ギリシャの危機拡大はEUの危機!
2011-10-21


ギリシャはアテネで19日に続き20日も、10万人規模のデモが行われた。
議会の超緊縮策採択は、議事堂前の大デモ隊を排除して行なわれた。
昨日に続き、若者達が警察と衝突した。
ゼネストは48時間だが、これで抗議行動が収束することはあり得ない。
これほどの大デモによって、国会の採択は政治の正当性を失いかけている。
また、これから、ギリシャ国民は地獄の窮乏に突入するからだ。
金貸しは儲けるためにこそ金を貸す。
不況と財政の窮状につけこんで払えないほどの融資をし、払えなくなると金融連鎖、信用収縮の危機を煽って、各国政府の尻を叩いて、金融資本の損失を穴埋めさせる。
ギリシャは国際金融資本に仕掛けられた。
ギリシャ支援金は各国金融資本が所有するギリシャ国債を買い上げる金であり、ギリシャにはビタ一文入るわけではない。
金融資本は丸儲けである。
ギリシャ国民は超緊縮財政を押し付けられて、窮乏化し、激しい失業と暴動が始まるだろう。
まさにツケ回しされるなのだが、二番手にツケ回しされるのは、EUの勤労者に他ならない。
「ユーロは夢の終わりか」、「ヨーロッパの危機」、「動けなくなってきたユーロ」、「ユーロの危機は労働階級を試練にさらす」。
ギリシャは一般勤労者と一部の富裕層と言う国民の分解に直面するだろうが、今後の修羅場では軍事独裁を許さない構えが必要だ。
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ギリシャ、緊縮策を採択 大規模抗議デモで1人死亡 【10月21日 AFP】
ギリシャ議会は20日夜、減税の大幅縮小や公共部門の数千人規模の一時解雇などを盛り込んだ緊縮策を採択した。
緊縮策は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が80億ユーロ(約8500億円)の追加融資を行う上で前提条件とされていた。
一方、ゼネスト2日目の同日、採決が行われる首都アテネ(Athens)の国会議事堂前のシンタグマ広場(Syntagma Square)には約3万5000人のデモ参加者が集結し、一部が警官隊と衝突。1人が死亡した。
デモの主導権をめぐって労働組合側とデモ参加者が衝突し、火炎びんを投げ合う事態に発展する中、警官隊が催涙ガスを発射したという。
警察は50代の男性が病院で死亡したと発表したが、死因については触れなかった。国内メディアは男性がデモに巻き込まれて頭を負傷したと伝えたが、病院側は男性にけがはなく、搬送時には既に心肺停止状態だったと話している。
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ギリシャ、抗議行動続く-参加者1人死亡 1/21WSJ
【アテネ】ギリシャでは20日も、政府の新緊縮政策に反発する国民によるストと暴力を伴うデモが続いた。緊縮策で与党、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の支持率は大きく低下しており、早期の総選挙の可能性が高まってきた。
同国議会は緊縮政策関連法案の最終採決を行い、賛成154、反対144で可決した。2人が棄権した。しかし、わずかな差での過半数議席しか持っていない同党は、党の指示に従わなかった1人を除名したことから、議会でますます厳しい状況に置かれることになった。
議会の外では数万人の国民が集まり、緊縮策への反対を叫んだ。同時に、48時間のゼネストも続き、全国的に公的サービスは停止状態となった。
アテネのシンタグマ広場では、共産党系の労組Pameの人たちと自称アナキストの数百人が衝突して乱闘となった。その後、機動隊が広場に入ったが、70人以上がけがをし、1人の男性(53)が死亡した。病院関係者によると、この男性には以前に心臓疾患の記録があり、機動隊が発射した催涙ガスを吸い込んだあと、心筋梗塞を起こしたという。
欧州連合(EU)とIMF、欧州中央銀行(ECB)、それにギリシャ政府は今月、国際的な債権者からの圧力を受けて、今年と来年の財政赤字を縮小させるための最新の緊縮措置をまとめ上げた。
これによって公務員の数と給与がさらに削られ、高所得者の年金もカットされる。また、労働者の集団交渉権も抑制され、新税も導入される。
今回の採決は、内部に反対者を抱えるPASOKの力を試すものとなった。同党のLouka Katseli氏は法案の枠組みには賛成したが、ある条項には反対して、除名処分を受けた。この結果、定数300人の議会で政府は153議席を持つだけとなった。
