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もうすぐ北風が強くなる

ガンダーセン:インタビュー(1)原発の状況

ガンダーセン

 EX-SKIF-JPから(1)
 なお、グンダーセンかガンダーセンかは微妙で、翻訳者による。
 「グンダーセン:最も危険な4号機、そして3号機」はこのインタビューの要点のみをまとめたものです。

 今回の引用は、インタビューの全文を翻訳記載しているので、根拠、考え方が明解になっています。
 要点のみよりも、質問者によって、非常に整理されて分かりやすくなっています。
 政府とマスコミが異様なほどの情報隠蔽と誤魔化し報道を続けている中で、事実の判断の材料として貴重なものと考えるので、掲載します。

 なお、ガンダーセン氏はいわゆる反・脱原発の立場ではありません。安全防衛の立場と言って良いかと考えます。
 5/17に「3号機は燃料プールが臨界爆発」にて紹介しています 

 元URLはhttp://www.fairewinds.com/ 
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6月3日付けのクリス・マーテンソン(Chris Martenson)氏の独占インタビューで、このブログでもおなじみのフェアウィンズ・アソシエーツのアーニー・ガンダーセン氏が福島第1原発の現状を解説、放射能が今後健康に及ぼす危険性などについて、詳しく語っています。インタビューは非常に長く、日本語訳も何回かに分けてお出しします。

クリス・マーテンソン氏のサイトは以前から見ていましたが、経済、金融を中心にした分析がメーンです。いわゆるMainstream(主流)ではないことは、同じくMainstreamではないやはり経済、金融がメーンのゼロヘッジなどのサイトに頻繁にリンクされることでも明らかですが、3月11日の福島の事故以来、何度か福島関係のポストを出しています。

以下、インタビュー日本語訳パート1。最初の10分ほどです。ガンダーセン氏は、福島の3号機が原子炉内の燃料の10分の1ほどが、再臨界を起こしては止まる、ということを繰り返しているのではないか、と考えているようです。

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クリス・マーテンソンによるアーニー・ガンデーセン独占インタビュー:「福島はわれわれが考えるよりはるかに危険であり、その危険ははるかに長く続く」

クリス・マーテンソン(司会、以下「マ」):
今日のゲストはフェアウィンズ・アソシエーツのアーニー・ガンダーセンさんです。ガンダーセンさんは原子力工学界の生きた伝説というべき方です。39年以上にわたって原子力産業とその監視に携わり、原子力の安全性に関する問題で連邦政府や民間企業からたびたび専門家証人として発言を求められてきました。

福島での事故が起きた直後から、アーニーとフェアウィンズのスタッフは徹底した、扇情的でない正確な状況分析を行なってきましたた。東電、日本政府、メディアからの情報が十分に得られなかっただけに、さぞ困難な作業だったことでしょう。今日は福島第一原発の最新状況についてお話を伺います。事故は収束とは程遠く、非常に厳しい状況が続いています。私たちも目を離してはいけないのです。しかも今日は、私たちが知っておくべき重要なポイントや、原子力発電所の近くに住む、あるいは原子力発電所をもつ国に住む住民にとっての具体的なアドバイスもしていただく予定です。ということでアーニー、出演していただいて光栄です。

アーニー・ガンダーセン(以下「ガ」):
ありがとう。あなたのサイトの読者が大勢私たちのサイトにも来てくれています。感謝しています。

マ:私の読者は意見と切り離した事実、真実を知りたがっています。この機会に、複数ある原子炉の現状がどうなっているのかを教えていただきたいと思います。まずお聞きしたいのは、福島で何がどのように起きたのか。設計上のミスなのか、単に津波に襲われて運が悪かっただけなのか。そもそも絶対に起きないと繰り返し聞かされてきたことが実際に起きるなんて、どうしてそんな事態に至ったのでしょうか。

ガ:ちょっと物理学の話になりますが、原子炉が停止しても、熱は出続けます。当初もっていた熱量のわずか5%ではありますが、もともとの熱量が何百万馬力もあるわけですから、5%でも大変な量です。だから停止したあとも原子炉を冷却し続けなければなりません。福島では「全交流電源喪失」と呼ばれる事態が起きました。
それは想定されていたことです。全交流電源喪失とは、非常用蓄電池以外のいっさいの電源が失われることです。蓄電池だけでは原子炉冷却のための巨大なモーターを回すことができません。
それでも、全交流電源喪失が起きても4、5時間でどうにか電源を回復できるというのが当初の想定でした。
ところが福島では津波の規模があまりに大きく、ディーゼル発電機が壊れ、「原子炉補機冷却海水設備2」と呼ばれるものも壊れてしまった。要するに大きなポンプに電力をまったく送れなくなったということです。

では、このような事態は予想できたのでしょうか。福島第一原発は7mの津波を想定してつくられていました。
実際の津波は10m以上。おそらく15mを超えていたと見られています。設計上の津波の想定が甘すぎるという指摘は以前からありました。
少なくとも10年前からはそう指摘されていましたし、それ以前にも警鐘を鳴らす人たちはいたはずです。かりに想定していたとしても、ここまでの大きさのものが予想できたでしょうか。
はっきりしたことはわかりませんが、もっと小規模な津波であっても備えが十分でなかったのは確かです。

マ:つまり津波に襲われて装置類が水浸しになってしまった。ほかにも設計上の問題があったと聞いていますが。たとえば、発電機の設置場所に安全上の問題があったとか、予備電源設備がたまたまぜんぶ地下にあったために全滅してしまったとか。ところが事故当初の彼らの発表は「心配いらない、原子炉はすべて緊急停止(スクラム)したから」というものでした。ところが、24時間も経たないうちに今度は「海水を注入している」という。海水の注入を始めた時点で、誰が見ても深刻な状況になっている、ということは明らかだったと思うのですが?

