政府の情報隠しと日本選手団退場の謎
2012-08-01
日本選手団退場の謎 写真は 7/29 「Rubyのロンドン生活」から
このことはまったく報道されていませんが、謎めいているのでNetの一部で評判になっていました。
写真は「Rubyのロンドン生活」氏が、ロンドン・オリンピックの開会式入場行進を、スタジアムの天井席から撮ったものです。



誘導されて退場させられています。
それと、200人を超える選手団が、なぜ40人くらいしか入場行進していなかったのでしょう。
この制止されてから退場するまでがまったく報道されていない部分です。退場の際に何人かがスタジアムを振り返っていたようです。
諸外国のテレビでも報道されていないので、イギリスの段階でカットされていると考えます。
下は電話での疑問へのJOCの電話回答。
■日本選手団の途中退場について、JOCの回答 ・最近の大会では途中退場(early departure)が認められており、事前に申し出れば途中退場が可能である。しかし日本選手団はこれを申し出ていなかった。組織委員会の誘導ミスで、日本選手団は退場することになってしまった。
入場は英語の頭文字順のはず。
日本入場の前後は(失礼ながら)弱い小国ばかりで、退場を申し出るような国は無いはず。
それと、なぜ入場行進したのが40人しかいないのか(これはもう一つの前段階の謎。)。役員、コーチなどだけで40人くらいになってしまうから、選手はほとんどだ出ていないことになる。
翌日午前から競技のある強豪選手なら体調調整のため開会式の欠席もありうるが、普通の選手にしてみれば開会式もまたこれまでの厳しい努力の成果で感動のはず。
先ずは事前に開会式の出席を、ほとんど役員コーチなどに制限していたと見るのが妥当だろう。
「間違って退場させられた」………….。一人で誘導しているわけではない。通常は絶対に誰かが気付くし、他の役員もいる。日本ならともかく、間違って退場させたりしたらほとんどの外国では大変なことになる。従って非常に注意するはず。さらに日本選手団には団長、副団長も先頭にいたはずで、間違い誘導を指摘したはず。
「間違って云々」は最も考えにくい発想である。
日本は戦前からオリンピックを国威発揚と考えて力を注いできた国であり、戦後の復活と共にまた最大の力を注いで東京オリンピックを乗り越え、以来開会式には常に最大級の選手団の大デレゲーションを行なってきた国であり、その選手たちである。
最も納得できるのは、オリンピック運営側とJOCの事前の協議で、入場の人数の制限と途中退場が(日本側の意に反して)決められていた、とするものである。
なぜなら、200人を超える大選手団が途中退場では、目立ってとても隠し通すことなどできませんから。
JOCも日本の官僚機構ではその一部でしょうが、何でも隠すがすぐにばれますね(笑)
だが、これはまだ謎の半分しか解決していない。
のこる謎は、なぜ人数制限と途中退場を要求されたのか。この問題である。
今までのオリンピックの歴史の中で、今回からなにかが変わったのだろうか。
みなさんは、どう考えますか。
私の考えは次のものです。
オリンピック出場選手たちは、当然ながら健康管理にも注意深い人たちである。
年間1mCvを超える「放射線管理区域」で、24時間を生活してきた選手団を外国選手はどう見るだろうか。
今回のオリンピック運営側は、かなり早くから検討していたと思うのです。
昨年3月以来、日本政府の放射能情報の隠蔽が国際的な対日不信を「熟成」してきた結果の「第二次被害」の一つでしょう。
自国民を騙し続ける政府など、諸外国は間違っても信用しない。
関連ページ「世界の不信と風評を招いている政府の情報隠し」もぜひ御覧いただきたいと思っています。
ーーーーーーーーーーーーー
8/2追記。
日本のマスコミ操作ではなく、イギリスの段階で情報隠蔽されていること。
世界の核保有国、原発保有国が放射能不安を煽るような報道はしてほしくないはず。
しかし、オリンピックは成功裏に運営したい。選手ボイコットなどになったら隠し通せなくなる。
このラインでイギリスは検討したのだと考える。
何かあるとしても何とか隠し通せる程度に押さえているだろう。
このことはまったく報道されていませんが、謎めいているのでNetの一部で評判になっていました。
写真は「Rubyのロンドン生活」氏が、ロンドン・オリンピックの開会式入場行進を、スタジアムの天井席から撮ったものです。



