1%の純輸出と99%の被害者:トッテン
2011-11-26
今年8月、政府は円高を阻止するために4.5兆円の為替介入を行った。そして10月31日、政府は再び約8兆円の介入を行ったという。
(ビル・トッテン)
すべては輸出企業のため 11/25
日本の純輸出(輸出から輸入を引いた額)は、日本のGDPの1%にすぎない。
それは過去10年間もそうだったし、実際政府がその統計を発表するようになった1955年からずっと1%程度である。
言い換えると、日本は輸出主導型経済ではない。日本経済の約57%は民間消費、16%は公共消費、26%は資本投資、そして1%が純輸出という、国内経済から成り立っている国なのだ。
円高は円の価値が高くなることで、日本人や日本企業の所得や預金、その他資産価値が海外からみて高くなることである。
カロリーで6割を輸入食料に頼っている食料の価格も下がり、ほとんどが輸入である石油などのエネルギー資源も安くなる。
例外は輸出企業だ。つまり日本政府が介入をして円の価値を下げるということは、日本の99%の経済を犠牲にして1%の輸出企業を助けるということなのである。
日本政府が対抗しようとしている投機筋は、外国為替市場で1日に約90兆円の円を売買している。単純計算すると1ヶ月で2700兆円が動いており、それに対して4.5兆円や8兆円を投入したところでどれだけの影響を与えられるというのか。
政府の介入は愚かな行為としか私には思えない。
投機を止めさせる方法はもちろんある。円の売買に1%課税すればよい。
円の買い手に0.5%、売り手に0.5%の税金を課す。日本政府は私たちが食べ物や着るもの、その他生活必需品のすべてに5%の税金(消費税)を課しているのだから通貨売買に1%がかけられないはずはない。
投機目的に行われる国際通貨取引への課税はトービン税と呼ばれ、これによって投機はなくせる。なぜなら投機家は1%に満たない利益を求めて売買しているからだ。
もし円への投機が止まらなくても、これで政府の今の税収をはるかに上回る税金が徴収できる。90兆円の1%を30日で掛けて、その12ヶ月分は324兆円、日本の昨年の国税、地方税の合計76兆円を大きく上回る。
日本政府は、福島原発の事故のあと20キロ圏内に住む約8万人の国民に、家や農地、仕事を捨てて避難するよう命じた。20キロ圏内どころかもっと遠くに住む人も、同じように放射能を恐れて家や家畜を捨てて避難し、仕事を失った。
私は日本政府がこうした人々に対していくら補償したのか、その総額を調べたが、原発事故から半年以上たっても数字を見つけることはできなかった。
一般国民への補償はしなくとも、輸出企業のためには即決で12兆円を投じられるのが日本の政府なのだ。
そして福島第1原発では今も核分裂の可能性もあるなかで多くの作業員が働いている。
円高について、安住財務相は、納得するまで介入をすると言い、メディアは日本経済を立て直すために円高に歯止めをかけておかないと、自動車や電機など輸出産業の業績悪化を招き、景気も腰折れする懸念が強まると煽る。
しかしそれは真実ではない。
すべては1%の輸出企業のためであり、そして99%の国民が犠牲となるのである。
(ビル・トッテン)
すべては輸出企業のため 11/25
日本の純輸出(輸出から輸入を引いた額)は、日本のGDPの1%にすぎない。
それは過去10年間もそうだったし、実際政府がその統計を発表するようになった1955年からずっと1%程度である。
言い換えると、日本は輸出主導型経済ではない。日本経済の約57%は民間消費、16%は公共消費、26%は資本投資、そして1%が純輸出という、国内経済から成り立っている国なのだ。
円高は円の価値が高くなることで、日本人や日本企業の所得や預金、その他資産価値が海外からみて高くなることである。
カロリーで6割を輸入食料に頼っている食料の価格も下がり、ほとんどが輸入である石油などのエネルギー資源も安くなる。
例外は輸出企業だ。つまり日本政府が介入をして円の価値を下げるということは、日本の99%の経済を犠牲にして1%の輸出企業を助けるということなのである。
日本政府が対抗しようとしている投機筋は、外国為替市場で1日に約90兆円の円を売買している。単純計算すると1ヶ月で2700兆円が動いており、それに対して4.5兆円や8兆円を投入したところでどれだけの影響を与えられるというのか。
政府の介入は愚かな行為としか私には思えない。
投機を止めさせる方法はもちろんある。円の売買に1%課税すればよい。
円の買い手に0.5%、売り手に0.5%の税金を課す。日本政府は私たちが食べ物や着るもの、その他生活必需品のすべてに5%の税金(消費税)を課しているのだから通貨売買に1%がかけられないはずはない。
