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原発事故300km圏内で食物摂取規制、日本が反対

 原発事故から1年を経たが、依然日本政府の隠蔽、騙し、悪事が次々と露呈している。
 「情報開示と国民の人権:アムネスティ声明」、「SPEEDIを消去、その後は隠蔽した福島県庁」、「東電の拡散予測を握りつぶした保安院」、「安全の根拠もなく、原発の再稼働などできない」。

 2005年にIAEA(原発推進の国際機構)ではあるが、普通の100万KW原発が重大事故を起こした場合の安全基準として、300km圏内の食物摂取規制を取り決めようとしたが、日本などの反対で潰れた。
 想定は原発4基ではなく、もちろん1基の想定。
 300km圏内の作物、家畜、野生も含めての食物摂取規制の意味である。

 早期に静岡の茶葉が汚染され、東京の水道水が汚染されたことを思い出す。
 その後、福島県内はもとより、例えば関東でも土壌の汚染は何も減少していないどころか、高濃度スポットが増加し、また、汚染が山地から平地に拡大を続けている。
 日本政府は歴代、国民をまったく考慮しない政府である。

 今回の原発事故は1~4号機の4基と言ってよいだろう。おそらく安全のクリアランスをとるなら300kmでは足りないだろうが、リスクの可能性なら1000kmと考えても妥当かも知れない。

 私たちは、せめて300km圏内の食物摂取はすべきではない。
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  日本政府が異議を唱えたIAEA提案の食物汚染地域の定義は、重大事故を起こした原発から300キロ圏内の地域だった  3/20 ex-skfから

朝日新聞・Asia Japan Watch (AJW)2012年3月17日付け記事(英文)をざっと翻訳してみました。日本語の元記事があるのかもしれませんが、朝日のサイトからは(購読者ではないので)探せませんでした。ということで、私が勝手にやった私訳です。大急ぎでほとんど直訳でやったので、姑息に後で直すかもしれません。

日本語の元記事があったとすると、それを英訳したものを反訳して日本語にしても元の日本語には絶対に戻りませんのであしからず。強調は私です。
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Asia Japan Watch 2012年3月17日
日本政府はIAEAの食物汚染地域の定義に異議を唱えていた 大岩ゆり

2005年、国際原子力機関(IAEA)が原子力非常時に食物の摂取規制を行う地域を定義することを提案した時、日本政府は異議を唱えた。

その結果、ウィーンに拠点を置く国際的な原子力の監視人[である国際原子力機関]はそのような地域を定義することはなく、6年後に福島第1原発事故が起きてから、厚生労働省があわてて規制を導入する、という有様になった。

朝日新聞の請求に応じて公開された公文書によると、原子力災害に備え、農作物の出荷禁止その他の策を講じて放射能汚染された食物の摂取を規制する地域を指定しようとするIAEAの提案に、日本政府は異議を申し立てた。

IAEAは2005年2月、、重大事故の場合、1ギガワット級の原子力発電所の300キロ圏内で食物摂取規制を行うべきである、とする安全基準の草案を作成した。

文書によると、日本政府の原子力安全保安院、原子力安全委員会、文部科学省が2005年5月にIAEAの提案を検討した。

検討会の出席者は、日本政府の名で、IAEA提案の区域の具体的な距離の数字を削除するよう求めることを決定した。

出席者は、「食物規制区域を定義する前に、悪い評判[風評]やその他の要因を考慮する」必要性を理由として挙げた。また、報告書によると、彼らの意見は、「チェルノブイリのような大きな影響がある事故を想定するのは適当かどうかを考慮する」必要がある、というものだった。

ブラジル政府も同様の抗議を行った。結局、[原発からの]距離の明示は削除された。

昨年3月の東日本大震災が福島第1原発を麻痺させるまで、日本政府が設定していた[原子力]災害対策ガイドラインは、政府の災害対策本部が食物摂取の規制を行う方策の「考慮を開始する」、というものだけだった。当時の政府関係者は、事故の発生から食物摂取規制を実施するまで、「十分の時間がある」、としていた。

