fc2ブログ

もうすぐ北風が強くなる

木村真三、河田昌東質疑対談

 2011年11月13日名古屋で行なわれた木村真三、河田昌東両氏の講演会における質疑応答の対談部分です。
 木村氏は放射線医学総研に在職中に原発事故発生。調査禁止令に対して辞職して調査に入る。現在は獨協医大の国際医研福島分室という形で調査を続けている。
 河田氏は名古屋大の分子生物学で、チェリノブイリ救援中部の理事。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
放射能汚染時代を生き抜くために~チェリノブイリから福島へ~」  書き起こし「ぼちぼちいこか」から

(木村氏)それでは、河田先生と一緒に二人で、駆け引きじゃなくて、掛け合いで<笑い>、掛け合いしながら、漫才のようにしてきたいと思います。じゃぁ、先生、どうぞ。

(河田氏)えー、なんか漫才をしろということで、ちょっと緊張しておりますけれども、普段、漫才あんまりやらないので。
 とりあえずですね、二人に様々な質問がたくさん来てます。
 交互に進めていきたいと思います。
 まずそれでは、初めは私から。これはまぁおひとりの方からですけれども、
『チェルノブイリハート』という映画についてのご質問というか、ご意見ですね。
「これを見て、いろいろなことを考えれた」という感想なんですけれども・・・。
 あの・・・、私も見ました。
 ただ、率直に言ってですね、私は福島のお母さんたちには見せたくない、そんなふうに思いました。あまりにもショッキング。つまり、放射能についていろんな病気が出るのは確かなんですけれども、あたかもそれが先天異常ばっかり取り上げてますね。非常にショッキングに描いてるわけですけれども、これは必ずしも放射能の影響を正しく伝えてないというふうに思います。
 もちろん、ベラルーシなんかでは先天異常で生まれていて、時間が無いから申し上げませんけど、原因もあるわけですけれども、やはりもう少し、なんて言うんですかね、冷静な、科学的な判断で現地の人が対処できるようにした方がいいかと思います。
 それじゃ、どうぞ。

(木村氏)ついでに僕も一言。
 僕ら放射線生物学というか、生物学をやっていると、他の先生もそうなんですが、遺伝学をやりますよね?放射線遺伝学から考えると、その遺伝的な影響というのは、数十世代後に出てくるんですね。それは、いきなり直接影響が出るというのは、かなりの放射線被曝をしてないと、出てこない、出産異常は出てこない。
 基本的には、かなり高い数字になりすぎると、流産をしてしまって生まれてこない。生まれてくるというのは、それほどでもないレベルで生まれてくるとか、あと、1週間、生まれて1週間くらいで死んでしまうとかいうようなパターンが出てくるんですが、遺伝学的に言うと、数十世代、1000年以上経ってから出てくると言ったことが言われています。
 それは、小さな傷というものが、どんどん増幅することによって、それも世代を経ることによって増幅されて出てくる。しかもそれは非常に弱い影響であって、本人も気づかないレベルであるというふうに考えられています。
 これは、集団遺伝学でちゃんと証明されているお話でもありますというので、あまり神経質にならないでほしいというのが、私の考えです。
 では、一つ、測定器についてお話しますが、「どんなものがいいんですか?」
 これは、僕、業者の回し者じゃないんで、ちょっと「これがいいよ、あれがいいよ」なんて言えません。少なくとも精度がいいものというのは、NAIのシンチレーションカウンターだとか、セシウムアイオダイド、ヨウ化セシウムのシンチレーションカウンターっていうのは非常にいいものですが、GM計数管でも十分です。
 っていうのは、これは、その数値を信じるのではなくて、自分のところはある基準点を決めて、基準点と比べた時に、高いか低いか、っていうことをやればいいんです。例えば、線量が出てるんだったら、その市役所に行って自分の数値を見て、そこと自分の家では高いのか低いのかということをしながら、いろんなところを見てまわるっていうことで、相対的に見ていけば、なんでも使えるんですよ。
 ただ、あまりやりすぎると、中国製とかは難しい問題が・・・、数字が出てこなくなったりとかはよく聞きますので、まぁそういうのを気を付ければいいと思います。

(河田氏)ついでにちょっと宣伝させてください。
 今この間、我々が支援してきたウクライナの被災者たちから、『日本を救えキャンペーン』が始まってます。3か月くらいの間に、1万人くらいの方から寄付をいただきました。ウクライナ製の測定器を100台送っていただきました。これを約半分、我々福島の手元に置いて、無償で貸し出す。残りは名古屋の事務所に置いて、それも必要な方に貸し出すということを始めました。
 ですから、まぁ買うと数万円から、シンチレーションになると数十万円になりますから、それはもちろんお金のある方は買ってください。しかし、ずっと長く使うものでもありませんから、今おっしゃったように相対値を測るだけであれば、ガイガーカウンタで十分ですので、是非利用していただきたいと思います。
 じゃあ、次に私の質問ですが、先ほどお話したナタネの問題ですね。
「ナタネがなぜセシウムを吸収するのか、メカニズムが何なのか?」というご質問。
 これは、簡単に言えば、セシウムっていうのは化け学的にいえば、カリウムと同じ仲間なんですね。植物は、窒素・リン酸・カリというようにカリウムが必要な栄養素ですから、カリウムを吸収します。その時にセシウムと区別がつかなくて、セシウムを吸収してしまう。うんと学問的に言うとまたちょっと違うメカニズムもあるんですけども、そういうことが原因で吸収するわけです。
 ということは、一般論で言えば、
『カリウムの高い植物ほどセシウムを吸収しやすい』
ということになります。
 ただ、もう一方の質問でですね、ナスやトマトはなぜ吸収しにくいのか?ということなんですけど、これはとっても興味深いことなんです。トマトに関しては、葉っぱとか茎はものすごい汚染するんです。ところが可食部は、カリウムが高いにも関わらず、極めて汚染が少ない。これは何かメカニズムがはっきりしないんですけれども、可食部っていうことは、種が入ってるわけですね。それを守るためではないかと、文学的に言う人もいるんですけど、メカニズムはよくわかりません。しかし、部位によっても非常に違うということがあるので、これは個別に判断するしかありません。
 ついでに言えば、ナタネは、成長期の真っ最中は均等にセシウムが分布するんですけれども、種が付きはじめると、そのセシウムの6割以上が重量から言えばきわめて少ない種に集中してきます。逆に汚染が極めて高いわけです。
 そんなわけで、なかなか一般論は言いにくいんですけれども、植物全体で言えば、カリウム濃度の高いものほど、汚染しやすいということですね。