ガ:その通りです。海に船を浮かべたことのある人なら誰でも知っていることですが、海水は塩水ですからステンレススチールとはあまり相性がよくありません。500度(260℃)の高温状態でのステンレススチールと塩水の相性は最悪です。
おっしゃる通り、福島原発には弱点がありました。鎧にあいた穴のようなもので、ディーゼル発電機はそのひとつです。ですが、たとえディーゼル発電機が高い位置に設置されていたとしても、先ほどお話した「原子炉補機冷却海水設備」のポンプが壊れてしまったのですから、やはりトラブルは発生したでしょう。
このポンプはディーゼル発電機を冷やすためのポンプです。
ですから、仮にディーゼルが故障していなくても、津波のせいでディーゼルの冷却水は止まってしまっていたわけです。ですから、ディーゼル発電機のせいにするのはお門違いです。

マ:では順番に見ていきましょう。1号機については、つい1週間ほど前に彼らはついに認めましたね。こちらではすでに一部から指摘されていたことですが。つまり、1号機の燃料は部分的損傷以上の状態、もしかすると完全なメルトダウンかもしれないということです。あなたは1号機をどう見ていますか? そして1号機の現状は?

ガ:水素爆発が起きるとき、燃料の外側は華氏2200度(1200℃)以上、内側は華氏3500度(1900℃)をはるかに超えています。燃料はもろくなり、燃え、融けて溶岩の塊のようになって原子炉の底に落ちます。
1号機がそういう状態になっていることは多くの人にとって明らかでしたし、米原子力規制委員会(NRC)も把握していたはずですが、3月の時点でNRCはそのことを言いませんでした。
ともあれ原子炉の底に溶岩の塊が落ちているも同然だったわけです。ここで指摘しておきたいのは、原子炉の外側には格納容器があるということです。
つまり守ってくれるバリアがもう一重あるわけです。ところが、原子炉内が高温になって水分が蒸発したため、消防車のポンプを海につないで海水を原子炉内に注入した。燃料がそれぞれ管状の構造を保っていたのであれば、水がウランを覆って十分に冷却することができたでしょう。
しかし、塊になって原子炉の底に落ちている状態では、水は塊の上表面にしか当たらないため、融けた塊はさらに下に落ち始めます。
1号機のような沸騰水型原子炉の場合、原子炉の底に制御棒を貫通させるための穴が70個くらいあいています。私はこの穴が弱点になったのではないかと考えています。
融けた燃料の塊は中心部が華氏5000度(2760℃)です。
たとえ外側は水に触れていても、内部は華氏5000度(2760℃)なのです。ですから穴を通って溶け出して格納容器の底に落ちます。

それが今現在の状況です。原子炉はないも同然で、ただ大きな圧力釜があるだけです。
融けたウランは格納容器の底に落ちています。格納容器の底は平たいので、落ちたら広がります。この先、コンクリートの床まで融かして進んでいくとは私は思いません。長い時間をかけて少しずつそうなる可能性はありますが。ですが、すでに損傷は起きてしまいました。格納容器に亀裂が入り、そこから水が漏れているのは明らかだからです。>水を上から注入していますが、水を上から入れて底から出るに任せる、と言うのは、事故に遭った原子炉を冷やす方法として最適なものとはいえません。
上から水を入れ、水は原子炉の底から出て行き、さらに格納容器の亀裂から漏れ出て行きます。その水は、ウラン、プルトニウム、セシウム、ストロンチウムにじかに触れた水です。
その水がそうした放射性同位体をすべて含んだまま、液体として、あるいは気体となって周辺に拡散したわけです。

マ:では、燃料が融けたとき、それは単なる崩壊熱によるものだったのでしょうか。再臨界であるとか、核反応と呼べるような何らかの事象が起きたわけではなく、原子炉が運転されていたときに存在した同位体の崩壊熱だけが原因で? それだけで華氏5,000度(2760℃)に達するには十分だと?

ガ:そうです。4~5%という富化度[含有度]の低いウランが融けても、再臨界は起こせません。福島第一原発で臨界が起きているとすれば-そしてヨウ素131が依然として検出されているのでその可能性は十分にあるのですが-それは1号機の炉心からでも2号機の炉心からでもありません。どちらも塊になって格納容器の底に落ちているからです。

マ:なるほど、つまり燃料の塊は、一番内側にあるスチール製の大きな圧力容器から出て、今は格納容器の平たい底に落ちている。この底はコンクリートでできている。そして1号機と2号機はだいたい同じ状況にある。では、3号機はどうなっているのでしょうか。

ガ:3号機の場合は燃料が圧力容器から融け出ていない可能性があります。一部が底に落ちているのは確かですが、圧力容器の外には出ておらず、一部の燃料は依然として燃料らしい姿を保っている可能性があります。もろくなっているのは間違いないでしょうが。
じつは、燃料がそのような状態になっているときには再臨界が起こりえます。それだけではありません。1号機から4号機までのどの燃料プールでも、臨界が起きる可能性があるのです。
高濃度の放射性ヨウ素がたびたび検出されていることから考えて、4つの燃料プールのどれか、または3号機の原子炉が、ときおりひとりでに燃え始め、高温になりすぎると自動的に停止するというサイクルを繰り返しているのではないかと私は考えています。いうなれば呼吸をしているのです。

マ:なるほど。つまりその呼吸をしているときには、核分裂反応が起きて多量の熱が生まれ、そしてもちろん多量の同位体が発生するのでその崩壊熱がまた発生する。そういう呼吸が起きているとしたら、いずれかの構造内の小さな一部分で核分裂が維持されているのか、それともその状態はかなりの規模で起きているのか。どちらだとお考えですか?

