階級分断国家アメリカと食の砂漠
2012-07-15
先に「5歳児を警察に逮捕させる社会」、「米国の異様さ、聞かない子も遅刻の子も逮捕」にて、アメリカの異様な「ゼロトレランスの原則」を紹介した。
アメリカ社会の異様さは、幼児から青年までを監獄国家に追い込む「ゼロトレランス」だけではない。
階級の断絶自体がきわめて激しく、格差は他の先進国に比べ凄まじいものがある。
食べる物も同様で、まさしく「分断国家」である。
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ニューヨークのど真ん中に「食の砂漠」 7/13 「fxdondon 」氏から
【津山恵子のアメリカ最新事情】ニューヨークのど真ん中に「食の砂漠」 格差はここにも
ウォール・ストリート・ジャーナル
マンハッタンの中でフード・デザート「食の砂漠」としていつも問題になるのは、アフリカ系米国人の住民の割合が9割を超えるハーレムだけかと思っていた。
ハーレムは、マンハッタンの北部に位置し、ウォール街や行政区からは15キロ離れているため、マンハッタンの中心部とはいえない地域だ
フード・デザートが問題なのは、新鮮で栄養のある食品が手軽に得られないため、安いファストフードや、缶詰に入った調理済みの食品への依存度が高くなる。
その分、体重過多の子どもや住民が増えて、健康を害する確率も高まるという悪循環だ。
これで思い出した光景がある。
ニューヨーク市の中で最も犯罪の発生率が高く、貧困層が住むブラウンズビルという地域だ。
ウォール街からは南東に8キロほど離れたところにある。
そこで、「唯一まともな食品が買える」と教えられて行ったスーパーマーケットにあったのは、壁沿いに天井までうず高く積まれた缶詰の山。
スーパーでこんな光景は見たこともなかった。
さらに驚いたのは、マンハッタンのスーパーで見慣れたキャンベルやデルモンテといった大手食品ブランドの缶詰はなく、どれも聞いたことも見たこともないラベルがずらりと並んでいたことだ。
「唯一のスーパー」というだけあって、店内は広く、新鮮な野菜や果物も豊富に積まれていた。
しかし、そこにいるのは従業員ばかりで、巨大な下半身とショッピングカートがひしめいているのは、缶詰の山の方だった。
それは、生鮮食品があるスーパーマーケットがないことだけが、健康問題を引き起こしているのではないのを物語る。
新鮮な食品を買いそろえて調理する方が、缶詰を買うよりもお金がかかる。
つまり、失業率が高く、所得が低い住民が多いこともフード・デザート問題を引き起こす原因だ。
ブラウンズビルは、人口が約12万人。そのうち7割がアフリカ系米国人で、2割がヒスパニックという人種構成だ。
訪れたのは昼間だったが、集合住宅が建ち並び、ビルの角には犯罪防止のためにカメラが取り付けられている。
学校や公共施設の入り口には金属探知機さえ置かれている。
ニューヨーク市も環境改善に努めてきたものの、強盗、発砲などの凶悪犯罪が絶えない。
また、通りの電線や金網にスポーツシューズがぶら下がっている。
これはその通りでヘロインなど麻薬取引があることを示す。
一方で、ニューヨークは「レストランのメッカ」だ。
お金を出せばもちろんだが、それほど出さなくても、ありとあらゆる国の料理が楽しめる。
競争が激しい分、腕試しに世界中の有名シェフが店を開く。
また、自然派食品ストアとして急速に店舗を増やしているホール・フーズを訪れると、美しく並んだ生鮮食品に圧倒されるほどだ。
ずらりと陳列された世界中のハムやチーズ売り場では、慎重に、端切れを試食してから買うグルメな客も多い。
世界の美食、あるいは美食家が集まる街角からわずか数キロの地域がフード・デザートという現実には呆然とする。
たとえ、フード・デザートに大型のスーパーマーケットが進出したところで、ブラウンズビルに見られるように砂漠が解消される見通しはないだろう。
食の1つをとっても、米国はこれだけの格差を抱える「分断」の国家だ。
アメリカ社会の異様さは、幼児から青年までを監獄国家に追い込む「ゼロトレランス」だけではない。
階級の断絶自体がきわめて激しく、格差は他の先進国に比べ凄まじいものがある。