(木村氏)食品がらみでいきますと、食品汚染計測の話が出ましたよね。
 これって、まず一つの質問では、「こういうことが現実問題できるのか?」というご質問がありました。
 これは、先ほどここでCラボの方々が発表されてるように、市民レベルでもやっていこうという方々が増えています。そういうところがきちんと全国的につながっていって、一つの情報データベース化すれば、かなりのものが、どこでどういうものが大丈夫かってことがわかってきますよね。そういうことをやっていく必要があると考えています。
 それは当然福島市内でも同じことをやっておられる方が多くあります。そういう方々とうまくやっていく。さらにカリウムを分離できる装置とそうでない装置があります。混在してます。だから、まずは僕はカリウムを含めても、全体的に数値が高いものっていうものをスクリーニングすればいいと。どんどん時間を掛けずに、スクリーニングで高いモノ、怪しいモノだけをきちんと精査していけば、大丈夫か・大丈夫じゃないかっていう判断がつくと思いますので、そういうことが必要だと思います。
 ちなみに家庭レベルで買えるか?っていうと、うーん、無理ですね。ちょっと高いです。少なくともドイツ製で200万、日本製で約500万というふうになってますので、ちょっと車を買う気持ちで買われるという意味では・・・とは言えませんので、ご了承願えればとは思っています。
 じゃあ、先生、どうぞ。

(河田氏)私に来てる質問で、「瓦礫の質問」が結構多いですね。
 今、政府が被災地ではとても瓦礫の処理ができないということで、全国で瓦礫を引き受けるなんていう方針を出してですね、もちろんこれ、汚染してない瓦礫については、引き受ける自治体がたくさんあるわけで、それはそれで結構ですけれども、基本的に私の考えとしては、放射能は拡散させるべきではないというふうに思っています。
 ですから、あくまでも汚染の可能性のある瓦礫については、きちっと測定して、それは現地で処理するということがいいかと思います。
 しかし、現在環境省は、それとはかなり逆方向に向いていると思いますね。これは例えば焼却灰にしてもですね、
『8000ベクレル以下のものは、もうごみ処分場に捨ててもいいんだ』
みたいなこと、言ってるわけですよね。
 これは非常に危険です。
 皆さんの中にもしかしたら、『10万年後の安全』というフィンランドの映画をご覧になった方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうふうに埋め立てた場所が、将来どういう使われ方をするかっていうのは、わからないわけですよ。来年再来年はいいかもしれないですけど、もしかすると10年後はいいかもしれない。しかし、100年後にその土地がどういうふうに利用されているか、これは誰にもわかりません。
 ということはですね、この放射能の問題というのは、非常に長期的に考えなければいけない問題なので、これは拡散すべきではないというふうに思います。
 ということかな。
 あと、どれくらいの範囲で?っていうのがあるんですけど、例えば今、下水処理場の汚泥の汚染に関しては、既に静岡県レベルでも、数千ベクレル出てる段階です。愛知県ではまだそういう数値は出てませんけれども、今後増えていく可能性はあります。
 一般論で言えば、そういうことかな。
 次どうぞ。

(木村氏)じゃぁ、お子さんをお持ちの方々がやっぱりご不安をお持ちだと思いますので、それに関して。
 例えば、「落ち葉で遊んでよいのか?」とかですね。
 それ、正直な話、実は今、測るように始めたばっかりなので、僕もどのくらい落ち葉に濃縮されたり、付着してるのか、判ってないんですよ。だから、(河田)先生、それは大丈夫ですか?

(河田氏)ちょっと、後で言います。落ち葉問題は大問題です。

(木村氏)じゃあ落ち葉問題は、先生に振りまして、東京や柏、名古屋の地域で、お子さんたちにどういうふうな注意をさせるか?っていうと、うーんと、例えばですね、僕がよく言ってるのは、線量が高い地域でホットスポット的なところがありますよね。そこが0.4マイクロだったり0.5、1マイクロを超えるようなところがあって、それをすごく皆さん心配されるんですが、まず一つ言えるのは、そこは通過地点、通学路であったとしても、通過地点ですので、時間と距離の問題で解決できるわけです。かかしじゃないから、ずーっとそこに24時間立つわけじゃないと。だから、時間と距離で制限できるというのも、放射線防護の重要なものなので、そこはちゃんと高いというしるしをつけるというような形で、入っちゃいけないような形にしてしまうと、そうすれば子供は入りたがるもので、遊んでしまうということも言われました。
 でも、やっぱりそれは、お父様・お母様とか、おじいちゃん・おばあちゃんの努力によって「それは危ないよ」ということを言って聞かせれば、子供たちも判ってくれると思ってます。
 ということで、レベルは福島に比べて全然違うというところですかね。
 でも、柏とか高いところあります。今でも増えてるらしいです。
 そういうところは不安だとかそういうのは十分わかりますが、でも「じゃあ何かあるか?」というと、「うーん、そのレベルで微妙だよね」っていう場所なんです。はい。


(河田氏)じゃあ、「落ち葉問題について」、私の考えを述べます。
 実は私、非常にびっくりした例があります。
 私の知り合いで、岩手県の花巻で有機農業をやってる。彼は非常に心配してですね、土壌を測りました。これはキロ当たり100ベクレルあるかないかくらい。
 ところが、肥料を作るために、近くの森の落ち葉を拾って集めて作ろうとした。それで心配になって、念のために調べました。花巻で1キロ当たり4000ベクレルを超えました。
 その後で新聞を見てましたら、東京都の文京区の小学校で花壇の堆肥を作ろうって作ったんですね。そしたら、文京区で1400ベクレルを超えたということです。
 ということはですね、首都圏でさえもそういうレベルということは、もっと福島に近くなる、或いは福島県内であれば、相当の汚染があるはずなんです。
 原因はこういうことです。
 今落ち葉になってくる木の葉っぱというのは、事故当時まだ木についてた葉っぱなんですね。その後で芽を出した木もあるでしょうけど、事故直後くらいに葉っぱがあった木は、強烈なセシウムがくっついたり、或いは吸収したりしてるわけです。これが落ちてくるわけですので、相当なレベルになる。
 ホウレンソウなんかは、非常に汚染が強かった時期がありますが、同じことが実は、落ち葉がこれからそういう状態で身の回りにやってくるということがあります。
 これが今度は粉塵になって舞ってくるというふうになりますので、公園なんかの除染を考えるときには、まずそれを優先したほうがいいんじゃないかというふうに思います。
 落ち葉が高いということは、お茶が高いというのと理由が共通してます。
 洗わない。乾かして濃縮する。プロセスがあるわけですね。
 ですから、落ち葉問題は注視すべきだと思っています。

