人間のマニュアル・ロボット化とモンスター顧客
2013-03-01

いつの頃からか何でもかんでもマニュアルばやりだ。
店員の応対はマニュアルどおりだし、その通りのことしか応対しなくてもマニュアルになかったとなるので本人はOKで、マニュアルの改正。追加となる。鉄道事故なども起きるたびにマニュアルが追加されて膨大なものになる。
覚えるのが大変で、他のことはわからない人間になる。同時に自分で判断して行動に責任をもつことは「余計なこと」か「禁止」になる。
日本人は明治以来の定形知識の偏重教育によって、権威を盲信し盲従する民族となった、世界でも有数のロボット奴隷人国家といって良いと思う。
それがオイルショックのころからだろうか、やたらとマニュアル化が叫ばれ、推進されてきた。
マニュアルロボットの大増産である。
ロボットは人間ではないからマニュアルのとおりにしか判断しない。またマニュアルどおりにしか思考しない。
そして何より、責任を取らない。
そう、こんな人間では社会は成り立たないし、企業は壊れてしまうのだ。
行列に4時間も立たされて冷静な日本人と海外で報道されたが、しばらくしたら言わなくなった。理性的で冷静だったわけではなく、奴隷的な忍従と慣らされた集団行動だったのがわかったためだろう。
増加する最低時給の長時間労働の職場は、ほとんどがマニュアル・ロボットの生産工場でもある。
年収800万の新中間層も頭のなかが責任回避と胡麻すり、いつでも弁解できるようになどが教訓になる以上は、自ら自分をマニュアル・ロボットに仕立てる職務と見做せるだろう。
まさしくマニュアル・ロボットの大増産と奴隷化がすすんでいる。
モンスター顧客よりも、このマニュアル・ロボット社会の方が大変に反社会的で致命的な害を及ぼすモンスターだ。
ーーーーーーーーーーーーー
モンスター顧客の意味 高橋清隆
「モンスター」とマニュアル化
「モンスターペアレント」「モンスターペイシャント」などの言葉が聞かれるようになって久しい。「暴走老人」という言葉も定着した。
大衆への浸透には当然、マスメディアが介在する。これらの宣伝目的は、自立心に基づく言動を排除することにあるとみる。
「モンスターペアレント」を『ウィキペディア』は「学校などに対して自己中心ともいえる理不尽な要求をする親を意味する」と説明している。
しかし、理不尽な内容ばかりだろうか。何かに異議を唱えたり、説明を求めたりしている姿を見れば、テレビや週刊誌の影響で「あっ、モンスターペアレントだ」と見なすのではあるまいか。
「モンスター」も「暴走」も対話が通用しない生き物、すなわち普通の人間の振る舞いでないという形容であることに注意する必要がある。
対話を排除する意図が仕込まれており、マニュアル化と抱き合わせで展開されているように思われてならない。
排除を狙う現場は学校や病院だけでなく、ショッピングセンターやコンビニ、ファストフード店、レストラン、ドラッグストアなどすべての店舗とサービス現場に及ぶ。
レジで列を待つあなたの前で、誰かが店員の困る質問を連射していたら、きっといら立つはず。「早く」と心の中で、あるいは口に出してつぶやき、迷惑、厄介者として扱うことになる。「モンスター○○」「暴走○○」の烙印は、無意識にもマニュアル対応の普及を促す。
定型化されている各店での対応は、決して誠実なものでもなければ、無謬性(むびゅうせい)の貫かれたものでもない。
欲しい商品を探してないので尋ねると、「出ているだけになります」と答える。棚まで足を運んだり、端末で在庫を確認する必要もない言葉である。
食べ物を注文すると、「○○も一緒にいかがですか」と催促される。
せっかくこちらがお金を落とそうとしているのに、逆に売り込んでくるとは何事か。お店に入るなり、「イートインですか」と聞いてくる所もある。わたしなどは、これだけで抗議したくなる。
「どうして日本語を使わないんですか」と。敵性言語を使ってどうする。
会計時に「○○カードはお持ちですか」と、支払いに乗じて自社グループのクレジットカードの勧誘宣伝をしている店もざらだ。多すぎて、今では注意する気もうせている。
「1000円からお預かりします」は文法的に誤りだ。
レストランで注文すると「お後はよろしいですか」と聞いてくるウエイター。
「後」に「お」をつけて丁寧語にすることが文法的に正しいのかどうか、わたしには分からない。
数百円の買い物で1万円札を出すと、「一緒に確認をお願いします」と言って「1、2、3…」などと幼児の学習作業に付き合わされることが多くなっている。責任転嫁の意図がうかがえる。
これは教育を受けていないマイノリティーを多く抱える米国で普及したものだが、わが国には算術というものがある。10から1を引けば9だ。日本人なら小学生でも知っている。
日本人の慣習に沿わないこうした接客態度は、こちらに物理的損害を与えるものでもない。言うのもばかばかしいので、大抵は黙ってやり過ごす。
ただし、いつまでも放置すべきでないものもある。例えば、レジで「袋はご利用ですか」などと聞かれることがある。袋をもらうと1円加算されたり、サーピスポイントが付かなかったりといった仕組みにしてある。これはCO2温暖化説を是認してのこと。
前提というより、この催促言葉が草の根レベルでの宣伝行為になっている。同説が産業発展を止める口実であり、人類を不幸に導くものであることは、賢明な読者には説明するまでもないだろう。
「健康・安全」を売り物にするある弁当チェーンは、化学調味料を使っている。メールで質問を繰り返した末、知った。
「保存料・合成着色料は不使用」と表示しており「化学調味料不使用」とは書いていないと釈明された。
しかし、「健康な食を提供することで、社会貢献」をグループの経営理念に掲げている。
大手飲料メーカーはアスパルテームを使った炭酸飲料を「ダイエット○○」の商品名で販売している。スリムな女優を起用し、さもやせられるように宣伝している。
しかし、テキサス大学のヘレン・ヘイズダ教授が米国糖尿病学会議で発表した調査によれば、ダイエット系飲料好きの人はそうでない人より70%も速く胴回りが大きくなる。
人工甘味料は食欲を促進させ、満足感を感知する脳細胞に損傷を与えるからである。
「健康」と表記された、豆乳をはじめとする大豆食品が普及している。
しかし、大豆は植物性食品の中で最も多くのグルタミン酸を含む。加水分解するとグルタミン酸が遊離するため、結果として通常の化学調味料を添加した食品より多くの害を人体に与えることになる。
大豆食品を日常的に摂取する人を25年間追跡調査し、脳をCTスキャンで解析したところ、認知症と脳萎縮の最も高い発症率が確認されている。
こうした認識に立って、レジで店員に質問を向けたらどうなるか。「支払いに乗じてカードの宣伝はしないでください」「釣り銭はそちらの責任で数えてください」などと諭したところで、「申し訳ございません」とマニュアル言葉で返され、また次の客から同じ対応に戻るのは必定である。
「なぜ、レジ袋をけちるの?」「これ、本当に体にいいの?」と単純に切り出せば本来、「地球温暖化につながるからでしょう」「うちは無添加だと思いますよ」と返すのが人間だ。
しかし、大資本傘下のチェーン店ではマニュアルが設定されていて、「当社ではそのように決められております」「それ以上のことはこちらではお答えしかねます」などとかわされるのが現実だ。