同党の有力議員、バッソ・パパンドレウ氏は議会で、「今回が最後だ」と述べた。他の同党議員も同様の発言をしている。
2009年の総選挙で地滑り的勝利を収めた同党の支持率はその後の緊縮政策で急落。現在では歴史的な低水準に下落し、同党が初めて主要政党として姿を現した1970年代半ばの水準になっている。党当局者は「トロイカ(EU、IMF、ECB)は一段の緊縮を求めてくるかもしれない。単独政権ではその実現は不可能だ」とし、「パパンドレウ(首相)は早期の総選挙を強いられるだろう」との見方を示した。
EUは新緊縮政策関連法案の可決を、80億ユーロ(8480億円)の次回救済資金支払いの条件としている。これは昨年合意された総額1100億ユーロの救済資金の一部。
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ギリシャ各地で緊縮策に抗議デモ、一部で衝突 【10月20日 AFP】
ギリシャ各地で19日、財政破たん回避のための新たな緊縮策が議会で採決されるのを前に2日間のゼネストが開始され、首都アテネ(Athens)では一部が警官隊と衝突した。
アテネの国会議事堂に面したシンタグマ広場(Syntagma Square)には、主催者発表で20万人、警察発表で7万人のデモ隊が集結した。
警官隊はデモ隊に催涙ガスを発射し、デモ隊は火炎びんや火をつけたゴミ箱を投げつけるほか、店を略奪するなどした。
この衝突で少なくとも17人が負傷。
警察によると、非番の警官も襲撃され、拳銃が奪われたという。
市内には約5000人の警官が配備され、警戒にあたった。
ギリシャ議会は同日、賃金の改定、減税の大幅縮小、公務員の新たな給与体系の導入、公共部門の数千人規模の一時解雇などを盛り込んだ新たな緊縮策を第1回投票で採択した。
最終的な採決が行われる20日には、アテネのほか各都市でさらに多くの抗議行動が予定されている。
19日にアテネ、テッサロニキ(Thessaloniki)、パトラス(Patras)、イラクリオン(Heraklion)などで行われたデモの大半は穏やかに行われたが、
緊縮財政がほぼ2年間続いている上に新たな緊縮策が導入されるとあり、国民の間に怒りが広がっている。
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ユーロ圏の危機対策:失われた時間の物語 10/2 ロシアの声
元イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員のデヴィッド・ブランチフラワー経済学者は、世界市場は、欧州主要国への信頼を失ったとの考えを示している。なぜならば、欧州主要国は、ユーロ圏の財政危機国に対して借款提供や国債購入というやり方でさえ、危機再発を防ぐ力がない様に思われるからだ。
ブランチフラワー氏は、次のように語った。
「投資家らは、財政危機国への新たな借款が、現在の状況を急激に改善できるとは信じていない。主要な欧州諸国の政府は、余りにも長い時間待ち続け、決定的な対策を承認しなかった。そして、その結果、市場でのコントロールを失った。市場は現在、危機の扇動を含め、どんな事でも行うことが可能だ。」
ロシアの経済学者エレーナ・トゥルジャンスカヤ氏は、資本注入を考慮したメカニズム自体が間違っているとの確信を示している。同氏は、このシステムは長期的な新たな依存へ陥らせると述べ、次のように語っている。
「欧州金融安定基金の支援額引き上げだけでは効果はなく、正しいものでもない。 この方法は、長期的な借款の借り換えを前提としたものだからだ。債務を抱える国々は、さらに厳しい経済対策を講じなくてはならない。その結果、債務が増え、国内総生産は全く伸びなくなるだろう。」
アナリストらは、危機の拡大を回避するために、政治家らが抜本的対策を決断しなくてはならないと指摘している。その方向性における初めの一歩として、ドイツが予算政策の厳格化を呼びかけたことが挙げられる。
ドイツのメルケル首相は先日、予算赤字の基準を超えている国々に対して、欧州連合(EU)は、そのような国の予算を取り消す権利があると述べた。一方で、ドイツのイニシアチブの生命は、それほど長くはない。ロシアの金融アナリストであるイーゴリ・ニコラエフ氏は、ギリシャのデフォルト危機を解決するためには、厳しい策が必要だとの見解を表し、次のように語っている。
「多くの人が、ギリシャのデフォルトの後で連鎖反応が始まることを恐れている。だがギリシャに対する厳しい対策で、この連鎖反応が起こる可能性を軽減できる。」