(木村氏)逆に僕自身が勉強になりました。皆さん、すいません。
 非常に僕もどう答えていいかわからなかった、やっぱり落ち葉、想像されたとおりの結果ですね。
 福島について皆さんがいろいろ真剣に考えてくださるようになったこの機会に、皆さんには本当にコメントをいただきまして、ありがとうございます。一緒にちょっと、非常に私も嬉しく思ってますが、無理に支えるつもりはなくてもいいんです。これは、無理に食品を買うという意味ではなくて、福島でも、福島市民の農家の方々に対して、ちゃんと
「今日は何ベクレルあったか」
っていうのを皆出して売り出そうという試みが、各地で行われております。
 だから、そういうところのものをどんどん出荷して、インターネット販売で、そういうところで協力していただければ、彼らも非常に助かるんじゃないかなと思いますし、『安全なものは一杯あるんだよ』ということを少しでも皆さん、周りにそういう話をしていただく、
「こういうことを先生方言ってたよ」
というような話でもいいです。これが、伝搬していくと良い幸せの連鎖反応が続くと思っております。

(河田氏)あとはですね、質問の多くは、原発の政策に関する質問です。
 この方は、「自分は直ちに廃炉にすべきだと思うんだけれども、先日原研労働の方ですね、『安全な原発を作ればいいじゃないか』とおっしゃった。どう思いますか?」
ということなんですけれども、私は基本的には、原発は行き詰まると思っています。
 なぜかというと、原発は燃料がウランですね。ウランの寿命は、今の使い方すれば、60年です。これはもう無くなってしまうんです。そして、残るのは膨大な量の放射性物質なんですね。燃やせば燃やすほど大量になってしまう。それは、さっきもちょっと言ったんですが、10万年後まで安全に管理しなければいけないということになるわけで、これはつい最近1970年に日本で初めて商業用原発が、大阪万博の時に始めた時から、
「廃棄物はどうするんだ?」
という議題があったわけですが、
「いずれ何とかなる」
って言ってきたんです。それから、
「高速増殖炉で燃料を増やすことが出来るんだ」
と言ってきたんです。これも、頓挫というか、コレ事実上不可能なんです。
 そういうことがあって、仮に原発は安全なものが出来たとしても、廃棄物問題は解決できないわけです。
 ですから、我々の子孫のことを考えれば、やはり廃止すべきだというふうに考えます。

(木村氏)私も同感です。
 どう考えても、科学的に制御可能であるかも含めて不可能ですし、他の産業廃棄物だったら、化学分解なりできますが、今現在の核のごみというものを解決する方法というのは、本質的に解決する方法っていうのは無いんですよね。だから、そういうごみを増やすこと自身が、後世の自分たちの子々孫々までツケを回すというのは、僕も無い方がいいと思ってます。

(河田氏)それからですね、「野田首相が『ストレステストをやって再稼働するんだ』と言ってますけども、大丈夫でしょうか?」っていう質問が来てますが、いかがでしょうか?

(木村氏)僕は正直に言って、それ自身が、その話を聞くだけでストレスになりますが・・・
<会場笑い>
 もうストレステストは不可能です。こんなもん、人間が制御できるものであったら、そもそも事故なんて起こるわけないじゃないですか。だって飛行機事故にしてもなんでも、エレベーターの事故だって、あんな・・・、まぁ飛行機の事故は別にしても、あんな単純なものでさえ、落ちるときは落ちるんですよ?だから、そういう・・・、何ていうのかな?
『人間の技術が全て』っていう考え方ではなくて、『起きるかもしれない』というリスクを考えていくっていうのが、これからの生き方だと思います。

(河田氏)僕はですね、ストレステストはもう一つ問題があるんですね。
 現物で試験するわけじゃないんです。原発に力を加えて壊れるか?とかやるんじゃなくて、コンピュータ上で試験するわけですね。だからそれが本当に???になるか?という、問題なんですね。
 もう一つは枝野さんだったと思うんですが、
「ストレステストは再稼働するかどうかの判断材料にはしない」
と言ったんです。皆さん、新聞を見られた方は覚えてらっしゃると思いますが、じゃあ何のためにやるか、判りますか?
「ストレステストをやって、大丈夫だったよ」
っていう宣伝をして、再稼働するという、そういう政策が見え見えなんですね。だから、これは全くダメです。

(木村氏)続いて、もし、もし僕の提案ですよ、これは。
 あの、実際に原発問題っていうのは、今後ずっと考えていかなければいけないし、きちんと早くやる、やっていく考え方というのは、僕は正しいと思うし、自分自身、実は思ってるんですが、今の事故のものと原発問題っていうのは別個に考えるべきだと思ってるんですよね。まずは原発の事故収束とか、対応、健康状況っていうものをきちっと考えて、食の安全性も含めてやっていく、これが最優先課題であって、それが落ち着いてからきちっと考えていくっていうのが、僕が筋道だと思っているので、あまり実はこういうことを言ったのは初めてなんです。

(河田氏)同じようなご質問で、「今政府は『冷温停止状態にすればなんとかなる』と言ってるんですが、それは可能なのか?」という質問。
 これは、正直わかりません。今でも1時間20トンの水を注入しています。そうしないと、100℃以下に保てない状態なんですね。これを水を注入しなくても100℃以下になるというのが冷温停止なんですけども、年内にできるかどうかは、中で何が起こってるか次第なんですね。
 仮に小さなレベルでも臨界状態が起こってれば、これはできないわけですね。臨界状態が起こってるかどうかっていうのが、いろんな観測でわかるわけですけれども、必ずしも今、きちっと測定されてるわけじゃないので、「可能でしょうか?」と聞かれても「わかりません」と答えるしかないですね。もう少し様子を見る必要があると思います。

(木村氏)それについて、ちょっとキセノンについて。
 事故当時も含めて、今回の自発核分裂で出てくるっていうこととか、臨界で出てくるキセノンとかっていうのは、確かにこれ、指標になりますが、事故当時キセノンが出ていても、当たり前なんです。だって、核分裂反応をずーっとしてたわけですから、お釜の中に溜まってるキセノンの量って、ものすごい量なんですよ。それが壊れてドーンと出てきちゃった、大量放出、ベント解放してしまってるわけですから、そこから出ているもののキセノンというのは、「これはメルトダウンが示された証拠だ」というふうに言われる方もいるんですが、そうではなくて、核分裂反応で出てくるわけですから、これは見分けがつかないわけです。だから、なんでキセノンに皆さん研究者が気づかなかったかというと、
「それは当たり前に出てから、それが出てても当たり前」
というふうにしか考えられない。しかもエネルギー的には非常に低いところにあると、人体に影響が出にくいレベルのエネルギー体に放出するエネルギーが出てるので、それであまり気にしてなかったというところが、正直なところです。