しかも、中小資本経営や個人のお店まで、半ば追随している。
無機質な返事にいらだって「原因は二酸化炭素じゃないだろ」「アスパラギン酸はネズミの脳に穴を開けた」などと絡めば、早晩後ろの客に「おい、早くしろ!」と怒鳴られるか、人を呼ばれることになる。
その際、「モンスター」という言葉が、この厄介者を片付けるために効力を発揮する。
言語操作による人間操縦
「モンスターペアレント」の言葉が流布されたためだろう、東京都の公立校の教職員の3分の1がすでに訴訟費用保険に加入しているという。
しかし、これは社会全般のマニュアル化計画に便乗した立場にすぎないというのがわたしの解釈だ。
定式化された言動を完全にプログラムされた人間は、機能的にロボットと同じになる。
1949年に書かれたジョージ・オーウェルの小説『1984』に「ニュースピークの諸原理」という付録が収められているが、ここには言語操作の遠大な目的が示されている。
「ニュースピーク」では一つの単語について単純で明瞭な意味以外を廃止し、一つの品詞としての役割しか持たせなくする。
品詞間の語尾変化を統一するとともに、複数の単語からなる語句は極力単純化する。
例えば、「自由な/免れた」という意味を持つ“free”という単語は後者だけの意味に限る。「政治的に自由」および「知的に自由」はもはや、概念として存在しないからである。
この新語は、舞台上の権力体制であるイギリス社会主義の奉ずるイデオロギー上の要請に応えるために考案されている。
ちなみにイギリス社会主義(English Socialism)は「ニュースピーク」で“Ingsoc”となる。
物語は1984年の設定だが、この新言語は2050年ごろまでにオールドスピークに取って代わる計画として描かれている。
その目的は、国民を思考不能にすること。思考が言葉に依存している以上、言葉を操作することで人間を支配できると考えた。
英国人ジャーナリストのデーヴィッド・アイク氏によれば、オーウェルはフェビアン協会との関わりを通じて、小説の題材を得ている。
同協会は漸進的な社会変革によって完全な社会主義建設を目指す団体で、ロスチャイルドシオニストの巣窟(そうくつ)であるロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)が母体である。
オーウェルが明かした新語創造の技術は、ロンドンのタビストック研究所などの組織が開発したとアイク氏は指摘する。
同研究所は1946年にロックフェラー財団の助成金で設立され、フェビアン協会や王立国際問題研究所(LSEの卒業生が圧倒的に多い)、 EU、CFR(外交問題評議会)と密接な関係にある。
言語を使った人間操縦技術の一つに、CIAが「スライド」と呼ぶものがある。
これは「政治的に公正」(ポリティカルコレクト)な見解を普及することで、その問題について深く考えたり、分析したり、調査することを妨害するように意図されている。
例えば、気候変動について言えば、コンセンサスは「人間活動が原因」ということになっていて、それに反することを口にすれば、甚だしい不見識者か狂人と思われる。
子宮頸(けい)がんワクチンの摂取に反対することも、同様の集団圧力が掛かる。
マスコミ各社も各政党のリーダーも、これらに反対していない。
「政治的に公正」のテクニックを使う代表的な人物に、マイケル・サンデル氏がいる。
フィナンシャルプランナーの天野統康氏が著書で指摘しているが、彼の命題は疑義を挟めない形になっている。「911テロの首謀者であるビンラディンをアメリカ軍が殺したのは正義か」といった具合だ。
言語を使った大衆操作は、マニュアルからテレビのコメンテーターの語り口に至るまで日常生活のあらゆる局面に仕組まれている。
TPPには反対しても、自由貿易に反対する媒体や政治家が1つも見当たらないのは、こうした工作の積み重ねの成果といえる。
考えてみれば、言語の使用を制限することで思考を制限する取り組みは、古くから行われてきた節がある。
敗戦直後の1946年に定められた当用漢字表、1981年内閣告示の常用漢字表もそうではないか。
読みの制限と字種そのものの削減は、日本語が持っていた語法の多様性を大きく損ねた。
現在、中国で使われている簡体字はその先駆けではあるまいか。
共産党が作った印象が強いが、『ウィキペディア』によれば、清朝末期の1909年から簡化運動は始まっている。
携帯電話を使った「ケータイ小説」やNHKの「ケータイ短歌」といった新形式の“文学”は、言葉に桎梏(しっこく)を取り付けた遊戯にしか見えない。これらを推進しているのは周波数帯の使用を許認可した政府や公共放送、世界的なインターネット企業であり、背後に強大な権力がちらつく。(続く)
究極の目的は心の隷属
こうした言語の不自由化策は、わが国でも100年前には実施され始めたとみる。
地名の表記自体がそうだ。村の名前や沢の名前、山の名前など、多様に呼ばれていたものを強引に漢字にはめ、統一した。
大抵の場合、発音も厳密には違う。さらに市町村合併を繰り返し、地名は減少の一途をたどる。
人名も同じ運命にありそうだ。消費増税の際、給付付き税額控除を口実に国民一人ひとりにID番号を割り振る個人識別番号(マイナンバー)制度が導入されようとしている。
「まさか地名や人名まで」といぶかしむかもしれないが、すでに鉄道駅には、「TY06」などとそれぞれ番号が割り振られている。
銀行や病院などでは、「個人情報を守る」理由から利用者を番号で呼んでいるではないか。先人たちの英知や思いが詰まった名称は思考の世界を果てしなく拡大させる源でもある。
これを取り上げることは、ロボット人間の飼育に大きな効果を持つ。
『1984』では、名称省略の効果を説明する例として「コミンテルン」挙げている。古い言葉では「共産主義者インターナショナル」と呼んだが、これでは普遍的な人類の兄弟愛と赤旗とバリケードとカール・マルクスとパリ・コミューンを重ね撮りした一枚の合成写真を想起させる。「コミンテルン」だと明確な組織と教義を暗示するだけで、ほとんど何も考えずに口にできる。
言葉の簡略化は連想の大部分をそぎ落とすことに意味がある。
名称を記号にしてしまえば、それ自体をピンポイントで指すのみで、言葉が持つ音からも背景や歴史に思いを巡らすことはもはや不可能だ。
言語改革が思考を制限することを説明してきたが、アイク氏によれば策略の究極の目的は心(マインド)を隷属させることにある。実験室のラット並みに極限まで、あらゆる反応パターン追従するように。すでに多くの人間が自分の言うこと、書くことを怖がっているではないか。恐怖する者は支配しやすい。
アイク氏は12年5月に邦訳されたhttp://www.hikaruland.co.jp/bunko/2012/05/17232418.html『ムーンマトリックス ゲームプラン編③』(ヒカルランド)の中で、近年の英国における言葉の規制を挙げている。「ブラック・プディング」が「朝食プディング」に言い換えさせられ、「ジンジャーブレッド・メン」というパン屋が「ジンジャーブレッド・パーソン」に名称変更させられたなど。これはわが国でも展開されていることである。