ガ:かなり多量の核燃料でその状態が起きていると思います。たぶん原子炉の炉心の10分の1くらいが核分裂を始めたり止まったり、始めたり止まったりを繰り返しているのではないでしょうか。
そのせいで余計に熱が発生します。上から水を注いだくらいでは、原子炉の10分の1の熱を除去することはできません。

しかも3号機にはもうひとつ問題があって、NRCも昨日初めてそれに言及したのですが、先ほどもお話しした海水と鉄の相性の問題です。NRCは原子炉の底が割れるおそれがあると、文字通りに割れて中身を全部ぶちまけてしまうおそれがあると考えています。
というのも、高温の鉄が塩に触れたら、腐食するのにおあつらえむきの状況ができてしまうからです。
ですから3号機で非常に恐ろしいのは、原子炉の底が割れて、中に残っているものがすべて、それが炉心全部であれ何であれ、何もかもが一気に落ちるかもしれないということです。
そうなったら「水蒸気爆発」が起きる可能性があります。確率は100分の1くらいでしょうか。
明日そうなると言っているわけではありませんが、もしも炉心が壊れたら水蒸気爆発が起きます。
ただし、炉心が壊れるかどうかはわかりません。水蒸気爆発が起きたら、すでに起きた水素爆発のような激しい爆発になるでしょう。

 ガンダーセン:インタビュー(2)へ続く
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ガンダーセン:インタビュー(2)4号機の危険

 ガンダーセン:インタビュー(1)からの続き
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マ:3号機が爆発したときに「おや?」と思ったのは、1号機の爆発のときとはまったく違ったからです。3号機のときは、強力なエネルギーが集中して上に向かったように見えました。あれがあなたのおっしゃる「即発臨界」というものですか?

ガ:はい、私はあれが「即発臨界」だったと考えています。即発臨界による爆発は、専門用語で「デトネーション(爆轟)」と呼ばれて区別されています。いずれにしても大きな爆発です。
3号機の爆発は激しいものであり、私は放射性粒子が飛び散った距離から見て爆発の炎がどれくらいの速度だったはずかを計算してみましたが、爆発による衝撃波の速度は時速1,000マイル[時速約1,600km]を超えていなくてはなりません。
それがデトネーションです。デトネーションでは衝撃波自体が途方もない破壊力をもっています。
もしも3号機の原子炉の底に溜まった燃料が下に落ちて水蒸気爆発を起こせば、同じようなデトネーションが再び繰り返されるわけです。

マ:どう考えても良い話ではありませんね。もしもそういう懸念があるのだとしたら、何か打つ手はあるんでしょうか。非常に難しいんじゃないかと思うんです。再臨界の「呼吸」が続いているために余分な熱が発生している、まあどういう理由にせよ炉心が非常に高温になっているとしたら、注水を続けて運を天に任せる以外に何ができるんでしょうか。

ガ:その2つ以外にやるべきことがもう1つあります。水で覆い尽くすことです。圧力釜の外側も内側も水で満たせば、今よりもっと冷却することができ、圧力容器の大事故を防ぐことができます。
ですが、現時点では、十分に水を満たすことは希望にすぎません。それに1つ心配なのが、これは4号機にも関係してくるんですが、余震の問題です。原子炉に水を入れすぎると重くなりますが、原子炉というのは重い状態で、余分な水が何十トンも入った状態で揺れるようなつくりになっていません。
ですから、もしも大きな余震が来たら、3号機と4号機は非常に危険な状態になります。スマトラ大地震を思い出してください。3、4年前にマグニチュード9を超える地震があり、その最大の余震が来たのは3ヶ月後でした。余震のマグニチュードは8.6です。
ということは、3.11の地震からすでに2ヶ月以上が過ぎているとはいえ、スマトラの例に照らせば、まだ大きな余震が起きる可能性はあるわけです。

マ:なるほど。では4号機も同じ危険にさらされているわけですね? 4号機では燃料棒は取り出されていてプールの水に浸かっていたと記憶しています。現時点での4号機の問題とは何でしょうか。

ガ:おっしゃる通り、4号機では原子炉は運転されていませんでした。燃料はすべて取り出され、使用済み燃料プールに入れられていました。
つまり、燃料が格納されていなかった、ということです。使用済み燃料プールは外側から丸見えの状態です。上空にヘリコプターを飛ばした確認では、吹き飛んだ建屋の隙間から使用済み燃料プールに入っている燃料が見えます。
4号機が停止したのは昨年の11月だったので、使用済み燃料はまだかなり高い温度を保っています。プールにはまだ多量の崩壊熱が残っているのです。
ニューヨーク州にあるブルックヘブン国立研究所が1997年に行った研究によれば、燃料プールの水が蒸発して火がつくと、187,000人の死者が出るおそれがあります。これは非常に憂慮すべき事態であり、もしかしたら福島第一原発で一番恐れなければならない問題かもしれません。
最近、NRCの委員長が語ったところによれば、彼が事故後に在日アメリカ人に対して原発から50マイル[約80km]以上離れるように指示したのは、4号機に火がついて、むき出しの燃料プールからプルトニウムやウラン、セシウム、ストロンチウムが気化するのを恐れたからです。
ブルックヘブンの研究を信じるなら、10万人以上の死者が出てもおかしくないからです。

マ:死者というのは被曝によって将来的にがんを発症するということですか?それともすぐに死に至る?

ガ:高放射能粒子によって将来的にがんを発症するということです。

マ:つまり4つのユニットがあって、いずれもそれぞれの危機に直面しており、すべてから放射線が出て環境が汚染された。まずお聞きしたいのは、本当のところどれくらいの放射性物質が放出されたのでしょうか。それから、かなりの量が海に流れ出ていると思うのですが、どれくらいの量が出て、それらは今どこにあるのでしょう。現時点で原発施設の周囲にどれくらいの汚染物質が存在するのか。そして台風シーズンが来たらどんなことが起き、どんな困難が予想されるのか。

ガ:私はこれまで、今回の福島の事故はチェルノブイリよりひどいと言い続けてきましたし、その考えは今後も変わりません。事故後の2、3週間で膨大な量の放射性物質が放出されました。
もしも風が内陸に向かって吹いていたら、日本は滅びていたかもしれません。
それくらい大量の放射性物質が出たわけですが、幸運にも太平洋のほうに流れていきました。もしも日本を横断する形に流れていたら、日本はふたつに分断されていたでしょう。ですが、
今では風向きが変わって南に向かっています。東京の方角です。今私が心配しているのは大きな余震が起きて4号機が倒れること。
もしそうなったら、日本の友人の皆さん、逃げなさい。
そんな事態になったらこれまでの科学はいっさい通用しません。
核燃料が地面に落ちて放射能を出している状態など、誰も分析したことはないのです。