(河田氏)似たような質問で、要するに「事故隠しなんじゃないか。メルトダウンを発表したのも5月になってから。問題は事故直後の状況が問題じゃないか?」とおっしゃってるんですね。「その事故隠しによって、その期間判らなかった、その期間の被曝はどうなんだ?」っていうご質問なんですけど。

(木村氏)はい。うーんっと、一番は、メルトダウンどうこうよりも、ヨウ素でしょうね。

(河田氏)そうでしょうね。

(木村氏)このヨウ素をどうにか痕跡でも追って、もちろん土壌中とかそういうのは、ものすごいサンプル数を採ってますから、その土壌中から「えいやー」っと計算することは可能なんですが、土中と空気中に漂ってる量は、どういう割合になってるかは出てこないんですよ。だから、その「えいやー」で出せるところにもまだいってないので、実はそこは頭を悩ませてる最中なんですが、何とか答えを今年中には出したいと思っています。

(河田氏)そうですね。私がたまたま二本松に市役所が設定した18日以降ですね、測定値がありますよね。あれのシミュレーションをやって、事故直後くらいまで延ばしてやったんですが、今はだいたい1.7とかマイクロシーベルトくらいですかね?

(木村氏)そうです、そうです。

(河田氏)事故直後は12マイクロシーベルトくらいなんです。それで、その減り方を見ると、大体半減期からヨウ素131が推定できます。

(木村氏)ほうー、あー、そうですか。

(河田氏)はい。大体そういうグラフが作ったんですけども。

(木村氏)それ、使えるかもしれませんね。

(河田氏)ですね。ただ、各地で測定した時間経過っていうのを??すれば、今のところからみてどの程度被曝してるかは、推定は付くと思います。

(木村氏)はい。あー、それ、使えるかもしれませんので、ちょっと、これは私の友達の長崎大学の高辻先生とか、広島大学の遠藤先生とかそういう友達、あと今中さんも含めて、ちょっと議論していきたいと思います。

(河田氏)そうですね。

(木村氏)あとは、「名古屋の水飲んでもいいですか?」
<会場笑い>
 どうぞ飲んでください。福島でも今は大丈夫だと一応お答えしてます。「牛乳も?」と書いてありますが、牛乳も多分大丈夫だと思います。
 福島の牛乳はどうかな?というのはありますが、あまり・・・、こういうこと言っちゃうのはどうかなと思うんですが、聞いた話ですよ、あくまでも聞いた話として聞いてください。私が言った話ではない。
 あの、牛乳にしてもお米にしても、汚染した奴をクリーンなとこの奴と混ぜてしまうという・・・

(河田氏)牛乳は実際にやっております。

(木村氏)やってるんですよね。
 だから、それから言うと、ある程度汚染されているものでも、かなり薄まってますから、飲んでもいい。
<会場笑い>
 逆説的にですよ?でも、そういうことかな?と思っています。
 あと、5mSvのお話ですが、実は「5mSv、なぜそういうふうに指定したか?」というご質問がありました。これは実際に、生涯の日本人でいうと、大体100mSv、100歳まで計算して、1年間あたり、100歳まで生きたとしたら、100÷100=1mSvというような概念で言っているというふうに聞いております。
 5mSvした話っていうのは、実はこれチェルノブイリでも、僕でも、大体その低線量の被曝、長期被曝をした場合、外部被曝線量で計算すると、大体リスクは3分の1くらいに下がるだろうと。これは、アメリカアカデミーのBEIRっていうところの報告書でも3分の1程度、ICRPでも2分の1程度というふうに言われてますが、BEIRのほうがより正確だろうと思ったんですけれども、そこから言うと、大体3倍程度、300ミリシーベルト、これは生涯で当たるという計算をした。やって、5mSv。これは実際に5mSv生きている方々の地域、世界の地域でも、影響が出てるのはほとんどないわけなんですよ。
 ということで、10mSv/年間、これもキツイかなとは思いますけど、「5mSvなら行けるのではないか?」というふうに、僕の経験的な感覚ですが言ってます。
 でも、本当に正直な話を言うと、これも『我慢レベル』です。
 本当に厳密にいうと、僕はやっぱり妊娠されてる方々だとか、新生児の方々は、やっぱり1mSvっていうのは言いたいですね。
 言いたいけれども、それはさっき言ったようなそこに住む方々の、なんていうんですかね・・・、その彼らの気持ちとの話し合いになっていて、ちょっと言いづらいところがあるんですが、正直なところは、1mSvです。

(木村氏) 
 どんどんやりましょうか。
 ストロンチウム、ベータ放出核種なんですが、これは測定が難しい。もちろん化学分離するのが非常に難しい。僕はチェルノブイリの土壌を、実は化学分離してやったことがありますが、やはり、その調整から測定まで2週間近くかかるんです。だからそれを、しかも精度よくやるためには、2週間くらいかかってしまったんですが、これをどんどん、実は福島県も測っていると言ってるけれども、測定レベル、その水準がどこまでなのか?っていうのは、すごく懐疑的です。これは放射化学をやっている専門家の先生たちも、
「かなり難しい」
と言ってますので、化学分離ができない、しにくいんですが、それを含めて??に言いますと、驚くほどのレベルではない、非常に低いレベルというふうには見てます。
 ただ、これもできれば事故1年経つ前にある程度のものを自分でも実験してみて、データを出してみたいと思います。そうじゃないと、僕も何もコメントが言えないと思っています。
 あとは、「市民科学者養成講座」の話なんですが、これは河田先生のところでもやられてるみたいですね?

