fc2ブログ

もうすぐ北風が強くなる

米国・イスラエルがイランにサイバーテロ:田中

ウイルス「フレーム」サイバー戦争の表と裏  6/8  田中宇

 5月29日、ロシアの世界的なインターネットセキュリティ企業であるカスペルスキー研究所が、電力や交通など国家のインフラシステムにとりつく新種のネットウイルス「フレーム」(Flame)を見つけたと発表した。
 フレームに感染しているマシンは、世界で千台から5千台と概算され、そのすべてが中東にあり、ほとんどはイランのコンピューターであるという。 (Cyber 'superweapon' virus uncovered: Russian firm)

 イランの政府系システム、特に原発や核開発のコンピューターシステムには、2008年以降「スタックスネット」(Stuxnet)と「ドゥク」(Duqu)というウイルスに攻撃されている。今回のフレームも、これらと同じ08年ごろに作られている。
 3種類のウイルスは、すべて同じプラットフォームを使ってプログラムされているため、同じ組織によって作られたと考えられている。フレームは大きさが20メガバイトもあり、1メガバイトのスタックスネットよりずっと大きいが、ウイルスとして非常識な巨大さであるだけに、逆に43種類のウイルス感知プログラムをすり抜け、発見が遅れた。 (Flame virus had massive impact on Iran, says Israeli security firm)

 イランを攻撃した3種類のウイルスのうち、スタックスネットがシステムの破壊を主な任務にしているのに対し、フレームとドゥクは、入り込んだシステム内のPDFやMSオフィスの文書を盗み出したり、システム管理者がキーボードで何を打ち込んだか(打鍵歴)、モニターに何を表示したかを記録し、その情報を欧州などにあらかじめ設置したコンピューターに送ることを任務にしている。 (Flame: Attackers 'sought confidential Iran data')

 スタックスネットとドゥクは、米国とイスラエルの当局がプログラムを作り、イランが核兵器を開発している証拠を得るために、イランの核開発用システム内のPDFやオフィスのファイルを盗み出したり、システムを破壊して核開発を遅らせようとしたとされている。
 今回のフレームも、カスペルスキーが存在を発表した直後から、米イスラエルの仕業だろうと報じられている。 (Israel fans a virtual Flame against Iran)

 ニューヨークタイムズによると、ドゥクが盗み出した情報を送信する時間帯は、エルサレムの業務時間帯と一致する。ドゥクの情報送信は、金曜日の夕方から土曜日の夕方まで止まり、ユダヤ教の安息日の時間帯と一致するという。
 このくだりはニュース記事というより、ユダヤ人諜報関係者の一流のジョークだ。NYタイムズもなかなかやるなと思ってしまった。 (Researchers Find Clues in Malware)

▼イランへのサイバー攻撃を初めて認めた米イスラエル

 カスペルスキーがフレームの存在を発表した日、自国の関与を問われたイスラエルのヤアロン副首相は「イランの核兵器開発という大きな脅威を阻止するためには、サイバー攻撃を含むどんな手段を使っても良いのだ」という趣旨の発言を行い、イスラエルがフレームを作ったことを暗に認めた。
 6月4日には、イスラエル軍が、サイバー攻撃を戦術の一つにしていることを初めて認める文書をウェブサイトで公開した。その後、バラク国防相も同様の認知を表明した。 (Iran: Yaalon Confirmed Israel is behind Flame) (IDF says 'defined essence of cyber warfare')

 ニューヨークタイムズは6月1日、NSA(国家安全保障局)など米当局が、イスラエル軍の諜報担当組織「8200部隊」と組み、ブッシュ政権時代の06年から、イランの核開発用システムに対するサイバー攻撃を「オリンピック大会作戦」命名して挙行し、オバマも就任直後に作戦の続行を許可したと報じた。
 米当局の匿名の担当者からの情報リークを受けて書かれた記事で、イランが03年以降に核兵器開発していないことを認めた上で、この作戦がイランの核開発をどの程度妨害できたか明確でないとしている。 (Obama order set off wave of cyberattacks against Iran By David E.Sanger)

 NYタイムズの記事によると、米当局がイランをサイバー攻撃したのは、イランの核施設を空爆したがるイスラエルに対し、軍事攻撃より先にサイバー攻撃した方が良いとなだめる目的もあったという。
 フレームやスタックスネットが作られたのは、この作戦より前だが、先にイラン側のシステムの構成をスパイした上でシステムへの破壊工作を試みた点は、フレームやスタックスネットの手口と、オリンピック大会作戦が同じであり、両者が別物とは考えにくい。ワシントンポストも似たような記事を出している。 (Stuxnet was work of U.S. and Israeli experts, officials say)

 米国もイスラエルも、これまで外部からサイバー攻撃を受けても被害を被らないようにするサイバー防御策の存在については語ってきたが、防衛でなく侵攻としてのサイバー攻撃の作戦をやっていることを認めたのは、今回が初めてだ。
 カスペルスキーがフレームの存在を発表したとたん、それまでサイバー攻撃についてずっと沈黙していた米国とイスラエルが、ほぼ同時に、初めてイランをサイバー攻撃していることを認め、自分たちが犯人であると暴露する言動をとり始めた。
 これは偶然の一致でなく、米イスラエルがイランを脅すために意図的に暴露する策をとったのでないかとイスラエルのハアレツ紙が書いている。 (Why are Israel and America suddenly speaking so openly about cyber warfare?)

