ヨーロッパ・ゼネストに一千万人、緊縮政策に鉄槌!
2012-11-17

金融緩和と緊縮財政策の組み合わせを進めることが、過剰蓄積と勤労大衆の窮乏化を生み出し、恐慌に至ることは、このブログでも一貫して主張してきたところです。
ペーパーマネー債務のツケは、労働者階級にはなんの責任もない。
各国労働者は自国の1%の大金持ちや、欧州の1%などに騙され分断されることなく、欧州連帯行動を積み重ねてゆくだろう。
「緊縮政策に抗議、欧州連帯ゼネスト」
ポルトガルの労働組合が呼びかけた、歴史上初の欧州連帯ゼネストは大きな一歩を踏み出したようだ。
金融資本支援の結果の財政難を、緊縮政策で勤労者にツケ回しなど許してはならない。
レイバーネットの詳報。
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ヨーロッパ・ゼネストに1千万人が参加...「緊縮は失敗した」 11/16 レイバーネットから
ヨーロッパ23か国、40労総がデモ...ストライキの熱気は南欧に限定
4年ほど続くヨーロッパの経済危機と苛酷な緊縮措置に対し、ヨーロッパ民衆の 闘争が一里塚を作った。
ヨーロッパ各国の労働者は今、国境を越えて共に戦い 始めた。数百の都市で数百万の労働者がストライキを行い、共に通りに出た。
スペイン労総によれば、スペインだけで全国の800万人がストライキとデモ行動 を行った。
ポルトガル、イタリアとベルギー、そしてギリシャの労働組合は ゼネストに突入した。
11月14日(現地時間)、ヨーロッパ連合と政府の反社会的な削減政策に反対する ストライキとデモ行動にはヨーロッパ23か国、40労総から数百万人が参加した。
ヨーロッパ労働組合総連盟(ETUC)は「緊縮政策反対、雇用と連帯のための全ヨーロッパ行動と連帯の日」のデモが、ヨーロッパの労働組合運動の歴史的な瞬間だと語った。
この日の行動は、ポルトガル労総がヨーロッパゼネストを提案 したことで始まった。
ヨーロッパ労総のベルナデッテ・セゴール(Bernadette Segol)書記局長は、「緊縮政策は失敗した。それは景気低迷と失業を誘発する」と言う。
彼はまた 「南欧は社会的な非常事態で、誰もが緊縮は公正ではないと認めている」とし 「緊縮は失敗した」と強調した。
ギリシャ、イタリア、スペインの失業率は 25%を越えた。ユーロゾーンでは8人に1人が雇用がない。
この日、スペイン、ポルトガル、イタリアで大衆的なデモが行われ、大群衆が ヨーロッパ政府の緊縮に共同で対抗し、怒りを吐き出した。
フランスでも数万人が緊縮政策に反対して通りを埋めた。
しかしこれ以外のドイツと北欧の連帯は 期待に達しなかった。北欧の多くの地域でデモが発議されたが、大衆的な動きは作られなかった。
ドイツのベルリンでは千人、ヨーロッパ中央銀行の本社が あるフランクフルトでは約100人がデモに参加した。ギリシャのストライキの 規模はむしろ弱まった。
ポルトガル:貧困を止めろ、史上最大のゼネスト
「ストライキ! 私たちのために、あなたのために!」というスローガンの下で、 ポルトガルでは史上最大の全国的なゼネストが行われた。ポルトガルで最大の ナショナルセンターである労働者総連盟(CGTP)と共に、数十の独立労働組合、 親社会主義系労働組合のUGTも共にストライキを行った。

バス、鉄道、タクシーなどの大衆交通は完全に止まり、大都市では清掃労働者 のストライキでゴミの輸送が全面的に中断した。病院も応急治療しか行わなかっ た。ポルトガル法院公務員の80%がストライキに参加した。非常事態以外の地方 の電力会社の業務も中断した。
ポルトガルの多くの地域で大衆集会が行われ、リスボン議会前のデモはさらに激しかった。

発煙筒を燃やすリスボンのたいまつデモ。
議会前のデモは当初、数千人の参加で平和に行われたが、警察の制止で衝突が 起きた。
物理力の使用を拒否しない青年グループは、阻止線を突破してデモを 行い、警察は彼らを解散させるために警察犬を投入する一方、盾と棒で鎮圧し た。
デモ隊は警察に対抗して石、火炎瓶、爆薬と染料の袋を投げた。警察は、 デモ隊を解散させるためにゴム弾を撃ったと伝えられた。
