控訴方針決定に対する声明:新政研
2012-05-11
控訴方針決定に対する声明文
声 明
4月26日に東京地裁で決定した「無罪」判決を不服として、昨日、3人の指定弁護士が控訴した。
いたずらに裁判を長引かせ、我が新政研の会長であり、この国の最も重要な政治リーダーである小沢一郎衆議院議員の政治活動を妨害しようとするものであり、到底許されるものではない。強く抗議するものである。
検察審査会の起訴議決は、法廷での事実確認を要請するものだ。判決は無罪である。
裁判で無罪判決が出た以上、「推定無罪」の原則はより強く尊重されなければならない。
従って、小沢一郎衆議院議員は現在、その政治活動に何の制約も受けないことをまず確認しておく。
そもそも、検察が2年間に亘る執拗な捜査にもかかわらず、証拠が無く起訴できなかった事件であり、この裁判の元となった東京第五検察審査会の起訴議決自体が、検察当局の捜査報告書の捏造という犯罪によって提起されたものである。
既にインターネット上で広く国民が知るところとなった「捏造捜査報告書」を、指定弁護士も当初から入手していたのであり、指定弁護士は、検察が何故このような重大な組織的犯罪を犯さなければならなかったのかを、まず検証すべきであった。
また、指定弁護士に対して控訴権が付与されているかについては、明文規定がない。明文規定の無い手続きによって活動の自由を奪い、刑罰を科すことは、基本的人権を保障する日本国憲法第31条に違反する。
弁護士法第一条は、「弁護士は基本的人権を擁護し、社会的正義を実現することを使命とする」と高らかに宣言している。
指定弁護士であっても弁護士としてこの崇高な使命を負っていることに変わりはない。ましてや、政治主導で「国民の生活が第一。」の政治を実現しようとする主権者の代表、とりわけそのリーダーである小沢会長の活動を更に妨害する権利が無いことは明らかであり、その責任は重い。
小沢裁判とは一体何であったのか。
政権交代を目前にして代表の座から小沢会長を引き摺り下ろした西松建設事件は、結局、ダミー団体ではないと検察側証人が法廷で証言し、「訴因変更」という姑息な手段で検察は裁判から撤退。
事実上裁判自体が無くなった。
そして、陸山会事件は担当した検事が法廷で「検察の妄想」による壮大な虚構と証言したように、捜査当局による「でっち上げ」である。
検察のでっち上げだから、証拠が無く、起訴出来なかった。
だから検察は捜査報告書の捏造という大犯罪を犯してまで、検察審査会を悪用した。
また秘書裁判において、裁判所は、証拠が無いにもかかわらず、推認に次ぐ推認という到底許されない方法で石川知裕衆議院議員議員らに有罪を言い渡し、裁判が続いている。
2009年3月3日からこの3年と2ヶ月余り、前述した検察と司法の暴走に、マスコミはメディアスクラムを組んで協力し、それを、改革を阻む政治勢力が利用してきたことも決して忘れてはならない。
これは、明らかに政治弾圧である。
世界の歴史を振り返れば、真の改革者は常に不当な弾圧を受けてきた。インド独立の父であるガンジーは、独立運動を理由として度々投獄されたが、決して屈することなく粘り強い運動を続け、賢明なる民衆を率いて、祖国を宗主国からの独立へと導いた。
我々新政研は、不当な政治弾圧に決して屈することなく、これからも、小沢一郎会長の下に一致結束し、民主党政権が政権交代で国民に約束した「国民の生活が第一。」の政治を実現するために、全力を尽くしていくことをここに宣言する。
平成24年5月10日
新しい政策研究会 (新政研)一同
声 明
4月26日に東京地裁で決定した「無罪」判決を不服として、昨日、3人の指定弁護士が控訴した。
いたずらに裁判を長引かせ、我が新政研の会長であり、この国の最も重要な政治リーダーである小沢一郎衆議院議員の政治活動を妨害しようとするものであり、到底許されるものではない。強く抗議するものである。
検察審査会の起訴議決は、法廷での事実確認を要請するものだ。判決は無罪である。
裁判で無罪判決が出た以上、「推定無罪」の原則はより強く尊重されなければならない。
従って、小沢一郎衆議院議員は現在、その政治活動に何の制約も受けないことをまず確認しておく。
そもそも、検察が2年間に亘る執拗な捜査にもかかわらず、証拠が無く起訴できなかった事件であり、この裁判の元となった東京第五検察審査会の起訴議決自体が、検察当局の捜査報告書の捏造という犯罪によって提起されたものである。
既にインターネット上で広く国民が知るところとなった「捏造捜査報告書」を、指定弁護士も当初から入手していたのであり、指定弁護士は、検察が何故このような重大な組織的犯罪を犯さなければならなかったのかを、まず検証すべきであった。
また、指定弁護士に対して控訴権が付与されているかについては、明文規定がない。明文規定の無い手続きによって活動の自由を奪い、刑罰を科すことは、基本的人権を保障する日本国憲法第31条に違反する。
弁護士法第一条は、「弁護士は基本的人権を擁護し、社会的正義を実現することを使命とする」と高らかに宣言している。
指定弁護士であっても弁護士としてこの崇高な使命を負っていることに変わりはない。ましてや、政治主導で「国民の生活が第一。」の政治を実現しようとする主権者の代表、とりわけそのリーダーである小沢会長の活動を更に妨害する権利が無いことは明らかであり、その責任は重い。
小沢裁判とは一体何であったのか。
政権交代を目前にして代表の座から小沢会長を引き摺り下ろした西松建設事件は、結局、ダミー団体ではないと検察側証人が法廷で証言し、「訴因変更」という姑息な手段で検察は裁判から撤退。
事実上裁判自体が無くなった。
そして、陸山会事件は担当した検事が法廷で「検察の妄想」による壮大な虚構と証言したように、捜査当局による「でっち上げ」である。
検察のでっち上げだから、証拠が無く、起訴出来なかった。
だから検察は捜査報告書の捏造という大犯罪を犯してまで、検察審査会を悪用した。
また秘書裁判において、裁判所は、証拠が無いにもかかわらず、推認に次ぐ推認という到底許されない方法で石川知裕衆議院議員議員らに有罪を言い渡し、裁判が続いている。
2009年3月3日からこの3年と2ヶ月余り、前述した検察と司法の暴走に、マスコミはメディアスクラムを組んで協力し、それを、改革を阻む政治勢力が利用してきたことも決して忘れてはならない。
これは、明らかに政治弾圧である。
世界の歴史を振り返れば、真の改革者は常に不当な弾圧を受けてきた。インド独立の父であるガンジーは、独立運動を理由として度々投獄されたが、決して屈することなく粘り強い運動を続け、賢明なる民衆を率いて、祖国を宗主国からの独立へと導いた。
我々新政研は、不当な政治弾圧に決して屈することなく、これからも、小沢一郎会長の下に一致結束し、民主党政権が政権交代で国民に約束した「国民の生活が第一。」の政治を実現するために、全力を尽くしていくことをここに宣言する。