食べる物も同様で、まさしく「分断国家」である。
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ニューヨークのど真ん中に「食の砂漠」 7/13 「fxdondon 」氏から
【津山恵子のアメリカ最新事情】ニューヨークのど真ん中に「食の砂漠」 格差はここにも
ウォール・ストリート・ジャーナル
マンハッタンの中でフード・デザート「食の砂漠」としていつも問題になるのは、アフリカ系米国人の住民の割合が9割を超えるハーレムだけかと思っていた。
ハーレムは、マンハッタンの北部に位置し、ウォール街や行政区からは15キロ離れているため、マンハッタンの中心部とはいえない地域だ
フード・デザートが問題なのは、新鮮で栄養のある食品が手軽に得られないため、安いファストフードや、缶詰に入った調理済みの食品への依存度が高くなる。
その分、体重過多の子どもや住民が増えて、健康を害する確率も高まるという悪循環だ。
これで思い出した光景がある。
ニューヨーク市の中で最も犯罪の発生率が高く、貧困層が住むブラウンズビルという地域だ。
ウォール街からは南東に8キロほど離れたところにある。
そこで、「唯一まともな食品が買える」と教えられて行ったスーパーマーケットにあったのは、壁沿いに天井までうず高く積まれた缶詰の山。
スーパーでこんな光景は見たこともなかった。
さらに驚いたのは、マンハッタンのスーパーで見慣れたキャンベルやデルモンテといった大手食品ブランドの缶詰はなく、どれも聞いたことも見たこともないラベルがずらりと並んでいたことだ。
「唯一のスーパー」というだけあって、店内は広く、新鮮な野菜や果物も豊富に積まれていた。
しかし、そこにいるのは従業員ばかりで、巨大な下半身とショッピングカートがひしめいているのは、缶詰の山の方だった。
それは、生鮮食品があるスーパーマーケットがないことだけが、健康問題を引き起こしているのではないのを物語る。
新鮮な食品を買いそろえて調理する方が、缶詰を買うよりもお金がかかる。
つまり、失業率が高く、所得が低い住民が多いこともフード・デザート問題を引き起こす原因だ。
ブラウンズビルは、人口が約12万人。そのうち7割がアフリカ系米国人で、2割がヒスパニックという人種構成だ。
訪れたのは昼間だったが、集合住宅が建ち並び、ビルの角には犯罪防止のためにカメラが取り付けられている。
学校や公共施設の入り口には金属探知機さえ置かれている。
ニューヨーク市も環境改善に努めてきたものの、強盗、発砲などの凶悪犯罪が絶えない。
また、通りの電線や金網にスポーツシューズがぶら下がっている。
これはその通りでヘロインなど麻薬取引があることを示す。
一方で、ニューヨークは「レストランのメッカ」だ。
お金を出せばもちろんだが、それほど出さなくても、ありとあらゆる国の料理が楽しめる。
競争が激しい分、腕試しに世界中の有名シェフが店を開く。
また、自然派食品ストアとして急速に店舗を増やしているホール・フーズを訪れると、美しく並んだ生鮮食品に圧倒されるほどだ。
ずらりと陳列された世界中のハムやチーズ売り場では、慎重に、端切れを試食してから買うグルメな客も多い。
世界の美食、あるいは美食家が集まる街角からわずか数キロの地域がフード・デザートという現実には呆然とする。
たとえ、フード・デザートに大型のスーパーマーケットが進出したところで、ブラウンズビルに見られるように砂漠が解消される見通しはないだろう。
食の1つをとっても、米国はこれだけの格差を抱える「分断」の国家だ。
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チェルノブイリの野火は全ヨーロッパを汚染する
2012-07-15
東電の原発から放出された放射能は、アスファルトやコンクリート上のものはその後の降水や風で流末へあるいは飛散して、思わぬところにホットスポットを作っている。
次に、学校グラウンドや畑の土に染み込んだものは、風塵としてあちこちに移動し、これもある程度がホットスポットを作っている。
最後に、草地や森林は今も昨年3月に降った莫大な放射能を抱え込んだままである。
