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もうすぐ北風が強くなる

電力会社の社会的能力責任:岡山

 東北大教授で仙台日赤の岡山氏によって公開された、放射線被曝と防護について「放射線被曝を避けるために」、「被曝をどう避けるか」を紹介してきました。また、事故以来の政府、県庁、マスコミが「放射能安全神話」とでも言うべき隠蔽と根拠なき安全風評を撒き散らして被曝させ、様々な悲劇まで創りだしてきたことをまとめた「原発事故後おきていること」を紹介しました。御覧ください。

 引用元である岡山氏のブログの「講演「被曝をどう避けるか」要旨」(1/2)について、東北電力の「マカブゥ」氏からコメントがあり(マカブゥは東北電力のキャラクターらしい)、以下はそのコメントへの返信である。

 返信であるが、原発稼動の主体であり、原発と放射能の専門集団とも言える電力会社社員、その集団を抱えている会社幹部はこの破局的な重大事故の中で、他社ごとではない被曝、放射能、食品など東北電力エリアの社会的な啓発宣伝をする能力と責任があるのではないのか。
 長文になったことと合わせ、マカブゥ氏への返信の域を超えた東北電力のみの問題ではない、引用者私は専門集団を持つ電力会社の社会的な能力責任への問題提起であると考え、紹介します。
 
 なお、下記の引用文は読みやすくするため、引用者により段落を増やしています
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  東北電力、マカブゥさんへ    1/19  岡山博氏のブログから

はじめに
本ブログ「講演『被曝をどう避けるか』」要旨」にいただいたマカブゥさんのご意見への私の返信です。長文であることと、普遍的内容を多く含むことの為に、返信としてではなく、私の新たな意見として掲載しました。マカブゥさんのご意見は本ブログの「講演『被曝をどう避けるか』要旨」の後に掲載されています。

本論
東京電力、東北電力社員家族はすぐに避難してほしかった
東北電力で、高い自覚と誇りを持って仕事されて、初めて言うことができる言葉、コメントを頂き、ありがとうございます。
マカブゥさんのような自覚と誇りをもって働かれている方がいて初めて、日本の健全な部分が作られていることがよくわかり、日本人として誇らしく、うれしいです。改めて感謝します。
福島原発事故が起きた時、東京電力や、東北電力関係の方やご家族が、もし、いち早く、危険を理解し、避難したのであれば、それはとてもよかったと考えています。汚染拡大の可能性を理解した方が、多くの知人に連絡したのはさらによかったです。
はじめの1ヶ月間、郡山から関東に子どもをつれて避難されたお母さんに「最も被曝したはずの1ヶ月を、郡山から避難できたことは、何ものにも代えられないほどよかった。教えてくれた電力関係者に感謝したら良いと思う」と私は話したことがあります。
私は、東北電力や東京電力関係者が避難したことを非難しません。
東京電力も東北電力も、社員家族を福島から緊急避難させる指示をすべきであったし、どこかの時点で事故と放射能汚染について、一般マスコミよりは専門的な解説や家族などの避難指示をしただろうと思います。指示や注意を出したとすればそれは正しいことで、出さなかったらまずいのです。

多くの国は、自国民の日本からの退去や関西への避難、汚染食品回避を指示し、日本から避難するための飛行機特別便や搭乗券手配し、汚染されていない食品を供給するなど、具体的取り組みをしました。
不安を煽る悪質な行為だと誰もフランス政府を非難していません。フランスなど多くの外国政府や大使館が被曝回避の注意や指示を出したのと同じように、電力会社や日本の政府・自治体が人々に対して、避難や被曝回避の指示や解説をするのは正当であるだけでなくやるべきことでした。
公的な関係者だけでなく、被曝被害を少なくするために誰もが考えるべきことでした。
東北電力の方や家族、知人が一人でも多く、少しでも早く避難することと避難できたとしたらそれは良いことです。だから、「電力関係者も汚染の危険性を知らなかった。避難もしなかった」ということを良いことのように話されるのは少し違います。

東北電力がすべきだったこと
原発事故と放射能汚染について、高度の知識を持っている東北電力は、原子炉冷却が途絶えた時、「電源回復や緊急的な注水よる原子炉冷却が確実に復活するまでは、冷却燃料棒損傷やそれ以降の爆発の可能性が高い」のだから、復旧作業に関係ない社員や家族の避難準備を緊急に開始して、遅くとも初めての爆発があった時点ではすぐに避難指示と行動をすべきです。電力復興や原発事故回避作業に関わらない東北電力社員や家族はすぐ避難すべきだったし、避難してほしかったと私は考えています。

