核の墓場計画
2011-05-24
4/3に明月氏の「核の墓場計画」論を紹介しました。「不合理な原発推進、日本を核の墓場にする計画か」。
資本は利益の拡大と際限なき富の膨張を求めて、経済合理性を追求する。
ところがなんとも、この経済合理性を外れている原子力発電の推進は何故なのだろう。
火山と地震の国に山のように原発を作れば、いつかは取り返しのつかない大事故になるのは目にみえている。
ババをどこがひくか、あるいはロシアン・ルーレットか。
アメリカの動きなのだろうが、原発「推進」の動機はそれだけか。疑問が残る。
「核の墓場計画」は頷けるのである。
被曝区域からの意図的な住民避難と土地接収、核の墓場にする思惑は長周新聞の記者座談会にも現れた。「ショック・ドクトリンと言う火事場泥棒」
アメリカを主導する新自由主義の政策ショック・ドクトリンについては、三橋貴明氏から引用した「ショック・ドクトリン」を御覧ください。
原子炉停止、廃炉、反原発、脱原発の声を。
みんなが声を挙げて行かなければならない。
「反戦な家づくり」明月氏から
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2011-05-21(Sat)
「フクシマを核処分場にする計画」を改めて検証してみる
福島第一原発から半径20kmは、実質的に国に召し上げられてしまった。
おそらく、こういうシナリオになるだろうと、4月1日の時点で予想し、「原発推進の正体は『日本列島を核の墓場にする計画』だったのではないか」を書いた。
多くの人から 「なるほど」とか「怖い」という感想をいただいた。
その一方で、「いくらなんでも それはないだろう」という意見も多い。
多いと言うより、多数派だ。
あの岩上安身さんと孫崎享さんにも、大阪ディープナイトの懇親会でぶつけてみたが、まったく否定的だった。
■■ 最終処分場探しは、本気の本気で進められている
しかし国の方針として、最終処分場は2020年には候補地を確定して、2035年ごろには操業開始 ということになっている。

(原子力研究開発機構)
2020年に候補地を確定させるとなると、もう今頃はいくつかに候補を絞って、技術的な検討と地元説明に全力をあげなくてはならない時期だ。
しかし、これまで、高知県東洋町をはじめ、多くの町が手を上げたが、ほとんどは地元の反対でつぶれている。
詳しくは、「環境と原子力の話 」というホームページの中の、こちらに詳しくまとめられている。
こんなに多くの動きがあったのかと、驚くばかりだ。
処分場誘致の動き http://homepage3.nifty.com/ksueda/waste0305.html
なかなか表沙汰にならない動きを、丹念にまとめられており、とても貴重な資料。
この中で、注目すべきは、福島県楢葉町と、青森県東通村だ。
楢葉町は言うまでもなく福島第2原発のある場所。東通村は東通り原発のある場所。
いわば、毒を食らわば皿まで、ということ。なにせ、原発の地元は、極端に反対をしにくい場所だ。
どんなことであれ、原発に歯向かうことは村八分になる。少なくとも、3月11日までは。
だから、多くの場所は何やかんや言いつつ、とりあえずは撤回や拒否という結論が出ているのに、この2箇所は拒否という結論になっていない。つまり、現役の候補地なのである。
この点を見ても、原発直下が最終処分場という考えは、荒唐無稽でも陰謀論でもなく、もっとも確率の高い候補地として進められてきたことがわかる。
そうは言っても、やはり簡単にOKとはならない。
原発は大賛成の福島県知事や青森県知事も、さすがに高レベルの最終処分場に、ホイホイと諸手を挙げて賛成というわけには行かず、難航してきた。
しかし、そう言っている間にも、各原発の敷地内と、六ヶ所村に使用済み核燃料はたまり続けている。
もし3月11日以前のペースで原発を運転し続けると、候補地を決めるという2020年には、使用済み燃料が8000立米、廃液などが26300立米 たまることになるという。
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の改正について
50mプールで20杯近い高レベルの放射性廃棄物が、行き場をなくして日本中をさまようことになる。
なんとしても、どうしても処分場を確保しなければならない、というのが原発鬼たちの至上命題なのだ。
核廃棄物の最終処分場を探すのは、原子力発電環境整備機構(NUMO)という、候補地探しの専門組織で、電力会社からの拠出金で、年間1000億近い予算を持っている。
そのほとんどは候補が決まったときのための積立金で、なんと1兆円近い資金をプールしている。
年間の原子力関係の国家予算が全部で5000億円と言われているから、処分場にかける金額が、いかに巨額かが分かる。
と、こうやって核廃棄物の最終処分場さがしの実情を見てくると、福島第一原発の惨状の裏で、あの場所を処分場にしようとする動きがあっても、全然おかしくないということが、分かっていただけるだろう。
