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もうすぐ北風が強くなる

米国、財界の政治を倒し、市民の政治を!植草一秀

 植草一秀氏は我が国の経済学者で若手のホープとみなされ、小泉・竹中の新自由主義政策に対して真っ向から厳しい批判を続けた。
 竹中の対米盲従政策は与党自民党の幹部の中にも危険と見るものが多く、竹中を更迭して、植草を据えようとの動きがあった。

 この情報は竹中に入り、竹中は即時に米国に飛んで、対日のバックであるハバードなどと相談した。
 そして、竹中の帰国後、植草は神奈川県警に駅エスカレータでの手鏡覗きを捏造された。
 植草は経済学者としての地位を失い、竹中某は安泰に権力行使を続けた。
 そして、この時期からテレビと全国紙は、新自由主義の御用学者と御用評論家以外を、ほぼ完全に排除したのである。

 冤罪による攻撃で学界から抹殺されたが、その識見と能力に変わりはない。
 逆に弾圧されたことで、氏の経済政策論と政治論はさらに鋭いものになっている。

 2008年に始めたブログのプロフィールに書かれている植草氏の決意。

不撓不屈の精神で無実の真実を明らかにし、
言論弾圧に屈することなく、真理を追求し、
巨大権力の不正義を糾弾し続けます。

脱原発100万人デモとNHK解体的改革を成功させよう  9/21 植草一秀氏から

 政治に関わりのある主体には、市民、官僚、大企業、外国の四者がある。零細事業者は市民のなかに含めて考えることができる。
 日本の政治改革の課題は、日本政治を市民のための存在に変えることである。

 市民が主役の、市民の幸福を追求する政治を実現することが政治改革の課題である。
 これまでの日本政治はどのようなものであったか。
 
 政治の主役は、米国、官僚、大資本(大企業)の連合体であった。
 米国、官僚、大資本を背後に抱え、日本政治を支配し続けてきた存在が自民党である。
 
 第二次大戦直後、GHQは日本の徹底した民主化を目指した。財閥解体、農地解放、労働組合育成などの大改革を矢継ぎ早に実行し、平和憲法を制定し、徹底した武装解除を実行した。
 新憲法が施行された1947年の総選挙では、社会党党首の片山哲氏を首班とする社会党主軸の連立政権が樹立された。日本の歴史は大変革の道を踏み出すかに見えた。
 
 ところが、この1947年に日本の実質支配者であった米国内部で劇的な変化が生じた。冷戦の勃発に伴う、反共政策の浮上だった。
 この変化に伴い、GHQの対日占領政策は激変した。レッドパージの旋風が吹き荒れ、GHQによるさまざまな工作活動、謀略活動が積極的に展開されたと見られている。
 
 米国は、日本の民主化政策を中断し、日本を反共の防波堤とすることを新たな目標とした。思想を統制する秘密警察組織が構築され、日本の再軍備も進められた。
 これ以後、GHQは日本政治を米国、官僚、大資本の支配下に置くことを基本方針と定めたのである。
 
 それでも、国政選挙を通じて樹立される政権のなかには、米国による支配に抵抗を示す政権も出現した。
 鳩山一郎内閣、石橋湛山内閣、田中角栄内閣などである。これらの政権が米国から激しく攻撃されたのは言うまでもない。鳩山一郎首相は一度も米国を訪問しない首相になった。石橋湛山氏は就任間もなく肺炎で病床に伏し、首相を辞任したが、細菌兵器で肺炎をり患した可能性は十分に想定可能である。
 
 田中角栄首相は米国が仕組んだロッキード事件によって政界を追われた。脳卒中による麻痺、そして死に至る過程の裏側に謀略の影が鮮明に浮かび上がる。
 
 長きにわたる自民党一党支配の構造を打破し、政権交代の偉業を成し遂げたのが小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏が牽引した民主党であった。
 