先週の初めには、そのような厳しいシナリオも排除できないとの噂が流れた。だが、EU諸国の中でもギリシャを保護する主要国であるドイツの首相は、ギリシャへの無条件の支持について再度声明を表した。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、IMFの準備金は、財政危機国の救済には不十分だとの確信を示し、ロシアとその他のBRICS諸国へEUを資金援助するよう申し出た。
ロシアは、主要な役割はIMFが務めなければならないと考えている。ロシア経済省のセルゲイ・ストルチャク次官は、「ロシアの声」からのインタビューにこたえ、新たなメカニズムを考える必要はないと述べ、次のように語っている。
「BRICS諸国は、各国の法律の範囲内で行動しなければならない。我々は、財政危機に関して国家間の相互関係をどのようなものにするかについて、様々な形を考えることができるものの、主要な方向性としては、事実上、唯一の金融支援機関であるIMFのポテンシャルを高めることしかない。」
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TPP推進のため平気で捏造するマスコミ記事
2011-10-21
TPPは農業と工業の問題だけでない、作業部会は24もあるのだ。農業と工業なんてものではない、はまるで米国の対日要求よろしく、サービス、金融、投資、医療、通信、資格制度、参入障壁諸々である。
「米国TPPは100年めの攻撃」、「異様なTPP開国論:内橋克人」、「米国の走狗か社会共通資本か:宇沢」。
アメリカと経団連のためなら、白を黒といい、黒を白といい、事実を報道せず、ありもしないことを捏造して報道する。
これがテレビと五大全国紙である。
TPPについても同様である。彼らはTPPに早く参加の流れをつくろうと捏造報道をするが、対象が自民党でも同じ事なのだ。
「党内異論に配慮し、慎重に検討したい」と言う意味の発言が、紙面では「前向きな姿勢を示した」と言う記事に捏造するのである。
そもそも、これでは論議にもならない。
彼らは国民を思考停止にして、流れをつくりたいだけなのだ。
経済記事がアメリカと経団連のためのでたらめな解説ばかりなのと同じ事だ。
自民党の中まで手を入れて、有力なTPP反対派に疑心をつくろうとしているわけだ。
彼らが道理がとおらないことを、主張している証明みたいな現実である。
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経済ニュースの「ウソ」を見抜け! 10/20 三橋貴明 Klugから
全く喜ばしい話ではないのだが、本連載にまことに相応しい報道が頻発している。すなわち「購読者を騙す経済記事」が立て続けにリリースされているのである。すなわち、TPP関連の報道だ。
現在、民主党政権は経済産業省の「煽り」に乗せられ、TPPすなわち環太平洋連携協定への交渉参加に前のめりになっている。交渉参加後の離脱など、現実的に不可能に近いにも関わらず、経済産業省の官僚たちが、
「TPP参加と、交渉参加は違います。交渉に参加して、条件が合わなかったら離脱できます」
などと繰り返し、それに民主党首脳部が引きずられているわけである。
そもそも、TPPについて「交渉参加」しようとした場合、日本は一定のコミットメントを求められる。TPP交渉は町内会の寄り合いではなく、外交なのだ。外交である以上、一定のコミットメントなしでは、そもそも参加することができないのだ。また、過去の多国間交渉において、交渉途中で離脱した国の例はほとんどない。
この辺りの外交センスが民主党政権に皆無であるからこそ、筆者は現時点におけるTPP参加はもちろん、交渉参加にさえ反対せざるを得ないのである。民主党政権がどうしてもTPP交渉に参加したいというのであれば、日本国民への影響を「全て」オープンにしなければならない。
経済産業省の官僚や一部の民主党の政治家は、
「交渉に参加してみなければ、詳細は分からない」
などと詭弁を弄している。バカバカしい限りだ。
【図124-1 TPPの作業部会】

現時点で、TPP参加予定国が協議している作業分野は24もある。これら24の作業部会の種類について、まずは情報を全て明らかにし、それぞれの分野について「現時点で分かっていること」をオープンにすることは、別に苦労をすることもなく可能だ。
24の作業分野について、大々的にディスクローズした上で、
「それぞれの分野について分かっていることは、これしかない。残りは調査中である」
と発表すればいいのである。