東京電力の話と一緒にすると分かりにくくなるので、東北電力についてとして私の意見を書きます。
震災翌日の3月12日昼に、福島原発で原子炉冷却ができていないことをテレビで知りました。私はウラン燃料が破損して事故が拡大する危険があると考え、東京に住む大学生の子どもに、避難準備をすることと、今後原子炉がコントロールされていないことを示す何かが起きたら、九州の兄弟のところに10分の時間も無駄にせずすぐに避難するよう伝えました。その数時間後の12日午後には、爆発があったので、原子炉がコントロールできない状態にあることがほぼ確実であろうと考えました。子どもにすぐに避難することを指示し、翌13日朝1番の飛行機で九州に避難させました。公衆電話しか使えず、この空気は既に放射能汚染されているかも知れないと考えながら、貴重な時間を使い、何度も外に長時間並んで電話しました。
更に、自分の判断で、3月12日に自宅の換気口などは全てテープなどで目張りをし、マスク着用と、外で使った上着は部屋に持ち込まないようにしました。
私も避難したかったが医者なので避難しないことを決め、殉死しうると覚悟し、今後会うことはないかもしれないと子どもに話しました。
この時点では政府や東京電力、メディアは、被曝回避の指示や説明をしていません。
危険な事実や危険が拡大する可能性を伝えないテレビ報道しかない状況で、物理と原子力発電についての専門知識は無く、高校生程度の物理知識しかなかった私でも、今後短時間の間に事故が拡大したり、放射能汚染が拡大する危険性があることは分かったので、以上の判断と行動をしました。
東北電力は、事故の状況を少なくともテレビ報道については知ったのですから、初めのニュースからしばらくしてから知った私よりは早く知ったはずです。
放射能と原発事故について専門知識をもち、原発を運用し、原発について社会に対して責任と義務と備えがある東北電力は、あの時、私のような一般人より更に的確に、敏速に対応しえたはずです。
仮に、原発の爆発や、莫大な放射能汚染拡大がその後起こらなかったとしても、緊急避難行動を始めた私の判断は正しかったのですが、現実としても、その判断が全て適切であったことは、その後繰り返した、原発爆発と、放射能汚染の拡大で証明されました。
東北電力は、原発事故や原子力災害に関して、一般の人々や報道機関よりはるかに多くの知識やノウハウと情報を持っています。
東京電力だけでなく、東北電力もその能力を最大に使って、少しでも早く、1人でも多くの人を避難させる最大の行動をすべきでした。
時間の余裕はないので、できるところからどんどんやることと、それとは別系統で広く社会に知らせることです。その意味では、簡単に知らせることができて、危険になりうる地域の営業所、社員、関連企業にすぐ知らせることは当然のことで、非難されるべきことはありません。それによって避難した社員や関係者が非難されるべきでなく、「避難できて良かった」ことであり、知人に知らせて、避難させたりしたら讃えられるべきことです。
営業所や職員に避難準備や避難指示を出さなかったら、そのほうが問題です。
この時、原子力災害に関して、一般社会の人達よりも飛びぬけた知識と準備を持っているはずの東北電力が、福島県の浜通りや中通りの営業所、関連企業、社員に、次々と起こる変化について、緊急に、「重大な被曝につながるように事故が拡大するかもしれないからすぐ避難するように」という指示や情報提供をしなかったとすれば、「東北電力社員が始めに避難した」というよりも重大問題です。
営業所や社員、関連企業に、電力復旧作業の指示を出し、伝達するルートはあったのですから、できるはずです。

「一般住民を避難させなかったのだから、東北電力社員が先に避難したことはけしからん」と私は考えません。
私が問題にするのは、「東北電力社員が始めに避難する」ことではなくて、「危険が拡大する可能性を住民に知らせ、避難を呼びかけなかったことと、汚染した可能性がある食物を食べさせない取り組みをしなかった」ことです。
住民だけでなく、東北電力の支店や営業所、社員にも知らせず、避難指示を出さなかったら、住民に知らせなかったことに加えて更に非難されるべきことです。

