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もうすぐ北風が強くなる

小出:9/8今の原発状況、2年で帰還は困難

 「ざまあみやがれい」氏から
 9/8小出氏インタビュー

9月8日、小出裕章氏が、毎日放送の「たね蒔きジャーナルに出演しました。事故発生から6か月たった福島原発事故の状況について3つのポイントで説明しています。1号機から3号機の現在の原子炉の状況について、2号機と3号機の使用済燃料プールの中からの燃料棒取り出しについて、そして、除染をして避難した人が戻るまでに設定された2年という期間について、です。

(書き起こし)

千葉「では小出さん今日もどうぞよろしくお願い申し上げます」

小出「よろしくお願いします」

千葉「今日は毎日新聞論説委員の藤田悟さんとお話を伺います」

藤田「よろしくお願いします」

小出「よろしくお願いします」

千葉「えーさて間もなく、福島第一原発の事故発生から半年になりますけれども。」

小出「はい」

千葉「ここで、この時点での原発事故の状況をこの番組なりにまとめてお聞きしてみたいと思っております」

小出「はい」

千葉「まず。ぜんざい事故対策の問題といたしましては。東電としては最初の3ヶ月ステップ1で目指した原子炉の安定的冷却や放射性物質の放出抑制はほぼ達成したとしております。そして今後、ステップ2で原子炉を冷温停止状態にして住民避難の解除を始めて。中期的課題は3年程度を目安として使用済燃料プールの燃料の取り出しに着手する、などとした工程表を公表していますが。この工程表について改めて先生は同ご覧になりますか」

小出「はい。えー…、残念ながら意味のないものになっていると思います」

千葉「はあー…。それはもう、この工程表通りには進んでいないということですか」

小出「はい。あの…、この工程表ができたのは4月の17日に始めのものができました。でー…、その時には、まだ原子炉の炉心というものは、半分まで水に使っていて、形が残っているというそういう想定のもとに工程表が作られました。
そのために何とか炉心を壊さないように水を入れ続けて、えー…、圧力容器の温度は100度以下にするという冷温停止状態に持って行くというのが工程表の目玉でした。えーところが、その後5月12日になって少なくとも1号機に関しては炉心の水位計を調整しなおした結果、もう炉心の中には水はないと。
つまり炉心は溶け落ちてしまっているということを認めたわけです。えー、溶け落ちてしまったということは、圧力容器という鋼鉄の底、圧力釜の底に、融けた炉心が落ちたわけですけれども。えー…、炉心というのは2800度を超えないと融けませんし、全体の重量では100トンもあるというような大変重たいものですので、圧力容器という鋼鉄の容器は簡単に穴があいてしまいます。
従って融けた炉心は圧力容器もすでに突き破って、その下に落ちてしまっている。その下というのは格納容器という、もう1つ外側の容器なんですけれども。そこにまで落ちてしまっているというのが現在の東京電力の説明なの、ですね。
そうすると冷温停止というのはもともと圧力容器も健全で炉心も底にあって、それを水で冷やすという専門用語なのですけれども。
もうそんなことは到底ないのです。ですからもう、始めから前提が間違えていたということですから、工程表そのものを本当であれば作り替えなければいけないと思います。」

千葉「なお、今の原子炉の状態なのですけども。報道では今の圧力容器の下の温度は、1号機が88.5度、2号機が112度で、3号機が96.1度となっているということなんですが」

小出「はい」

千葉「こういう温度を見ると比較的順調に冷却ができているというように見えるんですけれども」

小出「えー、例えばですね。圧力容器の温度が上がるということはなぜ上がるかというと、底の圧力容器の中に発熱体である炉心があるからなんですね。
だから圧力容器そのものが温度が上がっていくはずだというのですけれども。もうすでに炉心は圧力容器の中にないのです。ですからむしろ温度があがるという方がおかしいと言わなければいけません」

