fc2ブログ

もうすぐ北風が強くなる

エジプト軍政批判の大デモ、2人死亡750人負傷

6193.jpg
 タハリール(解放)広場を埋める数十万の抗議者たち

 エジプトの革命は依然進行中である。
 大衆は9月にシオニスト国家の大使館を破壊してみせたが、今も軍政と闘っている。
 「反政府闘争はムバラク追放で終わらない」、「復興するイスラムの力」、「R・フィスク批判:民衆か宗派かではない、闘う思想の重要性」。

 欧米に都合の良い合理的世俗政権づくりが困難なことは、軍政自身が解っているだろう。
 保守イスラムかイスラム復興社会主義かであり、世俗軍政自身がもう、持たなくなっている。

 ーーーーーーーーーーーーーーーー
エジプト軍政批判デモで衝突、1人死亡 676人負傷   11/20  AFP

エジプト首都カイロ(Cairo)で19日、同国を暫定統治する軍に抗議する座り込みデモが行われていたタハリール広場(Tahrir Square)で、強制排除に乗り出した警官隊がゴム弾や催涙弾を発砲してデモ隊と衝突、1人が死亡、676人が負傷した。

 現場の医師によると、発砲を胸部に受けて負傷した男性が死亡した。また、エジプト保健省報道官は、半国営の中東通信(MENA)に対し、タハリール広場で起きた衝突による負傷者は676人に上ったと述べた。

 タハリール広場は、2月にホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)政権を打倒した18日間の反体制デモの中心地となった場所。軍の暫定統治に抗議する今回のデモも、民衆蜂起「アラブの春(Arab Spring)」の原動力となった人びとが組織している。

 デモ隊は、エジプトを暫定統治する軍最高評議会のムハンマド・フセイン・タンタウィ(Muhammad Hussein Tantawi)議長の退陣を求めて「タンタウィを倒せ」とスローガンを叫んだ。デモ隊が投石などを行うと、警官隊はゴム弾を集中砲火した。

 座り込みデモはすでに数日間続いている。デモ主催者らは、ムバラク政権下でのデモ弾圧に関与した警察官や当局者に対する迅速な裁判を要求していた。さらに18日には、迅速な民政移行を求めて数万人が合流した。

 2月11日のムバラク氏退陣以降、エジプトを暫定統治する軍は大統領選挙後に権力を移譲すると述べているが、選挙の日程はまだ決まっていない。(c)AFP/Samer al-Atrush
 ーーーーーーーーーーーーー
エジプトで軍政への抗議デモ、警官隊と衝突 死傷者750人超   11/20  CNN

エジプトの首都カイロ中心部のタハリール広場で19日、ムバラク政権崩壊後の暫定統治に当たる軍最高評議会に抗議するデモ隊が警官隊と衝突し、保健当局によると2人が死亡、750人が負傷した。

同広場では18日、新憲法案が軍予算を議会の監視対象としていないことに対してイスラム政党などが抗議デモを行い、数万人が参加した。夜になって警官隊が広場に展開し、催涙ガスなどでデモ隊排除を図ったが、数千人がその場に残り、軍最高評議会に抗議するスローガンを叫んだ。この中には、今年初めの反ムバラクデモで負傷した参加者らの家族が多数含まれていたとみられる。

目撃者らによると、デモ参加者らは警官隊に火炎瓶や石を投げ付け、警察車両に火をつけた。周辺の路上でももみ合いが起き、タイヤを燃やす煙が立ち上った。

国営メディアは、スエズやアレクサンドリアなどの都市でもデモ隊と警官隊が衝突したと伝えている。

内務省によると、警官側の負傷者は20人に上った他、8人が逮捕された。政府は対策を協議するため、緊急閣議を開いた。

同国では今月28日から総選挙が実施される予定だが、デモの激化で延期される事態も懸念されている。
関連記事

破滅するユーロか、破滅する国家か

 19-10-11-1024x686.jpg

 共通通貨ユーロは国家の主権から、通貨発行権すなわち金融政策を奪った。
 吸血こうもりたる国際金融資本は国家に貸付け、さらに貸付け、その損失を借りた国家と国家連合に補填させる。

