通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ
2012-02-06
現代の通貨はペーパーマネーであるから共通通貨は単一の金融政策と同義である。リーマン・ショックを契機にそれと各国財政の矛盾が吹き出したのがユーロの危機である。
ソフトランディングさせるには、ユーロの下落によってさらに輸出が増大している独仏などの「優等」諸国が大胆な賃金アップによって相対的なコストを上げれば効果がある。
しかし、事態は逆に進んでいた。
「優等諸国」が先行して緊縮財政と賃上げストップを実施してしまった。
「優等」でない諸国は、さらに超緊縮財政と賃金の大幅ダウンをしなければ域内で均衡しない。
しかも、悪夢の国内恐慌循環と財政悪化循環が目にみえている。
例えば、ギリシャにとっては不可能であると共に、信用創造の債務と言う理不尽なものであり、国民は決して納得しない。
ユーロは分裂するしか無い方向に向かっている。
関連するページ「ユーロは夢の終わりか」、「破滅するユーロか、破滅する国家か」、「ユーロは国民国家を解体するか」、「アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ」、「ユーロ危機で延命するドル」を御覧ください。
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ユーロ、解体の道に踏み出す 2/5 田村秀男
ギリシャの債務危機勃発から2年たった今、欧州共通通貨「ユーロ」は解体の道に踏み出した、と言ってもよさそうだ。この間、欧州連合(EU)はユーロ危機打開に向け、この1月末までに16度も首脳会議を開いたが、ギリシャはユーロの盟主ドイツが突きつける緊縮財政要求を拒絶する。ギリシャが離脱すれば、ポルトガル、スペイン、さらにイタリアと連鎖しかねないが、ドイツは南欧抜きで再結束を図る覚悟のようだ。

「北」と「南」に分裂
なぜ「解体」が不可避か。ユーロが利益になる「北」と、重荷になる「南」にユーロ圏が分裂し修復できそうにないからだ。
通貨がないとヒト、モノ・サービスを活動させられない。国としての考え方、政策が信頼されないと外部からカネが入ってこない。対外重債務国ギリシャは政府債務の一部の返済を免除されたところで、残りの債務や新規の借金をきちんと返済できなければ、だれからも貸してもらえない。打開するためには、国民が厳しい緊縮生活に耐えるしかないが、失業率が20%近い中、失業保険も医療保険制度も破綻し、国民は疲弊しきっている。政治指導者が代わっても、債権者からの信用を回復させられる見通しは示せない。
主力は観光産業なのだが、治安の悪化で不振を極めている。最大の打開策は通貨の大幅切り下げで、国際競争力を取り戻すことだ。ならば、古代ギリシャ以来の通貨「ドラクマ」に復帰し、思い切ってユーロの10分の1といった水準に切り下げるしかない。
東西冷戦終了時の1990年にポーランドを訪ねたとき、当時の日本では500円以上はするだろうと思えるランチセットがわずか5円程度だったことを思い出す。30年以上前の中国も同様だった。残酷な現実だが、あえて自国通貨をとことんまで切り下げることが、相対的に痛みの少ない実体経済再建の第一歩になるのだろう。ユーロはギリシャにとって今や足かせでしかない。
リーマンの一撃
ここで、グラフを見ていただこう。ユーロ加盟の問題5カ国、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインと、フランス、ドイツの標準国債の利回り推移である。2002年にユーロ建て国債が普及して以来、各国債利回りはほぼ1本の縄となり安定していたが、08年9月のリーマン・ショックに直撃されバラけてしまった。
欧州の金融機関がバブル崩壊した米金融商品を大量に抱えていたため、信用不安はたちまち欧州に波及し、財政に問題のある国の国債が売られた。その後一時的に持ち直しかけたが、10年初めにはギリシャ政府が米金融大手のゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースに法外な手数料を支払って膨大な債務を帳簿外に飛ばしてきたことが露見した。ギリシャ問題をきっかけに、その他4カ国の放漫財政も表面化し、11年後半には大国イタリアまでも国債利回りが債務危機の目安とされる7%を突破した。
ユーロ加盟以来、強いユーロのおかげで、全員がそれぞれの財政規律とは無関係にドイツ並みの低金利借金で財政支出してきたが、リーマンの一撃で豪華なユーロの衣装が吹き飛ばされた。
するとユーロ加盟国の間で明暗がはっきりするようになった。リーマン以来、ユーロはドルに対して8%、円に対して33%下落した。ドイツの輸出は国内総生産(GDP)比が約38%(日本は約15%)で、ドイツの輸出産業はすっかり息を吹き返し、失業率は11年12月で5・5%と低い。
対照的に輸出産業の比率がさほど高くない他の国々の景気は冷え込んだままだ。失業率はスペイン同22・9%、アイルランド14・5%、ポルトガル13・6%、イタリア8・9%と苦しんでいる。
時間稼ぎに焦点
従ってドイツはユーロ危機の中の最大の勝ち組なのだが、ドイツ国民は、野放図に見えるギリシャ、イタリアなどの財政支援に猛反対する。リーマン後、ドイツの労働界は賃上げ要求を控え、雇用維持を優先してきた。年4%程度の賃上げを続けてきた楽天的なイタリアなどと対照的な「緊縮」ぶりだ。そこでメルケル首相はギリシャ政府に対して財政主権を放棄し、EU当局に移譲するよう迫る強硬論をぶつ。ギリシャは一歩も譲らない。この構図はドイツを中心とするユーロ圏北部と南欧の対立の縮図といえるだろう。
欧州中央銀行(ECB)はユーロ札を刷って、ギリシャ国債を買い支えている。国際通貨基金(IMF)も支援の構えを見せているが言葉だけだ。もはやギリシャ、さらに他の南欧各国の離脱に伴う金融市場の混乱を最小限に抑える準備のための時間稼ぎに焦点が移っている。
ソフトランディングさせるには、ユーロの下落によってさらに輸出が増大している独仏などの「優等」諸国が大胆な賃金アップによって相対的なコストを上げれば効果がある。
しかし、事態は逆に進んでいた。
「優等諸国」が先行して緊縮財政と賃上げストップを実施してしまった。
「優等」でない諸国は、さらに超緊縮財政と賃金の大幅ダウンをしなければ域内で均衡しない。
しかも、悪夢の国内恐慌循環と財政悪化循環が目にみえている。