原発からは蒸気が立ち上っているのが見えますが、夏になってしだいに熱くなると蒸気が減ったように見えるはずです。でもそれは蒸気が出ていないわけではなく、見えないだけです。
事故が起きたのは3月でまだ寒かったために、蒸気が見やすかったのです。原発からはまだ大量の放射性物質が出ています。最初の2週間ほどではありませんが、それでもかなりの量です。
おもにセシウムとストロンチウムが南に向かっていきます。台風が来ても来なくても同じこと。風向きによって今は南に流れていきます。
これから気をつけなければならないのは、ガイガーカウンターで測れるような総被曝量ではなく、高放射能粒子です。

マ:すでに東京でも放射能汚染を示すデータが得られているという記事を読んで驚きました。私にはかなり高いように思える数値です。土壌から3,000~4,000ベクレルとか、汚泥の焼却灰から170,000ベクレルとか。でもこの高いほうの数値は焼却灰の数値ですから、焼却炉なり、何らかの焼却プロセスを経ているわけですよね。これは相当ショッキングなレベルだと思います。
風向きが南に変わり、こんなに高い数値が出るほどの汚染物質がこれほど離れたところまで達するなんて、ぜんぜん知りませんでした。
どれくらいの量が、どうやって、いつ東京まで行ったのか、自分がよくわかっていなかったことに戸惑いました。こうした数値は3月には出ていたのに、4月下旬になるまで公表されなかった。この種の情報は把握していらっしゃいましたか? この数値をどう解釈されますか?

ガ:情報は把握していました。私もあなたと同じくらい戸惑っています。個人の方々からフェアウィンズ宛に、東京を走る車のエアフィルターが送られてきたんですが、それは放射線量を測るのにうってつけの方法だとわかりました。
フィルターは高放射能粒子をたくさんつかまえているからです。自動車の車体工場か何かを経営している方からフィルターが7個送られてきて、そのうち5つには問題がありませんでしたが、2つは信じがたいほど放射能に汚染されていました。
このことからわかるのは、放射能の雲は均一に広がるのではないということです。あまり溜まらない場所もあれば、たくさん溜まる場所もある。福島より北の地域についても同じです。
しかし東京の場合、公表されている公式な測定結果がなんであれ、放射能の雲の最悪の状況を反映していないように思います。
私はスリーマイル島でも同じ経験をしました。放射能の雲は曲がりくねって流れたり、雲が大きな放射線計の数百メートル脇を通ったために検知されなかったりということはあるものです。
意外ではありません。数値に現れないから存在しないのではなく、ただ単に検知されなかっただけなのです。

マ:たしかに流体力学とはそういうものですね。コップの水に染料を一滴垂らして、その染料が渦を巻きながら動いていくのを見ていると、染料が濃い場所と薄い場所ができます。それと同じです。
それにチェルノブイリ事故のあとでベラーシやウクライナなどがどう汚染されたかを見た人なら知っているように、チェルノブイリを中心に大きな円ができるわけではないんです。放射能の溜まる場所があちこちに現れるという、非常に非常に複雑な地図ができます。
たぶん私が驚いたのは、それほど大量の放射能がそんな南で溜まる可能性があるという危険信号をどこからも聞いていなかったからでしょう。でも実際はそうだったわけです。じつに興味深いですね。

ガ:何が起きたかというと、放射能の雲は海に出たあと、南向きに曲がって、それからさらに西向きに曲がったのです。
ちょうどフックのような形ですね。
放射能の雲は海に出てから、沖の風で南に運ばれ、それから西に運ばれて東京に達した。その雲に含まれていた粒子が車のエアフィルターに詰まっていました。ストロンチウム、セシウム、そしてアメリシウムです。燃料が損傷した証拠です。

マ:それはたしか韓国にまで達したのと同じ雲ですね。そのとき韓国では一部の学校を休校にしました。ちょうど雨だったので、多量の放射性物質が降ってきていたからです。たしかにフックのように大きく南に曲がってから西に曲がらないと、韓国には届きません。一連の流れのなかでそうなったわけですね。しかもその雲には非常に高い放射性を帯びた粒子が含まれていた。
そういえば最初のうち、私が一番怖かったのは2号機です。妙に落ち着いて見えるのがかえって怖かった。横に小さな穴が開いていて、そこから四六時中、絶え間なく蒸気が出ていました。でも蒸気に何が入っているかわかっていたので、これは相当に放射線量が高くなるぞと思ったものです。

ガ:2号機はこれ以上悪くなりようがないところまできています。燃料が格納容器の底に落ちていて、その格納容器には穴があいているからです。
悪い状況であることに変わりはありませんが、これ以上は悪くなりようがないのです。目下の懸念は、原子炉を冷やすのに使われている毎時何十トンという大量の水です。当初の計画では、熱交換器を取り付けて水を冷却しながら、原子炉内の水を循環させるはずでした。こういうやり方なら新たな水が発生することはありません。
ところが実際は、放射能に汚染された水が何十万トンと発生してしまいました。低濃度の放射能ならいいのですが、そうではないのが問題です。

汚染水の脱塩やろ過をしようとすると、フィルターや脱塩装置の放射能濃度が高くなりすぎて、フィルターが溶けるおそれがあります。フィルターはプラスチック素材でできていますし、フィルターを交換したくても人が近づけないからです。
ですからこれは非常に難しい問題です。高度に汚染された水が大量にあるために、水を除去する作業が非常に困難なものになっています。

マ:作業上のほかの難題についても考えてみたいと思います。その大量の水を彼らがどうするつもりなのかはわかりませんし、たぶん彼ら自身にもわからないんじゃないかと思うんですが、ともあれ今は水を巨大な貯蔵タンクに移しています。最近読んだ記事によると、そのタンクが漏れているか、少なくとも水の一部がタンクの外に出たとか。[これは、集中廃棄物処理施設に移送していた水が建屋内の通路に漏れ出した話の誤認でしょう。]だとしたら水漏れしているんでしょうね。技術者や除染作業員はこれからどんな難題に直面するのでしょう。今、作業環境はどういう状態なのでしょうか。