 借りた国家は通貨発行権を喪失しているために、インフレに逃れることさえできない。
 財政の超緊縮によって窮乏化が進み税収は減り、ますます財政悪化がスパイラルする。
 永遠の窮乏化が想定されてしまう。
 「ギリシャを解体、山分けする国際金融資本」。

 ユーロはギリシャ国民の国民投票の権利さえ抑えこんで、政権を転覆させた。
 支援と称する金融資本への支援金と借りた国家への又貸し金は、国民がツケを払わされる以外にない。
 してみると、このユーロなる制度は金融資本の焼け太りを、欧州国民の窮乏化で賄おうとする制度であることが明らかだ。 

 ユーロとヨーロッパの経済危機については「ヨーロッパの危機」、「ユーロの危機は労働階級を試練にさらす」「ギリシャの危機拡大はEUの危機!」を御覧ください。

  また、共通通貨ユーロの最初からの基本的な欠陥については「世界通貨戦争(14)ユーロは夢の終わりか」、「通貨戦争(29)動けなくなったユーロ」、「通貨戦争(41)ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ」を御覧ください。

 ギリシャはかつての通貨ドラクマの、印刷機を捨てていないことを祈る。

 かつて、fxdondon氏がよく引用していたルービニ教授は、リーマン・ショックを正しくも予測したことで知られる。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  ユーロ危機、考えられない事態について考える 11/9 英フィナンシャル・タイムズ紙 11/11 JBpress

 果たしてユーロ圏は存続できるだろうか? ギリシャの一件を受け、フランスとドイツの首脳はこう問いかけている。

 もし政策立案者たちが20年前、現在彼らが知っていることを理解していたら、決して単一通貨など発足させなかっただろう。

 ユーロ圏は今、崩壊がもたらす結果に対する恐怖のみでつなぎ止められている。問題は、それだけでユーロ圏を維持できるかどうかだ。筆者の考えるところ、その答えはノーだ。

 これまでのところ、危機収拾の努力は失敗している。確かに、ユーロ圏の指導者たちは、民主的な正当性を求めたギリシャのヨルゴス・パパンドレウ首相の破壊的な願望は始末した。しかし、金融の逼迫はイタリアとスペインに定着している。

 実質金利が約4.5%、経済成長率が1.5%(2000~07年の平均)のイタリアは、国内総生産(GDP)の4%に近いプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字を今後ずっと維持しなければならないのだ。

 しかし、債務比率があまりに高すぎる。そのため、プライマリーバランスの黒字を大幅に増やすか、成長率を大幅に高めるか、金利を低くするしかない。シルビオ・ベルルスコーニ首相の下では、これら必要な変化のいずれも起きる見込みがない。では、首相が代われば解決するだろうか? 筆者はそれも疑問に思う。

     理解されてこなかった危機の本質

 全体を通じて言える根本的な問題は、危機の本質が理解されていないことだ。ニューヨーク大学スターン経営大学院のヌリエル・ルービニ氏は最近の論文*1で、本質を突く主張を展開している。

 筆者が10月4日付の本紙(英フィナンシャル・タイムズ)のコラムで述べたように、ルービニ氏もストック(資産・負債)とフロー(収支)を区別する。重要なのはフローの方だ。対外競争力と経済成長を回復させることこそが絶対に必要なのである。

 ドイツ銀行のトーマス・メイヤー氏が指摘している通り、「表面に見えているのはユーロ圏の公的債務危機と銀行危機だが、その下には域内の実質為替レートのミスアラインメント(適正水準から乖離した状態)が引き起こした国際収支の危機が隠れている」

