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もうすぐ北風が強くなる

原発事故による放射性廃棄物問題

 「原子力の平和利用」などと言う、たわごとを60年にもわたって学校教育からテレビ、新聞で国民を洗脳し、原発立地には裏金と暴力で強行してきたのが原子力発電である。
 そして発電に使った使用済み核燃料は、決して自然界に漏出しないように100万年管理し続けなければならない。
 廃炉にした発電施設のがれきも同様である。

 さらには膨大な量の低レベル廃棄物。防護服からマスク、靴、雑巾から工具、道具に至るまで、少なくとも千年は自然から隔離しなければならない。
 日本の場合は六ケ所村も各原発敷地も低レベル廃棄物ののドラム缶で満杯状態である。
 
 「原子力の平和利用」とは、たとえ仮に順調に安全に運転できても、人類と環境にとてつもなく危険な廃棄物を膨大に生み出し、その処分方法が無い代物なのである。
 原発反対派は最初からこのことを指摘して来た。
 核兵器と同じく人類と地球を破滅に導くものであり「最初から、作ってはいけないもの」だったのである。
 
 そして、東京電力の原発事故。
 原発事故でばら撒かれて、放射能まみれとなった国土。
 除染で取り除いた膨大な量の表土からアスファルト、屋根材、がれき、排水汚泥とごみ焼却灰が低レベル廃棄物に加わったわけである。

 電力会社は、普通の常識では計り知れないほどに異常な連中であることがわかったが、この原因者責任を取ろうとしない。
 国家権力にさせようと傍観している異様さである。
 政府は当然ながら、電力会社に責任を取らせなければならない
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 8/23 たね蒔ジャーナル 小出氏 放射性廃棄物問題 政府提案の福島県中間貯蔵施設と最終処分地  書き起こし「ぼちぼちいこか」から

(千葉氏)
 今日は毎日新聞論説員の池田あきらさんと一緒にお話を伺います。
 今日はまず、このニュースからですね。
 放射性物質で汚染された土の中間貯蔵施設の設置について、政府は福島県外を含め候補地を探していたはずなんですが、各地から反対が出て調整できませんで、7カ月後の期限までには作るということなので、これ以上遅れたら責任持てなくなるということで、福島県内の三つの町への設置を提案しました。しかし、地元の反発で見通しは全く立っていないというニュースが伝えらえています。
 最終処分場についても、JNNの報道で鹿児島県南大隅町といった情報も出ているんですけれども、まだ決まっていません。
 この最終処分場が決まらないうちに中間貯蔵施設だけが検討し進んでいくという状況に関して、小出さんはどう思われますか?

(小出氏)
 ほんとに呆れた話です。原子力というのは、ずーっとこれまでもそうやってきました。「とにかく今を乗り切ればいい」というような姿勢でやってきたわけですし、もともと『トイレの無いマンション』と言われて、ゴミの始末の付け方も知らないままやってきてしまったのです。
 今回の中間貯蔵施設なんて言ってるものも、結局最終処分場が見つけることができなければ、ずーっと最終処分場になってしまうという、そういうことになりますので、住民の方が嫌がるのは、もう当然のことだと私は思います。

(池田論説員)
 誰が考えてもなし崩し的に・・・ですね。全てがそのような形で動いてるというか、これはもう国民側の目に見ても明らかな状態ですよね。この1年でね。

(小出氏)
 はい。私から見るとそうなんですが、どうしてそれに皆さんがこれまで気が付かなかったのかなと思います。

(池田論説員)
本当にそうですね。

(小出氏)
それからもう一つ私ちょっと言わせていただきたいのですが、放射能のゴミというものは、人間の手で消せませんし、自然にも浄化作用が無いのです。でも、ばら撒いてしまったものですから、どこかに集めるしかないということは仕方のないことなのです。
 ただし、それを国の方は「住民の土地に」ということで今進めているわけですね。私はもうそれがそもそも間違えていると思います。
 もともと今『汚染』と呼んでいるものは、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった放射性物質です。もともと東京電力のれっきとした所有物です。それは東京電力に返すのが筋なのであって、本来は福島第一原子力発電所の敷地に戻すのが良いと私は思います。
 ただし、福島第一原子力発電所は今現在戦争状態にありますので、多分難しいと思います。
 それなら、福島第二原子力発電所の広大な敷地がありますので、まずそこを放射能のゴミの埋め捨て場にすべきだと思います。
 東京電力がウソをついて、福島県を中心に大変な人々に迷惑を及ぼしているのが今なわけで、その東京電力が自らは無傷のまま第二原子力発電所もこれから再稼働させるというようなことをもくろんでいるわけで、とんでもないことだと私は思います。
 まずは自分で責任を取るということを東京電力がやるべきだと思います。