ところが、政府やマスコミはTPPについて、あたかも「製造業 v.s. 農業」という構図であるかのような報道を続けている。製造業も農業も、所詮はTPPの作業部会の、それぞれ24分の1ずつに過ぎない。作業部会の残りの24分の22については、一切情報(作業部会が存在する情報を含め)を明らかにせず、
「保護的な日本の農業を改善するチャンスだ! だからTPP参加を!」
などと言われては、国民や政治家がまともな判断などできるはずがない。
日本政府やマスコミがオープンにしない「24分の22」の中には、かなり「怖い」分野が含まれている。代表的なものは「投資」だ。
そもそも、投資の全面自由化は、国家の安全保障に影響を与えかねないため、WTOでさえ自由化の対象外とされている。さらに、元々のTPP協定、すなわちP4協定(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが締結済み)には、「投資」は含まれていないのである(また「金融サービス」もP4協定に含まれていない)。
要するに、アメリカがTPP参加時に作業部会の中に「投資」(及び「金融」)を突っ込んだという話だ。アメリカが貿易協定において投資を「突っ込もうとする」のは、毎度のことである。NAFTAや米韓FTAには、きちんと投資の自由化が盛り込まれている。また、アメリカは以前、MAI(多国間投資協定)をOECD内で実現しようとしたが、フランスの反対で失敗した。WTOにおける投資自由化も、発展途上国に猛反発され、やはり挫折を味わっている。
アメリカが「投資」を貿易協定に入れる際の「やり口」は、ISD協定(Investor-State Dispute Settlement)とセットにするというものである。例えば、アメリカ企業が投資をした国において、その国の政府が「自国民のために」何らかの政策を変更したとしよう。その国の政府が「自国民のために」実施した政策により、アメリカの投資企業が損害を被った場合、国際投資紛争仲介センター(ICSID)に提訴することが可能になる。結果、政策を「自国民のために」変更した政府は、アメリカ企業に損害を賠償しなければならなくなるのだ。
国家が「自国民のために政策を変更する」ことは、その国の主権行為だ。それをアメリカ企業が外部機関に訴え、損害賠償を請求することができるという話で、明らかな主権侵害行為である。とはいえ、一度、ISD協定が含まれる貿易協定をアメリカと結んでしまうと、その国の政府は常にICSIDを気にしながら、政策を実施しなければならなくなってしまうのだ。
日本国内で浮ついたように「TPP! TPP!」と叫んでいる政治家や評論家は、上記の類の事実を知っているのだろうか。知っていながら黙っているのであれば、明らかに国民をミスリードしようとしていることになり、極めて悪質な行為だ。また、知らないのであれば、あまりにも無責任である。TPPを推進しようとしている以上、その中身についても、きちんと把握していなければならないはずだ。
上記の例の通り、日本国内のTPPに関する「情報の歪み」は危険な水準に至っている。そもそもTPPの中身が正しく報じられていないのに加え、日本の大手新聞各紙が要人の発言を歪め、国民をミスリードしようと全力を傾けているのである。
最近のミスリードの中で、最も悪質なものを取り上げよう。予め注意しておくが、最初に取り上げる読売新聞の記事は「まとも」である。
『2011年10月16日 読売新聞「TPP、拙速判断いけない...自民は議論急ぐ考え」
自民党の谷垣総裁は15日、テレビ東京の番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加について、「まだ情報が少なくていろいろな問題点を解明しないといけないが、全然協議もしないということでいいのか」と述べ、自民党内の議論を急ぐ考えを示した。
谷垣氏は「国論もまだ集約していないので、野党として集約させる役割も果たしたい。あまり拙速に判断してはいけない」と述べ、慎重に議論する方針も示した。
同党は今後、政務調査会に新設した「外交・経済連携調査会」(会長・高村正彦元外相)を中心に議論を再開する方針。TPP交渉参加問題では、石原幹事長らが賛同する考えを示しているが、農業関係議員を中心に反対論が多い。』
上記、記事に出てくる「15日のテレビ東京の番組」は筆者も視聴したが、読売新聞は自民党の谷垣総裁の発言を歪曲することもなく、そのまま正しく伝えている。谷垣総裁はTPPに関する見解を尋ねられ、
「情報と協議が足りない。TPPは農業問題ばかり取り上げられるが、24もの分野がある。自民党も外交・経済連携調査会を発足し、議論を始めた。国論も未だ集約しておらず、拙速に判断してはいけない」
