井上陽水
2011-06-11

かつて70年代初めに
「傘がない」で圧倒的なデビューを開始した井上陽水。
当時、ニッポン放送で深夜からオールナイト・ニッポンというディスクジョッキーをやっており、そこの高島秀武アナが「老成した歌詞と歌い」と賞賛したのが「傘がない」でした。
オールナイト・ニッポンは当時先端のオールナイト放送で、ビタースィート・サンバでイントロが始まり、現役アナウンサーがやっていたのです。go-!go-!goの糸居五郎氏も健在でした。
陽水には、自分作詞と小椋桂作詞がありますが、わたしは陽水の作詞に感覚に訴えるものを感じました。
陽水作詞の中には、何となくTheRolligStonesを感じさせるものもありました。
TheRolligStonesとはまたやや異なる感覚ですが、生活の感覚、生活のリズムであり、考え方の一部でさえありました。
革命的でした。そしてリアルでした。
稀代の天才と考えています。
今も、時折ふと口唇に浮かぶ曲の中から、一つだけ。
「傘がない」ではありません。
「夏まつり」を............................................................................。!?
夏まつり
十年はひと昔 暑い夏
おまつりはふた昔 セミの声
思わずよみがえる 夏の日が
ああ今日はおまつり 空もあざやか
自転車のうしろには 妹が
ゆかた着てすましてる かわいいよ
もらったおこづかい なくすなよ
ああ今日はおまつり 早く行こうよ
綿菓子をほおばれば すぐとける
友達もみんな居る 笑い声
道には並ぶ店 オモチャ売り
ああ今日はおまつり 何を買おうか
十年はひと昔 暑い夏
ふるさとはふた昔 夏まつり
(了)
中枢に外国代表を常駐させる植民地政府
2011-06-11
震災・原発事故以来、首相官邸に米国大使館の幹部が常駐していることは最近よく知られているが、防衛省がこれまた米国大使館から大臣官房へ参事として入れたと言う。
いったい、この政権はどこまで傀儡国家らしくすれば気が済むのだろう。
国家権力の中枢部門に「幹部として常駐」、「幹部として在籍」。
いずれにしても、日本国民のため、日本国憲法のためにいるとは、思う人はいない。
仮にいたら狂気の沙汰だ。
目的は米国のために、権力中枢の日常すべてを監視し、指導するため以外にはない。
傀儡政権というより、これはもう。植民地自治政府か。
「在日外国人から政治献金を受けた」ことが違法になるのは、政治利害が日本国の国益と矛盾しないための規定である。
日本と米国の間にも、当然に多くの矛盾がある。
「外国人から政治献金」どころか、外国の利益代表を権力中枢部に常駐させ、在籍させるということは、正真正銘の売国行為であり、外患誘致に他ならない。
桂 敬一氏から
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
―この国は 「原理」 というものを見失っていないか―
目を奪われた新聞記事―これはいったいなんだ
このところ新聞をみてもテレビを眺めても、 菅首相不信任騒動の余波が気になってしょうがない。不信任案は、 恥も外聞もない茶番で否決となったが、 政権奪取が本当の狙いだった自公や、 新 「大連立」 政権にそこそこの地歩を占めたい民主党内の面々が、 ますます遠慮なく本心をむき出しにするだけで、 菅引きずり落としの理由にした震災復興策推進の行方は、 かえって混迷の度合いを深めるのみ。
メディアがこれを厳しく批判するかといえば、 一通りのことはいうものの、 こちらも政局の先読みばかりを競い合っている。こんなことでいいのかと、 また腹立たしく思っていたところに、 ある記事が目に飛び込んできた。朝日の6月8日朝刊 「ひと」 欄 (2面) 、 「米大使館安全保障担当補佐官から防衛省参事官に転じたKさん」 とする、 実名 ・ 写真入りの記事だ。
実は、 この情報は、 同じ朝日 ・ 5月28日付朝刊4面 (内政面) の 「防衛省、 在日米大使館員迎え入れ 米軍再編精通」 という見出しの囲み記事で接しており、 おやっ、 これはなんだ、 と引っかかっていたものだ。しかし、 その後の不信任案騒ぎで、 半分は忘れかけていた。 当時他社では、 共同通信がこれを追い、 同様の内容を配信したが、 おそらくこの配信によったのだろう、 共同加盟社となっている毎日だけが、 翌29日朝刊に小さな記事を載せた。
読売 ・ 産経には載らなかったように思う。 私が引っかかったのは、 このような異例の人事が、 日米両政府の交流人事というようなもので、 米政府側から日本政府内に出向してくる公務員の身分は米政府職員のままなのか、 そうではなくて、 完全な転職であり、 米政府職員であることは辞め、 正式な日本政府職員になるということなのか、 どちらなのだろうと思ったからだ。 どちらにせよ、 いろいろ問題がある。
米国政府職員がすぐ日本政府職員になれるのか
「K氏は2003年10月から現職 (注 : 在日米大使館政治部安全保障政策担当補佐官) の日本人スタッフで、 米軍再編を担当。 06年に日米が合意したロードマップ (行程表) の作成などで、 米国務省、 国防総省の対日窓口として交渉に関わった。 防衛省は、 米政府高官とも太いパイプを持つK氏を日本側に加え、 14年の普天間移設期限の見直しなどの難題に対処する考えだ」。 これが最初の朝日記事の内容。 北沢防衛相直々のアイデアで、 ルース駐日大使も 「日米間の異例の『異動』」 を快諾したという。 「異動」 先の防衛省大臣官房参事官 (米軍再編担当) は 「課長級」 というが、 43歳での本省課長は異例の若さ、 大抜擢といえる。