平成24年5月10日
新しい政策研究会 (新政研)一同
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破壊する消費増税、米国債100兆円を再生復興に
2012-05-11
マクロ政策失敗が停滞の元凶 5/4講演 田村秀男
■「リーマン危機 そして東日本大震災」
消費税や日本の景気に関わるお話をします。
日本の最大の問題は、2008年のリーマン・ショック後に打つべき手を打たなかったことです。
アメリカは前例がないような金融緩和に踏み切り、ヨーロッパもそれに続き、中国もそれに便乗してどんどんお札を刷るんですが、これは金融経済理論では極めて正しいことです。
それを日本だけがやらない。その結果、円高でデフレが加速する。
それに加えて東日本大震災の甚大な被害を受けて現在に至る。一連の円高、デフレ不況、福島原発事故後の対応を含め、政策の間違いが日本の大停滞をもたらしています。
正しい政策に戻れば日本の再生は十分あり得るというのが私の見解です。
日本経済は1995年1月の阪神大震災後にかなり沈み、特に輸出が足を引っ張りました。
ところが翌年、政府支出、公共支出や家計支出が増えました。当時の村山富市首相が、復興予算を組んで経済が回復したのです。
だが、97年に橋本龍太郎内閣の時に景気は大丈夫だからと、消費税を3%から5%に上げた。このときに社会保険料引き上げや所得減税の打ち切り等々、年間約9兆円の家計負担増に踏み切りました。
緊縮財政です。そこから景気が落ち込み、98年から慢性デフレにはまっていく。
この教訓を生かさなければいけないのですが、経済政策、特に増税、緊縮のタイミングを誤るとどうなるか、われわれは味わっているはずです。
◆大増税が景気冷やす
さて、現在は東日本大震災が起き、GDP(国内総生産)は惨憺(さんたん)たるものです。輸出がマイナスで景気の足を引っ張り、家計の消費支出も落ち込んでいる。
それなら政府が大きな役割を果たすのが常識ですが、そんな経済政策すらできないのが野田政権です。
私が怒り心頭に発しているのは、消費増税で景気がよくなると野田首相以下、大多数のメディアも平気で言うことです。
しかし、それはデマです。大型増税すれば景気を冷やすのは常識です。以下の私の話は、野田首相の論法が完全に間違っていることを証明することです。
98年からデフレが続いています。デフレは物価が下がることですが、物価はそれほど下がっていません。97年から14年間で3~4%くらいです。
問題は、物価下落以上に勤労者所得が14年間で15%以上、下がっていることです。
われわれが使えるお金がどんどん減る。
これに対し、GDP統計で家計消費を追っていくと物価下落幅と一致し、3~4%くらいしか落ちていません。特に勤労者の家庭は子供の学校の費用もかかり消費は落とせない。
所得が15%下がっても消費は3~4%しか落ちない。何を削るかといえば、貯蓄をやめるしかない。
最近の日銀の金融中央委員会の調査によると、預金を含め金融資産が全くない階層が10人のうち3人です。
家庭の消費は簡単に落とせないから、その消費を狙って消費税増税といっているわけです。
貯蓄ゼロの家庭が増えれば、子供をつくって日本の将来を担う若い子が、どんどん疲弊していく。
消費増税ではなく、可処分所得を上げることを最優先しなければいけないのに、国会では全く忘れた論議をしている。
消費税率を上げても、家計消費が落ちれば税収も減るわけです。
実際の経済活動の全体規模を表す名目GDPと、税収を中心とする政府の歳入を国際比較すると、名目GDPが上がれば税収も回復するし、下降すれば税収も減る。
日本は97年以降、ずっと減りっぱなしです。
ドイツはGDPも税収も連動して上がり、アメリカも同様です。
◆円高とデフレ脱却へ
デフレ不況は経済規模がダウンサイズするわけで、これでは税収を確保できるはずがない。
名目成長率を高める方が国民にとって弊害もなく、財政がよくなる、社会保障財源の確保が容易になるのです。
成長路線に回帰するしかないのです。
日本の経済規模は20年間増えていません。むしろマイナスです。そんな国に将来があると考えること自体がおかしいですね。
原因ははっきりしている。円高とデフレです。
金融資産や現金、預金、安定した金融資産である国債を寝かせておけばいいのだから、経済を良くする投資にお金が回らない。
しかも、外国の投資家は日本の円資産を持っていればもうかるから、その結果が円高で、さらに円高が日本企業の収益力を落とす。
円高の原因は、政策の失敗です。
円高に連動するように名目GDPが下がっていく。税収も増えない、社会保障財源も確保できない、家計の所得も下がる、生産が減る、円高で企業は国内に見切りをつける。
非常に由々しき問題です。
円高対策として、政府は財務省の100兆円程度の外貨準備、特別会計で企業の海外進出、M&A(企業の合併・買収)融資をやっている。
ところが、M&Aを盛んにやっている企業は政府から融資を受けなくてもできます。
もう一つは介入です。アメリカもヨーロッパも、日本が円売り介入すれば反発し、協調してくれない。マーケットはそれを知っているから、日本が単独で介入しても元に戻る。結局、無駄金に終わっている。
■われわれの貯蓄を再生に使え
日本は増税しないとギリシャ化するという。確かに、政府債務の総額はGDPの2倍、世界トップは間違いない。しかし、その日本国債の利回りが世界最低水準ということをどうやって説明するのか。
ギリシャになるとしたら、税収が減り続け、社会保障の政府支出が年々1兆円ずつ増え、消費増税をして税収が増えないという悪循環にはまっていくという道筋です。
デフレ期は実質GDPもマイナスになる。しかも名目は実質値以上に落ち込みますから、購買力がなくなり、財政が悪化するという悪循環にはまる。
デフレから脱出するには、少なくともインフレ率をプラスにする政策を最優先にすべきです。
財政当局の政策の間違いと同等に恐ろしいのは、日銀による金融政策です。
各国の通貨の値打ちは、通貨発行量を比較すれば分かる。
アメリカはリーマン・ショック後3倍くらいドル札を刷って、日本は約1.28倍。ユーロは約1.8倍。
世界で最もお金を刷らない国、日本。円高は当たり前でしょう。
日本経済の恐るべき空白が20年間が続いている。GDPは20年前と変わらない。
その間にドイツは約1.7倍、アメリカは約2.5倍。これがまともな国、普通の国です。
GDPを占める3要素、消費、投資、輸出のうちのどれかを増やしたら経済成長できる。
日本政府は何ができるか。マクロ経済政策そのものです。市場機能を生かして民間主導で規制緩和をする。日銀が金融緩和を続ける。
