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もうすぐ北風が強くなる

ドイツのためのユーロ

 共通通貨ユーロは最初から国際金融資本とドイツの「戦略的な設計」だったのかも知れない。
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ドイツのユーロ  8/9  三橋貴明  Klugから

 ユーロの情勢を見ていると、同共通通貨のシステムが「ドイツのため」に造られたのではないかと疑いたくなる。
 ドイツ人は、第一次世界大戦時のルーデンドルフ体制(総力戦体制)に代表されるように、設計主義的な国家システムの構築を好むように思える。何しろ、ユーロとはまさしく各種のルールに基づき、国家や通貨の仕組みが各国共通で設計されてしまっているのだ。
 ルールを定めることで、各国の政府が裁量的な財政政策、金融政策を採れないようにする、ブキャナンやフリードマンの思想が読み取れる。

 ミルトン・フリードマンについては説明が不要であろうが、1986年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・マギル・ブキャナンについて知る日本人は少ないだろう。ブキャナンは、政府の裁量的な財政政策を問題視した。政府の裁量的な財政政策とは、
「民主主義に基づき、政治家が有権者の要望に応えるために実施する財政政策」
 を意味している。代表的な「裁量的な財政政策」が、田中角栄に代表される利権誘導型の公共事業だ。
 ブキャナンは上記の裁量的な財政政策は、民主主義国家では避けえない(ゆえに問題)と説いた。
 結果的に、ブキャナンが提案したのが「均衡財政の憲法化」である。

 財政政策を政治家に任せておくと、有権者や「民主主義」の力により、歪んだ公共事業などが行われ、財政赤字が拡大してしまう。
 あるいは、まさに現在のギリシャがそうなのだが、社会保障支出の縮小に政治家が「民主主義の力」を恐れて乗り出せず、経常収支赤字にも関わらず外国への国債発行を増やし、「双子の赤字(財政赤字と経常収支赤字)」で財政破綻(政府のデフォルト)の可能性が高まってしまう。

 ならば、民主主義の手が及ばない「憲法」に均衡財政を書き込むべきだ。と、ブキャナンは主張したのである。
 憲法に「財政赤字の拡大は禁止」などと書かれると、政府は民主主義の圧力を無視してでも従わなければならない。「憲法」により軍備拡大が禁じられている日本に住む者であれば、誰でも理解できると思う。

 さて、実はドイツはすでにブキャナンが主張した「財政均衡の憲法化」を実現している。冗談抜きで、ドイツは憲法に「債務ブレーキ制度」と呼ばれる財政均衡の「ルール」を書き入れているのだ。
 債務ブレーキ制度とは、2009年の憲法改正で実現したのだが、要するに赤字国債等による政府の借入をゼロにする制度である。ドイツ政府の借入は「憲法で」禁じられているため、財政はあくまで歳入の範囲で行われることになる。
 まさにドイツは、民主主義を超える「憲法」で、財政赤字を禁止したわけだ。ブキャナンはまだ存命であるため、ドイツの「財政均衡の憲法下」を見て、さぞや喜んだのではないだろうか。

 無論、ドイツは均衡財政を憲法化するに際し、
「1ユーロたりとも、財政赤字は認めない」
 とやったわけではない。ドイツの憲法には「均衡財政判定のルール」も定められている。具体的には、対GDP比で0.35%である。GDPの0.35%の範囲内であれば、ドイツ政府は歳出が歳入を上回っても構わない。

 また、ドイツの憲法では、
「平常の状態を逸脱する景気動向がある場合には、好況および不況における財政への影響を対称的に顧慮しなければならない」
 と、景気悪化時(具体的にはデフレギャップ存在時)には一定の「ルール」に基づき、財政赤字を拡大することを認めている。さらに、ドイツ憲法は「国の統制がきかず、かつ、国の財政状況を著しく害する自然災害または非常の緊急事態の場合」は、連邦議会の過半数の決議により、上記の「ルール」を踏み越えた財政赤字拡大も可能になっている。
 もっとも、連邦議会における議決の際には、返済計画を同時に可決しなければならないのだが。「ルール、ルール、ルール」という感じである。

 さすがに「財政赤字は一切NO!」とやっているわけではないが、それにしてもドイツの均衡財政に対する態度は実に設計主義的だ。
 そういう意味で、様々なルールが存在する共通通貨ユーロのシステムは、ドイツ人の国民性に合っているのかもしれない。

 しかも、ドイツ人はこの種の設計主義を「欧州全体」が受け入れるべきと考えているようで、2012年3月2日には欧州連合加盟国の首脳に対し、財政均衡の憲法化(厳密には財政均衡実現を憲法もしくは同等の法律により明文化すること)を含む新財政協定への署名を要求した。
 ドイツ側は、
「新財政協定を順守する国だけがESMの支援を受けることが可能だ(メルケル首相)」
 と、露骨なまでに「支援」と引き換えに各国が財政規律を堅持することを求めたのである。
 同協定に対しては、イギリスとチェコを除くEU加盟国の首脳全員がサインし、ユーロ加盟国17か国のうち、12か国が批准(国会で議決)した時点で発効し、法的拘束力が発生する(ユーロに加盟していないEU諸国は、ユーロ導入時に新財政協定発効が求められる)。

 新財政協定合意の取りまとめをしたファンロパイEU大統領(この人はベルギー人)は、調印式において、
「債務および赤字に関する今回の自己規律強化は、それ自体重要であり、ソブリン債務危機の再来防止に役立つことになる」
 と語っている。

 何というか、そもそも各国が「ルール」を守ることで成り立った、設計主義色が濃いユーロが、現実という怪物に襲われ、システムが壊れそうになっている状況で、
「この問題を解決するためには、より強固なルールが必要である」
 とやっているわけだ。
 なぜ「ユーロというルール化」が間違っていたという発想にならないのか、不思議である。
 何しろ、ユーロという共通通貨は、「供給が自動的に需要を生み出す」というセイの法則が成り立たないと、継続不可能なシステムなのである。
 よりわかりやすく書くと、バブル崩壊に対し、対処する機能が組み込まれていないのだ。

 ユーロのルールとは、主だったところだけで以下になる。
「各国は金融政策(政策金利、通貨発行など)についてECB(欧州中央銀行)に委譲する」
「各国は財政赤字を対GDP比で3%以内に収めなければならない(マーストリヒト条約による)」
「各国間の為替レートは常に一定(共通通貨なので当たり前だが)」
「各国間の移動は、財・サービスはもちろんのこと、資本(お金)、労働者に至るまで自由。各国間の関税はゼロとする」

 金融政策、財政政策、そして為替レートという「国家の裁量で変更される分野」をガチガチのルールで固めた上で、財・サービス、資本、労働者、すなわち「モノ・カネ・ヒト」の移動については「自由化」する。
 結果的に、民間企業が経済合理性を追求してユーロ圏内を自由に動き回り、パレート最適(誰かの効用を減らさなければ、誰かの効用を増やせない状態)を実現できる。
 他国であればやかましく口を挟んでくる「政府」は、ルールによって縛られ、マクロ的に民間の経済活動に影響を与えにくい。

 まことに、現代の主流派経済学者たちが好みそうな「設計されたシステム」だ。
 問題は、危機が深刻化するにつれ、ユーロのシステムが「ドイツ」のために設計されたのではないかという、疑いが浮上してきたことだ。

『2012年8月1日 ブルームバーグ「ECBは自らの責務越えてはならない-バイトマン独連銀総裁」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M82IVG6S973E01.html
 ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁は、欧州中央銀行(ECB)は自らに託された責務を踏み越えてはならないとの考えを示した。また、独連銀はECBの政策決定において、ユーロ圏の他の中銀に比べ大きな影響力を持つと言明した。
 独連銀のウェブサイトに1日掲載されたインタビューで、バイトマン総裁はECBの独立性について、「自らの責務を尊重し、その範囲を踏み越えないことを前提としている」と語っている。「独連銀はユーロシステム(ECBを構成する域内各国中銀)の中で最大かつ最重要の中銀であり、同システム内で他の多くの中銀より強い発言権を持つ」とも述べた。同インタビューは6月29日に行われたという。
 総裁はまた、「われわれは独連銀が持つあらゆるリソースを全てのレベルで駆使し、自らが信じる姿勢を貫く。通貨同盟が安定同盟であり続けることを確実にしていく」と表明した。』

 筆者は上記のバイトマン独連邦銀行(ブンデスバンク)総裁の発言を読み、思わず目を疑ってしまったわけだ。
 ユーロ圏内では、加盟国がそれぞれ一票を持ち、平等に扱われるという建前だ。政府のみならず、中央銀行にしてもユーロ加盟国間の上下関係はない「はず」なのである。

 ところが、ブンデスバンクのバイトマン総裁は、堂々と、
「独連銀はユーロシステム(ECBを構成する域内各国中銀)の中で最大かつ最重要の中銀であり、同システム内で他の多くの中銀より強い発言権を持つ」
 と述べている。
 これでは共通通貨ユーロのコンセプトが根底から揺らいでしまう。

 実は、バイトマン総裁の言葉は表向きはともかく、実質的には正しい。何しろ、欧州中央銀行(ECB)はブンデスバンクを母体に創られた。ECBの本店は、ドイツのフランクフルトに置かれている。
 さらに、ユーロ発足以降、ECBが「ドイツのために」動くケースが目立っている。例えば、そもそもの今回の危機の発端となった、各国の不動産バブルだ。

【図166-1 アイルランド(左軸)、スペイン(右軸)の住宅価格指数の推移】
20120805.png

出典:tsb/ESRI House Price Index(アイルランド)、スペイン国家統計局

図166-1の通り、アイルランドはスペインに先駆け、2007年に住宅価格指数がピークをつけた。アイルランドにおよそ一年遅れ、スペインの住宅価格もピークアウトする。
 結果的に、両国の不動産プロジェクトは次々と不良債権化し、銀行問題が勃発する。
 また、同じ時期にギリシャ政府の粉飾決算問題が明らかになり、ユーロ全域のソブリン危機が始まった。