まず最初の疑問だが、 「異動」 とは、 米政府機関在籍の身分のまま、 防衛省の所定ポストに一定期間配属ということなのか。 日本政府は官民人事交流法 (2000年3月制定) で官民相互の人事交流を活発化させ、 そのなかにはこうした方式の有期期限付き人事もあるが、 今回の相手は国内民間団体ではなく、 外国政府だ。このような交流人事を許容する制度的根拠はあるのか、 というのが第1の問題点だ。
もう一つの疑問は、 米政府職員を辞め、 日本国の公務員になるというのなら、 それでいいようにも思えるが、 どうもしっくりこない点だ。私はだいぶ年を食ってから東京大学の教員になり、 後にも先にも国家公務員になったのはこの1回きりだが、 東大一本で長年勤め上げた大先輩から聞いた話で、 ずっと耳に残っていることがある。 事務職員のOBの人からも聞いたことだ。 「採用の辞令をもらったとき、 宣誓させられたんですよ。そのなかの文句に 『憲法を守り』 というくだりがありましたな」。 中央省庁に勤めた友人からも聞いた話だ。
また、 現在の天皇が1989年、 即位式後の朝見の儀で、 「国民とともに日本国憲法を守り」 とする誓約の言葉を発したのに、 強い印象を受けたことも思い出す。 1933年生まれの彼も、 教科書 『あたらしい憲法のはなし』 に感銘を受けた世代に属する。 そもそも日本国憲法には 「第九十九条 (憲法尊重擁護義務) 天皇又は摂政及び国務大臣、 国会議員、 裁判官その他の公務員は、 この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」 と明記してある。 公務員の宣誓も憲法に基づくのだ。 そこで疑問だが、 防衛省の幹部になるKさんは、 ちゃんとこの宣誓をしたのだろうか、 できたのか、 と思ったわけだ。
働くのはアメリカのためなのか日本のためなのか
Kさんにインタビューし、 「ひと」 欄記事をまとめたのは、 朝日きっての知米派、 加藤洋一記者。 「8日付で『米国務省職員』から 『防衛省大臣官房参事官』 へ。国を超えた移籍は前例がない。米政府高官は『日本以外の国との間では考えられない』 と語る」 と紹介した。初報1日遅れの毎日は 「引き抜き」 と称していた。 とすれば、 暫定的な人事交流でなく、 高級公務員の国を超えたヘッドハンティング、 完全な転職だ。 Kさんは当然、 日本の国民・政府のために働くのが本務だ。
しかし、 加藤記事によれば、 仕掛け人の北沢防衛相は、 Kさんの 「こじれがちな同盟関係を『説明役』として解きほぐす働きぶりにほれ込んで・・・口説き落とし」 た、 ということだ。 Kさんは7年余り東京の大使館に勤め、 「米軍再編、 防衛計画、 震災支援」 を手がけ、 「大使や公使を、 その目や耳、 時には口となって支え、 国務、 国防両省から2回ずつ表彰された」 そうだ。今後については、 「普天間も容易ではない。展望を尋ねると 『厳しいです。 でもこれ以上、 引き延ばすことはできません』。 続けて『命をかけます』」 との答えが返ってきた、 ということだ。
この記事を読んで感じたのは、 どうやらKさんが北沢防衛相のために働くことは確かだが、 米国政府公務員として手がけた 「米軍再編、 防衛計画、 震災支援」 は、 沖縄の米海兵隊のグアム移転 (日本も費用負担)、 普天間基地の名護 ・ 辺野古移設問題、 米軍による 「トモダチ作戦」 ・ 原発事故対処支援が絡んでおり、 それらの問題に対応するときは当然、 米国の国民 ・ 政府の利益のために仕事をしてきたはずであり、 その実績をそのまま生かすとなれば、 即アメリカのために働くことになり、 日本の国民や政府のために働くことにはならないのではないか、 という疑問だ。
あるいは、 Kさんはこれらの問題に関するアメリカの本音や弱点の裏の裏まで通じているので、 政府としてはそこに着眼、 Kさんの知恵を借り、 アメリカの裏をかいて出し抜こうというのか。それなら凄い。 しかし、 そういうことは絶対あるまい。北沢防衛相の頭は、 大事な 「日米同盟の深化」 でいっぱいで、 どうしたらアメリカに気に入ってもらえるか、 Kさんの知恵を借りたい風情ありありだからだ。 Kさんは、 アメリカの上役を、 「その目や耳、 時には口となって」 支えたということだが、 北沢防衛相に対しては、 その 「頭」 ともなってやる必要がありそうだ。
政治の主人公=国民に奉仕する憲法の原理復元を
加藤記者のインタビューの最後、 Kさんが普天間問題についての問いに、 “これ以上引き延ばせない。 命を賭けてやる” と答えた意図は、 文脈からすると、 かねての日米合意に基づく解決を進める、 とするものだろう。最近のレビン米上院軍事委員長ら米有力3議員が提案した、 “普天間の辺野古移転中止 ・ 嘉手納基地統合” 案を否定する米政府と北沢防衛相の意向に添う方向だ。 これではKさんは就任に当たって、 「日本国憲法を守り」 とは宣誓できなかったのでは、 と想像する。 もちろん宣誓を求める習慣がきちんと守られていたらば、 の話だ。