という主旨のことを述べたのである。
そもそも、国民の多くがTPPについて「製造業 v.s. 農業」という問題で捉えている以上、交渉参加検討もあったものではない。野党の総裁としても、24の作業分野について情報を集め、ある程度の議論を重ねなければ、交渉参加への態度を明らかにすることさえできないわけである。
上記記事における谷垣総裁の受け答えは、現時点においては至極真っ当である。とにかく、TPPに関してはオープンにされた情報が、今はあまりにも不足している。情報が足りない状況で「交渉に参加すべき」あるいは「交渉に参加すべきではない」と明言した場合、逆に無責任という批判を免れないだろう。
ところが、信じ難いことに一部の大手新聞社は、上記の谷垣総裁の受け答えを「交渉参加に前向き」と報じたのである。
『2011年10月16日 毎日新聞 TPP:「交渉参加し、判断するべきだ」...谷垣総裁
自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京の番組で、政府が交渉参加を検討している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について「全体の協議もしないことでいいのか。協議しながら国策、国益にかなうか判断しないといけない」と述べ、交渉には参加すべきだとの考えを示した。(後略)』
『2011年10月16日 産経新聞 「【TPP参加】交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言 党内に波紋呼ぶ可能性も」
自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京番組で、環太平洋連携協定(TPP)交渉について「協議をしながら、国益にかなうかどうかを判断しなければいけない」と述べ、参加に前向きな考えを示した。(後略)』
『2011年10月16日 日経新聞 「自民総裁、TPP交渉「参加すべき」」
自民党の谷垣禎一総裁は15日午前のテレビ東京番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題に関し「全然協議しないでいいのか。協議をしながら国益にかなうか判断すべきだ」と述べ、交渉に参加すべきだとの認識を示した。』
谷垣総裁は上記の「テレビ番組」において、そもそも「交渉」あるいは「交渉参加」という言葉すら、一度も使っていない。それにも関わらず、「交渉参加し、判断するべきだ」(毎日新聞)、「自民総裁、TPP交渉「参加すべき」」(日経新聞)といった見出しをつけてしまうわけであるから、日本の大手紙のやり口は常軌を逸している。
また、産経新聞は「交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言 党内に波紋呼ぶ可能性も」と、まるで自民党内の抗争を煽るかのごとき見出しをつけている。実際、自民党の政治家の中には、
「この時点で『TPP交渉参加』などと発言するなど、許せない」
と、谷垣総裁を批判する発言をした人物がいる。産経新聞などが意図した「自民党内の波紋」は見事に発生したわけだが、果たしてこれが民主主義国家における報道機関として、正しい姿勢なのだろうか。
谷垣総裁の発言を捻じ曲げて報じ、あたかも、
「自民党もTPPの交渉参加に賛成のようですよ」
と言った印象操作を読者に行い、さらに自民党内の抗争を煽る。現時点で、自民党内ではTPP反対が多数派を占めているため、本当に谷垣総裁が「TPP交渉に参加を」などと発言した日には、確実に党内の軋轢は強まる。
現時点におけるマスコミ報道は、政府や経済産業省などの「情報統制」下にある。すなわち、TPPに関する詳細情報をひた隠しにした上で、
「交渉参加と参加は違いますから」
と、あたかも詐欺師のような口調で交渉参加を煽る姿勢を貫いている。本来、この種の情報統制を批判することこそが、マスコミの義務のはずだ。それが、大手紙が揃って要人の発言を捻じ曲げ、TPPの24もの作業項目のうち、わずかに二つ(製造業、農業)のみを取り上げ、
「バスに乗り遅れるな!」
と、戦前の三国同盟(日独伊)参加のときと同じ論調でTPP参加を煽っている。戦前の枢軸国陣営への参加の際、日本国内では、まさしく上記の「バスに乗り遅れるな」という言葉が流行し、陸軍を中心に戦争にのめりこんでいったのである。
不思議なことに、今回のTPPにおいて、地方紙は比較的公平にTPPの問題点について論じている。農業のみならず、政府調達(公共事業)、医療、投資など、大手紙が全く触れようとしないTPPの重要項目について、懸念の論調で記事を書いているのである。特に、政府調達の更なる自由化は、地方経済を直撃する可能性が高く、地方紙も並々ならぬ危機感を持っていると思われる。