 ユーロ圏の不動産バブルであるが、まさにECBがドイツのために動いた結果、発生したのである。
 2001年にITバブルが崩壊し、製造業大国であるドイツは一気に不況に陥った。
 現在から見れば信じられないだろうが、ドイツの失業率は2005年には10%を超え、ユーロ加盟国で雇用環境が最も悪かったのである。
 何しろ、慢性的に失業率が高いスペインをも上回っていたわけだから、半端ではない。

 ドイツの困窮を救うため、欧州中央銀行は2001年5月以降、元々は4.75%だったユーロ圏の政策金利を断続的に引き下げていった。
 欧州中央銀行が利下げをすると、ユーロ全域で低金利政策がとられることになる。
 ユーロ圏の政策金利は、2003年6月には2%にまで引き下げられた。
 おかげで不況に苦しんでいたドイツは助かったのだが、当時、他のユーロ加盟国は、別に景気が悪化していたわけではなかったのである。

 不況でも何でもないにも関わらず、政策金利が引き下げられた結果、ドイツ以外の諸国で不動産バブルが拡大していった。
 現在のスペインやアイルランドを苦しめているバブル崩壊の発端となったのは、ドイツを救うためのECBによる利下げだったのだ。

 ユーロ圏がバブル景気に沸く中、ドイツは為替レートが変わらない環境下において「ユーロ加盟国への輸出」を増やすことで復活を遂げた。
 また、ユーロ・バブルが崩壊した以降は、ドイツは今度は「ユーロ安」を利用し、ユーロ圏外への輸出拡大で成長している。
 結局のところ、ユーロは高騰しようが低迷しようが、ドイツを利する仕組みになっているのだ。 理由は、ドイツの生産性が他のユーロ加盟国に比べ段違いに高いためである。

 産業革命後のイギリスは、インドなどに「自由貿易」を強制し、圧倒的な生産性の綿製品の輸出を拡大していった。結果、インドの綿産業は壊滅状態に陥ってしまった。
 インド側は「自由貿易」というお題目で関税自主権などを喪失しており、極端に生産性が高いイギリス製品に太刀打ちすることができなかったのである。

 現在のドイツは、ユーロ圏内で製造業について圧倒的な生産性を誇る。
 しかも、市場となる他のユーロ加盟国との間には為替レートの変動がなく、もちろん関税もない。

 産業革命後のイギリスと、現在のユーロ圏におけるドイツ。
 両者が似ていると感じるのは、何も筆者だけではあるまい。
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国会事故調、謎とリスク(1)津波到達と電源喪失

 田中三彦、福島みずほ、木野龍逸、七尾功対談「福島第1原発 残された謎とリスク
 (1)ー津波到達時刻と電源喪失時刻ー      書き起こし「ぼちぼちいこか」から

国会事故調査委員会の委員を務められた田中三つ彦さん自ら、事故調最終報告書の重要部分を説明されています。
是非ご覧ください。

【動画】8月8日 『福島第1原発事故 残された謎とリスク』国会事故調はどこまで真相にせまれたのか!?
http://live.nicovideo.jp/watch/lv102483266?ref=grel
出演:(敬称略)
   田中三彦(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員 科学ジャーナリスト)
   福島みずほ(社民党党首)
   木野龍逸 (ジャーナリスト)
進行:七尾功(ニコニコ動画 政治担当部長)

最終報告書のダウンロードHPはこちら
《主なお話》
【その①】
  ・津波到達時刻と電源喪失時刻『3時35分』
  ・SR弁の音『圧力と音』
【その②】
  ・1号機非常用復水器(IC)をなぜ止めたのか
  ・『55℃/時』
  ・東電のテレビ会議
【その③】
  ・爆発の映像がない4号機
  ・地震直後の1号機4階での出水
  ・ストレステストと下がった安全へのハードル
  ・原子力規制委員選定のプロセス

(七尾氏)みなさん、こんばんは。ニコニコ動画の七尾です。本日は、『福島第一原発事故 残された謎とリスク』と題しまして、7月7日に報告書を公表いたしました国会事故調が、どこまで事故の真相に迫ることができたのかを見ていきながら、今後の課題などにつきまして、皆さんとともに考えていきたいと思います。
 番組では皆さんからの質問も募集しております。今日は是非、コメントで皆さん、書き込んでください。よろしくお願いします。
 その前に一つ、本日国会で大きな動きがございました。皆さんご存知のとおりだと思いますが、消費増税法案の参院採決をめぐる衆院解散総選挙の確約につきまして、民主党、自民党、公明党間で様々なやりとりがありまして、現在も続いている模様です。
 ということで、大変申し訳ないんですが、本日出演を予定しておりました民主党・川内博史議員は急きょ欠席ということになりました。川内さんは、原発に関してももちろんそうなんですけれども、民主党結党時からの重要なメンバーでもございまして、なにとぞご理解いただければと思います。たいへん申し訳ございません。
 それではですね、本日の出演者の皆様をご紹介いたします。 
 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、委員を務められ、科学ジャーナリストでもあります田中三彦さんです。よろしくお願いします。

(田中氏)どうも。

(七尾氏)約半年間、この膨大な報告書をまとめられたわけですが、今の心境はとりあえずほっとしたというところでしょうか?

(田中氏)ほっとしたというところもありますけどね、いろいろ批判も入ってきてますので・・・そんなにほっともしてないですね。

(七尾氏)あ、そうですか。そしたら、本日はその辺も含めてじっくりとお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、社民党党首・福島みずほさんです。

(福島氏)どうも、こんばんは。よろしくお願いします。

(七尾氏)原発をめぐる課題も山積する中でですね、本日政局の真っただ中に突入したわけなんですけれども、我々国民は一体これ、どう理解したらよろしいんでしょうか?全く訳が分からない事態なんですけど。

(福島氏)そうなんですね。実は、昨日、今日の8日に消費税増税法案参議院の委員会で採決というのを民自公が決めたんですね。私たちは反対をしたけれど、議事懇談会でそれが決まりました。
 私たちは、というか、自公の野党はこう思うんですよ。消費税増税法案が成立して自民党と公明党が不信任と問責出すなんてのはおかしいと。そんなの茶番だと。
 今まで一緒に法案を成立させるぞとやってきて、成立した途端に掌をひっくりかえして出すのはおかしいじゃないかと、私たちは消費税増税が国民の生活をやっぱり破壊してしまうという立場から、それを阻止するためにやっぱり出すと。採決の前に衆議院で不信任、参議院で問責決議案を出すんだということで昨日出しました。
 そして、今日になって、初め自民党と公明党、というか自民党は採決した後出すと言っていたんですが、若手などから「いや、もうちゃぶ台返しでいいんだ。」解散とか言わないのであれば、っていうか選挙をやれば今自民党が勝つという可能性もあるわけだから、「とにかく採決の前にもう出しちゃえ」という話も出たんです。

 ところが、経済界から「何言ってんだ!」と。或いは公明党から「せっかく自分たちは皆を説得したのに、そんなので反対だ」と言われ、少しトーンダウンはしてるんです。
 でも自民党は野田さんが解散の時期を確約しない限り協力をしたくない。つまり、もしそれを言わないんであれば、例えば参議院で問責決議案もまだ消費税増税法案は採決してないわけですから、可決して成立してないわけですから、その前に出しちゃうと。すると参議院では止まっちゃってしばらく動かないわけですよね。
 ですから「それをやるぞ。それが嫌だったら解散の時期を明言してください」と。今朝、総理は解散の時期なんか言わないですよ、事前に。それは森嘉朗元総理みてもいう訳がない。

 それで、これで「近い将来、国民の信を問う」と言ったんですが、「近い将来」っていつだろう?
 七尾さん、「近い将来お酒を飲みましょう」って近い将来っていつでしょうか?っていうんじゃないけれど。
 ある民主党の国会議員が「近い将来っていうのは、来年の任期までも含む」って言っちゃったためにもっと話がややこしくなり、とにかくこれが白紙になりました。自民党が付き返しました。

 でもこの間、今後どうなるか。
 私はこう思うんです。国民の声を聴かない野田内閣は信任に値しない。消費税増税だけじゃなくて、原発再稼働、それから原子力規制委員会の人事、田中さんそうですよね。それから、オスプレイの配備など。これもおかしい。だから不信任に値すると思ってるんです。

 でも、今の段階では、民主党内閣もおかしいんだけれども、自民党も「とにかく解散の確約が取れれば協力をするけれども、それを言わないんだったら協力しない」って。
 だから国民にとってその法案がどうか?という話ではなくて、党利党略、自分たちの本当に有利なようにどう進めるかだけで、国民の側を向いてないんですよ。
 こんなの本当におかしいと思います。

(七尾氏)ありがとうございました。そしたら、エネルギーは是非今日、田中さんが来てるのでよろしくお願いします。

(福島氏)はい。よろしくお願いします。

(七尾氏)最後に、この皆さんご存知だとおもいますが、『検証 福島原発事故記者会見』の著者でもある、ジャーナリストの木野龍逸さんです。

(木野氏)よろしくお願いします。

(七尾氏)最近の木野さんのご活動について教えてください。

(木野氏)活動が停止中な感じですね。

(七尾氏)でも保安院ではいろいろ・・・

(木野氏)あ、保安院は行ってますけど、東電の会見は相変わらず出入り禁止なので活動停止中です。ちょっと何とかしようと思っています。

(七尾氏)はい。判りました。
 それでは本日、さっそく一つ目のテーマにいきたいと思います。
 まず、国会事故調の調査で明確になった事実についてです。
 延べ1167人に900時間超かけて調査した結果あきらかになった事実関係についてですね、簡単で結構ですので、田中さんのほうからまずお話いただければと思います。
 いくつかあると思うんですけど、ひとつずつお話いただいて、疑問等があれば皆さんの方から質問していただく、そういう形にしましょうか。簡単で結構です。

(田中氏)えーっとですね、事故で判ったことでいうとですね、事故の原因の調査をしてるわけだから、その原因は何だったか、どんなことが判ったかということだと思いますけれども、原因は大きくわけると二種類あります。
 一つは、背景的な原因というんですか。社会的なものとか政治的なものとか、いろいろそういうことですね。捉われた・・・