東北電力社員も、会社からの公式な指示であれ、公式指示ではないが、危険だという情報であれ、それを知ったら、家族や、事故処理作業に参加しない人はすぐに避難すべきです。逃げずにもたもたしていたら、被害拡大の要因になるのでむしろそのときに、避難しなかったらそのほうが批判の対象です。
可能な限り、他人にその情報を伝えて、それで1人でも避難できたら、それは表彰に値します。『原発事故後起きていること』(本ブログに掲載)の文で、「電力関係者が知人に避難すべきことを伝えたために避難できた人がいて良かった」ことを私は肯定して書きました。

福島の営業所などに、重大な汚染を受ける可能性を知らせ、それに対処することや避難指示を、もし、最後まで(今まで)東北電力が行わず、社員や関係者は、東北電力からの情報はまったく伝えられず、テレビ報道や福島県からの指示でしか行動できなかったのでしょうか。
そうだとしたら、あの時点で事故対応作業に参加しない社員や家族、関係者に非難や汚染食物禁止を指示する決意も能力もない東北電力が原子力発電所を動かしているということはなんなのかという問題になります。
どの時点で、危険が拡大する可能性を知らせ、どの時点で避難指示を出したのか、それとも最後まで全くしなかったのか、もしできれば教えてください。

原発から放出した放射能の大部分は東の太平洋に流れましたが、風向きと天候しだいでは、海に運ばれた大量の放射能が陸を汚染した可能性や、爆発と放射能汚染が更に大規模になる可能性もありました。実際には大部分の放射能は海に向かい、放射能のごく一部だけが、陸地を汚染しました。
南東風から北風に変わって、福島、丸森、白石まで運ばれた放射能の移動が逆転して南向きに変わって、郡山や栃木、群馬を汚染し、被曝回避行動の結果ではなく風向きがかわったために、仙台は強い汚染を逃れました。
仙台の強い汚染が免れ、代わりに郡山や、栃木、群馬が汚染されたと分かったのはずっと後のことです。
あの時点で仙台在住で避難可能な人、特に妊婦や子どもはすぐに避難すべきでした。12日から3週間くらい、特に数日間は、深刻な汚染を受ける可能性はずっとあったので、私は今でも、子どもを13日に東京から避難させたのは正しかったし、それ以上の迅速な避難行動と呼びかけを東北電力は行うべきだったと考えます。

マカブゥさんのご意見と私の考え
繰り返しになるところは多いですが、マカブゥさんのひとつひとつについて私に考えを書きます。
「事故当時、福島県内の「東北電力」の社員は、電気復旧のために屋外で作業をしていました。早く電気を灯すために昼夜問わず総力戦で対応していました。 」 そうだっただろうと私も推測、理解します。そして、個々の社員や関連企業のみなさんをねぎらい、讃えます。
この時、東北電力は、「確実ではないが、被曝の可能性があるから、マスクや、帰宅後シャワーなど、被曝対策をしながら復旧作業をするように指示」すべきでした。
被曝軽減の対策と指示もせず、無防備で汚染された環境での作業を指示されて、電力復旧活動に参加した人がいたら、その人は東北電力に抗議し、損害賠償を要求すべきです。

「東電や東北電力は社員と家族を、緊急に福島から避難させた。社員家族から連絡されて、福島県から避難できた一般住民も多い。 一般住民には知らせなかった と述べていますが、少なくとも、「東北電力」の社員全員、原発の事故の情報は、テレビの情報で知りました。 事故が起きた情報は、テレビからの情報しかなく、「東京電力」から情報が提供されたといことは一切ありません」  
どの時点までそのような状況、つまり、東北電力からの情報や避難指示が全くない状況が続いたかできればご教示下さい。社員に対する放射能汚染に関する情報や指示はずっと、現在まで、国や自治体の発表や指示を受けたあと追い発表と指示しかしなかったのでしょうか。
そうだとしたらお粗末で無責任で、そのような企業は原発を運転してはいけないと私は考えます。

東京電力は社員や家族に、福島から避難するように指示し、それによって避難で来たと言う話しをいくつも聞いています。東京電力のことはご存知内でしょうか。もしわかったら教えていたがけないでしょうか。
社員や関連企業の方個々人の行動は立派でしたが、「福島原発が危険な状態なので、避難や、汚染食物を食べてはいけない、外で使った衣類を部屋に持ち込まない、帰宅したらシャワーすること」などを、東北電力が、社員や関係者に、自治体発表より遅れてしか知らせなかったとしたら、原発を動かしている企業のあり方として問題です。