誘導されて退場させられています。
それと、200人を超える選手団が、なぜ40人くらいしか入場行進していなかったのでしょう。
この制止されてから退場するまでがまったく報道されていない部分です。退場の際に何人かがスタジアムを振り返っていたようです。
諸外国のテレビでも報道されていないので、イギリスの段階でカットされていると考えます。
下は電話での疑問へのJOCの電話回答。
■日本選手団の途中退場について、JOCの回答 ・最近の大会では途中退場(early departure)が認められており、事前に申し出れば途中退場が可能である。しかし日本選手団はこれを申し出ていなかった。組織委員会の誘導ミスで、日本選手団は退場することになってしまった。
入場は英語の頭文字順のはず。
日本入場の前後は(失礼ながら)弱い小国ばかりで、退場を申し出るような国は無いはず。
それと、なぜ入場行進したのが40人しかいないのか(これはもう一つの前段階の謎。)。役員、コーチなどだけで40人くらいになってしまうから、選手はほとんどだ出ていないことになる。
翌日午前から競技のある強豪選手なら体調調整のため開会式の欠席もありうるが、普通の選手にしてみれば開会式もまたこれまでの厳しい努力の成果で感動のはず。
先ずは事前に開会式の出席を、ほとんど役員コーチなどに制限していたと見るのが妥当だろう。
「間違って退場させられた」………….。一人で誘導しているわけではない。通常は絶対に誰かが気付くし、他の役員もいる。日本ならともかく、間違って退場させたりしたらほとんどの外国では大変なことになる。従って非常に注意するはず。さらに日本選手団には団長、副団長も先頭にいたはずで、間違い誘導を指摘したはず。
「間違って云々」は最も考えにくい発想である。
日本は戦前からオリンピックを国威発揚と考えて力を注いできた国であり、戦後の復活と共にまた最大の力を注いで東京オリンピックを乗り越え、以来開会式には常に最大級の選手団の大デレゲーションを行なってきた国であり、その選手たちである。
最も納得できるのは、オリンピック運営側とJOCの事前の協議で、入場の人数の制限と途中退場が(日本側の意に反して)決められていた、とするものである。
なぜなら、200人を超える大選手団が途中退場では、目立ってとても隠し通すことなどできませんから。
JOCも日本の官僚機構ではその一部でしょうが、何でも隠すがすぐにばれますね(笑)
だが、これはまだ謎の半分しか解決していない。
のこる謎は、なぜ人数制限と途中退場を要求されたのか。この問題である。
今までのオリンピックの歴史の中で、今回からなにかが変わったのだろうか。
みなさんは、どう考えますか。
私の考えは次のものです。
オリンピック出場選手たちは、当然ながら健康管理にも注意深い人たちである。
年間1mCvを超える「放射線管理区域」で、24時間を生活してきた選手団を外国選手はどう見るだろうか。
今回のオリンピック運営側は、かなり早くから検討していたと思うのです。
昨年3月以来、日本政府の放射能情報の隠蔽が国際的な対日不信を「熟成」してきた結果の「第二次被害」の一つでしょう。
自国民を騙し続ける政府など、諸外国は間違っても信用しない。
関連ページ「世界の不信と風評を招いている政府の情報隠し」もぜひ御覧いただきたいと思っています。
ーーーーーーーーーーーーー
8/2追記。
日本のマスコミ操作ではなく、イギリスの段階で情報隠蔽されていること。
世界の核保有国、原発保有国が放射能不安を煽るような報道はしてほしくないはず。
しかし、オリンピックは成功裏に運営したい。選手ボイコットなどになったら隠し通せなくなる。
このラインでイギリスは検討したのだと考える。
何かあるとしても何とか隠し通せる程度に押さえているだろう。
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資本は移動できず金利は収斂しない、ユーロの実体経済危機
2012-08-01
共通通貨ユーロは当然に実体価値が共通なので、圏内の通貨価値差による調整機能が無い。
為替による相場調整が無いので、ギリシャのユーロがドイツのユーロに対して下落がの下落ができないのである。
国内金融の調達コスト増は結果的には民間貸出金利に反映し、実体経済を直撃する。