(七尾氏)『虜』ですね。

(田中氏)『虜になっていた』とかですね、そういうものが原因ですね。社会科学的な原因というか、そういうようなものがある。

 それからもう一つ、私が特に関わっていた事故原因の調査に関して言えば、物理的な事故原因ですよね。地震が起きた。それから津波が来た。それから事故っていうのは必ず機械は勝手にいくものではなくて、その間に機械と人間が相互作用するわけですよね。
 だから、事故のプロセスとか事故っていうのは、人間がどう関わっていったかというのが大きな要因です。

 だから、そういう意味で運転員の方がどのように操作をしたかということが非常に重要だというふうに認識をして、それでその原因を調査いたしました。

 それから、もう一つ重要なことは、問題は3.11の地震が起きた後についてだけなのかということですね。物理的な話でも。
 「建設のとこから3.11までに戻って、福島の第一原発は本当に地震や津波が来た時に耐えられる力っていうものを持っていたんですか?」それを徹底的に調べましょうということです。

 私がここである程度責任を持って話ができるのは、どっちかというと後者の方で、菅さんがどうだったとか東電とか電事連の絡みだとか、そういう話になると、私・・・はちょっと責任が持てないから、あまりその辺の話は勘弁してもらいたいと思うんですけど。
 後者のほうですね、3.11以前、もともと福島第一原発っていうのは基礎体力を持ってたのかどうかということに関して言うと、それはそんなことは無かったということですね。
 それは、地震の専門家でいらっしゃる石橋克彦先生が主に中心になってお調べになったことです。

 そんなことが一つですね。
 それから3.11以降について、どうだったのかということ、これについて言うと、大きい点はいくつかありますけど、ひとつ最大のもの、一番重要なものの一つ、もう一つ二つありますけど、その重要なものの中に『津波が到達した時間が全くデタラメだった』ということですね。このことは、東京電力が6月20日に報告書を出しました。
 それから政府事故調が7月23日だったですかね、に出してますけれども、ちょっと日にちに間違いがあるかもしれませんけど、どちらも最終報告書、或いは政府事故調の場合は最終報告書をかねて中間報告書を引用してますのでね、それを見ると
『3月11日の3:35に第一発電所に津波が到達した』
ということになっています。これは東電が言ってるのでそのまま検証せずに、政府事故調もそのまま『3時35分』ということで話をしてるんだと思います。

 ところがですね、『3時35分』というのは全然嘘で、東京電力の第一原発の海岸線よりも更に1.5㎞手前のところにある波高計の設置位置ですね、そこでの時間なんですよ。『35分』っていうのは。
 だから、そこから我々の計算では、1分・・・ちょっとかかるんですね。突堤・・・入り江・・・その防波堤の先端のところに届くのに1分くらいかかる。それから更にそこから岸へ到達するまでに東電の提供してもらった写真なんかを見ると、更にそれから50数秒かかってますので、最低2分かかってます。
 だから『3時37分』になるわけです。

 『3時37分』に到達してから、今度はどうも北から南に向かって津波が上がっていくので、溯上と防水性は無かったにしても建屋の中に入っていって水浸しにするまで、やっぱり時間がかかるわけですよ。少なくとも多分1,2分かかると思うんですけど、そうすると37分に来て38分くらいからディーゼル発電機が動かなくなるということがあるんならわかるんだけど、それより前にディーゼル発電機が壊れているっていう事実が、特に1号のA系の発電機なんかはあるんですね。
 これは、これを非常に調査されたのは多分福島先生もよく御存じの伊藤良徳(よしのり)さんがやられて・・・

(福島氏)同じ法律事務所です。だけど別にコンタクトとってませんから。最中はコンタクトをとっちゃいけないっていうんで。

(七尾氏)実はユーザーの皆さん、田中さんも言葉を慎重に選ばれてるのはご覧いただいてお分かりのとおりなんですが、なんか守秘義務っていうのがある?ある程度縛りがあるんですかね?

(田中氏)ありますね。守秘義務というのは、難しくてね、ここでどういうふうに言ったら僕は違反して捕まって・・・

(福島氏)大丈夫ですよ。今日是非Ustの皆さんに、っていうか今日是非田中さんの話をたっぷり2時間聞きたいと思ったのはこういう事情もあるんです。
 参議院の予算委員会で委員の皆さん、委員長などを呼ぼうとしたら、自民党が反対したんですよ。ところが衆議院の内閣委員会だと自民党は賛成したんだけど、なんか民主党がうだうだ言ってるって。

(田中氏)何を聞くの?

(福島氏)要するに委員の皆さん、委員長とか国会事故調のその時は委員長だったんですけど、黒川委員長を
呼ぶということが、国会ではすんなりいかない。もうざっくばらんに言うと、自民党は3.11以後の責任にしたかった。民主党は3.11前。3.11前の方が罪は重いんですが・・・

(七尾氏)要するに自民党の長期政権の時にいろいろ原因があると?

(福島氏)そうですね。だから自民党にしてみたら菅さんについて言ってもらうのはいいんだけど、3.11前が虜であって、要するに有体に言えば『原子力帝国、原子力村』であった、そりゃそのとおりなんですよ。そういうところがどうも気に入らないようで、なかなか・・・。ただし、こんなの宝物じゃないですか。
 ものすごいお金かけて国会で初めてこういう独立した事故調を作って。だって私たちイラク戦争の時の検証委員会やれって、それはできなかったわけだから、こういうので初めて国会が超党派で全会一致で作って、その蓄積をあたってもらい、国民が共有しなかったらほんと宝の持ち腐れですよ。
 だから、話してください。

(田中氏)話しますけども<笑>、話しますけど定義がはっきりしないんですよね。例えば、多分文言きちっとしたものがあると思うけど、事故調の中に入って知り得たことは、報告書で明らかにしたもの以外については、それは守秘義務が一生かかるということですね、簡単に言えば。
 そうすると、例えば事故調の会議室は何階にあったかとかね、そういうことも入って初めて判ることだけど、これも言っちゃいけないのか?とか。

(七尾氏)確かにそうですね。

(田中氏)それは多分言ったって問題ないと思うんだけど、だから何を言っちゃいけなくて、何を言っていいのかっていう問題ですよね。それからここで話をした、ここに書いた事実はいくらしゃべってもいいわけですけど、だけどここに関連することで、例えば運転員の方から聞いた話を更に補強してここで言っていいのかとか、そういう微妙な問題が有ると思うんだけど、それはある程度よさそうだろうと思って、今日はいくつかしゃべろうかなとは思ってますけど。

(福島氏)だけど、とっても大事な点で、前田中さんが委員に選ばれる前に話を聞いて私が感激をしたのは・・・

(七尾氏)委員になる前の話だったらいいんですよね?

(福島氏)そうですね。それで、私がとても去年の事故直後に田中三彦さんに来ていただいて勉強会などやったときに思ったのは、実は判りやすくいうと、津波で起きたのか地震で起きたのか、正直言うと東電も津波のせいにしたいわけですよ。
 地震のせいにしたら耐震指針の見直しとか全部やりなおさなくちゃいけないから。
 だからさっき言った伊藤良徳弁護士がやったという『実は津波が来る前に壊れていたんではないか?』っていうのはとても重要なポイントで、それが国会事故調の一つの、いっぱい??があるんですが肝の一つではありますよね。

(田中氏)そうですね、私は口が軽い・・・その当時・・・今も軽いんですけど、口軽の人ですから、実は3.11が起きた時から僕は克明にエクセルにデータを発表されたもの入れて、傾向などを見ていて、それで3月の27,8日頃原稿締切があって、『世界』というところに原稿を書いたんです。
 その時に直感ですけれども、データなんか公表されてないですから、そこで判ってたことだけ新聞記事とかそういうのを見て、ある程度判った、「これは地震でやられてるんじゃないか、特に1号機にそういう??が」あって、それをさっさと『世界』に書いちゃったんですね。

 そしたら、その後またそのことでいろいろ書いて、自分でそういうふうに言っちゃったものですからね、その後でてくる「データについて解釈しろ」とかなっても、いっても反証になるようなデータはなかったんですけど、それで事故調に入ったんでね、ある意味でいうと自分の仮設を検証するようにならざるをえない。
 だからもし、これ間違えたら私は首つらなきゃいけないのかなとか<笑>

(木野氏)それを今日一つお伺いしたかったんですけど、前にこれ、『世界』の1月号、田中さんの原稿で「1号機で水が漏れてたんじゃないの?」っていう仮説を書いてて、その後事故調に入って、そういったことは確認がどれくらいできたのかな?っていうのをちょっと。

(田中氏)結局、仮設との対峙っていう問題で毎日辛かったですよ<笑>仮説検証っていう雰囲気もあって、個人的には相当辛い思いをした。
 ただ、できるだけ冷静にしようと思ってたのと、石橋先生と私が共同議長という格好になって、共同議長っていうのは何かというと、グループが三つあったんですね。ワーキンググループが三つに分かれてて、ワーキンググループ1っていうのが私たちで、石橋先生と私が共同議長になって・・・

(木野氏)事故の検証?

(田中氏)そうですね。だからさっき言った物理的な事故の原因を検証しようということです。当然二人じゃできないので、協力調査員という方が二人のグループ全部合わせて10人とそこそこですか。

(木野氏)専門の方?

(田中氏)専門とか、さっき言った伊藤良徳さんという弁護士の方とかね。だいたい皆さん原発に相当詳しい人です。研究者もいらっしゃいます。
 そういう年の頃は40くらいから60過ぎまでという、そういう人たちが全部で10人。だから我々、そうですね、最大15人も居なかったと思いますね。
 その人たちは専従じゃないですから。

(七尾氏)そうなんですよね。

(田中氏)だから仕事を持ちながらだから、これは大変なことです。

(七尾氏)国会事故調の事務方の話すると、専従じゃないし半年間っていう短い期間なので、なかなか集中できないんですよね。

(田中氏)できないんです。それで、12月8日に任命されましたよね。それから1か月はほとんど組織作りと「どうやっていこうか」っていう委員会の話ばっかりで、1月6日か7日にキックオフミーティングといって協力調査員の方と委員の人たちがみんな集まって一堂に会して、「これからどうやるか」っていう議論をして、戦争みたいな議論があったんですけどね。

(木野氏)1月に入ってからなんですね。

(田中氏)そうですね。だからそこで1か月ないでしょ。それから報告書を書こうとして、こんな分厚いものを書こうとすると、原稿はこれの倍あったんですけどね。けずって・・・

(一同)えー!

