皮膚呼吸と皮膚の吸収・排泄
2013-03-30

人間の皮膚における呼吸と吸収・排泄の機能。
従来現代医学のセオリーでは臓器の発達進化によって、ほとんどその機能は失われているということになっているらしい。
だが、最近は皮膚、消化器系統共に、いわゆる感染悪玉菌と共生善玉菌による掃討と均衡の場であることが解ってきた。
と言うか、動物自体がその動物の遺伝子的な本体で恒常性維持されているのではなく、多種多様な菌類などの共生集合体として維持されていると言うことが解ってきている。
つまり、進化論的に言えばヒトと言う動物の系統樹はさておき、多様な微生物との複合的な進化ということになってきているのである。
系統樹の他に地下茎のつながりとその複合的な進化、ということである。
人間の皮膚における呼吸と吸収・排泄の機能のもんだいについても同様で、ヒトの進化に伴う臓器の発達によって、ほとんどその機能は失われているとするのは、極めて主観的な人間中心主義の進化論主義と考えられる。
人間が文化を創りだしたとはいえ、ヒトが別段に動物として全面的に各機能が最高に進化したわけではまったくない。
哺乳類の肉体が持っている機能は共生生物も含めて、ヒトにも濃厚に残存しているはずである。
以下の引用について、すべてではありませんが、その多くに納得するもの、あるいは貴重な示唆を感じるので紹介します。
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ヒトの皮膚呼吸、皮膚の吸収・排泄機能をもっと高く評価すべきです 2013年02月26日 「薬屋のおやじのボヤキ」から
(文中(※ )はもうすぐ北風の注釈)
現代医学では、ヒトの皮膚は、単なる防護膜ぐらいにしか考えられていません。
生きた表皮細胞群(基底層)が、バリアとなる表皮(順次死んでいく細胞)を作り続け、その表面が順次垢となって剥がれ落ちる、といった程度の評価です。
皮膚というものは、動物の種によって、その構造や役割は実に多様性を持っていますが、いかなる種にあっても、単なる防護膜としての機能だけではなく、様々な非常に重要な働きを担っていると言えましょう。
例えば、皮膚には物質の透過性がありますから、動物の種によっては、皮膚呼吸そして有用物質の吸収や老廃物の排泄を主として皮膚で行なうものも多いです。
ヒトの皮膚の構造や役割は、ヒトに近い種である猿とではまるで違います。
ヒトは、裸の猿で皮膚を露出させていますから、皮脂分泌が盛んで、この皮脂膜が水分蒸散の防止、病原菌の侵入阻止という非常に重要な働きを担っています。
また、汗腺は、猿が全身にアポクリン腺(しっとりと汗をかき、体毛で蒸散させる)を張り巡らせているのに対して、ヒトはこれを脇の下など一部に残すだけで、大半をエクリン腺(大量に汗を噴出させ、無駄に滴らせる)に変えてしまっています。なお、猿のエクリン腺は、掌・足の裏にあり、滑り止めのために発汗させています。これは、ヒトも同じです。
ここで、ヒトの皮膚の働きにはどんなものがあるのかを考えてみましょう。
まず、皮膚呼吸ですが、これはあり得ないものとして否定されています。また、物質の吸収についても、防護が不完全であるから浸み込むだけのことであって能動的な吸収はないとされていますし、排泄についても、汗で垢や過剰な皮脂が押し流される程度にしか考えられていません。
そして、格段に進化したヒトという動物の皮膚は、原始的な動物のような皮膚呼吸や物質の吸収・排泄といった機能は既に失ってしまっていると決め付けているのです。
でも、皮膚のこれらの役割は、大なり小なりヒトでも果たしていると考えるべきでしょう。
そう思われる事例を幾つか挙げてみることにします。
皮膚呼吸については、007の映画「ゴールドフィンガー」で有名な“全身に金粉を塗ると皮膚呼吸ができなくなり死んでしまった”というのがあります。これは少々オーバーな表現かと思われますが、しかし、ヒトにおいても皮膚呼吸という役割はけっこうありそうなのです。例えば、西勝造氏が提唱された西式健康法の中で次のように書かれています。