そのことで円相場も安くなる。日本企業もそこで息をつく。それで国内投資が徐々に増え、日本経済は再生、回復するに決まっているわけです。
マクロ政策を大いに転換するだけで済むのです。
転換の大きな要は日本人が延々と貯めてきた貯蓄、その代表が100兆円の外貨準備です。その源泉は金融機関が持つわれわれの貯蓄です。
貯蓄を使ってアメリカ国債を中心に政府が100兆円持っているから、そのお金をそのまま帳簿上でいいから国内に移しなさい。
日銀はそれを円に換算し政府の口座に振り込めばいい。1円もお札を刷る必要はない。
その基金は日本の再生・復興に使える。そのためのプログラムを書くのが本来の官僚の仕事です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このブログ内のデフレ論を中心に、過剰米国債、円高関係ページのリンク。
・ 労働分配率の強制修正
・ 世界で日本のみデフレ
・ デフレ脱却には賃金上昇が不可欠
・ 民間給与5.5%減、237,000円減
・ 日銀の金融緩和は誰のためか
・ 通貨戦争(4)日本
・ 公務員叩きとデフレ対策
・ 信用創造(3)無政府的な過剰通貨
・ 通貨戦争(13)闘う政治を
・ S&P国債格下げの理由はデフレ増税論
・ デフレ脱却できないままに食料・石油が高騰してくる
・ 始まる価格高騰はコスト転嫁できず倒産と需要減少
・ 100兆円の余力を持ったまま自殺するのか
・ 復興財源には外貨準備を使え
・ 滅亡か、米国債売却による経済復興か
・ 窮乏化する日本
・ デフレを知らないふりする増税論者ども
・ 日本に増税を求める国際金融資本
・ デフレ下で増税を叫ぶ愚者たち:三橋
・ 通貨戦争(37)財務省・日銀の窮乏化政策
・ なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
・ 通貨戦争(40)デフレ、円高、増税政策の日本
・ 60歳の地獄か、年金と再雇用の現実
・ 通貨戦争(42)通貨による搾取システム
・ ゆでガエル!
・ 消費増税でデフレ恐慌を目指すかいらい政権
・ デフレを放置し、黒を白とうそぶく日銀総裁
・ 増税でデフレ恐慌、襲う国際金融資本
・ 民を殺す消費増税
・ 日本の労働は封建主義の農奴農民か
・ デフレ、米国債、輸出価格是正の課題
・ 日銀法の改正
・ 増税ではない、必要なのは超金融緩和と円安だ
・ 逆進課税とデフレ恐慌
・ 窮乏化、3軒に1軒が貯金も無し
・ デフレ恐慌を加速する消費増税
■「リーマン危機 そして東日本大震災」
消費税や日本の景気に関わるお話をします。
日本の最大の問題は、2008年のリーマン・ショック後に打つべき手を打たなかったことです。
アメリカは前例がないような金融緩和に踏み切り、ヨーロッパもそれに続き、中国もそれに便乗してどんどんお札を刷るんですが、これは金融経済理論では極めて正しいことです。
それを日本だけがやらない。その結果、円高でデフレが加速する。
それに加えて東日本大震災の甚大な被害を受けて現在に至る。一連の円高、デフレ不況、福島原発事故後の対応を含め、政策の間違いが日本の大停滞をもたらしています。
正しい政策に戻れば日本の再生は十分あり得るというのが私の見解です。
日本経済は1995年1月の阪神大震災後にかなり沈み、特に輸出が足を引っ張りました。
ところが翌年、政府支出、公共支出や家計支出が増えました。当時の村山富市首相が、復興予算を組んで経済が回復したのです。
だが、97年に橋本龍太郎内閣の時に景気は大丈夫だからと、消費税を3%から5%に上げた。このときに社会保険料引き上げや所得減税の打ち切り等々、年間約9兆円の家計負担増に踏み切りました。
緊縮財政です。そこから景気が落ち込み、98年から慢性デフレにはまっていく。
この教訓を生かさなければいけないのですが、経済政策、特に増税、緊縮のタイミングを誤るとどうなるか、われわれは味わっているはずです。
◆大増税が景気冷やす
さて、現在は東日本大震災が起き、GDP(国内総生産)は惨憺(さんたん)たるものです。輸出がマイナスで景気の足を引っ張り、家計の消費支出も落ち込んでいる。
それなら政府が大きな役割を果たすのが常識ですが、そんな経済政策すらできないのが野田政権です。
私が怒り心頭に発しているのは、消費増税で景気がよくなると野田首相以下、大多数のメディアも平気で言うことです。
しかし、それはデマです。大型増税すれば景気を冷やすのは常識です。以下の私の話は、野田首相の論法が完全に間違っていることを証明することです。
98年からデフレが続いています。デフレは物価が下がることですが、物価はそれほど下がっていません。97年から14年間で3~4%くらいです。
問題は、物価下落以上に勤労者所得が14年間で15%以上、下がっていることです。
われわれが使えるお金がどんどん減る。
これに対し、GDP統計で家計消費を追っていくと物価下落幅と一致し、3~4%くらいしか落ちていません。特に勤労者の家庭は子供の学校の費用もかかり消費は落とせない。
所得が15%下がっても消費は3~4%しか落ちない。何を削るかといえば、貯蓄をやめるしかない。
最近の日銀の金融中央委員会の調査によると、預金を含め金融資産が全くない階層が10人のうち3人です。
家庭の消費は簡単に落とせないから、その消費を狙って消費税増税といっているわけです。
貯蓄ゼロの家庭が増えれば、子供をつくって日本の将来を担う若い子が、どんどん疲弊していく。
消費増税ではなく、可処分所得を上げることを最優先しなければいけないのに、国会では全く忘れた論議をしている。
消費税率を上げても、家計消費が落ちれば税収も減るわけです。
実際の経済活動の全体規模を表す名目GDPと、税収を中心とする政府の歳入を国際比較すると、名目GDPが上がれば税収も回復するし、下降すれば税収も減る。
日本は97年以降、ずっと減りっぱなしです。
ドイツはGDPも税収も連動して上がり、アメリカも同様です。
◆円高とデフレ脱却へ
デフレ不況は経済規模がダウンサイズするわけで、これでは税収を確保できるはずがない。
名目成長率を高める方が国民にとって弊害もなく、財政がよくなる、社会保障財源の確保が容易になるのです。
成長路線に回帰するしかないのです。
日本の経済規模は20年間増えていません。むしろマイナスです。そんな国に将来があると考えること自体がおかしいですね。
原因ははっきりしている。円高とデフレです。
金融資産や現金、預金、安定した金融資産である国債を寝かせておけばいいのだから、経済を良くする投資にお金が回らない。
しかも、外国の投資家は日本の円資産を持っていればもうかるから、その結果が円高で、さらに円高が日本企業の収益力を落とす。
円高の原因は、政策の失敗です。
円高に連動するように名目GDPが下がっていく。税収も増えない、社会保障財源も確保できない、家計の所得も下がる、生産が減る、円高で企業は国内に見切りをつける。
