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もうすぐ北風が強くなる

世界経済変動のなかのTPP:孫崎

黒船
 江戸湾に入ったペリーの黒船。日米不平等条約は欧米列強すべてに適用された。

 集団主義と同調指向の民族性は、米国のかいらいマスコミによる情緒的な根拠のない洗脳にタップリと浸っている。
 米国の経済力(軍事力もだが)への異様な過剰評価がまかり通っている。
 この世界の先進国、新興国の中で、ひときわ異様な過剰評価は何も根拠のないところが恐ろしい。

 政権交代と原発事故の経験を経て、大マスコミの隠蔽報道と御用学者への不信から国民はそろそろ隠蔽と洗脳を気づいてきた。
 民自公、維新の会などの政治家が、この国民の意識の変化に自己欺瞞を重ねている。
 また、世界経済の変化に立脚せずに、これまた自己欺瞞を続けている。
 電力会社の原発推進CMに脳までとりこになった保安院みたいなものである。

 TPPの交渉などというが、「交渉」するような能力が何処にあるのか。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
 田中康夫 BS11にっぽんサイコー 9/9 「孫崎亨が語る 世界経済変動のなかのTPP」 書き起こしと補足「カレイドスコープ」氏から 

田中康夫議員:
これは象徴的です。
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1995年の時点では、日本の対米輸出は、対中輸出の6倍もあった。
ところが、2008年~2009年あたりから、対米輸出よりも対中輸出のほうが上回っているし、おそらくこの流れは変わらないだろう。

では、アメリカのほうはどうかというと(下図)、日本と同様に1995年時点の対日輸出は、対中輸出の6倍あった。
ところが、2006年~2007年くらいから「対日輸出」と「対中輸出」が逆転して、アメリカの中国シフトが明白になっています。
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先日、憲政記念館(東京・永田町)で、日本共産党の紙智子さんと、社会民主党の阿部知子さんが司会をして、(8月30日、超党派の国会議員190人が集ってTPP反対集会を開いたのですが)まあ、私とか、お馴染み亀ちゃんとか、孫崎さんの講演があって、最後には自由民主党の稲田朋美さんが、「思想信条や歴史認識は異なるかもしれないが、このTPPの一点においては、みな同じ思いだ」と言って頑張ろうコールをしたという、大変にイデオロギーや党派性が崩壊している時代を象徴していました。

この集会で講演を行った孫崎さんが、講演でお使いになっていたのが、この図です。
日本経済と米国経済の相関関係」。

いちばん上の青い線が米国経済の名目GDP。
20120913-6.jpg

今までは、日本経済のGDPは、アメリカ経済のGDPにシンクロしていると言われていたのが、1995年から日本が低迷してきて、アメリカの上昇線と乖離してきている。

逆に中国のほうが伸びてきて、2010年くらいに日本のGDPを上回ってきて日本と逆転している。

孫崎享氏:
これ、いちばん大きな問題は、先ほどの図から分かるように、アメリカへの輸出量の伸び(上昇)が止まって横這い状態になってしまったわけですよね。

(1995年あたりまでは)アメリカのGDPが増えれば、普通は日本の対米輸出量も増えてきた。
ところが円高にシフトされてしまったので、日本製品のアメリカ市場での競争力がなくなってしまった

それだけでなく、日本の製品が行き渡らないようなシステムが世界中に作り上げられてしまった。
ということで、米国の経済が伸びと日本の経済が伸びとが並行しなくなった。

【参考】
米ドル対円為替チャート(1971年から2011年まで)
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田中康夫議員:
天動説的に、アメリカが一生懸命やってくれるようにすれば、日本もOKということではなくなって、さりとて中国も内部で、いろいろな問題を抱えていますから、日本が地動説にならないといけないわけですね。

下も、極めて象徴的です。
1990年と2009年の金融機関の総資産のランキングです。
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1990年には、今はない第一勧業銀行、三菱銀行、住友銀行、太陽神戸三井銀行、三和銀行、富士銀行が6位までを占めていて、クレディ・アグリコル銀行(credit agricole)、これはフランスの農業系ですかね。
バンク・ナショナル・デ・パリ。
その後に日本興業銀行。