千葉「はあ…、なるほど。じゃあこの温度に関してはそんなにいい方向に向いているという感じでもないわけですね」

小出「はい。その証拠には必ずしもならないのです」

千葉「先程私1号機の、温度が88.5度と申しあげましたが、85.8度ということですが」

小出「そうですか」

千葉「はい。んーーーー…、そうしますとですね。この原子炉の状態というのはこの半年で大きく変わってはいないということなんでしょうか」

小出「えーとですね、これは私自身も大変残念なんですけれども。正確な情報が得られない、のです。それが原子力、あるいは原子炉と言っているものの、本質的な困難さを示していると私は思います。
つまり、今壊れているものが火力発電所であれば、壊れた部分に人が行って、どのように壊れているかを見て、順番に補修をすれば良いのですが、こと原子力発電所の場合には、壊れている場所に近づくことができない、中を見ることもできないという、そういう相手なのですね。
ですからほんとに今現在がどういう状況になっているかということを、正確に知ることができないと、いうものを相手に今苦闘が続いてるわけです」

千葉「半年たっても、まだ、どうなってるかということを想像しながら、取り組んでるという状況が続いているということですね」

小出「そうです。少なくとも1号機に関しては、原子炉建屋という建物の中に入って、原子炉水位計というものを調整しなおすことができたのですが、2号機と3号機に関しては未だに建て屋の中に入ることすらができないという、そういう状態にいるわけです。」

千葉「うーん。それから2号機と3号機に関しましてはですね」

小出「はい」

千葉「使用済燃料プールからの燃料取り出し、というのが優先する課題と言われてるんですが。これ実現は難しいんでしょうか」

小出 「えー…、出来るならばやった方がいいのですが。」

千葉「使用済燃料プールからの燃料取り出し、というのが優先する課題と言われてるんですが。これ実現は難しいんでしょうか」

小出 「えー…、出来るならばやった方がいいのですが。えー…2号機も3号機もまだ原子炉建屋の中に入ることができませんし。3号機の場合には、とにかく使用済燃料プールがあった、場所がですね、猛烈に破壊されてしまっているのですね。えー、そのー…んーんー、その、な状況の中で、使用済燃料プールの中からどのように燃料を取り出すことができるかと、いうのは大変難しい課題で、乗り越えなければいけない壁がいくつもあるだろうと思います。えーそのため、もちろん なるべく早くやったほうがいいのですけれども、多分でき、出来るまでには何年という時間がかかると思います。」

千葉「んー、どうしても私たちは半年たったからどこまで対策が進んだのかという見方をしたくなるんですけれども」

小出「はい」

千葉「原子力発電所の事故にとっては、完全集結というところまで考えると半年という時間は長くはないんですねえ」

小 出「もちろんです(笑)。
完全終結ということをいうならば、何十年、何百年とまたなければいけないわけですが。
とりあえずは大量の放射性物質が環境、大気 中に出てこないようにすると、いうことが今、どうしてもやらなければいけないことで。それがほんとにその…確信を持って、もう大丈夫だというまでにも、ま だ何ヶ月もかかると思います。」

千葉「今までの対策ってのも、あくまで応急処置に近いものが行われていると」

小出「そうです。」

千葉「理解したらいいですか」

小出「そうです。追いつめられて追いつめられて、それに向かって、格闘してるという状態です」

千葉「んー、それがもう事故の直後からずっと続いてる状態であると」

小出「そうです」

千葉「いうことですね。」

小出「はい」

千葉「藤田さん、そんな感じで」

藤田「んー、そうですね。かなり厳しい状況だと思いますが。あのー、例えば小出先生。あのー」

小出「はい」

藤田「今後ですね、状況が更に再び悪化するというですね、そういう可能性、っていうのは考えられますのでしょうか」

小 出「はい。私がまあ一番初めからお伝えしてますけれども。私が一番おそれているというのは、圧力容器の中で水蒸気爆発が起きるという、可能性なのですね。
それは原子炉を、の、炉心というものがまだ、元の場所にあって、い、未だに2号機と3号機ですけれども、えー炉心という部分に何がしかの形として残ってい て、これからその冷却に失敗したときに、ドスンと下に落ちると。そういう時に下に水がもし残っていると水蒸気爆発が起こります。
えーそうなってしまうと、 圧力容器は多分破壊されますし、その外側の格納容器は比較的弱い構造体ですからそれも壊れると思います。えーそうなってしまうと大量の放射性物質が大気中 に撒き散らす、されてしまうと、いうことになりますので。一度は大気中への大量放出というのはおさまった、のですが、もう一度起こる可能性があると。
それ を私はずうっと恐れてきましたし、その可能性がないと、自信を持って断言できないというのが現在の段階です」

