗癌剤が効かないか」を工学論的に説明し、その打開策として血管新生の阻害に注目していた。
非常に名誉ある申し出だったが、「天才 Folkmanに比べ、自分のちっぽけさを自覚していた」のでお断りする方向でお話をすすめた。
彼の執拗な勧誘攻撃に、自分の年齢を挙げたが、Jainが「それは、理由にならないよ、僕は君より 6歳上」と退路を断たれ、一瞬言葉を失ったが、丁寧にお断りしました。
2005年、Science誌(超一流の科学雑誌)に Jainが記した総説「抗血管新生療法における新しい概念*」が掲載された。「抗血管新生薬は、不規則な腫瘍内血管を正常化するので、抗癌剤が効きやすくなる」という内容。合点がいかなかった。
残念ながら「Jainの仮説」は誤っている。
*Rakesh K. Jain : Review Normalization of Tumor vasculature: An Emerging Concept in Antiangiogenic Therapy, Science, 307:58, 2005
ーーーーーーーーーーーーー
★★ フロリダ地方会での演出 2010年05月09日
在米中(1985~1990年)学会出張は大好きだった、旅行できるからだ。
在米一年目は Garyと Bobの NY出張に同行したが、滞在費は支給されなかったので、二人のベッドの間の床に寝た。
2年目は実費支給、3年目(助教授になって)からは実費プラスαが支給され、家計の足しになった。
3年目、フロリダの地方会に参加した。パームスプリング・ホテルが学会場で、空港でタクシーに行き先を告げると、運ちゃんが後ろを何度も振り返る。
到着して分かった、ゴルフ場を有する、お城のような超豪華ホテル。オイスター(牡蠣)を食べに行くため、フロントでタクシーを頼んだら、何と黒塗りリムジーン(リモ)が横付けされ、びっくりしたが、運転席にひっそりとメーターがついていた。
リモがレストランに到着すると、ウエイターがうやうやしくドアーを開け、VIPを演出してくれた。
ホテルにもどると専属のエレベーター開閉係、上品な中年女性が笑顔で「リー様お帰りなさい」とエレベーターのドアーを開け、行き先階をおしてくれた。
全く威圧感がない見事な演出、心から楽しんだ。
学会当日、Cockett教授から会場に「早く来るように」言われた。
その頃は、まだ演説原稿を読まざるをえず、スライドを指せなかった。
一計を案じた Cockettが、ウエイターにポインターのコードが Cockettのテーブルに届く位置に演壇(ポディウム)を移動させ、私が演説を担当、Cockettがポインターを担当した。
私を一流のアメリカ人科学者にみせる演出を計ったのである。
ーーーーーーーーーーーーー
故リー湘南クリニック院長の遺稿「異端医師の独り言」の関連ページ。
異端医師の独り言
がん検診の無理、効果に根拠はない
後世学(Epigenetics)の誕生
長寿国、自殺者数の増加、がん死者数の激増の真実
胃がんと抗がん剤治療
癌の縮小(奏効率)で患者は延命しない
ニセ科学の犠牲者、売上を誇る医師
食塩の政治学
The (Political) Science of Salt(全訳)
疑わしいサプリメントの効能と副作用
薬の犠牲、薬害を撒き散らす医師
乱用されている医療放射線機器
地中海型の食事と健康
地球温暖化の怪
「医療」の餌食にならない、無作為化対照試験(RCT)
なぜ日本に証明医療が定着しないのか
特定保健食品、黙認される誇大広告
風邪薬の犠牲者
有害な検診、有害な前立腺摘出
東電に群がる原発芸人文化人たち
詐欺:効かない薬の大量処方と有害無益の手術など
簡素な睡眠者、ハエや虫もぐうぐう眠るらしい
癌:希望と詐欺、そして現実と認識のギャップ
こんなにあるニセ科学
動物の深い悲しみの謎
リー湘南クリニック院長のご冥福を
検便の日
ヨッチャンの想い出
恐怖のカーレース、酒気帯び、起訴
僕の母親は、韓国の思い出
-40度、パーティ、Cockett城
睡眠とアルツハイマー、胃がんの原因、高血圧症?