日本新聞協会は、早くから差別語・不快用語の言い換えを定めてきた。
「めくら」は「目が不自由な人」に、「飯場」は「作業員宿舎」と言わなければならない。
「スチュワーデス」は「キャビンアテンダント」になった。
これらが言い掛かりであることはお分かりだろう。学生時代、バイトで一緒だった「目の不自由な人」に、「めくらと言ってくれた方が楽だ」と言われたことがある。
今では、「これを言ったらセクハラに当たるのではないか」「これはパワハラと訴えられないだろうか」「体罰はしてないはずだ」と、多くの人が自分の言動を心配しながら職場で毎日を過ごしている。
マスクの着用を怠っていないか、求人票に年齢や性別を書き込んでいないかと油断ならない。
家にいてもゴミの出し方が間違っていないか、電力の使用量を超えていないか、シートベルトを締め忘れていないか、自転車を定めあれた場所に止めていないかと、気が気でない状況に追い込まれている。
びくびくさせることそれ自体を狙っていることは、この数年の街の状況変化で分かるはずだ。
警備員だらけではないか。英国では警察の法執行を代行する認定者制度の導入が発表された。
「認定者」に該当するのは警備員、地方公務員、駐車場の係員、万引き監視員、公園管理人など。CCTV(監視カメラ)オペレーターも警察業務を代行するとの証言もある。
わが国でもこれらの職種が増えているのはご覧の通りだ。駅の清掃人も要警戒ではないか。
われわれは言動の誤りをとがめられないよう、細心の注意を払って一日を過ごしつつある。
不合理に思っても、言葉にかみつけば「モンスター」とののしられかねない。
60すぎのおじいさんがコンビニで酒を買い、「年齢確認をお願いします」と言われておとなしくレジのボタンを押す。
誰がどう見たって未成年ではないのに。この暗黙の強制力こそ、モンスターではあるまいか。
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安倍の犯罪、早くも生活苦が始まった
2013-03-01
まだ本格的な通貨増刷を始めていない段階だが、国際通貨市場は反応してしまたため急速な円安が進んでいる。
日本は2011年以降貿易構造は大きく変わっており、輸出企業は円高ではなく価格競争により敗北を重ねて急速に破綻状態になっている。
一方で日本の輸入品目は食料、エネルギー資源、原材料といった「必需品目」なのである。
言ってしまえば、「安い原材料を輸入して、加工して輸出する」というスタイルは既に壊れてしまったのである。
「高い原材料を輸入して、過剰機能の高コスト商品を輸出」することなど、誰でも不可能である。
この傾向は2003年ころのいわゆる「拡大期」からの傾向が続いて2011年につながった、長期にわたるながれである。
円安が良いことであるかのように錯覚している者は、すでに10年ほど立ち遅れた認識にあるといってよいだろう。
ガソリンは上がり、寒冷地は高い灯油で既に窮乏化し始めている。
日本の場合は円安では食料、公共料金など生活必需品が上がってしまうだ。
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首相が自賛する「市場の反応」の奇怪 円安輸入品高で庶民の生活苦必至 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログから
まだまだ株価は上がるのか。アジア開発銀行の黒田東彦総裁(68)が日銀総裁に内定したことで、市場は期待しているが、何だか博打みたいな相場になってきた。
きのう(25日)の平均株価は、前週末比276円58銭高の1万1662円52銭と、4年5か月ぶりの高水準となり、終値ベースでリーマンショック後の高値を更新。
為替も1ドル=94円77銭と、2年10か月ぶりの「円安」となった。
日銀総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男学習院大教授(70)と“金融緩和派”が日銀のツートップに内定したことで、市場は、さらに「円安」が進み、「株高」がつづくと歓迎したらしい。東証1部に上場している実に8割の銘柄が値上がりした。
しかし、一夜明けたきょう(26日)はイタリアの債務危機懸念などから円は急騰、株も下げた。
たった3か月間で、3000円も上昇した株価は、調整も含めて、ちょっとしたことで乱高下するようになっているのだ。
そういえば、15日、英ロイターが〈日銀総裁人事は最終局面、武藤氏を中心に絞り込み進む〉とニュースを配信した時も、株価は200円以上も急落した。
大物財務次官だった武藤敏郎氏では、これ以上の金融緩和は期待できないと市場に“失望感”が広がったためだ。
14日から22日までの終値を眺めても、〈56円高、134円安、234円高、35円安、96円高、159円安、76円高〉と、まるで“ジェットコースター”のような乱高下である。
「もともと株式市場は、どんなことでも“材料”にしてしまうところですが、最近は“日銀総裁人事”や“日米会談”に神経をとがらせていた。外国人投資家の動きにも敏感になっています。50%のシェアを持つ彼らが、どう動くかで株価は大きく変動しますからね」(マネーパートナーズのアナリスト・藤本誠之氏)
大手証券マンはこう言う。
「市場が乱高下しているのは、まだ株高に確信を持てないからでしょう。アベノミクスをはやしたて、猛スピードで株価は上昇したが、よく考えたら、実体経済は良くなっていませんからね」
安倍首相は「百の説明よりも市場がどう反応するかだ」とアベノミクスを自賛しているが、なんのことはない、市場は“実体経済”と乖(かい)離(り)した、株価だけが上がる歪んだバクチ場になっている。
◆アベノミクス10年前に否定された政策
もちろん「アベノミクス」によって、景気が良くなるなら結構なことだ。期待だけで上がっている株価に、実体経済が追いつくなら問題はない。
アベノミクスとは、要するに「インフレターゲット」である。
カネをジャブジャブにすることで、「円安」と「インフレ」を起こそうという単純な発想。その理論的な支柱は、安倍首相のブレーンである米エール大名誉教授の浜田宏一氏(77)である。
しかし、カネをジャブジャブにすれば、本当に実体経済は良くなるのか。
庶民の暮らしは楽になるのか。疑問だらけだ。
この20年間、世の中に出回るカネの量を40兆円から130兆円に増やしたが、景気は良くならなかった。
どんなに市中にカネをまき、ゼロ金利にしても、銀行の貸し出しは増えなかったのである。
さすがに、浜田宏一氏の東大時代の教え子である池田信夫氏までが〈これは10年以上前に散々議論され、効果がないと結論づけられた政策なのです〉と、切り捨てているくらいだ。どう考えても、うまくいくとは思えない。
「デフレ不況がつづいているのは、需給ギャップが15兆円もあるからです。
解決するには、国民のフトコロを豊かにすることで、GDPの6割を占める個人消費を活発にし、その結果モノの値段を上げていくしかない。
ところが“インフレターゲット論者”の安倍首相は、最初にモノの値段を上げようとしている。因果関係がアベコベです。
もし、カネをジャブジャブにするなら、中間層や低所得者のフトコロを直接、潤すことです。