▼一転して米イスラエルが悪者になる構図

 とはいえ、米イスラエルがイランを脅しているように見えるのは、事態の半分だけを見た場合にすぎない。残りの半分を含めた全体を見ると、全く違う話になる。
 残りの半分とは、フレームの存在を発表したカスペルスキーやロシアの側の事情である。 (Kaspersky Lab Experts Provide In-Depth Analysis of Flame's C&C)

 ナタンズ原発などイランの核事業は、ロシアの原子力産業と露政府の協力で進められている。イランの核事業用のシステムがスタックスネットやドゥクのサイバー攻撃を受けた時、ロシア政府は自国の企業であるカスペルスキーに依頼して、ウイルスについて調べさせた。
 この延長に、カスペルスキーが今回、イランのシステムに入り込んだフレームの存在について調査して発表したことがある。 (Kaspersky Lab From Wikipedia)

 日本語のマスコミ情報だけで世界の動きを判断している人や、英文情報に接していても上っ面だけの「翻訳おたく」の人は、米イスラエルがイランの核システムをサイバー攻撃したことについて「イランの悪事を米イスラエルが新手の方法で成敗しようとしている」「イランだけでなく、イランをかばうロシアや中国も悪だ。ロシアはイランに核施設を売って儲け、中国はイランから安く石油を買う利権あさりをしているだけだ」という「イラン露中=悪、米イスラエル=善」の価値観で見ているだろう。 (歪曲続くイラン核問題) (イランにテロの濡れ衣を着せる米当局

 しかし、これまで何度も書いたように、この価値観は歪曲されており、間違いだ。IAEAはイランの核開発について繰り返し報告書を発表しているが、イランの核開発が平和利用を逸脱する兵器開発であるという明確な証拠を一つも発表していない。
 「イランの関連施設の中で、まだIAEAが調べていないものがあり、そこで核兵器開発をしているかもしれない」という、疑ったらきりがない話で、これをもって「イランが核兵器開発しているとIAEAが疑っている」と報じられている。
 イランが怪しいなら、核燃料として使えるメドもなく爆弾5千発分のプルトニウムを持ち、もっとプルトニウムを製造しようとしている日本も、十分に怪しい。 (Japan to make more plutonium despite big stockpile)

 IAEAは最新の報告書で、イランが核兵器開発している兆候はないと書いている。CIAなど米政府の諜報部門も、近年のイランが核兵器開発をやっていないという結論を、07年にすでに出している。 (IAEA report says no diversion in Iran) (イラン問題で自滅するアメリカ

 これらの点を踏まえると、事実としては、米イスラエルがイランを弱体化させるために、核兵器開発の濡れ衣をかけ、経済制裁したり、外交やネット上で攻撃をしかけてきたのであり、米イスラエルの濡れ衣を非難する露中を含めて善悪が逆転し「米イスラエル=悪、イラン露中=善」となる。 (善悪が逆転するイラン核問題

 この新たな善悪観をふまえて、米イスラエルがイランをサイバー攻撃している事態を見ると、以前の記事で書いた、インターネットの国際管理権を、米国から、BRICSの影響力が強い国連傘下の国際電気通信連合(ITU)に移そうとするロシア主導の動きを後押しするものとなる。 (インターネットの世界管理を狙うBRICS)

 カスペルスキーはもともとロシア政府の依頼でイランの核開発システムに入り込んだ米イスラエル製のウイルスについて調査したが、今回はITUの依頼でフレームについて調査し、発表したことになっている。
 これまで米国の非政府組織が管理してきたインターネットのDNSなど国際インフラの管理を、ITUに移管する構想はロシアのプーチン大統領の発案だ。
 中国やインド、ブラジルなどBRICS諸国や、エジプト、マレーシアなど途上諸国がITUへの移管を支持している。 (The United Nations Could Seize the Internet, U.S. Officials Warn)

 最近ロシアの大統領の座に戻ったプーチンは、米国の覇権を奪うことを目標にしており、大統領に戻ると同時に、ネットの国際管理権を米国から奪う画策を開始した。その画策は、フレームを危険なウイルスとして世界に紹介し、フレームを使って無実のイランの核開発システムを破壊しようとする米国の策略をあぶり出し「そんな危険なことをする米国に、ネットの国際管理を任せておけない。
 ネットの管理は国連がやるべきだ」とする世界的な世論を喚起し、ネットの管理権を米国から国連(BRICS)に移転するシナリオと考えられる。ネット上で米国から受けた攻撃を、外交上で米国を攻撃する力に転化する、柔道家のプーチンが好みそうな作戦だ。 (United Nations views Flame as cybersecurity opportunity)