国家公務員宣誓書とは、 だいたいこんなものだ。 「私は、 国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、 日本国憲法を遵守し、 並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、 不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います」。 国家公務員、 国民への奉仕者=公僕 (パブリック ・ サーバント) としての規範への適合は、 憲法の遵守に尽きる、 といってもいいだろう。 しかし、 北沢防衛相もKさんも、 そして加藤記者も、 もうそんなことはかまわないんだ、 と考えたのだろうか。 あるいは国家公務員の憲法宣誓など、 初めから知らなかったのか。
ジャーナリズムの役割についても、 考え込んでしまった。 朝日は5月4日、 朝刊に国際的な告発サイト、 ウィキリークスとのアジア最初の提携メディアとなった事実を報じ、 最近の対米外交の隠されてきた内幕を開けてみせた。 日本の国民の前に明らかにされたのは、 自民党 ・ 小池百合子防衛相、 外務省高官、 鳩山内閣閣僚 ・ 民主党幹部らの、 アメリカ政府に迎合、 日本の政府や国民を裏切るといってもいい、 醜い対米隷従の姿だった。朝日がこうした実態を暴露したのは、 日本の政府や政治家 ・ 官僚のこのような主体性を放棄した姿勢に批判を加え、 反省を迫る意図があったからだ、 と理解することができた。
現に翌日の社説ではそうした趣旨のことが述べられており、 他紙の反響もそういうものが多かった。 それならば、 今回北沢防衛相がやったKさんの人事は、 称揚されるべきものでなく、 批判されるべきものではないのか。だが、 加藤記者の記事はまったく逆の雰囲気を伝えるものだった。 彼はこの人事について、 「米政府高官は 『日本以外の国との間では考えられない』 と語る」 と書いた。 なにか日本だけが世界で例外的に素晴らしい対米関係を築いているかのような感じの文章だ。しかし、 世界中は、 日本は他に例のないおかしな国だ、 と理解したのではないかという気がしてならない。
普天間問題の難問化は、 仲井真沖縄県知事にさえ 「県内移設反対」、 最低でも県外へ、 とする主張をいわしめた沖縄県民の総意、 それを支持する多くの国民の声があり、 それが日を追ってますます強まっているからだ。 また、 防衛省は、 沖縄の与那国島までを含む先島諸島の自衛隊常駐基地化、 鹿児島県大隅諸島の一つ、 馬毛島への米軍訓練基地移設、 山口 ・ 岩国基地における米空軍訓練利用の拡大、 海外ではアデン湾に臨むジブチに海上自衛隊の恒久的基地建設など、 米軍の世界的再編に呼応するかたちで、 米日一体型の軍事戦略体制の拡充を、 着々と図っているが、 こうした動きにも戦争への接近の危険、 財政困難の深刻化などをめぐって、 国民の危惧が強まっている。
すべての国家公務員は、 そのような国民の意向も尊重し、 国民に奉仕すべしとする憲法の原理を、 今こそ再確認する必要があるのではないか。 戦争への接近の危険は、 憲法9条の遵守をも政府 ・ 政治家に求めないではおかない。 対米関係の将来における改善は、 このような日本国民の問題意識を率直にぶつけていくことによってのみ、 図れるものではないだろうか。 (終わり)
いったい、この政権はどこまで傀儡国家らしくすれば気が済むのだろう。
国家権力の中枢部門に「幹部として常駐」、「幹部として在籍」。
いずれにしても、日本国民のため、日本国憲法のためにいるとは、思う人はいない。
仮にいたら狂気の沙汰だ。
目的は米国のために、権力中枢の日常すべてを監視し、指導するため以外にはない。
傀儡政権というより、これはもう。植民地自治政府か。
「在日外国人から政治献金を受けた」ことが違法になるのは、政治利害が日本国の国益と矛盾しないための規定である。
日本と米国の間にも、当然に多くの矛盾がある。
「外国人から政治献金」どころか、外国の利益代表を権力中枢部に常駐させ、在籍させるということは、正真正銘の売国行為であり、外患誘致に他ならない。
桂 敬一氏から
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―この国は 「原理」 というものを見失っていないか―
目を奪われた新聞記事―これはいったいなんだ
このところ新聞をみてもテレビを眺めても、 菅首相不信任騒動の余波が気になってしょうがない。不信任案は、 恥も外聞もない茶番で否決となったが、 政権奪取が本当の狙いだった自公や、 新 「大連立」 政権にそこそこの地歩を占めたい民主党内の面々が、 ますます遠慮なく本心をむき出しにするだけで、 菅引きずり落としの理由にした震災復興策推進の行方は、 かえって混迷の度合いを深めるのみ。
メディアがこれを厳しく批判するかといえば、 一通りのことはいうものの、 こちらも政局の先読みばかりを競い合っている。こんなことでいいのかと、 また腹立たしく思っていたところに、 ある記事が目に飛び込んできた。朝日の6月8日朝刊 「ひと」 欄 (2面) 、 「米大使館安全保障担当補佐官から防衛省参事官に転じたKさん」 とする、 実名 ・ 写真入りの記事だ。
実は、 この情報は、 同じ朝日 ・ 5月28日付朝刊4面 (内政面) の 「防衛省、 在日米大使館員迎え入れ 米軍再編精通」 という見出しの囲み記事で接しており、 おやっ、 これはなんだ、 と引っかかっていたものだ。しかし、 その後の不信任案騒ぎで、 半分は忘れかけていた。 当時他社では、 共同通信がこれを追い、 同様の内容を配信したが、 おそらくこの配信によったのだろう、 共同加盟社となっている毎日だけが、 翌29日朝刊に小さな記事を載せた。