例えば、ギリシャにとっては不可能であると共に、信用創造の債務と言う理不尽なものであり、国民は決して納得しない。
ユーロは分裂するしか無い方向に向かっている。
関連するページ「ユーロは夢の終わりか」、「破滅するユーロか、破滅する国家か」、「ユーロは国民国家を解体するか」、「アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ」、「ユーロ危機で延命するドル」を御覧ください。
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ユーロ、解体の道に踏み出す 2/5 田村秀男
ギリシャの債務危機勃発から2年たった今、欧州共通通貨「ユーロ」は解体の道に踏み出した、と言ってもよさそうだ。この間、欧州連合(EU)はユーロ危機打開に向け、この1月末までに16度も首脳会議を開いたが、ギリシャはユーロの盟主ドイツが突きつける緊縮財政要求を拒絶する。ギリシャが離脱すれば、ポルトガル、スペイン、さらにイタリアと連鎖しかねないが、ドイツは南欧抜きで再結束を図る覚悟のようだ。

「北」と「南」に分裂
なぜ「解体」が不可避か。ユーロが利益になる「北」と、重荷になる「南」にユーロ圏が分裂し修復できそうにないからだ。
通貨がないとヒト、モノ・サービスを活動させられない。国としての考え方、政策が信頼されないと外部からカネが入ってこない。対外重債務国ギリシャは政府債務の一部の返済を免除されたところで、残りの債務や新規の借金をきちんと返済できなければ、だれからも貸してもらえない。打開するためには、国民が厳しい緊縮生活に耐えるしかないが、失業率が20%近い中、失業保険も医療保険制度も破綻し、国民は疲弊しきっている。政治指導者が代わっても、債権者からの信用を回復させられる見通しは示せない。
主力は観光産業なのだが、治安の悪化で不振を極めている。最大の打開策は通貨の大幅切り下げで、国際競争力を取り戻すことだ。ならば、古代ギリシャ以来の通貨「ドラクマ」に復帰し、思い切ってユーロの10分の1といった水準に切り下げるしかない。
東西冷戦終了時の1990年にポーランドを訪ねたとき、当時の日本では500円以上はするだろうと思えるランチセットがわずか5円程度だったことを思い出す。30年以上前の中国も同様だった。残酷な現実だが、あえて自国通貨をとことんまで切り下げることが、相対的に痛みの少ない実体経済再建の第一歩になるのだろう。ユーロはギリシャにとって今や足かせでしかない。
リーマンの一撃
ここで、グラフを見ていただこう。ユーロ加盟の問題5カ国、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインと、フランス、ドイツの標準国債の利回り推移である。2002年にユーロ建て国債が普及して以来、各国債利回りはほぼ1本の縄となり安定していたが、08年9月のリーマン・ショックに直撃されバラけてしまった。
欧州の金融機関がバブル崩壊した米金融商品を大量に抱えていたため、信用不安はたちまち欧州に波及し、財政に問題のある国の国債が売られた。その後一時的に持ち直しかけたが、10年初めにはギリシャ政府が米金融大手のゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースに法外な手数料を支払って膨大な債務を帳簿外に飛ばしてきたことが露見した。ギリシャ問題をきっかけに、その他4カ国の放漫財政も表面化し、11年後半には大国イタリアまでも国債利回りが債務危機の目安とされる7%を突破した。
ユーロ加盟以来、強いユーロのおかげで、全員がそれぞれの財政規律とは無関係にドイツ並みの低金利借金で財政支出してきたが、リーマンの一撃で豪華なユーロの衣装が吹き飛ばされた。
するとユーロ加盟国の間で明暗がはっきりするようになった。リーマン以来、ユーロはドルに対して8%、円に対して33%下落した。ドイツの輸出は国内総生産(GDP)比が約38%(日本は約15%)で、ドイツの輸出産業はすっかり息を吹き返し、失業率は11年12月で5・5%と低い。
対照的に輸出産業の比率がさほど高くない他の国々の景気は冷え込んだままだ。失業率はスペイン同22・9%、アイルランド14・5%、ポルトガル13・6%、イタリア8・9%と苦しんでいる。
時間稼ぎに焦点
従ってドイツはユーロ危機の中の最大の勝ち組なのだが、ドイツ国民は、野放図に見えるギリシャ、イタリアなどの財政支援に猛反対する。リーマン後、ドイツの労働界は賃上げ要求を控え、雇用維持を優先してきた。年4%程度の賃上げを続けてきた楽天的なイタリアなどと対照的な「緊縮」ぶりだ。そこでメルケル首相はギリシャ政府に対して財政主権を放棄し、EU当局に移譲するよう迫る強硬論をぶつ。ギリシャは一歩も譲らない。この構図はドイツを中心とするユーロ圏北部と南欧の対立の縮図といえるだろう。
欧州中央銀行(ECB)はユーロ札を刷って、ギリシャ国債を買い支えている。国際通貨基金(IMF)も支援の構えを見せているが言葉だけだ。もはやギリシャ、さらに他の南欧各国の離脱に伴う金融市場の混乱を最小限に抑える準備のための時間稼ぎに焦点が移っている。
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「普天間」固定化などと言う沖縄への脅し
2012-02-06
日米合意などもうボロボロではないか。
それを「普天間」固定化か……….などとは沖縄への恫喝だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[「普天間」見直し]固定化は責任の放棄だ 2/5 沖縄タイムス
無理に無理を重ねた、つぎはぎだらけの米軍再編計画が瓦解(がかい)し始めた。近く、計画見直しに向けた日米協議が始まる。
2006年5月にまとめた「再編実施のロードマップ」で日米両政府は、個別の再編案が「統一的なパッケージ」になっていることを確認した。
パッケージとは「米軍普天間飛行場の辺野古移設」「海兵隊約8000人とその家族約9000人のグアム移転」「嘉手納基地以南の6施設の返還」のことである。
辺野古移設とグアム移転は「相互に結びついている」と、両政府は繰り返し強調してきた。
「進まない移設計画」に固執し続ければ、グアム移転計画にも悪影響を与えることから、米国はここにきて、パッケージの実現を事実上、断念した。
普天間問題は、大きな転機を迎えたといっていい。
共同通信が報じたところによると、辺野古移設とグアム移転を切り離し、辺野古移設にしばられずに、海兵隊の分散化と先行移転を進める考えだ。