今は関東から岩手南部にかけての公園緑地、ゴルフ場、山地などが最大の放射能集積のままの状態である。
とりわけ山林は、まったくと言って良いほど測定さえされていないのが現状である。
この問題もチェリノブイリの先例から教訓を汲み取る必要があるのだが、ヨーロッパでは事故周辺地の森林火災、野火が危惧されているようだ。
消防被曝の危険と、もうひとつは全ヨーロッパの再汚染である。
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チェルノブイリの野火: ヨーロッパ全土を汚染する放射性の煙/BBC(7月7日) 7/10 書き起こし翻訳「フランスねこのNewsWatching」から
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故は大量の「死の灰」(放射性粒子)を発生させ、旧ソ連と西ヨーロッパを広い地域にわたって汚染した。
重度の汚染により立ち入りが禁止されている同原発の周辺半径30キロの地帯の大部分は、松林に覆われている。
ひどく汚染された松林はしばしば野火に見舞われるが、この野火により発生する煙はヨーロッパ全土を高度の放射能で汚染する危険をはらんでいる。
ウクライナ共和国キエフ市からの特派員報告。
●ブルーベリーの季節
ウクライナ共和国の首都キエフから北へ向かう途中、道に沿って生えた背の高い赤くてまっすぐな松の木の陰に座り強い日差しを避けながら、孫たちと一緒にブルーベリーを売る年配の女性たちの姿を見かける。
ブルーベリーの季節だ。ブルーベリーはプラスチックのパックに入れられて売られていた。車を止めて値段を交渉することもできたが、キエフ生物科学大学の森林研究所からやって来たセルゲイ・ジブチェフ教授は勧めなかった。
これらのブルーベリーは放射性ストロンチウムで汚染されているからだ。
ベリー類は非常に放射性物質を吸収しやすい。
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際には、放射性物質の多くが煙の形で旧ソ連と西ヨーロッパ地域に放出された。
放射性物質の汚染は公式の市場で売られている食品についてしか検査がなされていない。
そして、通常は放射性セシウムについてしかなされない。
年配の女性たちが経営する何百もの屋台形式の果物屋については、何の検査も無い。
とは言え、全てのベリーが同じように汚染されている訳ではない。恐らくは、四分の一程度が汚染されていると考えられる。
立ち入り禁止区域の周辺は数年前に来たときよりもにぎわっている印象だった。しかし、チェルノブイリに大量に植林された松の木は深刻な問題を引き起こしていた。
●燃える松の木と、ヨーロッパ全土に広がる放射性の煙
松は傷つきやすい。風ですら折れてしまう。虫に喰われる。旱魃(かんばつ)になると簡単に野火を起こす。
そして放射能に汚染された木々は、洗浄するにはあまりにも危険であり予算がかかりすぎると考えられている。
ある専門家は、もしチェルノブイリ周辺の松林に火がつけば、東ヨーロッパに原子力爆弾を落とすのと同様の深刻な放射能被害を与えると指摘する。
風は放射性の煙を遠くまで運ぶ。
ウクライナの中だけでは無い。ヨーロッパ大陸全土に広がるのだ。
この仮説について調べるため、セルゲイ教授はチェルノブイリまでデータを収集しにやって来た。
教授は同僚とともにチェルノブイリの森がもつ危険をモデル化して示すための資金を集めたいと考えている。
最も危険な松林の区画を示すことができれば、ウクライナ政府や外国のドナーに対し(野火の消火にあたる)消防士たちを被曝から守るための研修や機材の供与を行うよう説得する段階に移ることができる。
そして恐らくは、最も危険な松林の区画を伐採することも考えられるだろう。
●被ばくにさらされる消防士
チェルノブイリの消防士という仕事は、世界でもっとも人気の無い仕事だ。
野火が起きると彼等は無線で互いに連絡を取り、場所を確定する。
消防隊は旧ソ連製の大きな赤い消防車に飛び乗って草が生い茂るひび割れた道路を火元へと突き進んで行く。
消防士達が使用する機材は非常に簡単なものだ。
彼等は自分たちが放射性の炎と戦っている時には、それが自分で分かると信じている。