ところが、安倍首相は庶民生活がさらに苦しくなるTPPに参加しようとしている。
安倍首相の発想では、実体経済は絶対に良くなりませんよ」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
そもそも、どんなに株価が上がろうが企業は給料をアップさせるつもりは、まったくない。
いま、賃金アップに応じているのは、ローソンと安川電機くらいのものだ。NHKが大手100社を調査したら「賃上げ」「ボーナス増」を検討している企業はゼロだった。
株価は高騰をつづけ、個人投資家も「バスに乗り遅れるな」と、浮足立っているが、どうもアベノミクスは信用できない。
◆給与は上がらず、モノの価格は上がる
このままでは“インフレターゲット”のアベノミクスによって、実体経済は良くならないのに、モノの値段だけは上がる最悪の事態に突入してしまうだろう。
前例がある。
1970年代のアメリカは、執拗なバラマキと手ぬるい金融引き締めによって、物価は高騰したのに、雇用は低迷がつづくという“スタグフレーション”に陥ってしまった。日本もアメリカの二の舞いになってしまう。
不況下のインフレである。
すでに、モノの値段はジリジリと上がりはじめている。
「円安」によって輸入価格が高騰しているためだ。なにしろ、1ドル=79円だった為替は、阿倍野ミクスによって1ドル=94円まで1割以上も「円安」が進んでいるのだから、上がらないほうがおかしい。
ガソリン価格は11週連続して値上がりし、1リットル=155円にまでハネ上がっている。小麦も4月から10%上がる。ガソリンの値上げは、輸送コストも押し上げてしまう。
デフレ下の“勝ち組”だったマクドナルドも、「マックグリドルソーセージ」を100円から120円に値上げし、住友化学はプラスチックの原料となる「ポリエチレン」の値上げを発表した。
サラリーマンの給料は上がりそうもないのに、「インフレ目標2%」を掲げるアベノミクスによって、あらゆるモノの価格が上がりはじめているのだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「アベノミクスよって、庶民の暮らしはさらに苦しくなる恐れがあります。
この先、電気代は1・5~2倍になるとみられています。消費税のアップも控えている。
給料が上がればいいですが、本当に上がるのかどうか。2002年から2008年まで“いざなぎ超え”の景気拡大がつづいた時も、株価は9000円から1万8000円へと2倍になったが、労働者の給与は10万円も減り、結局、デフレから脱出できなかった。
あの時は、モノの値段は上がらなかったが、アベノミクスは物価高の恐れもあるから深刻です」
給与は上がらないのに物価が上がれば、さらに実体経済は悪化していく。安倍首相は「百の説明よりも市場がどう反応するかだ」とエラソーに勝ち誇っているが、冗談じゃない。アベノミクスによって、国民生活はガタガタにされてしまう。
日本は2011年以降貿易構造は大きく変わっており、輸出企業は円高ではなく価格競争により敗北を重ねて急速に破綻状態になっている。
一方で日本の輸入品目は食料、エネルギー資源、原材料といった「必需品目」なのである。
言ってしまえば、「安い原材料を輸入して、加工して輸出する」というスタイルは既に壊れてしまったのである。
「高い原材料を輸入して、過剰機能の高コスト商品を輸出」することなど、誰でも不可能である。
この傾向は2003年ころのいわゆる「拡大期」からの傾向が続いて2011年につながった、長期にわたるながれである。
円安が良いことであるかのように錯覚している者は、すでに10年ほど立ち遅れた認識にあるといってよいだろう。
ガソリンは上がり、寒冷地は高い灯油で既に窮乏化し始めている。
日本の場合は円安では食料、公共料金など生活必需品が上がってしまうだ。
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首相が自賛する「市場の反応」の奇怪 円安輸入品高で庶民の生活苦必至 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログから
まだまだ株価は上がるのか。アジア開発銀行の黒田東彦総裁(68)が日銀総裁に内定したことで、市場は期待しているが、何だか博打みたいな相場になってきた。
きのう(25日)の平均株価は、前週末比276円58銭高の1万1662円52銭と、4年5か月ぶりの高水準となり、終値ベースでリーマンショック後の高値を更新。
為替も1ドル=94円77銭と、2年10か月ぶりの「円安」となった。
日銀総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男学習院大教授(70)と“金融緩和派”が日銀のツートップに内定したことで、市場は、さらに「円安」が進み、「株高」がつづくと歓迎したらしい。東証1部に上場している実に8割の銘柄が値上がりした。
しかし、一夜明けたきょう(26日)はイタリアの債務危機懸念などから円は急騰、株も下げた。
たった3か月間で、3000円も上昇した株価は、調整も含めて、ちょっとしたことで乱高下するようになっているのだ。
そういえば、15日、英ロイターが〈日銀総裁人事は最終局面、武藤氏を中心に絞り込み進む〉とニュースを配信した時も、株価は200円以上も急落した。
大物財務次官だった武藤敏郎氏では、これ以上の金融緩和は期待できないと市場に“失望感”が広がったためだ。
14日から22日までの終値を眺めても、〈56円高、134円安、234円高、35円安、96円高、159円安、76円高〉と、まるで“ジェットコースター”のような乱高下である。
「もともと株式市場は、どんなことでも“材料”にしてしまうところですが、最近は“日銀総裁人事”や“日米会談”に神経をとがらせていた。外国人投資家の動きにも敏感になっています。50%のシェアを持つ彼らが、どう動くかで株価は大きく変動しますからね」(マネーパートナーズのアナリスト・藤本誠之氏)
大手証券マンはこう言う。
「市場が乱高下しているのは、まだ株高に確信を持てないからでしょう。アベノミクスをはやしたて、猛スピードで株価は上昇したが、よく考えたら、実体経済は良くなっていませんからね」
安倍首相は「百の説明よりも市場がどう反応するかだ」とアベノミクスを自賛しているが、なんのことはない、市場は“実体経済”と乖(かい)離(り)した、株価だけが上がる歪んだバクチ場になっている。
◆アベノミクス10年前に否定された政策
もちろん「アベノミクス」によって、景気が良くなるなら結構なことだ。期待だけで上がっている株価に、実体経済が追いつくなら問題はない。
アベノミクスとは、要するに「インフレターゲット」である。
カネをジャブジャブにすることで、「円安」と「インフレ」を起こそうという単純な発想。その理論的な支柱は、安倍首相のブレーンである米エール大名誉教授の浜田宏一氏(77)である。
しかし、カネをジャブジャブにすれば、本当に実体経済は良くなるのか。
庶民の暮らしは楽になるのか。疑問だらけだ。
この20年間、世の中に出回るカネの量を40兆円から130兆円に増やしたが、景気は良くならなかった。