ガ:どうみても、危機を脱したとはとうてい言えません。屋外で作業をする人は、完全に密閉された防護服を着ています。顔のところに隙間ができないようにテープでふさぎ、ガスマスクを装着します。ガスマスクには活性炭フィルターがついていますが、そうはいってもガスマスク越しに外の空気を吸って肺に取り込むわけです。
防護服を着ていると暑く、汗でベタベタします。しかも絶えず放射線計に目を配ってなければなりません。
でもこれは、不快ではありますが命にかかわるものではありません。建屋の中で作業をする人には別の問題が生じます。
中に入るとき、作業員は基本的にバブルスーツを着て、消火作業中の消防士のように酸素ボンベを背負います。スコット・エアパックと呼ばれるものです。酸素ボンベを背負って真っ暗闇の中に入っていきます。至る所に水がたまっていて。黒々と瓦礫が散らばっています。何より放射線量が非常に高いうえ、たぶん15kg前後の装備で作業をしなければならない。放射能で汚染されていなくても、そのような環境の中で時間を過ごすのは厳しいものです。
暑く、湿気が多く、1時間かそこら作業をしたらいやになってしまうでしょう。でも放射線レベルが非常に高いので、作業員はおよそ15分で外に出されます。
たったそれだけでも、アメリカ人の作業員が5年間で浴びる最悪の放射能と同程度の被曝をしてしまうのです。今では彼らは作業を急いで10分以内で切り上げるようにしています。[アメリカの放射線作業員の年間被曝許容量は、50ミリシーベルトです。]

マ:日本は作業員の年間被曝許容量を250mSvに引き上げたんですよね。では、その上限に達した労働者はどうなるんでしょうか。

ガ:希望的には、いかなる理由があっても彼らはそれ以上の被曝を許されない。
1ヶ月や1年間隔をあけるだけではなく、それ以上は絶対に被曝させるべきではありません。
これは経験則ですが、250レムを浴びたら人は死にます。10人の人が25レムの被曝をすれば、そのうち1人はがんを発症します。100人の人が2.5レムを浴びたら、そのうち1人ががんになります。
ですから、被曝量が少なくても絶対にがんにならないわけではないのです。
今作業員がやっていることは、がんになる確率を高めているのと同じことです。ちなみに250ミリシーベルトは25レムです。がんになる確率を10%高めているわけです。

マ:そうなんですか。私が見た数値は恐ろしいレベルで、一部のエリアでは1Sv台に達していたり、それよりさらに高いところがあったり。壊れた建屋の中に人々を送り込んでいる。私が気になっているのは、ああいう特殊な施設で作業する訓練を受けている人は数にかぎりがありますよね。作業員は施設についても、システムや部品についても熟知していなければならないし、それこそ廊下をどう進んでいけばいいかということもわかっていないといけません。
でも、彼らに割り当てられた被曝許容量を使い切ってしまったら、彼らはもう働けないわけですよね?また中で作業できる人を新たに訓練するんでしょうか。チェルノブイリの事故のとき、ロシアは何十万人もの作業員を投入して、一人当たり少しずつの時間で除染作業に当たらせました。
今回の日本の対応はそれとはまったく違っています。もっと慎重で、作業チームの人数もかなり少ないように私には思えます。衛星写真を見ても、何十万人もの作業員が群がっている様子は確認できません。ターゲットを絞った対応をしているように思えます。そうしたやり方で仕事を終えるには、どれくらいの期間かかると思われますか?

ガ:ロシアが大人数を動員しなければなかったのは、周辺の農地に核燃料の大きな破片が飛び散ったからです。作業員は文字通り破片を拾って手押し車に乗せ、原子炉があった場所に走って戻り、原子炉ピットに破片を捨てたらお役御免です。それでも一生分の放射能を浴びました。
福島の場合、放射能は封じ込められてはいないのですが、拾えるような固形の破片から出ているわけではありません。放射能は汚染水から出ています。ウッズホール海洋生物学研究所によれば、福島の海はチェルノブイリ事故時の黒海の10倍も放射能に汚染されています。チェルノブイリの事故で人海戦術を取ったのは原子炉が爆発して飛び散ったからであり、福島の場合は爆発が起きたのはたしかですが、放射能の大部分は下に行き[建屋地下の汚染水など]、その処理に手をつけ始めたばかりという状況です。
すでに福島ではアメリカからの作業員受け入れていますし、この先もまた受け入れるんじゃないかと思います。
私はとある会社の副社長としてそういう仕事にかかわったことがあります。放射能レベルが非常に高いエリアで働く作業員を雇い、実物大の模型を使って2、3週間かけて訓練します。作業員は高レベルエリアで3分間の作業を行なって、1年分の被曝を受けます。私たちは彼らに報酬を支払い、どうもありがとう、来年また会いましょう、と言います。福島でもそういう状況になるでしょう。

マ:現実的な話をすると、この先何ヶ月か何年かはわかりませんが、とにかく長い時間がかかるということですよね。福島では今何が行なわれているんでしょうか。これからまわりを何かで覆って封じ込めるのか、原子炉が最終的に冷却されるまで注水を続けながら、その過程で発生した水を回収していくのか。それとも、もうお手上げだと諦めて、ただ大量のコンクリートを流し込んで作業を終えるのか。

ガ:最終的には諦めてコンクリートを流し込むときが来るかもしれません。でも今はまだできません。炉心の温度が高すぎるからです。ですからあと1年くらいして炉心が冷えるまでは、今と同じ様な作業が続くでしょう。
炉心が冷えれば、現時点とは比べ物にならないくらいわずかな崩壊熱しか出ませんので、コンクリートで固めてそのまま放置するという選択肢を検討できるようになります。チェルノブイリのときのように巨大な墓をつくるわけです。1号機、2号機、3号機はこれでうまくいきます。
ですが、4号機には問題が残ります。使用済み燃料プールが建屋の最上部にあるからです。最上部にコンクリートを流したら建屋は崩壊します。しかも放射能レベルが非常に高いので、核燃料を取り出すこともできません。私は昔、こういうことをして暮らしを立てていたわけですが、この4号機にはお手上げです。

マ:では彼らはどうすると思いますか?