投機目的に行われる国際通貨取引への課税はトービン税と呼ばれ、これによって投機はなくせる。なぜなら投機家は1%に満たない利益を求めて売買しているからだ。
もし円への投機が止まらなくても、これで政府の今の税収をはるかに上回る税金が徴収できる。90兆円の1%を30日で掛けて、その12ヶ月分は324兆円、日本の昨年の国税、地方税の合計76兆円を大きく上回る。
日本政府は、福島原発の事故のあと20キロ圏内に住む約8万人の国民に、家や農地、仕事を捨てて避難するよう命じた。20キロ圏内どころかもっと遠くに住む人も、同じように放射能を恐れて家や家畜を捨てて避難し、仕事を失った。
私は日本政府がこうした人々に対していくら補償したのか、その総額を調べたが、原発事故から半年以上たっても数字を見つけることはできなかった。
一般国民への補償はしなくとも、輸出企業のためには即決で12兆円を投じられるのが日本の政府なのだ。
そして福島第1原発では今も核分裂の可能性もあるなかで多くの作業員が働いている。
円高について、安住財務相は、納得するまで介入をすると言い、メディアは日本経済を立て直すために円高に歯止めをかけておかないと、自動車や電機など輸出産業の業績悪化を招き、景気も腰折れする懸念が強まると煽る。
しかしそれは真実ではない。
すべては1%の輸出企業のためであり、そして99%の国民が犠牲となるのである。
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債務削減を恫喝する国際金融資本
2011-11-26
格付け会社などというものは、所詮は国際金融資本の利益調整機関であるが、日本政府が超緊縮財政と債務削減、増税をさらに進めるように格下げの恫喝を加えている。
同じく、国際金融資本の利益調整機関であるIMFも同調している。
「日本に増税を求める国際金融資本」。
当然、日本のマスコミも同調しているが、過去にIMFと欧米によって破産させられたロシアは同調しない。
ーーーーーーーーーーーーー
格下げされても日本のイメージは損なわれない 11/25 ロシアの声
24日国際格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債の格付けを下げかねないという警告を発した。理由として野田政権が政府債務削減のプロセスで成功を収めていないことが挙げられている。
S&Pシンガポールの小川隆平ソブリン格付けディレクター(アジア国債担当)は、「日本の財政は分単位、秒単位で悪化している」と指摘し、日本は今年度国内総生産(GDP)を2倍上回り13兆円にまで達した政府債務削減問題を解決するため、総合的なアプローチをとらねばならないと述べた。
日本の政府債務については国際通貨基金(IMF)も、このままでは日本が財政麻痺に陥るのではないかと危惧する声を上げている。
ロシアのビジネス分析会社「インヴェストカフェ」の専門家アンナ・ボドロヴァ氏は、日本が復興に莫大な資金を投じているにもかかわらず、IMFに定期貸付を求めず、第3四半期にはGDPが上向き傾向を見せていることに関心を示し、「確かにこれは景気てこ入れ策の一時的影響だとしても、格下げを行えば投資魅力が落ちる危険性がある」と危惧する。ボドロヴァ氏は国債格付け会社数社の同様のアプローチについて、公平さを欠くものとして、次のようにコメントしている。
「国債格付け会社が格付けの見直しや信用格下げを宣言する際、あらゆる経済データーを集計し、今後の将来性を出す。仮に格付けが下げられると、これは投資家には『経済に成長が見込めない。したがって利潤も期待できない』という危険信号となる。今回のS&Pのリサーチングは公平なものではない。日本の経済はイタリアやスペイン、ポルトガルなどの定期的に格下げが行われている欧州諸国の経済と同じ土俵において計れるものではない。こうした国々の債務は資金の非合理的な消費の結果であり、日本のケースはこれとは異なる。3月に起きた自然災害は日本の経済に計り知れない損失を与えた。そしてさらに世界経済の全体的な後退がこれに拍車をかけたからだ。」
ロシアの「アンコリンヴェスト」社の上級アナリスト、アンドレイ・ザハロフ氏は、今回もし格下げされることになっても日本のイメージは損なわれず、また災害の後遺症がどうなるかを気にすることはないと語る。ザハロフ氏の分析では仮に1段格下げが行われても、すべてがまだ投資レベルに合致する。格付けよりもむしろ問題なのは円高だとするザハロフ氏の見解をご紹介したい。
「現在、他の世界通貨に対し円はかなり強く、これが日本経済を抑圧している。輸出依存部門は損失をこうむっている。これを脱却するには 債務を収益化するしかないと私は思う。通貨介入により一層の注意をむけるべきだ。つまり自国経済を支援するため米ドル、ユーロ買いを増やし、円売りを行う。政府債務については対外借款額が最小であることから世界金融危機が日本経済に与える影響も少ない。」