皮膚がちくちくして金属に触れているような感じがすると言うのだ。
しかし消防士たちは高温の放射性粒子にさらされる危険がいかに深刻なものであるかを十分理解している訳ではない。
彼等の仕事はいまだに旧ソ連の英雄主義の文脈で語られる。自分に何があろうとも、後でどんな被害に遭おうとも、火を消さねばならない、というものだ。
●風の吹くまま
セルゲイ教授は、1992年に起きたようなより大規模な野火はウクライナのイメージに絶望的なダメージを与えると述べる。
しかしそれだけではない。ヨーロッパ全土の農地にとっても深刻な被害を与える危険がある。
毎年(野火が発生しやすい)夏の暑い時期には、多くの研究者がこの問題について研究を続けてきた。
セルゲイ教授その同僚たちは支援を必要としている。
単にチェルノブイリの消防士たちが高度の被ばくにさらされないように救いだすためだけではない。放射性粒子が空中を漂い風の吹くままに飛んで行き、チェルノブイリ原発事故の負の遺産をまき散らすのを止めるために、である。
多くの人は、チェルノブイリ事故の影響は既におさまっており、安心して忘れても良いと考えている。しかし悲劇は終わっていない。
(抜粋、一部編集。小見出しはフランスねこがつけました。)
●オリジナル記事(現地の画像はこちらからどうぞ)
(Patrick Evans, « Chernobyl’s radioactive trees and the forest fire risk », BBC, 2012.07.07)http://www.bbc.co.uk/news/magazine-18721292
●著者のパトリック・エヴァンズBBC記者自身による音読でも記事を「聞く」ことができます。放送はこちらから。http://www.bbc.co.uk/programmes/b01kjgp3 (複数ある中の、2番目のお話です。英語です。)
次に、学校グラウンドや畑の土に染み込んだものは、風塵としてあちこちに移動し、これもある程度がホットスポットを作っている。
最後に、草地や森林は今も昨年3月に降った莫大な放射能を抱え込んだままである。
今は関東から岩手南部にかけての公園緑地、ゴルフ場、山地などが最大の放射能集積のままの状態である。
とりわけ山林は、まったくと言って良いほど測定さえされていないのが現状である。
この問題もチェリノブイリの先例から教訓を汲み取る必要があるのだが、ヨーロッパでは事故周辺地の森林火災、野火が危惧されているようだ。
消防被曝の危険と、もうひとつは全ヨーロッパの再汚染である。
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チェルノブイリの野火: ヨーロッパ全土を汚染する放射性の煙/BBC(7月7日) 7/10 書き起こし翻訳「フランスねこのNewsWatching」から
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故は大量の「死の灰」(放射性粒子)を発生させ、旧ソ連と西ヨーロッパを広い地域にわたって汚染した。
重度の汚染により立ち入りが禁止されている同原発の周辺半径30キロの地帯の大部分は、松林に覆われている。
ひどく汚染された松林はしばしば野火に見舞われるが、この野火により発生する煙はヨーロッパ全土を高度の放射能で汚染する危険をはらんでいる。
ウクライナ共和国キエフ市からの特派員報告。
●ブルーベリーの季節
ウクライナ共和国の首都キエフから北へ向かう途中、道に沿って生えた背の高い赤くてまっすぐな松の木の陰に座り強い日差しを避けながら、孫たちと一緒にブルーベリーを売る年配の女性たちの姿を見かける。
ブルーベリーの季節だ。ブルーベリーはプラスチックのパックに入れられて売られていた。車を止めて値段を交渉することもできたが、キエフ生物科学大学の森林研究所からやって来たセルゲイ・ジブチェフ教授は勧めなかった。
これらのブルーベリーは放射性ストロンチウムで汚染されているからだ。
ベリー類は非常に放射性物質を吸収しやすい。
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際には、放射性物質の多くが煙の形で旧ソ連と西ヨーロッパ地域に放出された。