「福島で屋外作業していた作業員に連絡しましたが、作業員(電力社員、グループ企業社員の方々)は、被爆覚悟で電気の早期復旧に取り組みました。こうした事実だけは知って欲しい。 」 そうだっただろうと私も考えます。個々の社員や関連企業のみなさんをねぎらい、讃えます。同時に、被曝対策もしたと言うことであれば胸が痛みます。東京電力の話ですが、長年下請けで原発作業をし、事故後は放射能汚染現場で作業に参加していた人がテレビで「これまで自分たちがやってきた原発が、事故を起こしたのだから、自分たちは逃げないで事故収束作業に参加する」と話されるのを聞いて、その立派さに涙が出そうでした。涙が出たかも知れない。
住民や社員の被曝損害を少なくするために、東京電力だけでなく、東北電力は対策と注意を行うべきでした。
東京電力という企業とその幹部は、被曝回避の責任ある行動をせず、住民が被曝を防ぐための努力や言動をむしろ妨害し、保身と責任転嫁の解説や対応を続けました。詳細は省きます。

「東京電力の方はわかりませんが、東北電力については、一般住民に知らせていなかったということは事実ではありません。」  
東北電力のあり方に関して問題にするのは、女川原発に限定していません。東京電力が事故を起こした福島原発周囲には東北電力の営業所や社員、作業員の方がたくさんいます。一般住民は更にたくさんいます。
被爆の可能性があったのは、原発周辺だけではなく、はるかに広い範囲です。そのことは、事故と放射能汚染が拡大した現実が証明しています。
仮に、事故が小規模でこれほどの被害に拡大しなかった場合でも、最悪を想定して、避難の為の広報や避難行動のよびかけが必要だったことは同じです。これまで、日本の原発は柏崎を含めて、たくさんの事故を起こしましたが、最悪を考えての情報提供や対策呼びかけは不十分で、むしろ「不安を煽る行為」として、正確な提供情報を要求する人を逆に侮辱、排除し、事故を起こしてもそこから教訓を得て生かす努力をせず、話題にすることを避けてきました。

被曝対策の対応について私の考えは上述しました。東京電力が、事故と汚染の現実と、事故と汚染が拡大する可能性を、意図して知らせない行動をしたのかどうか、十分な資料を公開していないので、私はわかりません。
どこまで汚染が広がるか分からないあの時点で、被曝を避けさせるために社会に働きかける活動や、汚染された地域に汚染されていない食物を供給することは重要でしたが、東京電力と行政は「不安を煽る」といって逆に妨害しました。
そのために多くの人の善意によって、汚染された食物が、津波と放射能被災地の両方に供給され続けました。善意で決意して、野菜や食物を買い集め相馬の被災知人たちに、福島や郡山で地場野菜を買い集めて送り続け、送られた方は子どもに優先して1月以上食べさせ続けた。
この地場野菜が強く放射能汚染されていただろうとわかったのはずっと後です。善意で食料を送り続けた人と、それを感謝して5歳の子どもに優先して与え続けた母親は無念です。直接伺った話です。
社会に対して責任を自覚するのであれば、一般人よりは放射能の知識を持つ、東北電力や社員は、東京電力や政府のそのような言動に抗議し、批判すべきでした。
汚染食品を食べてはいけないと主張し、避難援助や、汚染されていない食物供給活動を大規模に行うべきでした。

「女川原発については、震災後の対応について、すべてオープンに公開しています。」 このことも、また、東京電力とは異なって、より健全な気風があると言うことを教えていただいたことと、マカブゥさんがそれに誇りと自覚を持って働いていることも知ることができてうれしく、讃えたいです。

「文化も社風も全く違う会社なのに、同一視されてしまうのが悔しいです。」 東京電力とは異なる健全な社風があるとすれば、それはとてもよいことです。全て東京電力と同じと断定するのは誤りであるという認識は私も賛成です。
一方、原発を推進してきたことと、その進め方を含め、多くのそして基本的なことで、東北電力は日本の電力業界の一員として東京電力と共通の問題があると思います。詳細は省略します。電力事業をしている共通の立場として、東京電力のよくない社風と関連して現れた、事故被害を拡大した内容について、東北電力が東京電力の不健全さとは異なる社風があるためにわかることがあれば、公開して批判していただけたらうれしいです。
このような大事故を起こしているのだから、通常の「他社の社内のことはコメントしない」と言う状況ではありません。