 しかし、2009年9月に発足した鳩山政権はメディアの総攻撃を受け、普天間問題で米国は意図して鳩山政権を窮地に追い込んだ。
 
 鳩山政権退陣とともに出現した菅直人政権は、反革命政権である。市民が支配権を有する政権を倒し、米国、官僚、大資本が支配する政権に、日本政治を逆戻しさせたのが菅直人政権である。
 野田佳彦政権は、米官業による支配構造をさらに純化させた政権である。
 
 野田政権の政策基本方針を見れば、このことは明白である。
 
①普天間問題で米国の指令に従順に従う「恭順の意」を表明している。
 
②官僚利権を完全擁護する姿勢を示している。
 
③大資本には法人税大減税で利益供与する方針を示している。
 
 日本経団連の要求は次の三項目だ。
①法人税減税、②原発推進、③TPP参加
の三つである。
 
 野田佳彦氏は、この三つを丸呑みする可能性が高い。
 この基本構造を打破することが政治改革の課題である。

 米官業トライアングルは、市民を洗脳するためのツールとして、メディア支配を極めて重視している。このメディアの一部を市民勢力が奪取することが政治改革には不可欠である。
 
 ターゲットはNHKである。NHKは9月19日の「さようなら原発」5万人集会を午後7時の定時ニュースでまったく伝えなかったという。
 堕落大本営NHKを解体し、市民メディアに生まれ変わらせることが必要だ。
 NHK受信料支払い拒否運動を全国規模で広げる必要がある。

 新たに「放送委員会」を設置し、視聴者の互選による放送委員会委員によって放送委員会を組織し、この放送委員会にNHKのすべての運営権を付与するのだ。
 NHKの番組編成を必要最小規模のものとする。肥大化したNHKを縮小し、市民の受信料負担を大幅に引き下げることができる。
 偏向大本営と化しているNHKを解体し、市民が支配する公共放送を樹立するのである。

 9月19日の「さようなら原発」5万人集会では、大江健三郎氏の呼びかけに、驚くべき数の市民が呼応した。大江健三郎氏の呼びかけに応じる者などいないなどとほざく五流評論家もいたと伝えられているが、洞察力のなさで改めて五流を証明したわけだ。
 
 脱原発運動で、100万人デモを実現させることが重要である。日本政治の主権者である市民の声を政治に反映させるための、より大きなデモンストレーションが必要だ。
 100万人デモを挙行し、政治が市民の声を無視できない状況を作り出してゆくのである。
 
 野田佳彦政権は、経団連の要求を丸呑みして、原発・減税・TPPに突き進み、すべての負担を市民に押しかぶせる暴挙を示している。
 大企業には大減税だが、一般庶民には、復興増税11兆円、消費税増税年10兆円の暴政を具体化させつつある。1年10兆円の超巨大増税規模は、5年で50兆円増税に膨れ上がる。復興増税11兆円を加えれば、61兆円巨大増税になる。
 他方で、官僚天下りは完全温存される。
 
「米国・官僚・大企業のために行動する政治」

「市民のために行動する政治」
 は、目指す方向が完全に逆なのだ。したがって、市民は「米官業のために行動する政治」を支援すべきでない。日本政治を「市民のための政治」に転換することを目指さねばならない。
 
 小沢-鳩山民主党政権が倒閣されたいま、戦略・戦術を練り直さねばならないが、方針ははっきりしている。この方針を明確に認識して、脱原発100万人デモ、NHK放送受信料不払い運動など、可能な運動から手を付けてゆかねばならない。
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大マスコミの犯罪的な不誠実報道