(福島氏)もったいないじゃないですか、削るなんて。

(田中氏)いや、削るという・・・だからこんなんなっちゃうから「削れ、削れ」と。
 そういうドラフトを何回だしましたかね、4,5回、4回目か5回目にようやくこういうふうになるわけだけど、それまでにやっぱり2カ月くらいかかってますから、だから実際に調査というのができたのは、3か月とか4カ月、4カ月なかったくらいですね。その間にその15人くらいで・・・最大15人もいないかな、12,3人で仕事を抱える人たちにお願いしながら現地行ったり、いろいろヒアリングしたりということをやったわけです。

 それで、みんなで分析をしたりっていう会議をしたり、もう寝る暇も泣かった。我々も大変だったけど、協力調査員の方にものすごくお世話になったということです。
 だから、個人的な問題は、そういう中で考える暇もなくて、ただ直感としてね、石橋さんもおっしゃってましたけど、1960年代に建った原発ですよね。
 それは当時の地震学とか、その頃は体制設計審査指針なんて無いですから、そういうものに自主規制みたいなものの中でいくわけだけど、そんなものが今回のような大きな地震とか、Ssといわれる地震動があるんですけど、そういうようなものにもつと思うのがむしろ無理でね、だから「多分ダメだろうな」という気はしてました。

 結論で言うと、私自身がこの結論を望んだというよりは、後でお話できると思うけど、思いがけないところから、いろいろ運転員の方のお話を聞いていてね、やっぱり想像もしなかったことがありました、ということです。

(福島氏)たとえば?

(田中氏)例えばね、現場は、今このスタジオ静かでしょ?ここでバンと電気が消えるじゃないですか。切れて、ファンの音も何も無くなって照明も全部落ちて、そうすると聞こえるものって何かあるかというと、人の声くらいですよね。例えば自動車の走る音くらいは聞こえるかもしれない。それ以上静かな状態なんですよね。

(木野氏)何にも音しない?

(田中氏)音がしない。でも、このことはね、現場の方の話を聞いて初めて判ったことだけど、なんかね、騒々しいようなそんな先入観ありますよね?

(木野氏)だって熱いものがまだお湯沸いてて流れてるわけですよね?

(田中氏)ところが、やっぱり嫌になるほど静かで、何をしていいか判んない。一種の虚脱感みたいなことをお話になる方が多い。
 それで、一方、2号機、3号機はやっぱり静かなんだけれども、人の声しかしない。真っ暗でしょ?その中で、直後SVO・・・

(木野氏)電気が全部落ちた・・・

(田中氏)そうそう。3時・・・さっき言ってた津波到達時間の3時40分前後ですかね、そのあたりでSVOが起こって電気が切れる。
 そうすると、その辺りからいわゆる音が静かなんだけど、2号、3号はそうではなくて、特に2号の運転員の方にお話を聞いたら、原子炉の逃がし安全弁っていうSRVというんですけどね、あれが要するにお釜=原子炉だけど、高温高圧のお湯沸かし器ですね。
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(木野氏)やかんですね。

(田中氏)その巨大なやかんがどんどん圧力が上がってきちゃうわけですよね。そのままでいくと破裂しちゃうわけです。
 だから、そういうことにならないように安全弁みたいなのがあって、逃がし安全弁っていうんですけど、それがある圧力までいくとパッと噴くわけですね。開いて。

(木野氏)自分で噴くわけですね。

(田中氏)ええ。自分で勝手に開くんですね、自動的に。そうすると、その蒸気が猛烈なんです。普通タービン回してる蒸気ですけど、その量でいうと3分の1くらいがワーッと外へ出ていって、このくらいの太さの排気管を通って、下のよく格納容器、フラスコとドーナツみたいなの、あのドーナツみたいなところに入っていくわけですね。
 そこにって水になる仕組みですけど、そういうときにやっぱり水理学的動荷重っていうことだと僕は思ってますけど、かなり激しい音がするんですね。それから振動でしょう。
 それがズドン!ズドン!って間欠的に聞こえてくる、地鳴りのような音が。開いて流れて入って、あのドーナツっていうのは断面どのくらいあるか知ってます?

(木野氏)30メートル?

(田中氏)いや、直径は10メートルくらいなんですよ。10メートルで・・・

(福島氏)サプレッションチェンバーとかいうやつですよね。

(田中氏)そうです。円の直径が30メートルくらい、断面は10メートルくらいで結構ぶやぶやの浮き輪みたいな。そこに蒸気がが勢いよく入っていて、水に変わるんですね。水の中にブワーッと出てくる。その時に、多分振動が起きてるんだと思うんですけど、
 「ズドーン!ズドーン!っていう音がときどきするんだ。地鳴りのような音です」
ということを言ってました。
 そういうのが何度となく聞こえてきたと。それがSRVの音だと彼らは認識しているという。

(木野氏)それは経験上そう思うんですかね?

(田中氏)経験はしたことないですよね。だから、「これはSRVの音なんだな」というふうに・・・

(木野氏)「そうじゃないかな」って

(田中氏)それはね、私たちが聞いたんじゃないんです。SRVの音がそういうズドン!ズドン!としてるというということをあちらの方から話して、それで僕らは「あぁ、そんな静かなのか」と。
 SRVっていうのは、噴くとそういう衝撃があるということは昔から判って、それは問題になってたんですよ。水力学的動荷重って、アメリカで問題になったことがある。
 それで、噴いてくる排気管の形をストローみたいにしてると衝撃が大きいので、Tクインチャっていって、ちょっと話が難しいけれど、和らげる構造にしてるんですね。

(木野氏)ちょっと広げるみたいな構造ですね。

(田中氏)そうです。それを福島の場合も80年代の後半にそういう工事をしてると思います。そういうふうに衝撃がもともとあるところを和らげてあったけれども、結局そういう音がしてる。多分。私の推測ですけど。
 それでね、1号の方はどうだったかと思って1号の(運転員の)方に聞いたら、
何にも音がしてない
って言うんですよね。
「不思議じゃないですか?」
って聞いてます、僕は。
「結局SR弁っていうのは開いたかどうかをどうやって確認されたんですか?」
っていうことですけど、
「音的なもので確認したのではない。ただ動いてるんじゃないかなというふうに思ってた」
ということです。

(木野氏)でも中央制御室の電気全部落ちて真っ暗気になってる中で、スイッチを動かしても判らないわけですよね、状況は。

(田中氏)状況はわからない。だから「動いてた」という確認できる音とかメーターとか、そういう電気信号とか一切無し。ただ「動いていたんじゃないか」とただそれだけ。
 それで2号は動いてたということがはっきりわかる。

(木野氏)そういう意味では、1号と2,3の状況って、全然最初から違うんですね。

(田中氏)最初から違うんです。今僕が反論をある・・・名前を言うのは止めますけど・・・

(木野氏)反論される?

(田中氏)そうそう、国会の事故調の意見箱みたいなところに昨日入れてきた方が居てね、専門家の人で有名な人ですけど。黒川委員長宛てに手紙が来てましたけどね。それで僕の方に回ってきて見てますけど、
「国会事故調のSR弁の音でなんだかんだっていうのは、非常に稚拙な判断だ」
なんて、そういうふうに書いてましたね。なんか後ろの方を見たら、
「SR弁が開かなかったのは、メルトダウンをおこして高温になったから、フランジっていうところがあるんですけど、そこから漏れたんじゃないか」
というふうに言ってるんですよ。全然関係ない。

(木野氏)関係ないですよね。SRV・・・

(田中氏)炉心溶融が起きたころの話をしてるんじゃなくて、津波が来た直後くらいにSRVっていうのはもう噴かなきゃいけないんだけど、僕はそういう話をしてるのに、それを運転員の方が聞いてる時に異常と思ったかどうかについて判らないんで、ただ、「音がしなかったんですか?」と聞くと「してない」ということを言ってた。だからむしろ信憑性が高い。
 それから、あと3号も去年東京電力が書いてますけど、自分で内部調査したんですけど、その時に3号の運転員の方が、やっぱり
SR弁が作動するたびに音がドンドン、ゴーッとしてる
と、それも言ってる。
 あとそれで、そういうものなのかどうかということで、5号、6号の運転員の方に聞いたら、やっぱり
「数年前に4号を意識的に開けたことがある。その時にズドーン!という音が聞こえた」
とか。
 それでも足りないので、東海原発と福島第二原発と女川の原発ですね、そのところへアンケートを出して、それでSR弁みんな動作してるんです、あの日に。
「その時に音が聞こえましたか?」
ってことをアンケートしましたところ、東海原発は返事が無かった<苦笑>それから福島第二原発は「一切音がしてません」、それから女川の原子力発電所「1号から3号まで音がしてました」ということで、そのアンケートを貰った時に東京電力、これは気が付いて口裏合わせで・・・

(木野氏)1号が静かだっていうのを正当化するために・・・

(田中氏)静かだって言うのを正当化するのに話かなと思って、始めどう考えたらいいかなって思ったんですよ。そしたら、よく考えてて、実はこれ、気づくのが遅かったっちゃ遅かったですけど、これを書く前にそれを書けば良かったんだけど、はっと気が付いたのは、
「そうか、福島第二原発っていうのはドーナツがないや。」
 MarkⅡなんですよ、あそこは。

(木野氏)アドバンス、建屋と一体型になってる。

(田中氏)そうですね。ここをひっくり返したようなやつ、池みたいな。
 だから、全然振動形態が違う。
 逆に女川の1~3号は改良型ではあるんだけどトーラスの部分はほとんど変わりませんので、ドーナツそのままです。だから、ああいうものはみんな音がするんでしょう。それがそのまま振動するよってことが1970年代にGEなんかは問題にしたことですよね。

(木野氏)要するに振動が大きくなるともたないからっていう?

(田中氏)そうそう、もたないからもう少し衝撃を和らげろっと、そういうところが今回動いたわけですね。

(木野氏)そういう意味では1号がそういう状態、SR弁が噴かなくて開かなくて、開かないってことは中の圧力がどんどん・・・

(田中氏)どこかから逃げてたってことですよね。
 ということは、SR弁の何気圧まで上がるとSR弁が開くようになってるんだけども、安全弁機能というところは、それが作動することになってるんですけど、それが作動しなかったということは、そこまで圧力が上がらなかったという可能性があるでしょ。
 そうすると、なんで圧力が上がらないのかということになると、何かどこかで漏れてるという、そういう問題が。

(木野氏)その時間帯は数字は出て?

