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もうすぐ北風が強くなる

米国と国際資本の独裁、秘密交渉のTPP

TPP反対

 TPPは関税もさることながら、私達の社会生活全体を米国の多国籍企業に売り渡すものである。
 徹底した秘密交渉によって、国民も国会議員も盲にされたまま交渉が進む。
 歯止めのない強制で国家主権が侵害されて、米国国際資本がこのTPP域内を収奪することになることだけがはっきりしている。
 内容は極めてわずかしか漏れていないが、決まってからは最大の地雷原になっているだろう。
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 秘密主義のTPP交渉が民主主義を空洞化   山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
 メディアは踊らされ、国民は知らされず


 暮らしや社会の仕組みにこれほど影響する国際交渉はめったにない。ところが我が国の代表がどんな主張をし、いかなる交渉をしているか、その姿を国民に知らせない。
 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、内容だけでなく、政策の決定過程に暗闇を抱えている。
 情報を公開すれば交渉そのものが成り立たない、というTPPの本質と深く関わるが、メディアの反応は鈍い。
 各国が合意し協定内容が明るみに出れば、あちこちから怒りの声が上がるだろう。支持率が支えの安倍政権に異変が起きかねない。

  「生贄」は密室で選ばれる

 主権者不在のままTPP交渉は最終局面を迎える。
 「聖域」のはずだった農産品5品目の死守は不可能な情勢だ。
 譲歩を迫られる日本が切るカード、つまりコメを護る代わりに関税撤廃を受け入れる農産物を何にするか、間もなく決まる。
 
開かれた議論もないまま「生贄」は密室で選ばれる。

「ブルネイ会合が終われば政府内部で農産品関税の妥協案が話し合われることになる」と、政府関係者はいう。
 それだけではない。
 年内合意となれば、国民の関心事である「食の安全」や「国民皆保険」を構成する薬価や保険、外資企業が国内の司法制度を飛び越え政府を訴えることができるISD条項など、TPPが誰の利益に沿ったものか骨格が見えてくるだろう。

 消費増税導入を間近に控えた来年の通常国会はTPPで紛糾する。
 政府・自民党は議席の多数で押し切ればいいと考えている。
 農政議員を抑え込み、少数の野党が騒いでも、協定を批准することは数で可能だ。
 だがそんなことでいいのか。国家を縛る協定こそ党派を超えた慎重で周到な検討が必要なのだ。

 7月のマレーシア会合の直前、内閣官房に設けられたTPP対策室に協議内容の文書一式が届いた。
 英文で10センチを超える膨大な資料。各省から集められた役人が手分けして対応するが「テキストの日本語訳は作らない」という。

 協議は英語、文書の修正も英語でやるので日本語は必要ない、という理屈だが、「日本語版を作ると政治家など各方面に情報が漏れる」というのが本音だ。
 英語を障壁にして情報を遮断する
 国民生活と深くかかわる交渉から国会議員や有権者が排除され、役人が情報を抱え込む仕組みができている。

  国会議員も情報が得られない

 マレーシア会合には自民党の農林議員が同行した。「交渉を自分の目で確かめたい」と現地入りした議員たちは会場を見物しただけ、という空しい結果に終わった。
 近くのホテルに陣取って、交渉団に協議の内容を説明するよう求めたが「守秘義務がある。日本から情報が漏れたら問題になる」と情報はもらえず無駄足に終わった。

 安倍政権が交渉参加を決めた時、自民党は「聖域死守」を条件に受け入れた。その条件から外れそうになっているのに、国会議員は情報さえ得られない。

 マレーシア会合の後、自民党は農林部会を開き、政府のTPP対策室幹部を呼び情報を求めた。
 交渉の概要や日程などを聞かされただけで中身は語られず、怒声が飛び交った

 ブルネイで開かれている第2回会合に同行した農林議員は代表格の西川公也氏だけ。この会合で日本は、農業関税が厳しい状況になっていることを思い知った。

「高い水準での合意」を米国が強く求めている。自由化率は現状をはるかに超える高率になることは避けがたい。「農産品5品目の除外」など言えない情勢であることを再確認した。