今なお続く大手メディアの“不誠実”な報道に対する不信  9/22 上杉隆 ダイヤモンド・オンライン

 東京電力福島第一原発事故による大手メディアへの報道不信が極まっている。

 それも当然のことだろう。ここまで一貫して「原発事故」を象徴とする事件・事故の真相の情報隠蔽に加担してしまっては、読者や視聴者にも気づかれるというものだ。

 だからといって、筆者は、新聞・テレビを全否定するつもりはない。それはこれまでと同じ姿勢だ。

 たとえば、東京新聞の社説や「こちら特報部」、あるいはNHKのストレートニュースなどのように、誠実な報道を繰り返している大手メディアも少なくない。

 だが、それでも、読者や視聴者の立場からすれば、不誠実と思われる報道が続いている。それはまた、比較的気づかないような形でこっそりと報じられることが少なくない。きょうの読売新聞の次のベタ記事などまさしくその好例である。

   一見何の変哲もないベタ記事の
   “不誠実”な点とは

〈韓国、福島を除く被災3県への渡航制限を解除

【ソウル=中川孝之】韓国外交通商省は20日、東日本大震災で、福島、宮城、岩手、茨城の4県に出していた渡航制限について、21日から、福島県を除きすべて解除すると発表した。

 同省は、福島を除く3県は、余震が減り福島第一原発事故の影響もほとんどない、と解除理由を説明している〉(2011年9月20日22時32分 読売新聞)

 この小さな記事がなぜ不誠実なのか。それは、最初の前提となる情報が欠落しているからだ。


 最初の情報というのは、〈日本への渡航制限が行われていた〉というニュースを指す。事故発生当初の3月、韓国政府が東北4県に渡航制限を出していたというニュースを記憶している読者はほとんどいないだろう。それも当然だ。実際、海外政府による日本への渡航制限、渡航禁止、あるいは当初は避難勧告、避難命令を、曖昧か、あるいはほとんど報じてこなかったからだ

 その結果、原発事故を起こした日本が、海外からどのように見られているかもわからないことになった。だが、情報を売っている新聞記者や放送記者がまさか、知らなかったとは言わせない。

   こんなにあった!
   海外政府による日本からの退避勧告

【3月23日現在、原発事故への各国政府の対応。

▽米国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
チャーター機で約100人が台湾へ退避
外交官らの家族約600人に退避許可
軍人の家族2万人の国外退去を支援

▽英国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
チャーター機を香港まで運航

▽フランス
出国または東京以南への移動求める
政府機で241人がソウルへ退避
エールフランスに増便を指示

▽イタリア
出国または東京とその以北からの退避勧告
特別航空便の運航を検討

▽スイス
被災地と東京・横浜からの一時退避勧告
チャーター機の運航を検討

▽オーストリア
出国または東京・横浜からの退避勧告

▽スペイン
福島第一原発から120キロ圏外への退避勧告
チャーター機を運航

▽ロシア
輸送機を派遣

▽ベルギー
軍用機を派遣

▽チェコ
軍用機で106人が帰国

▽クロアチア
出国または南部への退避勧告

▽オーストラリア
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽ニュージーランド
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽韓国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽シンガポール
福島第一原発から100キロ圏外への退避勧告

▽フィンランド
東京とその以北からの退避勧告

▽セルビア
出国を勧告

▽イスラエル 
東京周辺から西日本などへの退避勧告

▽ドイツ 
出国または東京・横浜からの退避勧告

▽台湾 
高齢者、子供、女性に出国検討求める】
 (※この他中国なども多数避難させている。中国は関東、東北にバスを手配して「救出」し新潟から空輸。)

   諸外国の動きを
   報じただけで「デマ扱い」

 これは、3月の原発事故発生直後、筆者が自らのメルマガで配信した世界各国の避難勧告の様子である。

 日付は3月23日現在とあるが、実際は3月15日にはほとんどの国がこうした勧告を出していたのである。

 ところが、当時の日本では、世界のこうした動きを報じるだけで「デマ扱い」され、非難の集中砲火を浴びたものだ。その理由はなんといっても、同時期の日本政府の次の発表によるところが大きい。