ガ:4号機の建屋を囲むようにもうひとつ建屋を立てるしかないと思います。
そして、150トンの重量を吊り上げることのできる巨大なクレーンを使用して、使用済み核燃料をキャニスタ[使用済み核燃料を封入する容器]に入れるのです。スリーマイル島では似たようなことが行なわれました。
スリーマイルの場合、核燃料は圧力容器の底に溜まっていたわけですが。ともあれスリーマイルでは3年、いや4年かけて溶けた燃料を取り出しました。
ただ福島の場合の問題は、その作業ができる巨大クレーンがすべて破壊されてしまったことです。少なくとも1号機、3号機、4号機のクレーンは破壊されています。しかもその作業は空気中では行なえません。水中でする必要があります。
ですから、たぶん彼らは建屋のまわりに建屋を立てて、遮蔽と水を十分に供給し、それから中に入って重いキャニスタに燃料を入れるのではないかと思います。

マ:なるほどそれは思いつきませんした。素晴らしいアイデアですね。

では、ここまでのところをまとめてみましょう。
4基の原子炉があって、うち3基は溶けて穴が開いている。うち1基、つまり4号機は、まわりに新たな建屋をつくるのに何年もかかることから考えて、たぶん危険性がほかの原子炉より高い。事態が本当の意味で収束するにはこれから何年もかかる。しかも4号機の場合は、新たな建屋をつくっているあいだに余震に襲われるかもしれない。また3号機では、余震が来たときに圧力容器に水が満たされていたら、また爆発が起きるおそれがある。まだまだ予期せぬ出来事が起きそうだと思うと、現状が安定しているとはいえませんね。
意外な場所から水が出てきたり。ほかにも建屋やどうなるか、システムがどうなるか、予断を許しません。あと何か付け足す点はありますか?

ガ:地下水です。私は非常に心配しています。地下水の汚染レベルを測定したという話をまったく聞きません。海の状態はわかっています。汚染水が海に漏れています。
建物の構造に亀裂が生じて、高汚染水が地下水に入り込んでいない保証はどこにもありません。私は日本の人たちにも話をしてきたのですが、原子炉のまわりに堀を巡らせるのがいいと考えています。
岩盤に達するまで20mくらいの深さに掘り、幅は1.5m程度。そして堀をゼオライトという物質で満たします。ゼオライトは放射性物質を吸着する能力が高いので、放射線が外部に放出されるのを防いでくれます。なぜまだそうしないのか、理解に苦しみます。

建屋の問題、冷却の問題、放射能の大気放出を止める問題を見てきましたが、問題はこれだけではありません。今現在、土壌には膨大な量の放射性物質が含まれています。福島に近い県では、下水の汚泥から放射能が検出されました。
ある下水会社の重役が私たちのサイトを見て教えてくれたのですが、地震のあとで地下水が下水システムに入り込むのは珍しくないそうです。それを聞いて私はとても怖くなりました。もしも周辺の県の地下水がすでに汚染されているとしたら、深刻な問題だからです。それなのに今は誰も注意を向けていません。

マ:一般に、地下水というのはどれくらいの速度で移動するものなのでしょう。たとえば原発から3マイル[約4.8km]離れたところまで行くのに10年かかるのか、10週間なのか。地下水の汚染がただちにどの程度の大問題につながるのでしょうか。

ガ:ただちにどうこうという問題ではないと思います。ですが、早く手を打たないと、切迫した問題に発展しかねません。地下水はゆっくり動きますが、すでに原発から出ているとなると厄介です。
より離れたところにより大掛かりな堀を掘らなくてはならなくなります。
私が目指しているのは、できるだけ発生源の近くで放射能をつかまえることです。

マ:どうもありがとうございました。では次に、今回の事故によって住民が具体的にどんな影響を受けるかを考えていきたいと思います。

(ガンダーセン:インタビュー(3)へ続く)
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ガンダーセン:インタビュー(3)被曝と汚染

ガンダーセン:インタビュー(2)からの続き
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アーニー・ガンダーセン独占インタビュー:事態が悪化したら自分の身は自分で守ろう

マ:まずお伺いしたいのは、放射線による外部被曝の危険性と放射性粒子による内部被曝の危険性の違いです。これについてはかなりの混乱が見られ、メディアもあまり役に立ちません。ご説明いただけますか?

ガ:放射性物質には3種類あります。1つはガンマ線。原子炉が爆発した時、まずキセノンとクリプトンのガスの雲が大量に放出されました。どちらも希ガスで、皮膚などと反応することはありませんが、ガンマ線を放出します。
ガイガーカウンターを持ち歩いて線量を測っていた人たちが得た数値は、基本的にガンマ線の雲を体の外から浴びている線量を示していました。ガンマ線も怖いですが、体全体に拡散します。
私がもっと怖いと思うのは、放射性物質が崩壊するときに出るもう2種類の粒子、アルファ粒子とベータ粒子です。どちらも遠くまでは移動しませんが、ガンマ線よりはるかに多量のエネルギーをもっています。これらが皮膚に付着しているだけなら問題はありません。洗い流して今までどおり暮らしていけばいいのです。
ですが、体内に取り込まれると特定の臓器に向かい、非常に小さな範囲の組織に大量の放射線を浴びせるので、がんを引き起こす可能性があります。これを私たちは高放射能粒子と呼んでいます。