読売 ・ 産経には載らなかったように思う。 私が引っかかったのは、 このような異例の人事が、 日米両政府の交流人事というようなもので、 米政府側から日本政府内に出向してくる公務員の身分は米政府職員のままなのか、 そうではなくて、 完全な転職であり、 米政府職員であることは辞め、 正式な日本政府職員になるということなのか、 どちらなのだろうと思ったからだ。 どちらにせよ、 いろいろ問題がある。
米国政府職員がすぐ日本政府職員になれるのか
「K氏は2003年10月から現職 (注 : 在日米大使館政治部安全保障政策担当補佐官) の日本人スタッフで、 米軍再編を担当。 06年に日米が合意したロードマップ (行程表) の作成などで、 米国務省、 国防総省の対日窓口として交渉に関わった。 防衛省は、 米政府高官とも太いパイプを持つK氏を日本側に加え、 14年の普天間移設期限の見直しなどの難題に対処する考えだ」。 これが最初の朝日記事の内容。 北沢防衛相直々のアイデアで、 ルース駐日大使も 「日米間の異例の『異動』」 を快諾したという。 「異動」 先の防衛省大臣官房参事官 (米軍再編担当) は 「課長級」 というが、 43歳での本省課長は異例の若さ、 大抜擢といえる。
まず最初の疑問だが、 「異動」 とは、 米政府機関在籍の身分のまま、 防衛省の所定ポストに一定期間配属ということなのか。 日本政府は官民人事交流法 (2000年3月制定) で官民相互の人事交流を活発化させ、 そのなかにはこうした方式の有期期限付き人事もあるが、 今回の相手は国内民間団体ではなく、 外国政府だ。このような交流人事を許容する制度的根拠はあるのか、 というのが第1の問題点だ。
もう一つの疑問は、 米政府職員を辞め、 日本国の公務員になるというのなら、 それでいいようにも思えるが、 どうもしっくりこない点だ。私はだいぶ年を食ってから東京大学の教員になり、 後にも先にも国家公務員になったのはこの1回きりだが、 東大一本で長年勤め上げた大先輩から聞いた話で、 ずっと耳に残っていることがある。 事務職員のOBの人からも聞いたことだ。 「採用の辞令をもらったとき、 宣誓させられたんですよ。そのなかの文句に 『憲法を守り』 というくだりがありましたな」。 中央省庁に勤めた友人からも聞いた話だ。
また、 現在の天皇が1989年、 即位式後の朝見の儀で、 「国民とともに日本国憲法を守り」 とする誓約の言葉を発したのに、 強い印象を受けたことも思い出す。 1933年生まれの彼も、 教科書 『あたらしい憲法のはなし』 に感銘を受けた世代に属する。 そもそも日本国憲法には 「第九十九条 (憲法尊重擁護義務) 天皇又は摂政及び国務大臣、 国会議員、 裁判官その他の公務員は、 この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」 と明記してある。 公務員の宣誓も憲法に基づくのだ。 そこで疑問だが、 防衛省の幹部になるKさんは、 ちゃんとこの宣誓をしたのだろうか、 できたのか、 と思ったわけだ。
働くのはアメリカのためなのか日本のためなのか
Kさんにインタビューし、 「ひと」 欄記事をまとめたのは、 朝日きっての知米派、 加藤洋一記者。 「8日付で『米国務省職員』から 『防衛省大臣官房参事官』 へ。国を超えた移籍は前例がない。米政府高官は『日本以外の国との間では考えられない』 と語る」 と紹介した。初報1日遅れの毎日は 「引き抜き」 と称していた。 とすれば、 暫定的な人事交流でなく、 高級公務員の国を超えたヘッドハンティング、 完全な転職だ。 Kさんは当然、 日本の国民・政府のために働くのが本務だ。
しかし、 加藤記事によれば、 仕掛け人の北沢防衛相は、 Kさんの 「こじれがちな同盟関係を『説明役』として解きほぐす働きぶりにほれ込んで・・・口説き落とし」 た、 ということだ。 Kさんは7年余り東京の大使館に勤め、 「米軍再編、 防衛計画、 震災支援」 を手がけ、 「大使や公使を、 その目や耳、 時には口となって支え、 国務、 国防両省から2回ずつ表彰された」 そうだ。今後については、 「普天間も容易ではない。展望を尋ねると 『厳しいです。 でもこれ以上、 引き延ばすことはできません』。 続けて『命をかけます』」 との答えが返ってきた、 ということだ。
この記事を読んで感じたのは、 どうやらKさんが北沢防衛相のために働くことは確かだが、 米国政府公務員として手がけた 「米軍再編、 防衛計画、 震災支援」 は、 沖縄の米海兵隊のグアム移転 (日本も費用負担)、 普天間基地の名護 ・ 辺野古移設問題、 米軍による 「トモダチ作戦」 ・ 原発事故対処支援が絡んでおり、 それらの問題に対応するときは当然、 米国の国民 ・ 政府の利益のために仕事をしてきたはずであり、 その実績をそのまま生かすとなれば、 即アメリカのために働くことになり、 日本の国民や政府のために働くことにはならないのではないか、 という疑問だ。
あるいは、 Kさんはこれらの問題に関するアメリカの本音や弱点の裏の裏まで通じているので、 政府としてはそこに着眼、 Kさんの知恵を借り、 アメリカの裏をかいて出し抜こうというのか。それなら凄い。 しかし、 そういうことは絶対あるまい。北沢防衛相の頭は、 大事な 「日米同盟の深化」 でいっぱいで、 どうしたらアメリカに気に入ってもらえるか、 Kさんの知恵を借りたい風情ありありだからだ。 Kさんは、 アメリカの上役を、 「その目や耳、 時には口となって」 支えたということだが、 北沢防衛相に対しては、 その 「頭」 ともなってやる必要がありそうだ。