胎児の間は、呼吸がないから肺循環の必要がなく、右心房と左心房との間には卵円孔という短絡道があるが、これが胎児が呼吸を始めると、この卵円孔が閉鎖されねばならぬ。この時間内は、肺循環が不完全であるから、皮膚がその間の(呼吸の)補助的作用を営むのである。私が、胎児は生まれてから1時間40分裸体でおくことが必要であると主張するゆえんである。こうすると、…新生児黄疸を起こさないのである。
人間は衣服で皮膚を包むが、包みすぎると肝臓が弱くなり…腸の蠕動が鈍化して便秘に陥る…これが脳に影響して手足の神経を麻痺する…血液の循環が悪くなって…腎臓に故障を起こし…これが万病に発展する…
皮膚機能の障害は、その根本は皮膚を包みすぎることからきている。皮膚の酸化作用や同化作用が障害を受け、一酸化炭素の発生を促し、アンモニアの生成が妨げられる。
…皮膚の鍛錬を…風療法…で行なう…。これは、皮膚を空気にさらす方法であって、主として酸化作用ならびに尿酸の発散を促し、血液、リンパ液の浄化をつかさどるものである。…保健の目的では、春秋の二季に3ヶ月…やると、体質を改造して病弱者も健康になることができる。
どうでしょうか。既に戦前に確立しているこの西式健康法は、戦後においても採用され、今日に引き継がれていて、その効果が実証されています。ですから、皮膚呼吸というものは、新生児でなくても、どれだけかは補助的に行なわれていると考えるべきです。
(※007もそうだが、いわゆる「金粉ショウ」では皮膚呼吸ができなく苦しくなるために30分程度で終わり、すぐ洗い落とす。というルポ記事を記憶しています。)
次に、物質の吸収です。これについては、まず、体に悪い物質の吸収がだんだん分かってきています。
それを、「医学博士・歯学博士・薬学博士 堀泰典オフィシャルサイト」から引用します。
(温泉研究N0.9 特集1基調講演「温泉と健康・長寿」(講師:堀泰典) 2012.9.1)
従来、皮膚からの物質の吸収は殆どないとされてきた。しかしながら、1960~70年代、洗剤による肝臓、脾臓、腎臓機能障害や、2011年に石鹸に配合された加水分解小麦粉によって、小麦に対するアレルギーが発現し、小麦製品(パン、うどん等)が食べられなくなった事例が1500件以上報告された。また、スマトラ島沖地震(2004年12月26日)の大津波で、日本人や外国人女性のご遺体の腐敗速度が他に比べて明らかに遅く、遺体の判別が容易であったという。このことは、化粧品などに含まれるパラベン、エデト酸などの防腐剤が身体に残留していた可能性は否定できないと現地の法医学者が唱えている。(同氏の別文献から補足:先進国と後進国の間で遺体の腐敗に大きな差があったと現地で伺いました。特に女性に大きな差が出たとの事でした。つまり、先進国と後進国の差は食品に含まれる防腐剤であり、男女の差は化粧品に含まれる防腐剤と考えられます。つまり我々は生きながらにミイラ化されていることになります。)
このように皮膚は外来異物の侵入に対する最も重要な防御機構ではあるものの、その作用は完璧ではなく、条件によっては異物の侵入を許すことが再認識されてきている。
一方、体にいい成分の吸収も知られてきつつあります。
同上堀泰典氏基調講演の中で次のように話されています。
…温泉にゆっくりつかることにより、ミネラルを経皮から吸収させることは大変重要な要因であるといえよう。自分に合う成分の温泉を選び、温泉にゆっくりつかり…お勧めする。…
このことについては、何も温泉でなくても、家庭の風呂に食塩を一握り入れると、末梢血流改善、体が温まる、湯冷めしないなどの効果が出ることが分かっており、これは、ナトリウムイオンが皮膚から吸収されることによる効果です。200リットルに対して一握り(20g)の食塩は0.01%にしかならない薄い濃度ですが、たったこれだけの濃度であっても、十分に吸収されてしまうのです。
次のことは別文献(出典不詳)からですが、皮膚からの吸収としては、ミネラルの再吸収があるとのことです。つまり、汗をかいたときに、汗とともにどれだけかは排泄される各種ミネラルが、再び体内に戻るというものです。日常的に汗をかいている人は、大汗でない限り、この機能がうまく働いていて、ミネラル欠乏になりにくいと言われています。