いずれにせよ、上記の毎日新聞、産経新聞、日経新聞のように、ここまで露骨な情報統制が行われている以上、政治家はTPPについて極めて注意深く判断しなければならない。11月のAPECまでに交渉参加を決断するなど、現実的には不可能なのだ。
それでも、APEC時点で野田政権がTPP交渉参加を決断した場合、それは単に「国家の形を変えかねない事項について、いい加減に決めた」ことに他ならないのである。
「米国TPPは100年めの攻撃」、「異様なTPP開国論:内橋克人」、「米国の走狗か社会共通資本か:宇沢」。
アメリカと経団連のためなら、白を黒といい、黒を白といい、事実を報道せず、ありもしないことを捏造して報道する。
これがテレビと五大全国紙である。
TPPについても同様である。彼らはTPPに早く参加の流れをつくろうと捏造報道をするが、対象が自民党でも同じ事なのだ。
「党内異論に配慮し、慎重に検討したい」と言う意味の発言が、紙面では「前向きな姿勢を示した」と言う記事に捏造するのである。
そもそも、これでは論議にもならない。
彼らは国民を思考停止にして、流れをつくりたいだけなのだ。
経済記事がアメリカと経団連のためのでたらめな解説ばかりなのと同じ事だ。
自民党の中まで手を入れて、有力なTPP反対派に疑心をつくろうとしているわけだ。
彼らが道理がとおらないことを、主張している証明みたいな現実である。
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経済ニュースの「ウソ」を見抜け! 10/20 三橋貴明 Klugから
全く喜ばしい話ではないのだが、本連載にまことに相応しい報道が頻発している。すなわち「購読者を騙す経済記事」が立て続けにリリースされているのである。すなわち、TPP関連の報道だ。
現在、民主党政権は経済産業省の「煽り」に乗せられ、TPPすなわち環太平洋連携協定への交渉参加に前のめりになっている。交渉参加後の離脱など、現実的に不可能に近いにも関わらず、経済産業省の官僚たちが、
「TPP参加と、交渉参加は違います。交渉に参加して、条件が合わなかったら離脱できます」
などと繰り返し、それに民主党首脳部が引きずられているわけである。
そもそも、TPPについて「交渉参加」しようとした場合、日本は一定のコミットメントを求められる。TPP交渉は町内会の寄り合いではなく、外交なのだ。外交である以上、一定のコミットメントなしでは、そもそも参加することができないのだ。また、過去の多国間交渉において、交渉途中で離脱した国の例はほとんどない。
この辺りの外交センスが民主党政権に皆無であるからこそ、筆者は現時点におけるTPP参加はもちろん、交渉参加にさえ反対せざるを得ないのである。民主党政権がどうしてもTPP交渉に参加したいというのであれば、日本国民への影響を「全て」オープンにしなければならない。
経済産業省の官僚や一部の民主党の政治家は、
「交渉に参加してみなければ、詳細は分からない」
などと詭弁を弄している。バカバカしい限りだ。
【図124-1 TPPの作業部会】

現時点で、TPP参加予定国が協議している作業分野は24もある。これら24の作業部会の種類について、まずは情報を全て明らかにし、それぞれの分野について「現時点で分かっていること」をオープンにすることは、別に苦労をすることもなく可能だ。
24の作業分野について、大々的にディスクローズした上で、
「それぞれの分野について分かっていることは、これしかない。残りは調査中である」
と発表すればいいのである。
ところが、政府やマスコミはTPPについて、あたかも「製造業 v.s. 農業」という構図であるかのような報道を続けている。製造業も農業も、所詮はTPPの作業部会の、それぞれ24分の1ずつに過ぎない。作業部会の残りの24分の22については、一切情報(作業部会が存在する情報を含め)を明らかにせず、
「保護的な日本の農業を改善するチャンスだ! だからTPP参加を!」
などと言われては、国民や政治家がまともな判断などできるはずがない。
日本政府やマスコミがオープンにしない「24分の22」の中には、かなり「怖い」分野が含まれている。代表的なものは「投資」だ。
そもそも、投資の全面自由化は、国家の安全保障に影響を与えかねないため、WTOでさえ自由化の対象外とされている。さらに、元々のTPP協定、すなわちP4協定(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが締結済み)には、「投資」は含まれていないのである(また「金融サービス」もP4協定に含まれていない)。