福島事故後、厚生労働省は慌てて暫定安全基準を設定したが、これは充分ではなかったかもしれない。

「今回の事故の後、暫定安全基準を超える放射性セシウムが福島原発から300キロ以上離れた静岡県のお茶の葉から検出されました」、と言うのは原子力安全委員会管理環境課の都築秀明課長。[だと思いますが、確定ではありません...。] 「今思えば、300キロ圏は大きすぎるということはなかった。チェルノブイリの経験で、人体に害の出るレベル以下の放射性物質が植物や家畜などに濃縮されうる、ということを私たちは知っていました。

原子力安全委員会は現在災害対応ガイドラインの見直しを行っており、食物、飲料の摂取規制を行う放射性物質のレベルの具体的な数字を定義する予定である。
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チェルノブイリ規模の事故を想定することが適当か、と(原子力推進の)IAEAにいちゃもんを付けておいて、「今思えば300キロ圏内は大きすぎることはなかったんですねえ」、などと今更言われても、「ふざけるな」としか言い様がありません。

決して忘れてはならないのは、日本政府がやったのは出荷の規制どころか、福島・東北・関東の野菜、肉、米を食べよう、というキャンペーンでした。福島県の計画的避難区域の牛、豚は、避難の期日までに大量に全国に売られました。野菜の検査は1市町村の1農場の1つの畑から作物1つ選んで行う、という検査でした。厚生労働省が慌てて食物の規制をかけようとする中、規制が何もなかった稲わら、シイタケ栽培用の培地(木屑など)が、汚染地域から自由に流通していました。

野田首相は外国人記者相手に、「原発事故の責任は個人にはない」と断言していましたが、事故発生後の対応には政府の政治家、官僚、一人一人に重大な責任があると思います。
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旧・内務省の亡霊が支配する日本

 「いくらなんでも」と思われるかも知れない。
 だが、現在この国を支配する官僚機構が少なくとも明治以来の組織的な蓄積であること。政党政治を打倒して中国侵略に突き進み、さらに戦時総動員体制を固めてきたこと。敗戦後はGHQ米国がその機構、特質を利用してマスコミと共に温存し、支配に活用されてきたものであることを考慮すると、疑い得ないものがある。

 2009年の政権交代からこの大震災と原発事故を経て、今に至る官僚機構(省庁官僚と大手マスコミ、経団連、電力などを含む)の対応は、まさしく政党政治を潰して官僚統制を進め、そのことで米国のかいらい自治政権の役割を完遂しようとしている。

 つまり、この官僚機構という権力構造は明治以来の組織力量を蓄積した存在であり、その旧軍なき現在の中心勢力は、旧・内務省から枝分かれした省庁ではないか。彼らの関心事はもちろん国民ではなく。この省庁間の権力利害に他ならないのではないだろうか。
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  旧・内務省の亡霊が支配する日本   3/22  「闇株新聞」から

 本誌では何度も、いろんな事件(経済事件だけとは限りません)の背景を考える時には官僚組織の理解が不可欠であると書いてきました。

 官僚組織とは、701年に藤原不比等(注)によって制定された大宝律令でその原型が作られ、以来1300年以上にもわたって生き続けているのです。日本に議会政治が導入されてから122年目、自由民主党政権が出来てから57年目、現在の民主党政権はわずかに3年目で、全く「ケタ」が違うのです。しかし、この辺から書くと長くなるので省略します。

(注)教科書では編集責任者が皇族の刑部親王となっています。「権威」を借りる体質はそのころからあったのです。藤原不比等については昨年5月16日付け「書き換えられた歴史・藤原氏の正体 その1」、5月17日付け「同、その2」、5月18日付け「同、その3」に書いてあります。