これ、みんな農林中金以外は、全部、東海銀行、東京銀行、日本長期信用銀行(と消えていった)。

ところが2009年では、ようやっと9位に三菱UFJフィナンシャルグループが入ってきて、15位には、みずほフィナンシャルグループがあって、途中にある11位の中国工商銀行、18位に中国建設銀行。それ以外は、横文字のアメリカ、ヨーロッパの銀行ということになっていますね。

孫崎享氏:
これは、ある意味では意図的に作られたんですね。

少し詳しい話になるんですが、1988年にBIS(ビス)規制という、銀行の自己資本比率を8%以上にしなさい、という規制が敷かれた。
今まで日本の企業がやっていたことより一段高いことをしなければならなくなった。

その結果、銀行の企業への貸出額が減るということで、これは日本の経済が停滞することにつながる。
もうひとつは、自己資本を増やすために自社の株式を大量に売り出した。

証券会社が引き受けられる額は一定なので、金融市場に株式が放出され、希釈されるので評価額が下がってくる。

この循環によって、ますます銀行の経営がおかしくなる、ということで、これは単に日本の銀行がちゃんと働かなかったということではなく、BIS規制という、ある意味では米国を主導とした西側のトリックによって、日本の銀行がおかしくなってきた。

【参考】
BIS規制とは

BIS規制(銀行の自己資本比率規制)とは、国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準のことで、バー ゼル合意ともいいます。

BIS規制では、G10諸国を対象に、自己資本比率の算出方法(融資などの信用リスクのみを対象とする)や、最低基準(8%以上)などが定められました。
自己資本比率8%を達成できない銀行は、国際業務から事実上の撤退を余儀なくされます。

さらに、2008年のリーマンショックを主因とする金融危機に伴い、2009年以降今日に至るまで各国が危機再発防止に向けた金融改革案を検討している。
なかでもBIS規制においては、現行規制(バーゼルII)から新しい枠組み(バーゼルIII )への議論が行なわれ、2010年11月のG20ソウルサミットでその大枠が承認、12月にはバーセル銀行監督委員会の最終文書が公表された。
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http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2011/fe1102.html

田中康夫議員:
BIS規制とは、のフランスとドイツに国境を接しているスイスのバーゼルというころに機関があって、そこに日本の中央銀行の人も行ってたんですね。

余談ですけれども、バーゼルという町は、大変おもろしい町で、飛行場がフランス領土内にあるんです。
普通は、空港に到着すると、まずは入国があって、それから荷物を取るんですけれど、あそこは先に荷物を取るんです。

そして、フランス側とスイス側と別の入り口になっていて、レンタカーも、フランス側とスイス側で料金が違うと。

で、スイス側からは金網で覆われた道を通ってフランスに入る、という。これはドイツ側についても同じ。
こういう(常に国境を意識している)ところと、島国の日本では、バーゼルに行くと、ついついやられてしまうという。

バーゼルには、チバガイギーに象徴されるような、多くの薬害・薬禍を起こした製薬会社もある。
世界一の時計の商品市もあります。

そういったところに行って、(日本の中央銀行の行員など)ひとたまりもなかったというのが、この20年。

こちらは主要国の工業生産高のグラフ。
20120913-11.jpg

孫崎享氏:
これは、大変な指標を示していまして、いちばん上の赤い線はアメリカです。
アメリカの工業生産が、ずっと世界一だった。

で、オレンジ色の線が日本。
この日本が1995年あたりまではアメリカに接近するような勢いを持っていた。

反対に中国は1995年までは、下のほうを這っていた。
それが1995年を境に一気に上がってきた。

多くの日本人が知らないのですが、2010年には中国の工業製品がアメリカを抜いたんです。
これは世界史的に見ると大変なことで、1910年くらいから100年以上、ずっとアメリカが工業製品で世界一だった。
それが今、中国が工業製品で世界一になった。

田中康夫議員:
イタリアもドイツも、いちおうは伸びているのに、日本だけが乱高下の状態で足踏みしている。

さて、TPPは羊の皮をかぶった狼だ、ということは、この番組で2年前から指摘していますが、では、果たしてTPPで経済が上向くのかということ。

下の表のいちばん上がCIAの調査。
中国は通貨を過小評価するであろうから、購買力平価でみましょう、というのが2番目の数字です。
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購買力平価は、米国が14.7兆ドル。中国が10.1兆ドル。日本は、なんと4.3兆ドル。