非常に由々しき問題です。
円高対策として、政府は財務省の100兆円程度の外貨準備、特別会計で企業の海外進出、M&A(企業の合併・買収)融資をやっている。
ところが、M&Aを盛んにやっている企業は政府から融資を受けなくてもできます。
もう一つは介入です。アメリカもヨーロッパも、日本が円売り介入すれば反発し、協調してくれない。マーケットはそれを知っているから、日本が単独で介入しても元に戻る。結局、無駄金に終わっている。
■われわれの貯蓄を再生に使え
日本は増税しないとギリシャ化するという。確かに、政府債務の総額はGDPの2倍、世界トップは間違いない。しかし、その日本国債の利回りが世界最低水準ということをどうやって説明するのか。
ギリシャになるとしたら、税収が減り続け、社会保障の政府支出が年々1兆円ずつ増え、消費増税をして税収が増えないという悪循環にはまっていくという道筋です。
デフレ期は実質GDPもマイナスになる。しかも名目は実質値以上に落ち込みますから、購買力がなくなり、財政が悪化するという悪循環にはまる。
デフレから脱出するには、少なくともインフレ率をプラスにする政策を最優先にすべきです。
財政当局の政策の間違いと同等に恐ろしいのは、日銀による金融政策です。
各国の通貨の値打ちは、通貨発行量を比較すれば分かる。
アメリカはリーマン・ショック後3倍くらいドル札を刷って、日本は約1.28倍。ユーロは約1.8倍。
世界で最もお金を刷らない国、日本。円高は当たり前でしょう。
日本経済の恐るべき空白が20年間が続いている。GDPは20年前と変わらない。
その間にドイツは約1.7倍、アメリカは約2.5倍。これがまともな国、普通の国です。
GDPを占める3要素、消費、投資、輸出のうちのどれかを増やしたら経済成長できる。
日本政府は何ができるか。マクロ経済政策そのものです。市場機能を生かして民間主導で規制緩和をする。日銀が金融緩和を続ける。
そのことで円相場も安くなる。日本企業もそこで息をつく。それで国内投資が徐々に増え、日本経済は再生、回復するに決まっているわけです。
マクロ政策を大いに転換するだけで済むのです。
転換の大きな要は日本人が延々と貯めてきた貯蓄、その代表が100兆円の外貨準備です。その源泉は金融機関が持つわれわれの貯蓄です。
貯蓄を使ってアメリカ国債を中心に政府が100兆円持っているから、そのお金をそのまま帳簿上でいいから国内に移しなさい。
日銀はそれを円に換算し政府の口座に振り込めばいい。1円もお札を刷る必要はない。
その基金は日本の再生・復興に使える。そのためのプログラムを書くのが本来の官僚の仕事です。
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このブログ内のデフレ論を中心に、過剰米国債、円高関係ページのリンク。
・ 労働分配率の強制修正
・ 世界で日本のみデフレ
・ デフレ脱却には賃金上昇が不可欠
・ 民間給与5.5%減、237,000円減
・ 日銀の金融緩和は誰のためか
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・ デフレ脱却できないままに食料・石油が高騰してくる
・ 始まる価格高騰はコスト転嫁できず倒産と需要減少
・ 100兆円の余力を持ったまま自殺するのか
・ 復興財源には外貨準備を使え
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「ドイツのユーロ」と加盟国の国民経済
2012-05-11
国家の三要素(国土、国民、主権)などというが、これはおそらく日本の文部省あたりのデタラメ話しである。
いかなる国家も領土に住む領民に強制力(暴力装置)を行使できてのみ存在できる。
つまり国家はお金がなければ経営できない。 いわゆる「国民国家」も同様である。
近代資本主義は、無記名有価証券たる通貨、10円の預かり金を1000円にして貸し出す信用創造、それに利ざやである金利、この三点セットで成り立ち、循環恐慌を引きずりながら拡大成長している。
循環恐慌がデフレであり、拡大成長とは数%の物価上昇を伴う信用、需要、供給の拡大である。
ユーロは国家から通貨発行権と金融政策を奪ってしまった。
従って、循環恐慌期(バブル崩壊)加盟国家が取れる経済政策は、財政削減のみという財政悪化と不況のスパイラルである。
通常の国家なら自国通貨の発行量調整と自国通貨建て国債によってソフトランディングなり、税制調整、所得再配分なりの需要拡大が可能であるが、ユーロ加盟国はこの手足がもがれている。
そして、ユーロの存続にとって致命的なのは第二の大国フランスでさえ、条件は同じなことである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ドイツのユーロ」と二つの選挙 5/10 三橋貴明 Klugから
2012年5月6日。欧州で二つの選挙の投開票が行われ、その驚くべき結果に、世界に衝撃が走った。
『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「仏大統領選:社会党オランド氏が勝利、現職サルコジ氏が敗北」
6日投開票のフランス大統領選挙は、社会党のフランソワ・オランド前第1書記(57)が現職のサルコジ大統領に勝利した。17年ぶりに社会党大統領が誕生する。
世論調査会社4社の推計によると、オランド氏の得票率は約52%、サルコジ氏は約48%。フランスでは5週間後に国民議会(下院)選挙が予定されている。
フランス経済はほとんど成長が見られず、失業保険申請件数は12年ぶりの高水準にある。政府債務の増加でフランスもユーロ圏の金融危機の影響に対して脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。
ここ2年にわたるユーロ圏の金融危機で政治指導者が交代するのはサルコジ氏で9人目。現職の仏大統領が再選を逃したのは約30年ぶり。(後略)』
『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「ギリシャ総選挙:NDとPASOKの連立不透明-最新予測」
6日行われたギリシャ総選挙で、救済合意に反対する政党が躍進、2大与党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が再び大連立を組み、救済資金の確保に必要な財政緊縮を実行できるかどうかが不透明な情勢となった
ギリシャ国営NETテレビが伝えた開票途中での予想によると、得票率はNDが18.9%、PASOKは13.4%。一方、同国の救済プログラムに反対する陣営では、急進左派連合が16.6%、独立ギリシャ人が10.5%。この予測によれば、NDとPASOKの合計議席数は過半数の151議席に1議席達しない。(後略)』
