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ユーロは国民国家を解体するか

 ユーロ

 先に「破滅するユーロか、破滅する国家か」にて、ユーロの致命的な欠陥とルービニ教授の現状分析を紹介しました。

 ギリシャがユーロから脱退してドラクマに戻るくらいは大した衝撃にはならないが、ユーロの致命的な欠陥が衆目に明らかになってしまった今、ユーロを解体することは実体経済の政府、企業、家計に致命的な衝撃となってしまう。
 したがって、ユーロを解体することは不可能であり、ユーロを崩壊させないためには、各国家の主権を解体するしか無い。

 通貨金融を各国に戻すか、通貨金融と共に財政の統合へ向かうかとの正念場である。
 つまり、ユーロの破滅か、国家の破滅かと選びようがなく、国家主権の解体へと進まざるを得ないこととなるだろう。
 このことは曲がりなりにも「民主主義」の国民国家を解体し、ユーロ官僚支配へとたどる道である。

 各国議会はほぼ何の権力もなくなり、国民の参政権は損なわれる。
 圏域の各国民の意思を真っ当に反映する議会制度は、その策定、改良には長い時間がかかるだろう。
 それまでは、民意は不十分にしか反映されなく、もちろん納得されないだろう。

 我々は、人類史上始めてペーパーマネーのために国家が解体する、と言う場面を目撃するのか。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
  ユーロの正念場   11/29   田中宇

 英国外務省は、欧州大陸のユーロ圏各国にある英大使館に対し、ユーロが崩壊して欧州の金融システムが破綻し、各国で暴動など社会混乱が起きたとき、各国在住の英国民をどうやって保護するか、対策を考えるよう命じたという。
 ユーロ圏の国債危機は、イタリアからフランス、ベルギーにまで波及し、最強のはずのドイツ国債も売れ残った。英政府高官は、ユーロの崩壊が時間の問題だと考えている。ユーロが崩壊すると、各国の銀行が破綻して預金が封鎖され、ユーロ圏の経済規模が半分に収縮するかもしれないという。 (Prepare for Riots in Euro Collapse, Foreign Office Warns) (The euro collapses - what if?)

 しかし、事態はまだ万事休すでない。
 FT紙のコラムニストは、ユーロが救われるには、EUが3つの対策を急いでやらねばならないと書いている。
 一つ目は、欧州中央銀行(ECB)が国債危機に見舞われている国々に無制限の資金供与をするとか、EUが新設した救済基金(EFSF)の後ろ盾になるなど、ユーロ救済に本腰を入れること。
 二つ目は、ユーロ共通債の発行に向けた確定的な日程を決める必要性だ。従来のような、ドイツがギリシャの債務を保証するといった、ひとつの国が他の国の債務を保証するやり方は限界がある。代わりに、国家を超えた共通債の新設が急務だ。 (The eurozone really has only days to avoid collapse)

 ユーロ救済に必要な三つ目は、財政統合である。
 ユーロ圏各国の国権(財政政策の決定権)を制限する代わりに、ユーロ圏全体として、各国の財政政策に関する枠組みを作り、ユーロ圏の財政の信頼性を高める。従来のように、EUの行政府にあたる欧州委員会で各国の財政緊縮を合意するだけでは足りず、各国が条約を締結する必要がある。
 12月9日に開かれる次回のEUサミットで、財政統合に合意できれば、ユーロ圏は存続する。合意できなければ、ユーロは劇的に崩壊し、大不況になる。FTのコラムニスト(Wolfgang Munchau)は、そのように書いている。

▼独仏など6カ国だけで財政統合を先行

 ユーロ救済に必要な3つの対策は、相互につながっている。ユーロ圏諸国が財政統合を行って、共通の国債を発行し、それを担保にECBが危機に陥った国々に救済資金を出すという連携だ。
 ユーロ圏が財政統合に踏み切れるかどうかがカギとなる。

 だが、ユーロ圏(もしくはEU)全体で財政統合の条約を結ぶには、ユーロ加盟17カ国(もしくはEU加盟27カ国)のすべての議会が新条約を批准せねばならない。議会の決議で足りず、国民投票で可決しなければならない憲法上の規定を持つ国もある。
 新条約の締結と批准は、1年以上の長い時間がかかる。もたもたしていると、米英投機筋が国債市場への攻撃を加速し、ユーロが崩壊してしまう。 (Euro Zone Weighs Plan to Speed Fiscal Integration)