「原発推進の正体は『日本列島を核の墓場にする計画』だったのではないか」で書いたように、そもそも日本の原発というのが、事故→処分場 というシナリオを想定して作られていたかどうかはともかく、実質的に国に奪われてしまった福島第一原発の半径20キロが、高レベル核廃棄物の処分場にされようとしている、ということには、非常にリアリティがある。
「いくら何でも」 なんて優しいことを考えるのは普通の人の側であって、原発鬼どもにそんな優しい心根はない。
断じてない。一片もない。
■■ アメリカは自国で核廃棄物を処分する気はない
アメリカにももちろん、多くの原発がある。というか、世界で一番多い。104基もある。
これらを、どこかで処分しなくちゃいけないので、2009年まではネバダ州のユッカマウンテンサイトという場所に処分場を作ろうと、強引に進めてきた。
州の反対を押し切って、ブッシュ政権は作ろうとしていた。
それが、オバマになって一転。
計画を白紙にして、予算もゼロ。世界一の核のゴミを抱えながら、自国で処分する気は、まったくない。
米国における高レベル放射性廃棄物処分
ちなみに、アメリカには原発だけじゃなくて、核弾頭もある。核軍縮で、あまってしまった大量の核弾頭。
ソ連崩壊後から、急速に進んだ核軍縮で、現在兵器級のプルトニウムが250トンくらい在庫されているらしい。
兵器級のプルトニウムは、プルサーマルと称して原発のMOX燃料に加工されている。
兵器級のウランとプルトニウムをMOXに加工すると、100万kWの軽水炉50基を100年運転できるらしい。
((財)高度情報科学技術研究機構)
ところが、MOX燃料は、アメリカ国内では使用禁止。
じゃあどうするのかというと、国内では危険すぎるので、日本に売り込んで燃やしている というわけ。
日本でも、最初に使用したのは、東電でも関電でもなく、四国電力の伊方原発。
巨大な東電や関電は逃げをうった。
アメリカの中では、先住民族が住むネバダ州。それでも危険ならば、属国の日本。日本の中でも、大都市は田舎に押しつける。
核の問題は、かように差別に貫かれている。
その観点から考えたときに、アメリカの104基の使用済み核燃料を、どこへ捨てようとしているか、自ずと見えてくるのではないだろうか。
フクシマのあの事故を目の当たりにしながら、巨万のデモが起きない国。
遠く離れたドイツですら、何十万というデモが起きているのに、日本国内ではおとなし~く耐えている国。
首相官邸に謎のアメリカ人が居座っても、だれも追究しない国。
それどころか、各官庁に網の目のようにアメリカの手下が配置されて忠誠を誓っている国。
しかも、万が一のことがあっても、アメリカ本土には影響ないくらい遠くにある国。
さらに加えて、経済的にはアメリカに負担をかけずに自前で処分場を作る国。
こんな国が目の前にあるのに、なんで捨てに行かないのか そっちのほうが不思議。
外の目で見れば、そう見える。
見えざるを得ない。
■■ 技術的な問題
ただ、岩上さんも言っていた疑問は、原発の敷地では、津波の心配もあって無理ではないか、ということだった。
なにせ、最低でも10万年、本当に無害化するには100万年は核物質を保管し続けなくてはならない。
いくらデタラメな原発鬼たちといえども、津波のくる海岸線では説明がつかないだろう という疑問だ。
しかし、20キロというのは海岸線だけではない。
半径20kmというのが、どういう地域なのか、観念的にはよく分からないので、3D風に見るとこんな感じだ。

平地と山の境に南北に走っている県道35号線と、ちょど西へ20キロのあたりにある南北の谷は、活断層(赤い点線)。
地図の下の方に見える楢葉町が、2009年に「高ベル核廃棄物処分場」に立候補した町。
今でもその時の町長が現役のはず。
ところで、高レベル放射性廃棄物の最終処分というのは、どのようにするつもりなのか。
簡単に言うと、廃棄物をガラスで固めて、地下300mくらいの岩盤の隙間に埋める らしい。
津波と地震と火山の国で、どうやって地層処分などするのか、誰でも不安に思う。
これについて、(独)日本原子力研究開発機構 という研究の元締め組織は、こんな絵を示している。

ザックリ言うと、津波が来ない程度の内陸部で、火山から離れていて、活断層と活断層の中間部に、埋めるということらしい。
なにせ、活断層でも活断層じゃないと言い切り、活断層どころか、もっと親玉のプレート境界の上に原発を建ててしまう連中のやることだから、ちょっとやそっとのことでは「安全」ということになってしまう。
300mも埋めておけば、もし漏れても東京までは来ないだろう てなもんなのだろう。
それに、100万年先のことなんて、誰にもわかりはしない。
せいぜい、何十年か保ってくれれば、自分の責任は問われない ということだ。
ちなみに、他国ではもう少し深く埋める計画が多い。
フィンランドのオルキルオトに建設されているオンカロでも420mだ。