 弱い国が競争力を取り戻して初めて、この危機は終わる。現在、弱い国の構造的な対外赤字は、自発的な融資で賄うにはあまりに大きすぎる。

 ストックとフローの課題に同時に取り組む方法として、ルービニ氏は4つの選択肢を挙げる。

    ルービニ教授が挙げる4つの選択肢

 1つ目は、積極的な金融緩和、ユーロ安、ユーロ中核国の景気刺激策により、経済成長と競争力を回復させる道だ。一方で周縁国は緊縮財政と改革に取り組まねばならない。2つ目は、周縁国のみが構造改革とともにデフレ調整を実行し、名目賃金を押し下げる道。

 3つ目は、中核国が競争力のない周縁国に恒久的に融資し続ける道。そして4つ目は、広範に債務再編を実施し、ユーロ圏を部分的に解体する道だ。

 最初の方法ならば、大したデフォルト(債務不履行)もなく、調整を実現できるかもしれない。2番目の方法では、フローの調整が間に合わず、結局4番目の道筋に移行する可能性が高い。3番目の方法では、周縁国でストックとフローの調整を回避できる代わり、中核国が支払い不能に陥る恐れがある。4番目の道は単純に終わりを意味する。

 残念ながら、すべての選択肢に大きな障害がある。

 第1の方法は、経済的にはうまくいく可能性が最も高いが、ドイツにとって受け入れ難い。2番目の方法は、政治的にはドイツに受け入れられる(ただし、経済に悪影響を及ぼす)が、最終的に周縁国が受け入れないだろう。

 3番目は、ドイツにとっては政治的に受け入れ難く、結局周縁国でも受け入れられない可能性が高い。4番目は、たとえ今だけにせよ、すべての関係国にとって受け入れ難い。

 現在起きているのは、2つ目と3つ目の不幸な混合、つまり、一方的な緊縮政策と不本意な資金援助が混じり合っている状態だ。

 この状況は、1つ目の道に転化する可能性があるとメイヤー氏は論じる。同氏によると、欧州中央銀行制度(ESCB)は最後の貸し手の役割を担うことで、市場で資金を調達できない銀行を助けて国際収支の赤字分を埋めていくことになるという。

 その結果、黒字国の中央銀行は欧州中央銀行(ECB)に対して貸付残高を増やし、赤字国の債務はその分膨らんでいく。

 これは財政移転同盟だ。メイヤー氏によれば、国際収支の赤字を金融によって埋めていくと、長期的にはインフレを誘発し、結果的にルービニ氏が挙げた1つ目の選択肢に至るという。実際にインフレの危険があるかどうか、筆者には分からない。しかし、ドイツは間違いなくインフレを懸念している。

    調整か崩壊か

 長期的には、ルービニ氏の言う1つ目と4つ目の可能性が最も高いように見える。つまり、ユーロ圏全体が調整を行うか、ユーロ圏が崩壊するかだ。

 ドイツは前者の道を行くリスクを受け入れなければならない。ドイツの悪夢が1923年のハイパーインフレだということは分かる。しかし、アドルフ・ヒトラーが権力を握ることになったのは、1930~32年の厳しい緊縮財政の結果だった。

 問題は、ユーロ圏からの離脱が、世界を吹き飛ばすことなく実行可能かどうかだ。まず、ギリシャのような競争力に乏しい国では、離脱は協調的に実施できるという判断を起点にして考えてみよう。ギリシャは通貨「新ドラクマ」を導入する。ギリシャの法律下で結ばれた新規契約や、ギリシャ国内での納税や支払いにはこの通貨を使う。既存の契約には引き続きユーロを使う。

 銀行は既存のユーロ建ての口座と新ドラクマの口座を両方持つことになる。新通貨の対ユーロ相場は市場で決める。新通貨は急激に価値を下げるだろうが、それこそ本当に必要とされていることだ。

