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もうすぐ北風が強くなる

北の衛星発射と中国の尖閣領空侵犯:田中

  北朝鮮の衛星発射と中国の尖閣領空侵犯 12/14 田中宇

 12月12日に北朝鮮が長距離ミサイル技術を使った人工衛星(北の政府によると気象衛星)の打ち上げに初めて成功し、翌13日には中国当局の飛行機が初めて尖閣諸島沖の領空を侵犯した。日本に脅威となる周辺諸国との対立的な出来事が立て続けに起きた。この2つの出来事は、どう関係しているのだろうか。 (North Korea Rocket Launch Is Propaganda Coup)

 2つの出来事のうち理解しやすいのは、北朝鮮の衛星発射の方だ。北朝鮮は今年4月、衛星打ち上げに失敗した。今回、昨年12月19日に死去した金正日の命日に際して打ち上げに再挑戦し、今度は地球を回る衛星軌道に乗った。前回の失敗を挽回するかたちで成功し、韓国も成し遂げていない衛星打ち上げを、まがりなりにも成功させたことで(衛星は制御不能といわれているものの軌道に乗った)金正恩政権の権威が発揚された。 (北朝鮮の人工衛星発射をめぐる考察) (North Korea rocket launch: 5 reasons it can be considered successful)

 冷戦終結直後の、北朝鮮経済が完全崩壊した時代の独裁者だった金正日は、自分の権力を守るため、軍に権力を渡す「先軍政治」の体制をとった。だが息子の金正恩は、折衝役の張成沢らと協力し、軍から権力を奪って労働党や内閣に権力を移すことで、実質的な経済の自由化と成長を実現する方向に進んでいる。北朝鮮政府は、表向きの発表として、経済を自由化していることを決して認めたがらず、社会主義経済を堅持していると発表し続けている。 (北朝鮮で考えた(2))

 だが北朝鮮は実質的に、農業の制度を、中国が80年代にやったような家族ごとの請負制度に似たものに転換する「6・28方針」や、軍の権力者だった李英鎬・参謀総長の7月の解任など、硬直的な先軍政治を脱し、中国風の経済改革の方に動き出している。北朝鮮の軍内には、この転換に不満を持つ向きも強いだろう。だが今回の衛星打ち上げの成功で金正恩の権威が強まり、先軍政治から経済優先への転換が安定的に進む可能性が高まった。 (◆経済自由化路線に戻る北朝鮮)

 対外的に見ると、今回の北の打ち上げは、12月16日の韓国大統領選挙にタイミングを合わせている。韓国大統領選挙は、中道右派の朴槿恵と、左派の文在寅との戦いで、終盤戦で文の追い上げが強くなっている。対北朝鮮政策は、両候補とも、今の李明博政権の強硬姿勢から転換し、北と対話を進めると表明している。北は、韓国が次の政権になって北の対話姿勢を強調し始める前に、ミサイルに使えるロケットを打ち上げることで、韓国を牽制する挙に出た。 (Stand firm against North Korea)

▼中国に頼るしかない米国

 核弾頭を搭載できるロケット打ち上げをおおむね成功させたことで、北朝鮮は今後、再び核実験を行う可能性がある。これまで北は、ロケット発射と核実験を交互に行っている。北は、弾頭としてロケットに乗せられるまで小型化できているかどうか不明なものの、核爆弾を持っている。北が米国まで届くロケットと弾頭を持つことで、今回初めて米国が北の核の脅威にさらされたことになるが、米オバマ政権の反応は低調だ。

 米国は、国連安保理で北を経済制裁する決議を出すつもりだというが、制裁強化に積極的な米国や日本は、すでに北との経済関係を断絶しており、日米欧が北を追加制裁してもほとんど効果がない。北の経済は中国との貿易に依存しているが、中国は北を制裁する気がない。 (Analysis: North Korea's weakness is its greatest strength)