「東北電力社員が得ていた情報のレベルは、一般の方と同レベルだったということを言いたかっただけです。文面から見ると、まるで「東北電力」社員が事故の情報を事前に知っていたかのように捉えてしまうように感じました。 社員がテレビからの情報を見て、自主的に判断して、家族を山形や新潟などの実家などに避難させたのは事実です。 なお、会社から家族を避難させろといった指示は一切ありませんでした。 社員各自が自分の頭で判断して自主的に家族を避難させたと思います。 もちろん自分で判断して留まった家族もいます(うちはそうです)。」 マカブゥさんの言われることはそのとおりと思います。言葉通り理解しているつもりです。
その上で私は、電力社員が情報を知り、早く避難したとしても、悪いことではなく、早く避難してほしかったと考えていることは前述しました。
特別に知識と責任がある東北電力が東京電力の福島原発事故に関して、指示や情報提供せずに、テレビで流されたあの程度の「安全」情報しか出さないまま、東北電力で働いている方が、放射能に汚染された空気を呼吸し、被曝しながら、電力回復作業をしていたとしたら、そのほうが問題です。

情報とは、事故の状況変化だけではなく、放射能や原発事故に関する基礎知識を含みます。一般の人にとって、情報とは今起きている事故の経過だけではなく、放射能汚染についての基本的知識も大切な情報です。
東北電力関係者は、刻々と変わる事故現場の情報は、テレビでしか分からなくとも、「現状は、安心と断言できる状況ではない」と判断できるには十分の基礎知識、「社員各自が自分の頭で判断して自主的に家族を避難させた」という判断をさせる基礎知識はもっています。
事故発生直後から、日本社会は政府や東京電力の「安全、逃げるな、放射線を怖がって心配するな。話題にするのは、現実離れの不安を煽る行為だ」という一方的主張で埋め尽くされました。
「危険性は低い。今後の危険を考えるのは不安を煽ることだから話題にするな」という悪質な解説に反論するだけの基礎知識を、東北電力の技術系社員や東北電力は、一般の人よりも持っています。
「事故の現実は安心できる状態ではない。最悪に備えて、判断行動すべきだ」という考えや、その根拠を伝えられることが、多くの人々にとっては重要な情報でした。緊急事態で人々が危険回避に役立つ「基礎知識」という大切な情報を、多くの人や社会に努力して提供しただろうか。疑問です。

「世の中に絶対安全がないのは、現場の人間、当事者の人間が一番わかっており、事故が起こらないように、未然に防ぐためにあらゆる努力をしています。これは建設の工事現場でも同じです。人の命は重い。本当に重い。一人の命に家族や多くの仲間がぶらさがっています。」マカブゥさんのこのような自覚と気迫ある言葉の内容とあり方にほとんど同意、同感で、敬意を持っています。設計や、建設、運転に関わった現場技術者の方の自覚と能力、努力を私は良いこととしてうれしく認識しています。東京電力とは異なる健全な社風があるとすればとても好ましいことです。
ただ、現場の一人ひとりの自覚とは別の問題として、東北電力幹部や、東北電力という企業・組織が許容されるほど自覚的であったか、自覚的にふさわしいあり方をしたかと言うことは別のことです。上述しました。

「命の重さ、今回の震災であらためて強く想いました。そのために安全超第一、安全の希求のためにコストを惜しんではいけないと思います。」同意です。そして安全に十分なコストをかける意思がなかったり、大事故を起こしたときに、当然の賠償や、現状復帰をする意思がないのであれば、はじめから、やるべきではありません。大きな設備や、大事故を起こしうる施設は、保険をかけて損害に備えることが当然要求されることです。
ところが日本の原子力発電所は、事故を起こした場合、それを補償する十分な保険をかけていません。世界の保険の大元締めともいえるイギリスのロイド保険に「リスクが高すぎて、地震国日本の原発は保険の対象にならない」と断られ、限定されたごく小額の保険しか契約できませんでした。
これに対して、東京電力を筆頭とする電力業界が行った対策は、「想定外の原因で大事故が起きた場合は、(やむをえないことだから)電力会社は(責任がないと了解して)放射能汚染の被災者に損害補償をしない」という法律を作らせることで、これが実際法律になりました。福島原発事故がおきてから東京電力が「想定外」という言葉を繰り返して、絶対に引き下がらないのはこのためです。