孫崎享氏:
結局、円高ですから、実質の経済力は5.5兆ドルではなく4.3兆ドルだと。

田中康夫議員:
特に対中輸出というところを見ると、日本が1211億ドル、米国はその倍以上の2833億くドル。
また、対米輸出のほうも、日本より中国のほうが上まわっている

でも、このときに何か言いたげ人は、「中国の一人当たりの購買力平価は、アメリカの4分の1じゃないか、と。つまり、その力というのは、ブルガリアやトルコやルーマニアやメキシコと同じだよと。

台湾を見よ、と。
台湾はアメリカに肉薄する3億6000米ドル(?)だと言うんですけれども、ここが孫崎史観の鋭さで、いや、中国の人口は13億人だと。中の貧富の差はあるにしても、アメリカの3億人の4倍だから、4分の1ということは、アメリカとタメ張ってんだと。

(※補足説明:
その国の競争力の強さの尺度として、一人当たりの購買力平価を比べてみると、台湾の3万6000米ドルは、アメリカの4万7000ドルに肉薄している。
一方、中国の一人当たりの購買力平価は、この台湾の頑張りを計算に入れても、アメリカの4分の1に過ぎない、ということ)。

孫崎享氏:
そういう点で中国が難しいというのは、昔は、国が世界一になると国民の生活水準も世界一になったんですよね。

ところが国は世界一になるけれども、国民の生活水準はといえば、4分の1という。

だから中国国民にとって、「我々は世界一になった」といっても、実際の我々の生活は他の国より非常に低いんだという悩みです。

(※補足説明:
要するに香港、台湾を含めて中国全体のGDPがいくら増えても、13億人で割ればアメリカ、日本と比較にならない。
それだけ中国は経済格差による内紛の火種を抱えている)

田中康夫議員:
仮にアメリカの成長率が2%だとして、今、アメリカの成長率は1.3%ですが、中国が仮に8%だったら、9年後には中国のほうがGDPで上回ってしまう。

で、IMFは、今年と来年の中国のGDPの実質成長率を9.6%と9.5%と予測していると。

孫崎享氏:
だから、DGPで中国がアメリカを抜くというのは、現実味のある話なってきたんですね。

(※だからといって、中国人の全体の生活水準が上がるまではおぼつかない)

田中康夫議員:
こちらの表もご覧いただきましょう。
各国の輸出額。
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孫崎享氏:
ドイツの輸出額が多いのは、ユーロ安でドイツの製品が安く輸出できるから

田中康夫議員:
TPPには、中国も台湾も韓国もインドネシアもフィリピンも、そうそう、インドも入らないんですから、TPPでアジアの成長を取り込むと言っている外交の現場を知らない大臣や通商産業の枝葉末節の枝野という人には、この間の会合でも、「即刻、虎ノ門病院に緊急搬送して、MRIでオツムの中身を見たほうがいいんじゃないか」と言いましたが。

ですから、まさに早大ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄さんなどが、おっしゃるように、逆にTPPの対抗手段で中国がEUとの間で関税をゼロにしてしまえば、中国の精密な車の部品であったり、列車の部品であったりというのは、日本はそこの市場で争っているのに、ドイツに太刀打ちできないから、「TPPこそ日本のものづくり産業を壊滅させるんだ」というのが、この表でも明らかです。

中国の輸出先ですが、EUへの輸出量は日本への輸出量の3倍近い。アメリカにも日本の2倍以上だと。
ASEANへの輸出量でさえ、日本への輸出量を上回っている。

孫崎享氏:
そういう意味で、10年くらい前は、中国にとっていちばん重要な国は日本だったわけです。
しかし、今、彼ら(中国)の頭の中には日本が重要だという意識はない
んですよ。

もうアメリカが大切だし、アメリカがなくともEUがあるし、その上、日本よりはASEANになってきたんです。

だから、これから外交関係をやっていくときに、日本が重要だから向こうが手心を加えるということはなくて、彼らから見れば、もうすでに日本というのは、そんな重要ではなくなっているんだと。
だから、日本は適当にあしらえばいい、という感じはこれから出て来ますね。

田中康夫議員:
この間、孫崎さんがいらっしゃった超党派の会合の時にも、私はTPPをやらないことは日本を壊さない、アジアを壊さない、というだけではなく、アメリカをも壊さない、ということを申し上げたんです。