 中国は、自国流のやり方で北との関係を維持したいと考えており、国連安保理などで米欧からの圧力で動かされたくない。中国は、北の打ち上げを「ミサイル」でなく「人工衛星発射」と認識している。中国は、以前の国連安保理決議が北のミサイル関連技術の開発を禁じているので、しかたなく北を批判する流れに乗っているが、中国の本意は「あらゆる国に人工衛星を発射する権利があるので、北には打ち上げの権利がある」というものだ。 (North Korea defies warnings in rocket launch success)

 中国は北を制裁するつもりがない。だが米国は、今回の北の発射への最大の反応として、中国に北を抑止することを求め、北を非難する国連安保理の決議文に厳しい言い回しを盛り込もうと主張し、中国から拒否されている。米政府は、実際に核兵器を開発している証拠がないイランに対して、今にも空爆を挙行しそうなことを言ってきたが、実際に核実験までやった北朝鮮に対しては腰の抜けた対応しかしない。米国は、北を制裁する気がないことが明白な中国に、北を制裁しろと上から目線で頼むばかりだ。 (US hesitant in condemning North Korean launch)

 ブッシュ政権時代の米国は、北を先制攻撃するといって強硬な姿勢を表明していた。だが結局、脅威を感じた北が核実験を実施しても、米国は、何ら軍事行動を起こさず、逆に外交面の解決方法である6カ国協議を中国に任せきりにして、北が中国の傘下に入っていくことを容認した。北が中国の属国になり(体面を重んじる北の人々は「属国でなく自立した『主体の国』だ」と強情に突っ張っているが)中朝関係が日米韓の思惑に関係なく安定してきた今になって、米国が国連安保理などで中国に、北を制裁しろと語気荒く言っても、事態は動かない。 (北朝鮮の中国属国化で転換する東アジア安保)

 今回の北の発射で、米国の「アジア重視」(中国包囲網。アジアでの覇権維持)の策が、たとえ米政府が本気で頑張っても、口だけ以上のものになれないことが示されている。そもそも、米国は本気で中国と対立する気などない。北がロケットを発射した日、米ワシントンDCの国防総省では、米中の将軍どうしによる定例的な軍事対話の会合が開かれていた。中国が米国の言うことを聞かなくても、米国が中国との対話をやめることはない。 (North Koreans celebrate rocket launch as UN Security Council and China condemn move after emergency meeting)

 北朝鮮の核ミサイル開発を、米国主導で抑止することは不可能になっている。北への手綱を握る中国は、北のロケット開発を容認しても、北の核兵器開発には、より厳しい態度をとるだろう。北の軍事抑止力の強化を黙認すると、中国の言うことも聞かなくなる。中国主導で北の核兵器開発を止めるための国際的な機構として、以前から存在するものの頓挫している6カ国協議がある。今後はちょうど、韓国で北と対話しようとする新政権ができるので、中国は韓国と協調し、6カ国協議を再開しようとするだろう。 (転換前夜の東アジア)

 6カ国協議については昨年春の米中協議で(1)米朝が和解交渉を開始する(2)南北が和解交渉を開始する(3)6カ国協議を再開する、という流れが定められたが、韓国の李明博政権が北と対話できないままで、米朝交渉も和解が試みられたがそれ以上進まないままになっている。だが来年から韓国が新政権になって南北対話が始まると、米国も2期目のオバマが北との対話を再び試み、6カ国協議が再開され、北の核廃棄(ふりだけかもしれないが)と引き替えに、朝鮮半島の緊張緩和が進む可能性が強まる。そうでなくて、来年も何も進まない状況が続くかもしれないが、いずれ起きる展開は上記のようなものだろう。 (米中協調で朝鮮半島和平の試み再び)

 6カ国協議が進むと、日本にも国際圧力がかかり、日本政府が拉致問題の「解決」を認めざるを得ない事態になるだろう。北朝鮮が再調査して出した何らかの結論を日本が受け入れ、問題が解決したと日朝間で合意し、日朝和解の道筋に入ることになる。安倍晋三氏は、拉致問題で北朝鮮を絶対許さない態度を採りたい(それによって北を脅威とする対米従属の国是を守りたい)だろうが、国際圧力を受け、希望と逆の動きになるかもしれない。日本は国際圧力を拒否することもできるが、その場合は孤立が待っている。孤立して貧乏になってもかまわず姿勢を貫くと若手の国民(日本が落ちぶれる前に墓場に逃げ切る高齢者でなく、若者たち)の大多数が決意しているなら、それでもよい。 (北朝鮮6カ国合意と拉致問題)