最新報道によると、ギリシャの連立与党であるNDとPASOKは、「第一党に50議席が上乗せされる」という、同国独特の選挙制度を加味しても、過半数を確保することは不可能のようである。
本稿執筆時点では、第一党になったNDに50議席を上乗せし、PASOKの議席と合わせても、ギリシャ議会の過半数である151に2議席足りない状況になっている。
何しろ、NDとPASOKの双方を合わせると、09年の総選挙の際には77.4%の得票を得たのだ。それが今回の総選挙では、わずかに32.1%だ。ある意味で、気持ちがいいほどの負けっぷりである。
フランスの現職であるサルコジ大統領が、社会党のオランド候補に敗れた。ギリシャの巨大連立与党であったNDとPASOKが惨敗し、過半数の確保が不可能になった。
サルコジ大統領とギリシャ連立与党に共通しているのは、もちろん「ドイツが主導する緊縮財政路線」を支持していたことである。
逆に、勝利したオランド候補及びギリシャの野党各党は、全て「反・緊縮財政」を主張していた。
すなわち、フランスとギリシャの国民は、現在のドイツ主導の緊縮財政路線に、明確に「NO!」を突きつけたのである。
【図153-1 ユーロ主要国の失業率推移(単位:%)】

出典:ユーロスタット
図153-1の通り、ユーロ主要国の雇用状況は、ドイツを例外として、他国は軒並み悪化している。ギリシャやスペインに至っては、何と20%を上回っているのだ。フランスにしても、失業率は10%で推移している。
ドイツの経済の好調をもたらしているのは、ユーロ安に牽引された「輸出増」である。すなわち、ドイツは輸出(GDP上は純輸出)という「外国の需要拡大」により、経済を成長させ、失業率を引き下げていっているわけだ。
さらに、このユーロ安をもたらしているのは、PIIGS諸国などの財政危機なのである。
すでに本連載において何度も取り上げたが、ドイツは2005年前後に失業率が10%を超え、何と当時のスペインをも上回っていた。理由は、01年にITバブルが崩壊し、企業が負債返済を優先し、投資を縮小するバランスシート不況に陥っていたためだ。
苦境に陥ったドイツを「助けるため」に、フランクフルトに本拠を持つECB(欧州中央銀行)は政策金利を引き下げ始め、これがドイツ以外のユーロ加盟国にバブルをもたらした。ドイツは南欧などのバブル諸国向けの輸出を拡大し、失業率をようやく引き下げることが出来るようになったわけである。
同時に、当時のドイツではシュレーダー政権による「改革」が行われ、非正規労働に関する規制緩和などが実施された。結果的に、各種産業において企業の人件費負担が緩和され、投資に回せるお金が増えたのである。
そもそも、最低賃金引き下げや非正規労働の拡大は、純利益を増やすことで投資を拡大しようとする、サプライサイド(供給能力)政策になる。すなわち、インフレ対策だ。
純利益を拡大すれば、企業の投資は増える「はず」である。デフレ期の日本では、純利益が増えた企業は内部留保(現預金)を増やしており、米韓などの諸国では配当金に回ってしまっているが、元々の法人減税や最低賃金制度改革の目的は、国民経済の供給能力を高めるインフレ対策なのだ。
いずれにせよ、ドイツはシュレーダー政権期に「供給能力を引き上げる政策」を実施し、現在はユーロ安による「外需拡大」に巧く対応し、国民経済を成長させているわけだ。
例えば、現在のユーロ危機が(*南欧諸国でなく)「ドイツ国内の不動産バブル崩壊」をトリガーにしていた場合、ドイツの「改革」は裏目に出た可能性が高い。
すなわち、不動産バブル崩壊で需要が急収縮し、デフレギャップが拡大しているところに、さらに供給能力の強化がなされるという話になり、現在の日本と同じ状況に陥ったはずなのだ。
ところが、ドイツは国内で不動産バブルが発生せず、かつ各ユーロ加盟国のバブル崩壊で、ユーロ危機が深刻化した結果を受けたユーロ安を「外需拡大」のために活用しているわけだ。
何というか、現在のユーロが、
「ドイツの、ドイツによる、ドイツのためのユーロ」
という状況に陥っているのがよく分かる。
最低賃金制度改革に代表される各種の構造改革とは「インフレ対策」であり、現在のスペインやギリシャ(恐らくフランスも)が実施すると、デフレギャップが拡大し、失業率がさらに上昇する。
さらに、ギリシャやスペインなど、高品質な製品を生産する企業を持たない国が生産性を高めたところで、ドイツと同じ真似はできない。ドイツはあくまで「元々、競争力が高い製造業大国」だったからこそ、現在のユーロ安による外需拡大に対応できているわけだ。
とはいえ、ドイツの競争力強化は、国民の可処分所得を引き下げることにより達成された。すなわち、国民の消費という最も重要な内需が、今後、ドイツ国内で順調に増えていくのか、疑問を持たざるを得ないわけだ。
また、スペインやギリシャがドイツと同じ真似をすると、デフレ深刻化で財政が今以上に悪化する。そうなると、両国の財政問題が悪化し、またまたユーロ安ということでドイツは潤う。
このドイツが「自国の方針」に基づき、ユーロ加盟国に緊縮財政や財政均衡の憲法化を要求しているわけであるから、他のユーロ諸国の国民としてはたまったものではないわけだ。
特に、スペインやギリシャのように失業率が20%を超え、アメリカ大恐慌期に近づいているような国々までもが、「他国(ドイツ)」の望む緊縮財政路線を歩まされるわけである。
各国の国民が怒り、既存の政党や政治家に「NO!」を突きつけるのは、むしろ当たり前に思える。
何しろ、緊縮財政とは増税や政府支出削減(公共事業削減、公務員経費縮小、年金削減など)を意味しており、雇用環境には確実に悪影響を与える。
他国(ドイツ)の望む緊縮財政を自国にまで強要されている状況下で、欧州諸国の政治家は選挙の洗礼を受けねばならなくなってしまった。
その先陣を切ることになったフランス大統領選挙、及びギリシャ総選挙では、両国民が共に緊縮財政路線について、民意をもって否定した。
ギリシャの場合、連立与党以外の政党は全てが「反・緊縮財政」である。緊縮財政に反対したからこそ、一気に議席を伸ばしてきた各党が、選挙後にNDの既存路線に賛成することはできない。
今回の選挙で第一党となったND(新民主主義党)のサマラス党首は、ギリシャのユーロ圏残留を目指す連立政府を樹立する意向を表明はしている。とはいえ、ユーロ残留・緊縮財政を訴えていたのは、他には大敗北を喫したPASOKのみだ。
そして、NDとPASOKが連立し、NDに50議席をプラスしても、ギリシャ議会の過半数を占めることができないとなると、緊縮予算がことごとく否決されるだけの話になる。
すなわち、IMFやEUのギリシャ支援の前提が崩れてしまうわけだ。