藤田「なるほど。それは、あの、要するに炉の中の状態が、はっきりとはわからないということ」

小出「そうです」

藤田「なのですか」

小出「そうです。一番大切なのは水がどこまであるかという水位計のデータなのですけれども。それが調整することもでできないままわからないという状況が今日まで続いてきてしまっています。」

藤田「なるほど」

千葉「んー…。」

藤田「しかしまだ、炉の中の状態をですね、」

小出「はい」

藤田「その明確に知ることが出来る見通しっていうのも今のところないわけですよね」

小 出「まあ、シミュレーションという計算機の解析があるわけですけれども。計算機の解析というのはあくまでもその、それが正しいかどうかということを実証し ながらでないと、どこまで正しいのかがわからない、のですね。で、どこまで正しいかといことをわかるためには、実際のデータというものがなければいけない のですが。そのデータを取ることができないという状況に今あるわけです。」

千葉「とにかくそのデータを採れるような状況にまで、最低辿りつかないといけないということですね」

小出「そうです。はい」

千葉「分かりました。次なんですけれども。次は放射性物質による汚染への対策なんですが、」

小出「はい」

千葉「分かりました。次なんですけれども。次は放射性物質による汚染への対策なんですが、」

小出「はい」

千葉「汚染された、地域の放射性物質を取り除く除染なんですけれども。」

小出「はい」

千葉「国は、国の責任で除染をして、避難した人が地元に帰れる時期の目安を2年としてるんですが。この理由はセシウム134は半減期が2年だから、被ばく線量は40%そこで減るので、あと10%人間の手で除染したら今より半分になるからとしてるんですが。これは実際どうなんでしょうか」

小出 「えー…。その通りです。セシウム134の半減期は2年ですから、えー、2年経てばセシウム134の、う・・・、濃度というのは半分に減ってくれ、ます。 ただセシウム137の方は半分のヘリまで30年ということで。2年経ったところで全く減らないということなのですね。
でもまあ残り頑張って少しでも除染が出来れば現在の汚染から半分程度までは減らせると、いうことなんですね。
しかし、今、避難地域に指定されているのは、1年間に20ミリシーベルトを超えてしまうというようなところが、指定されているわけですが、それが仮に半分になったところで、1年間に10ミリシーベルトです。
それは普通の人が許されてい る1年間に1ミリシーベルトというものの10倍に相当するわけですから。そんなところに本当に人を返していいのか、ということになると思います」

千葉「ふうーーん。なるほど、じゃあお国が2年ということで目安で出してますけども。それが必ずしもそこで帰れるという話にはなりませんですねえー」

小 出「もともとー、なんで国がそんなことをいう、ことができるのか、私には不思議で。日本というのは法治国家だと言って、国がいろいろは法律を定めた、のですね。
その法律を破れば、破ったものを処罰すると国は言ってきた、わけです。
その国の法律の1つとして日本に住んでいる人は1年間に1ミリシーベルト以上の 被曝をさせてはいけないし、えー、してもいけないというふうに法律があった、のですね。
ところが今回の事故があって、あっという間に日本という国はその法 律を反古にしてしまい、まして、20ミリシーベルトまでは被曝をしてもいいというようなことを言っている、わけですね。えー、今もう除染をして、10ミリシーベルトになれば、あたかも帰れるというようなことを言ってるわけですけれども。
え、国家が率先して法律破りをしてるという、そういう状況だと私には思 えます。」

千葉「はいっ。わかりました。小出先生どうもありがとうございましたっ」

小出「ありがとうございました」

(書き起こし、完)
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自ら自分の首を絞めるシオニスト国家

 「孤立を深めるシオニストと復興するイスラム(田中宇氏の引用)」に関連した、トルコの論説を紹介します。

Hasan Cemalコラム:イスラエルはこのまま行けば自分で自分の首を絞めることになるだろう
2011年09月08日付 Milliyet紙(トルコ) 東京外語大「日本語で読む中東」から