この日、通りでは、 あちこちで放火が相次ぎ、雰囲気は完全に加熱したと外信は報道した。
リスボン の狭い路地でも散発的な衝突が起きた。警察と対峙している時、最低5人が 連行され、数十人が負傷した。
CGTPのアルメニオ・カルロス(Armenio Carlos)書記局長は、今回の全国ゼネスト について「経済と労働破壊、貧困と不平等の深化に反対する政治的ストライキ」 と定義した。
危機が始まってから、ポルトガルの失業率は2倍以上増加し、15.8%を 記録している。
しかしポルトガル政府はこの日のストライキについて、ストライキは政府を 混乱させていないと明らかにする一方、仕事を続けた労働者を賞賛した(つまり、スト破りを讃えた)。
多くのポルトガルの人々は、大衆交通が麻痺したため家に留まった。民間部門 の労働者は非常に遅くデモに参加した。
スペイン:警察暴力... デモ隊との対峙激化
11月14日のストライキでスペインも止まった。この日のストライキは、今年で 二回目の全国的なゼネストだった。
政府はストライキ参加者は少ないと発表し たが、スペイン労総はマドリードとバルセロナだけで2百万、全国で9百万以上 がストライキとデモに参加し、労働者のストライキ参加率は77%に達すると発表 した。
午前中は早くから全国の主要都市の工場進入路が封鎖された。企業連合 のCEOEは、この日の経済活動は12%萎縮したと明らかにした。
金属労働部門は高い参加率を示し、一部地域の自動車生産工場では、ほとんど すべての労働者がストライキに参加した。
公共運輸はほぼ麻痺し、病院は応急 処置しか行わなかった。多くの航空便がキャンセルされ、学校、工場、会社と 商店も扉を閉めた。
マドリードとバルセロナでも激しい衝突が起きた。マドリードでは、議会に近 い広場に約千人が集まり、警察はこん棒で彼らを解散させようとした。デモ隊 は、石と火炎瓶を投げた。
バルセロナではデモ隊はバリケードを作り火を付け、 警察の車も焼かれた。
街頭に出た彼らは、やはり住宅強制退去反対を叫んだ。ムルシアで強制退去させ られようとしている、ある市民は、銀行の前でデモを行い、警察の暴力で負傷した。

11/14スペイン主要都市での集会[出処:Marcha Bruselas(ブリュッセル デモ行進)FaceBook]
マドリード、バルセロナ、カタロニア、タラゴナなどでは、警察は解散の名目 でデモ隊をひどく殴打した。スペイン全域で最低120人が連行され、74人が対峙 している時に重傷を負った。
バレンシアとタラゴナでは、警察は午前からデモ 隊を暴力的に鎮圧し、そのために10歳の子供が頭に大怪我をした。
マドリード議会前を占拠していたデモ隊の中で、潜入していた偽装警察が暴露 された。警察が彼を制圧し殴打しようとしたところ、「私は同僚だ」と叫び、 近くにいた別の私服偽装警察も、制圧された彼を保護したため正体がばれた。
スペイン日刊紙のエルファイスに この日の多様なデモの様子が載っている。
イタリア:中高生と大学生が無償教育を求め貿易港入口、鉄道、交差点を封鎖
イタリアでも労働組合の活動家、失業者、大学生が殺人的な緊縮に反対して 大衆的な群衆デモを展開した。
数万人がイタリアのすべての大都市の道路を 埋めた。
最大の労働組合であるCGILは、4時間ゼネストを行った。学校と官公庁も 門を閉めた。

最大規模のデモはローマで起きた。マスコミは、ローマでゲリラ戦のようなデモ が行われたと報道した。
中高生と大学生は石、空き瓶、火炎瓶を警察に投げた。 ピサでは大学生が大学総長室を占拠した。
ミラノ、フローレンス、トリノでも デモが起きた。警察はデモ隊に催涙ガスを噴射して解散させようとした。
外信は ミラノは事実上麻痺し、中高生が交差点を封鎖したと伝えた。
イタリアではまた、学生が鉄道を占拠し、貿易港入口を封鎖した。トリノでは、 警察が学生を野球バットで攻撃した。
ボローニャでは1万人がデモ行進を行った。 銀行のガラス窓には「お前らは私たちの借金で金を稼いでいる」と書かれた。