政治の主人公=国民に奉仕する憲法の原理復元を
加藤記者のインタビューの最後、 Kさんが普天間問題についての問いに、 “これ以上引き延ばせない。 命を賭けてやる” と答えた意図は、 文脈からすると、 かねての日米合意に基づく解決を進める、 とするものだろう。最近のレビン米上院軍事委員長ら米有力3議員が提案した、 “普天間の辺野古移転中止 ・ 嘉手納基地統合” 案を否定する米政府と北沢防衛相の意向に添う方向だ。 これではKさんは就任に当たって、 「日本国憲法を守り」 とは宣誓できなかったのでは、 と想像する。 もちろん宣誓を求める習慣がきちんと守られていたらば、 の話だ。
国家公務員宣誓書とは、 だいたいこんなものだ。 「私は、 国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、 日本国憲法を遵守し、 並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、 不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います」。 国家公務員、 国民への奉仕者=公僕 (パブリック ・ サーバント) としての規範への適合は、 憲法の遵守に尽きる、 といってもいいだろう。 しかし、 北沢防衛相もKさんも、 そして加藤記者も、 もうそんなことはかまわないんだ、 と考えたのだろうか。 あるいは国家公務員の憲法宣誓など、 初めから知らなかったのか。
ジャーナリズムの役割についても、 考え込んでしまった。 朝日は5月4日、 朝刊に国際的な告発サイト、 ウィキリークスとのアジア最初の提携メディアとなった事実を報じ、 最近の対米外交の隠されてきた内幕を開けてみせた。 日本の国民の前に明らかにされたのは、 自民党 ・ 小池百合子防衛相、 外務省高官、 鳩山内閣閣僚 ・ 民主党幹部らの、 アメリカ政府に迎合、 日本の政府や国民を裏切るといってもいい、 醜い対米隷従の姿だった。朝日がこうした実態を暴露したのは、 日本の政府や政治家 ・ 官僚のこのような主体性を放棄した姿勢に批判を加え、 反省を迫る意図があったからだ、 と理解することができた。
現に翌日の社説ではそうした趣旨のことが述べられており、 他紙の反響もそういうものが多かった。 それならば、 今回北沢防衛相がやったKさんの人事は、 称揚されるべきものでなく、 批判されるべきものではないのか。だが、 加藤記者の記事はまったく逆の雰囲気を伝えるものだった。 彼はこの人事について、 「米政府高官は 『日本以外の国との間では考えられない』 と語る」 と書いた。 なにか日本だけが世界で例外的に素晴らしい対米関係を築いているかのような感じの文章だ。しかし、 世界中は、 日本は他に例のないおかしな国だ、 と理解したのではないかという気がしてならない。
普天間問題の難問化は、 仲井真沖縄県知事にさえ 「県内移設反対」、 最低でも県外へ、 とする主張をいわしめた沖縄県民の総意、 それを支持する多くの国民の声があり、 それが日を追ってますます強まっているからだ。 また、 防衛省は、 沖縄の与那国島までを含む先島諸島の自衛隊常駐基地化、 鹿児島県大隅諸島の一つ、 馬毛島への米軍訓練基地移設、 山口 ・ 岩国基地における米空軍訓練利用の拡大、 海外ではアデン湾に臨むジブチに海上自衛隊の恒久的基地建設など、 米軍の世界的再編に呼応するかたちで、 米日一体型の軍事戦略体制の拡充を、 着々と図っているが、 こうした動きにも戦争への接近の危険、 財政困難の深刻化などをめぐって、 国民の危惧が強まっている。
すべての国家公務員は、 そのような国民の意向も尊重し、 国民に奉仕すべしとする憲法の原理を、 今こそ再確認する必要があるのではないか。 戦争への接近の危険は、 憲法9条の遵守をも政府 ・ 政治家に求めないではおかない。 対米関係の将来における改善は、 このような日本国民の問題意識を率直にぶつけていくことによってのみ、 図れるものではないだろうか。 (終わり)
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迫るデフレ恐慌に、無能政権の打倒を
2011-06-11
現政権の閣僚は全員が政治音痴の上に、マクロ経済音痴である。
間違った。マクロ経済「無知」である。
真綿で首を絞めるようにじわじわとデフレ循環不況が悪化を辿っていたところに、米国による基軸通貨ドルの大増刷。
実体経済に行き場のない過剰流動性が投機に向かい、国際商品価格の高騰が押し寄せた。
この経過と予測は「デフレ脱却できないままに、食糧・石油が高騰してくる」、「始まる価格高騰はコスト転嫁できず倒産と需要減少」に書いた。
日本は昨年後半から雇用の悪化、賃金総額と消費、内需の減少などいずれも加速し始めた。この状況をしっかりと確認しよう。
そこに大震災と原発事故が起きたのである。
ほぼ、すべての産業で、生産と需要双方の大幅な減少が見込まれる。
また、原発事故による放射能汚染による輸出の急滅。
多数の倒産と失業の大幅な増加。
これらの減少が、正常な拡大循環機能を失って、縮小循環になっているデフレ経済を襲うことになる。
「これからの経済生活はどうなるのか」を御覧ください。
震災復興で景気回復などと言っていた「エコノミスト?」が居たが、正気の沙汰とは思われない。
「滅亡か、米国債売却による経済復興か」
マクロ経済音痴政権の恐るべき「無策」によって、デフレ恐慌に転落して、「窮乏化する日本」の悪夢が近づいている。