(河田氏)東海の時も大沼さんが自身でやられてますので・・・

(木村氏)これは嬉しい、すごく嬉しいです。

(河田氏)これからどんどんね、周りの人たちのレベルを上げていって、そのことが自分たちの安全を守るということになると思います。

(木村氏)そうなんですよ。僕も全く同じ考えで、できたら人材交流で講師を途中で入れ替えて、僕と先生が入れ替わるとかですね、そういうことでできればお互いにね、福島と東海地方を交流していくということで、これが福島の方々の声というものを伝えていく、もちろん僕も河田先生もずっと入っていますから、そこの声も当然聞いていますから、そういう声を伝えていく。
 なかなかね、福島県の方々に「交流しよう。人材交流、人事交流しましょう」とか言っても、彼ら口が重いので、なかなか口を割りません。なので、僕らがかえって代弁していく方がいいのかなと思っています。
 あとは、「避難の目安」。
 これも確かに、避難したくないという人と、したいけどできないという人、確かに分けてほしいと、これはそう思います。
 ただ、分け・・・、そういう人、1人1人に避難できるというような背中を押してあげるようなことが出来るように、それは地方自治体がやるべきなのか、国レベルでやるべきなのか、これも考えていかないといけないと思うんです。
 っていうのは、国というのは実はすごく考えています。考えているんだけど、ナリが大きいので動けない。それを集約させて徹底するまで時間がかかってしまう。だからこそ、地方自治体が「えいやー」で決めてしまうっていうのは、非常にいいと思います。
 ただ、福島県がやってる場合、また福島県内での地方自治体、組長さんの、組長さんっていうのは市長さんとか町長さんですが、その人たちの考え方によって随分差があるんです。それによって、例えば原子力推進側にいってる方々もいらっしゃいまして、そこの地域の方々というのは、大変苦労なさっています。
 そういうことを含めれば、できれば国がやってほしい。
 しかも、これはどこの省庁が横断的にやってしまって、「えいやー」で出してしまおう。「行きたい人はこの指とまれ」でいいと思うんです。そういう形をして、ただそこまでしたら職の補償までできるか?っていういろんな問題もあるので、それはね、旧ソ連であれば大丈夫なんですが、これは日本の社会、資本主義の世の中でそこまで全てケアできるか?というところで、非常に問題になっている。
 しかも、「じゃあお父さんだけ残って」って言って、それが離婚問題に発展したりとかですね、様々な問題になってくるんですよ。実際にやっぱりいろいろ聞かれます。
 私事でも、やはり家族との差が、格差が出てきまして、かなり危ない状況であります。
<会場苦笑>
 このフォローが本当に怖いです。本当にどうしようかと思うんですが、でも待ってる方々、山ほどいるんですよ。ここに居る皆さん、来たいときに来ていただいたのと一緒で、その方々のことを考えると、やっぱりこうやって来ちゃうというので、
「今、もうちょっと我慢して。本当になんとかするから。」
というふうに、実は手を合わせて、家族に拝んでます。
<会場笑い>

(河田氏)次に、ちょっと・・・、何というか・・・言いにくいんですけれども、福島大学の、副学長の・・・

(木村氏)福島医科大・・・

(河田氏)「医科大のですね、山下教授がですね、あちこちで『100mSvでも大丈夫』と言っているようですが、本当でしょうか?それは信用していいでしょうか?」
という質問が来ていますが、どうでしょうか?

(木村氏)これは、
「実際100mSv大丈夫だと、私じゃなくて『国が言え』と言ってます」
と、実は言ってるところがあるんですね。記録が残ってるんですねー。
「お上が言ってることに従うのが、国民の義務だ」
というふうに言ってるんです。
 っていうことは、山下さん自身は、実は『100mSv危ない』って言ってる人だったんですよ。だから、彼はバカじゃないです。判ってると思います。ただ、何のために・・・国に全てをささげる必要があるのか?
 それが、「国なんか関係ないよ。あるのは市民の命だよ」というところに立つかの、立ち位置の違いだと、僕は思っています。

(河田氏)あと、じゃあ、ついでに申しますと、もちろん100mSvで安全だということはないわけです。
 なぜそうやって100mSvという話が出てくるかというと、どうしてもやっぱり広島・長崎の外部被曝を中心とした線量評価からきてると思うんですね。内部被曝というのは非常に軽視されてるわけです。ICRPとかにですね。同じシーベルトを受けても、どれだけのガンが発生するのか?とかというのも、専門家によってマチマチですよね。10倍以上違うということがあるんです。
 それから、もう一つですね、内部被曝、身体の中のセシウムの量をシーベルトで表すと、ものすごい小っちゃくなるんですね。数千ベクレルあっても、何マイクロシーベルトになっちゃうわけですね。そういうことがあって、私自身は内部被曝問題をいう時には、シーベルトだけで議論するのは良くないんじゃないかと思っています。
 何故こういうふうになったかといいますと、実はこれ、歴史的な背景があるわけです。内部被曝を過小評価する・・・。
 ご承知の方も居るかもしれませんけれども、1959年にIAEA=国際原子力機関、つまり原子力を使えるように勧める機関と、WHO、国連の世界保健機構とが契約を結びました。
『放射能に関わる病気に関しては、双方の合意が無ければ、勝手に発表してはいけない』
という契約を結んだわけです。
 なぜそうなったかは、まだ判らないんですけれども、その結果、チェルノブイリの事故の後の被曝評価の国際会議があるたびに、その問題が出てくるんですけれども、全部IAEAのいちゃもんというか、ストップがかかって、正確な発表が出来ない、評価の議論ができないということが、ずっとあるわけです。
 これ、非常に難しい、政治的な問題でもあるので、簡単にはいかないと思うんですけども、内部被曝の評価というのは、チェルノブイリで散々出てきたわけですから、今、我々が内部被曝をきちっと評価しなければ、またチェルノブイリの二の舞になってしまうと、僕は思うんですね。
 だから、何とかしてチェルノブイリにおける内部被曝を出発点にして、それ以上の被曝が起こらないというふうにするのが、我々の仕事じゃないかなと思います。

(木村氏)僕も全く同感で、今、『福島県立医大を中心として3500億円の予算をつけて、これから30年間見ていきます』というようなお話をされていますが、それはきちんと追跡調査をすることによって、異常が出たら対応するということなんですが、それは、受け手、『待ち』の構えなんです。
 そうじゃなくて、不幸にして25年前に事故があった、その地域のデータをきちんと解析することによって、『待ち』じゃなくて、こっちから『攻め』の体制で対応する、これが進んだ予防医学の仕方ではないか、立ち位置ではないかと、私自身は思っています。
 だから、今回でも文科省の政務三役、今度の15日に内閣府の官房から呼ばれたので、そちらでも言おうと思ってるのですが、きちんとしたデータ、しかも金で買ったようなデータですね、ただデータだけを持ってきて、そのデータだけを見ていくんではなくて、私はやっぱり聞き取り調査。現場で聞き取りをしながら、きちんと評価をしていく。しかもさらに、外部被曝調査を合わせまして、実は岡野先生の測定器を持って、実は今回から行くようになりました。データを採ってきてます。
 これは、件数は少ないんですが、ただ得られるデータの価値というのは、ただの紙切れよりかは遥かに高いですよ。これを100人集めれば、数学的な計算式でいえば、かなり有意なものが出せるというのが、実は理論物理学の私の師匠である原子核理論をやってる先生なんですが、その先生が答えを出してくれました。
 そういうことで、100人とは言わず、できたら1000人くらい頑張ればやっていける、それくらいできれば、もしかしたら『攻め』の姿勢でもっともっと内部被曝の低減化というか、影響が出そうな人を先にスクリーニングできるんじゃないかというふうに考えております。

(河田氏)これはですね、「木村さんにお願い」って書いてあるんですけど、「妹さんが福島に居て、もうじき赤ちゃんが生まれる。それで内部被曝の測定を二本松で行うというようなので、是非福島に来て、お話していただけませんか?」というご注文ですけども?

