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もうすぐ北風が強くなる

通貨戦争(45)カダフィの通貨構想:トッテン

 イラクとリビアの相違点。
 イラク侵攻はは独仏中露が反対棄権したため米国による非合法「多国籍軍」による攻撃となったが、リビアは米英仏がNATO軍の形で反乱側を支援した。

 イラクとリビアの共通点。
 共に大産油国で、石油のドル決済を止めようとした。
 共にいわゆる「復興社会主義」国家であり、社会主義政策と共に強力な組織政治が行われていた。
 
 大産油国がドル決済を止めることは、他の産油国に影響し、今や完全なペーパーマネーであるドルの基軸通貨性をゆるがす。

 関連は 「イラクの次はリビアを帝国主義軍事侵略」、「リビアから消える16項目」、「リビアは米英仏三国のかいらい政権になる」を御覧ください。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2011年12月14日
去る10月、北アフリカのリビアで42年間にわたり独裁者として君臨してきたカダフィが殺された。
国際刑事裁判所から逮捕状が出されていたが、裁判にかけられることもなく、NATO軍に支援された反乱軍によって捕まったその場でカダフィは殺害されたのである。
(ビル・トッテン)

カダフィの通貨構想

リビアでデモが始まったのは今年2月、エジプトのムバラク政権が崩壊した後だった。
カダフィを支持する人々と反カダフィ派の武力衝突が始まり、3月にはNATO軍がリビア国民を守るためとして軍事行動を開始し、4月にはミサイル攻撃でカダフィの息子と孫が殺された。
その後スペインやドイツ、米英もリビアの反体制派「国民評議会」を正統な政府として承認し、カダフィ派と反体制派の激しい戦闘が続いていた。
カダフィの最期は、同じくアメリカ軍に殺害されたビンラディンや、イラクのフセインを思い出させる。

リビア国内の紛争にNATO軍が出て行き反カダフィ派を支援した理由の一つはリビアの石油埋蔵量がアフリカ最大ともいわれる資源国であることは明らかだが、裁判にかけられることもなく殺害されたのは石油以外にも理由があるとみる海外アナリストがいる。
それはカダフィがリビアの石油をドル建てで売ることを止め、金に裏付けられたディナール建てにすることを計画していたからだという。

現在アフリカの主要通貨となっているドルやフランは、政府の信用で流通している不換通貨で金や銀との交換が保障されていない。
しかしカダフィ政権は150トンともいわれる金を保有しており、この金に裏付けられたディナールをアフリカや中東地域の共通通貨に広めていこうという目論見(もくろみ)があった。
欧米の中央銀行はそれを阻止する必要があったのだという。

結局見つからなかった「大量破壊兵器」を持っているとして始まったイラク戦争も、2000年にフセイン政権が原油取引をドル建てからユーロ建てに切り替えることを要求したことが原因の一つだった。
裏付けのないドルが基軸通貨から転落してアメリカに還流されなくなれば、世界最大の債務国家の膨大な債務が顕在化して残るだけだ。債務を抱えるアメリカ準備連邦制度がこれを許すはずはない。

拙著『アングロサクソン資本主義の正体』でも繰り返し述べたが、世界の中央銀行の主な役割は、通貨の発行、通貨価値の安定だとわれわれは信じている。
しかし日本銀行は政府機関ではないし、欧州中央銀行もアメリカ連邦準備制度も政府の持ち物ではない。
そして通貨の大部分は民間の銀行が貸出(ローン)を通して打ち出の小槌のごとくコンピューターに数字を打ち込んで作る不換通貨で、これが信用創造のシステムである。
金に裏付けられたカダフィの通貨構想は欧米の銀行家たちにとって脅威であった。

カダフィ政権下のリビア中央銀行は国有で欧米の金融機関がつけいる余地はなかった。
反カダフィ派国民評議会をNATO軍が支援するのは、その国有銀行の金融資産が目当てでないと誰が言えるだろう。
新政権の下、リビア中央銀行の資産が誰の手にわたるのか。独裁者亡き後のリビアを支配するのが誰であれ、その後ろに欧米の姿があることだけは間違いない。
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堕国論2:上杉

 堕国論2   12/25  上杉隆   ダイヤモンド・オンライン

  内閣総理大臣ですら洗脳する
  官報複合体の「嘘」

 東京電力福島第一原発の事故は、日本の社会システムの欺瞞、とりわけパワーエリートたちの驕りを、世間に知らしめるきっかけになったようだ。

 放射能事故における数々の情報隠蔽は、結果、多くの国民を被曝させ、それは食品などを通じて内部被曝という形で現在も進行している。また、そうした放射能事故処理の失敗は、国際的に日本という国家全体の信頼を落としめるに十分なものになっている。