おそらくは、日本の場合あまり深く埋めると、斜めに走っている活断層にぶつかりやすくなり、なおさら地域が限定されるのだろう。
それと、日本人はおとなしい と見透かされていることもあるだろう。
まあ、とにかくこんな感じで、日本はヨーロッパのような安定した地盤じゃないと言うことを認めながら、それでも、可能な場所は広い、と前出の(独)原子力機構は言い切っているので、本気でやる気なのは間違いない。
「技術的な基準」など、候補地が決まってからその場所にあわせて決める くらいのことは、原発鬼どもは平気でやる。
そういう目で見ると、福島第一原発から20km圏内で、2本の活断層の間の山地は、原発鬼の目には、涎が出るほどオイシイ場所に見えるはずだ。
白河以北一山百文 とかつて差別された東北・福島が、いままた原発鬼どもの差別と利権と苦し紛れの妄動によって、恐るべき運命を強制されようとしている。
私にはそのように思えてならない。
■■ 政治的な問題
なぜ、メルトダウンを分かっていて放置したのか。
なぜ、ここまで情報を隠蔽し続けるのか。
なぜ、子どもに外部被曝だけで20mSvという殺人行為を国家が公然と行うのか。
なぜ、放射線量ではなく、20kmという距離で立入禁止にしたのか。
なぜ、情報を隠すことで実被害と風評被害を区別できなくして、風評被害を煽るのか
なぜ、外国から送ってもらった大量の線量計を成田に放置するのか
それらの疑問は、処分場計画と合わせて考えると、一つの方向へ進んでいるのが見えてくる。
国も東電も何とか機構も御用学者も、ぜんぶひっくるめて原発鬼は、一つの方向へ向かっている。
事情の分からない下っ端はともかく、菅をふくめて上層部は、およそ以下のような方向に向いているように思える。
・ まず、東京方面が汚染される水蒸気爆発や、大規模の再臨界による核爆発だけは避ける。
・ 周囲20キロを、合理的な理由なく危険だとして強制収容して、国有地にする。
・ 20キロ圏外には、ある程度の汚染は許容する。
・ ただし、100mSv以下は無害というデマで誤魔化せる程度でおさまることが望ましい。
・ 海への汚染も、無害というデマで言い逃れができる程度まではOK
・ したがって、民間での勝手な線量測定は極力許さない。グリーンピースなんてもっての他。
当面はそんな方針で、事故の収束へむけて何年かはジャージャーと水をかけ続け、燃料が尽きるのを待つのだろう。
原子炉にも格納容器にもダダ漏れの穴があいている以上、ダダ漏れで冷やし続けるか、外側に一回り大きな格納容器を作るしかない。が、そんなものは、作れるわけがない。
本来なら完全に水につかっていなければならない燃料棒を、上からジャージャーかけるだけで冷やせるのかどうか、冷温停止にできるのかどうか、これまた心許ない。
おそらく、崩壊熱がなくなるまでで、1年か2年か、ほとんど垂れ流しで水をかけ続けるしかないだろう。
ある程度は、冷却水の循環はできるようになるみたいだが、そもそもどこに穴があいているか分からないのだから、基本的にはダダ漏れ。
こうして、空中にも海中にも放射能は垂れ流しつつ、崩壊熱がおさまってくれるのを待つ。
その間に、20キロ圏より外には、補償しなくてすむことを、なんとか考える。
放出量を減らすこともするけれども、出てしまったものを「安全」ということにする、ことに全力をあげる。
海の汚染は、普通の人には測定しようがないから、大本営発表で誤魔化す。
たまに、グリーンピースなんかが調査をしに来たら、ナンクセつけて追い返す。
外部被曝の4~5倍もあるはずの内部被曝については、2%くらいということにして、誤魔化す。
なにせこれも、ホールボディカウンターなんてあまりないから、証明のしようがない。
できるだけ、ホールボディカウンターは使わせずに証拠を残さなければ、あとで甲状腺癌になっても、「因果関係が証明できない」と言える。
こうやって、意図的に危険を放置し、耐えられなくなった住民が「自主的に」いなくなってくれれば、好都合。
人払いをしておけば、数年後に処分場計画を進めるときに、反対がない。
つまり、子どもに20mSvはOKというのは、「出て行け」という意味。
それを理解できない住民のために、小佐古氏は泣いて辞任会見した。
小佐古氏には気の毒だが、あの会見は菅にとっては「想定内」
とにかく今は、放射能という実弾をぶっ放して、住民の追い出しを図る。
それに気がつかずに、弾に当たって死んでしまうよりも、早いこと「自費で」逃げ出して欲しい。
農漁業の補償だけ見ても、今年や来年のぶんはともかく、この先何十年の被害を補償することなんて、東電も国もまったく考えていない。
福島県だけでも農業生産は年に900億円以上ある。10年間マイナス50%で、被害額は4500億円にもなる。
漁業も年に180億。
しかし、東電や国は、最初の1年くらいはともかく、それ以降は、放射能を測定して基準値を超えた分しか補償しないだろう。
あとは、測定しきれない分もふくめて風評被害だ、と言って消費者に責任を押しつける。
そのためにも、風評被害を広めることは、国家の重大事。