原子力発電所設置の危険性を重視し、設置と稼動に批判・反対する人はいましたがそのような意見は無視し、発言する人を侮辱し抑圧しました。
地域住民や日本国民は、原子力発電を設置、稼動させる条件として、「想定外のきっかけであれば、大事故がおきても誰も責任を取らず、被害者からも含めた税金で穴埋めする。損害は大きすぎて、実際には国も誰も払うことができないので、その場合は被害者に泣き寝入りさせる」というこの法律を了解して法制化されたのではありません。
殆どの人が認識しない中でこのような仕組みをたくさん作り、そのような法律を作って初めて、原発建設や稼動を可能にしました。
原発事故がおきたら、被害が小範囲ではすまないことは誰でも分かります。しかし、原発を置く市町村と、そこの漁協が了解すれば社会的合意が取れたと認める法律を作りました。
何千万人ではなく、数万人が対象なら、買収や懐柔、恫喝は簡単です。交付金や協力金など様々な金を使って、合法的な買収と、言葉どおりの買収や脅迫も行い、反対を抑えました。地元有力者対策は少数なので更に簡単です。
「社会貢献に協力した」と名目も用意されて、貧しい地域では、「原発設置に反対するのは地域を貧しいままにさせてもかまわない異常な人間だ」という評価を与えて、反対しにくい環境を作りました。
女川がそうであるかどうか、私は具体的な知識がありませんが、日本の原子力発電は広くそのように、買収、恫喝、自由な発言抑圧、反対者の地域社会からの排除によって作られてきたことはご存知と思います。
「原発に協力するのは立派なことだ」といわれ、個人的に何千万円提供されて、それでも原発批判を言い続ける続ける立派な人はそう多くはないでしょう。金や便宜を繰り返し提供され、それを合理化する甘い言葉を繰り返されれば次第に、批判する考えは減少し、肯定的な考えや感情、文化環境を育てます。
全員ではなくとも多くの人はこのようにして、原発を肯定していきました。そして狭い地域の地元民の了解を得たことを、社会の了解として扱う法律を作って作り続けた原発です。

「地域に安定した電気を送る」「電気を通じて地域に貢献する」という誇りを持って仕事をしてきました。」立派です。聴いて感動します。どうぞその誇りと自覚をこれからも持ちつづけてください。

「今、電力会社=悪と思われている風潮に、心がくじけそうです。電力社員でいることにつらくなります。福島で、雪が降っている中、昼夜問わず、被爆覚悟で電気の復旧に尽力した作業員の方たちの気持ちを考えると、どうしてもやるせなくてコメントしてしまいました。」私は被曝覚悟で活動された作業員の皆さんを全く、非難していません。非難とは逆に、讃え、感謝しています。
私が批判しているのは、原発事故と、汚染拡大の可能性があるのに、被曝を避けさせるために、電力会社がなすべき最善の行動と努力をしなかったことと、更には、東京電力や行政、専門家などが共同して、被曝を避けるための活動を抑圧して妨害したことです。
一般の人と比べると、東北電力を始め、電力会社は、原発と原発事故に関して、はるかに大きな知識と準備を持っています。

自覚と誇りとは個人自分自身に属するものです。正しいか、誤りか、道義に反しないかなど全て、自分の責任で判断し行動して保てるものと考えています。全ての言動と判断が正しい個人や組織はありえないと私は考えています。
誰か特定の人や集団の代弁者になって、具合の悪いことを正当化したり、正当な批判を妨げる言動をしては、誇りや自覚は本物ではなくなります。何に対しても健全な批判活動は大切です。批判されることは、人格や存在が前面否定されたことを意味しません。批判を排除すると、批判を許さない恐怖社会になります。日本社会はそのような面があります。
健全な批判と、侮辱・攻撃を区別せずに、侮蔑や恫喝を含めた態度や言葉で非難し攻撃するという行為や、相手の人が世の中に存在することも認めないような言葉で攻撃・非難をすることは正しくありません。同様に、正当な批判を、敵対的攻撃と誤認して、敵対的に切り返すことも誤りです。
マカブゥさんのような、自覚と誇りを持つ電力産業の専門家が、これからも、ご自身の為にも、社会の健全性を取り戻し維持するためにも、どうぞ引き続き誇りと自覚を大切に活動してください。マカブゥさんが非難されていないにも関わらず、くじけるとすれば筋違いの認識と心の動きです。くじけるどころか、現状のような社会では、私も含めた多くの人から期待、応援されていることを知っていてください。