 別に今の官僚組織まで藤原氏が牛耳っているわけではないのですが、その体質・考え方・生き方などは見事に1300年以上受け継がれてきているのです。

 現在の最強の官僚組織とは、国家の資金を扱う旧・大蔵省と、独立した公訴権を持つ検察庁(法務省)であることは間違いなく、経済事件を考える時には常に頭に入れておかなければなりません。また、この両者の「関係」が常に微妙に変化していることも重要です。昨年9月6日付け「旧・日債銀の経営陣への無罪判決とその背景 その2」にその一端を書いてあります。

 オリンパス事件は、この両者の関係だけでほぼ説明がつきました。つまり旧・大蔵省の意向により傘下のメガバンク(特に三井住友銀行)の貸付債権の保全を最優先としたのです。事件は「一部経営陣と外部の指南役」の仕組んだ事件として、オリンパスの経営権は見事に銀行出身者を中心とした社外取締役が握りました。検察庁も「海外の報道によって発覚した」責任を追及されることもなくメンツを保てたのです。

 さて、ここからが本題です。

 AIJ投資顧問事件では、事件そのものは非常に単純なのですが、事件化して1ヶ月もたつのに「関係者」は自由に歩き回り、「近々、強制捜査」と「予告」だけが出てくる異常な状態が続いています。

 これについては3月14日付け「AIJ投資顧問へやっと強制捜査の意味するもの」でも書いたように、証券取引等監視委員会から「登録取り消し」の行政処分の勧告を待って(3月23日予定)登録を取り消し、金融庁の「直接監督下」から外してから「刑事事件化」するためなのですが、実はそれだけでも全部は説明できません。

 ここは、旧・大蔵省と検察庁以外に厚生省(現在は厚生労働省)を考慮に入れて考えなければならないのです。

 厚生省は、戦前まで「官庁の中の官庁」と言われて絶大的な権力を保持していた旧・内務省の「本流」なのです。普通、旧・大蔵省である財務省や金融庁、あるいは検察庁と比べると、厚生省(厚生労働省)の力は落ちると考えられています。

 ところが、そうでもないのです。だから旧・内務省について理解しておく必要が出てくるのです。

 旧・内務省の詳しい解説は次回にするとして、非常に象徴的な現在進行形の「事件」を1つだけ挙げておきます。

 昨日(3月19日)、政治資金規正法違反で検察審査会の起訴決議により強制起訴されていた小沢一郎・元民主党代表の裁判が結審しました(判決は4月26日)。

 これについては、ちょっとした事情があるためコメントしませんが、そもそも強制起訴を決めた検察審査会へ提出した捜査報告書に明らかな虚偽が含まれていたことが明らかになってきています。しかしこれに対する検察庁の対応が、2010年9月の郵便不正事件で証拠を改竄した担当検事を逮捕した時の「迅速さ」「深刻さ」と全く違い、問題視する気配すら見えないのです。

 どちらもその背景(どこまでが了承していたかなど)は絶対に明らかにされないとしても、問題の重要性・悪質性は全く同質のものであるはずです。

 その対応の違いは、郵便不正事件はターゲットが厚生労働省(繰り返しますが厚生省は旧・内務省の本流なのです)の高級官僚であったのに対し、小沢一郎氏は高級官僚ではないところから来ているのです。

 確かに小沢氏は有力政治家で、官僚組織が「仮想敵」とみなしていることも重要なのですが、そもそも郵便不正事件では検察庁が「高級官僚」を「被害者」にしてしまい、さらにその高級官僚が厚生労働省であったことが検察庁の「迅速に」かつ「全面的に非を認めた」ことの根本的理由だと思うのです。

 「全面的に非を認めた」といっても実行者の元・担当検事と元上司(2人)だけを切り捨てて組織としての検察庁を守っただけなのですが、高級官僚ではない小沢氏に関しては「全く同質の改竄事件」であるにもかかわらず、全く気にしていないのです。

 「いくらなんでもそんな」と考えられると思いますが、もっと旧・内務省について考えてみる必要がありそうです。

 内務省とはどういう官庁だったのでしょうか?