 カスペルスキーの社長は、フレームがもたらすものが「サイバー戦争」でなく「サイバーテロ」だと表明した。この言い換えは重要だ。米イスラエルがイランに核兵器開発の濡れ衣をかけた上でサイバー攻撃を仕掛けていることを踏まえると、米イスラエルは、イランという無実の国をサイバー攻撃する「サイバーテロ国家」である。米イスラエルのイラン攻撃は「サイバー正当防衛」でなく「サイバー侵略戦争」になる。
 この善悪の転換は「米国がサイバー侵略戦争をするサイバーテロ国家であることがわかった以上、米国にネットの管理を任せておけない」「国連が管理すべきだ」という話につながる。 (Nations must talk to halt "cyber terrorism" -Kaspersky)

▼ここでも垣間見える米国の隠れ多極主義

 とはいえ、これらを踏まえた上で、再び米イスラエルの側に視点を戻すと、さらに別の見方ができる。米イスラエルがイランに対するサイバー攻撃を認めたタイミングが、とても自滅的だという点がカギだ。イランが核兵器開発しておらず濡れ衣をかけられていることは、かつて国際的にあまり知られていなかったが、今ではBRICSや途上諸国の多くの人々にとって常識になっている。
 その常識を共有していないのは日米の人々などだけで、もはや少数派だ。そのような中、今のタイミングで米イスラエルがイランをサイバー攻撃していることを暴露したことは、自ら国際犯罪を犯していることを自白することであり、自滅的だ。 (イラン核問題が妥結に向かいそう(2)

 ロシアなどBRICSがネットの国際管理権を米国からITUに移すべきだと主張し、それと同時期にフレームの存在が発表され、米イスラエルの犯行が疑われたところで、米イスラエル自身は、あっさり犯行を認めてしまい、飛んで火に入る夏の虫的に、プーチンの策略にはまった。米イスラエルは、犯行を自白したことで、ネットの国際管理権が米国から国連やBRICSに移ることを促進してしまっている。
 この動きは、世界の覇権が米国からBRICSに移る「多極化」の範疇に入る。米イスラエルは、知って知らずか、自分たちの覇権を失わせる多極化を推進している。 ('Flame' Virus Fuels Political Heat Over Cyber Threats)

 カスペルスキーは、フレームの存在によって世界の状況が一変したと主張し、国連によるネットの国際管理が必要だと力説する。だが、米国の専門家の中には、カスペルスキーがフレームの脅威を誇張していると指摘する人もいる。ロシアがネットの管理権を米国から奪ってBRICS傘下のITUに移そうと謀略をめぐらしており、カスペルスキーの誇張はその謀略の一環だというわけだ。すでに述べたように、プーチンのロシアがこのような謀略をやる可能性は十分にある。 (Stuxnet and Flame: Take a Breath)

 イランをサイバー攻撃したことを認めた主導役は、イスラエルでなく米国だろう。イスラエルは、米国に見捨てられることを恐れている。イスラエルは、米国の言いつけに従うが、同時にイランが台頭する中で米国が中東での影響力を失い、単独でイランやアラブの敵意と対峙する日が来ることを恐れている。
 イスラエルは、自らイランをサイバー攻撃していると認めたくないはずだ。米国にいわれてやっている感じだ。多極化を推進してしまっているのは米国だけで、イスラエルはそれにつき合わされ、割を食っている。 (北朝鮮と並ばされるイスラエル

 この件に関して米国が「隠れ多極主義」的である状況は、ITUが進めているネット上の安全確保のための国際協調組織「インパクト」(IMPACT。International Multilateral Partnership Against Cyber Threats)に、米政府が全く参加していないことからも感じられる。
 米国が隠れ多極主義的な態度をとる時に良くあるパターンは、最初に米国がその分野の世界のすべてを支配する姿勢をとった後、戦略を過激にやって失敗し、中露や途上諸国から異論が多発すると、米国は一転すねて何もやらず孤立する姿勢に大転換し、仕方がないので中露がBRICSをまとめて代わりの新たな世界秩序を構築すると、それを無視する態度をとる(日本も米国を真似て新世界秩序を無視し、テレビはAKBばかり映して日本人に世界の事態を伝えない)。
 「インパクト」に対する米国の全くの不参加は、隠れ多極主義のように見える。 (U.S. Administration's Reckless Cyber Policy Puts Nation at Risk)

 隠れ多極主義との関係で言うと、米当局がイスラエルと組んでイランをサイバー攻撃していたことをリークして書かせたのが、NYタイムズのデビッド・サンジャーだったことも興味深い。
 サンジャーはイラク戦争前、フセイン政権が大量破壊兵器を開発しているというウソの情報をネオコンからもらい続けて盛んに記事を書き、米国を自滅的なイラク侵攻に引っ張り込んだ立役者の一人だ。 (Obama order set off wave of cyberattacks against Iran By David E.Sanger)

 イラク戦争のでっち上げに荷担して、米国の軍事力を浪費させ、米国の覇権を自滅に導いた隠れ多極主義的なサンジャーが、今また、ネットの国際管理をBRICSが米国から奪おうとするプーチンの謀略に荷担する記事を書いている。
 サンジャーは、イランや北朝鮮についてもいろいろ書いているほか、米国が財政赤字を増やしすぎて覇権を失うと予測する記事も書いており、そちらの面でも隠れ多極主義のにおいがする。 (Huge Deficits May Alter U.S. Politics and Global Power By DAVID SANGER)