  「農産5品目すべて例外」は無理

 自由化率とは関税項目総数(日本は9018品目)の中で自由化している品目の割合。相手国によって違う。
 日本は自由貿易協定(FTA)を結ぶフィリピンの85%が最高でFTAを結んでいない国とは概ね70%台に留まっている。

 米国はオーストラリアとのFTAでは96%、米韓FTAでは99%の自由化率を達成している。
 TPPもこの水準に近づけようとしている。来年の中間選挙でTPPを成果にしたいオバマ政権は、他国の市場をこじ開けるのに必死だ。

 日本は表向き「自由化率80%」で臨む構えだが、「これでは相手にされない」と担当者は口をそろえる。
 朝日新聞は「85%を主張する方針」と伝えたが、これで決着するとも考えにくい。「交渉のスタート地点」でしかない。

 農産5品目で関税数は586ある。
 コメだけでも品種や産地、精米・玄米などで税率は変わり関税は58項目ある。
 ムギは109、乳製品188、食肉はウシ51・ブタ49、砂糖・でんぷんが131項目。5品目で全体の6.5%を占める。
 すべて護ると、他の関税を全部ゼロにしても自由化率は93.5%になる。つまり「高い自由化率」を目指すTPPに参加することは「農産5品目すべて例外」は無理だ。

 日本にはコメ以外にも譲れない工業品もある。「自由化率が90%を超えると農産5品目の関税に手をつけざるを得ない」というのが実情だ。

   最終的に決断するのは安倍・甘利・石破の3氏

 私はコメでも品目によっては関税を段階的に下げてゆくことは仕方ない、と思っている。食肉や乳製品でもすべてを護れるものではない。
 ただ、コメを人質に取られ本来日本が獲得するはずだった米国の自動車関税(年額8000億円)を先延ばしされたなど愚挙そのものである。

 農産5品目をすべて聖域にすることが日本の農業の発展につながるわけでもない。「閉鎖か開放か」ではなく、何をどう守ることが日本の農業の未来につながるか、という冷静な論議こそ必要だ。

TPPの秘密主義はその議論まで封殺してしまう
 譲歩する項目はTPP対策室で決まる。農産品が政治の塊であるだけに担当者レベルで決められる課題ではない
 政治家の参加を拒み、有権者をシャッタアウトして誰が決めるのか

 TPPの核心情報は自民党幹事長に伝えている、という。
 首相や甘利大臣は政府のメンバーなので関与する。つまり最終的に決断するのは、安倍・甘利・石破の3氏という顔ぶれになる、という。

「石破さんは自民党代表という立場、幹事長経由で農政の重鎮に情報は流れる。だが限られた範囲にとどめることになっている」

 関係者はそう明かす。TPP交渉は政府が情報を独占し、与党の重鎮だけがひそかに知る立場にある
 野党は蚊帳の外だ。つまり一握りの政治家が阿吽の呼吸で決める。
 犠牲になる農家の声など届かず、消費者も有権者も知らされない。農業団体には補償金との見合いで話がゆくだろう。

 大多数の国会議員や有権者がTPPの中身を知るのは交渉が合意し、協定の批准が国会に掛けられた時になる。それまで守秘義務が分厚い壁になって立ちはだかる。

  なぜ官僚の口が重いか

 秘密交渉とはいえTPPのニュースは連日のように新聞に載っている。私がこうして記事を書いているのも、情報を得ているからで、現場の記者たちはそれぞれ工夫して守秘義務の壁を超えている。
 それにも限界がある。

 政府に都合の悪い情報は出てこない。
 たとえば「豆腐やしょうゆなど農産加工品に『遺伝子が組み換えられた大豆は使用していません』という表示がTPP交渉で禁止になった」という情報を国際NGOがつかんだ。
 それを政府に確認しても「お答えできない」という回答になり、知っていそうな官僚に当てても「わからない」となる。

 貿易交渉やG7など国際交渉の取材はいろいろと経験したが、今回のTPP交渉の情報管理は徹底している。
 当事者たちは「情報漏えい」を問われることを強く警戒している。天下国家を饒舌に語る官僚の口が重くなっている。
 この傾向は安倍政権になって強まったように感ずる。