モンティ総理は在任1周年の二日前にも、強い抵抗に直面した。
数万の中高生、 大学生と失業者、そして左派政党の支持者が中心部の広場に集まり、反政府デモ を行った。
ギリシャ:連帯強化
ギリシャでは昼食時間に約3時間のストライキと共に、多様な都市で集会とデモ が行われた。
共産主義的労働戦線(PAME)は、今回は特に集会を開かず、各地のデモに連帯し た。「闘争の経験と反労働者的な緊縮措置に反対する闘争の強化を討論できる ように」連帯しようとPAMEは明らかにした。
左派連盟シリザに近い「アブトノミ・パレムバシ(Avtonomi Paremvasi、自律的 介入)は、今回のデモの連帯の意味を強調しつつ、ギリシャのゼネストはヨーロッパ 行動の日にふさわしい政治的な重さを持たなかった」と批判した。また「3時間 に短縮された今回のストライキは、主要ナショナルセンターの指導部は、高まる 社会的闘争の価値を認識するための政策的、組織的な準備の不足を示す」と指摘した。
ベルギー:「他のヨーロッパのために闘おう」
ヨーロッパ連合とヨーロッパ委員会があるベルギーでは、ブリュッセルでの ヨーロッパ労総とベルギー労総の連帯、南部地域ストライキを中心としてデモが 起きた。
約2千人がブリュッセルのデモ行進に参加した。彼らはヨーロッパ委員会本庁から ヨーロッパ議会へとデモ行進した。
警察がヨーロッパ議会への進入を阻止したため、 デモ隊はベルギー財政部に集まりデモを行った。人々は建物に染料の袋を投げ、 塀に「奴隷部署」と書いた。
南部のワロン地方では、鉄道のストライキと共にほとんどの公共運輸労働者が 仕事を中断した。
鉄道労働者は13日の夜から24時間ストライキを始めた。
大都市 では数千人がデモに参加した。デモ隊はドイツ大使館に卵を投げた。商店と 学校は平常通り開かれた。
フランス:「われわれはギリシャ人だ」
フランスでは約5千人がパリでデモ行進を行った。雇用、ヨーロッパ連帯、緊縮 反対などのシュプレヒコールをあげた。
「われわれは諦めない」、「緊縮は健康 を害する」とし、さらに強い連帯のための呼び掛けが続いた。
デモ隊は「我々は すべてギリシャ人であり、ポルトガル人で、イタリア、スペイン人だ。他の ヨーロッパのために闘おう」と書かれた横断幕を持った。
パリのデモにはフランス左翼党(Parti de gauche)、共産党(PCF)、反資本主義 新党(NPA)と労働組合CGTが参加した。
CGTのベルナール・ティボー(Bernard Thibault)議長は「すべてのヨーロッパ、すべての国家の労働組合が、同じ日に ヨーロッパ緊縮政策に対する闘いを成功させた」とし「これはヨーロッパ政府 に対する強い信号だ」と語った。
彼はまた「われわれは社会的なヨーロッパを 要求する」と強調した。
デモ隊は特に、先週のフランス政府による企業に対する200億ユーロ以上の減税 措置を批判した。
この日のデモはフランスのオランド政権が構成されてから初めてのCGTとCFDTなど 主要労働組合のデモと評価されている。
労働組合は大都市で150件のデモ行動を 行った。ボルドーでは5千人、リールでは千人が集まった。
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このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。
・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機」
・ ユーロは夢の終わりか
・ ヨーロッパの危機
・ 動けなくなってきたユーロ」
・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
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・ ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ
・ ユーロの危機は労働階級を試練にさらす
・ ギリシャの危機拡大はEUの危機!