(田中氏)もう無いんですよ。

(木野氏)無いんですね。あぁ・・・。

(福島氏)ちょっと話が戻ってスイマセンが、津波到達2分前に電源喪失をしていたんじゃないか?

(田中氏)これは重要ですね。

(福島氏)だから、全電源喪失の原因は津波だとされてきたけれども、多分津波が来てでも押し流されたと言っていたけれども、政府事故調ではそうなってますよね。
 しかし国会事故調では少なくとも1号機の片方にある非常用ディーゼル発電機は津波が到達するよりも1,2分前に停止したのではないかということも書いてありますよね。これは重要なことですよね。

(田中氏)すごく重要です。それはね、ディーゼルは燃料として軽油を使っています。
 その軽油は海側の方に置いてあって、そこからパイプが・・・それは全部検証してないんですけど、パイプが地面を張ってきて、それで中のデイタンクというところに入れて、それから回してるんですけどね。
 そのラインがやられたかもしれないですね、地震でね。
 燃料系。完全に破断したのかもしれない。だけどこちらにタンクはありますので、それがもってる分だけ動いたという可能性もあるかもしれない。
 それから亀裂が入って少しずつ漏れてて、最終的にたまたま似たような時刻の時に止まってしまった、よれよれと運転してた、というような感じかもしれない。

 判らないけれども、そんなふうに津波が来る前に止まってしまったということがね、特に1号機のAっていうのは、これは起きてる可能性が非常に高い。
 伊藤さんとおとといだったかな、そういう集会があってお会いして、一緒に話をしたんです。事故調としてじゃなくて、個人として僕らが考えるとね、1号のA系は堂々とダメなんです。
 だけど、他のもね、2,3、3,4って言ったらいいのかな。そういう発電機が津波が到達する前に壊れてた可能性、止まってしまった可能性がある。3号機だとかそういうもの。

(福島氏)これはやっぱりとても重要なのは、浜岡など津波対策で防潮堤高くするとか、散々そんなこと言ってるけれども、例えば大飯原発だと防水するとかね。
 非常電気ディーゼルやってて、高台にやるとか言ってるけれど、そんなことやったって地震でぶった切られたりとか、それこそ大飯原発は活断層があったら終わりなんですよ。津波以前の問題でダメじゃないっていうところを、やっぱり電力会社は嫌なんですよね。
 そこが実はウィークポイント。「津波ではなくて地震が起きれば、いろんなものが切断されたり失われたりすることがあるんだ」

(七尾氏)最終的には、特定できるんですか?

(田中氏)いや、特定できない。

(七尾氏)できないんですか?

(田中氏)いや、どうして壊れたかについての特定は難しいでしょ。今まだ中に入れない。1,2,3(号機)の下(サプレッションチェンバー)に行かなきゃいけない。

(七尾氏)逆に今後入れれば判る可能性もあるわけですか?でも判らないですよね。

(木野氏)その頃にはもう・・・そういうのは撤去しちゃってるかもしれないし・・・

(田中氏)まぁそれは今は少なくとも、当面はダメですよね。我々がどうやって壊れたかについて危ない仮説を出すのはね、ちょっとやっぱり控えたい。
 その立証責任は東電にあるわけだからね、どうして止まったかについては、地震との因果関係等について話をするのは彼らであって、東電はもともと言ってる時間そのものが35分と、2分も早く言っていて。
 自然に見えたんですよ、最初はね。35分に到達して、37,8分から次々とやられていくっていうのは絶妙にいいじゃないですか。
 それで伊藤さんがほぼ確信を持ったのが、この原稿を書く頃ですよね。4月の末からですけど、伊藤さんがいつ出したかはっきり忘れちゃいましたけど、5月の中ごろに東京電力から見解があって、伊藤さんは確認をしたわけです。
「37分でいいか?」
という話を東電に文書で。そしたら、
「波高計の時間として認めていいんだ」
ということで、向こうも「あれは波高計の設置位置での時間だった」ということを認めてるんです。
 しかもですね、驚くべきことに我々は控えめに2分と言ったわけですよね。そこ(波高計)から2分と。東電は『2分半』

(木野氏)あー。

(七尾氏)えー・・・

(田中氏)『37分半から38分にかけて』というような表現になってたと思いますけど・・・

(木野氏)その後の岸に到達してからの溯上してからの時間というのは、東電が考えてる時間ってもうちょっと実は長かったりとかするんですかね?

(田中氏)だから、それ+α。だから、東京電力さんは、なんでわざわざ気前よく30秒付け加えてくれたのかよくわからないけど、そうすると更に困難になる。
 それは5月の中ごろに東京電力がそういうふうに言ってきたんですよ。言ってきたにも関わらず、その6月20日の社内事故調にはまだ『35分』で戻ってるんですよ。

(福島氏)酷いですね。

(木野氏)その辺が判らないですよね<苦笑>

(田中氏)その辺が判らない。だから伊藤さんが言うような表現を借りれば『二枚舌を使ってる』わけなんですよ。

(木野氏)うーん・・・

(田中氏)公式には『35分』って言って、我々への質問の回答には『37分半』みたいなことを言ってる。

(木野氏)でも国会の事故調の報告書に、ちゃんと東電の回答として数字が出てれば、それはそれで公式ですよね、一応。

(田中氏)だから多分、私直には聞いてないのでわからないですけど、新聞かなんかがインターネットのニュースか何かに、
『東電は最終報告書の見直しをする』
とか言ってましたよね?あれがこの絡みなのかな?という気はしてますけどね。

(七尾氏)もちろん入ってるでしょうね。

(木野氏)社内報告書の内容をあまりにも内容が違うので、国会事故調も政府事故調ももう一回見直しをしなきゃいけないっていうのは段々言いだして、ただいつまでにやるっていうのは決めてないんですけどね。

(七尾氏)まだ受け皿というか体制がきちんとできてないんですね。

(田中氏)でもね、僕らは半年しかなかったわけでしょ?それから人数も少ない。
 向こう、政府事故調っていうのは大量の・・・根本的に『35分』っていうものが波高計の時間だったっていうことはね・・・

(木野氏)最初から知ってたと思うんですけど

(田中氏)最初から知ってたのか、うかつにも・・・最初から・・・

(木野氏)知ってますよ。だってそこで時間とってますからね。

(田中氏)だからそれに見事に騙されてた感じがありますよね。だから、これは最大な問題、最初に言いましたように判った中で最も最大じゃないか。詳しくは事故調、ダウンロードすると時間かかるし印刷するとお金もかかる、カラーだから。

(木野氏)これ販売するっていう噂が・・・

(七尾氏)今ユーザーから「欲しい、欲しい。販売しないのか?」っていうコメントがたくさんある。

(福島氏)販売したらいいですよ。だって民間事故調って、あれも本で出ましたよ。

(木野氏)国会事故調の事務局が「もしかしたら売るかもしれない」っていうことをちょっと・・・

(七尾氏)これ売らなくちゃだめですよ、逆に。

(木野氏)売るか配付するか・・・

(福島氏)非常にわかりやすいんですよね。資料もついてるし提言もついてますからね。私なんか提言を読んでほしいとか思うけど。

(七尾氏)ちなみに民間事故調は10万部出荷されていて6万部は売れてるんですよね。

(木野氏)売れすぎ。いいなぁ<笑>

(七尾氏)そうなんですよ。学研から出てるんですよ。
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 (2)へ続く
関連記事

国会事故調、謎とリスク(2)IC停止作業

  (2)ー1号機のIC停止作業の経緯ー
 (1)からの続き。
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(福島氏)多分この国会事故調も全部ダウンロードしたらものすごい大変なので、私たち国会議員はもらえたんですが、普通の人が、普通っていうかの国会事故調の資料ってみんなの結集なんだから、みんなが読んで勉強したり、「これはどうなのよ」って話ができたらいいですよね。

(木野氏)ですよね。

(田中氏)今の津波の話はね、本文中にはさっき言ったように本文に最初はこんなにあった、それを全部バッサリととって参考資料として、「そういう難しい話は参考資料に持っていこう」ということで、あんまりここ(最終報告書本文)に入れると難しくなるのでね。
 エキスとここに書いて簡単な記述をここにして、参考資料で詳しいものを書くということになってて、そのほかに要約版っていうのもありますよね。大体こちらは読んでいただけてるんでしょうけど。

 だからね、SR弁の話なんていうのは、ちょっと私は淡泊に書きすぎたなと思うんだけれども、もっと大袈裟にというか詳しく書けばよかったかな。
 或いは「参考資料に」とも思ったんだけれども、参考資料にヒアリングのQ&Aですよね。私たちと運転員の方のやりとり全部書くっていうことは、ちょっとそれはできないんですね。

(福島氏)あと、「ここの部分はすごくわかったことなんだ」とかいうところとか、ユーザーの皆さんに話していただけることとかありますか?

(田中氏)まだまだいっぱいありますけどね。
 1号機なんかでいうと、何で1号機かというと1号機が非常に怪しいということですね。
 それで、簡単に言うと1号機ってもう、津波でもそうですけど、なんか地震の要素について見過ごしてる可能性があったら、2号、3号もあるかもしれないけども、1号ではっきりしてしまいますので、それは今後の他の原発の対策に関しても重要・・・

(福島氏)そうですよね。直結しますよね。

(木野氏)やっぱり最初のその爆発までの時間が短すぎるとかっていうことなんですかね?

(田中氏)そうですね。それで1号に関して言うと、「くさい」ですね。

(福島氏)何が「くさい」んですか?

(田中氏)やっぱりさっき言ったようにSR弁が動かない、あれはSR弁が動かないということは、どこかから漏れてるということ、圧力が思うように上がらないということ

(福島氏)とっくの昔にどっかぶっ壊れてるということですよね?