大きな圧力が政府がいま作成中の秘密保全法案である。
 国家公務員法が定める守秘義務違反は最高刑が懲役一年だが、秘密保全法は10年の懲役刑を可能にする。
 取材は、厳密にいえば「機密漏えいの教唆」になりうる。そのリスクを背負うギリギリの作業が国民の知る権利を担保している。
 その仕事がやりにくくなった。TPPで守秘義務がことさら強調され、秘密保全法で厳罰化する。権力に不都合な情報は出にくい国に日本はなろうとしている。

 その一方で、権力に都合いい情報はリークして世論を誘導する
 リークはメディアにとってもリスクは少ない。権力に睨まれ、場合によっては情報を遮断される追及型の取材より効率はいい。

 競争するメディアを一本釣りするかのようにマスコミ経営者と首相の会食が続いている。
 消費税増税を認めながら軽減税率の適用を求める新聞や雑誌は、御しやすい存在と権力には映るだろう。

大手新聞の社説はほとんどがTPP賛成。立場が決まっているため、暗部への突っ込みが鈍い。交渉事だから秘密はあって当然、というボンクラ記者も少なくない。
 重要情報が伏せられ、新聞によっては政府方針に迎合する体制翼賛な記事が目立つようになった。
 保守的な論調のS紙などは「米国、混合医療の導入求めず」「遺伝子組み換え食品の市場開放求めず」などと、反TPP世論を抑えるような政府好みの情報を積極的に扱っている。

  政府の「選別的リーク戦術」

 政府の情報対策は、全情報を非公開にし、都合のいい情報だけ書かせるという「選別的リーク戦術」
 情報を管理し、メディアに競争させ、なびく記者にネタを提供して取り込む、という手法である。

 これから「政府、小麦関税で譲歩へ」などという特ダネが遠からず紙面をにぎわすだろう。
 生贄は密室で決まるが、関係者に衝撃を与えないように「観測気球」を上げるのも情報操作のひとつ。
 どの程度の反発が起きるか、反応を探るのが観測気球と呼ばれる記事だ。

 情報を小出しにして既成事実を作り上げてゆくのも世論対策だ。

 4月25日の「世界かわら版」でも書いたが、多国籍企業が世界規模の規制緩和を進めるのがTPPだ。
 発展市場である途上国で企業活動の妨げになっている規制を、政治力のある先進国とりわけ米国の交渉力を使って排除する、それがTPPである。

 安倍政権は米国との関係改善を図るため、TPPに協力する。米国と協力して中国を市場経済の側へと引き込むステップとしてTPPを位置づけている。

 安倍政権にとってTPPは後戻りできない政治課題になっている。
 農業に犠牲を強いることは政権基盤を痛める出来事ではあるが、農業組織を横取りできる野党が見当たらない今、農協の反発は見返りとして配るカネで何とかなる、と踏んでいるようだ。

 しかし米国系多国籍企業の利益が前面に出る協定内容が世に知られてゆく中で、TPPへの見方も変わってくるだろう。
 食の安全、医や生命の安全保障、日本文化の保全など、われわれの「社会的利益」とTPPの相克がやがて見えてくる
 国会で議席を握り、メディアを抑えれば、大概のことは思い通りになるかもしれない。

 だが、その慢心が自壊作用を促す。
 課題はTPPだけではない。
 集団的自衛権もからむ外交的孤立、消費増税が引き起こす波乱、金融超緩和が終焉を迎える米国、アベノミクスの末路。
 盤石の体制に見える安倍政権の足元には様々な地雷が埋まっている。
 いつ噴き出すか分からない。TPP合意はその端緒になる可能性を秘めている。
 地球儀
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 このブログ内のTPP関連ページリンクの一覧