▼中国の尖閣領空侵犯の意味

 北のロケット発射に対する米国の反応が弱く、日本は、安全保障の唯一の後ろ盾である米国に頼れない感じが強まっている。その状況を見越したかのように、北の発射の翌日の12月13日、中国当局のプロペラ機が初めて尖閣諸島の領空内に侵入した。この件は、北の発射との関連でとらえることもできるが、そうでなくて、12月16日の日本の総選挙を見越した動きと考えることもできる。

 選挙によって自民党の安倍政権ができるだろうが、安倍は尖閣諸島に、港湾など公的な建造物を作り、政府要員を常駐させると公約している。中国はこれまで、日本が尖閣諸島に公的建造物を造らず、政府要員を常駐させないことを暗黙の条件に、日本の尖閣諸島の実効支配を黙認してきた。安倍新政権の日本が尖閣諸島に政府の建造物と要員を配置することは、尖閣問題で中国に対して一線を越えて見せ、中国との敵対を強めて、それをテコに日米同盟(対米従属)を強化する意図があると考えられる。 (尖閣で中国と対立するのは愚策)

 このような日本の流れに対し、中国は、初めて当局の飛行機で尖閣を領空侵犯することで、日本側に「安倍新政権が尖閣で一線を超えるなら、中国も一線を越えて尖閣を軍事的に奪取する姿勢をとる」との信号を送った。安倍は新政権を樹立後、尖閣をめぐる公約を果たそうとするだろうから、中国側も当局の飛行機を頻繁に領空侵犯させるだろう。領空侵犯は常態化する。いずれは戦闘機までやってくるかもしれない。 (China flies aircraft over disputed islands)

 中国は、尖閣で日本と一戦交え、尖閣を日本から「奪還」することで、日清戦争以来の日本の対中優位を逆転し、中国がアジアの覇権国である国際新秩序の象徴としたいのだろう。以前に書いたように、中国は1970年代に米国が対中敵視から宥和に転じたことを利用して、ベトナムから西沙諸島(パラセル)を軍事的に奪い、中国の言うことを聞かないベトナムに対して軍事的優位を見せつける挙に出ている。 (中国は日本と戦争する気かも)

 北のロケット発射に対する米国の反応が弱く、米国がアジアでの中国の台頭に対して口だけしか動かせない今の状況の中、中国が、尖閣を日本から奪うという象徴的な挙に出ようとしていても不思議でない。安倍は、米連銀の自滅的なドル過剰発行に合わせて、円の過剰発行を加速しようと日銀に圧力をかけており、経済的にも米国と無理心中する姿勢だ。安倍は、テレビ広告で「日本を取り戻す」と語気強く言っているが、実際は逆で、「日本を失う」指導者になる可能性の方が大きい。

 尖閣諸島での日中戦争を防ぐには、日中が交渉し、日本側が尖閣に政府の建物や要員を配置するのをやめる代わりに、中国側が以前のように日本の尖閣の実効支配を黙認する状態に戻せばよい。中国の国際台頭と、米国の覇権衰退は、長期的にみると確定的だ。日本は、米国の覇権に依存して中国と対立する今の戦略を続けられなくなる。米国の後ろ盾がない状態で、日本が中国と長期対立すべきだと考える人は無鉄砲だ。私は無鉄砲さを否定するものでないが、かなりの覚悟と、国際的な深い分析力が必要だ。今の日本人にその覚悟と能力があるとは思えない。