イスラエルでは今日でもなお、ネタニヤフ・リーベルマン政権のスポークスマンが、トルコにおける軍の後見の破綻や対イスラエル関係の反転について「エルドアンのイスラム主義」をもって説明しようと躍起になっている

この1つの真実は非常に明白である:アラブ世界で民主化の風が吹けば吹くほど、イスラエルは面白くないのだ。
なぜなら、市民が投票する選挙によって出現する政権はイスラエルに対してより強硬で、より扱いにくい厄介な政権になるからだ。
別の言い方をすれば、アラブの春はイスラエルにとって恩恵がないものだとも言える。
このままの思考を持ち続けるなら、イスラエルは中東においてどんどん孤立していくだろう。

昔はこうではなかった。
イスラエルの策の範囲はもっと広かった。
アラブ諸国の忌々しい独裁体制が、アメリカやヨーロッパに独裁への支援継続を望むときにいつも唱えていたのは「我々を支援してくれ、さもなくばイスラム過激派に政権が移ってしまう。ここでは投票による選挙は誰の得にもならないのだ」という詩だ。
アラブ諸国の独裁者たちは自国民をもイスラエルを利用して脅していた:
「いまは民主主義のときではない。イスラエルと闘うには、シオニズムと闘うには優先すべきは民主主義ではない、連携、一致が必要だ」。

一方、イスラエルもこの状況に満足していた。
西側、とりわけアメリカは安定の名の下で中東における現状に理解を示してきた。
さらにイスラエルは、アラブの独裁政権をいいことに、投票選挙によって選ばれた政権では結ぶことが不可能な「和平」を含めたいくつかの合意を、例えばエジプトやヨルダンの独裁政権と交わしてきた。
そしてパレスチナ人に暴力を振るい、「パレスチナにおける解決」に背を向けてきた。
レバノンにしばしば手を出し、イラクやシリアに爆撃を加えることもできた。

イスラエルを、中東における独立した粗暴な力―あるいはエルドアン首相の言葉を借りるならば―甘やかされてわがままに育った子どものようにしてしまったのは、アメリカのバックアップだけではなく、アラブ諸国の独裁体制もその一端を担いだのだ。

なぜなら、アラブ諸国の独裁者たちにとって最も恐ろしいものも「変化」だったからだ。自分たちの独裁体制に、民主主義や法律、人権といったものが打ち寄せられてくるのが怖かったからだ。
というわけで、これまではイスラエルとアラブ世界の間にはこのような奇妙な均衡があった。アラブ諸国が市民を民主化の波から守ることは、イスラエルの意にかなうことだったわけだ。

この状況の痕跡は、トルコとイスラエルの関係の動向からも明らかだ。
1990年代がそのよい例となるだろう。
1997年2月28日過程の時期も含むその数年間で、トルコとイスラエルの関係は非常に進展した。
トルコのその時期の顕著な特徴は、脆弱な連立政権や南東部での騒乱の結果、政治の場における軍の重みが増していたということである。

1990年代の二国間関係の飛躍には軍の果たした役割が大きい。
イスラエルの、そして一般的な意味でユダヤロビーのトルコへの見解には、軍寄りのアプローチが支配的である。
いかにもアラブ諸国に民主主義が必要ないならば、トルコも二流の民主主義による統治が可能なはずだった。
そしてアラブ世界において民主主義がありえないならば、トルコにおいても軍の後見が必須条件だった。
なぜならイスラームと民主主義は相容れないもので、ともに進めることは不可能なはずだったからだ。

イスラエルとユダヤロビーの思考は、この人種差別的でイスラーム敵視の見解に不変的に縛り付けられているのである。アラブ世界にしろ、トルコにしろ、基本的に彼らはこのような色眼鏡で見ているのである。
アラブ世界以外に、例えばトルコの過去数年間のなかで「世俗主義のクーデター」が起きていたとしたら、EUとの関係が完全に覆されたら、イスラエルはさぞ満足したことだろう。

イスラエルでは今日でもなお、ネタニヤフ・リーベルマン政権のスポークスマンが、トルコにおける軍の後見の破綻や対イスラエル関係の反転について「エルドアンのイスラム主義」をもって説明しようと躍起になっているのだ。
神よ、どうか助言を!