医療の繁栄、コレステ、高血圧と認知症
ロチェスター大学医学部時代
★ 論文の審査 2011年11月07日
アメリカ時代(1985~90年)、ある日、一流誌から僕宛に、誰かの「論文原稿」を送りつけてきた。
開けてみると:原稿を査読し、1 このまま掲載、 2 批判を加え、批判に正当に回答した場合掲載、 あるいは、批判を加えた上 3 不掲載、にチェックし送り返せという内容。
また「査読できない場合は、査読にふさわしい科学者に、このまま転送してください」と記されていた。
「なんじゃこれ」と研究室のボス Dr.Slussに聞いたら、彼は大笑いしながら、「これは大変に名誉なことだよ」と教えてくれた。
その後、送りつけられて来た論文原稿を 3編ほど査読した。無償である。
翻ってこの島国、バカが論文を密室で審査する不透明さ、科学性の欠如、巨大製薬会社よりの姿勢。だから、いつまでたってもこの島国の医学雑誌は、四流なの。
ーーーーーーーーーーーーー
★アメリカで初めての学会発表 2009年12月16日
ロチェスターはオンタリオ湖に面した、のんびりした田舎町。コダック発祥の地で、創始者の寄付で建てられたイーストマン博物館が観光スポットである。
在米 6ヶ月目、初めての学会、会場はイーストマン博物館という?
学会が近づくにつれ研修医達の緊張が高まる、全米から大物教授が集まるからだ。
私も発表を命じられ、原稿をこさえ、同僚・Garyに録音してもらい、それを何十回も聞き練習した。
Lと Rをうまく発音できないので Lか Rを含む単語は、極力はずし、他の単語に置き換えた。
本番前の予演会(大学のスタッフや開業医、40人くらいが聴衆)、研修医と私、計 9人が 10分の持ち時間で演説し、質問をうける。
私の演説が終わると、主任教授・Cockettが手を挙げ「なぜ、Ladies and Gentlemenで始まらない。」「?」
Cockettが後ろを振り返り「今の演説を聞き取れた者は手を挙げろ」。
ぼそっとGaryと Bobが手を挙げてくれた。
Cockett「研修医に原稿を録音してもらい、練習しろ」…。
イーストマン博物館での学会本番、講演が終わると、驚いたことにカーテンが開きオーケストラが演奏をはじめ、カクテルパティーが始まった。念のためスーツを持参してよかった。
ゲストは全米からの教授 20人くらい。ホストはロチェスター大学のスタッフ 6人と、発表者 9人。Kaufmann に挨拶に行った、UCLAの教授で「カウフマン 型、 型法」という手術を次々に考案し、世界で最も著名な泌尿器科医である。
ダンディーで陽気な方で、彼も私を見つけ「How do, KAN-EI」「Hi Dr Kaufmann」と挨拶を交わし、日本でのこととか思い出話をした。
Kaufmannは私の英語を理解し、下手なジョークも受け、2人で大笑いをした。
翌日、Garyが「何で Kaufmannを知っているの、みんな腰を抜かしていたぜ。」演説の時、声が震えていなかったけど「インデラル」のんだ?
Kaufmannが日本泌尿器科学会の招きで、奥さんと、その後愛人と来日した時、小柴教授の命令でカバン持ちしをたし、カリフォルニアに遊びに行った時、会ったから。
インデラルは血圧の薬だが「研修医はアガリ止めに内服していることを知った」、以来、大舞台では内服するようにした。
ーーーーーーーーーーーー
☆★★ 科学者として最高の瞬間 2010年08月10日
1990年秋帰国後、1991年スイスの田舎町で「血管新生」に関する小さなシンポジウムがあった。ちなみに、シンポジウム(Synposium「シンポージィウム」と発音)とは「飲み食いしながら討論する」ギリシャ語が語源らしい、夕方からはワインが振舞われた。
僕が発表するセッションのチェアマン(司会者)は、私がもっとも尊敬する科学者の一人 J. Folkmanで、冒頭「質疑応答の時間は決めないで、討論しよう」と提案した。
普通、各演者が持ち時間内で発表し、質問を受けるが、時間は「5分」とか決められていて、十分な討論はできない。
演者は 10数人と記憶している。当時は、血管新生(angiogenesis)と「その阻害」に関し、世界中で研究が始まった黎明期である。
「悪性度が高い癌ほど血管新生能力が高い」と信じられていたが、私の研究結果は「膀胱癌の悪性度と血管新生能力の多寡は相関しない」というものだった。
質疑応答で、私はそれこそ袋叩きにあい、全員が私の研究結果に異を唱えた。
助け舟を出してくれたのは、Folkmanだった。
「この青年は、私達より先にいるのだよ」とコメントした。
科学に対し、真摯で謙虚な姿勢に強く胸をうたれた。(2006年12月の記事、校正)
☆★Jainからの申し出
シンポジウムの夕食会で、Folkmanの右腕 Jainから「ハーバードに来ないか」と誘われた。