無論、EUやIMFの支援が止まれば、ギリシャは最終的なデフォルト(EU関係者ですら認めざるを得ない完全なるデフォルト)に追い込まれることになる。同時に、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてくることになるだろう。
とはいえ、反・緊縮財政路線を叫び、勝利した野党陣営とはいえども、別にユーロ離脱の構想や経済成長への道筋が立っているわけではない。中途半端なままユーロに残り、緊縮財政を拒否すると、長期金利が再び急騰し、政権はすぐに行き詰ることになる。
これが日本の場合、超低迷している金利を利用し、「国債格下げだ!」などと叫ぶ外野(格付け機関など)をよそに、財政出動と金融緩和という「正しいデフレ対策」のパッケージにより成長路線に戻れる。
それに対し、ギリシャは「デフォルト」及び「ユーロ離脱」という二つの関門を潜り抜けなければ、成長路線に戻る見込みは立たない。しかも、この二つの関門を抜ける際に、国民経済がどれほどの傷を負うのか、想像もつかない状況なのだ。
さて、実は筆者はフランスのオランド氏の勝利は予想していた。何しろ、失業率10%の国で現職の大統領が勝つのは極めて困難である。
ユーロ二大国の一つであるフランスの国民が緊縮財政路線を拒否したことで、今後のユーロはドイツの対応、あるいはフランスのドイツへの対応が注目点になる。オランド新大統領は、ドイツに対し、
「緊縮財政路線のみではなく、『成長』のことを考えるべきだ。さもなければ、財政が余計に悪化することになる」
と、マクロ経済的にまことに適切な要求をすることになるだろう。それに対し、メルケル政権はいかに応えるのか。
また、オランド新大統領は、元々、現在のグローバル経済を支配しているのも同然な「金融産業」について快く思っていない。オランド新大統領は、選挙演説中に何度も金融産業を批判するスピーチをしている。(オランド氏は選挙期間中に、金融産業について「真の敵」と呼んでいた)
オランド新大統領が、国際的な金融産業あるいは「グローバリズム」により経済が支配され、国民経済(雇用と所得)がないがしろにされがちな現状を問題視しているのは間違いない。
また、オランド新大統領は金融機関や原子力、防衛、プライベートエクイティファンドなどについて「改革」の対象に挙げているわけであるから、「グローバリズム」信奉者は戦々恐々としていることだろう。
ちなみに、筆者が何度も引用し、
「自由貿易(製品の輸出入のみならず、投資や金融サービスの自由化を含めた自由貿易)は民主主義を壊す」
と主張しているエマニュエル・トッド氏は、オランド支持を表明していた。
とはいえ、オランド氏が現在のフランスが置かれている環境において、「グローバル企業や投資家を利するのではなく、国民所得を高める」形の経済成長を実現するのは、極めて困難を伴う。
何しろ、フランス(フランスだけではないが)は金融政策の機能をECBに委譲している。日本やアメリカのように、フランスは「通貨発行、国債発行、財政出動」のパッケージという、正しいデフレ対策を打つことはできない。
また、さすがにユーロの中心国の一つであるフランスが、自国のみに重点を置いた政策を実施することもまた、不可能事に近い。
だが、各国の金融政策の機能がECBに委譲されている不自由な状況下において、「ユーロ圏全体」の成長を目指すなど、果たして可能なのだろうか。
さらに、経済のファンダメンタルや競争力がバラバラなユーロが、一致団結して成長を目指せるような、魔法の如き政策が、果たして存在しているのか。
ドイツのメルケル政権とオランド新大統領との話が決裂すると、ユーロ内は決定的に分裂することになる。すなわち「成長派」と「緊縮派」に分裂するわけだ。
いまさらだが、「成長を目指す」も「緊縮財政を実施する」も、常に正しい政策というわけではない。
デフレの時は緊縮に背を向け、成長を志向し、インフレ期に成長率が十分なときは、緊縮財政を実施するべき。ただ、それだけの話だ。
現在は「環境に応じてソリューション(解決策)は変わる」という当たり前の事実を多くの政治家が失念し、日本はもちろんのこと、アメリカや欧州でも混乱を巻き起こしているわけである。
特に、メルケル政権の緊縮路線は、デフレに片足を突っ込んでいる他のユーロ加盟国にまで「憲法的に」強制されるわけで、「政策」というよりは「イデオロギー」としか表現のしようがない。
上記のイデオロギー的な緊縮路線に、今回、フランスとギリシャの国民が「NO!」を突きつけた。他のユーロ圏の国民は、どうするのだろうか。そして、アメリカ国民は? 日本国民は?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。
・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機」
・ ユーロは夢の終わりか
・ ヨーロッパの危機
・ 動けなくなってきたユーロ」
・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
・ 過剰信用と恐慌、焼け太る国際金融資本「家」
・ ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ
・ ユーロの危機は労働階級を試練にさらす
・ ギリシャの危機拡大はEUの危機!
・ 公平な分配で経済成長を続けるアルゼンチン
・ アイスランドの教訓:銀行は破綻させよ
・ ギリシャ、イタリアでIMF、EU抗議の大デモ
・ 破滅するユーロか、破滅する国家か
・ 欧州直接統治へ進む国際金融資本
・ ユーロは国民国家を解体するか
・ アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ
・ ユーロは崩壊か分裂か
・ 動乱の2012年
・ 通貨戦争(46)ドル、ユーロ、円
・ ヨーロッパは恐慌に向かっている
・ ユーロ危機で延命するドル・ 通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ
・ 緊迫するユーロ、ギリシャは何処へ向かうか
・ IMF、EU、メルケルと闘うギリシャ
・ ギリシャ、抗議の暴動
・ 資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ
・ ギリシャは民主主義を守るためにデフォルトを!
・ ユーロが襲うギリシャの社会危機、政治危機
・ 毒饅頭を食わされたギリシャ
・ 何も改善しないEU新財政協定
・ ユーロの悲劇:三橋
・ 通貨戦争(51)ユーロ分裂に備え始めた欧州
・ ヨーロッパは底なしの危機、27の指標
・ 通貨戦争(54)債務国から巨額の資金流出
・ ギリシャ、経済の崩壊と政治の腐敗
・ ヨーロッパは変われるのか?