イスラエルはこのような思考を変えない限り、そしてパレスチナ人の権利を不法に奪い続ける限り、日を追って孤立化し、自分自身の首を絞めることになるだろう。
トルコとイスラエルの関係が正常化し、発展することを願う1人の新聞記者として私はこの記事を書いている。
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孤立を深めるシオニストと復興するイスラム

イスラエルを悪者に仕立てるトルコ  2011年9月5日   田中宇氏から

 昨年5月、ガザに向かうトルコの支援船をイスラエル軍が襲撃して死者が出た事件で、トルコが国際司法裁判所でイスラエルを提訴することを決めた。法廷では、イスラエル軍が支援船を襲撃したことの合法性だけでなく、イスラエルがガザを封鎖し続けている政策の合法性についても審議されるだろう。 (Gaza flotilla: Turkey to take Israel to UN court

 支援船襲撃事件をめぐり、国連では、親イスラエルのニュージーランド元首相らが作った調査委員会が、イスラエル軍の行為は違法でなかったと結論づける報告書を出している。これについてトルコ政府は、報告書は国連事務総長に提出されただけで、国連が承認したわけでないので、国際司法裁判所の決定の方が重要であり、だから提訴すると言っている。 (Turkey says it will challenge Gaza blockade

 トルコのエルドアン政権は2年ほど前から、それ以前のイスラエルとの親密さを捨て、中東イスラム世界から英雄として見られることをめざす「ネオ・オスマン戦略」ともいうべき戦略をしだいに強めてきた。パレスチナ人に対する弾圧など、イスラエルの国家行為のうち世界から非難されるべきものを声高に非難していくやり方だ。
 今回の提訴は、その流れの一環で、国際法廷に引っ張り出して裁くことで、イスラエルに公式に「悪」のレッテルを貼ろうとする新たな展開だ。トルコ政府は今回、提訴と同時に、イスラエルとの軍事協力をすべて中止し、自国に駐在するイスラエル大使を追放した。 (近現代の終わりとトルコの転換

 またトルコ政府は、支援船事件で死亡したトルコ人の遺族を原告に、欧州のいくつかの国でイスラエルを相手に裁判を起こすことも検討している。エルドアン首相は、イスラエルを非難する意味でガザを訪問することも検討中だ。
 イスラエルに封鎖されたガザに、これまで外国の国家元首が訪れたことはない。エルドアンがガザを訪問するとしたら画期的だ。 (Turkey plans diplomatic assault on Israel after its refusal to apologize for Gaza flotilla raid

 イスラエルに対する敵視を強めるトルコの戦略に対し、イスラエルは政府として全く反撃していない。リーバーマン外相らイスラエルの右派が時折トルコを敵視し返す発言を放ったが、そのたびにネタニヤフ首相らイスラエル政府内の主流派がそうした発言を打ち消した。
 「トルコの和解は、やりたくないけど、やらなきゃいけないんだ」的な発言も政府内から出て、イスラエル全体としてトルコを敵視しないようにしている。 (Israeli DM: We Must Apologize for Flotilla Errors

 負けず嫌いのイスラエルが、トルコにやられっ放しである理由は、トルコの背後に米国がいるからだという見方がある。在米イスラエル右派のロビー活動によって、オバマ大統領を筆頭とする米政界の人々は、イスラエルを批判することが全く許されなくなっており、米政界が丸ごとイスラエルの傀儡のようにふるまっている。今夏、80人以上の米国会議員がイスラエル政府の招待でイスラエルを訪問している。
 米政界では、表向きイスラエルに全力でゴマをすっても、腹の中はイスラエルに対する嫌悪で煮えくり返っている政治家がたくさんいるはずだ。彼らは、イスラエルが滅亡すれば良いとか、イスラエルとイランが戦争して相互に滅ぼしあえば良いとか思っている。 (Congress members' summer trips to Israel a headache for Obama?