どんなに市中にカネをまき、ゼロ金利にしても、銀行の貸し出しは増えなかったのである。
さすがに、浜田宏一氏の東大時代の教え子である池田信夫氏までが〈これは10年以上前に散々議論され、効果がないと結論づけられた政策なのです〉と、切り捨てているくらいだ。どう考えても、うまくいくとは思えない。
「デフレ不況がつづいているのは、需給ギャップが15兆円もあるからです。
解決するには、国民のフトコロを豊かにすることで、GDPの6割を占める個人消費を活発にし、その結果モノの値段を上げていくしかない。
ところが“インフレターゲット論者”の安倍首相は、最初にモノの値段を上げようとしている。因果関係がアベコベです。
もし、カネをジャブジャブにするなら、中間層や低所得者のフトコロを直接、潤すことです。
ところが、安倍首相は庶民生活がさらに苦しくなるTPPに参加しようとしている。
安倍首相の発想では、実体経済は絶対に良くなりませんよ」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
そもそも、どんなに株価が上がろうが企業は給料をアップさせるつもりは、まったくない。
いま、賃金アップに応じているのは、ローソンと安川電機くらいのものだ。NHKが大手100社を調査したら「賃上げ」「ボーナス増」を検討している企業はゼロだった。
株価は高騰をつづけ、個人投資家も「バスに乗り遅れるな」と、浮足立っているが、どうもアベノミクスは信用できない。
◆給与は上がらず、モノの価格は上がる
このままでは“インフレターゲット”のアベノミクスによって、実体経済は良くならないのに、モノの値段だけは上がる最悪の事態に突入してしまうだろう。
前例がある。
1970年代のアメリカは、執拗なバラマキと手ぬるい金融引き締めによって、物価は高騰したのに、雇用は低迷がつづくという“スタグフレーション”に陥ってしまった。日本もアメリカの二の舞いになってしまう。
不況下のインフレである。
すでに、モノの値段はジリジリと上がりはじめている。
「円安」によって輸入価格が高騰しているためだ。なにしろ、1ドル=79円だった為替は、阿倍野ミクスによって1ドル=94円まで1割以上も「円安」が進んでいるのだから、上がらないほうがおかしい。
ガソリン価格は11週連続して値上がりし、1リットル=155円にまでハネ上がっている。小麦も4月から10%上がる。ガソリンの値上げは、輸送コストも押し上げてしまう。
デフレ下の“勝ち組”だったマクドナルドも、「マックグリドルソーセージ」を100円から120円に値上げし、住友化学はプラスチックの原料となる「ポリエチレン」の値上げを発表した。
サラリーマンの給料は上がりそうもないのに、「インフレ目標2%」を掲げるアベノミクスによって、あらゆるモノの価格が上がりはじめているのだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「アベノミクスよって、庶民の暮らしはさらに苦しくなる恐れがあります。
この先、電気代は1・5~2倍になるとみられています。消費税のアップも控えている。
給料が上がればいいですが、本当に上がるのかどうか。2002年から2008年まで“いざなぎ超え”の景気拡大がつづいた時も、株価は9000円から1万8000円へと2倍になったが、労働者の給与は10万円も減り、結局、デフレから脱出できなかった。
あの時は、モノの値段は上がらなかったが、アベノミクスは物価高の恐れもあるから深刻です」
給与は上がらないのに物価が上がれば、さらに実体経済は悪化していく。安倍首相は「百の説明よりも市場がどう反応するかだ」とエラソーに勝ち誇っているが、冗談じゃない。アベノミクスによって、国民生活はガタガタにされてしまう。
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TPP、恐るべきは「非関税障壁」:山田
2013-03-01
TPP大賛成の我が国かいらいマスコミたちは、TPPがあたかも関税撤廃協定であるかのようにイメージ作りに励んでいる。
安倍某の訪米会談によって関税撤廃に聖域が認められたかのような捏造報道によって、安倍政権の「手柄」としたいらしい。
とんでもない国民洗脳を続けているわけだが、この世界通過戦争のなかで関税率など今や既に問題ではない。
大問題なのは「非関税障壁」なのである。
日米構造協議から国民に秘密の対日要求書。
助役は副市長、助教授は准教授。訴訟社会へ向けた法科大学院、建築基準法から商法に至る法改正。
今までに対日要求での社会制度改正要求で叶えられていない分野は、TPPで一気に破壊征服される、それが「非関税障壁」という言葉の中身である。
ーーーーーーーーーーーーー
恐いのは「関税」より「非関税障壁」 日米首脳会談の盲点 2/28 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
再選を果たしたオバマ大統領、再挑戦の安部首相。初顔合わせの首脳会談は、日米双方の外交姿勢が鮮明に現れた。
米国は攻めの外交。国内を守りながら日本市場を取りに行く戦略性を鮮明にした。
日本は、米国にすがる外交が露わに。国内を説得するためTPP関連では「関税撤廃に聖域」があるかのような表現を共同声明に入れてもらった。
焦点はもはや、「関税撤廃の聖域」ではない、ということに多くの国民は気付いていない。
実は「非関税障壁」がより問題にされている。コメよりも、保険、医薬品、遺伝子組み替えなどに米国の標的は移った。
昨年2月、このコラムに「TTP=自由貿易」の嘘、という題で事前協議が米国のむちゃくちゃな論理で行われていることを指摘した。今回も同じだ。
首脳会談での一芝居
安倍首相はひらすら「交渉に聖域がある」という言質をオバマに求め、「米国も聖域に理解を示した」と土産を持ち帰ることで、TPP交渉参加への道を開こうとした。
そんな日本の事情を熟知した米国は1月下旬、各国の政府関係者が集まるスイスのダボス会議で、カーク通商代表が茂木経産相に「日本車の輸入関税を続ける」と通告した。
「政府内は戸惑いと安堵という複雑な反応だった」と、政府関係者は明かす。
自動車の関税を残すTTPとは一体何なのだ、という声が上がる一方で「これで交渉参加へ道が開ける」と外交関係者は胸をなで下ろした、という。
舞台裏で進んだ根回しの結果、安倍首相は「聖域なき関税撤廃というのでは日本の国益は守れない。首脳会談で私が直接オバマ大統領に確かめ、(聖域があるという)心証を得てきたい」と国会などで繰り返し発言するようになった。
自動車関税継続の通告で「聖域化」は既に決まっていた。そこを伏せて、首脳会談で心証を引き出すと芝居をうった。
今や通商交渉のテーマは非関税障壁
工業品の代表である自動車に関税を残すというのでは、TTPが唱える「高いレベルの自由化」は空文化するのではないか。今回のポイントはここにある。
実は、TTPの主課題は今や関税ではない。世界の通商交渉のテーマは、すでに非関税障壁、投資保護、知的所有権、紛争処理など関税以外の分野に移っている。
「関税引き下げ」が自由貿易の代名詞のように使われていたのは、米国が最強の輸出国だったころからだ。
