中国労働運動の変化
2012-10-07

反日行動の影に隠れて目立たないが、中国の日本を含む外資系企業での労働争議が増加している。
そして、あまり言われないことだが、この労働運動の動きは資本主義の経済を動かす「重要な」要素なのである。
つまり、私達の家計を動かす「重要な要素」なのです
中国共産党系の全国労働者組織は中華全国総工会であり、中国革命と国民党軍に対する全土解放、朝鮮戦争、民生向上などに多大の貢献をしてきた。
だが、鄧小平以降の社会主義の市場経済が始まり、高度経済成長が進み、豊かにはなるものの資本家はその数百倍から数千倍の利益を蓄積する中で格差は極限にまで広がっている。
共産党政権を守ることが主任務で60年にわたって労使間の闘いをしていない中華総工会は、この格差(新たな階級矛盾と言って良い)解消に手だてを持っていない。
以来25年にわたって使用者に対する労働者の闘いは、総工会とはまったく関係なく始まり、闘われ、ほとんどの場合に総工会の出番もなく、妥結収束することとなった。
中国の労働運動が既存の体制側全国組織と切断する形で、新たな段階が始まっていることは疑いない。
共産党中央は特に中華総工会を有利にして、非組織の労働運動を抑えこむ態度は見せていない。
おそらく総工会は自然零落の道に向かうのだろう。
いまのところ新たな労働運動の波は、外資系企業を中心としている。
幾多の犠牲者は出しながらも、賃金、労働環境、時短、差別撤廃などほとんどが、労働側の勝利により妥結収束している。
政権はこの新たな労働運動が外資系企業の範囲に収まっている限りは、政策的パートナーだろう。
民間大手、国営企業集団に波及した場合は、同等待遇で妥協しなければならない。
最大の格差が表向きに露骨な現象とならなければ、現状のままに裏側にひっそりと、また資産家と権力者の権力濫用を押さえ込めれば、安定に向かうだろう。
これが可能ならば、正しい意味での「社会主義の市場経済」といえるのだが。
これらができなければ、階級対立に発展するだろう。
「共産党」政権なのだから、解っているはずだ。
できるかできないか!?
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過激化する中国労組ストが暗示する未来 9/25 マシュー・イグレシアス NewsWeek日本語版
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)は、アップルをはじめ多くの大手ハイテク企業に重要な部品を供給している電子機器メーカー。9月24日、中国・山西省太原にある同社の工場で、従業員と警備員の小競り合いが大規模な暴動に発展。多くの怪我人が出て、操業が一時停止する事態に陥った。
アメリカで話題の過激な左派系ウェブ雑誌「ジャコバン」は、近年の中国の労働争議について興味深い視点を提供している。その指摘は、今回の暴動を読み解くカギになる。
現代中国の状況は構造的な意味で、欧米の労働運動の全盛期と似通っている。急激な産業化が進むなか、中国の工場労働者の賃金上昇率は、彼らがもたらす生産性の上昇率より低く抑えられている(大雑把な言い方をすれば、中国の農業従事者の賃金と生産性が非常に低いため、それに引きずられて工場労働者の賃金も十分に上がらない)。
そのため、企業には思いがけない儲けがもたらされる一方で、労働紛争も起きやすくなる。中国の抑圧的な体制は労働組合の結成には不向きだが、一方で年金も労組所有のビルも何ももたないだけに、非合法なストライキを打っても労働者側が失うものはほとんどない。
ジャコバンによれば、いまや中国は世界の労働運動の震源地だ。しかも、法律で定められた以上の大幅な賃上げを勝ち取ったケースもいくつもある。多くの大都市で最低賃金が二桁の伸びを果たし、多くの労働者が初めて社会保険の恩恵を受け始めている。
転機はホンダ部品工場の賃上げスト
中国の労働運動はこの2年間で質的にも進化していると、記事は指摘している。2010年以前は、賃金の未払いに抗議するストライキが主流だった。要求内容は「しかるべき賃金を払え」というシンプルなもので、頻発する企業の法律違反に対する「自己防衛」的な意味合いが強かった。