「今回の東京電力の原発事故で、東北電力が「企業として知りうる情報」なんてものはないです。」
東北電力は一般社会や一般の人と比べると格段に高い原発事故や、放射能に関する基本的知識と準備があります。これを提供して被曝被害を少なくするために活動すべきだったのです。

「社員を一般住民と区別して優先避難させるなんてことはありえないです。というより、震災後、すぐに全社災害復旧体制に切り替わりました。避難どころか全員災害復旧作業に入ったんです。 」 
「社員を一般住民と区別して優先避難させたかどうか」が問題なのではなく、社会に対して「逃げろ、食べるな」という働きかけの欠如を問題にしています。

「現場で復旧作業をしていた身としては、本当に悲しい。 後ろから石をぶつけられたようなショックを受けました。」  私は「現場で復旧作業をしていた方」を全く非難していない。繰り返します。感謝し、讃えて書いています。悲しむのは筋違いの理解と、心の動きです。悲しまれては困ります。「讃えられた」と誇りと共感を持ってください。

「今回のように間違った情報が伝わってしまっていることが残念です。 訂正して欲しいと切に思います。」 私に話してくださった方が「東北電力の知人から聞いて遠方に家族を避難させた」というのは恐らく本当です。「又聞きではなく、ご本人から直接、東京電力ではなく東北電力の知人から、さほど親密でない知人なのに夜中緊急に教えてくれたこと」などが鮮烈で印象的なお話でした。「東北電力で上からの逃げろという指示を知人が聞いて」と話してくれたように覚えています。
それが、東北電力の会社の正式指示であったか、社内に流された情報であったか、あるいは放射能の知識のある方たちから個人のレベルで判断してのことなのかは、私は責任取れませんが、「東北電力として正式の方針」とは書いていないので、この記述は残します。ただ、今後この記述を引用する再には、なるべく、マカブゥさんからこのような意見があったことを紹介するようにします。

 これまで、原発に批判的な人に対して「原発は安全でないという人間はまともな人間ではない」とでもいうような屈辱的扱いをして排除し、危険だという意見を無視するだけでなく発言する人を攻撃、侮蔑までして原発を造って稼動させ、福島の大事故を起こしました。技術面でも安全対策の軽視があり、安全対策を話題にすることもタブーのような環境で原発が推進されたと思います。
批判的な意見や専門家は全て、原発計画や運転の基本戦略の検討などから、完全に排除されてきました。
事故がおきて、世界中の英知を集めて事故対処をしなければいけなくなっても、これまで原発事故を考え対策を要求してきた日本の専門家は、事故がおきてからも事故処理や対策討議の場から排除されたままです。
さほど問題なく冷却できるはずの燃料プール対策の失策や、炉心への海水注入の遅れなど、東電の打算と保身、責任回避の為に、最悪を予測した対応をせず、そのために必要な対策を遅らせてしまい、事故が拡大した面があります。

それでも事故を起こした責任者は誰も処罰されず、地位も収入も安全も確保しました。彼らの収入を保証する分までも税金で埋め合わせする仕組みが殆ど出来上がりました。
作ったのは、東京電力を中心とする電力業界と、その強い影響力下にある官僚機構と政治家、メディアによるものです。私は不当と考えています。
一方で、汚染地域の人は、1年近くたった今も、仕事、家族生活、人生の展望、安全が破壊されたまま殆ど放置されています。東北電力が健全であるなら、東京電力や、政府、行政のこのような方針に同調すべきではないと考えます。

マカブゥさんへ
東京電力とは異なる東北電力の社風に誇りを持って働いているマカブゥさんは、福島原発事故における東京電力や政府のあり方に対して健全な異論をお持ちではないかと推測します。通常であれば誇りや自覚だけの問題かも知れませんが、今はその異論を正当に発言されることが、多くの人々の苦痛や損害を減らし、不健全な社会を正すことにつながります。
東北電力にしても、行政や個人にしても、言動や判断が全て完全に正しいという人や社会は世の中にありえないと私は考えています。
立場や都合から離れ、一人のまっすぐで誠実な人として、一つ一つを丁寧に吟味して、一つ一つに関して、正しいか誤りか、道義に反していないか、何をなすべきかしてはいけないかなど、マカブゥさんが引き続き、誇りと自覚を持って、原発に関係して働かれている知識や経験をそのために発揮していただけたらうれしいです。
マカブゥさんから、自覚的で道義性を大切にする、気迫のこもった返信を頂き、感謝します。私の意図するものも共有できたらうれしいです。社会がまともになり、人が不必要な苦痛を受けない健全な社会にするために、悲しみや無念、喜びを共有し互いに励まし、喜びあいたいです。