約8000人の要員のうち4700人をグアムに先行移転し、残る3300人をハワイ、オーストラリア、フィリピンなどに振り分けるという。
米国は、台頭する中国をにらんで、新たな国防戦略をうち出した。浮上した計画見直し案は、「国防費の削減」と「台頭する中国」という二つの要素に対応するための措置でもある。
普天間飛行場の辺野古移設計画は当初、日米特別行動委員会(SACO)合意に基づいて進められた。
県や名護市が条件付きで県内移設に合意したのは、この「SACO合意に基づく移設案」である。
この計画は住民の反対にあって頓挫した。政府は県への説明もないまま、SACO合意案を一方的に放棄し、新たに「米軍再編に基づく移設案」をまとめた。それが現行の日米合意案である。
この案も暗礁に乗り上げ、実現が不可能になった。SACO案から米軍再編案に変わり、そして今度は、米軍再編案が葬り去られようとしている。
計画の変更は、沖縄側に重大な影響を与える。にもかかわらず、地元はいつも蚊帳の外。住民とかけ離れたところで見直し協議が進み、そのたびに住民が振り回される。この構図だけは、少しも変わっていない。
「2014年」という普天間飛行場の移設期限は撤回され、「できる限り早期に」という表現に変わった。今やそれさえも死文化しつつある。
「辺野古案がなくなれば普天間は固定化される」という言い方は、沖縄側から見れば脅し以外の何物でもない。普天間の固定化は日米の責任放棄であり、あってはならないことだ。
「普天間の早期返還」と「辺野古移設の断念」は、負担軽減のための車の両輪である。計画見直しで求められているのは、この二つのパッケージだ。
それを「普天間」固定化か……….などとは沖縄への恫喝だ。
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[「普天間」見直し]固定化は責任の放棄だ 2/5 沖縄タイムス
無理に無理を重ねた、つぎはぎだらけの米軍再編計画が瓦解(がかい)し始めた。近く、計画見直しに向けた日米協議が始まる。
2006年5月にまとめた「再編実施のロードマップ」で日米両政府は、個別の再編案が「統一的なパッケージ」になっていることを確認した。
パッケージとは「米軍普天間飛行場の辺野古移設」「海兵隊約8000人とその家族約9000人のグアム移転」「嘉手納基地以南の6施設の返還」のことである。
辺野古移設とグアム移転は「相互に結びついている」と、両政府は繰り返し強調してきた。
「進まない移設計画」に固執し続ければ、グアム移転計画にも悪影響を与えることから、米国はここにきて、パッケージの実現を事実上、断念した。
普天間問題は、大きな転機を迎えたといっていい。
共同通信が報じたところによると、辺野古移設とグアム移転を切り離し、辺野古移設にしばられずに、海兵隊の分散化と先行移転を進める考えだ。
約8000人の要員のうち4700人をグアムに先行移転し、残る3300人をハワイ、オーストラリア、フィリピンなどに振り分けるという。
米国は、台頭する中国をにらんで、新たな国防戦略をうち出した。浮上した計画見直し案は、「国防費の削減」と「台頭する中国」という二つの要素に対応するための措置でもある。
普天間飛行場の辺野古移設計画は当初、日米特別行動委員会(SACO)合意に基づいて進められた。
県や名護市が条件付きで県内移設に合意したのは、この「SACO合意に基づく移設案」である。
この計画は住民の反対にあって頓挫した。政府は県への説明もないまま、SACO合意案を一方的に放棄し、新たに「米軍再編に基づく移設案」をまとめた。それが現行の日米合意案である。
この案も暗礁に乗り上げ、実現が不可能になった。SACO案から米軍再編案に変わり、そして今度は、米軍再編案が葬り去られようとしている。
計画の変更は、沖縄側に重大な影響を与える。にもかかわらず、地元はいつも蚊帳の外。住民とかけ離れたところで見直し協議が進み、そのたびに住民が振り回される。この構図だけは、少しも変わっていない。
「2014年」という普天間飛行場の移設期限は撤回され、「できる限り早期に」という表現に変わった。今やそれさえも死文化しつつある。
「辺野古案がなくなれば普天間は固定化される」という言い方は、沖縄側から見れば脅し以外の何物でもない。普天間の固定化は日米の責任放棄であり、あってはならないことだ。
「普天間の早期返還」と「辺野古移設の断念」は、負担軽減のための車の両輪である。計画見直しで求められているのは、この二つのパッケージだ。
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小沢一郎、菅原文太対談「百術は一誠に如かず」10年末
2012-02-06
小沢一郎氏の共同通信インタビューに関連して検索していたら、一昨年の年末に菅原文太氏とのラジオ対談の書き起こしを見つけました。
この対談は覚えているのですが、当時は書き起こしを見つけられず、このブログでは紹介していなかったものです。
既に読まれている方もおられると思いますが、小沢一郎氏の記録としてアップしておきます。
幅広く、高い見識と一貫している信条は些かも変わりません。
「百術は一誠に如かず」。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小沢一郎氏と菅原文太氏の対談 2010/10/27 「午後のアダージオ」から
菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎 2010年12月26日ラジオ(ニッポン放送22日収録)
菅原 今年最後の放送は、民主党元代表、小沢一郎さんにお越しいただいて、政治の話、日本のこれからの話、そんなことを聞こうと思います。あの、小沢さんは日ごろあまりご自分のことは言われませんね(笑)。
小沢 あはは。
菅原 座右の銘なんてものはありますか?
小沢 はい。僕は「百術は一誠に如かず」という言葉が好きで、どんなに策を凝らしても一番大事なのは誠を尽くすということで、今風に言えばパフォーマンスよりは誠を尽くすことの方が大事だと。そういう意味だろうと思うんですが・・・。
菅原 もう一度言ってください。百に技術の術ですか?
小沢 百ぺんの術策よりも、唯一つの誠より優れたものはないと。
菅原 一つの誠、はあ~なるほどねえ。今日のしてきたネクタイをいうと、紺色と白で・・・。
小沢 あはは。
菅原 色はそういう色が好きなんですか?