ユーロはソブリン危機で債務国の国債金利上昇が利払いのリスク上昇を招き、金融不安の悪循環を作り出している。
だがこの一方で国債金利の上昇が実体経済つまり企業設備投資や住宅ローン金利に波及しているために、債務国の貸し出し金利上昇と資金需要の下降が同時進行している。
実体経済の不況の進行はユーロ圏内に波及するので、ドイツなど債権国の実体経済にも影響してゆく。
要は資本はそう簡単に移動できず、金利は均衡せず収斂しなかったのである。
経済記事ではあまり触れられていないことだが、実体経済危機は低金利国にも波及する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユーロ圏内の企業に大きな「金利格差」
ほぼ同じ条件でも異なる金利、実体経済に大きな影響 7/31 英フィナンシャル・タイムズ紙 7/31 JBPRESSから
オーストリアとイタリアを結ぶブレンナー峠の両側にそれぞれ住むステファン氏とゲオルク氏を分け隔てるものはほとんどない。
確かに、持っているパスポートは異なるものの、2人はともに同じ言語――ドイツ語――を話し、統合された欧州でも指折りの裕福かつ風光明媚な地域で観光業を営んで同じように成功し、同じ銀行グループ、ウニクレディトを利用している。
同地域の同業種なのに、国が違うだけで金利が2倍に
ただ1つ異なるのは、イタリア側に住むゲオルク氏が払っている銀行借り入れの金利は、オーストリア側に住むステファン氏のそれの2倍だということだ。カナダにある自分の土地には毎年足を運ぶが、ローマには1度も行ったことがないゲオルク氏は、欧州がこれからどうなるのか不安だという。
ウニクレディトのゼネラルマネジャー、ロベルト・ニカストロ氏も同じ不安を感じている。同氏によれば、イタリアのソブリン債務の借り入れコストが高い――イタリア国債の利回りは6%を超えるが、オーストリア国債のそれは2%を少し下回る――ため、銀行が両国の優良顧客に上乗せする金利にはどうしても大きな違いが出てしまうそうだ。
「同様な事業を営み、競い合っていることが多い企業でも、適用金利が大きく異なるケースがある」。ニカストロ氏は本紙(フィナンシャルタイムズ)にこう語った。
「我々はまだあきらめていないし、状況はいずれ変わると強く信じているが、現段階では、単一資本市場は我々が想定していた現実とは異なるものになっている。我々としては、資本は移動する可能性があり、金利も収斂すると思っていたのだが」
ソブリン債務のアナリストたちは、2兆ユーロ近い公的債務を抱えるイタリアが年当たり850億ユーロ前後の利払いを続けられるかどうかに注目しがちで、その波及効果が実体経済にダメージをもたらすことにはあまり関心を払っていない。
イタリアの企業や家計が負わされる追加コスト
イタリア最大の経営者団体コンフィンドゥストリア(イタリア工業連盟)の推計によれば、イタリア国債とドイツ国債の利回り格差――最近は470ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と530bpの間で変動している――は両国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が示唆する水準を300ポイントも上回っている。
国際通貨基金(IMF)は、ファンダメンタルズの違いによる格差は200ポイントだと考えている。
コンフィンドゥストリアの試算によれば、この格差がイタリアの企業と家計にもたらす追加コストは向こう1年間で358億ユーロに達する。したがって、利回り格差が縮小すればイタリア経済は向こう3年間で0.9%拡大し、雇用も14万4000人分増えるという。
イタリアでは二番底となる景気後退がこの4~6月期までで4四半期続いていると見られており、今年の国内総生産(GDP)伸び率は2%前後のマイナスになる見通しだ。
麻痺状態に陥りかねないイタリアの産業システム
「このような重荷のために、産業界の状況は非常に厳しくなっている」。コンフィンドゥストリアの小企業担当代表、ビンチェンソ・ボッチャ氏は高い金利と税金に言及しながら本紙にこう語った。「このようなハンディキャップを取り除かなければ、イタリアの産業システムは麻痺状態に陥りかねない」