 果たして、そうした欺瞞は、徐々にではあるが明らかになりつつある。それは、原発事故以降、自由報道協会などを中心としたフリーランスやネット、あるいは海外メディアたちの努力によって事実に近い情報が明らかになってきたことが大きい。

 とりわけ、インターネットの役割は大きい。とくにツイッターなどのSNSやニコニコ生放送、IWJのユーストリーム中継などによって、一部の国民が、政府やマスメディアの隠してきた現実に直面し、情報を比較検証できるようになったことが覚醒をもたらしているといってもいいだろう。

 だが、それでも、そうした動きはあまりに遅い。震災発生から9ヵ月、手遅れになり始めている事象もある。なにより、霞ヶ関や記者クラブなどの「パワーエリートたち」は、いまなお自らの保身のために、「嘘」をつき続けているのだ。

 官報複合体によるそうした「嘘」は、国家権力の頂点にいるはずの内閣総理大臣ですら洗脳してしまっている。

 先週9日、野田首相になって初めて記者会見で質問をすることができた。

〈(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは上杉さん、どうぞ。

(記者)
 フリーランスの上杉隆です。3月11日の震災から9ヵ月経ちました。当時、総理も閣内にいた前政権の中で、工程表の件に関してなんですが、ステップ2完了を9ヵ月で終わり、そして安全に避難民が戻れるという最初の発表がありました。また当時、市場に出ている食品は全て安全ですという枝野前官房長官の発言、それから格納容器は健全に守られている、レベル7に到達するような事象ではない。このような発言がありましたけれども、この当時の政府見解はどうも今現在違っているんではないかと思うんですが、そのことに関して変更、つまり訂正はあるのか。あるいはですね、なければそのままで結構なんですが、例えば粉ミルクからセシウムが検出されたとか、あるいは先ほど総理ご自身の冒頭の発言で事故の収拾を来年度にするという発言があったので、ちょっと前者の発言と矛盾するんじゃないかということがあるんで、その辺り、かつての政府見解から変更があるか、訂正があるのか、なければお答えいただかなくて結構です。

(野田総理)
 確か今年の4月にですね、事故収束に向けての工程表をつくりました。そしていわゆる第2ステップ、冷温停止状態をつくるには来年の1月までという工程表だったというふうに思います。その工程表をなるべく前倒しをしようということで取り組んできて、なんとか年内にそれを発表できるかどうか、という今最終的な調整をしています。冷温停止状態にするということは、これは圧力容器の底部のところの温度を本当に冷温になっているかどうか、現時点ではこれは冷温になっているというふうに思います。加えて放射性物質の管理が安定的かどうか、こういう観点から冷温停止状態であるかどうか等々の総合の判断をすることになっていまして、それはその工程表に基づいて作業を進めてきてそしてそろそろ結論を出せるかどうか、という状況だというふうに思います。なお、例えばコメの問題。一部地域から出荷停止という状況になりました。それから今粉ミルクの問題等々出ております。食べ物についてはこれまで以上に細心の注意を払ってですね、検査をしていく。そして国民の皆さまに安心安全をきちっとご説明できるような環境整備をしなければいけないということは、依然としてこれはやはり宿題として残っているというふうに思っています〉(12月9日、内閣総理大臣会見)

  欺瞞に満ちた言葉の修正による
  「冷温停止状態」に何の意味があるのか

 冷温停止状態――。

 こうした文言の変更による事実関係の巧妙な修正は、3.11以降、霞ヶ関やマスメディアで繰り返し行われてきた。それは、情報隠蔽のための常套手段であり、また自らの責任を回避するための防衛策でもある。

 そもそも、「冷温停止状態」とは何か? 少し前までそれは「冷温停止」と言った。だが、冷温停止の定義に現実を合わせることが不可能とみると一転「状態」という言葉を勝手に付加し、巧妙な修正を行ったにすぎない。

 さらに思い出してほしい。事故直後、政府やマスコミは、その「冷温停止」という表現自体も別の言葉、「冷却完了」といっていたのである

 つまり、「冷却」も「冷温停止」もできない、だが、工程表(これも繰り返し修正しているが――)は守りたい、その結果、「冷温停止状態」という言葉を創作し、国民の目をごまかそうという魂胆なのである。