・ 世界通貨戦争(15)自由貿易主義批判Todd
・ 世界通貨戦争(16)米国TPPは100年目の攻撃
・ 世界通貨戦争(17)米国TPPはジャイアン
・ 世界通貨戦争(19)中野剛志TPP批判の要約
・ 世界通貨戦争(20)TPPは日米不平等条約
・ 世界通貨戦争(25)日本マスコミがカットしたオバマ演説
・ 異様なTPP開国論:内橋克人
・ 米国の走狗か社会共通資本か:宇沢弘文
・ TPP推進のため平気で嘘をねつ造するマスコミ
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・ 売国協定となる日米TPP:中野
・ TPP阻止行動が国民的に広がってきた
・ 榊原:TPPの交渉などマスコミ、CIAが後ろから撃つ
・ 破局に向かう世界に新たな流れを
・ アジアに米国の属領ブロックを作るTPP
・ 無知と卑劣で対米盲従する野田某
・ 1%の金持ちと99%の我々:ビル・トッテン
・ TPPのウソと真実:三橋
・ 完全収奪を狙う米国TPP
・ TPP全物品を関税撤廃対象としていた政府:植草
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・ TPP=自由貿易の嘘
・ 奴隷のTPP、新たな同士を結集し新時代をつくる!亀井静香
・ 世界経済変動の中のTPP:孫崎
・ 日中戦争挑発とTPP対中ブロック化
・ 非公開、秘密のTPP、各国が反対
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・ 恐るべき非関税障壁:山田
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・ 秘密交渉のTPPは多国籍企業の国家支配:山田
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・ 嘘つきを政権につけた報い、日本を売り渡す自民党:五十嵐
・ TPP交渉参加表明を即時撤回せよ:生活の党、社民党
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こんどは無実のシリアを攻撃する欧米帝国主義

アサド支持
欧米帝国主義と日本のマスコミには存在しない、ダマスカスのアサド支持デモ

 欧米帝国主義によるシリア攻撃は、欧米とサウジ、カタールなどの資金とその資金による傭兵で実行され2年半になる。
 最初から特徴的だったのは、米英仏のマスコミが過剰なほどの捏造報道を繰り返していることだ。
 マスコミが先導して、政治を引っ張っているかのようである。

 ただ、このマスコミ主導の侵略戦争と言う形は、今回目立っているが今始まったことではない。
 9.11事件の最初から指摘された数々の疑問は、謀略自体がマスコミの煽動シャワー抜きでは成り立たなかったことを示しているし、そこから始まったアフガニスタン攻撃、イラク、チュニジア、リビアそしてシリアと同様のマスコミ主導である。
 異なるのは、旧フランスの影響があるチュニジア、リビア、シリアについては仏独を賄う形でフランスが参加しており、煽動捏造マスコミもこの範囲に広がっている。

 旧フランス利権の範囲も、実に正直に反映している。
 この捏造と煽動で政治を引っ張っているのは、どうも軍産複合体系統のマスコミだけではないようだ。
 金融寡頭勢力主流の一部も加わっているようである。
 また、そうでなければ米国はともかく、英仏の政治を主導するには力不足だろう。
 報道の封殺はエジプトだけではない。日本も、そして侵略を開始するときの欧米も同様である。
 
 リビア侵略からは傭兵が投入されたが、シリアでは自由シリア軍への援軍として各地から大量のゴロツキを募集し、訓練して送り込んでいる。戦車まで供与しているので、非武装の住民を大虐殺するくらいは簡単なのである。
 エジプトでは非武装デモに対してゴロツキ集団に鉄棒や狙撃銃を持たせて大虐殺を行っている。
 エジプトは後方配置のクーデター軍、鎮圧する治安警察、虐殺するゴロツキ集団が役割分担をしている。
 シリア反政府軍なる集団は、自由シリア軍と住民虐殺集団で構成されており、政府軍は空爆と地上掃討で追い散らしている状態だ。

 米英仏による数日間の空爆によって、シリアの対空防衛、空軍基地、地上軍基地が壊滅させられた場合は、シリアに大虐殺が行われるだろう。
 反政府軍はほとんどが膨大な資金を持つ外人傭兵で占められており、まともな「自由シリア軍」など少数派になってしまっている。 

 軍産複合体と金融寡頭勢力の政治武力部門である欧米帝国主義の目的は、中東を「混乱状態」に落とし込めば達成できるのである。
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  無実のシリアを空爆する  8/28 田中宇

 米国が英仏の賛同を得て、早ければ8月29日にシリアを空爆するという。
 首都ダマスカスの近郊で、8月21日に化学兵器によって市民が攻撃され多数の死者が出たとされる件について、米政府は「シリア政府軍の仕業に違いない」と断定し、国際的に違法な化学兵器の使用に対して制裁する目的で、シリア沖の地中海にいる米軍艦や、英軍の潜水艦から、トマホークなどのミサイルを発射して、シリア軍の基地などを破壊する予定と報じられている。
 攻撃対象が多くなる場合、B2ステルスなど、ミサイルより多くの爆弾を落とせる戦闘機を使う予定だという。 (Strike on Syria `As Early as Thursday')