 日本が中国と対立し続けるなら、米国抜きの対中包囲網の構築を考えねばならないが、オーストラリアの戦略の専門家は「最近、日本がわが国(豪州)と安保協定を結びたがっているが、日本の意図は、日本が中国と戦争するときに豪州を自国の側に立たせたいということであり、豪州を危険にさらす協定だ。日本との安保協定に乗らない方がよい」と主張している。 (Right now, we don't need an alliance with Japan)

日本が中国と対立し続けると、北朝鮮並みの孤立した国になる。そのころには逆に北朝鮮(統一朝鮮?)が、東アジア共同体の重要なメンバーになっているかもしれない。
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国民の選択肢、富の再配分

 長らく米国に暮らしていて日本の選挙を見ていると、日本国内では気づかないことに気づくようだ。
 中には少しは異なる見解もあるが、概ね新たな示唆に富むことが多い。
 消費税と付加価値税の相違もそのたぐいであるが、大きな国家、小さな国家の問題もそうだ。

 選挙は終わったが、「再配分」がほとんど為されていない国と、再配分が国家の責任として確立している国の差は激しい。
 と同時にその再配分の仕組みも各国で異なるので、日本国内だけに注目していると欧米との比較でマスコミに騙されてしまうのだ。
  ーーーーーーーーーーーーーーーーー
   国民の選択肢   11/26 「CTBNL」から

 まだハーバード系の研究施設で勤め人をしていた時代、直属の上司が、「どうだ、羨ましいだろう」と、折に触れて私にひけらかす自慢が二つあった。

 一つ目は、「自分はニューヨーク育ちで、子供時代に、エベッツ・フィールド(ブルックリン・ドジャース)と、ポロ・スタジアム(ニューヨーク・ジャイアンツ)と、改修前の(旧)ヤンキースタジアムで試合を見た」というものだった。私が大の野球ファンであることを知った上で、こちらが悔しがることを見越して羨ましがらせたのである。

 「俺だって東京育ちで、子供時代に、東京スタジアム(大毎オリオンズ)と、後楽園球場(読売ジャイアンツ、国鉄スワローズ、東映フライヤーズ)と、旧神宮球場(フライヤーズ、スワローズ)で試合を見た」と言い返すこともできたのだが、敵は、オリオンズやフライヤーズやスワローズなど聞いたことがあるはずもなく、悔しがらせることができない以上、だまって相手の自慢を受け入れる以外になかった。

 上司の二つ目の自慢は、「成人となって初めて選挙権を行使した時、ジョン・F・ケネディに投票した」というものだった。在日として生を受け、人生で選挙権を行使した経験がなかった私としては、もとより言い返す材料など持ち合わせていなかったのだが、「誰々に投票したことがある」と、自分が支持した政治家を自慢できる人が日本にどれだけいるだろうか?

 日米とも、政治に多々問題があるのは共通であるものの、こと「政治家の質」を比較した場合、その差は歴然としている。リベラルと保守とを問わず、国民から今でも敬愛されている歴代大統領(フランクリン・ルーズベルト、JFK、ロナルド・レーガン、etc)は枚挙に暇がないし、議員レベルでも、エドワード・ケネディとか、ティップ・オニールとか、名政治家が次々と輩出してきた。

 それに引き替え、日本では、「敬愛の念を持って振り返ることができる政治家」を考えた時、私には、市川房枝の名前くらいしか思いつかない。特に、最近は、「有権者が尊敬することのできる政治家」は絶滅危惧種となってしまった感がある(あるいは、もう、すでに絶滅してしまったのかもしれない)し、そもそも、政治のトップであるはずの首相にしてからが、メディアや国民から嘲りや冷笑の対象とされることが「例外」ではなく「ノーム」となってしまった。

 実は、いま、日本にいて、今回の選挙騒動を見ているのだが、政党は多数乱立しているものの、国民に本当の選択肢が与えられているようにはとても思えない。

 米国の場合、単純化しすぎることを恐れずに言えば、「世の中は市場原理に委ねておけば『見えざる手』が働いて自動的に良い方向に収まる。政府はよけいなことをしない方が良いし、社会保障も抑制すべし」とする保守の立場を取るか、
 「市場原理に任せたままでは不平等が拡大するだけであり、富の再分配を推進したり、社会保障を整備したり、政府がすべきことはたくさんある」とするリベラルの立場を取るかの選択が、大統領選の度に国民に迫られることとなる。
 どちらが勝つかによって、政治が大きく変わり得るのである(保守とリベラルの選択が政治の基軸となっているのは西欧諸国でも変わらない)。