・ 公平な分配で経済成長を続けるアルゼンチン
・ アイスランドの教訓:銀行は破綻させよ
・ ギリシャ、イタリアでIMF、EU抗議の大デモ
・ 破滅するユーロか、破滅する国家か
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・ 緊迫するユーロ、ギリシャは何処へ向かうか
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・ ユーロが襲うギリシャの社会危機、政治危機
・ 毒饅頭を食わされたギリシャ
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・ 通貨戦争(51)ユーロ分裂に備え始めた欧州
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・ ヨーロッパは変われるのか?
・ 緊縮財政を否定する各国国民
・ 通貨戦争(55)ユーロの罠
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小沢氏インタビュー「民主主義の危機!」IB News
2012-11-17

インタビュー小沢一郎氏「民主主義の危機!」 11/14 Net IB News (文中※印は引用者「北風」の注釈。)
11月12日、資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る事件の第二審(東京高裁)で新党「国民の生活が第一」の小沢一郎代表に、一審の判決を支持し、無罪判決が言い渡された。
先月25日には、「国民の生活が第一」の結党記念パーティーが都内のホテルで開かれ、会場には4,200人を超える支持者が参集した。その会場で小沢代表は、「国民との約束を守るために新党を作った」と語っている。(※このときの小沢氏あいさつは「「国民の生活が第一」結党パーティーに4,500人」。)
来るべき総選挙を控え、超多忙の小沢代表に、弊社代表の児玉直が独占インタビューを敢行した。
<もう1度初めから構築、国民の審判を受ける!>
――国民の目には、一度権力をとった民主党は、現在は自己保身、いわば自分の「○○商店」を守ることだけに専念しているように見えます。1年でも長く議員でいたい。その考えには、主権者である国民が不在です。その点をどのように感じておられますか。
小沢一郎氏 (以下、小沢) 本当に困ったことになったと思っています。まさに、リーダーからしてその感覚なので、党員全員が影響を受けてしまっています。
野田総理は小手先の戦術だけで、自民党や公明党と一緒の動きをされます。 「何をしたいのか」、「どういう政策を考えているのか」が国民の目には、はっきりしません。
何となく、権力だけにしがみついているように見えます。
当然、本人も内閣も評判が悪くなるという悪循環が続いています。
政治家にも、もちろん目先の利害は存在します。しかし、自分の政治家としての理念、国民の代表としての責任を忘れたら「政治家」とは言えません。
巷でよく言われる「政治屋」になってしまいます。ただ「国会議員としての身分が欲しい」、「ポストが欲しい」、「1日でも長く国会議員を続けていたい」というのでは、いくらなんでも悲しいと思います。
――偉大な「政治家」はよく歴史上の人物となぞらえて話されることがあります。これまで辿ってこられた道のりは、歴史上のどの人物と似ていますか。
小沢 その答えはとても難しいです。私は、今走り続けている最中で、最終ゴールのテープを切っていません。
実は、3年前の夏に、第1段階のゴールは迎えたと思ったことがあります。
しかし、残念ながら、ゴールから逆戻りしてしまいました。国民が「これでは、自民党と同じどころか、自民党より悪い」というのが定説になってしまいました。
私としては、新党「国民の生活が第一」を立ち上げ、民主党と別れることは、本当に断腸の思いでした。
自分が選挙戦の最前線で陣頭指揮をして国民に訴え、審判を受け、その結果、民主党が300を超える議席を頂き、政権を任されたからです。
野田総理、菅、鳩山元総理より、そして党員の誰よりも、民主党政権が上手くいくことを願っていたからです。