 攻撃の時期については、9月1日以降との説もある。時期の早晩があるかもしれないが、米政府の高官がマスコミに攻撃を明言しており、言葉だけでなく、いずれ攻撃が行われる可能性が高い。
 攻撃は2日間行われる予定だ。
 世論調査では、米国民の9%しか、シリアに対する軍事攻撃を支持していない。 (Obama reportedly considering two-day strike on Syria)

 取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確たる証拠を、米英仏は持っていない
 8月21日に市民への化学兵器による攻撃が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当しているとの報告を受けたりしたことだ。 (After Syria chemical allegations, Obama considering limited military strike)

 しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証明になっていない。
 証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指摘がある。 (Materials implicating Syrian govt in chemical attack prepared before incident - Russia) (News of chemical weapons attack in Syria published one day before massacre happened)

 また、アップされた動画を見た英国の科学捜査の研究機関(Cranfield Forensic Institute)の専門家(Stephen Johnson)が、写っている被害者の容態が、化学兵器の被害を受けたにしてはおかしいと思われる点が複数あると指摘している。
 写っている負傷者は、身体に白い気泡(水ぶくれ?。foaming)ができているが、報じられているような化学兵器の攻撃を受けた場合、気泡はもっと黄色か赤っぽくなるはずで、白い気泡は別の種類の攻撃を受けた症状のように見えるなど、シリア軍が持っている化学兵器が攻撃に使用されたと結論づけるのは早すぎる。
 専門家はそのように指摘している。 (Expert casts doubt on Syria chemical weapons footage)

 また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したような報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰が攻撃してきたかはわからない」と言っている
 また、米国の金融界や大企業の献金を受けて活動している同医師団について、戦争で儲けたい米国の勢力の意向を代弁している疑いがあると見る向きもある。 ("Doctors" Behind Syrian Chemical Weapons Claims are Aiding Terrorists)

 シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張する一方、反政府派や彼らを支持する米欧などは「政府軍が化学兵器を使った」と主張し、対立してきた。
 シリア政府軍は化学兵器を持っていることがわかっているが、反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。
 だがその後、シリアに隣接するトルコの当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。
 国連は、シリアに専門家の調査団を派遣することを決め、調査団は8月中旬にダマスカスに到着した。
 その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルから15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。 (Propaganda Overdrive Suggests Syria War Coming Soon) (悲劇から喜劇への米国の中東支配) (大戦争と和平の岐路に立つ中東) (シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?

 3月に化学兵器を使ったと疑われているアサド政権が、国連の調査団が到着した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。
 シリアの内戦は今年に入り、アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還している。
 しかも政府軍は空軍を持っており、化学兵器でなく通常兵器による空爆の方が、反政府派を効率的に駆逐できる
 政府軍が、自分らが優勢な時に、非効率的な化学兵器を使うとは考えにくい
 反政府派が、これまでも自分らに有利な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけてくれるとの見通しで(もしくは米国側から持ちかけられて)、国連調査団の目前で化学兵器を使ったと考える方が納得できる。 (US Sponsored Rebels in Syria have been Defeated. Government Forces are Restoring Peace throughout the Country)

 事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」などと、競ってつり上げて報道した。 (Chemical weapons use in Damascus: 'only a fool can believe it' - expert) (`Chemical Weapons' media propaganda in US, UK is designed to hide the truth in Syria)

 事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわからない」と慎重姿勢だったが、マスコミはそんなのおかまいなしだった。
 03年の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じていたのとまったく同じ姿勢だ。
 イラク戦争の失敗後、米英マスコミは、戦争を起こすプロパガンダ機関になったことを反省し、姿勢をあらためたはずなのに、今回またシリアで、03年と同質の扇動が繰り返されている。 (U.S. says unable to conclusively determine chemical weapons used in Syria) (Remember bogus U.S. excuses for Iraq war before attacking Syria: China's Xinhua)