 ITUは今年12月にサミットを行い、ネットの国際管理について議論する。そのサミットだけでネットの管理権が米国から国連に移るとは考えにくく、議論や対立が長く続くだろうが、911以来の国際政治の流れからみて、時間が経つほど米国が悪者にされ、ネットの管理権が国連に移るのはやむを得ないという趨勢になりそうだ。
 フレームの脅威が実際どれほどのものか判断が難しいが、フレームの被害がネット中に広がり、米国のシステムが攻撃される「ブーメランの危険性」を指摘する人もいる。 (Risks of boomerangs a reality in world of cyberwar)

●隠れ多極主義についての関連記事

隠れ多極主義の歴史
資本主義の歴史を再考する
地球温暖化の国際政治学
歴史を繰り返させる人々
世界多極化:ニクソン戦略の完成

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
 このブログ内のイラン、シリア、イスラムと米国、イスラエル関係のページリンク。

・ イラン石油開発から撤退せよ
・ 狂信的シオニストと闘うパレスチナ
・ 復興するイスラムの力
・ 復興するイスラムの力(2)
・ R・フィスク批判:民衆か宗派かではない、闘う思想の重要性
・ バーレーンからサウジへの道
・ 傲慢に偽装する欧米の大手マスコミ
・ 孤立を深めるシオニストと復興するイスラム
・ 9.11疑惑と軍産複合体の動向
・ 米軍のイラク撤退とイスラム復興勢力
・ シリアへの帝国主義軍事侵略が始まっている
・ 米国。イスラエルのイラン攻撃に注意!
・ 報道のふりして洗脳するマスコミ、断じて奴隷とはならじ
・ 動乱の2012年(2)ホルムズ海峡、増刷で逃げる通貨
・ 対イラン戦争が仕掛けられている
・ イランに暗殺工作を続けるモサド
・ 帝国主義は民主主義への世界戦争を続けている
・ 帝国主義によるシリアの内戦
・ イランは攻撃されるのか?
・ イラン経済封鎖で政府転覆を狙う米国
・ 石油価格と通貨防衛のため内戦を仕掛ける欧米
・ WikiLeaks:米主導のNATO軍がシリアに入っている
・ シリア軍事侵略は挫折か
・ 米国はイスラエルのイラン攻撃を阻止したようだ
・ イラン核問題は妥結に向かうか:田中
・ BRICS首脳会議
・ イラン核問題は妥結に向かうか(2):田中
関連記事

福島を切り捨ててはならない

   「福島を切り捨ててはならない」 2012/5/20 山田 真 (小児科医)  救援連絡センター第8回定期総会講演

  放射能を感じることが重要

今この会場の線量は0.06マイクロシーベルト。放射能はその存在を忘れてしまいがちだが、私たちのまわりにはいっぱいある。忘れてしまうと国や東電の責任を免罪してしまう。
私は線量をいつも計るようにしている。私の持っている測定器は10万円ほどの器械。高価だから個人で持つのは大変かもしれないが、グループで持って測って放射能を実感したほうがいい。

放射能について国はいいかげんな計測しかしていない。東京都は新宿で測っている値を発表しているが、このところ0.05マイクロシーベルトくらいになっている。しかし江東区は0.15~20マイクロシーベルトくらいある。
国民は正確な情報を知らされていないので、嘘になれてしまっている。福島は「あきらめた」という状態になっている。
国・県・専門家、誰も信用できないから要求もしない。自分たちだけで守っているので限界があるが、国や県に要求するとろくなものが返ってこない。
このごろ福島に行くと「それでいいのか」と思い、切ない気持ちになる。

   救援連絡センター設立のころ

救援連絡センターができたころは、東大闘争からはじまる全国学園闘争があり、市民や労働者の闘いがあり、日常的に逮捕者やけが人が出た。
1968年の東大闘争のとき私は卒業して医者になっていた。医療救対ということでデモ隊について救急箱を持って一緒に走ったが、とても処置できないので、慈恵医大を拠点にして一時的な野戦病院を作り、救援活動をしていた。
なりたての医者を集めたが、人のけがを縫ったこともない医者もいた。けがをした人のなかには、あそこで縫うよりは捕まったほうがいい、という話もあった。
かなり滅茶苦茶な医療をやっていた、と今思う。

そういうなかで、共産党系の国民救援会はあったが、対抗するものを作ろうと救援連絡センターを作った。亡くなられた水戸巌さん、郡山吉江さん、私が医療側ということで3人くらいで始めた。
今回、水戸さんのことを思い出したが、水戸さんが生きていたら嘆かれたろう。水戸さんは、原子力の専門家で原発に反対し、原発労働者の被曝問題にも関わっていた。
水戸さんが生きていたら今回の原発事故は起きなかったかもしれない。