枝野を筆頭に、せっせと情報隠しをして、実害と風評の境界線を見えなくし、風評被害の拡大に努めてきた。
とくに畜産農家には、放射能の濃縮が明らかになる前に、「自費で」出て行ってもらいたい。
こうやって、いま政治は、福島から、原発周辺から、できるだけカネを使わずに住人を追い出すことに、全力をあげている。
■■ 副島隆彦氏の主張について
最近になって、副島氏もこうした国の動きに注目し、処分場計画があるのではないかと言っている。
福島を棄民することへの抵抗を呼びかけてきた副島氏であるから、当然気がつかれるだろうと思ってはいた。
権力というものが、どんなに酷いことをするか、希望的観測によらずに分析する副島氏には、これまで多くのことを教えられてきたし、今もまた、他の論者にはない貴重な視点を提供していると思う。
が、しかし、彼の「安全だから帰っておいで」という呼びかけには、断じて同意できない。
生きる術をなくすよりは、ある程度の放射能は我慢するしかない、という理屈は、視点を限定すればあり得ることだと考える。
どういう限定かというと、権力者、為政者、加害当事者から発せられる言葉ではないということ。
同時に、安全圏にいる私たちの言葉でもない ということ。
つまり、被害当事者の人たちから出た言葉であるならば、否定しきることはできない。
それを副島氏も分かっているから、自分で原発の門まで出かけ、21キロ地点に事務所を構えて常駐するつもりなのだろう。
しかしそれでも、副島氏は被害当事者ではないし、その上、放射線量が「ある程度」という範囲を超えている。
特に、子どもにとっては。

(小出裕章氏 講演資料より)
私たちのような年齢になれば、生きる術と放射能を天秤にかけて考えることもあり得るかもしれないが、これから子どもを産む世代を含めて、子どもたちには浴びて欲しくない。
しかも、文科省が言う被ばく量は、放射性物質を吸い込んだり食べたりする内部被曝は、考えられていない。無視されている。
特殊なマスクをして、食べ物をよほど気をつけない限り、外部被ばく量の4~5倍は内部被曝がある。
同じ文科省が出しているSPEEDIの試算で、そのような計算をしているのに、例の20mSvは大丈夫と言うときには、内部被曝は無視。
つまり、外部被曝で20mSvも浴びているときには、内部も含めると100mSvになる ということ。
それが子どもであるならば、リスクは3倍も4倍もある。
つまり、大人の被ばく量に換算すると、300mとか400mSvも浴びたのと同じと言うことだ。
いくら住民追い出しのために、半ば意図的に垂れ流しにされている放射能だからと言って、やはり放射能は放射能だ。
危険なことには変わりがない。
変な言い方になるが、その場で決着が着く銃弾よりも、もっと始末が悪い。
まして、子どもには何の責任もない。
ざっとした見方で言うと、子どもの場合、毎時の○○μSvというガイガーカウンターの数字を、10万~20万倍した数字が年間の被ばく量相当ということになる。
○○ x 24時間 x 5倍(内部被曝) x 5(感受性) x 365 x 減衰率
減衰を50%くらいにすれば10万倍、ほとんど見なければ20万倍。
仮に10万倍としても、単位を一つあげて(マイクロをミリ)、数字を100倍することになる。
たとえば、毎時3μSv → 年間300mSv(相当)
放射線をぶっ放して住民追い出しを謀る東電と菅内閣(とその背後にいるアメリカ)の、言いなりになるようなことは、確かに悔しいけれども、そうは言っても危ないものは危ない。
50代以上は、ある程度の危険を覚悟で戻ろうというのならば、分からないでもないが、子どもたちは何とかして助けなくてはならない。
■■ いま求められているのは
いま、緊急に求められているのは、何よりも子どもたちの保護だ。
事故の収束事態は、現実の問題として、何年かは今のような状態が続くだろう。
緊急に放射能を止めろと言っても、できるわけがない。
だからこそ、子どもたちを保護しないと、チェルノブイリの子どもたちの悲劇が繰り返される。
20mSvという基準ももちろんだが、基準だけを変えても、行き場のなくなる子どもが生まれるだけだ。
子どもとその親を、緊急に避難させる手立てを、当面の収入補償という面も含めて取らなくてはならない。
福島県の20歳以下は40万人。
福島全域でないとしても、茨木北部や宮城南部も含めて、約40万。
どの範囲かは、肥田舜太郎先生など、御用学者ではない被曝の専門家によって検討が必要だろう。
少なくとも、県の中心である福島氏や郡山市などは、1.4μSv/時であるから、あきらかにリスクが高い
親も含めて80万人の避難なんて、非現実的だと思えるかもしれない。
が、今起きているのは、そのくらい非現実的と思えるくらいの、とんでもない事態だ。
爆発こそしないけれども、なにせ3つの原子炉に穴があいて、放射能がダダ漏れなのだ。
希望的観測で、現実を歪めて見てはいけない。
■■ 政治の力が必要