【▼日本
福島第一原発から20キロ圏外への退避勧告
20~30キロは屋内待避】

 そしてまた、記者クラブメディアがこの「安心デマ」「安全デマ」を盛んに報じたものだから、多くの読者や視聴者が真相を知らされないまま、被曝してしまったのである。

 筆者が繰り返し言及してきた「犯罪行為」とはこのことだ。

   大手メディアはなぜ報じない?
   情報次第で賠償請求に変化も

 さらに大きな問題は今なお、こうした事実が公表されず、どのメディアも報じないことにある

 その結果、きょうの読売新聞がこっそり報じたニュースのように、読者にしてみれば「おや、そんなことになっていたのか」という記事が繰り返し載ることになるのである。

風評被害賠償金、きょうから仮払い請求受け付け

 東京電力の福島第一原発事故で福島、茨城、栃木、群馬県内の観光業者が受けた風評被害の賠償金を国が東電に代わって仮払いするための請求受け付けが21日から始まる。

 東電は今月12日から事故被害者への本格的な賠償手続きを開始。21日から法人、個人事業主にも対象を拡大するが、「東電による賠償金を待たずに運転資金が必要」という観光業者には、国が東電に代わって賠償金を仮払いする。文部科学省の発表によると、仮払いの請求書は郵送で受け付ける。宛先は、〒100-8959東京都千代田区霞ヶ関3の2の2「特定原子力損害に係る仮払金請求書 受付窓口」〉(2011年9月21日01時27分 読売新聞)

 このニュースは昨日のものだが、たとえば筆者のメルマガの情報と、大手メディアの情報では、観光業者が求める賠償請求の範囲も額も違ってくるのは明白だろう

 各国の避難勧告情報を元に賠償を試算すれば、その範囲は東北のみならず、日本全土に及ぶことになる。

 こうした情報は死活問題であるが、日本のメディアの不誠実な報道のおかげでなにも伝わってこないのだ。

 繰り返し書こう。新聞・テレビは読者や視聴者のために、いい加減に政府・東電の情報隠蔽に加担するのは止めたらどうだろうか。
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国の不幸の長期化は霞が関ビジネスか

 「悪徳ペンタゴン」の一翼を担い、最大集団でもあり、実務行政権力を行使する「霞が関官僚」。
 かつて、米国の対日圧力に抵抗した通産省などがあったが、冷戦終結と共に米国の強引な力に屈して、今ではこの集団全体が米国の利益のためには政権をも裏切ってサボを欲しいままにしている。

 そこまで利米、隷米になったの米国の要求に屈して洗脳された、それだけではないだろう。
 「霞が関官僚」全体の集団利害、利権と結びついているからだろう。
 今日本の抱える震災、原発、円高、デフレ不況、等々の苦難。政治の無責任による官僚のサボタージュ。
 山崎元氏がこの苦難の状況との霞ヶ関官僚の利権とを分析してみた。
  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(文中太字と(※ )はもうすぐ北風による) 
国の不幸を長期化させる
霞ヶ関株式会社の「ビジネス・モデル」    9/21 山崎元 ダイヤモンド・オンライン

   芝居の脚本は官僚が書いている

 野田新内閣に対する「どじょう内閣」という言葉にもそろそろ飽きてきた。もともと、どじょう鍋は、久しぶりに思い出すと食べてみたくなるが、何日も続けて食べたいと思うような食べ物ではない。

 特に、官僚作文のつなぎ合わせのような新首相の所信表明演説原稿(「日本経済新聞」なら13日の夕刊に全文が載っている)を読み返すと、結局、この内閣は、官僚が脚本を書く田舎芝居の新しい演目に過ぎないことが分かって、早くも「もういい」という気分に傾く。前とその前の演目(内閣)では、演者達のわがままで「政治主導」というアドリブ重視を試したものの、役者の力量が追いつかず芝居にすらならなかった。今回の内閣は、教訓を踏まえて、ひときわ脚本家(官僚)に従順のようだ