世界最大の対外債権国なら、ペーパーマネー資金の調達方法など幾らでもあるし、乗数効果と消費性向の高い分野に資金透過する、有効な需要喚起の方法は幾らでもある。
米国と我が国財界にしっぽを振ることしか脳のない、無責任政権を打倒しなければならない。
今こそ、経済音痴でない政治家が、大胆な指導力を発揮すべき時である。
植草一秀氏から
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目前に迫る日本経済真正危機に気付かぬ菅直人氏
国政の停滞が悪影響を与えるのは被災地だけではない。被災地の困難は筆舌に尽くせぬものがあるが、被災地だけでなく日本全体が経済恐慌に陥る瀬戸際にあることを忘れてはならない。
日経平均株価は9514円の水準にあるが、チャート上はなお強い下方リスクを抱えたままである。
本年年初、金融市場では株価上昇予想が圧倒的多数を占めていた。しかし、私は日本株価が再下落する可能性が高いとの見通しを示し続けた。詳しくは『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたい。サンプルとして、本年年初号をホームページに掲載しているので、参照賜りたい。
日本株価は私が予想した通り、三尊天井を形成した。さらに下落するリスクを抱えたままだ。株価下落予想の最大の根拠は、菅政権の財政政策運営が極度の緊縮に傾いたことだ。財政計数を的確に読み取る能力を持ったエコノミストがほとんど存在しなくなっている。
菅政権の財政政策運営は、予算書を分析する限り、1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権を上回る強力な緊縮に傾いている。2010年度財政は2009年度第二次補正予算の執行が2010年度にずれ込んだことから、拡張された。これと比較すると、2011年度は約9兆円も国家財政がGDPを圧縮してしまう状況になっている。
したがって、地震が発生していなくとも、日本経済は景気後退に陥っていた可能性が高い。株価は経済変動を先取りして変動するから、株価の再下落が警戒されたのである。
このような環境下で大地震が発生した。そして、この地震が大津波を発生させ、日本列島を破壊したとともに、福島原発で重大な放射能事故を発生させる原因になった。
地震の発生で、日本経済には強烈な下方圧力が加わった。生産能力そのものが大きく損なわれたのだから、GDPが減少するのは当然である。経済は疲弊し、国民は想像を絶する困難な境遇に陥れられてしまった。
この窮状を打開するには、政府が財政政策を積極活用するしかない。幸い、日本はまだ、巨大な政策発動の余力を大きく残している。この余力を活用して日本経済全体を立て直すことによって、現在の危機を打開する以外に道はない。
ところが、この局面で首相の地位にある菅直人氏に、日本経済の危機を打開する能力も意欲もないのだ。地震が発生し、福島原発が直ちに非常事態に陥った。この瞬間に、政府は福島原発から半径20キロ圏内の住民を県外に避難させねばならなかった。
ところが、菅政権は3月11日の夜21時23分に3キロ圏内の住民を避難させたものの、3キロから10キロ圏の住民には、屋内退避を指示した。
ところが、菅政権の対応は朝令暮改そのものであり、翌12日早朝、午前5時45分に、3キロから10キロ圏の住民に避難勧告を発したのである。この圏内の住民は、12日の午後6時25分になっても、まだ県外への非難を終えられない状況に陥ったのである。
菅政権の不手際により、3キロから10キロ圏の住民が避難するために路頭をさまよっているさなか、政府は福島第一原発において、ベントを実施し、放射能を外部放出したのだ。殺人行為と言っても過言でない。
11日の段階で10キロ圏外、あるいは20キロ圏外への非難を指示していれば、住民の混乱ははるかに小さく済んだはずだ。それが、12日午前5時45分の避難勧告になって、住民は着のみ着のままで自宅を離れるしかなくなったのである。
さらに、3月12日から14、15日にかけて、第一原発1号炉から4号炉において、相次ぐ大爆発が発生した。その結果、大量の放射性物質が外部に放出され、とりわけ15日夜には降雨があり、原発北西部の屋外にいた住民は、大量の放射能被曝をしてしまったものと考えられる。
有事に際して、何よりも重要な政府の役割、つまり、国民の生命と健康を守るという役割が完全放棄されていたのである。
さらに大きな失態は、政府は直ちに大規模な経済対策を策定し、実行に移さなければならないにもかかわらず、菅政権は経済対策ではなく、大増税政策に突進し始めたのだ。
この菅内閣の狂気の経済政策運営が、より深刻な日本の危機を招くことは、間違いないと私は予測する。当面の金融市場の最大の焦点になるのは、東京電力のゆくえである。
菅政権は、今回の原子力事故を、「異常に巨大な天災地変」によるものではないとの認識を示している。「異常に巨大な天災地変」とは、人類がこれまで経験したことのないような天変地異を意味するのだという。ところが、今回の地震や津波と類似した事象は、過去にいくつも確認されており、東電の原子力損害賠償責任は免責されないことが明白になった。
東電の財務リスクは急激に高まっており、今後の推移のなかで、東電自身が会社更生法の適用を申請する状況に追い込まれる可能性は十分に考えられる。東電の信用リスクは増大しており、金融機関も東電に対する与信に慎重にならざるを得ない。
東証社長が指摘したように、客観情勢は東電の法的整理の必要性を強く示唆している。