放射性物質の汚染は公式の市場で売られている食品についてしか検査がなされていない。
そして、通常は放射性セシウムについてしかなされない。
年配の女性たちが経営する何百もの屋台形式の果物屋については、何の検査も無い。
とは言え、全てのベリーが同じように汚染されている訳ではない。恐らくは、四分の一程度が汚染されていると考えられる。
立ち入り禁止区域の周辺は数年前に来たときよりもにぎわっている印象だった。しかし、チェルノブイリに大量に植林された松の木は深刻な問題を引き起こしていた。
●燃える松の木と、ヨーロッパ全土に広がる放射性の煙
松は傷つきやすい。風ですら折れてしまう。虫に喰われる。旱魃(かんばつ)になると簡単に野火を起こす。
そして放射能に汚染された木々は、洗浄するにはあまりにも危険であり予算がかかりすぎると考えられている。
ある専門家は、もしチェルノブイリ周辺の松林に火がつけば、東ヨーロッパに原子力爆弾を落とすのと同様の深刻な放射能被害を与えると指摘する。
風は放射性の煙を遠くまで運ぶ。
ウクライナの中だけでは無い。ヨーロッパ大陸全土に広がるのだ。
この仮説について調べるため、セルゲイ教授はチェルノブイリまでデータを収集しにやって来た。
教授は同僚とともにチェルノブイリの森がもつ危険をモデル化して示すための資金を集めたいと考えている。
最も危険な松林の区画を示すことができれば、ウクライナ政府や外国のドナーに対し(野火の消火にあたる)消防士たちを被曝から守るための研修や機材の供与を行うよう説得する段階に移ることができる。
そして恐らくは、最も危険な松林の区画を伐採することも考えられるだろう。
●被ばくにさらされる消防士
チェルノブイリの消防士という仕事は、世界でもっとも人気の無い仕事だ。
野火が起きると彼等は無線で互いに連絡を取り、場所を確定する。
消防隊は旧ソ連製の大きな赤い消防車に飛び乗って草が生い茂るひび割れた道路を火元へと突き進んで行く。
消防士達が使用する機材は非常に簡単なものだ。
彼等は自分たちが放射性の炎と戦っている時には、それが自分で分かると信じている。
皮膚がちくちくして金属に触れているような感じがすると言うのだ。
しかし消防士たちは高温の放射性粒子にさらされる危険がいかに深刻なものであるかを十分理解している訳ではない。
彼等の仕事はいまだに旧ソ連の英雄主義の文脈で語られる。自分に何があろうとも、後でどんな被害に遭おうとも、火を消さねばならない、というものだ。
●風の吹くまま
セルゲイ教授は、1992年に起きたようなより大規模な野火はウクライナのイメージに絶望的なダメージを与えると述べる。
しかしそれだけではない。ヨーロッパ全土の農地にとっても深刻な被害を与える危険がある。
毎年(野火が発生しやすい)夏の暑い時期には、多くの研究者がこの問題について研究を続けてきた。
セルゲイ教授その同僚たちは支援を必要としている。
単にチェルノブイリの消防士たちが高度の被ばくにさらされないように救いだすためだけではない。放射性粒子が空中を漂い風の吹くままに飛んで行き、チェルノブイリ原発事故の負の遺産をまき散らすのを止めるために、である。
多くの人は、チェルノブイリ事故の影響は既におさまっており、安心して忘れても良いと考えている。しかし悲劇は終わっていない。
(抜粋、一部編集。小見出しはフランスねこがつけました。)
●オリジナル記事(現地の画像はこちらからどうぞ)
(Patrick Evans, « Chernobyl’s radioactive trees and the forest fire risk », BBC, 2012.07.07)http://www.bbc.co.uk/news/magazine-18721292
●著者のパトリック・エヴァンズBBC記者自身による音読でも記事を「聞く」ことができます。放送はこちらから。http://www.bbc.co.uk/programmes/b01kjgp3 (複数ある中の、2番目のお話です。英語です。)
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