IMFは今月発行したイタリアに関する年次リポートの中で、ソブリンリスクの上昇のために銀行が国際的なホールセール市場にアクセスしにくくなり、銀行の資金調達コストが上昇し、それが借り手に転嫁されたと指摘している。昨年後半にはこのせいで、新しい企業に適用される貸出金利が100bp上昇し、住宅ローン金利も80bp上昇した。
IMFによれば、イタリアではユーロ圏危機が2010年に始まってからソブリン債務の利回り格差と貸出金利が連動している。また最初の2年間は信用収縮がイタリア企業を襲ったが、今年は状況が正反対で、企業の資金需要が弱いために借り入れが落ち込んでいるという。
ウニクレディトのニカストロ氏はこれを裏付ける発言をしている。同氏によれば、設備投資資金の新規借り入れの申し込みは「ゼロに近い」。また、「不確実性が強いために、ドイツ企業の間でも景況感が落ち込んでいる。ドイツやオーストリアでさえも、これといった投資需要がないのが現状だ」そうだ。
運転資金の借り入れ需要はドイツとオーストリアでは良好だが、イタリアでは地域によってバラツキがあるという。
通貨同盟の根幹を脅かす大問題
ウニクレディトのチーフエコノミスト、エリク・ニールセン氏は、実体経済に及んでいるこの影響は「非常に大きな問題で、通貨同盟の根幹を本当に脅かすものだ」と指摘している。
「どの国で事業を行ったり居住したりしているかによって金融政策が(事実上)大きく異なる通貨同盟・・・そんなものは持続し得ない」とニールセン氏は言う。
「各国の銀行監督者は、欧州連合(EU)域内に事実上の資本統制を再導入してしまった。また、民間の資本の流れが金利差、すなわち金融の状況をならす機能を発揮できないこの時期に、このように大きく異なる金融情勢が民間部門に打撃を加えている。さらに、このおかげで欧州中央銀行(ECB)はすべてのユーロ圏諸国に同じ金融政策を適用できなくなっている」
だからこそ、民間部門を個々の国々のリスクから切り離すために銀行同盟が必要なのだ、とニールセン氏は力説している。
銀行同盟ができるまでは我慢するしかない?
だが、それには時間がかかるだろう。そうしている間にもウニクレディトの優良顧客であるオーストリア在住のステファン氏は年利3%の利息を払い、イタリア在住のゲオルク氏はその倍の利息を払うのである。
一方、ウニクレディトの長年の優良顧客でローマに住んでいるロマーノ・ファッシーノ氏は8~9%の利息を払っている。ゲオルク氏が住んでいる地域は特別で、それゆえに金利が安いのだという。
「もし私が事業を立ち上げたばかりで、ウニクレディトの顧客だったら、金利は14.5%になると言われた」とファッシーノ氏。「そんなの持続不可能だよ」
By Guy Dinmore
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。
・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機」
・ ユーロは夢の終わりか
・ ヨーロッパの危機
・ 動けなくなってきたユーロ」
・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
・ 過剰信用と恐慌、焼け太る国際金融資本「家」
・ ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ
・ ユーロの危機は労働階級を試練にさらす
・ ギリシャの危機拡大はEUの危機!
・ 公平な分配で経済成長を続けるアルゼンチン
・ アイスランドの教訓:銀行は破綻させよ
・ ギリシャ、イタリアでIMF、EU抗議の大デモ
・ 破滅するユーロか、破滅する国家か
・ 欧州直接統治へ進む国際金融資本
・ ユーロは国民国家を解体するか
・ アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ
・ ユーロは崩壊か分裂か
・ 動乱の2012年
・ 通貨戦争(46)ドル、ユーロ、円
・ ヨーロッパは恐慌に向かっている
・ ユーロ危機で延命するドル・ 通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ
・ 緊迫するユーロ、ギリシャは何処へ向かうか
・ IMF、EU、メルケルと闘うギリシャ
・ ギリシャ、抗議の暴動
・ 資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ
・ ギリシャは民主主義を守るためにデフォルトを!