そして、小生が思うには、ミネラルの再吸収はこれに止まらず、体表の壊れた表皮細胞(垢)の中にある各種ミネラルまでもが、きっと再吸収されることでしょう。
と言いますのは、汗から出るミネラルであっても、壊れた細胞から出るミネラルであっても、再吸収される仕組みは同じと考えられるからです。
このように、皮膚は、体に悪いもの、体にいいものに関わらず、“吸収する力”があり、決して、皮膚の防御不完全が原因であるとして片付けてしまうことはできないでしょう。
(※ アレルギーに限らずパッチテストは広範囲に行われています。皮膚の吸収性がかなりのものであることは皮膚科の医師なら分かっているはず。)
3つ目が、物質の排泄です。
排泄の本来の目的は、有毒物質や老廃物を外へ出すことにあります。
この仕事は腎臓に全て依存しているわけではありません。例えば水銀などの有害金属は、ヒトの場合、髪の毛に集めて、毛が抜けることによって放出されているように、腎臓が全てを担っているのではないのです。当然に、皮膚にもその機能が備わっています。
日頃全く汗をかかない人が、サウナで汗をかいた後、すっきりした気分になれるのは、皮膚から老廃物が排泄されたからではないでしょうか。
また、汗をかかなくても、断食すると皮膚から嫌な臭いがしてくることが多いようです。
これは、揮発性老廃物の排泄としか考えられません。
考えられるのは、断食による体内細胞の貧栄養が引き金となって、細胞が老廃物を細胞外へ放出し、それを尿としてではなく、皮膚に集めて体外排泄するからでしょう。
なお、断食した後は、サウナ以上に身も心も格段にすっきり感が味わえるとのことですから、揮発性老廃物以外の各種老廃物も同時に排泄されると思われます。
(※ 皆さん御存知の通り、登山などで長時間にわたって発汗していると、水分摂取量に比べて排尿の量が非常に減ります。)
小生は、ヒトの皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄が、思いのほか盛んに行なわれているのではないかと考えています。
と言いますのは、断食によって皮膚からの排泄がグーンと高まることから推し量られるのですが、表皮基底層で順次作られた細胞は、まさに断食状態にあります。そこへは、真皮層の組織液からの栄養が届きにくくなるばかりでなく、真皮層に存在する毛細血管から染み出る酸素も届きにくくなっているからです。
そうした細胞は、まだ生きており、生き続けようとします。
飢餓状態になりますから、老廃物を真っ先に吐き出すことでしょう。そして、表皮細胞の隙間の組織液に含まれる外界から溶け込んできた酸素を得ようとするでしょうし、代謝で生じた二酸化炭素を細胞外へ放出します。つまり、皮膚呼吸をすることでしょう。
こうして、単細胞真核生物と同じ生命活動をするようになると考えて良いと思うのです。
ここで、動物とは何なのかを原点に立ち返って考えてみましょう。
ヒトの遺伝子は、単細胞真核生物とどれだけの違いもありません。ヒトは、単細胞真核生物が単に多細胞化しただけのことであって、少々複雑な形状になっているから、それぞれの器官に特有な機能が、それぞれの器官の所在部位で目立って発現しているだけのことであると考えた方がよいでしょう。
ヒトの体の中の一つ一つの細胞を捉えてみると、細胞膜を通して細胞外液から酸素と栄養物を入れ込み、二酸化炭素と老廃物を排泄しているのですから、皮膚の表皮細胞とて、そうした機能を当然に持っていますし、飢餓状態となれば、能動的な吸収・排泄を必至になって行なおうとするでしょう。
さて、皮膚における有用物質の吸収ですが、その大半は表皮の上部から行なうことになります。体表の皮脂膜には細菌がビッシリと生息しています。これを皮膚常在菌と言いますが、彼らは皮脂腺から分泌される皮脂と皮膚の垢(たんぱく質)を食べつつ有機酸を排泄しています。これによって、皮膚表面の皮脂膜は弱酸性に保たれ、病原菌(一般に中性や弱アルカリ性で増殖し、弱酸性では増殖不可)の侵入を防いでくれていて、ヒトと皮膚常在菌は共生関係にあります。