この第1段階のステップが上手くいっていれば、第2段階のステップへすすむことができ、国民の生活が第一という当時の民主党のスローガンにより近づくことができたからです。
この現在の状態はとても残念です。
しかし、自分としては、もう一度初めから構築をし直し、再度国民の審判を受け、今度こそ国民の生活が第一の社会を作り上げるつもりです。
<政治家としての揺るぎない「理念」&「信念」!>
――第1段階のゴールを迎えたと思ったのに、逆戻りしてしまった民主党の体質とはどういうものですか。一番の要因はなんですか。
小沢 やはり、「政治家」として、基礎的知識、基礎的訓練に欠けていたところだと思います。
ここしばらく続いている状況を分かりやすく言えば、何の知識、何の経験、何の見識もなく、突然"ポーン"と総理大臣になったり、大臣になったりしていることです。
突然、偉くなってしまうわけです。
彼らは、そのポジションの「何たるか」という意味をまったく理解できていません。
意味だけでなく、一番大切な心構えができていません。民主党の人たちは、当時「政権与党」になるという感覚を持っていなかったように思われます。
よく言われることですが、万年野党であった旧社会党の感覚と似ています。国会議員であれば満足という感覚です。準備作業が全くできていなかったように思います。
しかし、結果は300議席を超え、あっと言う間に政権与党になってしまったのです。
自分の主張をどう実現していくのか、経済界とどの様に付き合っていくのか、官僚にはどのように対応すべきなのか、国会運営はどうしたらよいのかなど基礎的な知識がなく、訓練もできていませんでした。
現在も同じです。
――「権力」を取るぞと言いながら、まったく訓練できていなかったとは、国民からみると不可解であるばかりでなく、怖いですね。今騒がれている「第3極」の方たちも「選挙」の準備ばかりが忙しく「政権与党」の訓練などとてもできているように思えませんが・・・。
小沢 民主党の場合は、多くの方が本当に政権与党になるとは信じていなかったよう思います。
彼らの多くが、当然ですが、政権与党「権力」の中枢にいたことがないのでまったくわからないのです。
私は、若くして自民党の幹事長をさせていただきましたので、「権力」の凄さ、怖さは充分認識しているつもりです。
その私からみると、とても理解できないことも数多く起こるようになっていったのです。
ただ、誰でも初めてはあるので、「政権与党」になったら、そのように自分の意識を変えればよかったのです。
自分は政治家として、「何を実現したいのか」、「国民のためにどのように役に立ちたいのか」を真摯に考えることです。
つまり、自分の政治家としての「理念」は何かに戻ることが大切です。人間ですから、100%思ったことが実現できることはありません。
しかし、その目標は揺らぎないものである必要があり、その目標実現に、努力、邁進できなければと真の政治家には、絶対になれません。
今でも民主党の人たちには、そのようなものをまったく見ることができませんし、感じることもできません。ただ、権力に1日でも長くしがみついていたいとしか思えないのです。
<政治家が「方向性」を示し、「結果責任」を負う!>
――正直、国民は民主党に期待しました。その結果、300を超える議席が与えられたのだと思います。憲政史上、初めてといっていいほど、大きなできごとでした。今となっては裏切られた気持ちがありますが・・・。
小沢 300以上の議席を国民から「民主党」に与えられたわけですから、国民の生活が第一という当初の民主党のスローガンに基づき、税制改革、公務員改革、自治体の改革などすべてができたのです。
しかし、それができなかった大きな原因は、政治家としての「結果責任」を負うことから逃げたことにあります。
政治家は、自分のたちの思ったことをやり遂げるためには、自分たちで提案し、その「結果責任」を負う必要があります。(※この男に言われたくはないが「「強い責任感と決断の指導者」がいない政府:メア」)
それは、とても厳しいものです。民主党の人たちは、その「結果責任」を負うのを嫌いました。
逃げたと言っても過言ではありません。責任をとりたくないので、役人に丸投げしました。
ところが、役人も政治家が責任を取らないのであれば、手抜きして、いい加減な仕事しかしません。
それは当たり前で、いざという時に、責任だけ押し付けられたら、たまったものではありません。