ロシアのアナリストらは、日本経済救済のため決定的方策を採るためには、野田首相には与党の力だけでなく、政府と常に同調するわけではない野党の支持を仰がねばならないとの見方を示している。少なくとも24日衆議院の本会議では東日本大震災の復興財源を賄うための臨時増税を盛り込んだ「復興財源確保法案」を通過させた。これにより所得税は13年1月から25年間、基準所得税額の2.1%が上乗せされる。
同じく、国際金融資本の利益調整機関であるIMFも同調している。
「日本に増税を求める国際金融資本」。
当然、日本のマスコミも同調しているが、過去にIMFと欧米によって破産させられたロシアは同調しない。
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格下げされても日本のイメージは損なわれない 11/25 ロシアの声
24日国際格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債の格付けを下げかねないという警告を発した。理由として野田政権が政府債務削減のプロセスで成功を収めていないことが挙げられている。
S&Pシンガポールの小川隆平ソブリン格付けディレクター(アジア国債担当)は、「日本の財政は分単位、秒単位で悪化している」と指摘し、日本は今年度国内総生産(GDP)を2倍上回り13兆円にまで達した政府債務削減問題を解決するため、総合的なアプローチをとらねばならないと述べた。
日本の政府債務については国際通貨基金(IMF)も、このままでは日本が財政麻痺に陥るのではないかと危惧する声を上げている。
ロシアのビジネス分析会社「インヴェストカフェ」の専門家アンナ・ボドロヴァ氏は、日本が復興に莫大な資金を投じているにもかかわらず、IMFに定期貸付を求めず、第3四半期にはGDPが上向き傾向を見せていることに関心を示し、「確かにこれは景気てこ入れ策の一時的影響だとしても、格下げを行えば投資魅力が落ちる危険性がある」と危惧する。ボドロヴァ氏は国債格付け会社数社の同様のアプローチについて、公平さを欠くものとして、次のようにコメントしている。
「国債格付け会社が格付けの見直しや信用格下げを宣言する際、あらゆる経済データーを集計し、今後の将来性を出す。仮に格付けが下げられると、これは投資家には『経済に成長が見込めない。したがって利潤も期待できない』という危険信号となる。今回のS&Pのリサーチングは公平なものではない。日本の経済はイタリアやスペイン、ポルトガルなどの定期的に格下げが行われている欧州諸国の経済と同じ土俵において計れるものではない。こうした国々の債務は資金の非合理的な消費の結果であり、日本のケースはこれとは異なる。3月に起きた自然災害は日本の経済に計り知れない損失を与えた。そしてさらに世界経済の全体的な後退がこれに拍車をかけたからだ。」
ロシアの「アンコリンヴェスト」社の上級アナリスト、アンドレイ・ザハロフ氏は、今回もし格下げされることになっても日本のイメージは損なわれず、また災害の後遺症がどうなるかを気にすることはないと語る。ザハロフ氏の分析では仮に1段格下げが行われても、すべてがまだ投資レベルに合致する。格付けよりもむしろ問題なのは円高だとするザハロフ氏の見解をご紹介したい。
「現在、他の世界通貨に対し円はかなり強く、これが日本経済を抑圧している。輸出依存部門は損失をこうむっている。これを脱却するには 債務を収益化するしかないと私は思う。通貨介入により一層の注意をむけるべきだ。つまり自国経済を支援するため米ドル、ユーロ買いを増やし、円売りを行う。政府債務については対外借款額が最小であることから世界金融危機が日本経済に与える影響も少ない。」
ロシアのアナリストらは、日本経済救済のため決定的方策を採るためには、野田首相には与党の力だけでなく、政府と常に同調するわけではない野党の支持を仰がねばならないとの見方を示している。少なくとも24日衆議院の本会議では東日本大震災の復興財源を賄うための臨時増税を盛り込んだ「復興財源確保法案」を通過させた。これにより所得税は13年1月から25年間、基準所得税額の2.1%が上乗せされる。
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予防原則
2011-11-25
なぜ、医師の発言が禁止されるか(2)・・・予防原則適応時に許される行為 11/25 武田邦彦
多くの人は学校教育の内容が不正確であることもあって、「水俣病」というのは「企業が水銀が毒物と知っていながら、垂れ流した」と思っています。でも、企業は国や熊本県が認可した排水基準を守っていました。