獄中医療については、拘置所に毎週かよったこともある。制限時間なしに接見していたが、実際には金網越しにしか見ることができなかった。
先進国といわれる国のなかで、日本の獄中医療は劣悪だ。
私が関わっていた30、40年前から良くなっていない。獄中にいる、存在することで起きる病気を「獄原病」という名前をつけた。「現代用語の基礎知識」の今年のキーワードというので載ったこともある。
外の医者が行って治療する、その判断によって本人が希望する病院で治療するということを確立しなければいけない。
密室治療は恐ろしいと思うそんな経験をしてきた。

  日本が放射能に無警戒なのは何故か

昨年、3月11日に福島原発で大事故が起きたが、その半年くらい前に「母の友」という雑誌の連載で医療被曝のことについて書いていた。日本人は放射能について警戒心がない、という問題提起をしていた。
広島・長崎を経験していながらどうして医療被曝のことが問題にならないのか不思議だった。
5、6年前、ヨーロッパの科学者が世界中の医療で使われる放射線の現状について調べた。日本はレントゲンを撮る率がきわめて多い。
学校で全員がレントゲン検査をやることは、日本しか行っていない。欧米では労働者への検診は、被曝するデメリットと診察のメリットを考えると意味がない、ということでやられていない。

最新の機械であるCTの時代になってアメリカなどと比較して日本が何十倍も被曝している。
CTの3分の1は日本にある、といわれている。日本人は欧米に比べて何十倍か被曝している。
ヨーロッパの専門医達が不思議がるのは、日本は広島、長崎で被曝して放射能の怖さを知っている国民であるはずなのに、放射能を警戒しないのはどうしてか、ということ。ヨーロッパの科学者達が計算すると、治療のメリットと被曝のデメリットを比較すると発ガンのデメリットのほうが大きく、レントゲンということがプラスになっていない。
にもかかわらず日本では話題にならないのはどうしてか、と言っている。日本の専門家達はヨーロッパから言われるけど放射能の危険性についてどうやって計算して出すのかと言う。
広島の被曝者の資料しかなく、広島の被曝の仕方と医療の被曝はスタイルが違う。だから、広島を資料にして危険だ、と言われても耳を傾ける必要がない、と言うのが日本の科学者の態度。

日本が放射線に無警戒なのは何故か、これまで解らなかったが、今回、3・11福島原発事故ではじめて解った。
日本は被曝国だから、放射能に対する発言権を世界で一番持っている。核保有国としては、日本人に一番安全だと見てもらわなければ困る。
それで、原爆が落とされて以降周到にアメリカによって作られたABCCという機関を通じて、被曝の実態をなるべく小さく見せてきた。
福島で起きたことは、広島、長崎、第五福竜丸、東海村臨界事故という一連の流れの中にある。広島、長崎、第五福竜丸、東海村臨界事故の人々が受けてきた過酷な隠蔽工作が福島で明らかになった、ということである。

  福島の子どもたちの現状

福島の現状は、被害を訴えているにもかかわらず、見捨てられようとしていることが明らかになってきた、ということだ。
私は昨年6月にはじめて福島に行き、その後10回くらい行った。福島の子どもたちの健康相談会をやっているが、実際には子どもたちのからだに大きな変化は今のところは起きていない。だが今起きていないというのが実は怖いことで、10年、20年たって起きても何の補償も出ない可能性がある。
広島よりもひどい状態が起きるのではないか、相談会でも親御さんはそれを心配している。多いときは10人くらいの医者が集まって相談会を担当するが、1人1時間くらいひたすら聞く。そして、私たち医者ができることは多くない。
大丈夫だと言うわけにもいかないし、こんなふうに危険だとも言えない。一緒に続けて闘おう、子ども達をきちっと見続けようとしか言えない。
最初のころは「避難しようかどうか」という相談が主だった。そして、避難できる人たちは福島を離れた。自主避難する人を非難する人がいるが、それはおかしい。避難する人たちは基本的に正しい。

ところでぼくの自宅へ昨日までモンゴルの人たち五人ほど来客があった。モンゴルの人達が日本に観光でやってくるのは危険かと聞かれて私は答えることができなかった。
どうしても返事をしろ、東京は安全かと聞かれたら、「小さい子はこないほうがいい」としか言えない。

  福島現地で起きている分断

福島では最初のころも分断が起きていた。大きな事故が起きるとさまざまな差別が起きる。
福島は3つの地域に分かれている。原発のある浜通り、福島から郡山へ向かう中通り、そして会津という地域。
原発があれば豊かになるよと宣伝して、浜通りという貧しい所へ原発を持って行った。

浜通りは回復できない、と国は思っているだろう。
会津は福島の中では東京並に線量が低い地域が多いのに福島とひとまとめにされて、農産物も売れず困っている。
中通りは深刻な状態にあって、さまざまなところがある。
福島市は完全に沈黙させられているが、郡山は闘いが組めている、いわきは復興を目ざしている、というふうにさまざまなのだ。

