原発と放射能、数々の嘘と事実:小野
2012-08-06
原発事故のこと、放射能のことなどについて、政府、マスコミ、御用学者が撒き散らす嘘の数々。
昨年の3月11日以来、嘘まみれになったこの日本だ。
「院長の独り言」ブログで、この嘘の数々と精力的に闘われている小野医師の講演から「嘘と真実」として箇条書きにまとめられたブログがありましたので紹介、拡散します。
「とある原発の溶融貫通(メルトスルー)」から。
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原発の数々の嘘と真実 まとめ
東京電力福島第二原発と東京電力本店に勤務していたという経歴を持ち,現在は院長の独り言というブログの管理人でもあられる小野医師が東電と政府の嘘の数々を暴く発言をしておられるので,短めの講演を箇条書きにまとめてみました。
●原発は安いという嘘
原発は一番高い。高いからやっている。高いということは産業界が儲かる。しかも,危険だから色んな費用が取れるからやっている。
●福島が復興できるという嘘
群馬大の早川先生が作られた地図によると,オレンジ色の二本松とか郡山とかの部分は,今でも原発の作業員なら全面マスクを着用しないと入ってはいけないレベルの汚染。
東京の一部とか千葉のディズニーランドなどは放射線管理区域と同じレベルの汚染。
この地図は群馬大(国立大学)の先生が作ったので少し甘い。
石巻の瓦礫のセシウム汚染のシミュレーション結果はは核実験が一番行なわれていた1960年代の100~1000倍の放射線量。
●瓦礫の広域処理を受け入れることが"絆"だという嘘
その汚染された瓦礫を試験焼却している小倉では幼い子どもたちに鼻血などの健康被害が出ている。
宮城県と福島県はものすごい量の放射能が降ったのに,なぜそれを"安全"と言って北九州で燃やすのか?
北九州は日本の一番西なので,西からの風が放射能を本州の中国地方に運び,その周辺で奇形児が生まれても,色んな不具合が子どもに起きたとしても,放射能のせいじゃないと言えるから。
だから日本政府が金を出して行なっているのである。
では,なぜ日本政府が内部被曝を隠そうとするのか?
それは日本が米国の植民地だから。
大飯原発の再稼動に反対するデモが10万人集まっても知らんぷりしてやっているのも,日本が米国の下だから,米国の言いなりになっている。
日本は米国に内部被曝が健康に悪影響を与えるという事実を隠すように言われている。
内部被曝が健康に害があることが明るみに出ると核兵器を使えなくなる。
広島で被爆二世にものすごい被害が起きており,胎児にもものすごく奇形が出ているが,日本政府は隠している。
もしこれが核兵器のせいだということになったら,核兵器は毒ガス兵器と同じく,使ってはいけないということになってしまう。
もし,核兵器を使ったらいけないということになったら米国も英国もフランスも中国も国の力がなくなってしまう。
だから,日本政府は米国が核兵器を使える状態を保つために,日本中で瓦礫を燃やして,国民を被曝させている。
●被災地の食べ物をみんなで食べることが"絆"だという嘘
福島の食べ物は食べて安全で,福島に旅行に行きましょうという瓦礫ツアーなども,健康な日本人を内部被曝させるための嘘。
現在,健康被害が出る人は1~2%とごくわずかだが,3~10年でばたばたやられてゆく。
その間に,できるだけ全国で瓦礫を燃やして,できるだけ全国に食品を流通させてみんなを内部被曝させて,福島事故に起因する被曝による健康被害だと解らなくするためにやっている。
●チェルノブイリの20分の1だという嘘
このままだと,日本人はほとんどいなくなる。
チェルノブイリの20分の1近くと言っているが,チェルノブイリはできてから3年で,出力が100万キロワット。
福島第一は合計すると300万キロワットで,その上200万キロワット分の使用済み燃料があった。
したがって,放射性物質の量はチェルノブイリよりはるかに多い。
しかも,面積が狭いから濃度が高い。
これから福島や日本中でとてつもないことが起きる。
●医師会も放射線は安全という嘘
医師会も放射線は安全,怖がるのは馬鹿ということを言う。
色んな奇形が出ていても見て見ぬ振りしている。
================================================
ディズニーランドが放射線管理区域って。
子どもは絶対に入ってはいけない所ですよ。
子どもを持つ親の方,気をつけてくださいね。
あと,日本中に放射能をばらまく目的が,健康被害が出ても福島由来の被曝だと言えないようにすることだという見解はクリス・バズビー博士と同じですね。
瓦礫の広域処理と食べて応援は被災地のためではなく,究極の理由は米国が核による商売を維持するためのものです。
決して騙されないようにしましょう。
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関連ページのリンク
C・バズビー:臨界も被曝死も隠蔽する政府
こどもを守る施策を:バンダジェフスキー
嘘について
まかり通っている嘘だらけ
昨年の3月11日以来、嘘まみれになったこの日本だ。
「院長の独り言」ブログで、この嘘の数々と精力的に闘われている小野医師の講演から「嘘と真実」として箇条書きにまとめられたブログがありましたので紹介、拡散します。
「とある原発の溶融貫通(メルトスルー)」から。
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原発の数々の嘘と真実 まとめ
東京電力福島第二原発と東京電力本店に勤務していたという経歴を持ち,現在は院長の独り言というブログの管理人でもあられる小野医師が東電と政府の嘘の数々を暴く発言をしておられるので,短めの講演を箇条書きにまとめてみました。
●原発は安いという嘘
原発は一番高い。高いからやっている。高いということは産業界が儲かる。しかも,危険だから色んな費用が取れるからやっている。
●福島が復興できるという嘘
群馬大の早川先生が作られた地図によると,オレンジ色の二本松とか郡山とかの部分は,今でも原発の作業員なら全面マスクを着用しないと入ってはいけないレベルの汚染。
東京の一部とか千葉のディズニーランドなどは放射線管理区域と同じレベルの汚染。
この地図は群馬大(国立大学)の先生が作ったので少し甘い。
石巻の瓦礫のセシウム汚染のシミュレーション結果はは核実験が一番行なわれていた1960年代の100~1000倍の放射線量。
●瓦礫の広域処理を受け入れることが"絆"だという嘘
その汚染された瓦礫を試験焼却している小倉では幼い子どもたちに鼻血などの健康被害が出ている。
宮城県と福島県はものすごい量の放射能が降ったのに,なぜそれを"安全"と言って北九州で燃やすのか?