そして、今、どうしても必要なことをやろうと思ったら、菅直人ではダメだ。
アメリカに魂を抜かれた男に任せていては、悲劇はどんどん広がっていく。
分かっている情報ですら隠されたまま、大本営発表で子どもたちが殺されていく。
情報の隠蔽と証拠の隠滅だけに勢力を傾けながら、着々と処分場へと計画を進めていくだろう。
その過程で、どれだけの子どもが犠牲になろうと、お構いなしだ。
「自費で」逃げないのがわるいんだ と開き直るつもりだ。
いくら危険だと分かっても、経済的な補償がなくては、そう簡単に逃げられるものではない。
絶対に政治の力がなくては、子どもたちを救うことはできない。
それも、相当の額が必要。
仮に1組に月10万としても、年に5000億円必要だ。
最低限2年間は避難したとして、1兆円。
この程度の金額は、官僚が貯め込んでいる特別会計のがま口を開けば、出てくる。
特に、永続的なオカネではないだけに、充分に賄える。
それができるのは、政治の力しかない。
私は小沢一郎万能論者ではないが、政治の力で子どもたちを守るためには、小沢氏に決断してもらうしかないと思っている。
菅直人に対しては、裏で脅迫して、表で花道を用意してやるくらいのワザを使ってでも、内閣不信任に対して解散をさせないように持ち込まなくてはならない。
国民の生活はおろか、被災者の生活さえも自分のクビのためには犠牲にする菅直人は、内閣不信任を突きつけたら、本当に解散総選挙をやりかねない。
それだけは避けないと、全ての犠牲をかぶるのは、被災者だ。
おそらく、そこで倒閣の動きも足踏みしているのだろう。
それを側面からプッシュするためにも、自分の選挙区の国会議員にも、FAXなどで要望を送ろうと思う。
衆議院議員
参議院議員
菅直人らについていく議員が少なくなればなるほど、当然ながら対菅工作はやりやすくなるはずだ。
そして、残念だけれども、表向きは菅を打倒するのではなく、花道をつけてやって退場させるようにすることだ。
そうしないと、まるで敗戦直前の日本のように、狂気の沙汰で足掻きまくる恐れがある。
今重要なことは、被災者、なかでも放射能を日々浴び続けている福島の子どもたちを、財政的に支えながら避難させることだ。
そのための、政治の力を実現することだ。
それでももし、絶望的に菅直人が政権にしがみつくとしたら、それはやはり、フクシマを核廃棄物処分場にしようという、ものすごく巨大な力が働いているということ。
それをはね返すには、脱原発のうねりのような国民運動が必要だ。
資本は利益の拡大と際限なき富の膨張を求めて、経済合理性を追求する。
ところがなんとも、この経済合理性を外れている原子力発電の推進は何故なのだろう。
火山と地震の国に山のように原発を作れば、いつかは取り返しのつかない大事故になるのは目にみえている。
ババをどこがひくか、あるいはロシアン・ルーレットか。
アメリカの動きなのだろうが、原発「推進」の動機はそれだけか。疑問が残る。
「核の墓場計画」は頷けるのである。
被曝区域からの意図的な住民避難と土地接収、核の墓場にする思惑は長周新聞の記者座談会にも現れた。「ショック・ドクトリンと言う火事場泥棒」
アメリカを主導する新自由主義の政策ショック・ドクトリンについては、三橋貴明氏から引用した「ショック・ドクトリン」を御覧ください。
原子炉停止、廃炉、反原発、脱原発の声を。
みんなが声を挙げて行かなければならない。
「反戦な家づくり」明月氏から
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2011-05-21(Sat)
「フクシマを核処分場にする計画」を改めて検証してみる
福島第一原発から半径20kmは、実質的に国に召し上げられてしまった。
おそらく、こういうシナリオになるだろうと、4月1日の時点で予想し、「原発推進の正体は『日本列島を核の墓場にする計画』だったのではないか」を書いた。
多くの人から 「なるほど」とか「怖い」という感想をいただいた。
その一方で、「いくらなんでも それはないだろう」という意見も多い。
多いと言うより、多数派だ。
あの岩上安身さんと孫崎享さんにも、大阪ディープナイトの懇親会でぶつけてみたが、まったく否定的だった。
■■ 最終処分場探しは、本気の本気で進められている
しかし国の方針として、最終処分場は2020年には候補地を確定して、2035年ごろには操業開始 ということになっている。

(原子力研究開発機構)
2020年に候補地を確定させるとなると、もう今頃はいくつかに候補を絞って、技術的な検討と地元説明に全力をあげなくてはならない時期だ。
しかし、これまで、高知県東洋町をはじめ、多くの町が手を上げたが、ほとんどは地元の反対でつぶれている。
詳しくは、「環境と原子力の話 」というホームページの中の、こちらに詳しくまとめられている。
こんなに多くの動きがあったのかと、驚くばかりだ。
処分場誘致の動き http://homepage3.nifty.com/ksueda/waste0305.html