「自由に安全に発言や話し合い提案ができない。母親が子どもの食べ物や給食を心配して学校で話し合うこともできない。
学校急初期について保護者だけでなく、栄養士や教員も恐怖感なく、自由に、給食の話題を提案することもできない。
発言や提案をすると、それによってその後延々と続くと予測される、他人からの屈辱的や、恫喝的対応、人事上の不利益などを相当覚悟しないと発言できない。」
これが日本の現実です。

「放射問題について、まじめに考え話し合って、被曝被害を少なくしよう。人々や子どもに安全な環境にしよう。そのためにもくよくよして落ち込んでしまうのではなく、元気を出してがんばろう」と言わずに、「くよくよするのは放射能の被害より悪い」と言って、被曝をまじめに考え、話しあい、対策を要望することを侮辱、抑圧する専門家の講演がくりかえされ、その解説と主張がメディアにあふれた状況は、基本的には今も続いています。
反対意見はまったくメディアで報道されませんでした。今は、少し変わってきましたが、今でもテレビで報道される批判的な意見は限られています。「くよくよする人が癌になる」と放射能被曝で起こる被害の原因を、「被曝を受けた人の心の持ちよう」と言って、事故を起こして汚染を拡大させた東京電力や政府から、被害者に責任転嫁するものです。

「環境や食物の放射能汚染は軽度で心配するレベルではない。安心して自家野菜も安心して食べるように。」という講演内容は「有毒な疑いがある食品は、販売、製造してはならない」と定めた食品衛生法をはじめとする多くの法律に違反する違反行為を、自分で行ったことであり、さらに、不特定多数の人々や個人に法律違反を扇動したことも法律違反の犯罪行為であると私は考えています。
「環境や食物の放射能汚染は軽度で心配するレベルではない。安心して自家野菜も安心して食べるように。」と講演した内容の誤りは、今は広く汚染されてしまった現実によって否定されています。
それが判断の誤りなのか、それとも確信を持って嘘をついたのかわかりませんが、責任ある人が有害な判断を社会に繰り返し指示し、その結果多くの人が被曝したのですから、講演を真に受けて、被曝を増やしてしまった人たちに、賠償と謝罪すべきです。

不健全な日本社会の現実
汚染食品を食べさせ食べるように指示、指導した専門家や行政担当者や責任者は、今も賠償と謝罪をしていません。
それに留まらず、そのような責任ある人は、今でも処分も処罰も受けず、今でも、放射能と被曝対策の指導的な地位を保って、社会に号令しています。不健全で異常です。
この状況は、日本社会を外から見直して考えれてみれば、日本の現実が健全でまともな社会でないことがわかります。
社会を健全でまともな社会にしたり、維持するためには知性と勇気が必要です。マガブゥさんが、すばらしい自覚と誇りを基に、知性と勇気をさらに社会に開いて発揮していただけたらうれしいです。

このブログを、健全な精神を深め、共感、交歓する場にして下さい
私はブログを開くと、卑劣で執拗な非難やいやがらせ、名誉を汚し屈辱を加える人たちがでてくるだろうと思い、それによる苦痛を考えるなど、自分のことを考えました。
ブログを開くことが、「まじめな発言や言語・議論・精神活動を破壊する卑劣な言動を批判し、健全な言葉や精神を共有し、深め、励まし喜びあう場」になることは想定していませんでした。たくさんの方からご意見をいただいて初めて分かりました。
健全な精神をもっていることが「つらくなったりやるせなくなったり、くじけそうになる」日本社会の中で、想定外のことでした。私のブログが、健全な精神を深め合い、逆に励ましや力を得たり、交歓する場にしていただけたらうれしいです。

長文になったためお返事が送れて済みませんでした。繰り返しや漢字変換済など、きちんとした文章になっていない点があると思いますが、十分吟味すると更に遅れてしまうので、この段階の文章でお返事とします。これからも宜しくお願いします。
   岡山 博
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