北九州は日本の一番西なので,西からの風が放射能を本州の中国地方に運び,その周辺で奇形児が生まれても,色んな不具合が子どもに起きたとしても,放射能のせいじゃないと言えるから。
だから日本政府が金を出して行なっているのである。
では,なぜ日本政府が内部被曝を隠そうとするのか?
それは日本が米国の植民地だから。
大飯原発の再稼動に反対するデモが10万人集まっても知らんぷりしてやっているのも,日本が米国の下だから,米国の言いなりになっている。
日本は米国に内部被曝が健康に悪影響を与えるという事実を隠すように言われている。
内部被曝が健康に害があることが明るみに出ると核兵器を使えなくなる。
広島で被爆二世にものすごい被害が起きており,胎児にもものすごく奇形が出ているが,日本政府は隠している。
もしこれが核兵器のせいだということになったら,核兵器は毒ガス兵器と同じく,使ってはいけないということになってしまう。
もし,核兵器を使ったらいけないということになったら米国も英国もフランスも中国も国の力がなくなってしまう。
だから,日本政府は米国が核兵器を使える状態を保つために,日本中で瓦礫を燃やして,国民を被曝させている。
●被災地の食べ物をみんなで食べることが"絆"だという嘘
福島の食べ物は食べて安全で,福島に旅行に行きましょうという瓦礫ツアーなども,健康な日本人を内部被曝させるための嘘。
現在,健康被害が出る人は1~2%とごくわずかだが,3~10年でばたばたやられてゆく。
その間に,できるだけ全国で瓦礫を燃やして,できるだけ全国に食品を流通させてみんなを内部被曝させて,福島事故に起因する被曝による健康被害だと解らなくするためにやっている。
●チェルノブイリの20分の1だという嘘
このままだと,日本人はほとんどいなくなる。
チェルノブイリの20分の1近くと言っているが,チェルノブイリはできてから3年で,出力が100万キロワット。
福島第一は合計すると300万キロワットで,その上200万キロワット分の使用済み燃料があった。
したがって,放射性物質の量はチェルノブイリよりはるかに多い。
しかも,面積が狭いから濃度が高い。
これから福島や日本中でとてつもないことが起きる。
●医師会も放射線は安全という嘘
医師会も放射線は安全,怖がるのは馬鹿ということを言う。
色んな奇形が出ていても見て見ぬ振りしている。
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ディズニーランドが放射線管理区域って。
子どもは絶対に入ってはいけない所ですよ。
子どもを持つ親の方,気をつけてくださいね。
あと,日本中に放射能をばらまく目的が,健康被害が出ても福島由来の被曝だと言えないようにすることだという見解はクリス・バズビー博士と同じですね。
瓦礫の広域処理と食べて応援は被災地のためではなく,究極の理由は米国が核による商売を維持するためのものです。
決して騙されないようにしましょう。
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対談:孫崎、長谷川、高橋「国民が政権を打倒する日」
2012-08-06
「2012年と1960年 国民の怒りが政権を打倒する日」
対談・孫崎享氏×高橋洋一氏×長谷川幸洋氏 週刊ポスト2012/08/17・24号 書き起こし「大友涼介のブログ」から
(※参考)は「大友涼介」氏によるリンク。(※①~③)は雑誌に元々あったものです。
デモが国会議事堂前を占拠する光景は、52年前と同じだった。
7月29日、20万人ともいわれる人々が国会を取り囲み、原発再稼働反対のキャンドルを灯した。1960年、国会前には日米安保条約に反対する数十万人の学生デモ隊が押し寄せ、時の岸信介内閣は退陣に追い込まれた。
鉢巻き姿の活動家はいなくなったが、ベビーカーを押す母親や麦藁帽子の老人は、確かに声を上げている。この熱は、あの時と同じく政権打倒へ結びつくのか。
外交、霞が関、メディアを知り尽くす3氏が、”革命前夜”にある「1960年と2012年の日本」をテーマに論じ合った。
■間接民主主義への不信感
週間ポスト:今回のデモと60年安保闘争をどう比較するか。
孫崎:
60年安保は組織化されていた。学生は用意されたバスや電車でデモに行き、労働者は組合活動として参加し、新聞などのメディアも支援していた。ある意味では反体制という体制に乗せられていたんです。
一方、今のデモは、原発再稼働反対から始まって、何かおかしい、日本を動かしているものが何か違うぞ、と個人が判断している。
だから1人1人が地下鉄でふらっと来て、デモに参加してふらっと帰っていく。かつてのように熱に浮かされたという感じではない。
参加者はどちらかというとクールで、誰かに動かされることを最も嫌う人たちが個人の判断で加わり、発言していく。デモという形式は同じでも、何者かに操作されているのではなく、動かしている力が個人個人の判断なので、この流れはどこかで打ち切りになることはないと思います。
高橋:
アラブ諸国で起きたジャスミン革命と似ているところはある。ネットで繋がるので、誰でもアクセスできて情報発信もできる。国民にすれば、選挙で選ばれた議員が政治を行うという間接民主主義が民意を吸い上げなくなって、期待できない。加えて国民はマスコミから間接的な情報を与えられているが、その情報も信用できない。
国民の代理人である政治家も官僚もメディアも、みんな嘘つきだってバレちゃった。だからやむを得ず直接的な行動に出るしかなくなったのではないか。
ただ、目的達成のためには、最終的には選挙しなければいかんともし難いわけです。果たして彼らは選挙に行くのか。そこが僕にはまだわからない。
長谷川:
僕はデモを毎週取材していますが、目立つのは若者より60歳以上の高齢者です。60年安保や70年安保を知っている世代ですね。年配男性の中には、昔こんなことがあったよな、ということを知っている人たちもいる。
それから女性が多い。お母さんたちは子どもの安全をどうしてくれるのかって、本当に怒っている。おそらく安保のときはデモに参加しなかった年配女性もいるが、「ここで私が原発に何か言わなければ若いお母さんたちに申し訳ない」という思いを持っている。
高橋:
長谷川さんは学生運動やっていたから血が騒いでいるんじゃない?