地域的な分断のほかに、いろいろな対立がある。避難していた人と残った人、家族の中でもお母さんは子どものために避難したいと思う、お父さんは仕事があるから避難できない、おじいちゃん・おばあちゃんは「たいしたことないと言われているから、ここに残っていても大丈夫だ」と言う。
家の中でも意見が違い、家族のなかでも厳しい状況がある。私たちは「小さな子どもたちは避難したほうがいい」と言っている。

6月のころは相談会もなごやかな雰囲気だった。
7月になって戒厳令になったという気がした。福島では放射能が不安だと言うとバッシングを受ける状態になっていた。とりわけ福島市が強くいろいろな規制をしている。
外に出ている子どもに対して、「早く教室へ入ったほうがいい」「長袖のシャツを着ていたほうがいい」くらいの注意をした教師に教育委員会から指導が入る。
それで、何人かの学校の先生が辞めている。

  医師会は放射能を無視

福島市の医師会は全員「放射能は心配ない」と口裏を合わせることになっている。
最近は子どもを連れたお母さんが受診して、放射能と一言いうと横を向き診てくれないという状態になっている。
山下俊一教授という悪名高いピエロがいるが、実は悪の中枢ではない。前面に出てきて非難されても英雄気取りになっている山下みたいのはどこにでもいる。亡くなった重松逸浩とか長崎大の長滝重信とかもっと悪い人がいる。
昨年9月に福島で国際会議が開かれ「もう福島は収束した。将来も健康被害はない」と宣言されてしまったが、主催したのは日本財団だった。福島では健康被害なしとするため山下などが動いている。

福島の個人病院で健康診断をしようとしたら、福島市からストップがかかり、「山下さんと相談してからやれ」と言われた。
山下としては自分たち以外の健康診断はやらせない。勝手にやった健康診断で被害はなし、将来も大丈夫と言ってしまう。
他のところでやるとそういう結果は出ないわけだから、自分たちの健康診断のおかしさが暴露されてしまうから止めている。それで、福島の医者は動きがとれない。

  食物による内部被曝を減らしたい 

外部被曝を避けようとしてずっと家にこもっているわけにもいかないので、まず、食べ物・飲み物による内部被曝を減らしたい、と思っている。
福島の小中学生が日本で一番福島産の食材を食べている。総理大臣がカイワレを食べたという下らないパフォーマンスはあるが、そのパフォーマンスを福島の子どもたちが集団でやらされている。
ただちに被害は出ていないから「大丈夫だろう」と微かな期待をかけさせられ、福島の子どもたちが福島産の食材を食べさせられ、牛乳を飲まされている。
福島産以外の食材を使ってほしいと要求する親はまわりの保護者から非難される、というとてもつらい状況になっている。

何とか避難できる人たちは避難した。福島で運動してきた人もかなり福島から引っ越した。これまで、福島が危険だと言いながら福島を出ないということで、「危険だと言いながらいるのだから、本当は危険ではないのではないか」という声が浴びせられた人もいる。
「残るも地獄、出るも地獄」と言われている。東京に避難している人たちも楽に生活しているわけではなく「福島に帰りたい」と思っている。避難先も1位は山形で、2位は米沢で、3位は新潟、4位北海道という順序になっている人が多い。
一旦出ると、例え将来線量が減ったとしても帰れないと思っている人が多い。

また、福島出身ということで差別されるのではないか、という気持ちが非常に強い。実際に子どもを幼稚園に入れようと連れて行ったら「福島の人は遠慮して下さい」と断られた例がある。
人権問題にしようと思ったが、お母さんが「幼稚園の名前は絶対に言わない」と頑なに拒否するのでそれ以上できていない。

福島で健康相談会をはじめて驚いたのは、400人くらいきたこと。東京でも沢山くるだろうと思って東京で相談会を開いたが30人くらいしかこなかった。
福島の人たちは避難先で福島出身ということを明かさない、としているようだ。例えば江東区の東雲(しののめ)に固まって避難している人たちは、福島出身だということがわかっているはずだが、それでも外と連絡をとりたくない、という人が多い。
広島の被曝者が被曝者であることを隠してきた、ということを福島の人たちが知っているわけではないと思うが、直感的にわかるのかと思う。
福島のお母さんと話していると、女の子は福島とわかると結婚できなくなる、子どもを生めないのではないかと心配している。福島という名前で差別されるということを実感している人たちが多くなっている。

  被曝と補償の関係

福島に残った人で「心配だ、不安だ」という人には風評被害だ、という非難が集中するというつらい状況にある。
どうして山下俊一教授が活躍して「なんでもない」と言うかというと、補償の問題があるからだ。平凡社新書で出ている「被ばくと補償」という直野章子さんが書いた本がある。「広島、長崎そして福島」と書かれているが、広島での補償の状態が書かれている。

広島で被曝した人たちについて、いろいろな形で書かれている。直接、爆心地近くに入って動き回った人たちも被曝の対象になっているが、遺体を10体以上収容・処理の作業をした人が被曝者と認定されている。
9人の遺体を処理した人は被曝者にならないけれども、10人を処理した人は被曝者になっている。
あとから被爆地に入って遺体を収容したお母さんや、背中に負ぶわれていた子どもで被曝の対象になるのは2歳以下の子ども。
実際に赤ちゃんを背中に負ぶったお母さんが小学校の子どもの手を引いて被曝者10体以上の収容を手伝ったが、赤ちゃんとお母さんは認定されたが、小学生はどこにも入らなかった。
3人連れで歩いていながら、小学生だけ認定されない、という悲惨なことが起きている。