(木村氏)はいはい。実は福島も何度かやってるんです。福島市内には今度23日に子供さん対象の勉強会、教育をやる予定で、小学校3年生以上の方々を集めて、『キュリー学園初等科』という名前を付けまして・・・
<会場笑い>

(河田氏)日にちは判ってますか?

(木村氏)23日の午後1時から3時まで。大体お母さんの買い物の時間が3時なので、3時がタイムリミットなんですね。それは実地を合わせて、線量計20台くらい集めて、「一緒に測っていこうよ」っていうような形で、放射線を知るということをやります。

(河田氏)福島にお知り合いの方がいらしたら、是非知らせてあげてください。

(木村氏)あ、これはプロジェクト福島さん、今度NPOを建てようとされてるんですが、プロジェクト福島さんが主催者で、ホームページ上で多分出てると思います。見てください。

(河田氏)それから、「除染した表土とか汚染したものを隔離して保管する必要があると思うんですけども、その最終的な処分はどうしたらいいでしょうか?」という質問です。

(木村氏)それは、国に対しても全部同じことを言ってるんですが、間違いなく『第一原発』でしょ?あの敷地ですよね。
<会場笑い>
 あんなもの、仮処分する必要ないです。そこにバンバン入れてください。ただ、一番気になるのは、これちょっと脱線しながら話してもいいですか?
 チェルノブイリの汚染地域、ナロジチ地区の皆さんは、彼らは『森の民』なんです。森に依存した生活をしてるんです。ところが、日本というのは、森にはそれほど依存はしてません。だから、これほどの内部被曝は出ないかもしれないと、実は考えています。
 ところが、日本人の一番は、『海の民』なんです。
 ・・・海洋汚染がどのくらいか。
 これ、漏れ続けてるわけですから。しかも、これは核燃料物質まで漏れてるんですよね。
 僕は・・・勘ですよ?あくまでも勘ですけれども、大気中に放出されたのは、チェルノブイリの10分の1程度だといっていますが、僕は海洋分を入れたら、実はチェルノブイリの半分くらいのレベルの事故だと思っています。
 ということで、『海の民』の我々の海洋汚染っていうのは、これから出てくるんじゃないかっていうので、やっぱり海のもの。ただ怖がるんじゃなくて、今僕の友達も含めて、食品測定器、ベルトコンベア式の。それを開発してる友達もいますので、そういうところで水際作戦をやれば、食の安全を確保できると思うし、大好きなお魚が食べられると思ってるんですけど、そういうところを含めて考えています。

(河田氏)あと、これ木村さんにですね。「チェルノブイリのデータを取ってらっしゃるようですけれども、自然界にばら撒かれた物質が、どこへどのように移動してるのか?森とか川とか土壌とか地下水とか野生動物とか。どうなってるんでしょうか?」ということなんですけど。

(木村氏)これは、私自身よりも現地の研究者の方が、遥かに彼らは事細かく調べています。河田先生のところと、私のところと、やっぱり共同の共通研究者である????・リロさん、リロさんは詳しいデータを持ってまして、彼らの実は協力のもとにデータを出して、さらに彼らのデータの信頼性がどのくらいかということで、我々は何点かとってそれと比較をしていくということを進めていた矢先に、実は事故が起こっちゃって、そっちのほうの分析が今ちょっと滞ってるんです。
 というところもありますが、何とか早めにやっていきたいと考えております。

(河田氏)それから、「汚染の基準」ですね。私も先ほどお見せしたんですが、「ウクライナの基準と暫定基準、これが違いすぎる、どうなんだ?」ということですけど。

(木村氏)あー、そうですね。彼らもすごい試行錯誤してて、事故直後には、実は日本の基準値のレベルの比ではなくて、『2000ベクレル以下は食べていい』というような基準値を出してたんですよ。それを事故後10年間の間に何回も何回も改めて、最終的にAN97といいう形、もう一つ、もう一段階、最近2003年くらいから入れましたね。
 そういうふうにして基準値を改定していってます。
 だから、日本がやっていることっていうのは、
「もともとそれが判ってるんだったら、最初からやりなさい。なんでそれをやらなかったのか?」
っていうところは、はっきり問題として言っております。
 それは実際に食べる量、例えば、日本人はご飯が主食ですから、ご飯をたくさん食べるんだったら、その分だけ被曝線量の低い、ベクレル数の低いモノを食べましょうとか、蓄積する量を考えて、1年間で1mSvにならないように基準値を決めているというふうになっています。
 日本もそうやってやるべきというふうには聞いております。

(河田氏)今の暫定基準値にはICRPの勧告をベースにしているので、これはさっき言ったように、内部被曝の評価が非常に低いということから出発してる。
 チェルノブイリの経験から、このままいけば内部被曝の影響が大きいということが判ってるわけですから、チェルノブイリをベースにして、そこから我々は出発する。そうすることで、我々は内部被曝の被害を減らすことができるんじゃないかというふうに思いますので、早急にこの暫定基準というものは、変えていただきたいというふうに思います。

(木村氏)僕から一ついいですか?これ非常にいい話だったんで。
「除染活動のボランティアに応募したいと考えています。被曝を防ぐための注意点を教えてください」ということなんですが。
 被曝の前にもう一つ。
 信頼のおける方の除染方法というのが、やっぱりあるんです。
 世に言う「機械を使わないとどうしようもない」とか「特殊な機械を使わないといけない」とかいうのではなくて、きちんとやり方っていうのがあって、そういうことを理解してる方のところに行かなければ、『ただやみくもにボランティア』というのが出てきます。そこの問題をきちんと考えて。
 例えば、こちらであったら、今これを開催されている方々、河田先生を含めて相談をすれば、適切なアドバイスを受けていただけると思います。
 放射線防護については、基本的には粉塵が舞い上がって、それを吸入しない程度。だから、今だったら花粉症のマスクで十分。後は手袋をきちんとやる。手袋をしてもどうせ汚れるんだから、きちんと洗う。家に帰ったら、即、頭からつま先まで、全身綺麗にシャワーを浴びるということで、十分に対応できます。それほど恐れることはありません。

(河田氏)と、私も思います。

(木村氏)ありがとうございます。非常に嬉しい。

(河田氏)それからですね、「今のNPO等の調べた調査と国の発表があまりにも違いすぎる。どう考えたらいいんですか?」という質問。

(木村氏)チェルノブイリの?