 内務省は明治維新直後の1873年に設置され、当初は大蔵省・司法省(現在の法務省)・文部省の所管事項を除く内政の全般を管轄していました。その後、農林省・運輸省・逓信省(後の郵政省)が分離していくのですが、ずっと地方行政・警察・土木・衛生などの重要な内政部門を管轄していました。

 当時は、各道府県知事は内務省が任命しており、内務官僚がそのまま任命されることが多かったようです。また警察部門では国家警察と首都警察である警視庁を内務省が直接管轄し、地方警察は各道府県知事を通じて間接的に管轄していました。また土木部門はもちろん公共事業関連で、衛生部門は医療・薬事関連と、多くの利権が集中していました。

 第二次世界大戦が近づくと防空・国土計画も管轄するようになり、国家総動員法や治安維持法の元締めとなり、悪名高い特別高等警察も管轄していました。つまり軍部と並ぶ(あるいはそれ以上の)強力な官庁だったのです。

 終戦後の1947年に、内務省はGHQによって解体されました。管轄していた地方行政は自治省(現在の総務省)に移管されたのですが、地方行政で最も重要なことは各道府県知事が公選によって選ばれるようになったことです。また警察は国家行政組織の警察庁と地方組織の警視庁(東京都)と道府県警察に分けられました。また土木部門は建設省を経て現在の国土交通省へ、衛生部門は厚生省(現在は厚生労働省)に移管されています。

 しかし非常に重要なことは旧・内務省が管轄していた数多くの利権は、分離されてもそのまま内務省系の各省庁に引き継がれているのです。

 年金制度は厚生労働省の管轄なのですが、そもそも国民年金制度が導入されたのは1940年代であり内務省が解体される直前のことでした。しかしその管轄は当然のように内務省から厚生省(現在の厚生労働省)に移管されて現在に至っているのです。

 現在の官僚組織において旧・内務省が優遇されている点として、官僚のトップである内閣官房副長官(事務担当)は歴代・旧内務省の警察庁、旧自治省、旧厚生省の次官経験者から選ばれていたのですが、阿部内閣では大蔵省出身の的場氏、現・野田内閣では旧建設省出身の武歳氏となっています。

 それから宮内庁長官も旧・内務省系省庁の事務次官か、それに準じる警視総監経験者が就いています。現任の羽毛田氏は元厚生事務次官です。

 宮内庁については多くを書くつもりはないのですが、天皇陛下および皇族の国事行為の調整を一元的に行い、さらに天皇陛下のご意見の代言すら行っているのです。これは「名誉を配分する権利」であり、考え方によっては強大な利権なのです。

 ここまで言うとこじつけかもしれませんが、小沢氏がかつて中国の習近平国家副主席の来日の際、天皇陛下との会見をゴリ押ししたことがあります。これも官僚(宮内庁も官僚組織です)を敵にまわした理由の1つなのかもしれません。

 つまり現在の官僚組織の中でも、旧・内務省の影響力(亡霊)は想像するよりはるかに強大なのです。

 それでもってAIJ投資顧問事件をもう一度考えてみましょう。つまり旧・内務省の厚生労働省が管轄する年金資産を、旧・大蔵省の金融庁が監督する投資顧問会社が「消滅」させてしまったのです。

 あまり論理的な比較ではありませんが、検察庁が旧・内務省の本流である厚生労働省の高級官僚を「間違って」逮捕して「証拠改竄」までバレてしまった時のような「狼狽ぶり」のはずなのです。官僚組織にとって怖いのは国民でも政治家でもなく、官僚組織の中で力を失うことなのです。

 ある省庁が、ある事件をきっかけに長期にわたって発言力が低下する(もっと分かり易く言うと天下り先を他の省庁に奪われる)ことが結構あり、それが一番怖いのです。何しろ官僚組織は1300年以上続いてきており、凡人の常識では計り知れないヒエラルキー(階層構造)が出来上がっているのです。