つまり、時として企業は収益に走り、国民に被害を与えることがあるので、県や国が審査をして法律などに合格すれば認可をするのです。自分がその工場の人だったとします。
あるものを使って運転をしようとして計画し、書類を役所に出して認可を受ければ、それを守って仕事をすることで非難されることなど考えないでしょう。
水俣病が「水俣病」という名前がついているのは、水銀で本格的な病気が発見されたのが、水俣が初めてだったからです。
それまで、女性のおしろいは酸化水銀、神社の鳥居の朱色は硫化水銀、そして歯医者に行くと水銀アマルガムを詰められました。水銀は普通に使われていたのです。
今でも、「水銀」というものが常に毒性を持つのか、メチル水銀などのある状態の水銀が毒物なのか、ハッキリしないところがあります。
しかし、人間はあることが起こる度に、反省し、知識を増やして、より安全で快適な社会を作ってきました。その一つが「予防原則」です。
水俣病の時に、水銀が毒物であるということが学問的に判ったのは最初の患者さんが出てから6年後でした。
その時に、漁民は操業の停止を求めたのですが、水俣市民の多くは操業を続けることを望んだのです。
つまり、法律もなく、学問的にも不明で、患者さんが出ているという状態で仮に操業を止めさせた場合、その損害を誰が補償するのかハッキリしないからです。
そんな経験を経て、1992年の環境サミットで「原則15:予防原則」が世界的に合意されました。その趣旨は「科学的に因果関係が不明な場合でも、怪しいときには予備的に規制することができる」というものでした。これが人間の知恵というものです。
・・・・・・・・・
1年1ミリシーベルトというのは、予防原則の思想で決められています。学問的にハッキリするまで待っていたら、被曝による被害者が出るかも知れないので、予防的に合意をしたのです。自然界から受ける自然放射線は仕方が無いのですが、原発からの放射線は「余計なもの」です。もし日本に原発がなければ、1年1ミリなどと言う規制もほとんど要りません。
福島原発の事故が起こると、多くの医師が「1年1ミリを守る必要はない」と発言し、今でも言い続けています。
でも、医師の人は「予防原則」というのが悲惨な多くの犠牲のもとに、人間の知恵で創り出したものであることを勉強してください。
というのは、「1年1ミリを守る必要がない」と言っている医師、テレビや新聞などの記者はどうも、これまでの公害の歴史、予防原則、人間の知恵について、よく知らないようなのです。
でも、社会に責任を持って発信するためにはこのぐらいは知らなければなりません。
私が「なぜ、1年1ミリか」というのを科学的に説明せず、「法律、合意」として示しているのは、それが「予防原則」ですから、もともと科学的な根拠を議論できないものだからです。
・・・・・・・・・
ところで、私は「人を批判せず、内容を批判する」ということを守ってきました。今まで、首相、大臣、東大総長、特定の権力者を別にすると個別の名前を挙げて批判することはしませんでした。でも、今は福島をはじめとした子供たちが被曝しています。この被曝を止めるために、今日から個別の名前を出すことにしました。
流山市長と福島の「順一」(聞くところによると塾の先生)という人が、「1年1ミリを守る(法律を守る)必要はない」という趣旨と、私を関係の無いこと(私がバナナを食べたことがないと推定していること)で個人的に批判しています。私の批判などはどうでも良いのですが、この二人の言動の目的は福島の子供たちに余計に被曝させることなので、放置できません。予防原則を勉強して、すぐ子供たちを被曝させることを止めてください。子供の健康はあなたたちのものではありません。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
全く、そのとおりだ。
私が子どもの頃から今までに、限りないほどの種類の物質が禁止されてきた。
逆に言えば、私が子供の頃は、食品であれ、薬品であれ、禁止物として列挙されていなかったので、「疑わしいもの」はすべてが合法的に使用されていたのである。
食品添加物、薬品、医薬品、工場の排煙、廃液、エックス線にDDT。
「添加物、毒物まみれの時代(味の素、水銀、被曝)」
科学的に決着のつかない「疑わしい」物質を禁止するようになったのはこの2.30年ほど前からのことである。
そんな最近まで、「疑わしい」ものはほぼ野放しだったのだ。
最近は「科学的に決着のついていないものについても、疑わしければ禁止せよ」と言う考えである。
「予防原則」を守ることは、非常に重大なことなのである。
多くの人は学校教育の内容が不正確であることもあって、「水俣病」というのは「企業が水銀が毒物と知っていながら、垂れ流した」と思っています。でも、企業は国や熊本県が認可した排水基準を守っていました。