(田中氏)ぶっ壊れてるというほどにぶっ壊れると、もっと早く水素爆発に多分いっちゃったと思うんですけど、でもあれはね、そんなに大きな傷じゃなくて、水道管の破裂みたいなね。

(福島氏)ただし割と最近の新聞で、『燃料棒が溶融している点ではなくて、格納容器が損傷していたことも当時わかっていた』なんていう記事も出ましたからね。

(田中氏)あのね、格納容器は難しいんですよ。格納容器って風船みたいなものだけど、あれはね、内側からバンっと内側から・・・丸いものってそうなんですけど、内側から膨れてくるものに対して結構強いんですよ。だけど間違ってこんなんなってると、間違ってボコッていっちゃうんですよ。ああいうのを『座屈』っていうんですけど、こういう球形のドライウェルとかはね、外側からの圧力に非常に弱いんです。だから、外から加わる力に弱いんです。
 だから水素爆発を一発ドカンっと起こした時に、外圧がかかるんですね。それで、例えば溶接部とかに亀裂が入ってるかもしれないし、っていうのもあるし、格納容器は今どうなってるかというと、これは原子炉圧力容器だとしますが、そうするとこれを今冷やすためにここに水を入れてるわけです。一生懸命。水をいれて循環なんとか方式ってやつね。

(木野氏)循環注水・・・方式とかいってますけど。

(田中氏)循環注水冷却という、あの方式はどうなってるかというと、ここに入れますよね。そうするとなぜか知らないですけど、じゃじゃ漏れしてるんですね。
 ここ(圧力容器)からじゃじゃ漏れする。そうすると次にフラスコ(格納容器)が覆ってますよね。あのフラスコのどこかに穴が空いてるとそれも漏れるんですよね。
 それで結局建物もどこか漏れてて地下までいっちゃう。それが1,2,3とみんな合体してぐるっとまわってくる。

 これ「循環」・・・循環っていうと普通は経路が判ってるんですけど、入れた水がどうしてじゃじゃ漏れ起こして、2カ所でじゃじゃ漏れをしてる。そのじゃじゃ漏れの場所が、特に格納容器に関しては確定できない。
 それから、もしかすると原子炉圧力容器も本当にみんな下ばっかり言ってるけれども、本当に下なのか?僕なんか横からも出てるんじゃないかっていう気もするしね。
 下はもちろん、これは2カ月後に書いた『世界』の5月号というところに、私はメルトダウンが起きてて、制御棒のメインコアモニターハウジングというところ、制御棒とかそういうとこから漏れたんじゃないかってことは、もうその時3月に書いた原稿で書いてるけど、それもあるんですけど、その後いろいろ考えると、シュラウドっていうのが溶けた可能性があるんだろうと。

 そうすると横に水が、燃料が行くと、配管なんかは損傷して、そうするとそこから非常な勢いで出た可能性があるなとか思っていますね。
 だから、原子炉圧力容器の損傷は特に1号はしてるんですけど、その箇所がよくわかんないですね。
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(木野氏)圧力容器が損傷してるっていう話になると、随分前ですけど、東電が言うには、「横からもし損傷して漏れてるんだったら、下に水が溜まってるからいいじゃん」みたいな説明をたまにする、してましたね。

(田中氏)そんなに上の方じゃなくて、やっぱり下の方ですけどね。燃料域よりも下のところだと思うんですけど。
 再循環系出口配管とか入口配管とかあるんですけど、その辺のあたりがやられてないかなっていう気はちょっとするんだけどもね。
 下もやられてます、当然。
 だけど上もやられてる可能性もある

 あとですね、判っていることで言うと、『非常用復水器』という問題ですよね。
 あれも、いろいろ検討しましたけれど・・・

(七尾氏)1号機のICですね。

(田中氏)そうそう。これもJNESに計算をやっていただいたんだけど、そのことをちょっと言わないといけないですかね。後で訪ねてくれればお話いたしますけど、あれはね、『非常用復水器をなぜ止めたか』っていう問題がありますよね。よくある「運転員がダメだ」っていう・・・

(木野氏)55℃/時・・・

(田中氏)政府事故調は、「さかんに運転員が判ってない」っていうふうに。
 あのね、それが無茶苦茶な話でね。
 東京電力の幹部の偉い人、僕はあんまり応援しないけど、現場の運転員の方の話を聞いていても、その場での真っ暗の中で最善を尽くされてると思うので、こうやって何か月も、半年も、1年もかけてみると、運転員は「ここを気づけばよかった」とか、「あれを気づけば良かった」って結論が出るんだけど、それは1年かかったことですよ。
 それをね、2時間、3時間で今目の前で何が進行してるか判断して、「これが起きてるからこうすべきだ」とかっていうことは、まず無理ですね。
 それはそういう訓練もしてなかったし、それから教育施設も無かったし、訓練施設もなかったし、

(木野氏)要するに(非常用復水器を)動かしたのを見たことがある人が居ない

(田中氏)居ない。動かしたことは無いんです。だから、それはそういう教育の問題とかいわゆるシビアアクシデント対策とか、全交流電源喪失が起きた時の対応の仕方とか、長時間にね、そういうものを考えてないんだから、これは無理ですね。
 それでそれよりも、東京電力も政府事故調も、運転員がせっかく動いた非常用復水器を止めた理由として、『55℃/時』という温度変化率の制限っていうのがあるんですよ。難しいでしょ?

(福島氏)はい。でも続けてください。<笑>今日はちゃんとこういうことを理解するということで頑張ります!どうぞ。

(木野氏)「1時間に55℃を上回る温度変化をすると危ないから止めなきゃいけませんよ」っていうのが手順書に書いてあるんですよね

(田中氏)そうです。例えばね、福島さんがなんか大事にしてる機械があって、それが温度変化する機械だったとしましょうか。
 非常に生活に役に立って、そういう機械があったとして、これを何十年ともたせたいと思ったらですね、「こういうことに注意しろ」とマニュアルがあったとしますね。そこに「あんまり急激に水を入れないでください」とかね、それから「温度を変化させないでください」とか。それはコップに急にお湯を入れると割れるというのは体験的にわかりますよね。
 それと同じことで、それも急激なのは当然なんだけど、「できるだけ温度の変化はゆっくりしてください」『その変化を1時間当たり55℃以上上げたり下げたりしないでください
 だから、『55℃/h』って言うんですね。
 例えば1時間100℃にすると寿命が縮まるので、そういう話ですね。
 それで長持ちさせようという考え方です

(木野氏)要するに40年も50年も使い古すという・・・

(田中氏)『熱疲労』っていうんですけど、あんまり温度の上げ下げが急激に何度も行われると、金属が参るということですね。
 それをマニュアルには東京電力の保安規定というものなんですけど、これは自主的。その中に『55℃/時の変化はいつも考えなさい。以内に抑えろ』というのはあるんですね、確かに。
 あるんだけれど、運転員の方がこれで止めたはずはないんです。
 なぜかというと、簡単なことを言うと、運転のパネルに「今原子炉の冷却材の温度変化率は何℃です」っていうのは出ないんですよ、別に。そういうのは出ないです。電車の「今何キロで走ってます」ってああいうようなメーターはないんです。
 やりたかったら圧力から計算をしなくちゃいけないんです。そんな暇はもちろんないわけ。
 それから運転員の方は誰だって知ってるんです。『55℃/時以内、ソフトに運転する』ということは知ってるんですよ。そんなことは設計家の僕も、彼らも体に染みついてるんですけど、設計屋もしみついてます。

(木野氏)原子炉に限った話じゃなかった・・・

(田中氏)全然ちがう。もともとは、火力発電とかね、化学プラントとか似たようなものですよね。ああいうところでもそれがあったんですね。それは一世紀以上前から、『経験則』っていうやつ。
 なんかね、『55』っていうとすごく格好よさそうですよね。

(木野氏・七尾氏)<笑>

(福島氏)はい。

(田中氏)「なんで56じゃないんだ?」とかね。

(木野氏)根拠ないんかんじらしいですよね。

(田中氏)だけどね、なんかすごく技術さんが精密に計算して出した・・・

(七尾氏)100年も経験則で語られる・・・

(田中氏)それでこれは何になってるかというと、華氏を摂氏に直しただけなんですよ。
 100F/時を1.8で割ると55℃になるんですよ。

(七尾氏)そうなんです?

(田中氏)そうそうそう。だから大して意味はない。如何におおざっぱにできてるかというと、100Fというのは、ボイラーを立ち上げたり止めたりする起動停止に主に温度変化はでますので、その時の水とか蒸気の温度変化を『55℃・100F/時』という経験則があるわけ。それは19世紀の終わりか20世紀の始めの方からあるわけです。

(福島氏)そうすると、東電内では「55℃/時っていうマニュアルに従った」というのは嘘っぱちであって・・・だって現場で計算できないんだから、別の理由があるってことですよね?

(田中氏)そうです。だから僕は「それで止めた」と言ったから、そんなことは有り得ないと思ったんですよ。
「緊急の際にせっかく立ち上がったものを止める理由にならない」
と僕はずっと言ってたわけです。
 だから、何か隠してて、逆に言うとその時に僕書いてますけど、
運転員の方は、配管がICが動き出したら、圧力が急激に落ちてるものですから、その落ちが早いので、それにびっくりして止めようとしたんじゃないか
ってことを僕はずーっと言ってるんです。

(木野氏)その圧力の変化は見られるんですか?

(田中氏)圧力の変化は見ることはできます。温度の変化は見えない。

(福島氏)そして結果どうだったんですか?

(田中氏)それで、実際に止めた人の運転員にお話を聞いたわけです。そしたら聞いた方は3人関係してた。3人にチームプレーで止めてるんですよ。

(木野氏)ほう・・・

(田中氏)それで事故調の報告書にきちんと書いてますけど、まず運転中央制御室とか中央操作室はこれですね。そこに居る人は、普通は11人居てね、一番上は当直長、主技操作員とか??操作員とか階層性になってる。
 それで、一番偉い当直長さんから、っていうそういう格好になってる。 
 ここの人の名前を言うと人の名前がはっきりしちゃうので、職場の中で。だからちょっとそれは言えない。
 ある運転員の方がね、「イソコン」っていうんですけど「IC=アイソレーションコンデンサ=非常用復水器」のことをね。
イソコンが立ち上がったみたいですよ。立ち上がりましたよ。
ってある運転員の方が言うんですよね。それを言われた人がですね、その目の前にある圧力計をずーっと見てたら、圧力がどんどん下がっていくんですよ。それで、普通の原発の通常運転圧力っていうのは、70気圧前後です。パスカルとかメガパスカルという・・・慣れないでしょ?気圧の方がいいですかね?