 AIJ投資顧問事件では、やはり3月23日の証券取引等監視委員会の勧告を受けて、同日に「登録取り消し」として、やはり同日に証券取引等監視委員会の特別調査課が「強制捜査」をするようです。しかし、この場合の最終目的はあくまでも金融商品取引法違反による逮捕・起訴であり、容疑まで「募集の偽計」と既に発表されています。

 金融庁の最大の関心事(心配事)は、(年金加入者に対してではなく)厚生労働省に対してどのように説明をするか(言い逃れをするか)であり、それによって今後の捜査の方向やルールの変更などが決まってくるのだと思うのです。
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公共事業悪玉論は国家的な自殺行為:三橋

  国家的自殺を後押しする者たち  3/22  三橋貴明  Klugから

 97年の橋本政権による緊縮財政開始以降、日本の公共投資は「日本史上空前」のペースで減らされた。特に、道路関連の建設投資が減らされに減らされ、今や日本の高速道路のサービスは、主要先進国最低であるのはもちろんのこと、韓国にさえ劣っている。

 日本の公共投資は、国土的条件がまるで異なるフランスを、08年以降に対GDP比で下回るようになってしまった。フランスと日本とでは何が違うのかと言えば、ずばり「自然災害の有無」と「国土的条件」である。

 フランスは南東部のアルプス山岳地帯のごくわずかな地域を除くと、地震がない。「地震が少ない」のではない。「地震がない」のだ。それに対し、日本は国土面積は世界のわずかに0.3%に過ぎないにも関わらず、マグニチュード6以上の大地震が集中して発生する。何しろ、日本列島はユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートと、四つの大陸プレートが交差する真上にある。

 フランスに行かれた方は、是非、高速道路の「脚」に注目して欲しい。フランスのシャルル・ド・ゴール空港からパリ市内に向かう高速道路の橋脚は、まるで「板」のように見える。要するに、薄いのだ。それに対し、日本の高速道路の橋脚は、太い柱になっている。あれは別にわざわざコストをかけているわけではなく、あの構造にしなければ、頻発する地震に橋脚が堪えられないためなのである。ちなみに、フランスのパリ周辺では、有史以来、大地震が起きたことがない。

 また、日本は国土が細長く、真ん中に脊梁山脈が走っている。さらに、一級水系(河川)が109、二級水系は2713もある。国土が山岳地帯と河川だらけになっているのだ。結果的に、高速道路一本引くにしても、トンネルや橋梁を設置しなければならない。さもなければ、日本国内の物流や人々の流れは、「自然」により分断されてしまうのである。

 それに対し、フランスは国土の70%以上が平野だ。しかも、アルプスがある南部を除き、残りが「全て平野」なのである。南はトゥールーズから、ボルドー、ナント、ブレスト、ル・マン、パリ、ランスに至るまで、およそ1000Km以上の広大な地域に平野が広がっている。山がないのみならず、河川も少ない。あるにはあるのだが、フランスの河川は「少数の長大な河川」が、広大な平野をゆったりと流れていく。そのため、高速道路を建設する際のコストが、日本と比較すると安くなる。トンネルや橋梁の数が少ないわけだから、当然だ。

 しかも、日本には台風が来るため、水害や土砂災害にも備えなければならない。さらに、豪雪地帯の問題もある。日本のように、新潟のような大都市が豪雪地帯に立地している国は、世界中にどこにもない。(日本より寒い地域に都市が存在するケースはあるが、豪雪地帯はない)

 当たり前だが、フランスに台風は来ない。豪雪地帯もない。結果的に、フランスは高速道路を建設するに際し、「自然災害」や「地形」に妨げられることがほとんどない。

 このフランスの公共投資対GDP比率を、日本が下回ってしまったのだ。これはもはや、国家的自殺としか表現のしようがない。

【図146-1 主要国一般政府公的固定資本形成対GDP比率の推移(単位:%)】
20120321_01s.png
出典:「建設業ハンドブック2011」
※公営企業の公共投資、及び用地費等は含まれていない