 もうひとつの問題は、ユーロ圏全体で共通国債を発行する場合、その格付けが低いものになることだ。ユーロ圏内でも、ギリシャ、ポルトガルなどはジャンク債の格付けで、スペインやイタリアも相次いで格下げされている。
 ユーロ圏で最上位のトリプルA格を保持しているのは、独仏とオランダ、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルグの6カ国だ。

 これらの国々は、ユーロ圏の共通債が、各国の単独の国債よりも低い格付けになる。共通債が新設されれば、各国の単独国債より共通債が重視される。6カ国にとって事実上の格下げになってしまう。
 ドイツのメルケル首相は、ユーロ圏の全体で共通国債を発行することに反対してきた。これは、共通債がトリプルAでなくなることを嫌がるドイツの財界などの総意を反映したものだ。 (Berlin Denies Rumors of Plans for Joint 'Elite Bond')

 これらの問題への対策として、ユーロ圏の中核をなす独仏が考えたのは、まずトリプルA格の6カ国だけで、統一した財政緊縮を行う財政統合の条約を締結するとともに、6カ国だけで共通国債を発行することだった。
 こうすれば、共通国債はトリプルA格となり、利回りが2%台と低くなる。財政統合の条約を6カ国だけで締結することは、反対しそうな国が少ないため、ユーロ圏やEUの全体で条約を締結するより障害が少ない。
 うまくいけば、12月9日のEUサミットで6カ国の財政統合と共通債発行を決定し、来年の元旦に6カ国の財政統合条約を発効できる。 (Is a European debt management agency what's really needed?)

 まず6カ国で財政統合と共通国債を発行し、その国債でスペインやイタリアを救うとともに、それを担保にECBにもユーロ救済を強化してもらう。
 国債危機の拡大が阻止され、事態が改善に向かえば、ユーロ周縁諸国の下げられた国債格付けも元に戻る方向となり、格付けが再上昇していく中で、財政統合と共通国債に参加する国々の範囲を拡大していけば、高い価値の共通国債をうまく発行できる。
 EUは、国境検問の自由化を決めた1985年のシェンゲン協定の時、一部の国々だけて条約を結んで統合を加速した経験がある。 (Germany, France plan quick new Stability Pact: report)

 フランスは6カ国の中に入っており、ドイツとともにユーロ圏で最重要の国だが、国内では財政統合に反対する声が出ている。議会が持っている財政決定の国権を、EUという超国家組織に奪われるのは嫌だという意見で、右翼政党を率いるマリー・ルペンは、ユーロからの離脱を主張し始めた。
 ドイツでも、財政統合やユーロ共通債に対する慎重論が強い。 (Le Pen calls for France to quit euro)

 しかし全体として、ユーロの崩壊を看過することは、独仏にとっても大打撃となる。6カ国で元旦までに財政統合と共通債の発行を決めていくことしか、ユーロの崩壊を回避する策がないように見える以上、独仏などの政界は、最終的に6カ国の財政統合を了承していくのでないか。
 ユーロ圏は究極の危機に陥っているだけに、意外と国論がまとまるとも考えられる。 (France Sees Budget Rules Paving Way for ECB)

 11月25日、ユーロ危機が拡大する中で、格付け機関S&Pがベルギーの国債を格下げした。それによってベルギー政界の危機感が一気に高まり、それまで1年半も国内2集団(オランダ語系とフランス語系)の対立から連立政権が組めない状態だったのが乗り越えられ、来年度予算で合意して連立政権が組めそうな新事態になった。
 危機は、これまで解決できなかった国家的な問題を解決する好機でもある。 (Belgian budget deal clears way to formation of government)

 EUは、経済統合をかなり進めたが、国権を重視する各国の世論に阻止されて、財政統合などの政治統合が進められないでいる。
 財政統合が進まないことが、米英投機筋に目をつけられ、ユーロ国債危機を引き起こされる元凶となった。
 しかし今、ユーロ危機が最悪の事態に近づき、極限状態の中で、どさくさ紛れに、これまで進められなかった財政統合が前進しそうになっている。財政統合が進めば、ユーロ圏の国債は強くなり、投機筋に負けない力を持てる。 (◆ユーロ危機対策めぐる裏の暗闘)

 事態がこのような分岐点にあるので、英国政府はお得意のプロパガンダで「ユーロ崩壊は時間の問題だ」などとマスコミにリークし、米英金融覇権を維持するためのユーロつぶしを扇動しているのかもしれない。
 この金融戦争で、ユーロ圏と米英のどちらが勝つか、年明けまでに見えてくるのでないか。
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