 それに引き替え、日本では、「政権交代」とはいっても、保守同士の間の交代でしかなく、政治が大きく変わることはあり得ない。今回の選挙の結果、どのような組み合わせの政権が誕生するにせよ、「右寄り」の度合いに多少の変化が生じたとしても「保守政治」が継続されることに代わりはない。

 20年以上米国に暮らして、「保守かリベラルか」という対立軸が政治の選択の基本となっていることを、まざまざと見せつけられてきた私からすると、「リベラルの政治」という選択肢がないところで選挙をしている日本の現状は、「有権者に本当の選択肢が与えられていない」としか見えないのである。

   国民の選択肢(続き)

 前回のコラムに対して、「日本は大きな政府だ」と信じ込んでいる読者から反論をいただいた。しかし、財務省がまとめたデータによると、日本の国民負担率(国民所得に対する租税及び社会保険料の比率)は38.3%(2009年)でOECD加盟32ヶ国中下から6番目。
 「小さな政府の代表」といってよい国なのに「大きな政府」と信じ込まされている人がいるのだから、嘆かわしい限りである。

 ちなみに、OECDで国民負担率が日本を下回る国は、メキシコ、チリ、米国、韓国、スイスの5ヶ国。一方、国民負担率が5割(6割)を超える国は16ヶ国(8ヶ国)を占め、最高はルクセンブルクの79.2%となっている。

 「国民負担率が7割」と聞くと、日本の人は、「給料から税や社会保険料を7割天引きされた後、手元には3割しか残らない」と勘違いしがちだが、実際には、天引きされた後平均的勤労者の手元に残る給料(可処分所得)の割合は、大きな政府の国でも小さな政府の国でも「7ー8割」と変わらない。
 大きな政府で国家を運営している国では「富の再配分」に力を入れ、「持っている所、取れる所からたくさん取る」という原則を徹底しているからに他ならない。

 一方、小さな政府の国では富の再分配が進まず、貧富の格差が拡大する
 OECD加盟国で貧困度・貧困率の高い国は国民負担率の小さい国に集中するのだが、たとえば「所得が中央値の半分に満たない国民の割合」で見た時、日本は15.7%で下から6番目。
 メキシコの21.7%や米国の17.3%よりはましであるものの、デンマーク(6.1%)やオランダ(7.2%)やスウェーデン(8.4%)と比べるとはるかに見劣りする(前回の選挙で格差是正や派遣労働の禁止が争点となったのと違い、今回は全く争点となっていない。
 問題は何も解決されていないというのに、誰も格差や派遣の問題を語らなくなったのはなぜなのだろうか?

 小さな政府でずっと国を運営してきたのだから、日本も米国も、社会保障が手薄となってきたのは仕方ないのだが、不思議なことに、日米とも、「自分の国は大きな政府であり、社会保障に金をかけすぎている」と信じる国民は多い

 たとえば、オバマに敗れた共和党ミット・ロムニー候補が「47%の国民が自助努力をせず、社会保障に寄生して生きている」と支持者の集まりで演説したことが暴露されて物議を醸したことがあったが、大統領候補が「47%の国民は怠け者」とする「歪んだ」社会観を持つほど、米保守派の「大きな政府・社会保障嫌い」は根深いのである。

 さらに、「日本は社会保障に金をかけすぎてきた」とする誤解の延長線上で、「医療にも金を使いすぎてきた」と誤解する人が多いのだが、
 実は、日本の医療費支出は、ずっとOECD平均を下回ってきた。
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 さらに先進国では「高齢化率が上昇するほど医療費支出も増大する」という法則が成立する(高齢者は有病率が高いのだから極めて当然のことである)のだが、日本の場合、その著しく高い高齢化率を考えた時、医療費支出はとりわけ低く抑えられてきたのである。

 ずっと医療費を厳しく抑制してきたにもかかわらず、日本では、「医療の公的負担は限界に達した。これからは公を減らして民を増やす」として、医療の仕組みを米国型に変えようと主張する人が跡を絶たないのだが、民で医療を運営する米国では、高齢化率が上昇しないまま(国民が長生きできないまま)医療費が天井を向いて増え続けてきたことがおわかりいただけるだろうか?