 日本の中央政府及び地方自治体(一般政府)の公的固定資本形成対GDP比率は、08年に3%という恐るべき水準にまで低下した。自然災害が多発し、山脈や河川が多い日本の場合、一般政府の公的固定資本形成対GDP比率を、せめて6%程度で維持しなければ、国民の安全を守ることはできない。ところが、今や自然災害が相対的に少ない欧米諸国と同じ水準にまで下がってしまった。

 ちなみに、日本以外の主要国の一般政府が、公共投資をどのように推移させてきたか。橋本政権以降の日本と比較すると、眩暈がするような状況であることが理解できる。

 図146-2の通り、イギリスやアメリカは公共投資を96年比で3倍前後にまで拡大している。カナダは2倍、フランスは1.65倍だ。ドイツは一時的に公共投資を減らしてはいたが、09年には96年と同水準に戻している。

 それに対し、日本のみが延々と公共投資の削減を続け、96年比で半分にまで縮小してしまった。この「惨状」を見て、それでも、
「日本の公共投資は多すぎる!」
 などと言ってのける評論家がいるのであれば、その理由を論理的に説明しなければならない。結局のところ、彼らはデータや他国の状況を見ることもなく、単純に「イメージ」あるいは「ノリ」で、日本の公共投資を批判しているだけなのではないか。すなわち、イデオロギーとしての「公共投資悪玉論」だ。

【図146-2 主要国一般政府公的固定資本形成の推移(96年=100)】
20120321_02s.png
出典:同

日本の公共投資は、別に外国から指摘されて減らしてきたわけではない。国内マスコミを中心に、データではなくイデオロギーに基づき展開された公共投資悪玉論に、政府が逆らえなくなってしまった結果である。無論、最終的な責任は、公共投資の必要性について正しく説明しなかった政治家、さらに言えば彼らを当選させた国民に帰せられてしまうのだが、それにしてもマスコミの「公共投資嫌い」は異常だ。

 公共投資をイデオロギー的に否定するといえば、代表的なマスコミが朝日新聞になる。

『2012年3月10日 朝日新聞「津波からの復興―もっと「なりわいの再建」を」
http://www.asahi.com/paper/editorial20120310.html

「コンクリートの復興」は進んでも、「なりわいの再建」が置き去りになっていないか。 東日本大震災から1年たち、その点が気になる。もともと高齢化と過疎化が進む地域だ。仕事がなければ、現役世代の流出は加速する。防災都市が完成したが、職のない高齢者が暮らすばかり。そんな未来にしてはならない。被災地には、いまこの時も、深刻な危機が忍び寄る。その認識を共有すべきである。

■「土建回帰」を避けよ

 津波への備えは大切だ。だが、私たちは倒壊したコンクリートの構造物を目の当たりにし、それに頼り切る危うさを実感した。いま被災地では、以前より巨大な構造物を造る槌音(つちおと)が高い。岩手県の釜石湾口防波堤の復旧工事が、先月から始まった。31年の歳月と1200億円をかけた「世界最深」の防波堤は津波で破壊され、市街地は壊滅的被害を受けた。ところが政府は「津波のエネルギーを減殺した」と復旧を決定。500億円を投じる計画なのだ。

 高速道路の建設もすすむ。仙台・八戸間を結ぶ三陸沿岸道路は多くの利用者が見込めないことから、政権交代後は予算が減っていた。それを地元自治体は、震災時の避難に使われた「命の道」だと建設促進を働きかけ、バッジやビデオまで作った。これらの高速は「復興道路」として、今年度当初で270億円だった予算が1200億円に補正で増額された。379キロを7年から10年でつくるという。