要するに、アメリカがTPP参加時に作業部会の中に「投資」(及び「金融」)を突っ込んだという話だ。アメリカが貿易協定において投資を「突っ込もうとする」のは、毎度のことである。NAFTAや米韓FTAには、きちんと投資の自由化が盛り込まれている。また、アメリカは以前、MAI(多国間投資協定)をOECD内で実現しようとしたが、フランスの反対で失敗した。WTOにおける投資自由化も、発展途上国に猛反発され、やはり挫折を味わっている。
アメリカが「投資」を貿易協定に入れる際の「やり口」は、ISD協定(Investor-State Dispute Settlement)とセットにするというものである。例えば、アメリカ企業が投資をした国において、その国の政府が「自国民のために」何らかの政策を変更したとしよう。その国の政府が「自国民のために」実施した政策により、アメリカの投資企業が損害を被った場合、国際投資紛争仲介センター(ICSID)に提訴することが可能になる。結果、政策を「自国民のために」変更した政府は、アメリカ企業に損害を賠償しなければならなくなるのだ。
国家が「自国民のために政策を変更する」ことは、その国の主権行為だ。それをアメリカ企業が外部機関に訴え、損害賠償を請求することができるという話で、明らかな主権侵害行為である。とはいえ、一度、ISD協定が含まれる貿易協定をアメリカと結んでしまうと、その国の政府は常にICSIDを気にしながら、政策を実施しなければならなくなってしまうのだ。
日本国内で浮ついたように「TPP! TPP!」と叫んでいる政治家や評論家は、上記の類の事実を知っているのだろうか。知っていながら黙っているのであれば、明らかに国民をミスリードしようとしていることになり、極めて悪質な行為だ。また、知らないのであれば、あまりにも無責任である。TPPを推進しようとしている以上、その中身についても、きちんと把握していなければならないはずだ。
上記の例の通り、日本国内のTPPに関する「情報の歪み」は危険な水準に至っている。そもそもTPPの中身が正しく報じられていないのに加え、日本の大手新聞各紙が要人の発言を歪め、国民をミスリードしようと全力を傾けているのである。
最近のミスリードの中で、最も悪質なものを取り上げよう。予め注意しておくが、最初に取り上げる読売新聞の記事は「まとも」である。
『2011年10月16日 読売新聞「TPP、拙速判断いけない...自民は議論急ぐ考え」
自民党の谷垣総裁は15日、テレビ東京の番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加について、「まだ情報が少なくていろいろな問題点を解明しないといけないが、全然協議もしないということでいいのか」と述べ、自民党内の議論を急ぐ考えを示した。
谷垣氏は「国論もまだ集約していないので、野党として集約させる役割も果たしたい。あまり拙速に判断してはいけない」と述べ、慎重に議論する方針も示した。
同党は今後、政務調査会に新設した「外交・経済連携調査会」(会長・高村正彦元外相)を中心に議論を再開する方針。TPP交渉参加問題では、石原幹事長らが賛同する考えを示しているが、農業関係議員を中心に反対論が多い。』
上記、記事に出てくる「15日のテレビ東京の番組」は筆者も視聴したが、読売新聞は自民党の谷垣総裁の発言を歪曲することもなく、そのまま正しく伝えている。谷垣総裁はTPPに関する見解を尋ねられ、
「情報と協議が足りない。TPPは農業問題ばかり取り上げられるが、24もの分野がある。自民党も外交・経済連携調査会を発足し、議論を始めた。国論も未だ集約しておらず、拙速に判断してはいけない」
という主旨のことを述べたのである。
そもそも、国民の多くがTPPについて「製造業 v.s. 農業」という問題で捉えている以上、交渉参加検討もあったものではない。野党の総裁としても、24の作業分野について情報を集め、ある程度の議論を重ねなければ、交渉参加への態度を明らかにすることさえできないわけである。
上記記事における谷垣総裁の受け答えは、現時点においては至極真っ当である。とにかく、TPPに関してはオープンにされた情報が、今はあまりにも不足している。情報が足りない状況で「交渉に参加すべき」あるいは「交渉に参加すべきではない」と明言した場合、逆に無責任という批判を免れないだろう。
ところが、信じ難いことに一部の大手新聞社は、上記の谷垣総裁の受け答えを「交渉参加に前向き」と報じたのである。