・ ユーロが襲うギリシャの社会危機、政治危機
・ 毒饅頭を食わされたギリシャ
・ 何も改善しないEU新財政協定
・ ユーロの悲劇:三橋
・ 通貨戦争(51)ユーロ分裂に備え始めた欧州
・ 通貨戦争(54)債務国から巨額の資金流出
・ ギリシャ、経済の崩壊と政治の腐敗
・ ヨーロッパは変われるのか?
・ 緊縮財政を否定する各国国民
・ 通貨戦争(55)ユーロの罠
・ ドイツのユーロと加盟国の国民経済
・ ギリシャ反・緊縮財政の渦
・ 国際金融資本が仕掛けたヨーロッパの危機
・ ギリシャと交渉するか離脱させるか
・ ユーロ、誰も引けないギリシャ離脱カード
・ ユーロのボールはドイツに渡った
・ 通貨戦争(58)ヨーロッパの「新たな火種」
為替による相場調整が無いので、ギリシャのユーロがドイツのユーロに対して下落がの下落ができないのである。
国内金融の調達コスト増は結果的には民間貸出金利に反映し、実体経済を直撃する。
ユーロはソブリン危機で債務国の国債金利上昇が利払いのリスク上昇を招き、金融不安の悪循環を作り出している。
だがこの一方で国債金利の上昇が実体経済つまり企業設備投資や住宅ローン金利に波及しているために、債務国の貸し出し金利上昇と資金需要の下降が同時進行している。
実体経済の不況の進行はユーロ圏内に波及するので、ドイツなど債権国の実体経済にも影響してゆく。
要は資本はそう簡単に移動できず、金利は均衡せず収斂しなかったのである。
経済記事ではあまり触れられていないことだが、実体経済危機は低金利国にも波及する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユーロ圏内の企業に大きな「金利格差」
ほぼ同じ条件でも異なる金利、実体経済に大きな影響 7/31 英フィナンシャル・タイムズ紙 7/31 JBPRESSから
オーストリアとイタリアを結ぶブレンナー峠の両側にそれぞれ住むステファン氏とゲオルク氏を分け隔てるものはほとんどない。
確かに、持っているパスポートは異なるものの、2人はともに同じ言語――ドイツ語――を話し、統合された欧州でも指折りの裕福かつ風光明媚な地域で観光業を営んで同じように成功し、同じ銀行グループ、ウニクレディトを利用している。
同地域の同業種なのに、国が違うだけで金利が2倍に
ただ1つ異なるのは、イタリア側に住むゲオルク氏が払っている銀行借り入れの金利は、オーストリア側に住むステファン氏のそれの2倍だということだ。カナダにある自分の土地には毎年足を運ぶが、ローマには1度も行ったことがないゲオルク氏は、欧州がこれからどうなるのか不安だという。
ウニクレディトのゼネラルマネジャー、ロベルト・ニカストロ氏も同じ不安を感じている。同氏によれば、イタリアのソブリン債務の借り入れコストが高い――イタリア国債の利回りは6%を超えるが、オーストリア国債のそれは2%を少し下回る――ため、銀行が両国の優良顧客に上乗せする金利にはどうしても大きな違いが出てしまうそうだ。
「同様な事業を営み、競い合っていることが多い企業でも、適用金利が大きく異なるケースがある」。ニカストロ氏は本紙(フィナンシャルタイムズ)にこう語った。
「我々はまだあきらめていないし、状況はいずれ変わると強く信じているが、現段階では、単一資本市場は我々が想定していた現実とは異なるものになっている。我々としては、資本は移動する可能性があり、金利も収斂すると思っていたのだが」
ソブリン債務のアナリストたちは、2兆ユーロ近い公的債務を抱えるイタリアが年当たり850億ユーロ前後の利払いを続けられるかどうかに注目しがちで、その波及効果が実体経済にダメージをもたらすことにはあまり関心を払っていない。
イタリアの企業や家計が負わされる追加コスト
イタリア最大の経営者団体コンフィンドゥストリア(イタリア工業連盟)の推計によれば、イタリア国債とドイツ国債の利回り格差――最近は470ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と530bpの間で変動している――は両国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が示唆する水準を300ポイントも上回っている。