長谷川:
もっと原理的に考えてますよ(笑)。政治とは議員バッジをつけた人がやることだとみんな思っていた。新聞の政治面も政党と国会議員の話が主でしょう。だけど本来、政治は「普通の人々」がするものですよ。
今回のデモを契機に、「オレたちの声を聞け、主役は国民であり、政党や議員は代理人に過ぎない」と、国民が政党や議員から政治を取り戻す認識のパラダイム変化が起きるかもしれない。
鳩山由紀夫元首相がデモに来たとき、「どうせ人気取りだ」「CO2削減をいって原発を増やそうとした張本人じゃないか」というステレオタイプの批判が出たけれども、私から見ると、国民が街頭に元総理を呼び出して、「官邸に行って国民の声を野田総理に伝えろ」と代理人として使いに出すという現象が起きたともいえる。それが非常に面白いところで、これからの政治の形を示しているんじゃないかと思う。
■反体制の意思表示はデモ以外にも
長谷川:
ただひとつ気になるのは、7月29日の国会包囲からデモの様子が変わる懸念もある。全共闘とか、全学連とかの旗が出てきて、「車道を空けろ」と議事堂前の車道を占拠した。
人々はデモを乗っ取ろうという組織的な動きに触発されたかもしれない(※参考)。私も学生運動やっていたからよくわかる(笑)。彼らは挑発行為を徐々にエスカレートするはずです。そうなると当局がデモを潰す口実にされかねない。
※参考 長谷川幸洋氏(8/3深夜~)「8月3日の再稼働反対抗議行動に参加してあらためて気づいたことがあった」 http://togetter.com/li/350061
高橋:
当局が出てくる前に、一般の人が参加しなくなる。一般の人がいなくなれば、グループ(反原発団体)の運動になってしまう。
孫崎:
私はそれでも国民の行動は消えないと思いますよ。官邸デモというのはほんのひとつの表現であって、すべてではない。
60年安保は、ピークの時に新聞7紙が「暴力革命を排し議会主義を守れ」という異例の共同宣言(※①)を出した結果、騒動が収まり、国会前から一般人が消えて潰れてしまいました。
※① 1960年6月17日、新聞7紙が「その理由の如何を問わず、暴力を用いて事を運ばんとすることは、断じて許されるべきではない」との7社共同宣言を発表。宣言を書いたのは、対米終戦工作に関わった経験を持つ笠信太郎・朝日新聞論説主幹だった。
だけど今回は、官邸デモがなくなっても、国民は別の方法で意思を表明すると思う。デモだけが表現する手段ではない。
長谷川:
60年や70年安保と決定的に違うのは、福島原発事故で国土の3%が事実上失われ、放射能で故郷に住めなくなった10数万人の”さまよえる人々”が厳然と存在していること。この人たちがいる以上、運動の火は絶対消えない。メディアも見捨てない。
週刊ポスト:60年安保は岸内閣を倒した。ならば、今回の行動も政権を倒すところにつながっていくのか。
高橋:
どこまで運動が広がるかにもよるが、民意の受け皿はなくはない。民主、自民以外の政党や政治家でしょう。それは橋下徹(大阪市長)かもしれない。橋下さんたちがエネルギーをどうやって吸収していくか次第でしょうね。
孫崎:
60年は打倒岸内閣という政治目的があって動いていたけれども、今は個人が再稼働反対を言わなければならないという自己表現でやっているから、最終的に政権を倒すとか、ある種の政治目的を達成しなければならないとまでは考えていないと思う。しかし、一般の国民が参加することによって、これまで黙っていた人々に影響を与えていくわけです。私たちもそうでしたが、反体制の意思表示をすることには恐さがある。それが今回のデモで、恐くない、意思表示していいんだ、というきっかけになった。
■安保闘争は従米派に利用された
週間ポスト:孫崎氏は新刊『戦後史の正体』(創元社刊)の中で、60年安保の裏面史について興味深い指摘をしている。
新安保条約を結んだ当時の岸首相は親米派と見られているが、実は在日米軍の縮小と日米行政協定(※②)見直しを目指した対米自立派で、米国と対米従属派の日本政財界が、安保闘争を利用して退陣に追い込んだというものだ。
※② 52年に結ばれ、60年に日米地位協定へ改定された。米軍による基地使用を認める協定。「日本国に返還すべきことを合意することができる」という条文により、今日まで、返還に関する日米双方の「合意」がない限りは基地使用を認め続ける取り決めとなっている。
孫崎:
岸信介は、部分的にせよ米軍基地撤退を図ろうとしていた。米軍基地の縮小には行政協定の見直しが必要で、これは政府間協定だから両国の合意が要る。
岸さんは60年の安保条約の改定の際、「10年後以降も自動継続されるが、一方が1年前に通告すれば条約を破棄できる」という条項を盛り込んだ。
簡単に言えば、10年後に改めて行政協定を交渉できる仕組みをつくっておいたわけです。それが不都合な米国は岸内閣を潰さなくてはならないと動いたんですね。安保闘争で岸打倒を叫んでいた人たちは、条約の中身や狙いを知らずに利用されただけです。
長谷川:
安保闘争の資金も親米派の財界が出していたんでしょう?