 しかも、非常に皮肉なことに、民で医療を運営しているはずの米国の方が医療費の公的負担ははるかに手厚く、米国が医療に支出している税金の額は国民一人当たり3,266ドルで、日本の950ドルの3倍を超えている(数字は2006年、米保健省調べ)。
 日本の2006年の国民一人当たり医療費は2,581ドルであったから、米国が医療に使っている税金を日本に持ってくると、「医療費をすべて支払っておつりが出てくる」ほど、医療にふんだんに公費を支出しているのである。

 ちなみに、米連邦政府の予算に占める医療費の割合が25%であるのに対して、日本の一般会計予算に占める医療費の割合はわずか10%。同じ小さな政府の米国と比較しても、日本の公的負担は著しく低く抑えられてきたのである。

 以上、医療を例として日本の社会保障の「手薄さ」を見てきたが、今回の選挙では、「社会保障をいかにして向上・増進させるか」ではなく、「いかに抑制するか」が争点だというから呆れざるを得ない。たとえば、11月26日付の読売新聞社説は、「社会保障給付の抑制策を提示することは、政治の責任である」として、各党に抑制の具体策を明示することを求めていた。

 読売は、「社会保障抑制」を、あたかも自明の公理であるかのように扱うことで国民から「社会保障の向上・増進」という選択肢を奪ってしまっているのだが、社説を書いた論説員には、いま一度、以下の文言を読み直してもらいたいものである。

 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(日本国憲法第25条第2項)
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ワクチンが起こす脳神経障害

 季節になるとマスコミは毎年必ず「今年は大流行」と騒ぎ出すので、職場でもほとんどの人たちはワクチン接種をしているように思っていました。
 それで十人ほどに聞いてみたことがあります。なんと7割くらいの人は私と同じで「インフルエンザと診断されたことはない」とのことでした。
 ワクチン接種をした人とこれからするつもりの人は合わせて5人。インフルエンザの診断を既に受けた人が1人。
 「ほとんどの人たち」ではありませんでした。

 ほとんどの人がワクチン接種をしていると思っていたのは、要は、ワクチン接種をする人は何となく話す、ワクチン接種をしないつもりの人は別段そんなことを話さない。といったことの結果なのでしょう・
 統計とも言えないいい加減な聞き取りですが、7割の人はインフルエンザと無縁、そのうち7分の2の人はマスコミが煽るので、影響されてワクチン接種をする。
 「インフルエンザ」は1割?

 私自身、生まれてこの方「インフルエンザ」と診断されたことは一度もありません。

 そろそろシーズンですので、この「ワクチン問題」も紹介しておきます。
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   「いかなるワクチンも(脳)神経学的障害を起こす」 12/15 佐藤内科循環器科医院
Every single vaccine causes neurological damage.

YouTube のワクチンに関する番組を見て(聴いて)いて、
Every single vaccine causes neurological damage.
というフレーズが印象に残った。
このフレーズは、ワクチン接種しないことを掲げて小児科診療を実践している、メイヤー・アイゼンスティン医師へのインタビューの、アレックス・ジョーンズの番組のなかに2回出てきた。

ワクチンには何が入っているの?(1/6)
ワクチンには何が入っているの?(2/6)

そのフレーズは メンデルソン医師 Dr. Mendelsohn の1970年代の言葉と言っていた。

Mendelsohn医師をしらべると、草思社刊、弓場 隆訳:「医師が患者をだますとき」の著者の Robert S. Mendelsohn 医師(小児科)とわかった。
 医者が騙す
原題は 「Confessions of a Medical Heretic(ある異端医師の告白)」。
262頁に「私の教え子のメイヤー・アイゼンスティン医師」とある。