というのは、最近、米国商工会議所の人たちが言っているのは、
「TPPはオーストラリアも入る。すると、アメリカの牛肉は、そのままBSEであろうと何であろうと、丸ごと来るけど、オーストラリアはキメ細かく、いろんな部位に分けて輸出しているし、それは(アメリカの牛肉より)美味い肉だ。

もしTPPで関税を撤廃してしまうと、アメリカの牛肉はオーストラリアに負けてしまうのではないか。
コメは日米安全保障があるからなのか、35万トンもアメリカのコメを(日本が)買ってくれているんだけれども、それもなくなってしまう」。

アメリカの自動車の労働組合や自動車産業の人たちが、(TPPによって)日本車がもっとアメリカ市場に入ってきたら大変なことだと心配しているだけじゃなくて、どうもアメリカの人たちも、そのあたりが分かってきて、それでミット・ロムニーさんは、TPPじゃないと。

だからといって、日本はぬか喜びしてはいけないんで、どうもTPPはアメリカにとってメリットがないと。

それで、もっとメリットがあるのを考えようよ、というのが※ISD条項や国会で批准されてしまったACTAなどというといことで、もうちょっと悪多(芥)に黄色い世界をしようかな、ということになってきているのかな、という気がいたしますが。

最後に、「中国はアメリカを抜くか」。
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2009年の段階では、フランスとか中国では「アメリカを抜く」と思っている人が多かったのが、なんと、アメリカにおいても「アメリカは中国に抜かれてしまうかな」という人が増えてきて、日本だけが相変わらず、「中国はアメリカを追い越せない」という人が6割いて、という。

孫崎享氏:
だから、日本だけが間違っている可能性が強いので、非常に怖いんですよね。

まさに、どこかに頼ればいい、という天動説ではなくて、日本が平和的な中において、地動説へと発想を切り替えなければならない、ということが今日の孫崎さんにお話からあらためて分かったtと思います。

どうもありがとうございました。
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以下は「カレイドスコープ」氏:

(松下政経塾、石原と自民主流、大阪維新の会に)共通しているのが原発維持、あるいは推進。そしてTPPについての考え方。
すべてがアメリカに言われるがまま。
今でも、TPP推進派は、「交渉に参加して、国益に反するなら途中退席すればいい」というデタラメを言って国民を騙しています。

TPPと関連が深いACTAは、著作権、知的財産権の侵害を規制するもので、本来は、WIPO(World Intellectual Property Organization:世界知的所有権機関)でオープンな交渉をするのが当たり前。従来は、オープンだったのです。

それが、この政権政党の下では、秘密会議をやって、こっそり決めてしまうから問題になっているのです。
TPPは、多国間の通商条約なので、極秘裏に進められてきました。通商条約交渉の悪しき慣習が今でも続いているのです。
参加だけして、「ふむふむ、それでは我が方は損するから参加しない」ではすまないのです。
マフィアの台詞-「知ったからには生かしておかない」なのです。「入るか死ぬか、自分で決めろ」というのがTPPです。

そもそも、TPPは虚構です。
車両の精密部品でも、日本と中国はヨーロッパ市場で競合する段階になってきているが、TPPに参加しない中国がEUとの間で関税撤廃すれば、この分野で日本は欧州市場から撤退させられるかもしれない。
したたかな中国は、日本がTPPに参加すれば、この分野では重点をアメリカからEUに移すことに成功するでしょう。

つまり、「アジアの成長を取り込む」と言っている野田や枝野、玄葉たちは、アジアの発展途上国の成長に“夢を託す”と言っているのですが、その間に中国によって、たとえばインドなどのTPP不参加国の市場をどんどん奪われてしまう。
結果、日本の製造業は、ますます競争力をなくすのです。
日本がTPPに参加することによる経済効果は、たったの2.7兆円。それも10年で。

欧米が日本の金融機関に、BIS規制という「足枷」をはめたのですが、その結果、日本の製造業の弱体化が進み、さらに欧米連合による円高誘導によって、製造業の利益は簡単に吹き飛んでしまう。
これは円高によって相対的に中国の競争力を引き上げ、中国を経済成長させるというグローバルな計画の下に行われていることなので、大方は、このトレンドはしばらくは変わらないと見ているようです。

玄葉外務大臣や枝野経済産業大臣、特に玄葉外務大臣が強調しているのは、「まず先にTPPをやってからASEAN+3、ASEAN+6へ」と主張しているようですが、TPPを先にやれば日本の競争力は、ますますそがれてしまうでしょう。