なかなか表沙汰にならない動きを、丹念にまとめられており、とても貴重な資料。
この中で、注目すべきは、福島県楢葉町と、青森県東通村だ。
楢葉町は言うまでもなく福島第2原発のある場所。東通村は東通り原発のある場所。
いわば、毒を食らわば皿まで、ということ。なにせ、原発の地元は、極端に反対をしにくい場所だ。
どんなことであれ、原発に歯向かうことは村八分になる。少なくとも、3月11日までは。
だから、多くの場所は何やかんや言いつつ、とりあえずは撤回や拒否という結論が出ているのに、この2箇所は拒否という結論になっていない。つまり、現役の候補地なのである。
この点を見ても、原発直下が最終処分場という考えは、荒唐無稽でも陰謀論でもなく、もっとも確率の高い候補地として進められてきたことがわかる。
そうは言っても、やはり簡単にOKとはならない。
原発は大賛成の福島県知事や青森県知事も、さすがに高レベルの最終処分場に、ホイホイと諸手を挙げて賛成というわけには行かず、難航してきた。
しかし、そう言っている間にも、各原発の敷地内と、六ヶ所村に使用済み核燃料はたまり続けている。
もし3月11日以前のペースで原発を運転し続けると、候補地を決めるという2020年には、使用済み燃料が8000立米、廃液などが26300立米 たまることになるという。
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の改正について
50mプールで20杯近い高レベルの放射性廃棄物が、行き場をなくして日本中をさまようことになる。
なんとしても、どうしても処分場を確保しなければならない、というのが原発鬼たちの至上命題なのだ。
核廃棄物の最終処分場を探すのは、原子力発電環境整備機構(NUMO)という、候補地探しの専門組織で、電力会社からの拠出金で、年間1000億近い予算を持っている。
そのほとんどは候補が決まったときのための積立金で、なんと1兆円近い資金をプールしている。
年間の原子力関係の国家予算が全部で5000億円と言われているから、処分場にかける金額が、いかに巨額かが分かる。
と、こうやって核廃棄物の最終処分場さがしの実情を見てくると、福島第一原発の惨状の裏で、あの場所を処分場にしようとする動きがあっても、全然おかしくないということが、分かっていただけるだろう。
「原発推進の正体は『日本列島を核の墓場にする計画』だったのではないか」で書いたように、そもそも日本の原発というのが、事故→処分場 というシナリオを想定して作られていたかどうかはともかく、実質的に国に奪われてしまった福島第一原発の半径20キロが、高レベル核廃棄物の処分場にされようとしている、ということには、非常にリアリティがある。
「いくら何でも」 なんて優しいことを考えるのは普通の人の側であって、原発鬼どもにそんな優しい心根はない。
断じてない。一片もない。
■■ アメリカは自国で核廃棄物を処分する気はない
アメリカにももちろん、多くの原発がある。というか、世界で一番多い。104基もある。
これらを、どこかで処分しなくちゃいけないので、2009年まではネバダ州のユッカマウンテンサイトという場所に処分場を作ろうと、強引に進めてきた。
州の反対を押し切って、ブッシュ政権は作ろうとしていた。
それが、オバマになって一転。
計画を白紙にして、予算もゼロ。世界一の核のゴミを抱えながら、自国で処分する気は、まったくない。
米国における高レベル放射性廃棄物処分
ちなみに、アメリカには原発だけじゃなくて、核弾頭もある。核軍縮で、あまってしまった大量の核弾頭。
ソ連崩壊後から、急速に進んだ核軍縮で、現在兵器級のプルトニウムが250トンくらい在庫されているらしい。
兵器級のプルトニウムは、プルサーマルと称して原発のMOX燃料に加工されている。
兵器級のウランとプルトニウムをMOXに加工すると、100万kWの軽水炉50基を100年運転できるらしい。
((財)高度情報科学技術研究機構)
ところが、MOX燃料は、アメリカ国内では使用禁止。
じゃあどうするのかというと、国内では危険すぎるので、日本に売り込んで燃やしている というわけ。
日本でも、最初に使用したのは、東電でも関電でもなく、四国電力の伊方原発。
巨大な東電や関電は逃げをうった。
アメリカの中では、先住民族が住むネバダ州。それでも危険ならば、属国の日本。日本の中でも、大都市は田舎に押しつける。
核の問題は、かように差別に貫かれている。
その観点から考えたときに、アメリカの104基の使用済み核燃料を、どこへ捨てようとしているか、自ずと見えてくるのではないだろうか。
フクシマのあの事故を目の当たりにしながら、巨万のデモが起きない国。
遠く離れたドイツですら、何十万というデモが起きているのに、日本国内ではおとなし~く耐えている国。
首相官邸に謎のアメリカ人が居座っても、だれも追究しない国。
それどころか、各官庁に網の目のようにアメリカの手下が配置されて忠誠を誓っている国。