小沢 色は背広でも何でも紺が多いですね、我が社は(笑)ただ最近は、紫がはやっているものですから「お前も同じようなものじゃなくこういうのもつけろ」つって、ネクタイを何本か頂きました。
菅原 そんな小沢さんの人柄がなんとなく伝わったかなというところで、あの、政治というか、なぜなんでしょうか、あの沖縄の問題。承知をされているんですけど、鳩山さんもついに断念してしまった。なんであのときにずーっと行かなかったかなと思うんだけども、政治家・・自民党も民主党も僕も含めて、アメリカにね、私のような素人、門外漢から見ても日米同盟なんて言葉だけはきれいなことを言ってるけども、どこかね、怯えてるんじゃないのと。そういう風に見えるんですよ。アメリカの何に怯えてるんですか。
小沢 そうですね・・・アメリカの経済力を含めた巨大な力でしょうね。怯えと同時にですね、アメリカの言うようにしてれば楽だと。そういう意識があるんじゃないでしょうかねえ。食うには困らないというとこでやってれば。ですから、そういう意味で、独立国家としての日本はどうあるべきかとか、そういう類の問題はできるだけ考えないようにして、言うとおりにしてると。そうしてればまあ、なんとか生きていけるんじゃないかと。という、二つの要素があるんじゃないですかね。
菅原 小沢さんと同じ党だけど、今の政権の人たちはね、ほとんどみな普天間・辺野古問題は県外、国外と言ってたじゃないですか。ところが今は全部ひっくり返ってしまった。政治家として情けないなと思っているんですけども、その一方で、それじゃあ中国と親密に仲良くかと思うと、中国に対しても肩肘張って。
小沢 基本的に事なかれ主義なんですね。中国に対しても経済力でつながっていて非常に強くなって大きくなっていますが、まあ、あまりゴチャゴチャしないようにと。尖閣の領土侵犯のときも経団連なんかが「早くこれケリつけてくれないと企業経営にひびく」とか、そういう観点だけなんですね。そういうことですから、アメリカからも中国からも実は全く相手にされてないですね。ロシアだって同じですわね。
そういう意味で、国は国民と領土で成り立っているものですから、そういうきちんと国民の生命、それから日本国というそのものをきちんと自分で守っていく、そういう考え方、政治的な姿勢、スタンス、そういうものが全く・・・これ自民党時代からですけども、なかったと。今もないと。そういうところが、彼らに軽んじられる最大の原因だと思っています。
菅原 本来なら、戦いに敗れたのですから、しばらくは家来でいても仕方なかったにしても、65年たっても自立、独立されてないとしたら、こんなに情けないことはないんで。小沢さんは以前からアメリカとも対等に、中国とも対等に、正三角形でいかなきゃいかんと。特に中国を中心とした東アジア同盟というか、そうした形でこれからの日本はやっていかなきゃいかんと、小沢さん除いてそういうことを言う人が一人もいないんじゃ、これは困ったもんだなと思っているんですが。
小沢 そういう発言すると角が立つと議員はみな捉えるんですね。ほんとの事なかれですから、(外国から)まず軽蔑されますね。
官僚、政治家、それぞれの職分を守ること。政治がきちんとビジョンを示し責任を取れば役人は理解してくれる。
菅原 そういう話を聞くと、結局政治家は官僚に取り込まれてしまっている。こっちから見えない。官僚のね、これはもういろんな人が言ってるんだけど、明治維新から続いている官僚制度ですよね。(太平洋戦争終戦で)改まるかと思ったら官僚のシステムだけは生き残ってる。官僚制度の問題さえ片付ければ、自ずと普天間の問題も、日米同盟の問題も、日中の問題、アジアの問題、いろんな問題が収まってくると思ってるから。小沢さんがもしこの先政治の中心に立ったとしたら、どのようにされようと思っていますか?
小沢 明治以来の官僚機構。戦後、ぼくは、戦前以上に官僚統治が行き渡っていると思ってるんですね。それと同時に日本の官僚というのはアメリカと密接に結びついています。外務省だけじゃなく。そういう面もあるんですよ。
ただ、僕は官僚を否定してるんじゃなくて、日本の官僚は国家レベルのことをやりなさいと。国会議員も国家レベルのことをやりなさいと。それぞれの職分を守りなさいと、それだけのことを言っているんですが。
官僚の人もね、大部分の人は既得権を奪われるんじゃないかという恐怖感でいますけれども、優秀な人ほどこのままではいけないんじゃないかと思っています。腹の中では。だから僕はその人たちがきちんと表に立ってやれるようにするためには、政治家が「こういう国づくりをしたい」と、だから「この方針に従って、具体的な行政をあんたらやってください」と、「その結果はオレが責任とる」と、言えば彼らはやりますよ。
その、「何かお前たち考えろ」と、役人の考える範囲というのは今までの基本方針を大変更するということはできませんから。既存の積み上げということになります。それでその中で何か知恵を絞って持ってって、うまくいかなければ「お前らけしからん」「役人けしからん」と、役人のせいにされちゃう。これじゃあたまったもんじゃないというのが彼らですね。
これは全部のことに共通することで、政治家自身がやはり自分のビジョンと主張を内政でも外交でもきちんと申すと、そういうふうにすればですね、僕は必然的に役人はついてくると思っています。
菅原 小沢さんからそういう風な話を聞くと簡単なのになあ・・・と。素人から見るとねえ、できないのかなあと・・・。
小沢 官僚の既得権を奪うだけではダメなんで。必要なことは、僕は、もっと権限を強化しなきゃいけないところもあると思うんです。例えば危機管理とかテロだ金融危機だ天然災害だといろんなことあるでしょう。そんなときにもっと政府は強力な権限持たないとダメですよ。阪神大震災みたいに、総理大臣が来るまで三日間かかって何かかんかしつつ、その間に人が死んでしまうなんて。
その意味では素早くパッと対応できるような、国の権限を強化しなきゃいけない面も、あります。それはもう事柄に応じてありますけども、そういう役割をきちんと付与すれば、私は役人は大丈夫、理解してくれると思います。
菅原 これから小沢さんがね、政治生命をかけて、特に、来年、裁判も待ち受けていますね。政治とカネという問題は、政治にカネは必要である。
小沢 以前からずーっと僕が主張してるのは、政治資金の問題、私個人のこと云々ということをこの場で申し上げるつもりはございませんが、政治資金の問題を筆頭にして、行政であれ、一般の会社であれ、日本は非常に閉鎖的、クローズドな社会ですよね。菅さんはオープンオープンとおっしゃってるからもっとほんとはオープンにしなきゃいけないんですが。