米国の主導でケネディラウンドと呼ばれる一括関税交渉が始まったのは1960年代。ガットのウルグアイラウンドを経て、ほぼ落ち着くところに達したのが現状だ。
残るは「センシティブ・マター」と呼ばれる各国の政治案件だ。日本のコメと同様の課題をそれぞれの国が抱え、突っつきすぎると交渉の枠組みが壊れかねない。
関税は途上国に市場開放を迫る道具としては今も有効とされるが、先進国間では自由貿易の旗を振るアメリカでさえ、自動車産業などが「関税保護」に頼り、関税交渉の時代は終わったというのが現実だ。
そこでアメリカは他国の市場をこじ開ける「新しい道具」を用意した。分かりやすい例が「日米構造協議」であり「対日経済要求」である。「あなたの国はこんなにおかしな制度だから、米国企業の活動の自由が妨げられている。直しなさい」というやり方だ。
こうした2国間協議をアジア太平洋で丸ごと仕組み化しようというのがTPPだ。
もともとシンガポール、ニュージーランドなど産業がぶつかり合わない4ヵ国でやっていた取り組みに米国が乗り込んで、主導権を取った。
米国の国家情報会議(NIC)が昨年末にまとめた「2030年グローバルトレンド」は、今後30年間で文明の重心は米国からアジアに移るという。
産業革命から始まった西洋の隆盛が反転し、世界経済や政治でアジアが復興する、と予測している。
米国はこうした大局観から国家戦略を構築する。狙いはアジアだが、そこには中国が控えている。「制度を変えろ」と要求しても、従う国ではない。
そこでアジア地域の経済改革を、非中国の国家群で先行させようというのがTTPである。平たく言えば「アジアにおける米国主導の経済同盟」である。
仲間であり利害対立を抱える当事者
当然「日本も入れ」となる。だがこの同盟は必然的に抱える難問がある。「仲間であり利害対立を抱える当事者」という複雑な関係だ。
今回の首脳会談にもそれが滲み出た。安倍首相は民主党政権がこじらせた日米関係を修復して存在感を示したい。
領土問題で争う中国への対抗上、米国と緊密な関係を強調したい。
そのためには「忠誠の証し」が必要となる。自民党内は国内での反対を押し切って交渉に参加する意思表示が、交渉の予備段階で米国に示され、共同声明の文案が作られた。
「すべての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」という表現で「聖域があります」と読めるようにした。ここまでは同盟関係である。
その裏に「利害対立」が潜む。声明に盛られた以下の部分だ。
「両政府は、TTP参加への日本のありうべき関心についての2国間協議を継続する。
これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税障壁に対処し、TPPの高い水準を満たすことについての作業を完了することを含め、解決する作業が残されている」
さらっと読むと素人には分かりにくいが、やさしく言えば次のようになことだ。
「コメなど農産物に特段の配慮してもらえるならTPPに参加したい、という日本の事情は日米でさらに話し合いましょう。でもそのための条件として米国が要求している自動車と保険の問題に決着がついていない。懸案となっている非関税障壁の問題も含め、外国企業が日本で自由な活動が出来るよう制度やルールを変える仕事がまだ残っています」
両国間には、まだ決着しない利害対立が残っていますよ、と書いてある。
それでも帰国した安倍首相は同盟関係を重視し、交渉参加へと舵を切った。反対の声が多かった自民党も「首相一任」。TTP交渉参加に弾みがついた。
アメリカの真の狙い
だが、聖域が残れば、問題はないのか。そうでないからTTPはややこしい。
政界・国会・メディアで取り上げられているTTP問題は、いつもコメに象徴される農業問題であり、防波堤となっている関税問題だ。反対するのは農協であり農林議員という構造で描かれる。
無策の農政、既得権にしがみつく農業団体や経営感覚のない農民。旧態依然たる産業が、構造改革に抵抗しているので日本の強みであるモノ作りの強みを世界で発揮できない――という分かりやすいストーリーで描かれている。
確かに農業には問題がある。TPPがあろうとなかろうと改善しなければいけない課題は山積している。
だがTTP問題のキモは農業に関係する関税でもなければ、関税に例外措置を設ければ打撃を回避できる問題でもない。
コメ問題は「敵は本能寺」なのである。
アメリカの真の狙いは非関税障壁と投資だ。
察するところ戦略的ターゲットは、医薬品認可基準の変更、保険ビジネスへの参入、とりわけ医療保険ビジネスを広げるため国民健康保険制度に風穴を空けること。そして遺伝子組み替え食品の表示を取り外し、日本で遺伝子組み替え種子のビジネスを展開することなどが予想される。
ここで「推察」とか「予想」とかの表現を使っているのは、交渉の実態が明らかにされていないからだ。
TPP交渉は秘密交渉で行われ、参加国でも交渉の全貌は明らかにされていない。
日米間で行われている事前協議でも、米国側から「日本車への輸入関税継続」が通告されながら、国民や国会に伏せられていた。
オバマ政権は、アジア市場に製品やサービスを売ることで輸出と雇用を増加させる、という分かりやすい政策を米国民に約束している。
米国の強い産業が自由に活躍できる制度的インフラを、市場たるアジアに広げる。それがTTPの狙いだ。
競争はあっていい。だが、自分たちの都合の悪い制度や仕組みを潰しに掛かるようなことがあるなら、受け入れることはできない。
それが「利害のぶつかり合い」だ。
国民健康保険制度が標的か
分かりやすいのが日本の国民健康保険だ。
日本国内では財政問題など難点が指摘されるが、世界水準で見れば「優れモノ」である。日本が長寿国になったのも国民健康保険があったからだ。
一方、民間の保険産業を見れば、米国の保険会社は圧倒的な力を持っている。いま米国の保険産業はアジアを目指す。日本でも急進している。
だが得意分野の医療保険が日本ではさっぱりだ。国民健康保険がほぼすべての国民をカバーしているので、入り込む余地がない。
国民健康保険が壊れれば民間保険を売ることができる。
英国ではサッチャー政権の時、それが起きた。
財政削減で国民健康保険でカバーできる医療が劣化し、きちんとした医療を受けるには民間の保険を買うしかなかった。
制度の崩壊は保険会社にとってビジネスチャンスだ。
米国の論理で言えば、財政が支援している国民健康保険は「民業圧迫」で、優れた保険商品を扱う米国の保険会社の活動を妨げる「非関税障壁」となる。
今は、日本国民が国保を支持しているので、そこまでの主張はしないが、国保が財政的に衰退すれば状況は変わる。
その原型が事前協議の「保険問題」にある。米国は政府が株主である日本郵政の子会社であるかんぽ生命が売るガン保険などを止めるよう求めている。
政府の信用で全国展開のビジネスをするのは「非関税障壁」だというのだ。この論法は、やがて国民健康保険でも使われるのではないか。
医療関係は米国が強い。薬品も同じだ。今の薬品価格は厚労省が低く抑えている。これでは儲からない。
これも非関税障壁になり、撤廃されれば薬価は上がり、国民健康保険の財政も危うくなる。
表示で差別するのは非関税障壁!?