 政府はあす(12月16日)にも「冷温停止状態」を宣言するだろう。そして、マスコミも、無批判にそれを報じることになるだろう。

 そうした欺瞞は決して許すべきではない。なぜなら、その「嘘」は単に「嘘」ではなく、国民の健康や国家の信頼に大きく関わることだからだ。

 同じく先週9日、筆者は、野田首相にこうも尋ねた。

〈(記者)
 安心・安全という部分では、最初の工程表の手順では、除染が終わった地域に住民をお戻しするというふうな話だったんですよ。除染が終わった地域から。ところが現状では、お戻りになってから除染をすると変わったんですが、180度話が違うんですが、安心・安全の精神から逸脱するんじゃないでしょうか。

(野田総理)
 いわゆる冷温停止状態を確立をすると。ステップ2が終わった段階で警戒区域の問題とかのゾーニングをどうするか、という話になってまいります。その警戒区域等の見直しをする際に一日も早く故郷に帰還できるために、どの地域からどういう形で除染をするかという、そういう作業になっていくというふうに承知をしています〉(同前)

 野田首相と官報複合体は国民で人体実験を行おうとしているのではないか。そこまで警戒区域の解除を早める理由はなにか。

 それは、3.11の原発事故発災以降も、原子力国家のパワーエリートたちの利害が一致し、国民の健康や国家の国際的信頼を犠牲にしてでも、自らの立場を守るために公的な情報を加工・修正しているというつまらぬ面子の問題にすぎないのだ。

 驚くべき国家の出現である。自国民を進んで犠牲にする国が、民主国家を標榜し、先進国の一員であると大きな顔をしているのは悪い冗談以外の何ものでもない。

  「緊急時の情報隠蔽は義務違反」
  佐藤栄佐久元福島県知事の嘆き

 5年前(2006年5月)、東京電力福島第一原発の危険性をいち早く指摘した佐藤栄佐久福島県知事(当時)は、出席した欧州地方自治体会議で、直前に採択されたロシア・スラヴィティチ声明を知った。

 筆者がキャスターを務める『ニュースの深層』(朝日ニュースター)に生出演した際、その声明に触れ、福島原発事故後の酷い情報隠蔽を嘆いた。

「スラヴィティチ声明の第4条はこう謳っているのです。原子力の管理、および事故の対応においては、『広範で継続的な情報アクセスが確立されなければならない。国際機関、各国政府、原子力事業者、発電所長は、偽りのない詳細な情報を隣接地域とその周辺、国際社会に対して提供する義務を有する。この義務は平時においても緊急時においても変わることはない』と。政府は当初、緊急時なので情報は出せない、出すとパニックになるといっていました。明確な義務違反です」

 佐藤氏の指摘するように、パニックを防ぐという根拠のない理由によって、官僚、メディアなどの日本のパワーエリートたちが、こぞって情報隠蔽を続けていたのは紛れもない事実だ

 それは辞任直後に、菅直人前首相が自ら認めていることである。だが、換言すれば、そうした情報隠蔽は犯罪行為を自ら認めたに等しい。

 少なくとも、スラヴィティチ声明に書かれた緊急時の情報提供義務に違反している。

  責任を取らない日本のパワーエリートたち
  国民は騙せても、世界では通用しない

 政治は結果責任である。報道も結果責任である。だが、日本のパワーエリートたちは誰一人責任を取ろうとしない。むしろ、汲々として自らの身を守ることだけを考え、結果として正しいことを発信し続けてきた多くの人々を社会的に抹殺してきたのだ。それが、日本の社会が行ったこの9ヵ月間の現実である。

 政府や官報複合体が、起こりもしないパニックを理由に、原発事故の真実を知らせず、多くの国民を被曝させたという事実は決して拭えない。それらはいま次々と明らかになっている。

 だが、少し手遅れだったようだ。国内の一億人以上の国民は洗脳して騙すことができても、それは世界では通用しない。

 原発事故を直視できない日本という国家への疑念は、確信的な不信に変わってしまった

 もはや、現在の日本は堕ちるところまで堕ちなくてはならないのだろうか。そうやって先進国から脱落し、放射能との長い闘いを続け、復活の道を模索しなければならないのだろうか。

 このコラムでも繰り返し言い続けてきてきたように、現実を直視しない限り、原発の収束も、震災からの復興もありはしない。

 今回の原発事故は日本人全員に発想の転換を求めている。それは、堕ちるところまで堕ちなければ、日本の再生はないという厳しい現実を見ることから始まる。

「生きよ、堕ちよ」(坂口安吾)

 日本は、一度、滅びないと生まれ変われないのかもしれない。

 次回、ジャーナリスト上杉隆による本コラムは最終回を迎える。
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堕国論:上杉