菅直人氏は6月2日に辞意をすでに表明したのだ。辞意を表明した首相に求心力は働かない。菅直人氏に可能な、唯一の国民貢献策は、一秒でも早く、首相を辞任することである。
首相が交代し、政策を大転換しなければならない。株価が急落し、経済が危機に陥るなかで、東電の破たんが表面化すれば、負のスパイラルが一気に噴出することになる。日本発の金融危機が世界経済を暗雲に巻き込む可能性すらあるのだ。
この危機を打開するには、経済政策の基本スタンスを全面的に転換するしか道はない。それなのに、菅直人氏は消費税大増税の方向に突き進んでいる。
菅直人氏が首相を辞任せずに、消費税増税に突き進むなら、日本経済が壊滅的なダメージを受けることになるのは間違いないだろう。だから、菅直人氏の即刻辞任と経済政策大転換が必要なのだ。上述した文脈上で考えれば、菅直人氏が辞任して野田佳彦氏が後継者となっても、事態が改善しないことが分かる。
マスゴミは、菅氏が辞任して、同じ執行部から野田佳彦氏などが新たな首班となって増税路線に突き進むことを支援し、そのために大連立が望ましいなどの間違った世論誘導を実行してきた。しかし、よく調べてみると、大連立に反対する議員も数多く存在することが判明した。マスゴミは、大連立が一筋縄では進まないことを認識すると、今度は、菅直人氏に対する早期辞任要求さえ後退させつつある。
つまり、政府もマスゴミも、問題の本質をまったく理解していないのだ。ここに、今回の危機の本当の深刻さがあると言って過言でない。
一刻も早く菅直人氏を退場させ、政府の経済政策スタンスを抜本的に転換すること。これが危機を打開する唯一の道であるが、まだ、方向感は定まっていない。
「悪徳民主」が野田佳彦氏を後継首相候補に擁立するなら、「正統民主」は、「正統民主」のなかから、野田氏とは反対の政策主張を示す候補者を擁立し、この代表戦をなんとしても勝利しなければならない。
日本国民は、事態の本質を正確に読み取り、このたびの政権交代によって、マクロ経済政策の基本路線を転換することが必要であることを、知らなければならない。本当の危機は、すぐそこにまで迫っている。
間違った。マクロ経済「無知」である。
真綿で首を絞めるようにじわじわとデフレ循環不況が悪化を辿っていたところに、米国による基軸通貨ドルの大増刷。
実体経済に行き場のない過剰流動性が投機に向かい、国際商品価格の高騰が押し寄せた。
この経過と予測は「デフレ脱却できないままに、食糧・石油が高騰してくる」、「始まる価格高騰はコスト転嫁できず倒産と需要減少」に書いた。
日本は昨年後半から雇用の悪化、賃金総額と消費、内需の減少などいずれも加速し始めた。この状況をしっかりと確認しよう。
そこに大震災と原発事故が起きたのである。
ほぼ、すべての産業で、生産と需要双方の大幅な減少が見込まれる。
また、原発事故による放射能汚染による輸出の急滅。
多数の倒産と失業の大幅な増加。
これらの減少が、正常な拡大循環機能を失って、縮小循環になっているデフレ経済を襲うことになる。
「これからの経済生活はどうなるのか」を御覧ください。
震災復興で景気回復などと言っていた「エコノミスト?」が居たが、正気の沙汰とは思われない。
「滅亡か、米国債売却による経済復興か」
マクロ経済音痴政権の恐るべき「無策」によって、デフレ恐慌に転落して、「窮乏化する日本」の悪夢が近づいている。
世界最大の対外債権国なら、ペーパーマネー資金の調達方法など幾らでもあるし、乗数効果と消費性向の高い分野に資金透過する、有効な需要喚起の方法は幾らでもある。
米国と我が国財界にしっぽを振ることしか脳のない、無責任政権を打倒しなければならない。
今こそ、経済音痴でない政治家が、大胆な指導力を発揮すべき時である。
植草一秀氏から
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目前に迫る日本経済真正危機に気付かぬ菅直人氏
国政の停滞が悪影響を与えるのは被災地だけではない。被災地の困難は筆舌に尽くせぬものがあるが、被災地だけでなく日本全体が経済恐慌に陥る瀬戸際にあることを忘れてはならない。
日経平均株価は9514円の水準にあるが、チャート上はなお強い下方リスクを抱えたままである。
本年年初、金融市場では株価上昇予想が圧倒的多数を占めていた。しかし、私は日本株価が再下落する可能性が高いとの見通しを示し続けた。詳しくは『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたい。サンプルとして、本年年初号をホームページに掲載しているので、参照賜りたい。
日本株価は私が予想した通り、三尊天井を形成した。さらに下落するリスクを抱えたままだ。株価下落予想の最大の根拠は、菅政権の財政政策運営が極度の緊縮に傾いたことだ。財政計数を的確に読み取る能力を持ったエコノミストがほとんど存在しなくなっている。
菅政権の財政政策運営は、予算書を分析する限り、1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権を上回る強力な緊縮に傾いている。2010年度財政は2009年度第二次補正予算の執行が2010年度にずれ込んだことから、拡張された。これと比較すると、2011年度は約9兆円も国家財政がGDPを圧縮してしまう状況になっている。
したがって、地震が発生していなくとも、日本経済は景気後退に陥っていた可能性が高い。株価は経済変動を先取りして変動するから、株価の再下落が警戒されたのである。