(福島氏)いや、なんでもいいです。

(田中氏)そうですか?

(福島氏)<笑>大丈夫です。

(田中氏)それを70気圧くらいのところなんだけど、それを11分したら、なんと46気圧まで落ちちゃったんですよ。

(福島氏)「壊れている、おかしい」と?

(田中氏)「これは圧力かなんかが抜けてるんじゃないか」と。
 それで、それはICが立ち上がったらいきなりスーッと下がっちゃっていっちゃったものだから・・・

(木野氏)立ち上げてから下がったのは明確・・・

(田中氏)そう。地震が来て6分後に動き出すんですけど、それで動き出して11分後にはもう46まで来ちゃった。
 それで、それを見ていて効果が激しいので、
漏れている可能性がある。どこかが漏れてるかもしれないので、一回止めたい
というふうに別の運転員の方に、しかるべき権威を持った方ですけど、その方にいう訳ですね。
 そしたら、その人も
「圧力を手のうちに収めたい。あんまり勝手にそんなに下がられると困るので、制御したいということで止めたい
というんですね。だから「いいですよ」って言うんです。そしたら最初に圧力が下がってて止めたいと言った人が、その人が圧力を見てるだけで操作はしないんですね。今度ここに、また是非・・・208ページにICの動かすレバーの写真。これは私が現地に行って写真を撮って・・・

ee19fa41-s.jpg

(木野氏)これは田中さんが撮ったんですか?

(田中氏)これ、レバーがあるんですけど、このレバーをポッとひねると、そうするとICが止まるんです。それを操作する人に
○○さん、非常用復水器のA系とB系を止めてください
と言ったら、
はい、わかりました」
って、そういうふうに言って止めてる
んです。 
 そうすると、最初に何が動機だったかというと、
圧力の下がりが激しい。どこかが漏れてる可能性がある』
 やっぱり誰でも思いますよ、運転する人だったら。
「こんなに早く落ちるはずがない


(福島氏)確かに。ということは、非常用冷却装置が壊れている?

(田中氏)と思ったんです。それで止めたんです。
 それでここがずーっと争点になってくるわけで、それに対して東京電力と政府事故調は、一貫して『55℃/時の運転規則に反するから、それで止めた』とこう言ってるわけです。

(福島氏)でも実際は違うわけですよね。

(田中氏)そんなこと考えてないというより、そんなことは良く知ってるけれども、ここを止めたのはその話で止めてるわけじゃないと。その最初に3人の一番最初の方が「あ、早い。漏れてる可能性がある」と。
 考えてみれば当たり前のことで、この問題は、『動き出すとそういう性能で圧力が落ちるのかどうか』ですよね。そうでしょ?

(木野氏)温度がそれだけ下がって圧力がそんなに・・・

(田中氏)それが正常なのか異常なのかっていう。普通、機械装置っていうのは、そういうものが動き出したら、自動車だってちょっとアクセル踏んだらどのくらいスピードでるかなんて、計算わかるわけだから、そういうのは運転性能線図として最初にあるはずですよね。だけど
「設計したGEがこの性能線図を残してるはずだから、それをご覧になったことありますか?」
ということを聞いたら、
「あることは知ってるけど、よくは見たことない。見たことはあるけど」
という程度なんですね。
 結局、その下がり方が異常なのかどうかっていうのが判らないわけですよ。
 もしそれが正常だったとしたらね、止める必要はないわけで、例えそれで『55℃/時』を上回るようなスピードで温度変化しても、もともとそういう性能を持ったんだったら、それはしょうがないわけで。
 だから、矛盾してるんですよ、彼らは。

(木野氏)二つの意味で矛盾してますね。

(田中氏)じゃあ使えないでしょ?<苦笑>

(木野氏)そうですよね<苦笑>

(田中氏)動かすと『55℃/時』を上回るような機械がついてたと。そういうものなのか、それとも本当にどこかに穴が空いていたのかと、その二つを冷静に判断しないといけない
 それを判断したいというので、是非聞いていただきたいのは、川内さんの委員会の時、そういうところで我々が川内博史議員というところを通して、保安院に
「これはおかしいのかおかしくないのかということを計算で示してください」
ということを頼んだんですね。

(木野氏)それで出てきたのがJNESの試算、原子力安全基盤機構が・・・

(福島氏)あれですよね、東京新聞なんかにも載っていたり、これに入られる前の話ですよね?

(田中氏)そうなんですよ。国会事故調に入る前から。

(七尾氏)委員になられる前のお話。

(田中氏)実をいうとね、僕は12月8日・・・

(福島氏)だから手順書のことも大変問題になりましたよね。

(田中氏)そうなんですよね。それも全部ここで。

(七尾氏)これ、手順書には温度変化による操作の記載はないんですよね?

(木野氏)いや、55℃ってある。

(七尾氏)あ、そうですか。

(田中氏)あのね、これはね、言うと・・・これは守秘義務は無いんですけど、黒塗りのマニュアルが出てきたでしょ?

(福島氏)そうですね、有名な話ですね。

(田中氏)あれは結局、私たちが・・・川内博史議員は当時科学技術イノベーションの委員長をやってて、その関係で東電を呼んだり、それから保安院を呼んだりして、去年の夏くらいからそういう活動をされてたんですね。
 私たちはそれを勝手に「川内ヒアリング」と内々で呼んでたんですけど、そこへ去年の7月頃に私が呼ばれて、「サポートしろ」ということで行ったんです。
 私と一人じゃ寂しいので後藤政志さんと、それから東芝の格納容器を作ってた、当時の第一線の人ですよね、渡辺敦夫さんという、その3人と、原子力資料情報室の上澤さんという人がいらっしゃいます。その4人で大体でてたんですよ。【参照:10月26日 【動画・内容起こし】福島第一原発設計技師(田中三彦氏、渡辺敦雄氏、後藤政志氏):地震の揺れで機能喪失を指摘【その①】】
 補佐というか、補佐がよくしゃべりまくってたわけだけれど<苦笑>
 その中で「ICの挙動を55℃かなんかで止めたっていうのはおかしい」し、「もしかすると配管壊れてるんじゃないか。」
 「55℃」「55℃」って言うから、もう怪しくてしょうがないから、別な理由で止まってる可能性があって、それはもしかすると運転員の方が「漏れた」と思って止めたんじゃないかと。漏れたかどうかを計算してくださいということを言って。
 そういうのをFTA解析、FTAって言うんですよ。A=Analysis、F=はFault。Faultっていうのは「間違い」もあるし、「故障」ですね。T=Treeっていうのは樹上、木の枝に分れて。
 Fault Tree Analysis=FTAで日本語訳では『故障の木』、変でしょ?『故障の木解析』っていうんですけど、FTAをやってくださいっていうのを保安院に一生懸命頼んだんですよ。 
 そしたらようやく保安員の下部組織といっちゃいけないんだけど・・・

(木野氏)保安院を支える・・・保安院の所管する法人。

(田中氏)保安院を支える外郭・・・正式名称は、

(木野氏)原子力安全基盤機構=JNES

(田中氏)そのJNESの研究者の方がすごくいい人でしたけど<笑>、お二人来ていただいて、我々のくずみたいな注文を聞いてくれてね、それでやってくれたんですよ。
 そしたら最初やっていただいた時には不満でね。それはなぜかというと、ちゃんとした寸法のものを使って計算してくれてなかったとか、大雑把なもの。だから、そういうのをやり直しをしてもらったり、いろいろインプットデータに注文をつけながらやっていただいたんです。
 それの結果、結論は出ませんけれど、「穴は開いてないかもしれない。穴は開いていない」というのが彼らの結論です。
 それで我々はそれを「はい」と言ったわけじゃなくて、「穴の大きさをもうちょっと変えてくれ」ととか、「穴をICに限らないで、他のところでもいいかやらってみて」、それだって(圧力が)落ちるわけでしょ?だから、それを合計12ケースくらい、あっちに穴開けたりこっちに穴開けたり。

(福島氏)これですね。
c05316a3.jpg

(田中氏)そうですね。220ページ。これであちこちに穴を空けてくれて、いろいろやってくれたんです。穴の大きさが最初大きく開けるから、「そんな大きく開けたら、あっという間に水がなくなっちゃうから、そんなに開けないでくれ」って言ったりね。
 できるだけちょろちょろ漏れさせてですね、地震が来た直後は、まだデータがありますのでね、それと合うかどうか。水位とか圧力が合うかどうかを計算してもらったんですよ。そしたらそのJNESの一応の結論は、
穴が空いていても、小さい場合には、原子炉の水圧・水位ともそう狂いはない。それだけでは何とも判断できない
ということになったんですよ。

(木野氏)ただ、それが長い時間続くと漏れると。

(田中氏)そうですね。これの穴の開き方は・・・はじめ3㎝なんてかなり大きい穴、3平方㎝、0.1とか0.3平方cmっていう、細い亀裂ですね。そういうものが入ると、大体そういう場合にはあんまり矛盾が出ない。
 だけど、水が1時間で7.2トンくらいそこから出ます。10時間もほったらかしておけば、何十トンと出てしまう。 
 だけど、そう簡単な計算ではなくて、穴の大きさで小さかったのがもっと大きくなっていく。それから圧力が減ると、穴の大きさによってどのときどういうふうに出るかわからないわけですから、実態がよくわからないので、あまりこういう計算っていうのは参考にはならないけれども、大事なことは、漏れてても簡単に・・・僕が最初、去年の3月か4月に「漏れてる」とか「地震で破損してる」と言ったときに、多くの専門家の方がね、
「そんなことしたら水がどんどん落ちるし圧力が落ちる。そう落ちてないからそんなことない」
ってずーっと言い続けてた人に対して、そうではないということがこれで一応判った。
 ただし、これはあくまでも一般的な話で、こういうふうに事故推移したかどうかは判らないです。


(木野氏)ただ可能性の一つとして、あると。

(田中氏)それで重要だったのは、こうやって事故が起きた時に設計的な解析の仕方じゃなくて、
ここにこんな穴が空いたんじゃないか、あんな穴が空いたんじゃないか、こっちが壊れたんじゃないか」
ということをやって解析していく自己解析手法というのがあるんですよ。そういうのがFTAっていわれるものですね


(七尾氏)TMI《スリーマイルアイランド》でもやってましたね。

(田中氏)はい。これをTMIでもやってるんですけど、FTAっていう方法でやらないとだめだよっていうことを言い続けたんですね。
 もちろん、向こうのJNESの方も専門家だからそうは思ってたと思うんですけど、判ってはいるんだけど、「やれ」という人が居ないからやらないというのがあるのかもしれないけど。

 だから、これは川内先生のところを通して、そういうことをやれたということですね。
 事故調としては、これをなんかJNESの結果をここで披露してですね、「まるで自分もしないくせにこんな人のふんどしで」って見えるけれども、実をいうとここに乗っかってるのは、これは僕らのオリジナルとは言いませんけれど、かなり川内先生を通して実現した最初の解析例なんだということですね。

(木野氏)それはJNESに言いだしたのは8月とか9月とか夏くらいだったんですかね?