230頁以降のワクチン接種に関するところを紹介する。(草思社より許可が取れたら、読みやすいようにPDF化する予定。)乳がん検診のところも興味深いので前半を紹介する。

 予防接種に警戒せよ

医学界と国が手を携えて推進する「予防措置」の大半は、危険であることと無意味であることの二点において、数ある現代医学教の儀式のなかでも比類のないものである。伝染病のワクチン接種、いわゆる予防接種がその典型で、接種を受けた方が危険だということがあるのだ。

ジフテリアはかつては恐ろしい病気だった。命を落とす者さえいたが、いまでは殆ど発生していない。それにもかかわらず、予防接種はいまだに続けられている。まれに、大流行することもあるが、予防接種の効果を考えると疑問が残る。

以前、シカゴで大流行して16人の犠牲者が出たことがあった。シカゴ公衆衛生局によると、このときのケースでは、16人のうち4人がジフテリアの予防接種を受けており、その4人には完全な免疫ができていたという。
また、このほかに5人の人間が数回にわたって予防接種を受けていて、検査の結果では、5人のうち2人には免疫ができていたことが確認されている。
3人の死者を出した別のケースでは,死亡した人のうちの1人、また23人の保菌者のうちの14人に免疫が備わっていたことが報告されている。

百日咳ワクチンの是非については、世界中で激しい議論が起きている。
接種を受けた子供たちの半数にしか有効性が認められていないにもかかわらず、高熱、けいれん、ひきつけ、脳症(高熱のために起こる意識障害)などの副作用を起こす確率は無視できないほど高い
各地区の公衆衛生局は、6歳以上の子供に百日咳ワクチンの接種を禁止しているが、百日咳も今日ではほとんど見られなくなった伝染病である。

おたふくかぜワクチン(ムンプスワクチン)にも疑問が残る。
このワクチンを接種すれば、確かに流行性耳下腺炎の発症率を抑えることが出来るが、免疫が消えてしまえば元の木阿弥である。
流行性耳下腺炎や麻疹、風疹には1970年代後半にそれぞれワクチンが開発されたが、こうした病気では、天然痘や破傷風、ジフテリアのような重い症状は現れない。

麻疹にかかると失明すると信じられているが、実際にはそんなことは起こらない。
「羞明」という症状は単に光に対する感受性が強いだけのことだから、窓にブラインドをするという昔ながらの処置が効果的だ。
麻疹ワクチンは、麻疹脳炎という発症率1000分の1と言われる伝染病を予防するためのもので、麻疹を何十年も治療した経験のある医者なら、この伝染病は普通の子供で1万分の1か10万分の1くらいの発症率でしかないことくらいは知っているはずだ。

しかし、ワクチンには、100万分の1の確率で脳症、さらにそれより高い確率で、運動失調症(手足の筋肉の異常)、知的障害、精神薄弱、精神遅滞、注意欠陥、多動性障害(ADHD)、情緒不安定、無菌性髄膜炎、てんかん、ひきつけ、半身不随のような致命症となりかねない神経性障害などの副作用を引き起こすことがあるのだ。

風疹ワクチンも依然として議論の対象である。接種年齢が専門家の間でも一致していないのだ。また、このワクチンには一時的とはいえ、数ヶ月にわたる関節炎を引き起こす危険がある。
アメリカでは、子供に接種されることの多い風疹ワクチンだが、風疹と診断された妊婦の場合、接種を受けると肢体不自由児が生まれるおそれがある
その確率は年次と研究によってばらつきがあるものの、胎児の保護という点を考えると、その有効性についてはさらに議論を重ねる必要がある。