国際通貨基金(IMF)は、ファンダメンタルズの違いによる格差は200ポイントだと考えている。
コンフィンドゥストリアの試算によれば、この格差がイタリアの企業と家計にもたらす追加コストは向こう1年間で358億ユーロに達する。したがって、利回り格差が縮小すればイタリア経済は向こう3年間で0.9%拡大し、雇用も14万4000人分増えるという。
イタリアでは二番底となる景気後退がこの4~6月期までで4四半期続いていると見られており、今年の国内総生産(GDP)伸び率は2%前後のマイナスになる見通しだ。
麻痺状態に陥りかねないイタリアの産業システム
「このような重荷のために、産業界の状況は非常に厳しくなっている」。コンフィンドゥストリアの小企業担当代表、ビンチェンソ・ボッチャ氏は高い金利と税金に言及しながら本紙にこう語った。「このようなハンディキャップを取り除かなければ、イタリアの産業システムは麻痺状態に陥りかねない」
IMFは今月発行したイタリアに関する年次リポートの中で、ソブリンリスクの上昇のために銀行が国際的なホールセール市場にアクセスしにくくなり、銀行の資金調達コストが上昇し、それが借り手に転嫁されたと指摘している。昨年後半にはこのせいで、新しい企業に適用される貸出金利が100bp上昇し、住宅ローン金利も80bp上昇した。
IMFによれば、イタリアではユーロ圏危機が2010年に始まってからソブリン債務の利回り格差と貸出金利が連動している。また最初の2年間は信用収縮がイタリア企業を襲ったが、今年は状況が正反対で、企業の資金需要が弱いために借り入れが落ち込んでいるという。
ウニクレディトのニカストロ氏はこれを裏付ける発言をしている。同氏によれば、設備投資資金の新規借り入れの申し込みは「ゼロに近い」。また、「不確実性が強いために、ドイツ企業の間でも景況感が落ち込んでいる。ドイツやオーストリアでさえも、これといった投資需要がないのが現状だ」そうだ。
運転資金の借り入れ需要はドイツとオーストリアでは良好だが、イタリアでは地域によってバラツキがあるという。
通貨同盟の根幹を脅かす大問題
ウニクレディトのチーフエコノミスト、エリク・ニールセン氏は、実体経済に及んでいるこの影響は「非常に大きな問題で、通貨同盟の根幹を本当に脅かすものだ」と指摘している。
「どの国で事業を行ったり居住したりしているかによって金融政策が(事実上)大きく異なる通貨同盟・・・そんなものは持続し得ない」とニールセン氏は言う。
「各国の銀行監督者は、欧州連合(EU)域内に事実上の資本統制を再導入してしまった。また、民間の資本の流れが金利差、すなわち金融の状況をならす機能を発揮できないこの時期に、このように大きく異なる金融情勢が民間部門に打撃を加えている。さらに、このおかげで欧州中央銀行(ECB)はすべてのユーロ圏諸国に同じ金融政策を適用できなくなっている」
だからこそ、民間部門を個々の国々のリスクから切り離すために銀行同盟が必要なのだ、とニールセン氏は力説している。
銀行同盟ができるまでは我慢するしかない?
だが、それには時間がかかるだろう。そうしている間にもウニクレディトの優良顧客であるオーストリア在住のステファン氏は年利3%の利息を払い、イタリア在住のゲオルク氏はその倍の利息を払うのである。
一方、ウニクレディトの長年の優良顧客でローマに住んでいるロマーノ・ファッシーノ氏は8~9%の利息を払っている。ゲオルク氏が住んでいる地域は特別で、それゆえに金利が安いのだという。
「もし私が事業を立ち上げたばかりで、ウニクレディトの顧客だったら、金利は14.5%になると言われた」とファッシーノ氏。「そんなの持続不可能だよ」
By Guy Dinmore
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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・ ヨーロッパの危機
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