(千葉氏)
 はい。本当にそういった形で東京電力が責任をとってほしいなと思うんですけれども、政府は今申し上げましたように福島県内の三つの町へ中間貯蔵施設を作るということで、なんか進めていくようなんですけれども、この中間貯蔵施設というものを作るために必要な条件っていうのは一体何なんでしょう?
 どうすればできるだけ影響の少ない形で放射性物質を「中間貯蔵」ですけれども、貯蔵していくことができるんでしょうか?

(小出氏)
 やるべきことは要するに『隔離』なのです。
 人々、或いは他の動物もそうですけど、生命が存在しているところからできるかぎり『隔離』をするということしかできないのです。ですから、なるべくコンパクトな形にして、生命系に漏れてこないようにするということ。それだけです。やらなければいけないことは。
 ですから、どこか場所を探して、そこから外に出ないようにするということをこれからやらなければいけません。
 私はその場所が東京電力の敷地であるべきだと今聞いていただいたわけです。

(千葉氏)
 あの、保管の仕方についてですね、政府は特殊な容器に入れて保管するというように言ってるんですけれども、もし施設を作るということになった場合には、雨にあたったりしないとか、空気にも触れないといったような完全に密閉できる施設が必要だということなんですか?

(小出氏)
 例えばこれまで原子力発電所から出てきた低レベル、比較的放射能の汚染の少ないゴミというものは、これまで青森県の六ヶ所村に押し付けられてきました。
 ドラム缶に封入した上で、そのドラム缶を地表に作ったコンクリート製の構造物、プールのようなものですけれども、その中に並べていくと。そしていっぱいになったら蓋をして、粘土で固めて土を被せるというのが、これまでの低レベル放射性廃棄物の保管方法でした。
 ただ、それをやったところで地面に埋めてしまうわけですから、ドラム缶はいずれ錆びてしまう。そうすると中から放射性物質がいずれにしても出てくるだろうと、時間が経てば。じゃあ一体どれだけお守りをすればいいかというと、300年ということを日本の政府は言ってきたのです。
 しかし、300年後って皆さん想像できるでしょうか?
 もちろん私は死んでいるし、池田さんだって千葉さんだって亡くなってる。現在の東京電力の偉いさんたちもみんな死んでいる。民主党も自民党もないという、そういう時代まで本当に埋めてしまって安全が保障できるか?と言われてしまうと、私はまずは無理だと思います。
 でもやらなければいけないという、本当に困った事態に私たちは今追い込まれてしまっています。

(池田論説員)
 そうですよね。いずれにせよ、福島の人たちが背負わされた災厄っていうのは、ずーっと背負い続けることになるんですよね。

(小出氏)
 そうです。

(千葉氏)
 つまり、逆に言うと、今他のところにある原発の地元というところありますよね。そういう人たちの一つの覚悟も問われるということになるでしょうね。

(小出氏)
 そうですね。原子力発電所を誘致してしまったわけで、そこから出たゴミはいずれどこかへ行ってくれるはずだと期待していたと思います。原子力発電所の立地市町村ですね。
 でも本当はそんなこと期待してはいけなかったんだと思います。
 原子力発電所を誘致したのであれば、ゴミも受け入れるというくらいの覚悟がなければやってはいけなかったと思うのですが、これまでは、これも国が騙してきたのです。
いずれ使用済の燃料は再処理工場に送るから地元に残らない」
と言って、嘘をついてきた
日本の政府が諸悪の根源だと思います。

(千葉氏)
 いやー・・・。この中間貯蔵施設の話なんですけれども、これは300年・・・も保管していかなきゃいけないということで、ある程度の期間を保管するということになるんですが、この中間貯蔵とは違う最終処分場、これは永久に処分するとなった場合、どんな施設が必要になってくるんでしょうか?

(小出氏)
 はい。多分、現在の政府が考えているのは、六ケ所村の永久処分場なのですが、要するに低レベル放射性廃棄物の永久処分場、そういうものをどこかに作るという、それが鹿児島県の南大隅町を今狙ってるということだと思います。
 中間貯蔵施設というのは、多分今の政府の計画というのは、そこに運び出すまでの中間的だと言ってるわけですから、本当に埋めてしまうようなことをしたら掘り出すのも大変ですので、ただただ野積みにするくらいのことを考えているのではないかと思います。

(千葉氏)
 え!でもそしたら、周りに住んだりしたら危ないんじゃないですか?