(河田氏)汚染地域の被曝線量の評価ですね。

(木村氏)はいはい。うーんと、これは正直言って、そのまとめてるところが、僕、その、なぜSPEEDIが使われなかったかも含めてちょっとお話したいんですが、実は、これは『市民がパニックにならないため』というのが、まず一つだったんですが、これは、市民がパニックにはならないんです。
 っていうのは、命が懸った時に必死になったときに、皆我先にというよりは、以外にここで日本の真面目さ・日本人の国民性というのが出てしまって、きちんと言ったことは従うんですね。だから、パニックにはなりにくいんです。
 それよりも、パニックになったのは『官邸』です。『首相官邸』です。
<会場笑い>
 彼らが・・・(河田氏に)本当なんですよ。
 彼らがパニックになったからこそ、こんなバカなことになってしまったんだと思ってます。
 官僚自身は、そこまでの決定権がありません。だから、彼らも指示が出ない限り、指示が出ないんだけど、自分たちで想像出来うる限りのことをしようとしたんですが、彼らも指示がとんちんかんなことが出てしまったときに、それに対して「NO」と言えなかった。これが、官僚の、役人の悲しさで、「NO」と言ったら本当にやめなくちゃいけなくなりますから、これも辛いとこなんですが、そういうところが含まれてるんだと思います。

(河田氏)ちょっと引き続きこういう質問が来てます。「お二人に」ときてます。
「なぜそんなに頑張れるんですか?」
<一同笑い>
 なぜですか?

(木村氏)これは、放射線衛生学でずっと飯を食ってきた、言葉は汚いですが、そういう人間で、国民の税金を使って研究をさせてもらってるわけじゃないですか。それをこういうときになぜ還元できないのか?と。このために僕は研究してきたわけなんですよね。
 だから、これをきちんとやらなくて、「論文が大切だ」とか、ワケわからんことを言ってる人たちが一杯居るんですよ。
「論文の前に人の命考えろよ!」
と、僕はよく言うんですが、そういうところっていうのが、まず研究者の大きな間違いじゃないかと僕は考えていますが、先生はどうでしょうか?

(河田氏)そうですね。やっぱ二つ思いつくんですね。
 一つは、放射能っていうのはなかなか目に見えない。感覚できない。しかし、実際に取り扱った経験があれば、非常に判りやすいんですね。どれくらい怖いか、どれくらい被曝するか、わかりやすいんですね。
 これは、さっきの測定器で測るだけでも・・・

(木村氏)全然違いますね。

(河田氏)違いますね。数字で例えば「0.5マイクロシーベルト」って聞いても、これは数字ではそうなんですけど、これは測定器で実際にはかると、ピピピっとなりますよね。随分感覚的に違うんです。
 これも余談ですが、慣れてくると「これは大体0.8かな?」って耳カウンタなんていうんですけど、それが可能になります。そうすることで危険度、教科書に書いてある危険度と、実際の自分の感覚とが近くなるんですね。
 私はもともと遺伝子の研究者だったんですけど、今と違って、昔は遺伝子の研究は放射能を扱うしかなかったんです。日々放射能を扱う。そういう中で放射能が身近になったということが、一つあります。
 二つ目は、これはちょっと恥ずかしくて言いにくいんですけども、サイエンスっていうのは、個人的な価値を求める学問だと思ってるんです。つまり、『万人のために役に立つ学問でなければならない』ということです。
 最近の傾向として、特許なんかを通じて、非常に特定の企業とか特定の集団に研究の成果が流れてしまうということがあるんですね。
「それはけしからん」
というふうに昔から思っているので、そういう、対抗心もあるわけです。
 以上です。
<会場、拍手>

(木村氏)僕も追加で一つ。
 やっぱり『業績至上主義』、業績でしか判断できないように研究者を作ってしまった人たちが居るんですよね。
 それで論文を書かないと出世ができない。
 僕は出世が欲しいと思わなかったから、実は獨協医科大にも
「助手にしてください」
って言ったら、
「バカか?」
と叱られたので・・・、っていうのがあったんですよ。
 本当はそういうところじゃなくて、自由に研究というか調査をして、それをいち早く皆さんに公開していくというのが一番大切だと思っています。
 それは趣味でやるものではない。ある部分で使命を持つべきではないか?
 それはいろんな部分の、理論物理学者だとしても、それは何かしらの貢献義務は必ず出てきます。そういうような、数学者でもそうです。そういうところを含めて、何かしら貢献ができるようなことをやはり考える。研究者である前に、人間としての真っ当な考え方じゃないかなと、僕は思っております。
 だから、そういう意味では河田先生と僕は、非常に感覚が似てますよね。
 もうびっくりしちゃった<笑>

(河田氏)あとですね、「福島から遠くに避難する人が、今非国民扱いになっている。それについて納得がいかないけれども、こういう現状をどうしたらいいでしょうか?」っていうご質問です。

(木村氏)これは僕、得意ですね。

(河田氏)どうぞ。
<会場笑い>

(木村氏)これ、これね、福島では、『避難する』って言わないんです。『逃げる』っていうんです。
 だから、『逃げる』という言葉を使ってしまうと、『逃げにくくなる』んですよ。それも、彼らは福島県民に対して言わないといけない。それを使うべきだと思ってもならないと思うんです。
 ただ、それは『避難ができる余力のある方々』が多いわけですね。
 『余力が無い方々』についてはどうするか?
 これこそ、国民の皆様の支援が必要になってくるんじゃないかと僕は思ってます。
 それは受け入れ先にしても、金銭的な支援にしても、やはりそういうところで広く門戸を開いてあげないといけないんじゃないかと思ってます。
 だから、避難できる・できないっていうこと、これは、
「できれば、行きたい人は行ってください。」
 これは僕の望みです。
 よろしいでしょうか。