 いずれにせよ、現政権、前政権、前々政権、あるいはその前の自民党政権も含めて、政治は主体的に機能していない。政権毎のパフォーマンスに差はあるかも知れないが、集団としての官僚(以下、慣例に従って官僚を「霞ヶ関」と総称する)が日本の社会と経済を動かしていると考えるべきだろう。

 申し訳ないが、首相をはじめとして、今の内閣や党役員の面々に、官僚から見て「この人は出来る(=能力がある)かも知れない」、「この人にはかなわない」と思わせるに足るような能力や凄みを感じさせる人物は殆どいない。国会答弁でも、国際会議でも、閣僚のお世話をする官僚は、大学時代の家庭教師のアルバイトを思い出すような心境だろうと拝察する。これは、政治家に能力や凄みではなく、親近感程度のものを期待して、政治家(ひいては国のリーダー)を育成することに不熱心だった国民の気分がもたらした帰結だ。多くの政治家が「好感度」くらいしか磨いてこなかったわけだから、官僚に対する睨みもきかないし、選挙でも、テレビ芸人上がりの候補に負けたりする。

   「霞ヶ関」には国民の不幸が好都合なのか?

 野田新首相に指摘されるまでもなく、現在の日本に課題は多い。経済に近いものを幾つか挙げると、先ず(1)東日本大震災からの復興に向けた動きが遅い、(2)長年続くデフレからの脱却が出来ない、(3)円高で多くの産業・企業が苦しみ雇用にも悪影響が出ている、(4)社会保障、特に年金の改革が予定通り進んでいない、(5)日本の財政問題に関する議論が混乱している、といった諸問題がある。

 これらに加えて、外部環境の問題として、欧州と米国の状況が、共に怪しいを通り越して「まずい」に変わりつつある(資産価格下落と未処理の「含み損」があるのだから、日本の経験からして「まだまだ終わらない」のが当然だ)。


 さて、日本にとっての諸々の課題を眺めてみて、一つの仮説に思い至った。それは、「霞ヶ関」は、震災や円高、あるいはデフレのような困難をむしろ歓迎しているのではないか、もう一歩進めて考えると、長引く困難を利用することが彼らの「ビジネス・モデル」として定着しつつあるのではないかということだ。

 推測(仮説)をそのまま事実であるかのように書くのでは、たちの悪い陰謀論と同類なので、以下、筆者が事実だと思っていることと、仮説がなるべくはっきり区別できるように気をつけて書くことにする。

   たとえば、震災復興

 先ず、東日本大震災からも復興を考えよう。本格的な復興に対応する第三次補正予算がこれから審議されるという復興作業のペースは「非常に遅い」。これは事実だと思う。

 では、「霞ヶ関」にとって復興は早い方がいいのか、遅い方がいいのか。もちろん、個々の官僚が自分の利害のために意図的に復興を遅らせているとは思いたくないが、復興に関わる細目はある程度時間を掛けて決まる方が「霞ヶ関」がこれに深く、有効に関与して「利権化」することが容易である。

 ここでは、現役官僚の権限が強まることと、これを背景にして将来の天下りの機会が拡大することを、霞ヶ関の「利権」と考え、利権を拡大することが彼らの利害に叶う「ビジネス」なのだと考えてみることにする。

 本当は、時間的に早くて且つ即効性があり、個々の地域、ひいては個人のニーズに対応しやすいのは、被災者に主として現金を配布することだ。被災者は緊急に個々のケースで必要な目的にお金を使えばいい。被災地から他の地域に移りたい人もいるだろうし、地元に残りたい人もいるだろう。地域や個人に選択を与えつつ、両方に対応できる支援は現金支給だ。

 しかし、現金の交付、特に複雑な手続きや審査が伴わない単純な見舞金支給は、官僚(この場合、「霞ヶ関」と自治体両方だが)の「利権」につながらない。現金配布は、子ども手当が「霞ヶ関」に憎まれたのと同様、利権にならないばかりか、他の利権に活用すべき予算を圧迫する