(小出氏)
 要するに、私も大変言いにくいけれども、今後50年、100年人々が帰れないという汚染されてしまった土地が、既に広大にあるのです。
 ですから、そういうところに政府はゴミ捨て場にしてしまおうということを狙ってるんだと思います。もちろんそこにはもう帰れません。

(千葉氏)
 うーん・・・。そういったところで中間貯蔵ということでしばらく置いておいて、最終処分場を探していって、とにかく最終的に処分をしなければいけないということなんだけど、その見通しもたってないということですか。

(小出氏)
 そうです。

(千葉氏)
 っていうことは、本当に何の見通しもないわけですね<苦笑>

(小出氏)
 そうです。

(千葉氏)
 はぁ・・・。判りました。小出先生、どうもありがとうございました。

(小出氏)
 ありがとうございました。
【以上】

【参考記事】
  中間貯蔵施設:福島の12候補地…政府、現地調査を提案
毎日新聞 2012年08月19日 20時48分(最終更新 08月19日 23時28分)

 政府は19日、福島市で東京電力福島第1原発事故に関する福島県と同県双葉郡8町村との意見交換会を開いた。政府は放射性物質を取り除く除染で生じる汚染土壌を保管する中間貯蔵施設について、大熊、双葉、楢葉3町の計12カ所を候補地として初めて示し、現地調査を行うことを提案した。県と8町村は回答を保留した。住民の反発などから協議は難航も予想される。
 政府が示した候補地は、大熊町が福島第1原発の南側の9カ所、双葉町は同原発北側の2カ所、楢葉町は福島第2原発南側の1カ所。双葉町は県内の9市町村、楢葉町は3市町、大熊町がそれ以外の47市町村から汚染土壌や廃棄物を搬入するとしている。会合に出席した細野豪志環境相は
▽現地の大気、水質、地質
▽空間や土壌の放射線量
▽土壌を運ぶ際の交通量−−などを調査する意向を示した。
 候補地選定の理由について、細野氏は「地形や住民の帰還状況、交通アクセスなどを総合的に考えた」と記者団に説明。政府は必要な容量を最大2800万立方メートルと試算しており、これを満たすには12カ所全てが必要との認識も示した。
http://mainichi.jp/select/news/20120820k0000m010054000c.html

 政府は12年度中に施設の設置場所を決め、15年1月をめどに仮置き場から搬入を開始。最長30年保管し、県外の最終処分場に移すことを想定する。だが地元には「中間貯蔵施設がそのまま最終処分場になるのでは」との懸念も根強く、細野氏は「ようやくスタートラインに立った段階だ」と述べ、ていねいに議論を進める考えを強調した。
 福島県の佐藤雄平知事は記者団に「(提案は)県で預かり、8町村と実務者で整理する」と述べ、渡辺利綱・大熊町長は「門前払いはまずい」と調査に前向きな考えを示した。一方、井戸川克隆・双葉町長は「(土壌を)最終処分場に必ず持って行くことなどを確認しないと議論に入れない」と指摘。松本幸英・楢葉町長も「国と考え方に差がある」と慎重な姿勢を示した。
 中間貯蔵施設は、菅直人前首相が昨夏に福島県内の設置を表明、今年3月に細野氏が3町への立地を提案した。政府は7月下旬、地元が強く求めていた被災者の家財などの賠償基準を発表したことから、同施設の議論についても具体化すべき時期だと判断した。【笈田直樹、乾達】
http://mainichi.jp/select/news/20120820k0000m010054000c2.html

  最終処分場候補地に南大隅町が浮上
TBS News i (23日17:41)