これらの粒子はすべて放射性ですが、人体への影響の話をするときは、これらの粒子のどれかが臓器に付着してその臓器を攻撃し始めることを指す場合がほとんどです。

マ:つまり放射線には3種類あるわけですね? まずはアルファ粒子でこれは粒子、次にベータ粒子があってこれも粒子、そしてガンマ線がある。ただ単に「放射線の話をしよう」と言うのは、「車の話をしよう」というのと同じ、というわけでしょうか。
一口に車といってもランボルギーニやVWやムスタングなど色々な種類がある。だから放射線についても種類があることや、放射線のレベルについて、私たちも理解しておく必要がありますね。放射線レベルというのは、全身に何レム浴びるかを示したものだと理解しています。アルファ粒子が何レム、ベータ粒子が何レム、ガンマ線が何レムというのは、それだけの量を全身で浴びますよということですね。
レントゲンを撮ってX線――これもまた別種類の放射線ですが――を浴びるようなもの。それがひとつ。けれども、放射性粒子が人体の組織内で放射線を出してしまうと問題がおきる。たとえば10ミクロンの粒子を吸い込んだとして、それがたまたま放射性粒子だとしたら、それは肺の絨毛に入り込み、そこに付着する可能性がある。そして粒子のまわりのごくごく狭い領域を攻撃し、その攻撃は放射性が失われるまで、または何らかの方法で体外に排出されるまで続く。

つまり、外側からの外部被曝で亡くなるケースは非常に稀だということですね。
外部被曝で死亡させるには、膨大な量を全身に浴びせる必要がある。
ところが人体に入る内部被曝の場合は話がまったく違ってくる。内部被曝の場合は、放射線量で言えば非常に低いレベルでも命取りになりうる。毒殺されたレトビネンコのことを思い出しますね。彼はロシアの反体制活動家で、2006年にロンドンでごく少量のポロニウム210を投与され殺害されました。この物質はアルファ粒子を出します。
彼が食べた物の中に何らかの方法でポロニウムが入っていて、最終的には彼を殺してしまった。
たしか非常に短い期間で死に至ったと思います。9日か10日。ですから皆さんに本当に考えていただきたいのは、放射能を出す物質を体内に入れてはいけないということです。

そのためにはどうすればいいのでしょうか。もしもアーニー、あなたが今東京かその近郊に住んでいるとしたら、あなたはどういう行動を取りますか?

ガ:東京に限らず、アメリカの西海岸も含めたほうがいいでしょうね。同じ粒子が検出されていますから。
さて東京についてのあなたのご質問ですが、東京にお住まいの方にアドバイスをするとしたら、玄関で靴を脱いで、ほこりは濡らして取ることです。ほこりを払ってはいけません。
私たちの最近の調査からは、家の中の汚染レベルのほうが家の外より高いことがわかっています。過去2ヶ月のあいだに放射性物質が屋内に運ばれ続け、そのまま留まっているからです。
ほこりを払ってしまったら、ほこりに付いている放射性物質をぜんぶ空中に撒き散らすことになります。
それからHEPAフィルターのついた空気清浄機を買って、フィルターを頻繁に交換することをお勧めします。HEPAフィルターは粒子をとらえる能力が高いのです。
それから、部屋のエアコンやカーエアコンのフィルターを新しいのと交換するといいでしょう。過去数ヶ月分の粒子が溜まっていますし、季節的にも交換にはちょうどいい時期です。
あとは、解体作業は絶対に行なわないこと。家の本体から張り出した部分を取り壊すなどもってのほかです。中に何が入っているかもわからないままにほこりを舞い上げてしまい、吸い込んで内部被曝するおそれがあります。

最後にもうひとつ。4号機から目を離さないこと。
もしも地震が起きて4号機が倒れたら、政府が何を言おうと信じてはいけません。それはもう科学が想像すらしたことのない領域なのです。
飛行機に乗って東京を出るときです。

マ:あれこれ悩むな、すぐに動け、ですね。食べ物についてはどうでしょう。これは大きな問題ですし、アメリカ西海岸の人たちにも問題になってくる可能性があります。放射性粒子が食物連鎖に入り込む可能性はあるんでしょうか。たとえば牛乳を通じて。牛は大量の草を食べて、それがごく少量の乳になります。その過程で、草や葉野菜に含まれていたものはぜんぶ濃縮されます。
草や葉野菜には放射性同位体が付着しやすいんですよね。セシウムが入り込む可能性がありますし、ヨウ素がまだ漂っていれば間違いなく入るでしょう。ヨウ素はもう出ていないはずなのに、どうやらそうはなっていないようです。食べ物に対してはどう対処したらいいでしょうか。何かを体内に一番取り込みやすいのは、物を食べることですからね。

ガ:牛乳に多く入り込むとしたらヨウ素ですね。すでに事故から80日が経過していますから、ほとんどのヨウ素はもう消えていていいはずです。
放射性ヨウ素の半減期は8日ですし、大ざっぱに言って半減期を10倍した期間がたてばほぼなくなりますから。でもヨウ素は検出され続けています。これは奇妙なことであり、先ほどの再臨界の話とつながってきます。
ですから日本の友人には、6月中旬までは牛乳や乳製品を避けるように勧めています。野菜をよく洗うのはとても大事なことです。
それから太平洋で獲れた魚は避けること。福島から相当離れたところで獲れたと確実にわかっているなら話は別ですが。福島から100マイル[約160km]程度の沖合いだとしたら、食べようなどと考えるのもだめです。
この状況は時間がたつにつれてひどくなっていくと思います。グリーンピースが独自に測定した数字を見れば、時間とともに悪くなっているのがわかります。
日本海は別です。日本海の魚であれば安心して食べていいでしょう。でも、太平洋側で獲れたとわかっているなら、食べないことです。

[これはひょっとしたら実際には難しいかもしれません。東北近海で捕獲された魚でも中部、西日本の漁港で水揚げされれば中部、西日本産の魚に「化ける」かもしれませんし。訳者]