まずは、目先の利益というと聞こえはよくありませんが、ASEAN+6に全力を注ぐべきで、これこそ日本がアジアに貢献できる道筋です。
経済規模の大きな日本がTPPに参加することは、アジアを壊すことにもなりかねません。

日本は、アメリカとゆがんだ付き合い方をしてきました。
そのせいで、日本の政治家、官僚、マスコミ、学者の多くがストックホルム症候群にかかっています。

国民は目覚めつつあるのに、こうした人々だけが、未だに洗脳から解き放たれないのです。
しかし、彼らは、まだ国民を洗脳しようとしているのですから、まさに倒錯した世界と言わなければなりません。
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  このブログ内のTPP関連ページリンクの一覧

・ 世界通貨戦争(15)自由貿易主義批判Todd
・ 世界通貨戦争(16)米国TPPは100年目の攻撃
・ 世界通貨戦争(17)米国TPPはジャイアン
・ 世界通貨戦争(19)中野剛志TPP批判の要約
・ 世界通貨戦争(20)TPPは日米不平等条約
・ 世界通貨戦争(25)日本マスコミがカットしたオバマ演説
・ 異様なTPP開国論:内橋克人
・ 米国の走狗か社会共通資本か:宇沢弘文
・ TPP推進のため平気で嘘をねつ造するマスコミ
・ TPPは国を揺るがす大問題に発展するか
・ 売国協定となる日米TPP:中野
・ TPP阻止行動が国民的に広がってきた
・ 榊原:TPPの交渉などマスコミ、CIAが後ろから撃つ
・ 破局に向かう世界に新たな流れを
・ アジアに米国の属領ブロックを作るTPP
・ 無知と卑劣で対米盲従する野田某
・ 1%の金持ちと99%の我々:ビル・トッテン
・ TPPのウソと真実:三橋
・ 完全収奪を狙う米国TPP
・ TPP全物品を関税撤廃対象としていた政府:植草
・ TPPは開国でなくまさに売国:トッテン
・ TPP=自由貿易の嘘
・ 奴隷のTPP、新たな同士を結集し新時代をつくる!亀井静香
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尖閣・竹島と米大統領選:山田

 以前から日本の財界が、非公然にアメリカの大統領選挙に献金していることが知られている。
 相手からの要求によるのか、こちらからの利権期待によるのかは、両方だろう。
 しかも概ね、軍産複合体≡共和党候補の陣営に献金してきている。
 結果的には、勤労者を犠牲にした莫大な企業内留保金が使われていることになる。
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 尖閣・竹島と米大統領選
「共和党のロムニーなら」という錯誤 9/13 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン

「尖閣国有化」を明らかにした日本に対して、中国各地でデモが起きている。領土を「核心的利益」と位置づける中国は、監視船を尖閣周辺に派遣した。
 昔なら軍事的衝突もありえる局面だ。両国とも引くに引けない。
 この局面に米国はどう出るのか。11月6日投票の大統領選挙を争うオバマとロムニーの、どちらが日本に好ましい政策を掲げているのか。

  大見えを切ったロムニー

「共和党のロムニーのほうが頼りになりそう」という声をよく聞く。中国に強い姿勢で臨むロムニーなら、領土問題で日本の肩を持ち心強い後ろ盾になってくれそうだ、という期待からだ。
 果たしてそうだろうか。

 ロムニーは「大統領に就任したら、中国を為替操作国に指定する」と大見えを切った。中国が嫌がる人民元切り上げを、力ずくで迫る「圧力重視の中国外交」である。

 オバマは中国を「重要な二国間関係」と位置づけ、対話路線を継続する方針だ。

「圧力」と「対話」。どちらに重点を置くかは、外交にとって永遠の課題だ。
 今回の大統領選は、共和党と民主党の外交方針の違いを鮮明にした。

 違いの根本は「米国の例外主義」を認めるか、という点にある。
 ロムニーは「米国は特別な国であり、国連に縛られない単独行動もいとわない」という考えだ。身勝手に聞こえるが共和党の伝統的な外交政策である。
 「強いアメリカ」を主張して対ソ強硬策を主張したレーガンや、イラク攻撃に踏み切ったブッシュらがこの路線を象徴している。