孫崎:
そうです。岸退陣の後には対米追従派の池田勇人首相が就任した。私の著書を読んだ方から、「自分たちのやった安保闘争が結果として対米追従になったことは非常に寂しい」と言われました。
週刊ポスト:その50年後の2009年に鳩山内閣が普天間基地の県外・国外移転を掲げたが、やはり潰された。
孫崎:
ええ。米国は明らかに日本の政治家、官僚、マスコミに県外移設を潰すように工作していました。それが鳩山内閣が倒れた原因です。
菅(直人)さんも野田首相もそのことを知っているから安全保障は米国の言いなり。野田首相はオスプレイ配備について、「配備そのものは米国政府の方針で、日本がどうしろこうしろという話ではない」と発言したが、これは米国の発想そのものですよ。
長谷川:
普天間基地の移転先である辺野古にV字滑走路をつくるというのも、最初からオスプレイ配備のためだったんだから。昨日今日の話ではない。
高橋:
その普天間移転が進まないから、日本は何も言えなくなったのではないか。
孫崎:
いや、日本側の言い様はいっぱいあるんです。沖縄へのオスプレイ配備は県民が反対する、それは日米同盟にマイナスだから止めてくれと言えばいい。それが当たり前の外交というものでしょう。
それなのに岩国に搬入させた上に、国内にいくつかの訓練飛行ルートを作ることを容認してしまった。米国は、この政権なら何を要求しても反論してこないと考えているのでしょう。
■「米国の意向」を捏造する官僚
週間ポスト:孫崎、高橋両氏は官僚出身だが、60年安保以降、官僚は変質したのか。
孫崎:
岸内閣の安保改定もそうですが、60年当時、脱米国の自主路線の中心は外務省でした。官僚は米国の様々な圧力があっても、自分たちでベストの政策を考えるというスタンスだった。
柳谷謙介・元外務省事務次官は、辞表をいつもポケットに入れて仕事をしていた、と自著で述懐しています。
国益を中心に物事を考えたとき、官僚が正しいと思うロジックと政治家の意見が合わないことがある。そのときは辞表を叩きつけるという気持ちで仕事をしていたというのです。
それが湾岸戦争(91年)の頃には、対米自立派が消えてしまった。
私はイラン大使を経験してイラクに大量破壊兵器はないとわかっていたから、03年のイラク戦争の際、自衛隊を派遣すべきでないと考えていた。
財界の官僚OBにそう説くと、「あなたの論理はわかるが、米国と一緒に行動することが日本の国益に適う」と言われた。外務省内でも、ロジックの小異はあっても大筋は米国と一体というスタンスですべてが動くようになった。
高橋:
私も財務省から官邸(内閣官房)に出向したときは辞表を用意しましたよ。官邸への出向者は政権に殉じる覚悟を示すためにそうする慣例なんです。
安倍晋三総理には「骨を埋める」と言いました。安倍さんはそれを出向者全員に聞いた後で、「高橋君は”骨を埋める”だったけど、他は”骨を埋めるつもり”って言うんだよな」と笑っていた(一同爆笑)。
鳩山さんは以前、政権を取ったら局長以上に辞表を出させると言った。私は鳩山さんに、「本当に辞表を預かりなさい。机の中にしまっておくだけでいい」と言ったけど、取らなかった。
それをやっておけば、官僚の態度はガラリと変わっていたかもしれない。
長谷川:
鳩山さんにできるはずがない。”辞表を出させる”発言は09年の2月だったが、その年の6月30日の会見で撤回した。
その会見で何が起きたか。死亡していた故人名義の献金問題(※③)を釈明させられたわけです。
※③ 09年6月、鳩山元首相の資金管理団体の政治資金収支報告書に、すでに亡くなっている人や実際に寄付していない人からの個人献金が記載されていたことが発覚した。
高橋:
財務省に(弱みを)握られちゃったわけだよ。
長谷川:
官房副長官は法務・検察と財務・国税と週一回定例会議を開いて、政治家トップの弱みを情報交換している。鳩山さんはそこで弱みを握られたから政権を取っても政治主導なんてできるはずがなかった。
週刊ポスト:辞表を胸に国益を担う気概を持っていた官僚が、裏で政治家の弱みを握って政治を動かすようになったのはいつからか?
高橋:
孫崎さんと同じ見解だけど、私も90年頃じゃないかと思う。その頃から経済政策でも対米追従が強まった印象がある。
それは為替レートの影響が大きい。日本の高度経済成長は官僚が支えたといわれるけれども、実は当時の政策はすごく単純だった。円安だったから何もしないで輸出が増え、経済は成長したんです。
70年以降、本来なら1ドル=150円くらいが均衡レートだったのに、米国は日本の円安を容認し、1ドル=250~300円ぐらいにしてくれていた。
それが85年のプラザ合意で円高が進み、90年以降は円高が定着した。官僚は為替が市場で動くとあたふたして何もできない。
孫崎:
92年頃の米国の脅威は日本経済だった。情報分野でも今後は経済工作が重要だと予算の4割くらいが対日工作に充てられた。
長谷川:
CIAが軍事から経済の情報収集に人員と予算をスイッチし、当時の通産省を盗聴していたわけですから。
高橋:
その頃から米国にやられっぱなしになった。為替レートは金融政策で操作することができるから、対処法はあったはずだが、財務官僚は為替のメカニズムなど知らなかったし、日銀は今も知らない。唯一、円安にする政策をとったのは、小泉政権の一時期だけでした。
長谷川:
アジア太平洋全体の経済を考えた時に、あるいは対中国で考えても、日本経済が沈んでいくのを放置することが米国の利益になるとは思えないんだけど・・・。
高橋:
それは甘い。日本経済をテコ入れして日米経済同盟みたいな発想は米国にはない。
孫崎:
日本への期待は全くないと思う。そもそも、日本にがんばって欲しいという気持ちがあれば日本研究をやるものですが、今や米国にそれをやっている機関はありません。
週間ポスト:IMF(国際通貨基金)は日本に増税を求めている。
高橋:
あれはIMFにいる日本の財務官僚が、新聞に「IMFが言っている」と書かせているだけ。米国は日本が増税してもしなくてもどっちでもいい。米国内の政治家の立場によって考えはバラバラですよ。
政治家の対米追従路線の中で、霞が関では米国の言うことをきく官僚グループが出世していく。彼らは自分たちの立場、利益を守るために、米国は何も言っていないのに「米国の意向」を持ち出す。特に財政や金融に限っていうと、そうしたケースが非常に多い。
霞が関では財務省のポチができるとそれが増殖する。メディアもポチになって、ポチ体制が確立すればその中から出世する確率は高くなる。そうするとさらにポチ集団が膨らんでいくという構図です。
■60年安保体制からの「脱」
週刊ポスト:60年安保では新聞7社の共同宣言がデモを潰した。メディアが国民を向いていないのは今も同じで、「決められる政治」といって野田首相の原発再稼働や消費増税を後押ししている。