実際に今問題になっているのは、内部被曝、低線量被曝であり広島では補償されていない。
沢山の被曝者が切り捨てられている状態で、今、低線量被曝について語ることができるのは、肥田舜太郎さん、矢ヶ崎克馬さんといったお医者さんたちだが、この人たちは被曝者の訴訟に関わってきた人。
そういう人たちしか低線量被曝した人たちに寄り添ってこなかった。ほかの人たちは、多くの専門家たちは低線量被曝、内部被曝はない、ということにしてきた。

1991年に亡くなった中川保雄さんという人が書いた「放射線被曝の歴史」という本や、チェルノブイリのあとカール・Z・モーガンという国際放射線防護委員会で最初の委員長だった人が1994年に書いた「原子力開発の光と影」という労作がある。
モーガンという人は、低線量被曝、内部被曝を告発したから委員長をおろされた。「モーガンは立派な人だが、精神状態に異常をきたして変なことを言うようになった」という情報が日本に入ってきたが、この本はモーガンが九一歳の時に書かれたもので立派な本。モーガンやゴフマンなどは追放されている。
ロシアでもチェルノブイリで真実に近いことを伝えた学者たちは、ほとんど追放された。旧ソ連の学者ではヨーロッパに亡命している人もいるし、汚職をデッチあげられて禁固刑になった人もいる。
放射能の健康被害について告発した人たちは、ことごとく抹殺されてきた。今回の福島についても最初から被害隠しが行われている。

  研究材料としての健康診断

国は勝手に健康診断して、あとになって「なんでもなかった」という結果を出してくる。東海村の臨界事故で3人の作業員が高線量の被曝をしているが、2人亡くなって1人はその後どうされたかよくわからない。
それ以外に二百数十名の人が被曝している。この人たちは体の中のナトリウム量を調べ、1番多い人で42シーベルトだった。それで、50ミリシーベルト以下では将来にわたって影響はない、ということで事故調査委員会は終わりにしてしまった。
蓋はしてしまったが、この人たちは毎年健康診断をしている。広島もそうだが、治療の対象ではなくて研究材料にされている。
アメリカにとって広島・長崎は爆弾の威力を計る実験だったわけで、放射線の被害を浴びた人たちがどんな状態か知りたかったはず。そういう意味では調査・研究はするが、「健康被害が出るかもしれない」と言うと拙いのでそういう言い方はしない。
東海村事故の時も毎年やる健康診断については、「健康被害はないのだから毎年やる必要はないが、住民の中に不安を持つ人がいるので不安を解消するために健康診断をやる」と言っていた。

今回の福島についても18歳以下の甲状腺癌の調査をやる、ということを発表した際に、東京新聞の記者が山下教授に聞いたら、「健康被害はないのだから、本当はやる必要がないのだが、住民の不安に応えるため」と言った。
健康診断をやる場合、最初から「全員異常がでない」ということなら健康診断などやる必要はない。今、福島では「ない」と想定した上で、健康診断をやっている。

最初、浪江地区とか大熊地区とかの強制避難地域の住民には、60ページの分厚いものが渡されて、3月11日以降の、行動記録、食事記録を全部書けと言う話だった。
そんな周辺の人たちは11日から14日くらいほとんど何の情報もなく、食事のことなど覚えていない。
私たちが東京で水素爆発の状況をテレビで見ていた時に、水素爆発を知らなかったという人があの地域に多数いる。
ほとんど噂がネットで伝わったという状態で、電話も電気も使えない状態だった。

3月12日の沢山の放射能が降り注いでいる状態で、背中に赤ちゃんを負ぶって屋外で待っていた、というお母さんが何人もいて悔やんでいる。
東電や国を責めるのではなく、自分を責めている。自分がうかつで情報をつかめなかったために、この子をこんなにしてしまった、と思っている。
お母さんの責任ではなく、国や東電が悪いのだが、実際にはそういう人たちが多い。
避難所にいれば、食事の状態なども分かるのだが、日常生活の延長は特別なことがないから覚えていないし、書けない。
回収率は悪かったのだが、行政が書けというのでかなりの人が書いた。その結果、勝手に線量が1人1人出され、「このくらいの線量しか浴びていないので一生健康については問題ない」と書かれたものが返ってきている状態。こんなものが信用できるわけはない。

  全ての問題は被曝の問題だ

結局、全ての問題は被曝に対してどう補償されるのかという問題であり、現地の人達も私たちも被曝手帳を早く作れと言ってきたが、作らないし、被曝者認定はしていない。
実は被曝者という言葉は使わない方がいい、という意見もある。被曝者と言うと証明しなければならない。どのくらいの線量を浴びたという線引きがされてしまう。
それは被害者を限定することになる。実際には被曝量はわからない人が多い。被曝者というより被害者というほうが正しい、と思う。そして、最低限、一生にわたる補償をしてくれないと困る。