僕は、政治資金も、誰から貰ったか、極端に言えばですよ、誰だって浄財くれるっていえば貰ったっていいと思う。それで、何に使ったか、収入と支出を全部、1円からオープンにすると。それで国民みなさんが「あんなやつから貰うなんてけしからんじゃないか」とか「こういうところでこれを使うのはけしからん」と、そういうふうに思えばそれは選挙の際にきちんと判断すればいいんで。
今は、オープンオープン言いながら・・・私自身は全部オープンにしてますけども、オープンにしなくていい部分が残ってますし、それから行政でも、機密事項的なことはほとんどクローズドですよね。大臣だって知らされていないし。会社だってそうです。ほんとの機密事項は株主であれ従業員であれ誰も知らない。僕は、アメリカみたいになんでもかんでもオープンにするというのは弊害も出てくると思います。
少なくとも、ヨーロッパ並みのオープンな社会にしていかないといけないと思っています。
菅原 あの、国会議員は(政治献金ではなく)国民の税金で賄ってますよね、給料から政治活動費も。
小沢 日本はそのパーセンテージが高いですね。
菅原 そうですよね。それであるんなら、政治資金も、政治に本当に使うためのものをね、アメリカ式に、広く集めたらどうなんだろうと。こないだ、岡田さんが経団連から献金を、あれだけダメだって言ってたのに(笑)、もらうことにね、そのために法人税5%下げるなんて(笑)それがひとつのアレなのかなと思わざるを得ないようなね、かえって国民から見てもおかしいなということが、清潔に、クリーンにと言いながらあらたまってこない・・・。
小沢 大きな変革をしようとすれば、今までの旧体制で既得権を持っていた人からすれば脅威ですから、「あの野郎さえいなければ」ということになりがちなのは、歴史上でも仕方のないことなんですけども。
ただ、僕は、質問していないのは、国民の皆さんは、いま、テレビ新聞だけじゃなくて、ネットやいろんなもの、媒体が普及してきましたよね。ですからものすごく意識が変わってきている。
このラジオだって、いっときテレビやなにかで押されたみたいであれしてますけども、ラジオ聴いてる人っていうのは意外に多いんですよね。いろんな意味で情報を知ることが出来るようになったので、僕は国民の皆さんは、かなり意識が違ってきてると思っています。
ですから、さらにもう一歩進んで、今お話したように、自分も、百円でも千円でも、献金して政治活動を助けてやろうというようなことまで行けば、いろんな問題は少なくなりますよね。僕の場合はね、ワーワーワーワーメディアに騒がれるたびに個人献金が数百人規模で増えてるんですよ(笑)。
菅原 ほお。
小沢 もちろん、アメリカみたいに何万何十万という人じゃないですから、トータルの金額はそんな大きいわけじゃないですけども、それでも、去年も、今年も、300人、400人ずつ個人献金者が増えてます。
小沢 だから僕はメディアの非難が集中してますけども、お金のことであれ何であれ、不正行為がね、あったならば、それは政治家であれ一般人であれきちんと罰せられなきゃいけないと。それはその通りだと思うんですが、ただなんとなくね、そのときそのときで、一人を悪者にして、肝心な世の中の仕組みや政策やそういうものが全然改革されないで終わっちゃってるんですね。
その場その場で。そこが僕は非常に問題だと思っていますね。で、何か起こるたびに、規制が強化されるんですよ。規制強化というのは官僚の権限を大きくするだけなんですよ。これがほんとに繰り返しなんですよ、日本の。
菅原 我々のようなね、政治に縁のないところで生きてるでしょう、それでも規制はひしひしと迫ってきています。だからね、戦後のどの時代よりもいま窮屈でね、「これもダメ、あれもダメ」、ね。そして税金の増税を堂々と言いかけて止めてしまったもんだから、なんかね、ズルくね小さく、ここから取ってあっちから取ってね(笑)気がつかないところで取り上げてるんですよ。そういうのをね、改めてもらいたい。
菅原 あの、金の問題が長くなりすぎたんで、ここで、これからの日本の国の姿、そして政治をどういうふうに、特に、来年、政治的な動乱が起きるんじゃないかと思っているんですが。そういう中で小沢さんは何を考え、何を目的として、この先、やっていかれるか。その話を聞かせていただいて終わりにしようと思います。
小沢 はい。私が言っているのは、自立した日本人と、自立した日本人の集合体である自立した日本国。それが私の、抽象的な言葉でいうと目標で、要するに、自分自身で考え、自分自身で判断し、自分自身で責任を取ると。ということでないと、個人も国も成り立たないし、誰にも相手にされないということだと思っているんです。
アメリカは日本の最大の同盟国ですけども、同盟国であるに相応しい日本は、じゃあ日本の役割はなんなんだと。そして、アメリカは、なんなんだと。現状はそれでいいのかと。そういうことを日本人がしっかり持って、それでアメリカにも言わなきゃいけない。
中国も、僕これ既に言ってんですけども、尖閣列島は、数千年の中国王朝の支配に入ったことは、歴史的にないんですよ。間違いない、日本の正真正銘の領土なんですね。そういうことについて、しっかりした・・・僕はもう中国の人にも言ってますけどね、あれは歴史上見ても争うことは何もないと。その問題であれ何の問題であれ、しっかりと自分のあれを相手に伝えられるような日本人に、そして日本の国にしたいなあと、そう思っております。
菅原 さて、そうは言っても、何年になりますか(笑)、言い続けてもね、みんな腰倒れといいますか、小沢さんも今年は68歳、まあまあ、私なんか10個も上ですけどもね、今のままでは、私のような門外漢でも不安でね、どうなんだろうこの国は。
もう孫もいるもんだから、特に孫なんか見てると、いま中学、これから高校に行こうなんてものだから、これからの日本はどうなるんだろうと。細かく言えば教育はどうなるんだろうね食料はどうなるんだろう、いろんなことがやっぱり・・そしてそれは殆どが今までの政治の官僚組織のね、具体的に暖かい手を差し伸べてやってくれてないんですよ。
政治家としての小沢さんは実績があり度胸があるんだからね、ひとつ・・・まあ、そういう人が何人かいるじゃないですか、亀井静香とかね(笑)。
小沢 仰るようにですね、今の日本は老いも若きもですね将来の不安、将来の見通しが全然たたない、これは経済であれなんであれね、そこに僕は日本の社会の不安定なそして不安な要素があるんだと思うんです。ですからやっぱりあらゆる意味で、少なくともリーダーが「こういう日本を作りたい」と「このために皆で頑張ろうや」というやっぱり自信を持ってですね、言えるようにしなきゃいけないと思いますですね。