高橋:
そもそも国民の困ることを何のチェックもないまま決めているのに、「決められる政治」と持ち上げるのはおかしい。選挙で問うてから決めるべきでしょう。原発再稼働も野田政権は当初、事故調査をやって、原子力規制庁をつくってから判断すると言っていたのに、何もしないうちに素人である4閣僚で決めた。
長谷川:
新聞がいっせいに社説で「決められる政治」と書いたのには裏があるんです。「決められない政治からの脱却」というキャッチフレーズが最初に出たのは、今年1月の施政方針演説。
各紙の足並みが揃ったのは、財務省が論説懇(論説委員との懇談会)で完璧にレクチャーしたからだと思います。
高橋:
論説委員は財務省のポチの典型ですね。私も課長のときに、各紙の論説委員を回ってレクしていたが、同じ情報を流しても記事に濃淡が出る。そうすると上から「レクが不十分だったんじゃないか」と怒られるわけ。
それで論説に、「ここが違っている」と注意する。結果的に濃淡さえも全く同じ「財務省のリリース」が紙面に載る。
長谷川:
メディアは公正、客観的な報道だとか、真実の追求なんていうけど、役所にすれば情報操作の対象でしかない。
高橋:
当たり前じゃない。こっちが流した情報をそのまま書くんだから。
長谷川:
私は財政制度等審議会臨時委員という「特上のポチ」だったから(笑)、財務省の幹部から何度もブリーフを受けた。色々話を聞かされて、「どうお考えになるかは自由です。ただ、私たちはこう考えているので、是非、社説として書いていただけると有り難い」と。
その通りに書くと、例えば課長級が持っている財務省の政策を網羅した冊子も貰えるようになる。それがあれば取材しなくても記事が書けるし、定年後の再就職だって相談できるような間柄になる。
また、財政審議会の委員には各紙の論説委員クラスが数人選ばれるが、その枠に入ると海外視察もある。公務だからパスポートは審議官用の公用旅券で出張手当も付く。
私が米国とカナダに行ったときには財務省から主計局の若手が2人同行して、報告書も彼らが書いてくれた。
高橋:
私も海外視察の引率をやったことがあるが、10日間くらい一緒にいるから相手のいろんな情報がわかる。そこで弱みを握ってしっかり上司に報告した。論説は大体、そうやって落とされていく。
長谷川:
はっきり言って、新聞の経済記者が主計局とケンカして財政の記事を書けるかというと、普通は書けない。
逆に、役所のポチになって情報を貰えば、どんどん餌を貰って太っていき、社内で出世もできる。それを断ち切ると記者は生きて行く場所を失う気持ちになる。
高橋:
だけど長谷川さんは脱ポチでしょう?私は脱官僚で、孫崎さんは脱米国。そうした「脱」の動きが様々な場所で起こっている。
この流れを吸い上げる中間的な存在が出てくれば、変革の可能性はある。
孫崎:
そうした仕組みが固まったのはまさに60年安保の後でした。国民が今回のデモによってその仕組みからの脱却を目指しているとすれば、実に興味深い歴史の巡り合わせですね。
長谷川:
問題は政治家が決める決めないではなく、国民に選択肢が示されないこと。
かつての官僚は、そもそも日本の外交は対米追従か、自主路線で行くのかといった選択肢を考えていたでしょうが、今や政治家もそれを操る官僚さえもそれを考えようとはしない。
本来、選択肢の提示はメディアの役割でもあるけど、役所のポチだからもっと考えていない。日本全体で選択肢がない状態です。
だから国民のデモになっている。これまでは政党や議員がアジェンダ(政策課題)を設定して国民に示したが、今は逆に政治に携わっていない一般の人々が脱原発というアジェンダを政治に突きつけている。これは非常に大きな転換です。
対談・孫崎享氏×高橋洋一氏×長谷川幸洋氏 週刊ポスト2012/08/17・24号 書き起こし「大友涼介のブログ」から
(※参考)は「大友涼介」氏によるリンク。(※①~③)は雑誌に元々あったものです。
デモが国会議事堂前を占拠する光景は、52年前と同じだった。
7月29日、20万人ともいわれる人々が国会を取り囲み、原発再稼働反対のキャンドルを灯した。1960年、国会前には日米安保条約に反対する数十万人の学生デモ隊が押し寄せ、時の岸信介内閣は退陣に追い込まれた。
鉢巻き姿の活動家はいなくなったが、ベビーカーを押す母親や麦藁帽子の老人は、確かに声を上げている。この熱は、あの時と同じく政権打倒へ結びつくのか。
外交、霞が関、メディアを知り尽くす3氏が、”革命前夜”にある「1960年と2012年の日本」をテーマに論じ合った。
■間接民主主義への不信感
週間ポスト:今回のデモと60年安保闘争をどう比較するか。
孫崎:
60年安保は組織化されていた。学生は用意されたバスや電車でデモに行き、労働者は組合活動として参加し、新聞などのメディアも支援していた。ある意味では反体制という体制に乗せられていたんです。
一方、今のデモは、原発再稼働反対から始まって、何かおかしい、日本を動かしているものが何か違うぞ、と個人が判断している。
だから1人1人が地下鉄でふらっと来て、デモに参加してふらっと帰っていく。かつてのように熱に浮かされたという感じではない。
参加者はどちらかというとクールで、誰かに動かされることを最も嫌う人たちが個人の判断で加わり、発言していく。デモという形式は同じでも、何者かに操作されているのではなく、動かしている力が個人個人の判断なので、この流れはどこかで打ち切りになることはないと思います。
高橋:
アラブ諸国で起きたジャスミン革命と似ているところはある。ネットで繋がるので、誰でもアクセスできて情報発信もできる。国民にすれば、選挙で選ばれた議員が政治を行うという間接民主主義が民意を吸い上げなくなって、期待できない。加えて国民はマスコミから間接的な情報を与えられているが、その情報も信用できない。
国民の代理人である政治家も官僚もメディアも、みんな嘘つきだってバレちゃった。だからやむを得ず直接的な行動に出るしかなくなったのではないか。
ただ、目的達成のためには、最終的には選挙しなければいかんともし難いわけです。果たして彼らは選挙に行くのか。そこが僕にはまだわからない。
長谷川:
僕はデモを毎週取材していますが、目立つのは若者より60歳以上の高齢者です。60年安保や70年安保を知っている世代ですね。年配男性の中には、昔こんなことがあったよな、ということを知っている人たちもいる。
それから女性が多い。お母さんたちは子どもの安全をどうしてくれるのかって、本当に怒っている。おそらく安保のときはデモに参加しなかった年配女性もいるが、「ここで私が原発に何か言わなければ若いお母さんたちに申し訳ない」という思いを持っている。
高橋:
長谷川さんは学生運動やっていたから血が騒いでいるんじゃない?