私には官僚の率直な気持ちが耳に入ってくることも多いのですが、彼らは「政治家が方向を示し、結果責任を負ってくれるのであれば、我々はついていきます。本来、そういう職務・役目なのですから・・・」と言っているのです。
政治主導と言いながら、民主党の実態は役人に丸投げです。役人は政治家ではないので責任をとれません。
従って、現在の政府では、「結果責任」をとる人が誰もいないのです。
私はもう一度、やり直す意味を強く込めて、「国民の生活が第一」という新党をつくりました。
マニフェストがあってもなくても、我々が目指しているものは、党名に表れており、逃げも隠れもできません。
国民の皆さんには、再度信じて頂き、我々に挽回のチャンスを頂きたいと思っているのです。
――ますますお元気そうでエンジン全開ですが、その国を想う「エネルギー」や「変革」の源泉はどこから湧いてくるのですか。
小沢 私は、「政治とは生活である」と常日頃から思っています。現代社会は複雑で、国際政治、国際経済、地球環境問題など政治の対象となるテーマがたくさんあります。
しかし、それらの問題は枝葉であり、一生懸命考えなければいけないのは、「どうやってみんなが豊かに幸せに、そして安全に暮らせるようにするか」ということなのです。
私はこれこそが、政治の原点と思っています。このことが、私のエンジンであり、エネルギーなのだと思います。
目先の利益と妥協してしまっては、何のために政治家になったのかがわからなくなります。
私は、これまでも、現在でもよく「お前がやれ」と言われることがあります。これはとてもありがたいことです。
しかし、物事を成し遂げるには「己」を捨てなくてはいけません。みんなが、総理大臣になりたい、国務大臣になりたいと言っていたのでは、絶対に大きな仕事はできません。
ポジションから逃げるのではなく、「己」を捨てて、大きなことを、結果的に成就させることが私の使命と感じています。
厳しいことですが、ぜひ成し遂げたいのです。
私は、与党中枢にいて、日本国家の「変革」の必要性を肌で感じました。
55年体制の時の社会党は「変革」と叫んでおりましたが、本音は全選挙区(中選挙区制)で1名ずつ、合計130名当選すればよいという感覚でした。
与党になるとは考えていません。政権与党になった今の民主党のなかには、その「安住」を求める体質が根強く残っているのです。
<原発は「いのち」、消費増税は「くらし」の問題!>
――現在、気がかりなことがあります。ネットを見ると、民族派とか右翼の書き込みが増えています。政権与党、政治家に失望した反動ですが、ここぞとばかりに、声高になってきています。どのようにお感じになりますか。吠えたほうが正しいという風潮さえ見られるのです。
小沢 わたしが一番心配していたのもそのことです。
政治が混迷し、政治家も政党も信頼出来ないとなると「民主主義」の否定につながります。
このような状況の際には、必ず右か左の極端に、日本の場合は右が多いのですが、振り子が振れます。今その兆候がすこしずつでてきています。
これは、日本の「民主主義」にとって危機的状況です。真面目な民族主義は良いのですが、その風潮にのっかり、単にパフォーマンスだけで声高に叫んだり、扇動したりすることは危険なのです。
どうしても、正しい勢力が、正しい政治を行ない、議会制「民主主義」を守って行く必要があります。
――民主党や政治家に対する失望感から、全国各地の投票率が下がっています。この点について如何ですか。
小沢 正直、「民主主義」の危機を感じています。
今「第3極」と言われているところも、右から左まで考え方はもちろん、政策もバラバラです。基本的な理念、政策で大きく異なるようでは勢力結集に展望は開けません。
重要政策の違いを棚上げして、選挙で連携、協力しても上手くいくはずがありません。
それは、今回の民主党の失敗例で、国民の多くが理解されているところだと思います。
その意味で、議会制「民主主義」を守って行く、守ることができる政党が必要なのです。
「国民の生活が第一」はそのために結成したのです。
ぜひ、その任を果たしたいと思っています。
――「国民の生活が第一」の基本政策は実に明快ですね。(1)命を守る「原発ゼロ」へ!(2)生活を直撃する「消費増税」は廃止!(3)地域のことは地域が決める「地域が主役」の社会を!