 これには首をかしげる。増税までして集めた資金には限りがある。津波対策を進めるなら、高速道路よりも高台移転の支援を優先すべきではないのか。同じ道路なら、まずは高台へ逃げる避難路だ。 だいたい、こんな集中投資が何年続くというのか。一時だけの「土建国家」復活は、その反動のほうが心配だ。(後略)』

 実際に被災地に入れば分かるが、防波堤がなかった釜石北部は街が「壊滅状態」にも関わらず、釜石中心地は比較的被害が少なかった。より具体的に書けば、現在の釜石北部が「荒野」と化しているのに対し、釜石中心部は建物や道路が残っており、普通の「生業」が営まれているのだ。
 釜石湾口防波堤は確かに釜石中心部を完全には守れなかった。だが、数兆円規模の市民の財産を守ったのである。1200億円の費用をかけたが、十分にそれ以上の便益はあったのだ。

 それにも関わらず、朝日新聞は「市街地は壊滅的被害を受けた」と印象操作を行っている。朝日新聞の言う「壊滅的被害」の定義は知らないが、現地に行けば、防波堤が存在しなかった釜石北部と、存在した釜石中心部では、明らかに被害状況が異なることが分かる。何しろ、釜石中心部には「街」がそのまま残っているのだ。

 さらに、震災のわずか6日前に開通した三陸縦貫自動車道の「釜石市-山田町区間」、通称「釜石山田道路」は、実際に「命の道」として、大勢の釜石市民の生命を救った。釜石山田道路が開通していなかった場合、津波から避難した釜石北部の人々が孤立し、冗談抜きで衰弱死や餓死が発生しかねない状況だったのだ。
 釜石北部と釜石中心部を結ぶ国道45号線は全く通れない状況になり、釜石北部の人々(小中学生を含む)は、釜石山田道路を通って釜石中心部に避難することができた(小中学生は、トラックでピストン輸送された)。

 釜石山田道路が、開通していなかった場合、どうなっていたか。実際に現地に入り、釜石の人々の話を聞きさえすれば、「命の道」を否定することができる日本国民など皆無であると確信している。(朝日新聞の記者は例外かも知れないが)

 朝日新聞は「過疎地の公共事業など無駄だ」というスタイルの記事を書いているが、話は真逆だ。そもそも、公共事業でインフラが整備されていない地域において、企業がビジネスを展開することは有り得ない。人口減少を押しとどめたいのであれば、なおのこと、地域の公共投資にお金を使わなければならないのである。

 そもそも、投資とは「将来世代のため」あるいは「将来の利益のため」に実施される。特に、公共投資の場合は現在の世代ではなく、「将来の日本国民」を潤すという色が濃くなる。釜石湾港防波堤は、確かに建設に従事した企業や従業員の所得拡大に貢献した。
 とはいえ、そもそもの目的は当時の釜石市民のみならず、「将来の釜石市民」の生命を津波から守ることだったのだ。確かに完全とは言えなかったが、釜石湾港防波堤は建設時から見れば「将来の釜石市民の生命や財産」を守った。これこそが、公共投資の本質だ。

 すなわち、朝日新聞に代表される公共投資否定論者たちは、
「将来世代など、どうでもいい。自分が潤えばいい」
 と言っているのも同然なのである。言葉を選ばずに書くが、おぞましい考え方だ。

 おぞましいと言えば、民主党の「コンクリートから人へ」も同様だ。「コンクリート」とは公共投資であり、「人」とは社会保障支出のことである。民主党の「コンクリートから人へ」は、将来世代のための「コンクリートへの投資」を拒否し、「現在の世代のみが潤う」社会保障を増やすという考え方なのだ。確かに選挙対策としては有効なのかも知れないが、おぞましい考え方であることに変わりはない。

 朝日新聞などの公共投資否定論者たちは、日本国の「国家的自殺」を後押しし、国民の生命を危険にさらしている。今回の震災や復興を機に、日本国民が「虚偽」の公共投資悪玉論から脱却することができなければ、我々は将来世代に対する責任を果たせないということになる。

 果たして、本当にそれでいいのだろうか。
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