長谷川:
もっと原理的に考えてますよ(笑)。政治とは議員バッジをつけた人がやることだとみんな思っていた。新聞の政治面も政党と国会議員の話が主でしょう。だけど本来、政治は「普通の人々」がするものですよ。
今回のデモを契機に、「オレたちの声を聞け、主役は国民であり、政党や議員は代理人に過ぎない」と、国民が政党や議員から政治を取り戻す認識のパラダイム変化が起きるかもしれない。
鳩山由紀夫元首相がデモに来たとき、「どうせ人気取りだ」「CO2削減をいって原発を増やそうとした張本人じゃないか」というステレオタイプの批判が出たけれども、私から見ると、国民が街頭に元総理を呼び出して、「官邸に行って国民の声を野田総理に伝えろ」と代理人として使いに出すという現象が起きたともいえる。それが非常に面白いところで、これからの政治の形を示しているんじゃないかと思う。
■反体制の意思表示はデモ以外にも
長谷川:
ただひとつ気になるのは、7月29日の国会包囲からデモの様子が変わる懸念もある。全共闘とか、全学連とかの旗が出てきて、「車道を空けろ」と議事堂前の車道を占拠した。
人々はデモを乗っ取ろうという組織的な動きに触発されたかもしれない(※参考)。私も学生運動やっていたからよくわかる(笑)。彼らは挑発行為を徐々にエスカレートするはずです。そうなると当局がデモを潰す口実にされかねない。
※参考 長谷川幸洋氏(8/3深夜~)「8月3日の再稼働反対抗議行動に参加してあらためて気づいたことがあった」 http://togetter.com/li/350061
高橋:
当局が出てくる前に、一般の人が参加しなくなる。一般の人がいなくなれば、グループ(反原発団体)の運動になってしまう。
孫崎:
私はそれでも国民の行動は消えないと思いますよ。官邸デモというのはほんのひとつの表現であって、すべてではない。
60年安保は、ピークの時に新聞7紙が「暴力革命を排し議会主義を守れ」という異例の共同宣言(※①)を出した結果、騒動が収まり、国会前から一般人が消えて潰れてしまいました。
※① 1960年6月17日、新聞7紙が「その理由の如何を問わず、暴力を用いて事を運ばんとすることは、断じて許されるべきではない」との7社共同宣言を発表。宣言を書いたのは、対米終戦工作に関わった経験を持つ笠信太郎・朝日新聞論説主幹だった。
だけど今回は、官邸デモがなくなっても、国民は別の方法で意思を表明すると思う。デモだけが表現する手段ではない。
長谷川:
60年や70年安保と決定的に違うのは、福島原発事故で国土の3%が事実上失われ、放射能で故郷に住めなくなった10数万人の”さまよえる人々”が厳然と存在していること。この人たちがいる以上、運動の火は絶対消えない。メディアも見捨てない。
週刊ポスト:60年安保は岸内閣を倒した。ならば、今回の行動も政権を倒すところにつながっていくのか。
高橋:
どこまで運動が広がるかにもよるが、民意の受け皿はなくはない。民主、自民以外の政党や政治家でしょう。それは橋下徹(大阪市長)かもしれない。橋下さんたちがエネルギーをどうやって吸収していくか次第でしょうね。
孫崎:
60年は打倒岸内閣という政治目的があって動いていたけれども、今は個人が再稼働反対を言わなければならないという自己表現でやっているから、最終的に政権を倒すとか、ある種の政治目的を達成しなければならないとまでは考えていないと思う。しかし、一般の国民が参加することによって、これまで黙っていた人々に影響を与えていくわけです。私たちもそうでしたが、反体制の意思表示をすることには恐さがある。それが今回のデモで、恐くない、意思表示していいんだ、というきっかけになった。
■安保闘争は従米派に利用された
週間ポスト:孫崎氏は新刊『戦後史の正体』(創元社刊)の中で、60年安保の裏面史について興味深い指摘をしている。
新安保条約を結んだ当時の岸首相は親米派と見られているが、実は在日米軍の縮小と日米行政協定(※②)見直しを目指した対米自立派で、米国と対米従属派の日本政財界が、安保闘争を利用して退陣に追い込んだというものだ。
※② 52年に結ばれ、60年に日米地位協定へ改定された。米軍による基地使用を認める協定。「日本国に返還すべきことを合意することができる」という条文により、今日まで、返還に関する日米双方の「合意」がない限りは基地使用を認め続ける取り決めとなっている。
孫崎:
岸信介は、部分的にせよ米軍基地撤退を図ろうとしていた。米軍基地の縮小には行政協定の見直しが必要で、これは政府間協定だから両国の合意が要る。
岸さんは60年の安保条約の改定の際、「10年後以降も自動継続されるが、一方が1年前に通告すれば条約を破棄できる」という条項を盛り込んだ。
簡単に言えば、10年後に改めて行政協定を交渉できる仕組みをつくっておいたわけです。それが不都合な米国は岸内閣を潰さなくてはならないと動いたんですね。安保闘争で岸打倒を叫んでいた人たちは、条約の中身や狙いを知らずに利用されただけです。
長谷川:
安保闘争の資金も親米派の財界が出していたんでしょう?
孫崎:
そうです。岸退陣の後には対米追従派の池田勇人首相が就任した。私の著書を読んだ方から、「自分たちのやった安保闘争が結果として対米追従になったことは非常に寂しい」と言われました。
週刊ポスト:その50年後の2009年に鳩山内閣が普天間基地の県外・国外移転を掲げたが、やはり潰された。
孫崎:
ええ。米国は明らかに日本の政治家、官僚、マスコミに県外移設を潰すように工作していました。それが鳩山内閣が倒れた原因です。
菅(直人)さんも野田首相もそのことを知っているから安全保障は米国の言いなり。野田首相はオスプレイ配備について、「配備そのものは米国政府の方針で、日本がどうしろこうしろという話ではない」と発言したが、これは米国の発想そのものですよ。
長谷川:
普天間基地の移転先である辺野古にV字滑走路をつくるというのも、最初からオスプレイ配備のためだったんだから。昨日今日の話ではない。
高橋:
その普天間移転が進まないから、日本は何も言えなくなったのではないか。
孫崎:
いや、日本側の言い様はいっぱいあるんです。沖縄へのオスプレイ配備は県民が反対する、それは日米同盟にマイナスだから止めてくれと言えばいい。それが当たり前の外交というものでしょう。
それなのに岩国に搬入させた上に、国内にいくつかの訓練飛行ルートを作ることを容認してしまった。米国は、この政権なら何を要求しても反論してこないと考えているのでしょう。
■「米国の意向」を捏造する官僚
週間ポスト:孫崎、高橋両氏は官僚出身だが、60年安保以降、官僚は変質したのか。
孫崎:
岸内閣の安保改定もそうですが、60年当時、脱米国の自主路線の中心は外務省でした。官僚は米国の様々な圧力があっても、自分たちでベストの政策を考えるというスタンスだった。
柳谷謙介・元外務省事務次官は、辞表をいつもポケットに入れて仕事をしていた、と自著で述懐しています。
国益を中心に物事を考えたとき、官僚が正しいと思うロジックと政治家の意見が合わないことがある。そのときは辞表を叩きつけるという気持ちで仕事をしていたというのです。
それが湾岸戦争(91年)の頃には、対米自立派が消えてしまった。
私はイラン大使を経験してイラクに大量破壊兵器はないとわかっていたから、03年のイラク戦争の際、自衛隊を派遣すべきでないと考えていた。
財界の官僚OBにそう説くと、「あなたの論理はわかるが、米国と一緒に行動することが日本の国益に適う」と言われた。外務省内でも、ロジックの小異はあっても大筋は米国と一体というスタンスですべてが動くようになった。
高橋:
私も財務省から官邸(内閣官房)に出向したときは辞表を用意しましたよ。官邸への出向者は政権に殉じる覚悟を示すためにそうする慣例なんです。
安倍晋三総理には「骨を埋める」と言いました。安倍さんはそれを出向者全員に聞いた後で、「高橋君は”骨を埋める”だったけど、他は”骨を埋めるつもり”って言うんだよな」と笑っていた(一同爆笑)。
鳩山さんは以前、政権を取ったら局長以上に辞表を出させると言った。私は鳩山さんに、「本当に辞表を預かりなさい。机の中にしまっておくだけでいい」と言ったけど、取らなかった。
それをやっておけば、官僚の態度はガラリと変わっていたかもしれない。
長谷川:
鳩山さんにできるはずがない。”辞表を出させる”発言は09年の2月だったが、その年の6月30日の会見で撤回した。
その会見で何が起きたか。死亡していた故人名義の献金問題(※③)を釈明させられたわけです。
※③ 09年6月、鳩山元首相の資金管理団体の政治資金収支報告書に、すでに亡くなっている人や実際に寄付していない人からの個人献金が記載されていたことが発覚した。
高橋:
財務省に(弱みを)握られちゃったわけだよ。
長谷川:
官房副長官は法務・検察と財務・国税と週一回定例会議を開いて、政治家トップの弱みを情報交換している。鳩山さんはそこで弱みを握られたから政権を取っても政治主導なんてできるはずがなかった。
週刊ポスト:辞表を胸に国益を担う気概を持っていた官僚が、裏で政治家の弱みを握って政治を動かすようになったのはいつからか?