(河田氏)あとは、東京都内にお孫さんがいらっしゃる、お母さんかな。「野菜も魚も怖くて食べられない。いつも名古屋から送っている。そういう問題について、どうしたらいいでしょうか?」
(木村氏)これ、ちょうど言いたくて忘れてた。ド忘れしてたんですけど、実は、3月30日の時点で、実は広島まで放射能雲が到達してます。4月13日では、長崎県まで到達してます。集まったその塵の量を、これはちょっとあれなんですが、キログラムあたりに換算した時の汚染レベルというのは、実は飯舘村クラスなんですよ。そのくらいの汚染が、実は広く、薄く汚染をしてるんです。
 実は、この名古屋だって同じことなんです。
 北海道だって一緒なんです。
 3日後には、実は対岸の西海岸、アメリカの西海岸まで放射能が到達しております。
 そういうことを考えた場合、これは『他人事ではない』わけです。
 かといって、これを心配するかというと、雨もふってなければ、ただ風が通過して行ってるだけです。
 たまたま東京なんかで雨が降ったりして、ホットスポット的な部分が出てきましたが、ホットスポットエリアができましたが、距離を置くごとにそれほど大きくはない、ただし、森林汚染は、意外に馬鹿にならないくらいあるんじゃないかと考えてますので、だから、五山の送り火にしても、あの岐阜県の花火の問題にしても、あれを議論する前に、
「実は汚染されてきたんだ。自分たちは少なくとも放射能雲が通過しているときに、自分たちは生きてたんだ。存在してたんだ」
ということを認識してください。
 そういう意味では、東京にいようが名古屋にいようが、食べ物をそれほど気にする必要はないです。
 ただ、その中に確率論的に言えばゼロではないというふうに言うしかないんですが、今は汚染の高いものが入るかもしれないけども、それが影響が出てくるかどうかっていうのは、やはり水際作戦をとるしかないでしょうね。
 というふうに思います。

(河田氏)次も似たような質問です。「セシウムは問題になってますけど、プルトニウムも問題ではないんですか?なぜ問題にならないんですか?」というご質問。

(木村氏)プルトニウム自身は飛んでます。確かに50㎞先でも確かに飛んでると。僕が調べたデータでどんなに調べても出てこなかったっていうのは、実は3月15日の爆発直後に僕は入ってますから、3月15日から調査してるということで、メルトダウンに至る前に調査をしちゃったということで、出てこなかったんですよ。
 ただし、その検出の中に、プルトニウムと非常に近い、メルトダウンでしか出てこない???、融解温度、揮発性温度が3000℃くらいのもの。そういうものが出てきてたんで、それは確かに「もしかしたら?」という懸念はありました。ただそれが確証できるほどのことではなかったんですが、ただ非常に薄いです。チェルノブイリと違って、大爆発を起こしたんじゃないので、プルトニウムについては、多分問題ないでしょうと思います。

(河田氏)さっきも話しましたけど、出てる量がとにかく少ないんですね。「出てないか?」っていえば出てる。
 大熊町の土壌調査なんかですと、やっぱり数ベクレルでております。
 30㎞、40㎞にもなれば、実際上問題になるレベルではないと私も考えております。
 それから、次はですね、「どうも日本は25年前のチェルノブイリ事故が結局教訓として生きてない。日本人にとって、何が足りなかったんですか?」というご質問。どうお考えですか?

(木村氏)答えていいですか?答えたいな~。
<会場笑い>
 これ、教訓。
 『チェルノブイリのような事故は、日本では起きない』と原子力安全神話を作ってきた国や官僚たち、それを支援するような関係者の方々。これが大きな間違いだったと思います。
 これは、『科学は万能ではない』と先ほどから河田先生と私、言ってますよね。
 だから、『起きるかもしれない』という研究をきちんとやっていけば、チェルノブイリの教訓というのはできたはずです。
 もちろん、いつでも聞いてもらえるような体制を私もとってましたが、反応してくれませんでした。もちろん第一人者の京大の今中さんでさえ、お呼びがかからないというようなことですから、彼らにそんな知恵はなかった、思いつこうともしてなかったんじゃないかと思います。
 で、ようやく今行ってますよね。
 行って、たった一回行って、専門家面してきますから、これ、絶対みておいてください。もうあたかも全てを見てきたかのように言いますから。
<会場笑い>
 そんなんだったら、河田先生にしても僕にしても、何十回も行って。僕でいったら15回行ってる。15回も通う必要ありません。1回で済むなら。
 というのが、僕らの答えでしょうかね。

(河田氏)そうですね。よくそういう人が居るんです。
 1回行って、なんか「わかった」っておっしゃる科学者、『観光学者』っていうんですかね。
<一同笑い>

(木村氏)だけど本当に一つの提案で、その国が言ってるのがすべてかというと、彼ら結構ね、そのレベルでいったら、雑なところも結構あるので、「ほんまかいな?」というのがかなり含まれてますよね。だからそれをきちんと精査するのが、我々のきちんとした学者としての立ち位置じゃないかなと思ってます。

(河田氏)あとですね、「除染が大事だというふうに言うんだけども、『限定的』じゃないかと思うがどうでしょうか?」

(木村氏)そうです。限定的です。
 ただ、限定的でも、やらないと進まないです。

(河田氏)そうですね。

(木村氏)だから、やって少しでも下げていく。これが安全・安心につなげていくんじゃないかと思ってます。
 だから、諦めてはいけないけれども、国が言うような、神話のような話はありません。

(河田氏)できません。

(木村氏)できません。
 宇宙戦艦ヤマトでイスカンダルまで行かないとできないくらいです。
<会場笑い>
 いや、これ本当なんですよ?
 ニードルさんに言われたんです。
「お前ら日本人は、放射能除去装置を作ったのか?」
日本の食品の基準値を見せた時に言われたんです。
「え?どうして?」
って聞いたら、
「これ、じゃないと、当然我々は怖くて食べられない」
と。これが現実なんですよ。
 我々にそんなことはできません。

(河田氏)<うなづいて>そうですね。

(木村氏)じゃ、最後。「今後私たちの心電図、子供たちの心電図の調査をする予定はありますか?」というご質問。
 心電図ですか。
 うーんとね、これはある程度、内部被曝が進んでいるような地域、これは福島ではホールボディーカウンタで線量がある程度高い人については、実施しようかと考えています。
 「ウクライナでの血管心臓組織、細胞レベルの病原はみられたことありますか?」とありますが、あります。
 一応当然それも、懐疑的に見てます。懐疑的に見ながら、それが真実かどうかっていうのを私自身が判断している。彼らが言ってることを鵜呑みにはしない。これはあくまでも研究者としての立ち位置だと考えてます。

(河田氏)まぁちょうどいい時間になりました。本当に今日は長時間ありがとうございました。

(木村氏)とんでもありません。
<会場拍手>
 皆さん、こうやって、このオーディエンスの方々が、非常に一生懸命なのが伝わってきたので、僕は来た甲斐が本当にありました。
 この場を借りて、本当に皆さん、どうもありがとうございました。皆さんの気持ちというのは伝わりましたので、是非ともまたやりたいと思います。
 今後ともご支援よろしくお願いします。
<再び拍手>
関連記事

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (175)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

02 | 2012/03 | 04
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

Template by たけやん