・ 緊縮財政を否定する各国国民
・ 通貨戦争(55)ユーロの罠
いかなる国家も領土に住む領民に強制力(暴力装置)を行使できてのみ存在できる。
つまり国家はお金がなければ経営できない。 いわゆる「国民国家」も同様である。
近代資本主義は、無記名有価証券たる通貨、10円の預かり金を1000円にして貸し出す信用創造、それに利ざやである金利、この三点セットで成り立ち、循環恐慌を引きずりながら拡大成長している。
循環恐慌がデフレであり、拡大成長とは数%の物価上昇を伴う信用、需要、供給の拡大である。
ユーロは国家から通貨発行権と金融政策を奪ってしまった。
従って、循環恐慌期(バブル崩壊)加盟国家が取れる経済政策は、財政削減のみという財政悪化と不況のスパイラルである。
通常の国家なら自国通貨の発行量調整と自国通貨建て国債によってソフトランディングなり、税制調整、所得再配分なりの需要拡大が可能であるが、ユーロ加盟国はこの手足がもがれている。
そして、ユーロの存続にとって致命的なのは第二の大国フランスでさえ、条件は同じなことである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ドイツのユーロ」と二つの選挙 5/10 三橋貴明 Klugから
2012年5月6日。欧州で二つの選挙の投開票が行われ、その驚くべき結果に、世界に衝撃が走った。
『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「仏大統領選:社会党オランド氏が勝利、現職サルコジ氏が敗北」
6日投開票のフランス大統領選挙は、社会党のフランソワ・オランド前第1書記(57)が現職のサルコジ大統領に勝利した。17年ぶりに社会党大統領が誕生する。
世論調査会社4社の推計によると、オランド氏の得票率は約52%、サルコジ氏は約48%。フランスでは5週間後に国民議会(下院)選挙が予定されている。
フランス経済はほとんど成長が見られず、失業保険申請件数は12年ぶりの高水準にある。政府債務の増加でフランスもユーロ圏の金融危機の影響に対して脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。
ここ2年にわたるユーロ圏の金融危機で政治指導者が交代するのはサルコジ氏で9人目。現職の仏大統領が再選を逃したのは約30年ぶり。(後略)』
『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「ギリシャ総選挙:NDとPASOKの連立不透明-最新予測」
6日行われたギリシャ総選挙で、救済合意に反対する政党が躍進、2大与党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が再び大連立を組み、救済資金の確保に必要な財政緊縮を実行できるかどうかが不透明な情勢となった
ギリシャ国営NETテレビが伝えた開票途中での予想によると、得票率はNDが18.9%、PASOKは13.4%。一方、同国の救済プログラムに反対する陣営では、急進左派連合が16.6%、独立ギリシャ人が10.5%。この予測によれば、NDとPASOKの合計議席数は過半数の151議席に1議席達しない。(後略)』
最新報道によると、ギリシャの連立与党であるNDとPASOKは、「第一党に50議席が上乗せされる」という、同国独特の選挙制度を加味しても、過半数を確保することは不可能のようである。
本稿執筆時点では、第一党になったNDに50議席を上乗せし、PASOKの議席と合わせても、ギリシャ議会の過半数である151に2議席足りない状況になっている。
何しろ、NDとPASOKの双方を合わせると、09年の総選挙の際には77.4%の得票を得たのだ。それが今回の総選挙では、わずかに32.1%だ。ある意味で、気持ちがいいほどの負けっぷりである。
フランスの現職であるサルコジ大統領が、社会党のオランド候補に敗れた。ギリシャの巨大連立与党であったNDとPASOKが惨敗し、過半数の確保が不可能になった。
サルコジ大統領とギリシャ連立与党に共通しているのは、もちろん「ドイツが主導する緊縮財政路線」を支持していたことである。
逆に、勝利したオランド候補及びギリシャの野党各党は、全て「反・緊縮財政」を主張していた。
すなわち、フランスとギリシャの国民は、現在のドイツ主導の緊縮財政路線に、明確に「NO!」を突きつけたのである。
【図153-1 ユーロ主要国の失業率推移(単位:%)】

出典:ユーロスタット
図153-1の通り、ユーロ主要国の雇用状況は、ドイツを例外として、他国は軒並み悪化している。ギリシャやスペインに至っては、何と20%を上回っているのだ。フランスにしても、失業率は10%で推移している。
ドイツの経済の好調をもたらしているのは、ユーロ安に牽引された「輸出増」である。すなわち、ドイツは輸出(GDP上は純輸出)という「外国の需要拡大」により、経済を成長させ、失業率を引き下げていっているわけだ。
さらに、このユーロ安をもたらしているのは、PIIGS諸国などの財政危機なのである。
すでに本連載において何度も取り上げたが、ドイツは2005年前後に失業率が10%を超え、何と当時のスペインをも上回っていた。理由は、01年にITバブルが崩壊し、企業が負債返済を優先し、投資を縮小するバランスシート不況に陥っていたためだ。
苦境に陥ったドイツを「助けるため」に、フランクフルトに本拠を持つECB(欧州中央銀行)は政策金利を引き下げ始め、これがドイツ以外のユーロ加盟国にバブルをもたらした。ドイツは南欧などのバブル諸国向けの輸出を拡大し、失業率をようやく引き下げることが出来るようになったわけである。
同時に、当時のドイツではシュレーダー政権による「改革」が行われ、非正規労働に関する規制緩和などが実施された。結果的に、各種産業において企業の人件費負担が緩和され、投資に回せるお金が増えたのである。
そもそも、最低賃金引き下げや非正規労働の拡大は、純利益を増やすことで投資を拡大しようとする、サプライサイド(供給能力)政策になる。すなわち、インフレ対策だ。
純利益を拡大すれば、企業の投資は増える「はず」である。デフレ期の日本では、純利益が増えた企業は内部留保(現預金)を増やしており、米韓などの諸国では配当金に回ってしまっているが、元々の法人減税や最低賃金制度改革の目的は、国民経済の供給能力を高めるインフレ対策なのだ。
いずれにせよ、ドイツはシュレーダー政権期に「供給能力を引き上げる政策」を実施し、現在はユーロ安による「外需拡大」に巧く対応し、国民経済を成長させているわけだ。
例えば、現在のユーロ危機が(*南欧諸国でなく)「ドイツ国内の不動産バブル崩壊」をトリガーにしていた場合、ドイツの「改革」は裏目に出た可能性が高い。
すなわち、不動産バブル崩壊で需要が急収縮し、デフレギャップが拡大しているところに、さらに供給能力の強化がなされるという話になり、現在の日本と同じ状況に陥ったはずなのだ。
ところが、ドイツは国内で不動産バブルが発生せず、かつ各ユーロ加盟国のバブル崩壊で、ユーロ危機が深刻化した結果を受けたユーロ安を「外需拡大」のために活用しているわけだ。
何というか、現在のユーロが、
「ドイツの、ドイツによる、ドイツのためのユーロ」
という状況に陥っているのがよく分かる。
最低賃金制度改革に代表される各種の構造改革とは「インフレ対策」であり、現在のスペインやギリシャ(恐らくフランスも)が実施すると、デフレギャップが拡大し、失業率がさらに上昇する。