高橋:
孫崎さんと同じ見解だけど、私も90年頃じゃないかと思う。その頃から経済政策でも対米追従が強まった印象がある。
それは為替レートの影響が大きい。日本の高度経済成長は官僚が支えたといわれるけれども、実は当時の政策はすごく単純だった。円安だったから何もしないで輸出が増え、経済は成長したんです。
70年以降、本来なら1ドル=150円くらいが均衡レートだったのに、米国は日本の円安を容認し、1ドル=250~300円ぐらいにしてくれていた。
それが85年のプラザ合意で円高が進み、90年以降は円高が定着した。官僚は為替が市場で動くとあたふたして何もできない。
孫崎:
92年頃の米国の脅威は日本経済だった。情報分野でも今後は経済工作が重要だと予算の4割くらいが対日工作に充てられた。
長谷川:
CIAが軍事から経済の情報収集に人員と予算をスイッチし、当時の通産省を盗聴していたわけですから。
高橋:
その頃から米国にやられっぱなしになった。為替レートは金融政策で操作することができるから、対処法はあったはずだが、財務官僚は為替のメカニズムなど知らなかったし、日銀は今も知らない。唯一、円安にする政策をとったのは、小泉政権の一時期だけでした。
長谷川:
アジア太平洋全体の経済を考えた時に、あるいは対中国で考えても、日本経済が沈んでいくのを放置することが米国の利益になるとは思えないんだけど・・・。
高橋:
それは甘い。日本経済をテコ入れして日米経済同盟みたいな発想は米国にはない。
孫崎:
日本への期待は全くないと思う。そもそも、日本にがんばって欲しいという気持ちがあれば日本研究をやるものですが、今や米国にそれをやっている機関はありません。
週間ポスト:IMF(国際通貨基金)は日本に増税を求めている。
高橋:
あれはIMFにいる日本の財務官僚が、新聞に「IMFが言っている」と書かせているだけ。米国は日本が増税してもしなくてもどっちでもいい。米国内の政治家の立場によって考えはバラバラですよ。
政治家の対米追従路線の中で、霞が関では米国の言うことをきく官僚グループが出世していく。彼らは自分たちの立場、利益を守るために、米国は何も言っていないのに「米国の意向」を持ち出す。特に財政や金融に限っていうと、そうしたケースが非常に多い。
霞が関では財務省のポチができるとそれが増殖する。メディアもポチになって、ポチ体制が確立すればその中から出世する確率は高くなる。そうするとさらにポチ集団が膨らんでいくという構図です。
■60年安保体制からの「脱」
週刊ポスト:60年安保では新聞7社の共同宣言がデモを潰した。メディアが国民を向いていないのは今も同じで、「決められる政治」といって野田首相の原発再稼働や消費増税を後押ししている。
高橋:
そもそも国民の困ることを何のチェックもないまま決めているのに、「決められる政治」と持ち上げるのはおかしい。選挙で問うてから決めるべきでしょう。原発再稼働も野田政権は当初、事故調査をやって、原子力規制庁をつくってから判断すると言っていたのに、何もしないうちに素人である4閣僚で決めた。
長谷川:
新聞がいっせいに社説で「決められる政治」と書いたのには裏があるんです。「決められない政治からの脱却」というキャッチフレーズが最初に出たのは、今年1月の施政方針演説。
各紙の足並みが揃ったのは、財務省が論説懇(論説委員との懇談会)で完璧にレクチャーしたからだと思います。
高橋:
論説委員は財務省のポチの典型ですね。私も課長のときに、各紙の論説委員を回ってレクしていたが、同じ情報を流しても記事に濃淡が出る。そうすると上から「レクが不十分だったんじゃないか」と怒られるわけ。
それで論説に、「ここが違っている」と注意する。結果的に濃淡さえも全く同じ「財務省のリリース」が紙面に載る。
長谷川:
メディアは公正、客観的な報道だとか、真実の追求なんていうけど、役所にすれば情報操作の対象でしかない。
高橋:
当たり前じゃない。こっちが流した情報をそのまま書くんだから。
長谷川:
私は財政制度等審議会臨時委員という「特上のポチ」だったから(笑)、財務省の幹部から何度もブリーフを受けた。色々話を聞かされて、「どうお考えになるかは自由です。ただ、私たちはこう考えているので、是非、社説として書いていただけると有り難い」と。
その通りに書くと、例えば課長級が持っている財務省の政策を網羅した冊子も貰えるようになる。それがあれば取材しなくても記事が書けるし、定年後の再就職だって相談できるような間柄になる。
また、財政審議会の委員には各紙の論説委員クラスが数人選ばれるが、その枠に入ると海外視察もある。公務だからパスポートは審議官用の公用旅券で出張手当も付く。
私が米国とカナダに行ったときには財務省から主計局の若手が2人同行して、報告書も彼らが書いてくれた。
高橋:
私も海外視察の引率をやったことがあるが、10日間くらい一緒にいるから相手のいろんな情報がわかる。そこで弱みを握ってしっかり上司に報告した。論説は大体、そうやって落とされていく。
長谷川:
はっきり言って、新聞の経済記者が主計局とケンカして財政の記事を書けるかというと、普通は書けない。
逆に、役所のポチになって情報を貰えば、どんどん餌を貰って太っていき、社内で出世もできる。それを断ち切ると記者は生きて行く場所を失う気持ちになる。
高橋:
だけど長谷川さんは脱ポチでしょう?私は脱官僚で、孫崎さんは脱米国。そうした「脱」の動きが様々な場所で起こっている。
この流れを吸い上げる中間的な存在が出てくれば、変革の可能性はある。
孫崎:
そうした仕組みが固まったのはまさに60年安保の後でした。国民が今回のデモによってその仕組みからの脱却を目指しているとすれば、実に興味深い歴史の巡り合わせですね。
長谷川:
問題は政治家が決める決めないではなく、国民に選択肢が示されないこと。
かつての官僚は、そもそも日本の外交は対米追従か、自主路線で行くのかといった選択肢を考えていたでしょうが、今や政治家もそれを操る官僚さえもそれを考えようとはしない。