(田中氏)去年の7月頃から「あれもやってくれ、これもやってくれ」っていうのは大体9月ころまで掛かってましたね。10月頃まで。
 そういう結果を今度は技術的知見の意見聴取会とかいう保安院主催の会がありますよね。あそこにこれがそのまま出されるわけですよ。そこに僕らが呼ばれたかというと呼ばれないわけね。
 そうするとJNESが何のあれもなくこういうふうにやったように見える。またそれの委員をされてる方も、昨日、おととい僕のところに文句を言ってきた専門家の方はその意見聴取会の方の良いんです。

(木野氏)<笑>

(田中氏)「こういう計算をお前らやってない。それをどう思ってるんだ?」って、実は全部僕ら知ってるので、そのことをここにものっかってない計算について彼は言ってきましたけど、そういう経緯でやっててね、ずさんではないと僕らは思ってるんですけど。
 そんなことがありました。
 その『55℃/時』っていうのは、全然東京電力も政府事故調も絶対引き下げない。

(木野氏)下げないですね。言い続けてますね。

(田中氏)だけど、現場でやった3人の方がどうやって止めたかっていうのをちゃんと言って、それはここに書いてあるわけだから、『55℃/時』というのは無関係だというのは、早くもうやめてもらいたいわけ。
 それをね、逆に死守すると、勘ぐりたくなりますよね。何か別のことがあったんじゃないか。

(七尾氏)もうそのパターン、非常に多いです。

(福島氏)でも運転員のミスにしたいわけでしょ?

(田中氏)そういうこともあるでしょうね。

(福島氏)マニュアル的な問題みたいに。

(木野氏)人のせいにしとけば原子炉は間違えなければ大丈夫みたいな。

(田中氏)そういうことはありでしょうね。そういう蟻の一徹じゃないけれども、配管なんかも弱っていて、更に圧力上がってきたときに遂に耐え切れなくなってそこから壊れるということはあるんでね、その辺についてあんまり甘く見ないほうがいいだろうというふうに僕らは思う。
 それで計算も参考にするのはいいと思うんだけど、当然計算をした人は、合わせて運転員の方に直によく話を聞くことですね。それをしてないでしょ?それで、運転員の方にこれくらい言っても守秘義務にならないと思うけど、こういう話、
「音の話なんかは政府事故調のヒアリングの時されましたか?
って聞いたら
聞かれなかった
と言ってますね。
 だから、基本的に・・・関心のもち方が違うっていうのかな。

(木野氏)国会事故調の報告書で一番「おぉ!これは良くやってるな」と思ったのは、本当にヒアリングの数をやって、運転員の話からいろんなことが判るわけじゃないですか。一番良く知ってて、現場で見てて、音も聞いて、五感で感じてるのを良く拾ってるなっていうのを思ったんですけど。

(福島氏)そうね、それから私もこの国会事故調の最中は、よく菅さん呼んだり誰呼んだりっていう華やかなインタビュー、政治家のミスがどうかとか、政局的なこと、とにかくそういうことがとても指示がどうだったかということがとても問題になったけれども、こういう地道なところで国会事故調がやっぱり事故の原因に肉薄して、それはやっぱり問題を矮小化しないためにすごく科学的に努力してるというのは、是非もっともっと皆さんに知ってもらいたいなと思うんですよ。

(田中氏)そうですね・・・僕らもね、委員会ってあったでしょ。

(福島氏)毎回世界中に配信されてましたよね。国会議員も私たちもはぁ!っていう感じで・・・

(七尾氏)田中さんがいつしゃべってくれるかなって、ずっと注目してて・・・

(福島氏)田中さんと石橋克彦さん入ってるんだから・・・

(七尾氏)でも少なかったですよね。

(田中氏)しゃべるとね、「ちょっと長いから短くしてくれ」とかね。

<一同苦笑>

(木野氏)あれは難しいと思うんですよね。

(福島氏)今日、ちょっとせっかくなので、いろんなことが判ったという面と、ここは判らないとか、それからこの国会事故調の報告書とはちょっと違うけれど、割といろんな人に会うと「4号機心配なんです」とかね。でも4号機のこととかまだ判らないんですよね?すいません、話が飛んで。

(田中氏)当然、そこへ話が飛びますよね。
 あの4号機っていうのは、僕が一番感慨が深いというか。4号機の原子炉の設計をしたから。

(福島氏)そうでしたね。

(七尾氏)そうか・・・。

(田中氏)あれは製作中にちょっとゆがんじゃったんですけど・・・。それで本書いてますけど、岩波でね。『原発はなぜ危険か』

(福島氏)そうでしたね。読みました。

(田中氏)だから日立の人から脅迫も受けたし。東電から脅迫は受けなかったですけど、苦しい想いをしたことはありますけどね。
 そういう原発が今度壊れちゃったから、悩むことは僕個人的には無くなったけど、問題は非常に怖いですよね。

(福島氏)今どうなってるかっていうのは、また建築の補強の問題だから、ちょっとまた田中さんの専門とは違うんですかね?

(田中氏)違いますね。事故調査としても調べて事故調の報告書を書いた方がいいという考え方もあったけど、ちょっと時間も無かったのと、原因は調査とはちょっと違うので、その辺は書けなかったですけど。

(木野氏)個人的にも4号機がどうして建屋があんなことになっちゃったのかっていうのがすごく・・・

(田中氏)それがすごく謎で、実をいうとそれが公開委員会の時に、もしかすると20回近く開かれてる中で僕が目立った瞬間というのはそこだけだと思うんだけど、4号機は一体どうして爆発したのか。一番悲惨ですよね。爆発の仕方がね。変でしょ?

(木野氏)変な形なんですよね。

(田中氏)あれがどうしてなのかと。それでテレビ会議というものを見させていただけるということになったので、半日くらいかけてビデオを一生懸命見たんですよ。

(木野氏)話題のテレビ会議を。

(田中氏)見ようと思って、会話がどういうことがあるのかなと思って、

(福島氏)今話題の東電テレビ会議のビデオですね。

(田中氏)あれを見させてもらえるということは判ってたんだけど、あれ何日分見るということになると、あれずーっと見てなきゃいけなくなるので、その暇がないので、とりあえずポイントの一つとして、僕がたまたま興味を持ってた4号機の爆発の前後で運転員の方とか吉田さんとか、そういう人たちがどういう会話をするのかな、してたのかなというのを見ようと思ってDVDを回すんですけど、6時でしょ?6時10分ころですよね。朝ボカーンって。

(木野氏)15日の朝6時すぎですね。

(田中氏)それで何枚もDVDのセットがあるんですよね。東電のその方が、「この辺りです」って親切に一緒にやってくれてロードするでしょ。
 送っていくと、ぱっぱっと見ると、だんだん6時に近づいてきたはいいんだけど、5時半くらいから「あれ?」と思ったら、その菅さんが演説してるのが出てくる。

(木野氏)こうやって手を動かしてる<苦笑>

(田中氏)「なんだ?これは!」と思って<苦笑>

(福島氏)あれ、音声が無いでしょ?変なのって。

(田中氏)そうなんですよ。その時に「音声が無いのは何でですか?」って聞いたら、担当者の方が「たまたまその時音声が」って言うから、その時は僕はそれはそれであんまりそういうことに瞬間的に頭がひらめかないから。
 確かにそこだけ瞬間的に切れてる
 だけど、そう言われたからそうだと思ってた。
 だからそこがちょっと僕は人を疑わないから<笑>
 そしたら、その指揮者みたいに後ろ姿なんですよね。こうやってるんですよ。こっち側に斑目さんだとか座ってる。それで細野さんも居たかな。変なものを見ちゃったわけね。
 でも面白いからこうやって見てたら、20分くらいしたらば、場所が変わるんですよ。部屋に。その前は大部屋のところ。あれ、降りて・・・あんまりこんなこと言っちゃいけないのかな?

(七尾氏)大丈夫です。それはちゃんと公開されてます。

(田中氏)降りて、一人ひとりまたしゃべるんですよ。その後今度部屋が変わるんですね。それも言っていいんですかね。委員会の時に言ってますのでね。
 そうしたら、僕は知りたいのは6時10分なんだけれども、会議をやって説教してるんで、みんな止まってるわけですよ。
 それで免震重要棟のところに詰めてるいっぱいの人、大勢の人たちもその演説を聞いてるんですよ。みんなこうやって。
 そうしたら、ちょっと画面が揺れるんですよ。
 それで問題の時間に、多分12分くらいだったかな。
 そしたら、ざわつくんですね。そのうちに吉田さんがこうやってヘルメットをかぶりだすわけ。それで結局、免震重要棟ではどこかで異常が起きたということで、吉田さんは思わずヘルメットをこうやってかぶるんですね。
 みんなあわただしくなって、それでその後は関連はわかんないんだけど、それを見てたのか菅首相がね、見てて「これはまずいことになったな」と思ったのか、みんなに「戻れ」みたいな・・・。

(七尾氏)なるほど。

(田中氏)みんなに「仕事場に戻れ」みたいな合図をして、それで話が終わるんですね
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
 (3)へ続く
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