しかも、万が一のことがあっても、アメリカ本土には影響ないくらい遠くにある国。
さらに加えて、経済的にはアメリカに負担をかけずに自前で処分場を作る国。
こんな国が目の前にあるのに、なんで捨てに行かないのか そっちのほうが不思議。
外の目で見れば、そう見える。
見えざるを得ない。
■■ 技術的な問題
ただ、岩上さんも言っていた疑問は、原発の敷地では、津波の心配もあって無理ではないか、ということだった。
なにせ、最低でも10万年、本当に無害化するには100万年は核物質を保管し続けなくてはならない。
いくらデタラメな原発鬼たちといえども、津波のくる海岸線では説明がつかないだろう という疑問だ。
しかし、20キロというのは海岸線だけではない。
半径20kmというのが、どういう地域なのか、観念的にはよく分からないので、3D風に見るとこんな感じだ。

平地と山の境に南北に走っている県道35号線と、ちょど西へ20キロのあたりにある南北の谷は、活断層(赤い点線)。
地図の下の方に見える楢葉町が、2009年に「高ベル核廃棄物処分場」に立候補した町。
今でもその時の町長が現役のはず。
ところで、高レベル放射性廃棄物の最終処分というのは、どのようにするつもりなのか。
簡単に言うと、廃棄物をガラスで固めて、地下300mくらいの岩盤の隙間に埋める らしい。
津波と地震と火山の国で、どうやって地層処分などするのか、誰でも不安に思う。
これについて、(独)日本原子力研究開発機構 という研究の元締め組織は、こんな絵を示している。

ザックリ言うと、津波が来ない程度の内陸部で、火山から離れていて、活断層と活断層の中間部に、埋めるということらしい。
なにせ、活断層でも活断層じゃないと言い切り、活断層どころか、もっと親玉のプレート境界の上に原発を建ててしまう連中のやることだから、ちょっとやそっとのことでは「安全」ということになってしまう。
300mも埋めておけば、もし漏れても東京までは来ないだろう てなもんなのだろう。
それに、100万年先のことなんて、誰にもわかりはしない。
せいぜい、何十年か保ってくれれば、自分の責任は問われない ということだ。
ちなみに、他国ではもう少し深く埋める計画が多い。
フィンランドのオルキルオトに建設されているオンカロでも420mだ。
おそらくは、日本の場合あまり深く埋めると、斜めに走っている活断層にぶつかりやすくなり、なおさら地域が限定されるのだろう。
それと、日本人はおとなしい と見透かされていることもあるだろう。
まあ、とにかくこんな感じで、日本はヨーロッパのような安定した地盤じゃないと言うことを認めながら、それでも、可能な場所は広い、と前出の(独)原子力機構は言い切っているので、本気でやる気なのは間違いない。
「技術的な基準」など、候補地が決まってからその場所にあわせて決める くらいのことは、原発鬼どもは平気でやる。
そういう目で見ると、福島第一原発から20km圏内で、2本の活断層の間の山地は、原発鬼の目には、涎が出るほどオイシイ場所に見えるはずだ。
白河以北一山百文 とかつて差別された東北・福島が、いままた原発鬼どもの差別と利権と苦し紛れの妄動によって、恐るべき運命を強制されようとしている。
私にはそのように思えてならない。
■■ 政治的な問題
なぜ、メルトダウンを分かっていて放置したのか。
なぜ、ここまで情報を隠蔽し続けるのか。
なぜ、子どもに外部被曝だけで20mSvという殺人行為を国家が公然と行うのか。
なぜ、放射線量ではなく、20kmという距離で立入禁止にしたのか。
なぜ、情報を隠すことで実被害と風評被害を区別できなくして、風評被害を煽るのか
なぜ、外国から送ってもらった大量の線量計を成田に放置するのか
それらの疑問は、処分場計画と合わせて考えると、一つの方向へ進んでいるのが見えてくる。
国も東電も何とか機構も御用学者も、ぜんぶひっくるめて原発鬼は、一つの方向へ向かっている。
事情の分からない下っ端はともかく、菅をふくめて上層部は、およそ以下のような方向に向いているように思える。
・ まず、東京方面が汚染される水蒸気爆発や、大規模の再臨界による核爆発だけは避ける。
・ 周囲20キロを、合理的な理由なく危険だとして強制収容して、国有地にする。
・ 20キロ圏外には、ある程度の汚染は許容する。
・ ただし、100mSv以下は無害というデマで誤魔化せる程度でおさまることが望ましい。
・ 海への汚染も、無害というデマで言い逃れができる程度まではOK
・ したがって、民間での勝手な線量測定は極力許さない。グリーンピースなんてもっての他。
当面はそんな方針で、事故の収束へむけて何年かはジャージャーと水をかけ続け、燃料が尽きるのを待つのだろう。
原子炉にも格納容器にもダダ漏れの穴があいている以上、ダダ漏れで冷やし続けるか、外側に一回り大きな格納容器を作るしかない。が、そんなものは、作れるわけがない。
本来なら完全に水につかっていなければならない燃料棒を、上からジャージャーかけるだけで冷やせるのかどうか、冷温停止にできるのかどうか、これまた心許ない。