菅原 お互いにあの東北のね、岩手と宮城の県境で、歩いても行けるところで(笑)。生まれてるんだけども、明治維新をもう一度振り返ると、「白河以北一山百文(『白河の関所より北の土地は、一山で百文にしかならない荒れ地ばかり』という侮蔑表現)と言われてね、ずぅっと蔑視されて、そういうやっぱり薩長土肥、西側の、私なんか薩長土肥と、向こうは敵だって言うんだけども、西郷さんも好きだし、大久保利通も。ねえ、でもそういった維新のときの精神がだんだんだんだん山縣有朋あたりになってくるとやっぱり別のものに変わってしまって・・・。
小沢 官僚機構がどんどん強くなってきてしまいましたからねえ。だから官僚のシェアの中でみんな結局は悲惨な戦前の歴史になってしまうんですよねえ。明治のリーダーが偉かったのは「白河以北一山百文」という言葉がありますけども、明治のリーダーが偉かったのは、敵であった徳川幕府の中からも優秀な人材はどんどん登用していますね。これはね、僕はえらかったと思いますね。
菅原 五稜郭榎本ね。
小沢 ええ。誰であっても。それでね、うちの大先輩の原敬であっても・・あれ東北の方ですからね、それが立憲政友会幹事長になって総理大臣にまでなったわけですから。いろんな人を、白河以北の人材であっても優秀なら採用したんですね。それだけの、やはりトップリーダーに人を見分ける目があったんでしょうね。
菅原 必ずしも薩長全部が悪いわけではなくて。だけどやっぱり東北は悲惨だった。賊軍と言われたりしてね、長いこと雌伏してた。その雌伏から、ひとつ、小沢さんが・・・。
小沢 あははは。
菅原 立ち上がりました。
小沢 あはは、はい、そうですね。
菅原 今日は本当にありがとうございました。
この対談は覚えているのですが、当時は書き起こしを見つけられず、このブログでは紹介していなかったものです。
既に読まれている方もおられると思いますが、小沢一郎氏の記録としてアップしておきます。
幅広く、高い見識と一貫している信条は些かも変わりません。
「百術は一誠に如かず」。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小沢一郎氏と菅原文太氏の対談 2010/10/27 「午後のアダージオ」から
菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎 2010年12月26日ラジオ(ニッポン放送22日収録)
菅原 今年最後の放送は、民主党元代表、小沢一郎さんにお越しいただいて、政治の話、日本のこれからの話、そんなことを聞こうと思います。あの、小沢さんは日ごろあまりご自分のことは言われませんね(笑)。
小沢 あはは。
菅原 座右の銘なんてものはありますか?
小沢 はい。僕は「百術は一誠に如かず」という言葉が好きで、どんなに策を凝らしても一番大事なのは誠を尽くすということで、今風に言えばパフォーマンスよりは誠を尽くすことの方が大事だと。そういう意味だろうと思うんですが・・・。
菅原 もう一度言ってください。百に技術の術ですか?
小沢 百ぺんの術策よりも、唯一つの誠より優れたものはないと。
菅原 一つの誠、はあ~なるほどねえ。今日のしてきたネクタイをいうと、紺色と白で・・・。
小沢 あはは。
菅原 色はそういう色が好きなんですか?
小沢 色は背広でも何でも紺が多いですね、我が社は(笑)ただ最近は、紫がはやっているものですから「お前も同じようなものじゃなくこういうのもつけろ」つって、ネクタイを何本か頂きました。
菅原 そんな小沢さんの人柄がなんとなく伝わったかなというところで、あの、政治というか、なぜなんでしょうか、あの沖縄の問題。承知をされているんですけど、鳩山さんもついに断念してしまった。なんであのときにずーっと行かなかったかなと思うんだけども、政治家・・自民党も民主党も僕も含めて、アメリカにね、私のような素人、門外漢から見ても日米同盟なんて言葉だけはきれいなことを言ってるけども、どこかね、怯えてるんじゃないのと。そういう風に見えるんですよ。アメリカの何に怯えてるんですか。
小沢 そうですね・・・アメリカの経済力を含めた巨大な力でしょうね。怯えと同時にですね、アメリカの言うようにしてれば楽だと。そういう意識があるんじゃないでしょうかねえ。食うには困らないというとこでやってれば。ですから、そういう意味で、独立国家としての日本はどうあるべきかとか、そういう類の問題はできるだけ考えないようにして、言うとおりにしてると。そうしてればまあ、なんとか生きていけるんじゃないかと。という、二つの要素があるんじゃないですかね。
菅原 小沢さんと同じ党だけど、今の政権の人たちはね、ほとんどみな普天間・辺野古問題は県外、国外と言ってたじゃないですか。ところが今は全部ひっくり返ってしまった。政治家として情けないなと思っているんですけども、その一方で、それじゃあ中国と親密に仲良くかと思うと、中国に対しても肩肘張って。
小沢 基本的に事なかれ主義なんですね。中国に対しても経済力でつながっていて非常に強くなって大きくなっていますが、まあ、あまりゴチャゴチャしないようにと。尖閣の領土侵犯のときも経団連なんかが「早くこれケリつけてくれないと企業経営にひびく」とか、そういう観点だけなんですね。そういうことですから、アメリカからも中国からも実は全く相手にされてないですね。ロシアだって同じですわね。
そういう意味で、国は国民と領土で成り立っているものですから、そういうきちんと国民の生命、それから日本国というそのものをきちんと自分で守っていく、そういう考え方、政治的な姿勢、スタンス、そういうものが全く・・・これ自民党時代からですけども、なかったと。今もないと。そういうところが、彼らに軽んじられる最大の原因だと思っています。
菅原 本来なら、戦いに敗れたのですから、しばらくは家来でいても仕方なかったにしても、65年たっても自立、独立されてないとしたら、こんなに情けないことはないんで。小沢さんは以前からアメリカとも対等に、中国とも対等に、正三角形でいかなきゃいかんと。特に中国を中心とした東アジア同盟というか、そうした形でこれからの日本はやっていかなきゃいかんと、小沢さん除いてそういうことを言う人が一人もいないんじゃ、これは困ったもんだなと思っているんですが。
小沢 そういう発言すると角が立つと議員はみな捉えるんですね。ほんとの事なかれですから、(外国から)まず軽蔑されますね。
官僚、政治家、それぞれの職分を守ること。政治がきちんとビジョンを示し責任を取れば役人は理解してくれる。
菅原 そういう話を聞くと、結局政治家は官僚に取り込まれてしまっている。こっちから見えない。官僚のね、これはもういろんな人が言ってるんだけど、明治維新から続いている官僚制度ですよね。(太平洋戦争終戦で)改まるかと思ったら官僚のシステムだけは生き残ってる。官僚制度の問題さえ片付ければ、自ずと普天間の問題も、日米同盟の問題も、日中の問題、アジアの問題、いろんな問題が収まってくると思ってるから。小沢さんがもしこの先政治の中心に立ったとしたら、どのようにされようと思っていますか?