国は補償を少なくするためには被曝者を最小限にしようとする。
結局チェルノブイリでも、国際的には被害を最小限にして子どもの甲状腺癌だけが被害であるように言ってきた。
しかし、それ以外に大人にも子どもにも各種の癌が増えているし、免疫力の低下や循環器の異常などさまざまな被害が出ている。
しかし、因果関係が証明されないということで、原発の被害ということになっていない。
甲状腺癌については隠しきれなかったということだが、日本では甲状腺癌さえも隠そうとしている。

補償の問題になると因果関係の立証ということになるが、放射能が原因ということを証明することはほとんどできない。
どれが原因か明らかにする力は今の医学にはない。放射能特有の症状というのはないので、ある地域で年間1人しか甲状腺癌が出なかったのに、10年後に10人に出たとしたら、影響があったと認めなければならない。
だが、1人1人放射線の影響があった、なかったと見分けることは医学の力ではできない。そうすると、全ての子どもに放射線の影響はないとして切り捨てるか、全ての子どもに影響があり補償の対象にするか、どっちかしかない。
加害者側がそうじゃないと証明できないかぎり、全ての人に補償すべきである、というのが森永ヒ素ミルク中毒事件、水俣病でやられてきたもの。
これが福島では非常にしにくい。ひとつは地域が限定できない、そして被害者が非常に多いことが要因である。

  マスコミの状況と避難問題

今、渡利地区が問題になっている。しかし、こうした現地の情報が全国に伝わらない。
東京新聞、共同通信くらいは現地に入って取材しているが、ほかのところは現地取材をしないで記者クラブ情報だけ。
福島民報は県の御用新聞みたいになっているので「福島は大丈夫・安全」「全ての検査をしたが何の被害も出ていない」という報道しかしない新聞になっている。
その受け売りをしている東京の新聞を読んでも、福島の状態はわからない。

渡利地区は福島の中心部に近い地域、阿武隈川をはさんだ向かい側が官庁街という立地。
渡利地区を汚染地区にすると、福島市全域を避難地区にせざるを得ない。
福島市全体を避難地区に指定すると、20万人規模の人達が補償の対象になる。渡利地区は線量を測ってみると4マイクロシーベルトという東京から見れば100倍くらいの線量があったりする。
実際に2月に相談を受けたおじいちゃんは「家の中であちこち線量を測ったら20マイクロシーベルトもある場所があった」という、恐ろしい地獄のようなところで暮らしている。
福島が避難地区と認められないと、それより少し低い郡山などは到底認められない。
渡利地区は橋頭堡のところであり、渡利地区を認めさせることができれば、もう少し避難地区を広げられる。
そのへんのところで闘いが止まっている、というのが今の状態である。

実際に水俣病の闘いのことなど考えれば、今度の事故で東電という会社の入口は座り込まれて、機能停止になっていても当たり前だと思うが、敵が国なのか東電なのか見えにくい状態になっている。
私は、もはや国が相手ではなくて核保有国・国連レベルの問題であると思う。基本的には、アメリカの問題だと思う。
情報もアメリカが流していい、という情報は流せるが、流していけない、という情報は流せない状況であって、山下俊一教授をはじめ専門家といわれる人達もアメリカの傀儡だと思う。
ABCCの流れを酌み放射能の被害をできるだけ低くするように、世界規模で押さえつけている。福島原発事故は非常に大きな事故であって、世界的に見て大変なことが日本で起こっているのだ。

  集団訴訟を起こし、福島を切り捨てない

これから何をするかだが、非常に大きな問題が沢山あって、とにかく早いうちに集団訴訟を起こすことが必要だと思う。
今は10何人の訴訟が行われているが、もっと大きな訴訟にする。東京など被災地だと思っている人達を集めて大きな訴訟にしていかないと、風化し新聞社も関心を失っている状態になっていく。
とくに今年になってから、避難という言葉もあまり使われなくなり、かわりに保養をすすめようということになってきた。

これまで、子どもたちを1週間、10日と疎開させるということをやっていたが、その程度のことでは間に合わない。
子どもたちの体の中からセシウムを出すために、北海道と福島の学校が提携し、1年生が北海道の学校に通って1ヵ月したら帰ってきて、その後2年生が行くとか、長期の月単位の保養をしていこうという話になっている。
それは、国が何もしない、補償の見通しもない、生活を立て直してくれるという方向性も見えないなかで、悲しい選択だと思う。

私たちは、沖縄を切り捨て、広島を切り捨て、長崎を切り捨ててきた。
そして何もなかったかのように復興してきた。
福島についても、福島を切り捨てた上で復興しようという姿勢が国に見えている。
その中で切り捨てられまいとして、福島があがいているというのが今の状態だと思う。

福島の問題は福島だけの問題ではない。
私たちは、沖縄、広島、長崎、第五福竜丸を切り捨ててきたという歴史を今こそ断ち切らなくてはならない。
関連記事

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (175)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

05 | 2012/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

Template by たけやん