 ギリシャ政府は、改定された国際プログラムの条件に従って行動する。新通貨は急激に実質価値を下げる可能性が高く、政府はそれに助けられ、引き続き財政均衡化に努めることになる。

 ギリシャの中央銀行は新通貨を独自に管理する。新通貨での物価水準は急騰するだろうが、余剰生産力があることを考えると、外部からの支援がいくらかあればハイパーインフレは回避できる。

 ユーロ建て債務のデフォルトは、公的部門でも民間部門でも、かなりの規模になるだろう。しかし、もし新通貨に移行せず、対外競争力を取り戻すために国内のデフレを長引かせると、やはりユーロ建て債務の実質価値は急上昇する。この対策は事態の進行を加速させるだけなのだ。離脱すれば、ギリシャはECBでの投票権を失うことになるが、取り戻す可能性は残る。

 このように新通貨の導入に協調的に取り組むことが、最も代償が小さくて済む方法だろう。しかしこのやり方は、間違いなく他国への波及を招く。

    ユーロ圏の決断

 ユーロ圏がその脅威を回避すると決めたのなら、ルービニ氏が示した1つ目の選択肢に戻らざるを得ない。潜在的に支払い能力がある国に資金を融通し、ユーロ圏全体は成長することで危機を脱するのである。

 一方的なデフレ調整を基盤としたユーロ圏は頓挫する。恐らく、これは間違いないだろう。ユーロ圏の首脳たちがそのような方針を主張するのなら、その結果も受け入れなければならない。
関連記事

TPPのウソと真実(前編):三橋

 日本のマスコミ(テレビと5大全国紙)の特徴は、米国・CIAに盲従することと、米国のためなら嘘でも捏造でも平気で報道し、また事実を報道しないであたかもそんなことは存在していないかのように国民を騙し、洗脳することである。
 狂ったような小沢一郎氏攻撃、原発放射能騙し、TPPの嘘と捏造報道など、マスコミが公然と無視や捏造を繰り返すほど、そのことが米国の意向だと分かる仕掛けである。
 
 法で定められ選出された公的機関である日弁連、日本商工会議所、日本学術会議などの声明は一切報道せず、検察や任意団体の経団連、御用学界などの声明は飛びついて報道するのは、前者が米国に盲従せず、後者が米国に盲従するからである。
 TPPもそのとおりの展開となってきた。

 関連ページ「売国協定となる日米TPP:中野」、「異様なTPP開国論:内橋」、「TPPは国を揺るがす大問題に発展するか」、「榊原:TPPの交渉などマスコミ、CIAが後ろから撃つ」も御覧ください。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  TPPのウソと真実       三橋貴明    Klugから

 信じ難いことに、またもや本連載に相応しい「ウソ」のTPP報道が行われた。日本の大手新聞社は、ことTPPに関する限り「社会の公器」である立場を完全に放棄したとしか思えない。

2011年11月4日 日本経済新聞 「TPP思惑交錯 交渉参加 調整大詰め」

 慎重派「国内農業は壊滅」
 推進派「成長を取り込む」

 原則関税ゼロをうたう環太平洋経済連携協定(TPP)。米国など9カ国は11月半ばにハワイで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場で、来秋に向けてルール作りを本格化することで大枠合意する見込み。日本は交渉に参加すべきか否か、国内の調整も大詰めを迎えている。(中略)

優位なルール

 慎重派、推進派がデメリットを強調した数字で、ともに説得力を欠くとの批判がある。中立的な立場から内閣府が提示した試算は「10年後の実質GDPは2.7兆円押上げられる」。単純計算した累積押上げ額は13.5兆円。年1兆3500億円の効果となる。

 日本の経済規模(約500兆円)と比べると必ずしも推進派を満足させる数字ではないが、試算は関税撤廃の効果だけで、アジアの今後の成長などを織り込んでいない。試算を担当した野村証券の川崎研一氏は「投資環境の整備など関税以外の規制緩和も進めば、経済効果は何倍にも膨らむ」と話す。