Jainは新進気鋭の工学博士で「なぜ固形がんに抗癌剤が効かないか」を工学論的に説明し、その打開策として血管新生の阻害に注目していた。
非常に名誉ある申し出だったが、「天才 Folkmanに比べ、自分のちっぽけさを自覚していた」のでお断りする方向でお話をすすめた。
彼の執拗な勧誘攻撃に、自分の年齢を挙げたが、Jainが「それは、理由にならないよ、僕は君より 6歳上」と退路を断たれ、一瞬言葉を失ったが、丁寧にお断りしました。
2005年、Science誌(超一流の科学雑誌)に Jainが記した総説「抗血管新生療法における新しい概念*」が掲載された。「抗血管新生薬は、不規則な腫瘍内血管を正常化するので、抗癌剤が効きやすくなる」という内容。合点がいかなかった。
残念ながら「Jainの仮説」は誤っている。
*Rakesh K. Jain : Review Normalization of Tumor vasculature: An Emerging Concept in Antiangiogenic Therapy, Science, 307:58, 2005
ーーーーーーーーーーーーー
★★ フロリダ地方会での演出 2010年05月09日
在米中(1985~1990年)学会出張は大好きだった、旅行できるからだ。
在米一年目は Garyと Bobの NY出張に同行したが、滞在費は支給されなかったので、二人のベッドの間の床に寝た。
2年目は実費支給、3年目(助教授になって)からは実費プラスαが支給され、家計の足しになった。
3年目、フロリダの地方会に参加した。パームスプリング・ホテルが学会場で、空港でタクシーに行き先を告げると、運ちゃんが後ろを何度も振り返る。
到着して分かった、ゴルフ場を有する、お城のような超豪華ホテル。オイスター(牡蠣)を食べに行くため、フロントでタクシーを頼んだら、何と黒塗りリムジーン(リモ)が横付けされ、びっくりしたが、運転席にひっそりとメーターがついていた。
リモがレストランに到着すると、ウエイターがうやうやしくドアーを開け、VIPを演出してくれた。
ホテルにもどると専属のエレベーター開閉係、上品な中年女性が笑顔で「リー様お帰りなさい」とエレベーターのドアーを開け、行き先階をおしてくれた。
全く威圧感がない見事な演出、心から楽しんだ。
学会当日、Cockett教授から会場に「早く来るように」言われた。
その頃は、まだ演説原稿を読まざるをえず、スライドを指せなかった。
一計を案じた Cockettが、ウエイターにポインターのコードが Cockettのテーブルに届く位置に演壇(ポディウム)を移動させ、私が演説を担当、Cockettがポインターを担当した。
私を一流のアメリカ人科学者にみせる演出を計ったのである。
ーーーーーーーーーーーーー
故リー湘南クリニック院長の遺稿「異端医師の独り言」の関連ページ。
異端医師の独り言
がん検診の無理、効果に根拠はない
後世学(Epigenetics)の誕生
長寿国、自殺者数の増加、がん死者数の激増の真実
胃がんと抗がん剤治療
癌の縮小(奏効率)で患者は延命しない
ニセ科学の犠牲者、売上を誇る医師
食塩の政治学
The (Political) Science of Salt(全訳)
疑わしいサプリメントの効能と副作用
薬の犠牲、薬害を撒き散らす医師
乱用されている医療放射線機器
地中海型の食事と健康
地球温暖化の怪
「医療」の餌食にならない、無作為化対照試験(RCT)
なぜ日本に証明医療が定着しないのか
特定保健食品、黙認される誇大広告
風邪薬の犠牲者
有害な検診、有害な前立腺摘出
東電に群がる原発芸人文化人たち
詐欺:効かない薬の大量処方と有害無益の手術など
簡素な睡眠者、ハエや虫もぐうぐう眠るらしい
癌:希望と詐欺、そして現実と認識のギャップ
こんなにあるニセ科学
動物の深い悲しみの謎
リー湘南クリニック院長のご冥福を
検便の日
ヨッチャンの想い出
恐怖のカーレース、酒気帯び、起訴
僕の母親は、韓国の思い出
-40度、パーティ、Cockett城
睡眠とアルツハイマー、胃がんの原因、高血圧症?
医療の繁栄、コレステ、高血圧と認知症
- 関連記事
-
- 「バルナバスの福音書」に祝福を! (2013/11/08)
- 一週間ほどお休みします (2013/10/27)
- JR北海道、異常な組織崩壊 (2013/09/25)
- 視覚、覚、嗅覚、古細菌に始まる受容体 (2013/09/25)
- アクセスが異常 (2013/09/21)
- リー氏遺稿:米国での論文審査、学会発表 (2013/09/10)
- -40度、パーティ、Cockett城 (2013/09/03)
- 僕の母親は、韓国の思い出:リー (2013/09/01)
- 危険を誤魔化す同調圧力と正常圧力 (2013/08/27)
- いっぱい蚊に食われました (2013/08/23)
- 恐怖のカーチェイス、酒気帯び、起訴:リー (2013/08/23)