 従って、「霞ヶ関」としては、菅前首相をたきつけて(或いは、有効な手立てを教えずに)、具体策がまとまりそうにないメンバーで東日本大震災復興構想会議のような会議を作って時間を稼いだのではなかろうか(こちらは、私の仮説だ)。

 また、「霞ヶ関」としては、震災からの復興は増税のための仕掛けを仕組みたい重要なイベントだった。このためにも、直ぐに国債で資金調達できてしまう即効性のある復興作業ではなく、「財源」の議論と並行して、復興のあり方がぐずぐず論じられる展開が好都合だった。

 上記は、仮説にしても、あまりにも悪意が籠もった仮説であり、現実離れしているだろうか。

   「円高」利用は完成されたモデル

 では、「円高」はどうか。実は、筆者が、今回の仮説を思いついたきっかけは、民主党代表選の少し前に「円高対策」として打ち出された、外為特会の外貨を使い海外投資を支援する数兆円規模の基金の構想のニュースを見たことだった。

 この記事を見て、筆者は、既に外貨になっている資産を海外投融資に回すことがどうして円高対策なのかはじめはピンと来なかったが、民間も合わせて資金を出すのでドル需給的に、ドル買いの呼び水くらいになるかも知れないということが何とか分かった。

 しかし、これは税金(政府資産)を使った一種の空洞化支援ではないのかという疑問が新たに生まれたことに加えて、今度こそピン!と来たのは、「ああ、これは『霞ヶ関』の利権拡大の手段なのだな」ということだった。

 どういうことか。先ず、この図々しくも円高対策を名乗る資金を扱う組織だが、新しく基金を作るならポストが増えるし、JBIC(国際協力銀行)がまとめて扱うとしても、JBICの案件と、従って権限を大幅に拡大し、これは、財務省の国際派人脈にとっては、豊かな利権の源になる

 報道されているように、資源確保や海外のM&Aに使うお金を、好条件で融資ないし出資して貰えるなら(注;市場で得られる好条件でないと案件が増えないから、案件の存在は何らかのメリットの提供を証明することになる)、企業にとっては大きなメリットがある、大変嬉しい話だ。対象企業は、財務省OBが「行ってもいい」と思えるような世間体のいい大企業が中心だろう。しかも、融資や出資は条件審査が複雑だから裁量の余地がたっぷりある。

 円高という「苦難」に対して、海外投資を支援する基金のような仕掛けを「対策」を名目に導入し、「霞ヶ関」側では「利権」を拡大・確保する。これは、「ビジネス・モデル」として既にパターン化されているものの、典型的な応用例なのではないか。

 野田首相の演説原稿では、「円高阻止にあらゆる手段」とはいうものの、具体的に金融緩和の方法が述べられているわけではなく、具体的に書かれているは、「立地補助金を拡充」、「円高メリットを利用して、日本企業による海外企業の買収や資源権益の獲得を支援」といった企業のメリットと役人の利権に直結する「生臭い」話だけだ。

 民主党代表戦時も含めて、野田氏が述べる円高対策とは、「円高そのものを反転」させる徹底した金融緩和のような原因に働きかけるものではなく、先に挙げたような対策や中小企業の資金繰り支援のような、「円高になった後に、これを我慢するため」の対症療法ばかりだ

「霞ヶ関」は円高を困ったことだとは思っていないのだろう。政策批判を多少受けたり、市場介入のための根回しに汗をかいたり、介入自体が十分効かなくて恥をかいたりしても、それらは所詮「お仕事」の一コマに過ぎないし、円高の困難が続く方が上記のように「利権」を拡大できるのだから、むしろ彼らの利害の上では円高歓迎ではないのか。