 FT紙はご丁寧にも「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転換する意図(米英によるおせっかい)で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を倒そうとするシリア人自身の活動を支援する(良い)ものだ。イラクとシリアはまったく意味が違う(イラクは悪い戦争で、シリアは良い戦争だ)」という趣旨の記事を載せている。 (Why Syria is not Iraq)

 FTの記事は間違いだ。今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリア国民でない
 他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカイダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。
 FTなどが妄想している「シリア市民の決起」とはまったく違う
 シリアの一般の国民の多くは、長引く内戦にうんざりし、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えている。 (Media's Reporting on Syria as Terrible as It Was on Iraq) (`None of insurgents were Syrian') (シリア虐殺の嘘

 シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も明確に認めている。
 デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言している
 マスコミの歪曲はひどい
 「ジャーナリズム」の「あるべき姿」は、世界的に(もちろん日本でも)すでに消滅して久しい。
 今の(もしかすると昔から?)ジャーナリズムは全体として、読者や視聴者に間違った価値観を与え、人類に害悪を与える存在だ。
 (マスコミは昔から戦争宣伝機関の機能を持っていたが、近年までうまく運用され、悪さが露呈しにくかった。911後、宣伝機能が自滅的に過剰に発露されている) (Gen. Dempsey: Syrian Rebels Won't Be US Allies If They Seize Power)

 米政府はシリア空爆を決めた後、ケリー国務長官が「シリア政府軍が化学兵器を使ったことは否定しようがない」「それを疑う者は不道徳な陰謀論者だ」と表明し、根拠なしに政府軍犯人説を主張した。
 しかし他の諸国は、もっと慎重な姿勢だ。 (No Proof, But Kerry Insists Syria Allegations `Undeniable') (John Kerry Delivers Obama's War Declaration Against Syria)

 フランスの外相は、シリア政府軍の拠点を空爆することを強く支持した。しかし、そこには「もし化学兵器を使ったのがシリア政府軍であるとしたら」という条件がついている。英国の態度も同様だ。
 イタリアは、国連で化学兵器の使用者が確定しない限り、空爆に参加しないと表明した。ドイツなどもこの線だ。 (`US unclear on Syria chemical arms use') (Italy rules out action in Syria without UN)

 今年3月に反政府派が化学兵器を使ったと指摘するロシアは「誰が化学兵器を使ったか確定するのが先だ」と言っている。
 決めつけを表明した米国以外は「もしシリア政府軍が化学兵器を使ったのなら、政府軍の基地を空爆すべきだ(もしくは空爆もやむを得ない)」と言っているが、マスコミは「もし」の部分を意図的に小さく報じ「空爆すべきだ、空爆はやむを得ない」と報じている。 (Syria crisis: Russia and China step up warning over strike)

 シリアにはちょうど国連の化学兵器調査団がいる。
 彼らは当然ながら、8月21日の化学兵器使用現場を調査しようとした。
 しかし現地に向かう途中、反政府派から狙撃され、引き返さざるを得なかった。その後、日を変えて再び現場に向かい、2度目は現場を検証できた。
 だが、調査結果を持ってダマスカスから米欧に戻ることができないでいる。米国が国連事務総長らに圧力をかけ、調査団のシリアからの帰国を阻止している
 この指摘は、米国の元大統領補佐官のポール・クレイグ・ロバーツが発したものだ。以前から彼の指摘は的確で、注目に値する。 (Syria: Another Western War Crime In The Making - Paul Craig Roberts)

 対照的にFTは「シリアの独裁を倒すために立ち上がろう」と題する、昔の共産党機関誌顔負けの扇動的な題名の記事で「シリア政府が調査団の現地訪問を阻止している」と指摘している。
 当然ながら、信憑性に疑問がある。 (We must stand up to Syrian tyranny)

 別の報道で「米英は、早く調査団を現地に訪問させろと言っているが、国連事務局が、治安の問題を理由に、訪問を先延ばしにしている」という指摘もある。
 これまた疑問だ。国連など国際機関の内部の議論を一般人が検証できないことを良いことに、誰が賛成して誰が反対しているかを逆に書くのは、昔から英国が得意とするプロパガンダ手法だ。 (U.N. Slowing Its Own Chemical Weapons Investigation In Syria)