 TPPの詳細がまだ固まっていないため、経済効果を正確に測るのは難しい。交渉に参加し、日本の主張をルールに反映するしたたかさも必要になる。


 上記の短い記事の中において、何と日本経済新聞は三つもの大きなウソをついている。特に、一つ目のウソは悪質だ。何しろ「解釈」や「予測」の問題ではなく、明確な「虚偽情報」なのである。

◆一つ目のウソ

 日経新聞は内閣府の試算について、「10年後にGDPが2.7兆円増える」と勝手な解釈を行い、
「単純計算した累積押上げ額は13.5兆円。年1兆3500億円の効果となる」
 と、デマ数値を堂々と記事に書いている。

 内閣府のTPPに関する経済効果の試算は「10年後にGDPが2.7兆円増える」ではなく「10年間で2.7兆円GDPが増える」が正しい。すなわち、10年の累計で2.7兆円GDPが増大するという話であり、「10年後に」は明確な間違いだ。より分かりやすく書くと、TPPに日本が加盟すると、日本のGDPが「1年間に2700億円増える」だけなのである。

 2.7兆円が「10年累積」であることは、日経新聞の記事中にも登場した川崎研一氏が、産経新聞のインタビューで明言している。

2011年10月18日 「TPPインタビュー 「経済効果3~10倍に」野村証券金融経済研究所 川崎研一・主席研究員」

--内閣府の客員主任研究官として日本のTPP参加の経済効果を試算したが
「関税撤廃による経済効果は10年間で2・4~3・2兆円で、1年間なら国内総生産(GDP)の0・1%に満たない。ただ、規制緩和やサービス自由化でさまざまなビジネスが生まれ、投資環境が整備される結果、その3~10倍の効果も予測されている」(後略)


 産経新聞もTPP推進派で、幾つかの捏造報道(後述)を行っている。結果的に、上記のインタビューも「TPP礼賛論」になっているわけだが、それにしても川崎氏の「1年間なら国内総生産(GDP)の0・1%に満たない」という言葉は重要だ。内閣府の試算(1年間で2700億円GDPが増える)に基づくと、TPPに加盟した場合、日本のGDPはわずかに0.05%成長するに過ぎないのである。

TPPに入ると、GDPが0.05%成長します! 代わりに日本は簡易保険や共済保険を完全に民営化し、アメリカの保険会社に市場を与え、サービスは運送、流通、不動産、法務、会計、特許、コンサルティングなど、ネガティブリスト方式で全面自由化します。健康保険が適用できない高額医療が実施され、薬価規制の適用を受けない高価な薬が販売されることになり、国民医療保険制度はアメリカの医療ビジネスにとって『非関税障壁』ということで、縮小に向かいます。さらに、公共事業において外国企業を内国民待遇する範囲を拡大し、中小建設業サービスの競合相手を増やし、放送免許や新聞特殊指定など、アメリカのメディア企業にとっての参入障壁を撤廃します。また、BSEの可能性がある牛肉のアメリカからの輸入を全面解禁し、遺伝子組み換え作物を販売する際に『遺伝子組み換え作物です』あるいは『遺伝子組み換え作物ではありません』といった表示をすることを禁止します。加えて、アメリカ企業の投資を全面自由化し、ISD条項により、日本政府が『日本国民の安全や健康』を守るため、あるいは『日本の環境』を守るために規制をした結果、アメリカの投資企業が損害を被った場合、日本政府を世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に訴えることができます。日本はアメリカの投資企業に莫大な賠償金を支払うか、あるいは規制を撤廃させられることになります。また、ラチェット規定により、一度、規制を緩和すると、二度と規制引き締めを実施することはできなくなります。とはいえ、日本のGDPが0.05%成長するのだから、良いでしょう