 集団接種はひとつのバクチ

ところで、伝染病は予防接種したから免れるというものではない。
栄養状態、家庭環境、衛生状態も大きな要因としてかかわっているからだ。
百日咳ワクチンが本当に百日咳の発症を抑えたかどうかは、いまもって謎のままである。
もし、現時点このワクチンが導入されるということになれば、食品医薬品局の基準に合格するかどうかは疑問だ。

時にはワクチンが原因で伝染病になってしまうことがある。
1977年9月、ソークワクチン(ホルマリン不活化ポリオワクチン)の開発者であるジョナス・ソーク博士は議会で次のように指摘している。「1970年代初めにアメリカで発生したポリオ(流行性脊髄麻痺、小児麻痺)のほとんどは、この国で使用されている生ポリオワクチンの副作用である可能性が高い

アメリカでは生ワクチンが使われたが、フィンランドとスェーデンのように死菌ワクチンを接種している国では、ポリオの発症は全く報告されていないのである。
ポリオ撲滅の功労者と言われるソーク博士自身が、いまだに犠牲者を出しているポリオの原因がそのワクチンにあると認めているのだ。
ポリオワクチンの意義について、改めて考え直す時期に来ているのではないだろうか。

現代医学のドタバタ劇は、毎年恒例のインフルエンザの予防接種に極まる。
この予防接種について考えるとき、私はある結婚式のことを決まって思い出す。
その結婚式の式場には、新郎新婦の祖父母とおぼしき人や60歳を超える年配の人が一人も見当たらなかった。
不思議に思って近くにいた人にたずねると、その年齢の人たちは、2、3日前に受けたインフルエンザの予防接種で体調を崩し、「ただいま全員が自宅で療養しています」とのことだった。

インフルエンザ集団接種とは、ワクチン株とその年の流行株が一致するかどうかを賭ける壮大なルーレットのようなものである。
予防接種でいくら免疫ができいても、ワクチンと同じ株のインフルエンザが流行するとは誰にも予測がつかない。

1976年のブタ・インフルエンザ(豚のインフルエンザウイルスによるきわめて伝染性の強いインフルエンザ)の大流行は、予防接種の本当の怖さをのぞかせたものだった。
政府とマスコミが徹底的に追跡調査をした結果、ワクチンが原因で、ギラン・バレー症候群(両足の麻痺や疼痛、知覚異常、呼吸困難などを引き起こす急性多発性神経炎)が565件も発生して、予防接種を受けてから数時間以内に30人の高齢者が「説明不可能な死」を遂げていたことが判明した。
インフルエンザの集団接種のキャンペーンに、世間がいつも鋭い監視の目を光らせていたら、この種の悲劇はいくらでも指摘することができたのではないだろうか。
国立アレルギー・感染症研究所のジョン・シール博士はこう述べる。
すべてのインフルエンザワクチンにギラン・バレー症候群を引き起こす危険性があると想定しなければならない」

 乳がんの集団検診の危険

乱診乱療の犠牲者は子供と高齢者だけにとどまらない。女性はここでも餌食にされている。
その典型的が乳がんの集団検診である。この検診がどんな役にたつのか、それを示す根拠など実はどこにもありはしないのだ。
しかし、医学界が乳がんの予防措置を盛んにアピールして世間に知らしめた結果、『不思議の国のアリス』さながらの珍事が現実に起きている。

「乳がんや卵巣がんなどの女性特有のがんは家系によっては多発するおそれがある。そこで、予防措置として、乳房をあらかじめ切除しておくか、卵巣を摘出しておく必要がある」
こんなスローガンをいったいどう受け止めたらいいのだろう。
この手の予防措置としての手術のもうひとつの例が、成人女性を対象にして行われている膣の摘出手術である。
この手術は、1970年代にがん予防を理由に始まった。狙われているのは、妊娠中にDES処置を受けた女性を母親のもつ、まだがんになどなっていない女性たちである。

女性は医者と話すときには気を許してはならない。
女性の命を守ることを口実に、医者は何を切り取るかわかったものではないからだ。
もちろん、男性はこんな口実におびえる必要はないだろう。男性の命を守るために「男根切除術」を行おうとは、さすがの医者も考えてはいまい。
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もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

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