 世界の平和を守るため、と称して国際協調を無視してでも、米国の利益追求を進める、その力が米国にある、という考えだ。レーガンやブッシュが掲げたこの路線をロムニーは踏襲し、オバマ外交を「弱腰」と非難する。

 オバマは「米国の例外主義」を否定する。「強いアメリカ」の発露として始まった戦争を終結することに力を注ぎ、財政を圧迫する軍事費の重圧を和らげようと必死だ。「核廃絶」を主張したように、外交の力点は「世界の緊張緩和」である。

 その裏には単独行動を貫くほど米国に突出した経済力はない、という現実認識がある。武力で解決できない課題を背負っていることを理解した上で、中国とは融和を基調とする外交で臨む。

「大量破壊兵器」を口実にイラクに侵攻し、身動きがとれなくなった米国は、前回の大統領選挙で「対話派」のオバマに軌道修正を託した。リーマンショックも重なり、反省を迫られた米国の有権者は黒人大統領を登場させた。

 あれから4年、力を増したのが中国だ。世界最大の自動車市場は中国へと移るというのに米国は経済苦境にもがき、失業率は高止まりしたまま。
 対中融和策に飽き足らない人たちに「強いアメリカ」への郷愁が広がり、ロムニーは「圧力路線」を鮮明にした。

  ロムニーは軍事的後ろ盾?

「為替操作国の認定」は、中国の横っ面を張るようなものだ。だが為替操作国と認定し、中国からの輸入に課徴金をかけたからといって米国の産業が回復することにはならない。
 怒涛のように流れ込むアパレルや雑貨、家電製品などは、米国内に競合する企業はなくなっている。

 中国製を規制すればバングラデシュや韓国からの輸入に変わるだけだろう。それどころかアップルやウォルマートなど有力企業は中国を工場として使っており、安い中国製品はビッグビジネスの利益になっている。
 そうした現実に目をつぶり、大衆受けする対決姿勢を鮮明にすれば、双方とも身構えるだけで関係はこじれる。

 政治家が拝外主義・愛国主義を煽る行動に出ることは、いまや世界に共通した傾向だ。格差社会に充満するポピュリズムの向かう先は「外に敵を作ること」。背後に「鬱憤のはけ口」を求める民意が渦巻いている

 対中圧力政策を取る共和党にとって、日本は中国を睨む最前線だ。膨脹政策が尖閣諸島まで及べば、無視することはできない。
 「尖閣は日米安保条約の対象区域」という立場から、ロムニーは軍事的後ろ盾になる選択は排除しない、と見られる。

「ロムニーが頼りになる」という見方が日本にあるのは、そんな構図からだ。

  田中角栄失脚の影に

 だがここに一つの落とし穴がある。米国が日本の後ろ盾になっていたことで、日本の対中外交は米国の管理下に置かれていた、ということだ。戦後史を振り返ってみよう。

 国民党・蒋介石との内戦に毛沢東が勝利し、1949年、中華人民共和国が誕生すると、米国は「中国封じ込め政策」をとった。第7艦隊を近海に派遣し台湾を守った。
 沖縄を要に日本に軍事基地を構え中国を牽制した。共産主義との戦いは、米国の国策だったが、その陰で日本は中国と「戦争処理」どころか国交の回復さえできなかった。

 国交回復は72年9月の日中共同宣言まで待たなければならなかった。時の首相・田中角栄は近隣諸国との関係改善へと動き、シベリア開発など対ソ関係の修復も視野に入れていたが、ロッキード事件で政治生命を断たれる。

 田中の失脚には日本の独自外交を好ましく思わなかった米国の関与があった、という説がいまも根強くある。

 最近、「平和構築」という言葉を外務省がよく使う。世界の紛争地域で日本が果たす役割として、和平の仲介や紛争の原因となる貧困や格差の解消に貢献することを指している。
 しかし彼方で「平和構築」に汗を流すことが奨励されながら、近隣諸国との間で「平和構築」が進んでいなかったことが今回の尖閣・竹島問題で明らかになった。

 日本から見れば、中国・韓国の領土的野心や抜きがたい反日感情が問題なのだが、向こうには歴史的ないきさつやそれなりの理由がある。こじれた関係を放置し、関係修復に十分な努力をしてこなかったことは否定できない。

 ドイツがフランスやイギリスと和解して欧州諸国の一員として再出発し、いまやEUの中心として活動できていることと比べ、日本の戦後処理が進まなかったのは、米国のアジア政策と無縁ではない。