 福島の原発事故で放射性物質に汚染された土などを捨てる最終処分場の有力候補地がついに判明しました。政府はこれまで、最終処分場は福島県外に作るとしてきましたが、有力候補地として浮上したのは鹿児島県南大隈町の山林であることが、JNNの取材でわかりました。政府はすでに水面下で町の関係者に接触しているということです。
 鹿児島県南大隅町。福島第一原発からおよそ1500キロ離れたこの町が今、揺れています。人口9000人に満たない漁業と農業の小さな町が、放射性物質に汚染された土の最終処分場の有力候補地として政府内で浮上したのです。最終処分場について具体的な地名が上がるのは初めてのことです。その候補地とはどんなところなのでしょうか。
 東日本大震災以降、福島県内では放射性物質を除去するための除染作業が行われています。取り除いた汚染土は現状、市町村ごとの仮置き場に保管されています。黒い大きな袋に包まれているのが汚染土です。除染作業で大量に発生しますが、こうした仮置き場の設置はなかなか進みません。理由は、住民の不安にあります。
 「仮置き場を2年なり3年なり(の予定)で置いたものが、そのまま5年、10年と長期間置かれてしまう心配はないのか」(伊達市住民集会、先月6日)
 政府の計画では除染作業で出た汚染土は、まず市町村ごとの仮置き場に保管します。その後、県内の中間貯蔵施設に移すとしています。さらに30年以内に福島県外に設置する最終処分場に移す計画です。中間貯蔵施設についても、交渉の難航が予想されます。理由は仮置き場と同じです。
 「必要性と安全性と必ず(県外に)持っていくのでなければ議論に入れない。最終処分場の話もまだ出てない」(福島・双葉町 井戸川克隆 町長)
 除染活動を進める上で最大の課題である最終処分場の設置。公の場で議論は進んでいません。ですが、政府内では密かにその候補地の選定が進められていたのです。
 本土最南端に位置する鹿児島県南大隅町。この町が最終処分場の有力候補地として政府内で浮上していることがJNNの取材でわかりました。具体的な候補地は、南大隅町の南東部にある土地です。私たちは候補地付近に船で向かいました。すると・・・
 「見えてきました、見えてきました。この先に見えますのが、最終処分場の候補地です。切り立った崖が見えます」(記者)
 さらに近づくと・・・
 「私の後ろには広大な敷地が広がっています。民家はおろか人の姿はありません。手つかずのままの自然が残っています」(記者)
 空から見ますと、そこには広大な山林が広がっています。政府は既に、水面下で町の関係者に接触を始めています。環境省幹部も、JNNの取材に対し、地元との調整を進めていると話しました。
 南大隅町の森田町長は23日朝、私たちの取材に対し、次のように答えました。
 (Q.最終処分場の候補地としてあがっているが、政府側と接触は?)
 「ないですね。どこか手を挙げてくれという話は私のみならず、他の首長もあるのでは。探りじゃないかなそういう話は、あると思うが正式な話はない」(鹿児島・南大隅町 森田俊彦町長)
 また、鹿児島県の伊藤知事は・・・
 「何の呼びかけも国の方からありません。受け入れるような余地がない。受け入れるつもりもない」(鹿児島県 伊藤祐一郎知事)
 一方で、地元の住民からは戸惑いの声が上がります。
 「ちょっと難しい。一概にダメとも言えない」
 「持ってきてほしくないが、福島の人たちを思うと誰かがしてあげないと・・・」(南大隅町の住民)
 ある政府関係者は、JNNの取材に対し、「南大隅町は唯一にして最大の最終処分場候補地だ」と話しています。
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ユーロ、イタリアは財政緊縮要求に対抗するか

 イタリア

 ユーロ圏のソブリン危機。
 国債金利が上昇し、失業が増大しているギリシャ、ポルトガル、スペインに続くのがイタリアか、と言う市場の思惑だが、すこし色合いが変わりそうな気配がある。
 イタリアは生産力もブランド力も強いヨーロッパの大国だからである。
 国民はスペインなどを巻き込んで、ドイツ主導の財政緊縮策要求に対抗する力があるので、そうなる可能性もある。
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   イタリアを「周辺国」と呼ばないで   8/23 ロイター
アナトール・カレツキー

昨今のユーロ圏ソブリン債務危機においては、勝ち組を指す「中核国」、負け組を指す「周辺国」という言葉が一般にすっかり浸透した感がある。
しかし、歴史や芸術、文化に関する知識が少しでもあるならば、イタリアやスペインを欧州の「周辺国」、フィンランドやスロバキア、ドイツ、オランダを「中核国」とどうして呼ぶことができようか。

不定期とはいえイタリアに住み、欧州2000年の文化の中心地であるローマから100キロ離れたところに住宅を構える私としては、ありきたりの答えでは満足できない。
私はこの夏、イタリアの友人や隣人と語り合い、欧州指導者の行動をつぶさに観察した末に、「中核国・周辺国」という分裂について、興味深くかつ気がかりな結論に達した。その結論とは、「中核国」「周辺国」という言葉は過去や現在ではなく、未来を暗示する言葉ということだ
この言葉に地理的・歴史的な意味はなく、欧州諸国の恒久的な経済的、政治的不平等を正当化する表現だ
危機の解決に一歩近づくたび、「周辺国」は政治的自主性や経済的な機会、国家としての尊厳を失っていく。
反対に、ドイツを代表とする「中核国」は一段と富み、さらに強力になる。
イタリアやスペインなど地中海諸国の金利が、ドイツなど北部諸国より大幅に高いという状況を作り出すことにより、欧州は、南欧の政府だけでなく、その民間企業や個人に対して、強力かつ恒久的な経済上の足かせをはめたことになる。