このような環境下で大地震が発生した。そして、この地震が大津波を発生させ、日本列島を破壊したとともに、福島原発で重大な放射能事故を発生させる原因になった。
地震の発生で、日本経済には強烈な下方圧力が加わった。生産能力そのものが大きく損なわれたのだから、GDPが減少するのは当然である。経済は疲弊し、国民は想像を絶する困難な境遇に陥れられてしまった。
この窮状を打開するには、政府が財政政策を積極活用するしかない。幸い、日本はまだ、巨大な政策発動の余力を大きく残している。この余力を活用して日本経済全体を立て直すことによって、現在の危機を打開する以外に道はない。
ところが、この局面で首相の地位にある菅直人氏に、日本経済の危機を打開する能力も意欲もないのだ。地震が発生し、福島原発が直ちに非常事態に陥った。この瞬間に、政府は福島原発から半径20キロ圏内の住民を県外に避難させねばならなかった。
ところが、菅政権は3月11日の夜21時23分に3キロ圏内の住民を避難させたものの、3キロから10キロ圏の住民には、屋内退避を指示した。
ところが、菅政権の対応は朝令暮改そのものであり、翌12日早朝、午前5時45分に、3キロから10キロ圏の住民に避難勧告を発したのである。この圏内の住民は、12日の午後6時25分になっても、まだ県外への非難を終えられない状況に陥ったのである。
菅政権の不手際により、3キロから10キロ圏の住民が避難するために路頭をさまよっているさなか、政府は福島第一原発において、ベントを実施し、放射能を外部放出したのだ。殺人行為と言っても過言でない。
11日の段階で10キロ圏外、あるいは20キロ圏外への非難を指示していれば、住民の混乱ははるかに小さく済んだはずだ。それが、12日午前5時45分の避難勧告になって、住民は着のみ着のままで自宅を離れるしかなくなったのである。
さらに、3月12日から14、15日にかけて、第一原発1号炉から4号炉において、相次ぐ大爆発が発生した。その結果、大量の放射性物質が外部に放出され、とりわけ15日夜には降雨があり、原発北西部の屋外にいた住民は、大量の放射能被曝をしてしまったものと考えられる。
有事に際して、何よりも重要な政府の役割、つまり、国民の生命と健康を守るという役割が完全放棄されていたのである。
さらに大きな失態は、政府は直ちに大規模な経済対策を策定し、実行に移さなければならないにもかかわらず、菅政権は経済対策ではなく、大増税政策に突進し始めたのだ。
この菅内閣の狂気の経済政策運営が、より深刻な日本の危機を招くことは、間違いないと私は予測する。当面の金融市場の最大の焦点になるのは、東京電力のゆくえである。
菅政権は、今回の原子力事故を、「異常に巨大な天災地変」によるものではないとの認識を示している。「異常に巨大な天災地変」とは、人類がこれまで経験したことのないような天変地異を意味するのだという。ところが、今回の地震や津波と類似した事象は、過去にいくつも確認されており、東電の原子力損害賠償責任は免責されないことが明白になった。
東電の財務リスクは急激に高まっており、今後の推移のなかで、東電自身が会社更生法の適用を申請する状況に追い込まれる可能性は十分に考えられる。東電の信用リスクは増大しており、金融機関も東電に対する与信に慎重にならざるを得ない。
東証社長が指摘したように、客観情勢は東電の法的整理の必要性を強く示唆している。
菅直人氏は6月2日に辞意をすでに表明したのだ。辞意を表明した首相に求心力は働かない。菅直人氏に可能な、唯一の国民貢献策は、一秒でも早く、首相を辞任することである。
首相が交代し、政策を大転換しなければならない。株価が急落し、経済が危機に陥るなかで、東電の破たんが表面化すれば、負のスパイラルが一気に噴出することになる。日本発の金融危機が世界経済を暗雲に巻き込む可能性すらあるのだ。
この危機を打開するには、経済政策の基本スタンスを全面的に転換するしか道はない。それなのに、菅直人氏は消費税大増税の方向に突き進んでいる。
菅直人氏が首相を辞任せずに、消費税増税に突き進むなら、日本経済が壊滅的なダメージを受けることになるのは間違いないだろう。だから、菅直人氏の即刻辞任と経済政策大転換が必要なのだ。上述した文脈上で考えれば、菅直人氏が辞任して野田佳彦氏が後継者となっても、事態が改善しないことが分かる。
マスゴミは、菅氏が辞任して、同じ執行部から野田佳彦氏などが新たな首班となって増税路線に突き進むことを支援し、そのために大連立が望ましいなどの間違った世論誘導を実行してきた。しかし、よく調べてみると、大連立に反対する議員も数多く存在することが判明した。マスゴミは、大連立が一筋縄では進まないことを認識すると、今度は、菅直人氏に対する早期辞任要求さえ後退させつつある。
つまり、政府もマスゴミも、問題の本質をまったく理解していないのだ。ここに、今回の危機の本当の深刻さがあると言って過言でない。
一刻も早く菅直人氏を退場させ、政府の経済政策スタンスを抜本的に転換すること。これが危機を打開する唯一の道であるが、まだ、方向感は定まっていない。
「悪徳民主」が野田佳彦氏を後継首相候補に擁立するなら、「正統民主」は、「正統民主」のなかから、野田氏とは反対の政策主張を示す候補者を擁立し、この代表戦をなんとしても勝利しなければならない。
日本国民は、事態の本質を正確に読み取り、このたびの政権交代によって、マクロ経済政策の基本路線を転換することが必要であることを、知らなければならない。本当の危機は、すぐそこにまで迫っている。
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