転機となったのは、10年に広東省南海にあるホンダの部品工場で起きた賃上げストだ。これを機に労働者の要求内容は「攻撃的」に転じ、法律で定められた以上の賃上げ要求が多発するようになった。
中国の労働運動の今後の展開を予測するのは困難だが、この問題は中国のこれからの25年がこれまでの25年と大きく異なる理由を説明する重要なカギになるだろう。
絶え間ない都市化と産業化、賃金上昇の抑制によって劇的な急成長が達成できることを、中国はこれまでさまざまな面で証明してきた。だが、その手法にはやはり限界が訪れるはずだ。
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中国における外資企業賃上げ要求の深層 2010/7/16 主席研究員 金 堅敏
賃上げストライキの拡大で戸惑う外資系企業
今年に入って台湾系企業である富士康の深せん工場で連続して12人の工員自殺者が発生した。続いて5月に入ってからは、広東省中山市にあるホンダの部品工場で賃上げ要求のストライキが発生し、中国にあるホンダの完成車4工場が生産停止に追い込まれた。その後もトヨタの部品工場やブラザー工業の現地拠点など、その他の外資企業でも賃上げ要求ストライキが相次いて発生した。
台湾の電子業界団体では、中国での賃金上昇問題を解決するために中国沿岸部にある生産拠点の東南アジアへの移転を呼び掛け始めている。日本のメディアや産業界の間では、今回中国沿岸部の賃上げストライキは、中国の労働力供給の逼迫状況を反映したものや、日系企業をはじめ一部の外資系企業を狙い撃ちにされたもの、などと理解されており、「チャイナ・リスク」の議論が再び台頭し、その対応に戸惑いを隠せない。
外資企業賃上げ要求の深層
確かに今回の賃上げ要求のリーダーたちはナショナリズムに訴えてストライキ参加者の団結を呼びかけ、一定の効果が得られたようである。しかし、それは外資企業に賃上げ要求を受け入れてもらうための戦術に過ぎず、賃上げ要求がストライキまで発展してしまった背景には労働市場でより構造的な変化があったことを理解すべきである。
背景1:民生重視、弱者重視への政策環境の変化
中国では、「改革開放」政策実施以降、「効率優先」の市場化改革や産業構造の変化で資本の論理が優先され、労働への利益配分が後回しされてしまった。マクロ的に見ると、GDPにおける労働報酬の割合は1996年の53.4%か
ら2007年の39.7%まで低下したが、同時期の企業利益の割合は21.2%から31.3%に高められた。
他方、「体制外」とされる民営化された中小企業の社員や出かせぎ労働者は弱い立場のままとなっていた。労働力の供給過剰の状況の中で低収入や長時間労働とともに労働条件の劣悪さも出稼ぎ労働者は受けざるを得なかった。就業者間の所得格差や社会的地位の格差は、職業に対するモラルの低下や社会への不満の堆積をもたらし、その結果として社会事件や品質問題の多発などが生じた。
2003年に登場した胡錦涛政権は、経済開発一辺倒の発展モデルの限界を認識し、外資主導、輸出主導の工業化戦略の下での低コスト政策を改め、成長を伴った労働分配率の向上を図り、「科学的発展観」を提起して、民生を重視してバランスの取れた社会経済発展を目指すことにした。胡錦涛政権の資本重視から民生重視、弱者重視への政策変化は労働者層の権利意識を喚起することになった。今回の賃上げ要求を引き起こしたとまで言えなくても容認していたのは明らかである。
背景2:若年層労働市場の逼迫化と個性化
中国で低賃金「世界の工場」が形成されたのは、膨大な農村余剰労働力からの2.5億人とも言われる出稼ぎ労働者の存在があったからである。しかし、2004年から2009年までに全就業人口における第一次産業の就業人口の割合は46.9%から38.1%まで急減した。
他方、地域格差をなくすための西部大開発などで内陸部などの地方での労働力需要が生まれ、沿岸部への労働力供給が限定されてしまった。さらに、1980年代初から始まった「一人子政策」により外資企業が欲しがる若年層の労働人口対全労働力人口の比率が縮小しつつあり、いわゆる「ルイス転換点」に達したかどうかは別として、沿岸部では若年層労働力の需給関係が逼迫するようになった。