小沢 明治以来の官僚機構。戦後、ぼくは、戦前以上に官僚統治が行き渡っていると思ってるんですね。それと同時に日本の官僚というのはアメリカと密接に結びついています。外務省だけじゃなく。そういう面もあるんですよ。
ただ、僕は官僚を否定してるんじゃなくて、日本の官僚は国家レベルのことをやりなさいと。国会議員も国家レベルのことをやりなさいと。それぞれの職分を守りなさいと、それだけのことを言っているんですが。
官僚の人もね、大部分の人は既得権を奪われるんじゃないかという恐怖感でいますけれども、優秀な人ほどこのままではいけないんじゃないかと思っています。腹の中では。だから僕はその人たちがきちんと表に立ってやれるようにするためには、政治家が「こういう国づくりをしたい」と、だから「この方針に従って、具体的な行政をあんたらやってください」と、「その結果はオレが責任とる」と、言えば彼らはやりますよ。
その、「何かお前たち考えろ」と、役人の考える範囲というのは今までの基本方針を大変更するということはできませんから。既存の積み上げということになります。それでその中で何か知恵を絞って持ってって、うまくいかなければ「お前らけしからん」「役人けしからん」と、役人のせいにされちゃう。これじゃあたまったもんじゃないというのが彼らですね。
これは全部のことに共通することで、政治家自身がやはり自分のビジョンと主張を内政でも外交でもきちんと申すと、そういうふうにすればですね、僕は必然的に役人はついてくると思っています。
菅原 小沢さんからそういう風な話を聞くと簡単なのになあ・・・と。素人から見るとねえ、できないのかなあと・・・。
小沢 官僚の既得権を奪うだけではダメなんで。必要なことは、僕は、もっと権限を強化しなきゃいけないところもあると思うんです。例えば危機管理とかテロだ金融危機だ天然災害だといろんなことあるでしょう。そんなときにもっと政府は強力な権限持たないとダメですよ。阪神大震災みたいに、総理大臣が来るまで三日間かかって何かかんかしつつ、その間に人が死んでしまうなんて。
その意味では素早くパッと対応できるような、国の権限を強化しなきゃいけない面も、あります。それはもう事柄に応じてありますけども、そういう役割をきちんと付与すれば、私は役人は大丈夫、理解してくれると思います。
菅原 これから小沢さんがね、政治生命をかけて、特に、来年、裁判も待ち受けていますね。政治とカネという問題は、政治にカネは必要である。
小沢 以前からずーっと僕が主張してるのは、政治資金の問題、私個人のこと云々ということをこの場で申し上げるつもりはございませんが、政治資金の問題を筆頭にして、行政であれ、一般の会社であれ、日本は非常に閉鎖的、クローズドな社会ですよね。菅さんはオープンオープンとおっしゃってるからもっとほんとはオープンにしなきゃいけないんですが。
僕は、政治資金も、誰から貰ったか、極端に言えばですよ、誰だって浄財くれるっていえば貰ったっていいと思う。それで、何に使ったか、収入と支出を全部、1円からオープンにすると。それで国民みなさんが「あんなやつから貰うなんてけしからんじゃないか」とか「こういうところでこれを使うのはけしからん」と、そういうふうに思えばそれは選挙の際にきちんと判断すればいいんで。
今は、オープンオープン言いながら・・・私自身は全部オープンにしてますけども、オープンにしなくていい部分が残ってますし、それから行政でも、機密事項的なことはほとんどクローズドですよね。大臣だって知らされていないし。会社だってそうです。ほんとの機密事項は株主であれ従業員であれ誰も知らない。僕は、アメリカみたいになんでもかんでもオープンにするというのは弊害も出てくると思います。
少なくとも、ヨーロッパ並みのオープンな社会にしていかないといけないと思っています。
菅原 あの、国会議員は(政治献金ではなく)国民の税金で賄ってますよね、給料から政治活動費も。
小沢 日本はそのパーセンテージが高いですね。
菅原 そうですよね。それであるんなら、政治資金も、政治に本当に使うためのものをね、アメリカ式に、広く集めたらどうなんだろうと。こないだ、岡田さんが経団連から献金を、あれだけダメだって言ってたのに(笑)、もらうことにね、そのために法人税5%下げるなんて(笑)それがひとつのアレなのかなと思わざるを得ないようなね、かえって国民から見てもおかしいなということが、清潔に、クリーンにと言いながらあらたまってこない・・・。
小沢 大きな変革をしようとすれば、今までの旧体制で既得権を持っていた人からすれば脅威ですから、「あの野郎さえいなければ」ということになりがちなのは、歴史上でも仕方のないことなんですけども。
ただ、僕は、質問していないのは、国民の皆さんは、いま、テレビ新聞だけじゃなくて、ネットやいろんなもの、媒体が普及してきましたよね。ですからものすごく意識が変わってきている。
このラジオだって、いっときテレビやなにかで押されたみたいであれしてますけども、ラジオ聴いてる人っていうのは意外に多いんですよね。いろんな意味で情報を知ることが出来るようになったので、僕は国民の皆さんは、かなり意識が違ってきてると思っています。
ですから、さらにもう一歩進んで、今お話したように、自分も、百円でも千円でも、献金して政治活動を助けてやろうというようなことまで行けば、いろんな問題は少なくなりますよね。僕の場合はね、ワーワーワーワーメディアに騒がれるたびに個人献金が数百人規模で増えてるんですよ(笑)。
菅原 ほお。
小沢 もちろん、アメリカみたいに何万何十万という人じゃないですから、トータルの金額はそんな大きいわけじゃないですけども、それでも、去年も、今年も、300人、400人ずつ個人献金者が増えてます。