本来、選択肢の提示はメディアの役割でもあるけど、役所のポチだからもっと考えていない。日本全体で選択肢がない状態です。
だから国民のデモになっている。これまでは政党や議員がアジェンダ(政策課題)を設定して国民に示したが、今は逆に政治に携わっていない一般の人々が脱原発というアジェンダを政治に突きつけている。これは非常に大きな転換です。
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LIBORの談合不正、国際金融の虚構
2012-08-06

イングランド銀行
世界の金利目安となるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)談合により不正操作されていた事件は、当然と言えば当然ありうる談合だが、こう赤裸々になったことで国際金融と言うものが虚構の管理であって、不正の利得であることを世界に知らしめてしまった。
欧米も日本もエコノミストはほとんどが「知らないふり」で切り抜けようとしている。
だが、もともと「ロンドン銀行間取引金利」が公正で適正だなどと信じさせていた御用エコノミストにも責任はあるのだ。
市場原理は常に不正と腐敗の温床である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
LIBOR事件の不気味な深淵 虚構の国際金融 8/2 田村秀男
事は重大すぎる。現代金融が虚構に過ぎないことを示すからだ。そこで、どこまで書こうか、書くべきか。
米英の経済ジャーナリストは迷っているに違いない。ならば、真相は日本の拙論が解き明かそう。
今、ロンドン発で世界を騒然とさせているのは五輪ばかりではない。「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)」不正操作事件だ。
LIBORとは世界の標準金利で、一般には耳慣れない金融用語だが、事件の深淵は底知れない不気味さがある。
■デリバティブ膨張
グローバル金融全盛の現代では、デリバティブ(金融派生商品)が宇宙規模にまで膨張している。
デリバティブとは、現物、つまり既存の金融商品やモノの市場価格の変動により想定されるあらゆるリスクを仮想金融商品として仕立てたもので、コンピューター空間でいくらでも創出できるし、ものすごい勢いで増殖する。
例えば、将来の特定の期日の為替相場や商品相場の受渡価格を決めて取引する「先物」やその売り買いの権利だけを取引する「オプション」、変動金利の契約を固定金利契約と交換する「金利スワップ」が代表的なデリバティブである。
売り手は国債など債務証券の焦げ付きリスクを引き受ける代わりに、手数料をもらう「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」と呼ばれるデリバティブもある。
各種の住宅ローンの金利部分を切り取って他の金融商品と合成して金融商品として売り出した証券化商品も文字通り派生商品である。
2008年9月のリーマン・ショックはデリバティブ市場が舞台になった。
にもかかわらず、デリバティブ市場はリーマン危機から立ち直り、銀行のデリバティブ契約規模は2011年末で約650兆ドルに上る。
このうち金利関連が500兆ドル以上で、円換算すると4京円(4兆円の1万倍)に上る。
金利が極めて微小、例えば0.01%変動するだけで、金融機関のデリバティブ取引は4兆円の利益または損失が発生する。
ドルのLIBORの場合、18の銀行が申告し、このうち中間値に近い10行の平均値をとる。
LIBORメンバーの銀行が申告値を実勢値よりも0.1%ごまかすとしよう。
10行平均に直すと0.01%に薄まり、通常の変動範囲内に楽々とおさまり虚偽は発覚しにくい。容疑のように英バークレイズなど大手銀行複数が談合すれば、操作は完璧だ。
金融当局は監視どころか、逆に金利操作を黙認したり、催促する場合も十分ありうる。
現に、中央銀行のイングランド銀行幹部がバークレイズなどに不正申告を教唆したと、バークレイズ元幹部は暴露した。

■NY連銀も認識か
英金融当局にとどまらない。ロイター通信によれば、米ニューヨーク連銀が07年8月ごろ、LIBORなど世界の基準金利が操作されている事実を認識していた可能性がある。
バークレイズは、LIBORの問題をめぐり米連邦準備制度理事会(FRB)当局者と最初に接触したのは07年8月28日だと明らかにしている。
当時ニューヨーク連銀総裁を務めていたガイトナー財務長官の行動記録で、28日午後2時半から3時まで、「LIBOR操作」問題について会合が開かれた。会合には少なくとも8人のFRB当局者が出席していた。
バークレイズはLIBORについて、08年10月までに10回にわたりFRB当局者と接触した。
ここでグラフを見てほしい。07年8月は米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライム・ローン)バブルが破裂し、ドルの市場金利が急騰し始めていた。
FRBはニューヨーク連銀を通して市場に資金供給し、市場金利の誘導目標(フェデラル・ファンド=FF)金利の引き下げを繰り返したが、市場金利の標準であるLIBORは逆に上昇する具合だった。
高いLIBORで資金調達せざるをえない銀行や証券会社は信用力が乏しいと判定され、資金調達できずに経営破綻する。
すると、金融市場では借り手が破綻すると貸し手が信用を失う負の連鎖反応が起き、金融恐慌に発展しかねない。
08年3月には米証券大手ベア・スターンズが破綻し、08年9月のリーマン・ショックへと続く。
グラフ中のFF金利とLIBOR金利の差が危機の程度を反映している。
FRBとしては、英米の大手銀行による談合を黙認してまでも、LIBOR金利を引き下げるよう「指導」することが、金融市場崩壊を防ぐうえで優先すると判断したのではなかろうか。
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