 付け加えると、円高になっても公務員の雇用は安泰だし、彼らの報酬は硬直的なので、実質所得が増す。

 上記の「財務省の利権拡大」のストーリーは、もちろん筆者の仮説であり、当事者から話を聞いたわけではないが、こうした「利害」が存在していることは注意に値すると思う。

   増税は「霞ヶ関株式会社」の増資だ

 デフレでも、公務員の雇用と実質給与は安泰だし、デフレは、不況の原因となって、「霞ヶ関」による各種の「対策」の必要性を継続的に生む。

 もちろん、「霞ヶ関」のビジネス・モデルにとっては、予算の規模及びその維持が決定的に重要であり、「増税」は一般企業における「増資」のような余裕を霞ヶ関株式会社にもたらす

「利権」が有効であるためには、(出来れば現在の現役が天下りするもっと先までの)継続性がなければいけない。増税を早く確保して、将来必要になる財政支出の削減をより小さく済ませることが、すべからく「長期」が大切な霞ヶ関の住人達の重大な関心事であることは当然だ。早期の増資は、将来のリストラの苦悩を和らげる。

 また、「霞ヶ関」のビジネスは、大根役者(政治家)達に脚本を書き渡して国会で法案を通し、予算に盛り込むことでこれを実行する形を取るので、基本的には、一年をサイクルとして進行する。しかも、長期的に利権に関わることが将来も期待されるからこそ、天下りに需要が発生する。

「ドッグイヤー」などという言葉さえある、せわしい民間のビジネスとは全く異なるスロー・テンポで物事が進むので、円高も、デフレも、そして利害の上では震災復興さえも、ある程度定着してゆっくり進むことが「霞ヶ関」には好都合なのだ

 政治や経済への関心がある方の殆どが、「日本では、何に対する対応も信じられないくらい遅い!」と腹を立てたり、絶望したりされているのではないかと拝察するが、支配的集団である「霞ヶ関」のビジネス・テンポが影響しているので、やむを得ない側面がある。

 ここでは詳しく触れないが、利益集団であり実質的なビジネス体である「霞ヶ関」には特定個人の支配者なり黒幕なりがいる訳ではなさそうだ。人事制度的に彼らのメンバーが固定的である(実質的に40年以上の長きにわたって、お互いの面倒を見合う、固定メンバーの利益集団でこれだけ大規模なものは他にない)ことから、競争力・影響力を持ち、且つ長年にわたって形成・純化された、幾つかの自生的な行動ルールが、おそらく「官僚支配」といわれるものの正体だろう(想像するに、回遊魚の群れやオキアミなどの群れの振る舞いを規定するルールに近い少数の行動原理なのだろう)。

 従って、「個々の官僚」は、自分が自分のために利権確保に動いていると思っていないだろうし、国の困難に対しては、それぞれなりに国民のための努力をしているという自己認識を持っているのだろうと筆者は推測している。

 ポイントは、個々の官僚の意図や倫理観の問題ではなく、官僚集団の利益に着目した時に、国民が直面する不幸をむしろ歓迎する「利害」が存在することだ。この利害は、国民の不幸の解消に「霞ヶ関」(本石町辺りの金融子会社(※日銀)も含む)が不熱心であることの原因になりかねないし、下手をすれば国民の不幸の積極的な長期化につながりかねない。この構造は変えた方がいい。

 以上、筆者の仮説に過ぎない推測を述べてみた。

 もちろん、仮説だから間違っているかも知れないし、むしろ、この仮説が間違いである方が嬉しいくらいのものだ。

 仮に、官僚による裁量の余地が少ない現金による再分配がスピード感を伴って広く行われたり、デフレと円高をもたらしている金融政策と財政政策のミックス(筆者は、現在のデフレに関して、日銀だけではなく、財政政策にも問題があると考えている)が有効なデフレ対策に向かって直ちに修正されたりするような「嬉しい反証」があれば、今回の仮説は、喜んで撤回する

 それまでは、折に触れて、この仮説を思い出しながら、脚本家(官僚)達の利害を推測しつつ、(主に政治家が演じる)田舎芝居を見物することにする。
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