注目したいのが「遺伝子組み替え食品」だ。
害虫に喰われない農産物を作るため遺伝子組み替えの種子が米国では一般化し、いまや穀物地帯の南米まで席巻している。
ムシが付かない防虫効果が人にどんな影響を与えるのか、まだはっきりしない。
日本では作付けは認められていないが、遺伝子組み替えの大豆を輸入して作った醤油やみそなどが売られている。こうした状況に消費者は敏感になり、「遺伝子組み替え食品は使っていません」と表示した商品に関心が高まっている。
米国はこの表示を問題にしている。「表示で差別するのは非関税障壁」というのだろうか。
背後には遺伝子組み替え種子で世界制覇を目指すモンサント社がある、とされる。この問題はいずれ改めて書く。
ワシントンで石を投げればロビイストに当たる、というほど米国議会は業界のロビー活動が盛んだ。
民主党も共和党も国会の議決に党議拘束はない。業界ビジネスがストレートに経済外交に反映し、米国の世界戦略と一体となって進んでいる。
それは米国のお国柄だが、他国が築き上げた制度や消費文化を破壊して攻め込むのは歓迎できない。開かれた貿易体制を目指すTTP交渉なら、国民に情報を開示して判断を仰ぐことが必要だろう。
メディアも、表で騒がれていることばかり追うのではなく、裏で秘密裏に進む重大事案を描き出す努力が必要だと、つくづく思う。
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このブログ内のTPP関連ページリンクの一覧
・ 世界通貨戦争(15)自由貿易主義批判Todd
・ 世界通貨戦争(16)米国TPPは100年目の攻撃
・ 世界通貨戦争(17)米国TPPはジャイアン
・ 世界通貨戦争(19)中野剛志TPP批判の要約
・ 世界通貨戦争(20)TPPは日米不平等条約
・ 世界通貨戦争(25)日本マスコミがカットしたオバマ演説
・ 異様なTPP開国論:内橋克人
・ 米国の走狗か社会共通資本か:宇沢弘文
・ TPP推進のため平気で嘘をねつ造するマスコミ
・ TPPは国を揺るがす大問題に発展するか
・ 売国協定となる日米TPP:中野
・ TPP阻止行動が国民的に広がってきた
・ 榊原:TPPの交渉などマスコミ、CIAが後ろから撃つ
・ 破局に向かう世界に新たな流れを
・ アジアに米国の属領ブロックを作るTPP
・ 無知と卑劣で対米盲従する野田某
・ 1%の金持ちと99%の我々:ビル・トッテン
・ TPPのウソと真実:三橋
・ 完全収奪を狙う米国TPP
・ TPP全物品を関税撤廃対象としていた政府:植草
・ TPPは開国でなくまさに売国:トッテン
・ TPP=自由貿易の嘘
・ 奴隷のTPP、新たな同士を結集し新時代をつくる!亀井静香
・ 世界経済変動の中のTPP:孫崎
・ 日中戦争挑発とTPP対中ブロック化
・ 非公開、秘密のTPP、各国が反対
・ 世界から孤立する日本の完全属国化
安倍某の訪米会談によって関税撤廃に聖域が認められたかのような捏造報道によって、安倍政権の「手柄」としたいらしい。
とんでもない国民洗脳を続けているわけだが、この世界通過戦争のなかで関税率など今や既に問題ではない。
大問題なのは「非関税障壁」なのである。
日米構造協議から国民に秘密の対日要求書。
助役は副市長、助教授は准教授。訴訟社会へ向けた法科大学院、建築基準法から商法に至る法改正。
今までに対日要求での社会制度改正要求で叶えられていない分野は、TPPで一気に破壊征服される、それが「非関税障壁」という言葉の中身である。
ーーーーーーーーーーーーー
恐いのは「関税」より「非関税障壁」 日米首脳会談の盲点 2/28 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
再選を果たしたオバマ大統領、再挑戦の安部首相。初顔合わせの首脳会談は、日米双方の外交姿勢が鮮明に現れた。
米国は攻めの外交。国内を守りながら日本市場を取りに行く戦略性を鮮明にした。
日本は、米国にすがる外交が露わに。国内を説得するためTPP関連では「関税撤廃に聖域」があるかのような表現を共同声明に入れてもらった。
焦点はもはや、「関税撤廃の聖域」ではない、ということに多くの国民は気付いていない。
実は「非関税障壁」がより問題にされている。コメよりも、保険、医薬品、遺伝子組み替えなどに米国の標的は移った。
昨年2月、このコラムに「TTP=自由貿易」の嘘、という題で事前協議が米国のむちゃくちゃな論理で行われていることを指摘した。今回も同じだ。
首脳会談での一芝居
安倍首相はひらすら「交渉に聖域がある」という言質をオバマに求め、「米国も聖域に理解を示した」と土産を持ち帰ることで、TPP交渉参加への道を開こうとした。
そんな日本の事情を熟知した米国は1月下旬、各国の政府関係者が集まるスイスのダボス会議で、カーク通商代表が茂木経産相に「日本車の輸入関税を続ける」と通告した。
「政府内は戸惑いと安堵という複雑な反応だった」と、政府関係者は明かす。
自動車の関税を残すTTPとは一体何なのだ、という声が上がる一方で「これで交渉参加へ道が開ける」と外交関係者は胸をなで下ろした、という。
舞台裏で進んだ根回しの結果、安倍首相は「聖域なき関税撤廃というのでは日本の国益は守れない。首脳会談で私が直接オバマ大統領に確かめ、(聖域があるという)心証を得てきたい」と国会などで繰り返し発言するようになった。
自動車関税継続の通告で「聖域化」は既に決まっていた。そこを伏せて、首脳会談で心証を引き出すと芝居をうった。
今や通商交渉のテーマは非関税障壁
工業品の代表である自動車に関税を残すというのでは、TTPが唱える「高いレベルの自由化」は空文化するのではないか。今回のポイントはここにある。
実は、TTPの主課題は今や関税ではない。世界の通商交渉のテーマは、すでに非関税障壁、投資保護、知的所有権、紛争処理など関税以外の分野に移っている。
「関税引き下げ」が自由貿易の代名詞のように使われていたのは、米国が最強の輸出国だったころからだ。
米国の主導でケネディラウンドと呼ばれる一括関税交渉が始まったのは1960年代。ガットのウルグアイラウンドを経て、ほぼ落ち着くところに達したのが現状だ。
残るは「センシティブ・マター」と呼ばれる各国の政治案件だ。日本のコメと同様の課題をそれぞれの国が抱え、突っつきすぎると交渉の枠組みが壊れかねない。
関税は途上国に市場開放を迫る道具としては今も有効とされるが、先進国間では自由貿易の旗を振るアメリカでさえ、自動車産業などが「関税保護」に頼り、関税交渉の時代は終わったというのが現実だ。
そこでアメリカは他国の市場をこじ開ける「新しい道具」を用意した。分かりやすい例が「日米構造協議」であり「対日経済要求」である。「あなたの国はこんなにおかしな制度だから、米国企業の活動の自由が妨げられている。直しなさい」というやり方だ。
こうした2国間協議をアジア太平洋で丸ごと仕組み化しようというのがTPPだ。
もともとシンガポール、ニュージーランドなど産業がぶつかり合わない4ヵ国でやっていた取り組みに米国が乗り込んで、主導権を取った。
米国の国家情報会議(NIC)が昨年末にまとめた「2030年グローバルトレンド」は、今後30年間で文明の重心は米国からアジアに移るという。
産業革命から始まった西洋の隆盛が反転し、世界経済や政治でアジアが復興する、と予測している。