そして、この有機酸は、ブドウ糖に代る栄養にもなるのです。腸内環境が優れていると、大腸で食物繊維が腸内細菌によって発酵し、有機酸が作られ、これが大腸で吸収されてブドウ糖の代替になるのと同じです。(ゴリラはこれを盛んに行い、ヒトもどれだけか可能で、オリゴ糖を多く摂取すると、ヒトも有機酸の産生が盛んになります。)
よって、飢餓状態にある表皮細胞は、皮膚常在菌が作ってくれた有機酸をエネルギー代謝して命を長らえようとするに違いありません。
ここで、一つお断りしておきますが、通説では、皮膚常在菌は皮脂しか食べないとされています。せいぜい皮膚常在菌がたんぱく質を分解するのは、脇の下などアポクリン腺から出るたんぱく質だけであって、不潔にしておくと、これを皮膚常在菌が分解して様々な窒素化合物を作り、それでもって異臭を発生させるぐらいなものと説明されています。
でも、小生はそのようには考えていません。あまりにも異常すぎる日本人の徹底した清潔文化の下においては、垢は皮膚常在菌に食べられる前に、タオルに付けたボディーシャンプーでゴシゴシ洗いされて剥がれ落ちてしまうから、皮膚常在菌は垢を食べないとされているだけのことでしょう。
小生は風呂に入ったとき、石鹸もボディーシャンプーも使わず、体も擦りません。単に、シャワーをたっぷり浴び、湯船に浸かるだけです。そうすると、浴槽に垢がくっ付くことはないですし、下着に垢が張り付いているようには全く思えませんから、体表で皮膚常在菌が垢を食べて分解してくれていると考えるしかないのです。これでもってしても、体臭がすることは全然ないです。
ただし、顔はけっこう脂ぎっていますから、シャワーや浴槽内で掌でどれだけか擦りますが、これは過剰な皮脂を洗い流しているだけで、垢までは落ちていないと思われます。
もっとも、頭皮も脂ぎってきますから、時々シャンプーを使い、このときには過剰な皮脂とともに垢(ふけ)も洗い流されるでしょうが。
少々横道にそれましたが、話を元に戻しましょう。
こうして、表皮細胞群は、皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄を真皮層の組織液に頼らなくても、表皮層でもって独自にかなり行なうことができると思われるのです。
そして、表皮層にも組織液があって、表皮・真皮の組織液はつながっており、相互に物質の移動が可能となりますから、一旦吸収された有用物質(有機酸)や汗で放出され再吸収されたミネラルは、真皮の方へ受け渡され、真皮層に届いている血管中へと入り込んでいくことも考えられましょう。また、血管から染み出した老廃物なり真皮層で生じた老廃物が、その逆の流れで排泄されもしましょう。
ヒトの皮膚(表皮、真皮)は厚さ約2mmで、総重量は約3Kgもあり、肝臓(約2.5Kg)を上回る最大の臓器です。ですから、皮膚細胞群における皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄作用は、決して無視できるものではなく、皮膚のこれらの機能が健全に働くか否かは、ヒトの健康にも大きく影響していると考えざるを得ないのではないでしょうか。
もっとも、皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄機能の主力となる箇所は表皮であり、表皮だけを捉えてみると、厚さ約0.2mmで総重量は約0.3Kgしかなく、小さな臓器になってしまいますが、表皮は真皮と深い関わりがありますし、真皮層にある汗腺や皮脂腺などの働きも表皮に重要な影響を与えますから、表皮・真皮を一体として皮膚として捉え、総合的に働きを評価する必要があります。
こうしたことから、「健康な皮膚づくり」を考えたとき、まずもって、表皮層に存在する飢餓状態の細胞群が少しでも命を長らえることができるように表皮の快適な環境を保持してあげるとともに、真皮への十分な血流の確保、そして汗腺や皮脂腺の正常化が必要となりましょう。
このことは、肌荒れ、敏感肌やアトピー性皮膚炎を改善する上で、重視すべき事項となります。
次号においては、アトピー性皮膚炎の皮膚がどのような状態になっているかをみてみることにします。そして、対症療法について、述べることにします。
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