もっと理解しなければならないのは、労働者の素質の変化である。若年労働者(中国では「新世代出稼ぎ労働者」と呼ぶ)の意識変革が労働市場に大きな影響を与えた。「旧世代出稼ぎ労働者」と比べ、権利意識が強いこと(やや自己中心的である)、ITを駆使して情報収集に長けていたこと(口コミに影響されやすい側面も)、苦労に辛抱しづらいこと、マイホーム・マイカーを有する都市生活への憧れ等が「新世代出稼ぎ労働者」の特徴である。今回のストライキを行ったリーダーや参加者はほとんど「新世代出稼ぎ労働者」である。
背景3:労働者保護に働く欧米CSR運動の影響
中国が「世界の工場」になったがゆえに、欧米のCSR運動(企業の社会的責任)は中国製品の調達を通じて下流から上流に波及してきている。中国製品の仕向け地の消費者や労働団体、CSR活動団体は、その商品の「生産プロセス・生産方法、労働者環境」に目を向けだしたのである。実際、台湾企業での自殺者発生やストライキと関係して欧米諸国の活動家や労働者団体は中国の労働者運動を理解し、一部は「搾取工場」撲滅キャンペーンを展開した。
さらに、今回の賃上げ要求は中国消費者の購買力向上につながり、内需拡大で国際経済のリバランスに貢献すると、欧米の大手メディアはほとんど中国の賃上げ運動を積極的に評価している。これらの論調も中国の労働者賃上げ要求に加担している。
以上で見てきたように、日系企業は、中国の労働市場での環境変化を十分に理解した上で、労働条件の向上に加え、現地状況に合ったマネジメントシステムの革新、従業員コミュニケーションの強化、CSR等を通じた企業文化の形成等を通じて、明るい労使関係を築き上げていくべきである。
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右翼ばかりとなった自民党:鳥越
2012-10-07

ニュースの匠:自民党の「右翼」化=鳥越俊太郎 10/6 毎日
◇次の選挙、カギに
先日の日曜日、TBSテレビの「サンデーモーニング」をぼんやり眺めていました。日曜朝ですから、まだ十分に目覚めていない頭なんですね。でも、この人の発言にはオヨヨ、と思わずテレビ画面にくぎ付けになりました。「自民党はずいぶん幅の狭い政党になったもんですねえ。保守の中の右翼ばかりだ」
河野洋平さんが話題にしているのは自民党総裁選の5人の候補のことです。順不同で並べておくと、安倍晋三、町村信孝、石原伸晃、石破茂、林芳正の各氏です。
私が「うん、河野さん、よく言った!」と思わずひざを打ったのは、国民・有権者が今回の総裁選全体に漂う、そこはかとなきある種の空気を感じていると思っていたからです。
5人の候補はいずれも異口同音に主張しました。「集団的自衛権の行使を認めるべきだ」
安倍さんはさらに一歩踏み込んで「国防軍をつくる」と言い、確か石破さんも同様のことを発言されていたのを記憶しています。尖閣諸島の問題で日中間が険悪な状態になっている折から、なんとも勇ましく、心地よい響きになりそうで心配ですね。
河野さんがあえて“右翼”と5人の候補を断じたのも、自民党の歴史を知る者には当然に映ります。
というのは50年以上にわたる自民党政権下では、憲法9条の精神に照らして「集団的自衛権は保有するが、これは行使しない」という解釈を守り通して来られたからです。
もちろん、自民党の中の一部タカ派=右翼的傾向の政治家はこれに抵抗してきました。
しかし、自民党政権期間中はどういう政治家が総理になってもこの「集団的自衛権は行使しない」という基本方針は守られてきました。
現実はどうでしょう。実は小泉(純一郎)政権下、日本の自衛隊はイラクの戦場に送られ、特に航空自衛隊の輸送機は米軍兵士をイラク内で運んでいました。
これは立派な戦闘行為への参加です。事実上「集団的自衛権」は行使されていたのですね。
集団的自衛権の行使に日本が強い歯止めをかけたのには理由があります。過去の世界大戦の歴史を見れば、これこそが戦火拡大の最大の原因だからです。
もし、自民党が再び返り咲き、安倍総理になったらどうなるのでしょう。
次の選挙がカギです。
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