 現在の米政府の姿勢は「国連の調査団は来るのが遅すぎた。反政府勢力の証言から、シリア軍の犯行であるのは、すでに間違いない。いまさら調査しても意味がない」というものだ。
 ケリー米国務長官は「国連の調査は重要だが必須でない。すでに(政府軍が犯人だということで)結論が出ている」と言っている。 (Obama Administration Accepts Rebels' Account on Syria, Prepares for War) (Obama considering limited military strike on Syria)

 なぜ米国は、国連の調査を妨害するのか。
 もしケリーが断言するとおり化学兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行かせて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。
 それをせず逆に、調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害しているんだとマスコミに歪曲報道させている。
 真相は、化学兵器を使ったのが反政府勢力だということだろう。
 それが国際的に暴露されると、米英が支援してきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。 (Russia suggests Syria `chemical attack' was `planned provocation' by rebels) (Anti-Syria Western axis coming apart)

 反政府勢力の犯行を隠すため、米国は国連調査団を帰国させず、彼らが帰ってくる前に空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅させ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、米軍の地上軍派遣をやらずに、アサド政権を倒すまで持っていきたいのだろう。
 ロイター通信も、そのような筋書きを報じている。米軍は、イラクやアフガンよりひどい占領の泥沼になるシリアへの地上軍侵攻に猛反対している。 (Reuters: US to Strike Syria Before UN Evidence Collected)

 イラクとアフガンの失敗以来、米英などでは、政界や世論が、シリアやリビアなど中東の紛争地で戦争をすることに反対する傾向が増している。
 米英政府が、議会でシリアとの戦争の必要性についてきちんと議論すると、空爆ができなくなり、反政府派の悪事が国際的に暴露されていくのを看過せねばならなくなる。
 だから米英政府は、自国の議会が夏休みの間に、急いで空爆を実施しようとしている。本来、米国も英国も、戦争するには議会の承認が必要だ。 (War on Syria Imminent, US Won't Seek UN or NATO Vote)

 米国では911事件以来、大統領が「テロリストとの戦い」を開始する権限を持っている。だからオバマは合法的にシリアを空爆できる。
 しかし英国では、議会の決議を経ずに首相が勝手に戦争を開始できない。
 特に英国は、03年に米国のイラク侵攻につきあって大失敗して以来、開戦権について議会が厳しくなっている。
 あと一週間もしたら、英国は議会がシリア空爆を阻止する決議をして、米国と一緒にシリアを空爆できなくなる可能性が高い。
 だから、米国のオバマより英国のキャメロンの方が、シリア空爆を急いでいる
 英国はこの10年ほど、米国に冷たくされ、何より大事だった英米同盟が希薄化している。
 シリアに濡れ衣をかけて空爆する悪事を米国と一緒にやれば、英米同盟を立て直せるかもしれないと、英政府は考えているのだろう。
 悪事を一緒にやった者同士は(悪事の悪さが大きいほど、強い)運命共同体だ。 (US, Britain and France Agree to Attack Syria Within Two Weeks)

 米政府は、国内・国際的な反発を減らすため、空爆によってアサド政権を倒す目的でなく、使用禁止の大量破壊兵器である化学兵器を使った「罰」を与えるのが目的だとしている
 だからアサドの大統領官邸やシリア政府の役所などは空爆対象にならないという。
 だが真の目的は、シリアが100機ほど持っている空軍の戦闘機を、空爆によってできるだけ多く破壊し、反政府軍に対するシリア軍の優勢を壊すことだろう。
 反政府軍は地上軍だけなので、空軍力がある政府軍に勝てない。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は地上軍どうしの戦いになり、政府軍の優位が減る。
 米英などは最近、シリアの南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻すことに力を入れている。 (Obama's Syria options: From a symbolic strike to wiping out Assad's air force) (Report Claims US, Israeli Trained Rebels Moving Toward Damascus)

 今後、米英仏が本当にシリアを空爆するかどうか注目が必要だ。
 この戦争には、イランやイスラエル、ヒズボラ、サウジなど、他の勢力も関係している。今回は書ききれなかった、パレスチナ和平交渉との関係もある。それらは次回に、有料記事で書くつもりだ。
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