特に原発は、現在言われているところで、国民の反対は60%程度ですが、煮詰めていくとドイツと同じ80%近くになるとも聞いています。
小沢 原発問題は「いのち」、消費増税は「くらし」という、国民にとって直接、最も大切な問題です。
今、大手のマスコミは消費増税賛成、原発推進という立場をとっています。
その大手のマスコミの調査で、原発反対が60%を超えるのですから、実態はおっしゃる通り80%は大きく超えるのではないかと思っています。
ですから私は、党員に対して草の根の活動をやりなさいと号令をかけているのです。
必ず、理解いただけるという自信があります。
先日の25日のパーティーも、野党になって、大会社、団体は離れ、動員をかけることができなかったにもかかわらず、沖縄から北海道まで4,200人を超える方々に参集いただきました。
私も、とても感激しましたが、党員も皆元気になったと思います。
<小選挙区で100以上、絶対に過半数をとる!>
――ドイツの原発視察は如何でしたか。反原発でなく、原発を使わない市民生活のあり方など、新しい生活を考えるヒントも多々あったと思いますが。
小沢 実は、ドイツ以上に日本は代替エネルギーが可能です。ドイツは、風力発電から太陽熱まであらゆる試みをしており、今年25%は賄えることになりましまた。しかし、原発を止めると電力不足になってしまうのです。
日本の場合は、原発を止めても全く問題がありません。供給能力は充分にあります。
なぜ、原発を導入したかというと、「安い、安全」なものと思われたからです。「安全」はまったくのデタラメであることが、国民のほとんどが福島原発事故で実体験しました。
「安い」というのも、実はデタラメなのです。初期コストを耐用年数で割り算をして、安いという結論を導き出しています。しかし、ここには大きな落とし穴があります。
1つは、事故が起こった場合のコストが入っていません。福島原発の場合は、その後処理に、今後50兆円~100兆円かかります。
また40年後、50年後には、放射能・高レベルの廃棄物を処理しないといけません。ところが、世界のどの国においても現在まだその処理方法が見つかっておりません。
このコストを電力会社はもちろん、国も入れていないのです。これらのコストに比べれば、代替エネルギーの開発など容易にできます。
ドイツの方たちは、日本で10年後を目処に原発廃止を唱えている政党は「国民の生活が第一」だけと聞いて大変驚いていました。
ドイツはチェルノブイリ原発事故で原発廃止の声があがり、今回の福島原発事故で全政党、全国民で、原発廃止を決めました。経済界(経団連)や商工会議所、電力事業者の団体にも行きましたが、全員が原発廃止に賛成でした。
彼らから見ると、日本は当然、全政党、全国民が原発を反対しているという認識だったのだと思います。とても不思議そうな顔をしていました。
――「国民の生活が第一」としては、消費増税反対、原発廃止を中心に、愚直に、国民に訴えていく戦いを展開されると聞いています。ところで、選挙はいつごろになると予想されますか。
小沢 私たちは、絶対に過半数を取りたいと思っています。本当の改革をやるためです。国民の意識は、消費増税反対、原発反対になっていると思います。草の根の作戦で掘り起こせば、絶対に過半数をとれると信じています。小選挙区で100以上の議席を考えています。そして、さらに様々な連携を模索しているところです。
選挙ですが、民主党の野田総理はやりたくないでしょう。これから、予算編成、予算審議があり、景気がますます悪くなるので、景気対策等々理屈をつければ、来年の4月ごろまでは延ばせると思います。
しかし、そうなると、野田内閣に対する国民の支持、民主党への支持率はどんどん下がっていきます。
国民からの信頼を全く失い、内閣としてやっていけなくなります。
時期については、今は見守っているところです。

(了)
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