海の場合、重要な放射性同位体は2つです。
1つはセシウム。これは筋肉に溜まる性質があり、魚肉はもちろん筋肉ですから、魚を食べればセシウムが体内に溜まるおそれがあります。
もう1つはストロンチウムです。ストロンチウムは魚の骨に溜まります。ですから魚の骨を使った珍味を味わわないかぎり、魚を通じてストロンチウムに被曝するとは考えられません。
ですが、生物濃縮というプロセスを通じて、最終的には食物連鎖の頂点にいるマグロやサケといった魚にこうした物質が入り込みます。大きな魚になればなるほど、放射性物質は濃縮されています。
私が気がかりなのは、米食品医薬品局(FDA)がアメリカにやって来る魚のモニタリングを行なっていないことです。遅かれ早かれマグロがどこかにやって来て放射能警報を鳴らし、みんながマグロをダーティ・ボム(いわば、放射能汚染爆弾)扱いする日が来るからです。
今はまだマグロは太平洋を越えていませんが、2013年までには西海岸で水の汚染と、食物連鎖の頂点にいる魚の汚染が問題になると私は考えています。

マ:太平洋は広大な海なので、汚染は拡散して薄まるという話をよく聞きます。でも、その話は今あなたがおっしゃった生物濃縮の問題を考慮していませんね。放射性同位元素の多くは体にとって必須の元素と似ているために、私たちの体はそれらを選択的に取り込んでしまいます。それは微生物も同じで、その微生物がもっと大きな生物に食べられ、それがまたさらに大きな生物に、と続いていくわけです。
これは私たちにとっても初耳の話ではありません。水銀が生物濃縮しやすいのは知られていますし、いろいろな中毒も生物濃縮を通じて起きます。これを放射性粒子の濃度に置き換えて考えればいいわけですね。
先ほど、チェルノブイリ事故時の黒海より太平洋のほうが放射能汚染がひどいという話をされていましたが、どれくらいの汚染物質が太平洋に流れ込んだとお考えですか?

ガ:先ほどの調査結果はウッズホール海洋生物学研究所のもので、もちろんここは信用ある科学研究機関です。彼らは10倍以上の汚染だと言っています。たしかに太平洋は広大です。でも10倍というのはまだ現時点での話であり、私たちがまだ危機を脱していないことを忘れないでください。
チェルノブイリが終わった時点より10倍多く、しかも福島からの放射能の放出にはまだ終わりが見えません。なのにすでに10倍なのですから、心配です。
50マイル[約80km]の沖合いで捕獲れた4~5インチ[約10~12cm]の小魚から、すでに許容量の10~50倍のセシウムが検出されています。もちろんその小魚はもっと大きな魚に食べられて、食物連鎖のはしごを上がっていくわけです。
これは憂慮すべき事態です。海草はヨウ素を吸収するようですが、私がつい最近知ったところによれば、セシウムも吸収するのです。
私はこれまで、90日たてばヨウ素はなくなるから海草は心配しなくていいと言ってきました。でもセシウムも吸収すると分かった今はそこまで確信がもてません。

マ:でも、幸い米環境保護局(EPA)は厳密な検査を実施しているんですよね?

ガ:政府の言うことに間違いはありません。

[ちなみに、EPAの検査はボランティアに頼る検査で、そのボランティアもEPAの下請け会社(ブッシュ大統領の下で働いていた人が設立した会社)に雇われているようです。5月の中旬から、食品の放射能検査などは元の通り、3ヶ月に1度の検査に戻されました。訳者]

マ:ああ、そうですね、あいにく信用できません。ともあれ海の汚染は福島の事故が残す環境への遺産のひとつですね。そうだ、言い忘れていました。色々調べているときに見つけた説なのですが、殻のある海の生物、とくにカニなどの甲殻類は殻に多量のセシウムを溜め込むそうです。セシウム汚染の件には甲殻類も付け加えたほうがいいかもしれません。

個人的な考えですが、もしも私が日本に住んでいたら、太平洋産の魚介類はすべて避けるでしょうね。あなたもおっしゃった通り、現時点ではそれが賢い判断のように思います。
本当に信頼できる徹底的な監視体制が整うまでは、私自身は何事も疑ってかかりたいと思います。
では、今原発の近くに住む住民や、原発の敷地内に居住する作業員は、どんな健康被害に直面するおそれがあるのかをお話いただけますか?

ガ:福島からは北と西に大きな放射能の雲が流れました。50マイル[約80km]も離れたところまでです。これだけの汚染を安価な方法できれいにするのは無理でしょう。原発から北西50マイルの地点では、セシウム濃度がチェルノブイリの立入禁止区域より高いのです。
事故当時、風がおもに海側に吹いていたのは本当に幸運でした。
煎じ詰めれば、日本政府がどれくらいの費用をかける気があるかの問題だと思います。半径20km圏内に住民が戻ってこられるとは思えません。とくに20km圏内の北西地域は無理でしょう。
農業や畜産業も問題を抱えます。牛はこの先何年もセシウムを取り込み続けるからです。ドイツを見てください。チェルノブイリの事故から30年近くたっているのに、キノコを食べるドイツのイノシシはいまだにセシウムに汚染されています。
一世代で消えてなくなる問題ではないのです。問題は相当長い期間居座り続けます。

費用については問題が2つあります。実際、結局はお金の話になるのです。原発の敷地を除染するにはたぶん300~500億ドル[約2兆4,000億円~4兆円]程度かかるでしょう。
1基のクリーンな原子炉を廃炉にするには通常10億ドル[約800億円]かかります。しかし福島の場合どの原子炉にも、融けた燃料の塊が底に落ちているわけです。そういう状況でどれくらい費用がかかるのか、試算した人は今までにいません。
しかもこれは原発の敷地だけの話です。東電に支払いきれるとは思えないので、この300~500億ドルは国の負担になります。
これに加えて、内陸部の除染に軽く1000億ドル[約8兆円]はかかるでしょうね。

この費用の問題を私のウェブサイトに掲載したところ、「まさか、そんなに高くつくはずがない」という声が寄せられました。
もちろんそれほどの金額になるには長い時間がかかりますし、津波被害からの復興費用も一部この試算に混じっているかもしれません。でも、
原発から20~30km圏内の除染に1000億ドル以上かかったとしても、私は少しも驚きませんね。現実にありうる数字です。

(ガンダーセン:インタビュー(4)へ続く)
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