 上記こそが、まさにTPP推進派のロジックなのである。信じ難い読者も多いだろうが、上記の様々な「問題点」の全ては、最近、アメリカ議会が可決した米韓FTAに盛り込まれたものだ。さらに、日本政府が公開したTPP協定交渉の分野別状況にも含まれているのである。

 TPPは日本の社会制度システムを大々的に変革する、より露骨に言えば「アメリカ化」する協定だ。これほどまでに大々的な「構造改革」を強行するに当たり、経済効果が一年間に「誤差レベル」の2700億円では、さすがに困るのであろう。

 というわけで、日本経済新聞は、
「単純計算した累積押上げ額は13.5兆円。年1兆3500億円の効果となる」
 という虚偽情報を堂々と紙面に載せたわけである。

◆二つめのウソ

 日本経済新聞は記事の文中で「アジアの今後の成長などを織り込んでいない」と言っている。これまでにも何度も書いてきたが、あえて繰り返したい。

【図127-1 2010年 TPP関連国のGDP(単位:十億ドル)】
20111109_01.png
出典:IMF

 図127-1はTPP加盟国、TPP加盟予定国、及び日本の2010年におけるGDPを比較したものだ。日本とアメリカの両国で、TPP関連国のGDPにおいて九割のシェアを持つことが分かる。

 TPPにおける日本以外のアジア諸国といえば、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ブルネイの四カ国になる。この四カ国がTPP関連国のGDPに占めるシェアは、わずかに2.36%である。TPPにおける「アジア」である四カ国が、今後、大きく成長したとして、日本のGDPに一体いかほどの影響を与えるというのだろうか。言葉を選ばずに書けば、誤差レベルであろう。

◆三つ目のウソ

 日本経済新聞は、
「交渉に参加し、日本の主張をルールに反映するしたたかさも必要になる。」
 などと、まことに抽象的で勇ましいことを言っているが、上記はもはや不可能だ。何しろ、11月中旬のAPECにおいて、野田首相がTPP交渉参加を宣言したとしても、実際に交渉にすぐに交渉参加できるわけではないためだ。日本の交渉参加には、アメリカとの事前協議及びアメリカ国会の承認が必要で、その手続きに六ヶ月もの期間を必要とするのである。

 流出した日本政府の内部文書によると、USTR(アメリカ通商代表部)の高官は、日本がTPP交渉に参加する際に、米政府・議会の非公式な事前協議が必要であることを明らかにした。事前協議に、およそ三ヶ月。さらに、米国議会の承認手続きに必要な期間が、やはり三ヶ月。すなわち、11月中旬のAPECで野田首相が交渉参加を表明しても、実際に交渉参加できるのは、2012年の5月頃ということになる。

 アメリカは、TPPについて来年の6月の正式合意を目指している。すなわち、日本が交渉に参加した一ヵ月後には、完全妥結してしまうというスケジュールなのである。この状況で、一体どうすれば「日本の主張をルールに反映する」などという離れ業が可能なのだろうか。

 上記、日経新聞の記事からも分かるように、TPPに関する大手紙の主張は「抽象的」「印象的」「スローガン的」であり、具体性と現実性に欠ける。まるで、戦前に勇ましい抽象論を撒き散らし、日本国民を戦争に突き進ませた軍部や新聞のようだ。と言うよりも、日本の大手新聞は、戦前と全く同じ罪を犯そうとしているのである。

 大手新聞など日本のマスコミがTPPに関連してついた「ウソ」は、上記にとどまらない。あまりにも量が多く、全てを書き記すことはできないが、代表的なものをご紹介しよう。

◆2011年10月16日:自民党の谷垣総裁がテレビにおいて、
「TPP、拙速判断いけない。協議が必要」
 と述べた件について、産経新聞、日経新聞、毎日新聞の三紙が、
「交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言」
 という見出し、主旨の記事を大々的に報じた。野党総裁までもがTPP交渉参加に前向きと「虚偽情報」を流し、交渉参加を既成事実化したかったものと思われる。