小沢 だから僕はメディアの非難が集中してますけども、お金のことであれ何であれ、不正行為がね、あったならば、それは政治家であれ一般人であれきちんと罰せられなきゃいけないと。それはその通りだと思うんですが、ただなんとなくね、そのときそのときで、一人を悪者にして、肝心な世の中の仕組みや政策やそういうものが全然改革されないで終わっちゃってるんですね。
その場その場で。そこが僕は非常に問題だと思っていますね。で、何か起こるたびに、規制が強化されるんですよ。規制強化というのは官僚の権限を大きくするだけなんですよ。これがほんとに繰り返しなんですよ、日本の。
菅原 我々のようなね、政治に縁のないところで生きてるでしょう、それでも規制はひしひしと迫ってきています。だからね、戦後のどの時代よりもいま窮屈でね、「これもダメ、あれもダメ」、ね。そして税金の増税を堂々と言いかけて止めてしまったもんだから、なんかね、ズルくね小さく、ここから取ってあっちから取ってね(笑)気がつかないところで取り上げてるんですよ。そういうのをね、改めてもらいたい。
菅原 あの、金の問題が長くなりすぎたんで、ここで、これからの日本の国の姿、そして政治をどういうふうに、特に、来年、政治的な動乱が起きるんじゃないかと思っているんですが。そういう中で小沢さんは何を考え、何を目的として、この先、やっていかれるか。その話を聞かせていただいて終わりにしようと思います。
小沢 はい。私が言っているのは、自立した日本人と、自立した日本人の集合体である自立した日本国。それが私の、抽象的な言葉でいうと目標で、要するに、自分自身で考え、自分自身で判断し、自分自身で責任を取ると。ということでないと、個人も国も成り立たないし、誰にも相手にされないということだと思っているんです。
アメリカは日本の最大の同盟国ですけども、同盟国であるに相応しい日本は、じゃあ日本の役割はなんなんだと。そして、アメリカは、なんなんだと。現状はそれでいいのかと。そういうことを日本人がしっかり持って、それでアメリカにも言わなきゃいけない。
中国も、僕これ既に言ってんですけども、尖閣列島は、数千年の中国王朝の支配に入ったことは、歴史的にないんですよ。間違いない、日本の正真正銘の領土なんですね。そういうことについて、しっかりした・・・僕はもう中国の人にも言ってますけどね、あれは歴史上見ても争うことは何もないと。その問題であれ何の問題であれ、しっかりと自分のあれを相手に伝えられるような日本人に、そして日本の国にしたいなあと、そう思っております。
菅原 さて、そうは言っても、何年になりますか(笑)、言い続けてもね、みんな腰倒れといいますか、小沢さんも今年は68歳、まあまあ、私なんか10個も上ですけどもね、今のままでは、私のような門外漢でも不安でね、どうなんだろうこの国は。
もう孫もいるもんだから、特に孫なんか見てると、いま中学、これから高校に行こうなんてものだから、これからの日本はどうなるんだろうと。細かく言えば教育はどうなるんだろうね食料はどうなるんだろう、いろんなことがやっぱり・・そしてそれは殆どが今までの政治の官僚組織のね、具体的に暖かい手を差し伸べてやってくれてないんですよ。
政治家としての小沢さんは実績があり度胸があるんだからね、ひとつ・・・まあ、そういう人が何人かいるじゃないですか、亀井静香とかね(笑)。
小沢 仰るようにですね、今の日本は老いも若きもですね将来の不安、将来の見通しが全然たたない、これは経済であれなんであれね、そこに僕は日本の社会の不安定なそして不安な要素があるんだと思うんです。ですからやっぱりあらゆる意味で、少なくともリーダーが「こういう日本を作りたい」と「このために皆で頑張ろうや」というやっぱり自信を持ってですね、言えるようにしなきゃいけないと思いますですね。
菅原 お互いにあの東北のね、岩手と宮城の県境で、歩いても行けるところで(笑)。生まれてるんだけども、明治維新をもう一度振り返ると、「白河以北一山百文(『白河の関所より北の土地は、一山で百文にしかならない荒れ地ばかり』という侮蔑表現)と言われてね、ずぅっと蔑視されて、そういうやっぱり薩長土肥、西側の、私なんか薩長土肥と、向こうは敵だって言うんだけども、西郷さんも好きだし、大久保利通も。ねえ、でもそういった維新のときの精神がだんだんだんだん山縣有朋あたりになってくるとやっぱり別のものに変わってしまって・・・。
小沢 官僚機構がどんどん強くなってきてしまいましたからねえ。だから官僚のシェアの中でみんな結局は悲惨な戦前の歴史になってしまうんですよねえ。明治のリーダーが偉かったのは「白河以北一山百文」という言葉がありますけども、明治のリーダーが偉かったのは、敵であった徳川幕府の中からも優秀な人材はどんどん登用していますね。これはね、僕はえらかったと思いますね。
菅原 五稜郭榎本ね。
小沢 ええ。誰であっても。それでね、うちの大先輩の原敬であっても・・あれ東北の方ですからね、それが立憲政友会幹事長になって総理大臣にまでなったわけですから。いろんな人を、白河以北の人材であっても優秀なら採用したんですね。それだけの、やはりトップリーダーに人を見分ける目があったんでしょうね。
菅原 必ずしも薩長全部が悪いわけではなくて。だけどやっぱり東北は悲惨だった。賊軍と言われたりしてね、長いこと雌伏してた。その雌伏から、ひとつ、小沢さんが・・・。
小沢 あははは。
菅原 立ち上がりました。
小沢 あはは、はい、そうですね。
菅原 今日は本当にありがとうございました。
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