  堕国論    12/8  上杉隆   ダイヤモンド・オンライン

  「粉ミルクからセシウム」
  またも最初の報告は市民団体から

「子どもと女性を守ろうとしない国家(政府)は必ず滅びる」

 明治の粉ミルクからセシウムが検出されたという共同通信発のニュースは、強烈な無力感を筆者にもたらした。

 本コラムの読者ならばすぐに察しがつくだろうが、相も変わらずこのニュースも、最初に調査したのは政府やマスメディアではなく、市民団体(NPO法人・チーム二本松「市民放射線測定室」)である。

〈速報 【粉ミルク(明治ステップ)からセシウム検出】2011/12/06

明治乳業(株)が製造の粉ミルク『明治ステップ』からセシウムが検出されていることを、明治乳業(株)側が認め、40万缶が無償交換されることになりました。
http://www.47news.jp/news/flashnews/

当測定室での測定結果を基に、共同通信社の記者さんが動いて下さいました。〉
(http://team-nihonmatsu.r-cms.biz/topics_detail1/id=43)

 それにしても、いったいこれで何度目だろう。そう思い、ラジオ出演中の筆者は、思わず冒頭の言葉をラジオ(『吉田照美ソコダイジナトコ』(文化放送))でつぶやいていたのだった。

 4月4日の放射線汚染水の海洋リーク、レベル7への引き上げ、メルトダウンの追認、作業員の被爆、海産物への放射能汚染――。

 だが、3・11以降、数あるこうした政府・東電・マスメディアの情報隠蔽の嵐の中、ずっと取材をしてきた筆者自身、もっとも堪えたのは次の3つだった。

「4月の茨城、千葉の母親の母乳から放射性セシウムを検出」、「6月の450人の児童の尿から放射性セシウムを検出」、そして、今回の「粉ミルクからの放射性セシウム検出」である。

  まず「子どもと妊婦を守る」
  最低限のモラルすら守ろうとしなかった国

 放射能に対して、相対的に耐性の弱い子どもや妊婦などに対しては、震災発生直後から、世界中の政府・国際機関などが優先的避難を日本政府に対して訴えてきた。

 実際に、米国やフランスをはじめとする各国は、3月18日までには子どもと女性を、政府の用意したチャーター機で国外退避させるなどしている。

 また、同時期、日本国内でも、チェルノブイリ子ども基金の創設者でもある広河隆一氏などが声を上げ続け、福島県の各自治体に対して、子どもと妊婦の一時退避を直接、呼びかけ回っていた。

 さらに同じ3月、予想される内部被爆の危険を避けるため、グリーンピースなど各国NGOのスタッフなどがやはり現地入りし、食品の安全摂取と検査の必要性を説いて回っていた。

 同じくWHOも、福島県内の子どもと妊婦への取り計らいを日本政府に求めていたのも3月のこの時期である。

 なにより、こうした有事の場合、子どもと女性を守ることこそが、政府や各自治体の行うべき最優先事項であるのは自明の理だろう。

 古今東西、長い人類の歴史の中で、数多くの戦争や天災、大事故などが発生している。

 近代以降、有事の際には自国の子どもを守り、女性を救うということが、国家の存亡につながっている最重要事項になっている。

 とりわけ、現代においては、社会的弱者である子どもと妊婦は特別に扱われるべきという概念が広がり、世界共通の認識にさえなっている。

 だからこそ、私たちはいま、たとえば世界各地で頻発している紛争において、子どもたちが死ねば大きなニュースになり、また地震などの天災発生時には、妊婦などの救出が優先されることに少しの違和感をも持たないのであろう。

 だが、そうした時代の中、「子どもと妊婦を守る」という最低限のモラルですら守ろうとしなかった国がある。私たちの国・日本である。日本の社会は本当にその大事なことを忘れてしまったのだろうか。

  党内からの子どもと女性優先避難の
  提言を無視し続けた民主党政権

「被災地支援を続けている私達にも世界各国から暖かな救援物資などの援助が届きました。本当に感謝でいっぱいです。

 『液体ミルクを送ったので被災者の皆さんに届けてほしい』2億円分もの液体ミルクがヨーロッパの友人から届きました。

 あくまでも寄付は匿名にしてほしいということで名前を明かすことはできませんが、この方は民族浄化から自らの命をかけて第二次世界大戦中に迫害されている人々を救った方の孫にあたる方です」(原口一博オフィシャルブログ)