  外交の主流は「対米従属」

 米国の外交は米国の利益に沿って行われる。仁義や盟友といった日本的感覚とは無縁である。
 中国より日本を重視するというロムニーは、果たして日本を大事にするだろうか。日本を「衰退国」と表現したことが適切だったかどうかはともかく、日本に愛着や関心を持っているようには思えない。

 日米関係が緊密なのは、日本が米国の意向に添って忠実な従属者である時で、そのことが米国と緊張関係のある中国などとの軋轢を増してきたのが、戦後の歴史なのだ。

 イラン大使を務めるなど外務官僚だった孫崎亨は、著書『戦後史の正体』(創元社)で「戦後の日本史を動かす原動力は、米国に対する二つの外交路線」と書いている。
 日米関係を大事にして米国の指示に従うことを大事にする「対米従属」と、日本の立場をできるだけ認めさせようとする「自主路線」が交差して戦後史を織りなしている、という見方だ。

 田中角栄の対中外交や、原油確保からイランを重視した田中六助通産相(当時)のような「自主」も時にはあったが、外交の主流は「従属」で貫かれていた。

 その結果、外務省は共和党の外交政策と親和性を持つようになった。圧力外交を看板にする共和党は、日米安保にそった日本の役割を重視したからだ。
 外務省出身の外交評論家の多くが共和党の観点を踏襲しているのは、その結果といえる。外務省の主流は「従属派」が占めている。

 「ロン・ヤス」が囃されたレーガン・中曽根は、ソ連との軍拡競争で日本が資金協力し、ブッシュ・小泉はイラク攻撃を巡る協調関係だった。米国が「強いアメリカ」を謳うとき、日本に良好な関係が求められる。

  日中米の深い関係

 日本は尖閣で中国との関係がこじれ、中国は反日の声が高まっている。ではロムニーの中国敵視政策に乗れば、日本は安泰なのか。

 対立を深刻化するだけではないだろうか。アメリカの対中政策に従って平和構築の糸口を見失っていた日本が、また不信の増幅にのめり込むことになる。

 戦前のように「国交断絶」というような分かりやすい政策が取れないのが、グローバル化した今の世界だ。

 政治ではささくれだった関係でも、日本にとって中国は最大の貿易相手国である。日本の企業数万社が中国で商売をしている。中国は日本社会とつながっていて、好き嫌いで関係を絶ったり、衝突することはできない構造になっている。

 米国も同じ構造だが、もっと深刻である。財政赤字を埋める米国債の最大の引き受け手は今や中国。
 20世紀は同盟国・日本が最大の債権国だったが、今や米国財政のスポンサーは中国なのだ。中国が手持ちの国債を売りに出したら、米国経済は大混乱する。
 国債は暴落し長期金利は跳ね上がる。中国も保有する国債の価格が値下がりして打撃を受けるが、肉を切らせて骨を断つ、という戦略に出る選択だってある。通貨で経済制裁する手段を中国は手にしたのだ

 そうした現実を踏まえて、オバマは対中融和策を採らざるをえない。中国は巨大な国内市場や豊富な貯蓄を使って、武力に代わる覇権を手にした
 そのことが高圧的な外交につながっているのだが、経済はいいときばかりではない。
 混沌たる矛盾を抱える中国が、経済の舵取りをうまく行うには、他国とのいい関係が欠かせない。


 竹島で沸騰する韓国も同じである。国債の格付けで日本を追い越し、自信を強めているが内実は脆弱性を秘めている。それゆえ外国に強く当たることが、問題から目をそらさせることにつながる。
 だが、緊密な取引関係にある日本との関係を悪化させることが、円滑な経済運営に逆行することを識者は十分承知している

 吹き出した愛国主義に乗って対外緊張を煽ることは、目先の得点になっても、やがて自らを袋小路に追い込む

 ロムニーの対中強硬姿勢は選挙公約としては威勢がいいが、政権を取った後もその路線を突っ走るのは危険すぎる。世界は腕まくりして一撃を与えれば解決するほど単純ではない。

 緊張はらむ日中関係に必要なことは、日中平和友好条約1条に立ち返る努力だろう。

すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」と書かれたその精神をどう今に活かすか。その知恵と熱意が問われている。
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いろんな旅を続けています。
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