イタリアでは収益性に優れた企業や支払い能力の高い個人ですら、ドイツやオランダの2倍、3倍の金利を支払わねばならない。
イタリアがドイツとは異なる通貨を使っていた時代は、金利差はあまり問題ではなかった。リラが周期的に切り下げられ、債務の実質的なコストも下がったからだ。
ところがユーロを導入した結果、資金調達コストの格差が広がり、ドイツ企業には一種の補助金となる半面、イタリアやスペインの企業は競争力を失い、雇用や経済成長に大きな影響が及ぶようになった。

いわゆる「周辺国」では、ごく最近まで、この明らかに不当な処遇に対する抗議の声は驚くほど小さかった。地中海諸国は立地条件や国民性が原因で、経済的に劣り政治的にも問題があるという、ドイツなど欧州の北側諸国が展開する主張を「周辺国」の人々もうのみにしていたようだ。
しかしイタリアでは、モンティ首相が6月29日の欧州連合(EU)首脳会議で、ドイツの改革要求に抵抗したことをきっかけに、ムードに変化が起きている。特にここ数週間、抵抗ムードが強まっているようだ。

イタリアの政治家は最近、イタリアの産業に打撃を与えている金利スプレッドの縮小に向けて思い切った措置をとるよう、欧州中央銀行(ECB)に要求し始めている。
注目すべきことは、ECBに行動を求めるイタリアの要求は、ドラギECB総裁の方針を大幅に上回る内容になっていることだ。ドラギ総裁は、ECBが対策をとる場合の条件として、ドイツが主張する財政緊縮の強化を主張している。
一方、モンティ首相らイタリアの閣僚は、ECBがクレジットスプレッド縮小に向け、緊縮や改革実施を条件とすることなく無条件で行動するよう要求している。

数カ月前には、政治家がドイツに反抗したりECBを批判したりしても、一般の国民は単なるジェスチャーとして相手にしていなかった。
しかしここ数週間の間に、考え方が変わり始めている。3年に及ぶ深刻なリセッション、大幅な増税、大規模な歳出削減、大胆な構造改革の結果、イタリアはもう十分にやった、というムードが広がっているのだ。

イタリアは財政運営に失敗し、産業の競争力もないため、経済や政治がドイツその他の欧州諸国と比べて劣っているのは必然、との見方がドイツなどを中心としてある。
しかしここにきて、イタリア国民はこうした指摘が正しいのか疑問を持つようになっている。例えば、イタリアの税収は健全で、過去15年間の大半の間、基礎的財政収支の黒字はドイツを上回っている。
健康保険基金や年金の債務も欧州で最低水準にあり、雇用コストはフランスやドイツよりずっと低い。貿易赤字はごく小さく、国民1人あたりの預金についても、ドイツや日米よりも多い。

要するに、イタリアは「周辺」の問題児ではないのだ。むしろ、人口や富、経済の点でドイツやフランスと同等の国だということを、イタリア国民も認識し始めている。
イタリアは実際、1950年代初頭から、イタリアがユーロ参加を決断した1999年までの間は、成長や国民1人あたりの富や産業においてドイツと同等、いや、ドイツを上回ってすらいた
世論調査によると、イタリアでは44%がユーロ参加は間違いだったと考えている。
イタリア国民は、改革実施の要求はイタリアの競争力を向上させるどころか、逆に、イタリアを恒久的にドイツに隷属させることを意図しているのではないかと、考えるようになっている

今後は、劇的な展開も予想される。例えば、イタリアはドイツに対して、財政緊縮や改革実施をこれ以上要求するのであればユーロ圏から出ていけ、と迫るかもしれない。
そうなれば、欧州諸国は選択を迫られる。イタリアを支持して、ドイツをユーロ圏から追い出すのか。それともその逆か。
そうなれば、どの国が本当の意味で欧州の「中核国」で、どの国が「周辺国」なのか、白日の下にさらされることになるだろう。
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 このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。

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・ 欧州の財政危機
・ ユーロは夢の終わりか
・ ヨーロッパの危機
・ 動けなくなってきたユーロ
・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
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