米国はこうした大局観から国家戦略を構築する。狙いはアジアだが、そこには中国が控えている。「制度を変えろ」と要求しても、従う国ではない。
そこでアジア地域の経済改革を、非中国の国家群で先行させようというのがTTPである。平たく言えば「アジアにおける米国主導の経済同盟」である。
仲間であり利害対立を抱える当事者
当然「日本も入れ」となる。だがこの同盟は必然的に抱える難問がある。「仲間であり利害対立を抱える当事者」という複雑な関係だ。
今回の首脳会談にもそれが滲み出た。安倍首相は民主党政権がこじらせた日米関係を修復して存在感を示したい。
領土問題で争う中国への対抗上、米国と緊密な関係を強調したい。
そのためには「忠誠の証し」が必要となる。自民党内は国内での反対を押し切って交渉に参加する意思表示が、交渉の予備段階で米国に示され、共同声明の文案が作られた。
「すべての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」という表現で「聖域があります」と読めるようにした。ここまでは同盟関係である。
その裏に「利害対立」が潜む。声明に盛られた以下の部分だ。
「両政府は、TTP参加への日本のありうべき関心についての2国間協議を継続する。
これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税障壁に対処し、TPPの高い水準を満たすことについての作業を完了することを含め、解決する作業が残されている」
さらっと読むと素人には分かりにくいが、やさしく言えば次のようになことだ。
「コメなど農産物に特段の配慮してもらえるならTPPに参加したい、という日本の事情は日米でさらに話し合いましょう。でもそのための条件として米国が要求している自動車と保険の問題に決着がついていない。懸案となっている非関税障壁の問題も含め、外国企業が日本で自由な活動が出来るよう制度やルールを変える仕事がまだ残っています」
両国間には、まだ決着しない利害対立が残っていますよ、と書いてある。
それでも帰国した安倍首相は同盟関係を重視し、交渉参加へと舵を切った。反対の声が多かった自民党も「首相一任」。TTP交渉参加に弾みがついた。
アメリカの真の狙い
だが、聖域が残れば、問題はないのか。そうでないからTTPはややこしい。
政界・国会・メディアで取り上げられているTTP問題は、いつもコメに象徴される農業問題であり、防波堤となっている関税問題だ。反対するのは農協であり農林議員という構造で描かれる。
無策の農政、既得権にしがみつく農業団体や経営感覚のない農民。旧態依然たる産業が、構造改革に抵抗しているので日本の強みであるモノ作りの強みを世界で発揮できない――という分かりやすいストーリーで描かれている。
確かに農業には問題がある。TPPがあろうとなかろうと改善しなければいけない課題は山積している。
だがTTP問題のキモは農業に関係する関税でもなければ、関税に例外措置を設ければ打撃を回避できる問題でもない。
コメ問題は「敵は本能寺」なのである。
アメリカの真の狙いは非関税障壁と投資だ。
察するところ戦略的ターゲットは、医薬品認可基準の変更、保険ビジネスへの参入、とりわけ医療保険ビジネスを広げるため国民健康保険制度に風穴を空けること。そして遺伝子組み替え食品の表示を取り外し、日本で遺伝子組み替え種子のビジネスを展開することなどが予想される。
ここで「推察」とか「予想」とかの表現を使っているのは、交渉の実態が明らかにされていないからだ。
TPP交渉は秘密交渉で行われ、参加国でも交渉の全貌は明らかにされていない。
日米間で行われている事前協議でも、米国側から「日本車への輸入関税継続」が通告されながら、国民や国会に伏せられていた。
オバマ政権は、アジア市場に製品やサービスを売ることで輸出と雇用を増加させる、という分かりやすい政策を米国民に約束している。
米国の強い産業が自由に活躍できる制度的インフラを、市場たるアジアに広げる。それがTTPの狙いだ。
競争はあっていい。だが、自分たちの都合の悪い制度や仕組みを潰しに掛かるようなことがあるなら、受け入れることはできない。
それが「利害のぶつかり合い」だ。
国民健康保険制度が標的か
分かりやすいのが日本の国民健康保険だ。
日本国内では財政問題など難点が指摘されるが、世界水準で見れば「優れモノ」である。日本が長寿国になったのも国民健康保険があったからだ。
一方、民間の保険産業を見れば、米国の保険会社は圧倒的な力を持っている。いま米国の保険産業はアジアを目指す。日本でも急進している。
だが得意分野の医療保険が日本ではさっぱりだ。国民健康保険がほぼすべての国民をカバーしているので、入り込む余地がない。
国民健康保険が壊れれば民間保険を売ることができる。
英国ではサッチャー政権の時、それが起きた。
財政削減で国民健康保険でカバーできる医療が劣化し、きちんとした医療を受けるには民間の保険を買うしかなかった。
制度の崩壊は保険会社にとってビジネスチャンスだ。
米国の論理で言えば、財政が支援している国民健康保険は「民業圧迫」で、優れた保険商品を扱う米国の保険会社の活動を妨げる「非関税障壁」となる。
今は、日本国民が国保を支持しているので、そこまでの主張はしないが、国保が財政的に衰退すれば状況は変わる。
その原型が事前協議の「保険問題」にある。米国は政府が株主である日本郵政の子会社であるかんぽ生命が売るガン保険などを止めるよう求めている。
政府の信用で全国展開のビジネスをするのは「非関税障壁」だというのだ。この論法は、やがて国民健康保険でも使われるのではないか。
医療関係は米国が強い。薬品も同じだ。今の薬品価格は厚労省が低く抑えている。これでは儲からない。
これも非関税障壁になり、撤廃されれば薬価は上がり、国民健康保険の財政も危うくなる。
表示で差別するのは非関税障壁!?
注目したいのが「遺伝子組み替え食品」だ。
害虫に喰われない農産物を作るため遺伝子組み替えの種子が米国では一般化し、いまや穀物地帯の南米まで席巻している。
ムシが付かない防虫効果が人にどんな影響を与えるのか、まだはっきりしない。
日本では作付けは認められていないが、遺伝子組み替えの大豆を輸入して作った醤油やみそなどが売られている。こうした状況に消費者は敏感になり、「遺伝子組み替え食品は使っていません」と表示した商品に関心が高まっている。
米国はこの表示を問題にしている。「表示で差別するのは非関税障壁」というのだろうか。
背後には遺伝子組み替え種子で世界制覇を目指すモンサント社がある、とされる。この問題はいずれ改めて書く。
ワシントンで石を投げればロビイストに当たる、というほど米国議会は業界のロビー活動が盛んだ。
民主党も共和党も国会の議決に党議拘束はない。業界ビジネスがストレートに経済外交に反映し、米国の世界戦略と一体となって進んでいる。
それは米国のお国柄だが、他国が築き上げた制度や消費文化を破壊して攻め込むのは歓迎できない。開かれた貿易体制を目指すTTP交渉なら、国民に情報を開示して判断を仰ぐことが必要だろう。
メディアも、表で騒がれていることばかり追うのではなく、裏で秘密裏に進む重大事案を描き出す努力が必要だと、つくづく思う。
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