さらに、ギリシャやスペインなど、高品質な製品を生産する企業を持たない国が生産性を高めたところで、ドイツと同じ真似はできない。ドイツはあくまで「元々、競争力が高い製造業大国」だったからこそ、現在のユーロ安による外需拡大に対応できているわけだ。
とはいえ、ドイツの競争力強化は、国民の可処分所得を引き下げることにより達成された。すなわち、国民の消費という最も重要な内需が、今後、ドイツ国内で順調に増えていくのか、疑問を持たざるを得ないわけだ。
また、スペインやギリシャがドイツと同じ真似をすると、デフレ深刻化で財政が今以上に悪化する。そうなると、両国の財政問題が悪化し、またまたユーロ安ということでドイツは潤う。
このドイツが「自国の方針」に基づき、ユーロ加盟国に緊縮財政や財政均衡の憲法化を要求しているわけであるから、他のユーロ諸国の国民としてはたまったものではないわけだ。
特に、スペインやギリシャのように失業率が20%を超え、アメリカ大恐慌期に近づいているような国々までもが、「他国(ドイツ)」の望む緊縮財政路線を歩まされるわけである。
各国の国民が怒り、既存の政党や政治家に「NO!」を突きつけるのは、むしろ当たり前に思える。
何しろ、緊縮財政とは増税や政府支出削減(公共事業削減、公務員経費縮小、年金削減など)を意味しており、雇用環境には確実に悪影響を与える。
他国(ドイツ)の望む緊縮財政を自国にまで強要されている状況下で、欧州諸国の政治家は選挙の洗礼を受けねばならなくなってしまった。
その先陣を切ることになったフランス大統領選挙、及びギリシャ総選挙では、両国民が共に緊縮財政路線について、民意をもって否定した。
ギリシャの場合、連立与党以外の政党は全てが「反・緊縮財政」である。緊縮財政に反対したからこそ、一気に議席を伸ばしてきた各党が、選挙後にNDの既存路線に賛成することはできない。
今回の選挙で第一党となったND(新民主主義党)のサマラス党首は、ギリシャのユーロ圏残留を目指す連立政府を樹立する意向を表明はしている。とはいえ、ユーロ残留・緊縮財政を訴えていたのは、他には大敗北を喫したPASOKのみだ。
そして、NDとPASOKが連立し、NDに50議席をプラスしても、ギリシャ議会の過半数を占めることができないとなると、緊縮予算がことごとく否決されるだけの話になる。
すなわち、IMFやEUのギリシャ支援の前提が崩れてしまうわけだ。
無論、EUやIMFの支援が止まれば、ギリシャは最終的なデフォルト(EU関係者ですら認めざるを得ない完全なるデフォルト)に追い込まれることになる。同時に、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてくることになるだろう。
とはいえ、反・緊縮財政路線を叫び、勝利した野党陣営とはいえども、別にユーロ離脱の構想や経済成長への道筋が立っているわけではない。中途半端なままユーロに残り、緊縮財政を拒否すると、長期金利が再び急騰し、政権はすぐに行き詰ることになる。
これが日本の場合、超低迷している金利を利用し、「国債格下げだ!」などと叫ぶ外野(格付け機関など)をよそに、財政出動と金融緩和という「正しいデフレ対策」のパッケージにより成長路線に戻れる。
それに対し、ギリシャは「デフォルト」及び「ユーロ離脱」という二つの関門を潜り抜けなければ、成長路線に戻る見込みは立たない。しかも、この二つの関門を抜ける際に、国民経済がどれほどの傷を負うのか、想像もつかない状況なのだ。
さて、実は筆者はフランスのオランド氏の勝利は予想していた。何しろ、失業率10%の国で現職の大統領が勝つのは極めて困難である。
ユーロ二大国の一つであるフランスの国民が緊縮財政路線を拒否したことで、今後のユーロはドイツの対応、あるいはフランスのドイツへの対応が注目点になる。オランド新大統領は、ドイツに対し、
「緊縮財政路線のみではなく、『成長』のことを考えるべきだ。さもなければ、財政が余計に悪化することになる」
と、マクロ経済的にまことに適切な要求をすることになるだろう。それに対し、メルケル政権はいかに応えるのか。
また、オランド新大統領は、元々、現在のグローバル経済を支配しているのも同然な「金融産業」について快く思っていない。オランド新大統領は、選挙演説中に何度も金融産業を批判するスピーチをしている。(オランド氏は選挙期間中に、金融産業について「真の敵」と呼んでいた)
オランド新大統領が、国際的な金融産業あるいは「グローバリズム」により経済が支配され、国民経済(雇用と所得)がないがしろにされがちな現状を問題視しているのは間違いない。
また、オランド新大統領は金融機関や原子力、防衛、プライベートエクイティファンドなどについて「改革」の対象に挙げているわけであるから、「グローバリズム」信奉者は戦々恐々としていることだろう。
ちなみに、筆者が何度も引用し、
「自由貿易(製品の輸出入のみならず、投資や金融サービスの自由化を含めた自由貿易)は民主主義を壊す」
と主張しているエマニュエル・トッド氏は、オランド支持を表明していた。
とはいえ、オランド氏が現在のフランスが置かれている環境において、「グローバル企業や投資家を利するのではなく、国民所得を高める」形の経済成長を実現するのは、極めて困難を伴う。
何しろ、フランス(フランスだけではないが)は金融政策の機能をECBに委譲している。日本やアメリカのように、フランスは「通貨発行、国債発行、財政出動」のパッケージという、正しいデフレ対策を打つことはできない。
また、さすがにユーロの中心国の一つであるフランスが、自国のみに重点を置いた政策を実施することもまた、不可能事に近い。
だが、各国の金融政策の機能がECBに委譲されている不自由な状況下において、「ユーロ圏全体」の成長を目指すなど、果たして可能なのだろうか。
さらに、経済のファンダメンタルや競争力がバラバラなユーロが、一致団結して成長を目指せるような、魔法の如き政策が、果たして存在しているのか。
ドイツのメルケル政権とオランド新大統領との話が決裂すると、ユーロ内は決定的に分裂することになる。すなわち「成長派」と「緊縮派」に分裂するわけだ。
いまさらだが、「成長を目指す」も「緊縮財政を実施する」も、常に正しい政策というわけではない。
デフレの時は緊縮に背を向け、成長を志向し、インフレ期に成長率が十分なときは、緊縮財政を実施するべき。ただ、それだけの話だ。
現在は「環境に応じてソリューション(解決策)は変わる」という当たり前の事実を多くの政治家が失念し、日本はもちろんのこと、アメリカや欧州でも混乱を巻き起こしているわけである。
特に、メルケル政権の緊縮路線は、デフレに片足を突っ込んでいる他のユーロ加盟国にまで「憲法的に」強制されるわけで、「政策」というよりは「イデオロギー」としか表現のしようがない。
上記のイデオロギー的な緊縮路線に、今回、フランスとギリシャの国民が「NO!」を突きつけた。他のユーロ圏の国民は、どうするのだろうか。そして、アメリカ国民は? 日本国民は?
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・ ギリシャ、抗議の暴動
・ 資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ
・ ギリシャは民主主義を守るためにデフォルトを!
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