『2011年10月16日 毎日新聞 TPP:「交渉参加し、判断するべきだ」...谷垣総裁
自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京の番組で、政府が交渉参加を検討している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について「全体の協議もしないことでいいのか。協議しながら国策、国益にかなうか判断しないといけない」と述べ、交渉には参加すべきだとの考えを示した。(後略)』
『2011年10月16日 産経新聞 「【TPP参加】交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言 党内に波紋呼ぶ可能性も」
自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京番組で、環太平洋連携協定(TPP)交渉について「協議をしながら、国益にかなうかどうかを判断しなければいけない」と述べ、参加に前向きな考えを示した。(後略)』
『2011年10月16日 日経新聞 「自民総裁、TPP交渉「参加すべき」」
自民党の谷垣禎一総裁は15日午前のテレビ東京番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題に関し「全然協議しないでいいのか。協議をしながら国益にかなうか判断すべきだ」と述べ、交渉に参加すべきだとの認識を示した。』
谷垣総裁は上記の「テレビ番組」において、そもそも「交渉」あるいは「交渉参加」という言葉すら、一度も使っていない。それにも関わらず、「交渉参加し、判断するべきだ」(毎日新聞)、「自民総裁、TPP交渉「参加すべき」」(日経新聞)といった見出しをつけてしまうわけであるから、日本の大手紙のやり口は常軌を逸している。
また、産経新聞は「交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言 党内に波紋呼ぶ可能性も」と、まるで自民党内の抗争を煽るかのごとき見出しをつけている。実際、自民党の政治家の中には、
「この時点で『TPP交渉参加』などと発言するなど、許せない」
と、谷垣総裁を批判する発言をした人物がいる。産経新聞などが意図した「自民党内の波紋」は見事に発生したわけだが、果たしてこれが民主主義国家における報道機関として、正しい姿勢なのだろうか。
谷垣総裁の発言を捻じ曲げて報じ、あたかも、
「自民党もTPPの交渉参加に賛成のようですよ」
と言った印象操作を読者に行い、さらに自民党内の抗争を煽る。現時点で、自民党内ではTPP反対が多数派を占めているため、本当に谷垣総裁が「TPP交渉に参加を」などと発言した日には、確実に党内の軋轢は強まる。
現時点におけるマスコミ報道は、政府や経済産業省などの「情報統制」下にある。すなわち、TPPに関する詳細情報をひた隠しにした上で、
「交渉参加と参加は違いますから」
と、あたかも詐欺師のような口調で交渉参加を煽る姿勢を貫いている。本来、この種の情報統制を批判することこそが、マスコミの義務のはずだ。それが、大手紙が揃って要人の発言を捻じ曲げ、TPPの24もの作業項目のうち、わずかに二つ(製造業、農業)のみを取り上げ、
「バスに乗り遅れるな!」
と、戦前の三国同盟(日独伊)参加のときと同じ論調でTPP参加を煽っている。戦前の枢軸国陣営への参加の際、日本国内では、まさしく上記の「バスに乗り遅れるな」という言葉が流行し、陸軍を中心に戦争にのめりこんでいったのである。
不思議なことに、今回のTPPにおいて、地方紙は比較的公平にTPPの問題点について論じている。農業のみならず、政府調達(公共事業)、医療、投資など、大手紙が全く触れようとしないTPPの重要項目について、懸念の論調で記事を書いているのである。特に、政府調達の更なる自由化は、地方経済を直撃する可能性が高く、地方紙も並々ならぬ危機感を持っていると思われる。
いずれにせよ、上記の毎日新聞、産経新聞、日経新聞のように、ここまで露骨な情報統制が行われている以上、政治家はTPPについて極めて注意深く判断しなければならない。11月のAPECまでに交渉参加を決断するなど、現実的には不可能なのだ。
それでも、APEC時点で野田政権がTPP交渉参加を決断した場合、それは単に「国家の形を変えかねない事項について、いい加減に決めた」ことに他ならないのである。
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