 原口一博衆議院議員は、初期の段階から子どもと女性の避難を呼びかけ続けてきた数少ない民主党幹部のひとりだ。

 3月、官邸に乗り込み、菅直人首相(当時)や枝野幸男官房長官(当時)に子どもと女性の優先避難をも直談判している。

 だが、政府は、原口氏の提言を無視し続けている。そればかりか、細野豪志原発担当相は、避難解除宣言とともに、子どもと女性までも、例外なく南相馬などの解除域内に戻してしまう始末である。

 世界の対応と間逆のことを続けている、これが現在の日本社会の現状なのである。

  なぜチェルノブイリの教訓生かし
  “未来の日本人”を救おうとしないのか

 実際、子どものセシウム摂取を防げれば、後の健康被害も軽減できるという教訓は、チェルノブイリ事故を取材してきた広河隆一氏も繰り返し述べている。

 たとえば、当時、ポーランドでは母乳からの粉ミルクに切り替えたため、小児甲状腺癌の発症率が下がったという報告もある。

 なにより、放射能国家日本を救うのは、未来の日本人、つまりいまの若者たちだ。とりわけ、その主役になりうるのが現在の乳幼児やこれから生まれてくる赤ちゃんたちだ。

 その赤ちゃんの「主食」であるミルクの汚染に関して、当初から多くの人が万全の注意を払うべきだ、といい続けてきたのは当然のことだろう。

 だが、日本政府はそれをできなかった。今回の粉ミルクからのセシウム検出は、残念だったという言葉では片付けられない。

 にもかかわらず、政府や大手メディアは、次のような報道を続け、相変わらずの「安全デマ」を撒き散らしている。

〈粉ミルクから1キログラム当たり最大で30.8ベクレルの放射性セシウムが検出されたことについて、食品の安全に詳しい国立医薬品食品衛生研究所の松田りえ子食品部長は「今回検出された値は国の暫定基準値を下回っているうえ、粉ミルクは7倍くらいに薄めて飲むので、赤ちゃんの健康への影響を心配する必要はないと思う。ただ、メーカー側が公表したように、大気中の放射性セシウムが入り込んだのだとすると、空気中の微粒子が製造過程で混入したことを意味している。放射性物質については想定外だったとしても、外部から空気を取り入れる吸気口に微粒子の侵入を防ぐ目の細かいフィルターを設置するなど、管理態勢をもう少し厳しくしておくべきだったのではないか」と話しています〉(NHKニュース)。

 国の暫定基準値は震災以降、ご都合主義で引き上げたものだ。さらに内部被爆による幼児などへの健康被害はわかっていないことが多い。それをなぜ、「心配する必要はない」と言い切るのか。報道の公平性の観点からいえば、危険だという反対意見を述べる専門家も出演させるべきである。

 3・11以降、そうした当然のことをしなかったために、日本は世界からの信頼をも失っていったのだ。

  明治乳業に罪はない
  「犯罪者」は政府やマスメディアだ

〈【北京時事】中国国家品質監督検査検疫総局は7日、日本産の粉ミルクについて、昨年4月に日本で発生した口蹄(こうてい)疫や今年の東京電力福島第1原発事故の影響を受けて導入されている輸入禁止措置を現在も継続していることを改めて明らかにした。

 明治の粉ミルク「明治ステップ」の一部から放射性セシウムが検出されたことは、7日付の中国各紙も報道。同総局は、オーストラリアで製造され正規輸入された明治の粉ミルクについては、検疫当局の検査に合格し、「豪州産」と表示しなければならないと指摘。正規販売されている豪州産製品には問題ないとの認識を示した。(2011/12/07-14:41)〉(時事通信)

 明治に罪はない。「犯罪者」は、一方的な「安心デマ」を広めて、結果として、日本という国家の信頼までをも貶めてしまった政府やマスメディアの方である。

 あの3月、川内博史衆議院議員らが繰り返し訴えていたのは、SPEEDIの公開だった。

 仮に、公開によって、放射線の飛散状況などを知ることができていれば、個人も企業も各々が判断を下して各々の対応ができたはずだ。明治であるならば、その数日間だけ操業を停止して、今回の悲劇を回避できたかもしれない。

 政府・東電・マスメディアという「原子力帝国」が、そうした情報公開に積極的でなかったのは、国家や国民のことは、自らの利益や立場に比して二の次だと考えているということの証明となろう。

 中でも、子どもと女性を守ろうという成熟した民主国家であるならば、誰もが考えうる大前提を忘れてしまっていたのは残念極まりない。

 繰り返し言おう。子どもと女性を守れない社会は必ず滅ぶ。日本政府と東電、そしてその「犯罪」に加担した日本のマスメディアはいま、世界から冷たい目で見られている
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いろんな旅を続けています。
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