 オバマ政権がトルコにこっそり決起をうながし、それに乗ってエルドアン政権がイスラエル敵視を強めている。イスラエルは、裏に米国がいるのを感じているので、トルコと敵対関係になることを避け、事を穏便にすませようとしている。
 その分、イスラエルは悪者にされっ放しになっている。 (How Turkey Alone Rebuffs Arrogant Israel) (反イスラエルの本性をあらわすアメリカ

▼パレスチナ国連加盟の前哨戦

 パレスチナ自治政府(PA)を国家承認して国連加盟を認めることが、9月20日の国連総会で提起される予定になっている。トルコの提訴は、日程的に見て、PAの国連提案と連動している。
 PAは、国連への国家承認申請を安保理に提起せず、多数決で決まる国連総会に提起する。安保理に提起されると、米国が拒否権を発動するからだ。
 国連加盟の約190カ国のうち、130-140カ国がPAの国家承認と国連への加盟に賛成する見通しだ。 (UN rep. Prosor: Israel has no chance of stopping recognition of Palestinian state

 最近では、中国やスペインがパレスチナの国連加盟を認める表明をしている。
 パレスチナが国家承認されて国連加盟すると、パレスチナがイスラエルの悪事を国際司法裁判所や人権理事会、安保理などに訴えることができるようになる。
 パレスチナ問題は、イスラエルの「国内問題」から、イスラエルが「隣国」パレスチナを侵略する「国際法違反」の行為に変質する。イスラエルは国際的に「悪」のレッテルを貼られ、かつてのイラクや最近のシリアのように経済制裁される可能性が高まる。 (Israel Objects to Palestinian Statehood to Avoid War Crimes Investigations

 同時に、国連のIAEA(国際原子力機関)が、イスラエルとアラブ諸国の両方を招き、中東非核化の会議を再開したいと言い出している。
 この会議の標的は、こっそり核武装して200発以上の核弾頭を隠し持っているイスラエルである。イスラエルは今のところ出席を拒否しているが、ずっと拒否し続けられるとは思えない。 (UN nuclear agency seeks rare Mideast nuclear talks

 この会議は以前、日本やオーストラリアが議長となってカイロで開かれたことがあるが、その後、今回のようなイスラエルに譲歩を強いる良いタイミングを見計らうためなのか、しばらく進展がなかった。(日本はその後、内向的な傾向をますます強め、国際社会でこの手のダイナミックな活動をすべてやめて「いないふり」に徹している) (オバマの核廃絶策の一翼を担う日本

 リビアのカダフィは数年前、米国との関係改善の見返りとして、核兵器開発の設備を米国に供出して核廃絶したが、その挙げ句に今回、米欧軍から攻撃されて政権を失った。核廃絶は、丸腰になることを意味する。
 イスラエルが核廃絶したら、アラブ側から戦争を仕掛けられて滅びる可能性が高まる。イスラエルは決して核を手放さないだろうが、その代わり悪者にされる。

 米オバマ政権は、こっそりトルコをけしかけてイスラエルを攻撃させているだけでなく、今年2月に市民革命の波に乗って、イスラエルの傀儡だったエジプトのムバラク大統領に辞任を求めて辞めさせ、その後のエジプトが反イスラエルのイスラム主義政治に傾注していくことを誘発し、トルコとエジプトという、イスラム世界の南北の雄をイスラエル敵視の方向に傾けている。
 エジプトとイスラエルの軍隊は先日、国境で戦闘してしまっており、エジプトがイスラエルを敵視する傾向も強まるばかりだ。 (Israel must act quickly to end the crisis with Egypt

 イスラエル国内では、政府のインフレ対策などの国内政策に不満を募らせた50万人規模の市民が反政府集会を開いている。
 イスラエルは、国際的にも国内的にも追い込まれた状態で、パレスチナが世界から国家として認められる日を迎えようとしている。 (Some 450,000 Israelis march at massive 'March of the Million' rallies across country
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