◆2011年10月17日:日本政府は「TPP協定交渉の分野別状況」を公開し、TPPが農業問題のみならず、24もの分野に及ぶ非関税障壁の撤廃である事実を明らかにした。日本のマスコミは「TPPは農業問題」という印象操作、問題の矮小化を行っていたが、事実とは異なるということが政府資料で明らかにされた。

◆2011年10月20日:朝日新聞が、
「小沢氏、TPPに前向き「自由貿易は日本にメリット」」
 という見出しで、小沢一郎衆院議員がTPPに前向きであると一面で報じた。直後、小沢事務所のツイッターにより、完全な虚偽情報であることが暴露された。
『今日、一部紙面等で『TPPについて「小沢氏前向き」』と報じられておりますが、それは誤りです。今の拙速な進め方では、国内産業は守れません。』
 朝日新聞は、上記の誤報について、一切訂正を行っていない。


◆2011年10月27日:内閣府が発表した「TPP経済効果 10年で2.7兆円」について、産経新聞、日経新聞、読売新聞、時事通信などが、「10年で」という言葉を省いて報道した。見出しはもちろん、記事中にも「10年で」という単語を使わない悪質さであった。


◆2011年10月28日:TPPにおいて公的医療サービスの「見直し」は検討の対象になっていないと政府やマスコミは説明していた。ところが、アメリカのUSTRは堂々と「TPPにおける医療分野の目標」として、公的医療サービスの「見直し」を表明していることが明らかにされた。


◆2011年10月29日:TPP推進派は、
「交渉に参加し、条件が悪ければ批准しなければいい」
 などと、外交常識を無視した言説を振りまいていたが、米国のワイゼル主席交渉官により、離脱する可能性があるならば「交渉に参加するな」と釘を刺された。

『2011年10月29日 日本経済新聞「TPP交渉、日本の途中離脱を懸念 米交渉官がけん制」
【リマ=檀上誠】環太平洋経済連携協定(TPP)の拡大交渉を進める米国など9カ国は28日、ペルーの首都リマでの各国首席交渉官による第9回交渉を終えた。
 交渉終了後、米国のワイゼル首席交渉官は記者団に対し、途中で離脱する可能性を残した交渉参加案が日本国内で浮上していることについて
「真剣に妥結に向かう意志がない国の参加は望んでいない」と指摘し、日本の議論をけん制した。(後略)』』

◆2011年11月2日:フジテレビや産経新聞などは、
「(政府関係者の話によると)野田首相が鹿野農水相と先月だけでも数回極秘会談を行い、鹿野大臣が最終的に交渉参加を容認する考えを示唆し、野田総理がTPP交渉参加をAPECで表明する以降を固めた」
 と繰り返し報道し、TPP交渉参加を既成事実化しようと努力(?)していた。ところが、関西テレビのニュースアンカーにおいて、鹿野道彦農水大臣が上記の報道について「完全否定」した。

鹿野大臣「そういう事実(極秘会談)はありません。それから私が交渉参加することを容認したということも、そのような事実はございません」


 上記の通り、TPP報道に際し、国内マスコミ(及び政府)はひたすら「ウソ」を振りまくことで、交渉参加を既成事実化しようとしている。何故、マスコミや政府は、ここまでTPPに関してウソを積み重ねなければならないのだろうか。

 理由は簡単だ。

 真実を言えば、日本国民の大多数が「TPP交渉参加」に反対することが、はじめから分かっているためである。何しろ、TPPは日本国民のためには全くならない。

 日本国民のためにならないTPPという「商品」を、虚偽情報を振りまくことで売りつけようとしている。この種の行為を、法律用語で「詐欺」という。
ーーーーーーーーーーーーーー
  TPPのウソと真実(後編)へつづく
関連記事

 | HOME |  古い日記に行く »

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (175)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

10 | 2011/11 | 12
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

Template by たけやん