つまり、時として企業は収益に走り、国民に被害を与えることがあるので、県や国が審査をして法律などに合格すれば認可をするのです。自分がその工場の人だったとします。
あるものを使って運転をしようとして計画し、書類を役所に出して認可を受ければ、それを守って仕事をすることで非難されることなど考えないでしょう。
水俣病が「水俣病」という名前がついているのは、水銀で本格的な病気が発見されたのが、水俣が初めてだったからです。
それまで、女性のおしろいは酸化水銀、神社の鳥居の朱色は硫化水銀、そして歯医者に行くと水銀アマルガムを詰められました。水銀は普通に使われていたのです。
今でも、「水銀」というものが常に毒性を持つのか、メチル水銀などのある状態の水銀が毒物なのか、ハッキリしないところがあります。
しかし、人間はあることが起こる度に、反省し、知識を増やして、より安全で快適な社会を作ってきました。その一つが「予防原則」です。
水俣病の時に、水銀が毒物であるということが学問的に判ったのは最初の患者さんが出てから6年後でした。
その時に、漁民は操業の停止を求めたのですが、水俣市民の多くは操業を続けることを望んだのです。
つまり、法律もなく、学問的にも不明で、患者さんが出ているという状態で仮に操業を止めさせた場合、その損害を誰が補償するのかハッキリしないからです。
そんな経験を経て、1992年の環境サミットで「原則15:予防原則」が世界的に合意されました。その趣旨は「科学的に因果関係が不明な場合でも、怪しいときには予備的に規制することができる」というものでした。これが人間の知恵というものです。
・・・・・・・・・
1年1ミリシーベルトというのは、予防原則の思想で決められています。学問的にハッキリするまで待っていたら、被曝による被害者が出るかも知れないので、予防的に合意をしたのです。自然界から受ける自然放射線は仕方が無いのですが、原発からの放射線は「余計なもの」です。もし日本に原発がなければ、1年1ミリなどと言う規制もほとんど要りません。
福島原発の事故が起こると、多くの医師が「1年1ミリを守る必要はない」と発言し、今でも言い続けています。
でも、医師の人は「予防原則」というのが悲惨な多くの犠牲のもとに、人間の知恵で創り出したものであることを勉強してください。
というのは、「1年1ミリを守る必要がない」と言っている医師、テレビや新聞などの記者はどうも、これまでの公害の歴史、予防原則、人間の知恵について、よく知らないようなのです。
でも、社会に責任を持って発信するためにはこのぐらいは知らなければなりません。
私が「なぜ、1年1ミリか」というのを科学的に説明せず、「法律、合意」として示しているのは、それが「予防原則」ですから、もともと科学的な根拠を議論できないものだからです。
・・・・・・・・・
ところで、私は「人を批判せず、内容を批判する」ということを守ってきました。今まで、首相、大臣、東大総長、特定の権力者を別にすると個別の名前を挙げて批判することはしませんでした。でも、今は福島をはじめとした子供たちが被曝しています。この被曝を止めるために、今日から個別の名前を出すことにしました。
流山市長と福島の「順一」(聞くところによると塾の先生)という人が、「1年1ミリを守る(法律を守る)必要はない」という趣旨と、私を関係の無いこと(私がバナナを食べたことがないと推定していること)で個人的に批判しています。私の批判などはどうでも良いのですが、この二人の言動の目的は福島の子供たちに余計に被曝させることなので、放置できません。予防原則を勉強して、すぐ子供たちを被曝させることを止めてください。子供の健康はあなたたちのものではありません。
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全く、そのとおりだ。
私が子どもの頃から今までに、限りないほどの種類の物質が禁止されてきた。
逆に言えば、私が子供の頃は、食品であれ、薬品であれ、禁止物として列挙されていなかったので、「疑わしいもの」はすべてが合法的に使用されていたのである。
食品添加物、薬品、医薬品、工場の排煙、廃液、エックス線にDDT。
「添加物、毒物まみれの時代(味の素、水銀、被曝)」
科学的に決着のつかない「疑わしい」物質を禁止するようになったのはこの2.30年ほど前からのことである。
そんな最近まで、「疑わしい」ものはほぼ野放しだったのだ。
最近は「科学的に決着のついていないものについても、疑わしければ禁止せよ」と言う考えである。
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