おそらく、崩壊熱がなくなるまでで、1年か2年か、ほとんど垂れ流しで水をかけ続けるしかないだろう。
ある程度は、冷却水の循環はできるようになるみたいだが、そもそもどこに穴があいているか分からないのだから、基本的にはダダ漏れ。
こうして、空中にも海中にも放射能は垂れ流しつつ、崩壊熱がおさまってくれるのを待つ。
その間に、20キロ圏より外には、補償しなくてすむことを、なんとか考える。
放出量を減らすこともするけれども、出てしまったものを「安全」ということにする、ことに全力をあげる。
海の汚染は、普通の人には測定しようがないから、大本営発表で誤魔化す。
たまに、グリーンピースなんかが調査をしに来たら、ナンクセつけて追い返す。
外部被曝の4~5倍もあるはずの内部被曝については、2%くらいということにして、誤魔化す。
なにせこれも、ホールボディカウンターなんてあまりないから、証明のしようがない。
できるだけ、ホールボディカウンターは使わせずに証拠を残さなければ、あとで甲状腺癌になっても、「因果関係が証明できない」と言える。
こうやって、意図的に危険を放置し、耐えられなくなった住民が「自主的に」いなくなってくれれば、好都合。
人払いをしておけば、数年後に処分場計画を進めるときに、反対がない。
つまり、子どもに20mSvはOKというのは、「出て行け」という意味。
それを理解できない住民のために、小佐古氏は泣いて辞任会見した。
小佐古氏には気の毒だが、あの会見は菅にとっては「想定内」
とにかく今は、放射能という実弾をぶっ放して、住民の追い出しを図る。
それに気がつかずに、弾に当たって死んでしまうよりも、早いこと「自費で」逃げ出して欲しい。
農漁業の補償だけ見ても、今年や来年のぶんはともかく、この先何十年の被害を補償することなんて、東電も国もまったく考えていない。
福島県だけでも農業生産は年に900億円以上ある。10年間マイナス50%で、被害額は4500億円にもなる。
漁業も年に180億。
しかし、東電や国は、最初の1年くらいはともかく、それ以降は、放射能を測定して基準値を超えた分しか補償しないだろう。
あとは、測定しきれない分もふくめて風評被害だ、と言って消費者に責任を押しつける。
そのためにも、風評被害を広めることは、国家の重大事。
枝野を筆頭に、せっせと情報隠しをして、実害と風評の境界線を見えなくし、風評被害の拡大に努めてきた。
とくに畜産農家には、放射能の濃縮が明らかになる前に、「自費で」出て行ってもらいたい。
こうやって、いま政治は、福島から、原発周辺から、できるだけカネを使わずに住人を追い出すことに、全力をあげている。
■■ 副島隆彦氏の主張について
最近になって、副島氏もこうした国の動きに注目し、処分場計画があるのではないかと言っている。
福島を棄民することへの抵抗を呼びかけてきた副島氏であるから、当然気がつかれるだろうと思ってはいた。
権力というものが、どんなに酷いことをするか、希望的観測によらずに分析する副島氏には、これまで多くのことを教えられてきたし、今もまた、他の論者にはない貴重な視点を提供していると思う。
が、しかし、彼の「安全だから帰っておいで」という呼びかけには、断じて同意できない。
生きる術をなくすよりは、ある程度の放射能は我慢するしかない、という理屈は、視点を限定すればあり得ることだと考える。
どういう限定かというと、権力者、為政者、加害当事者から発せられる言葉ではないということ。
同時に、安全圏にいる私たちの言葉でもない ということ。
つまり、被害当事者の人たちから出た言葉であるならば、否定しきることはできない。
それを副島氏も分かっているから、自分で原発の門まで出かけ、21キロ地点に事務所を構えて常駐するつもりなのだろう。
しかしそれでも、副島氏は被害当事者ではないし、その上、放射線量が「ある程度」という範囲を超えている。
特に、子どもにとっては。

(小出裕章氏 講演資料より)
私たちのような年齢になれば、生きる術と放射能を天秤にかけて考えることもあり得るかもしれないが、これから子どもを産む世代を含めて、子どもたちには浴びて欲しくない。
しかも、文科省が言う被ばく量は、放射性物質を吸い込んだり食べたりする内部被曝は、考えられていない。無視されている。
特殊なマスクをして、食べ物をよほど気をつけない限り、外部被ばく量の4~5倍は内部被曝がある。
同じ文科省が出しているSPEEDIの試算で、そのような計算をしているのに、例の20mSvは大丈夫と言うときには、内部被曝は無視。
つまり、外部被曝で20mSvも浴びているときには、内部も含めると100mSvになる ということ。
それが子どもであるならば、リスクは3倍も4倍もある。
つまり、大人の被ばく量に換算すると、300mとか400mSvも浴びたのと同じと言うことだ。
いくら住民追い出しのために、半ば意図的に垂れ流しにされている放射能だからと言って、やはり放射能は放射能だ。
危険なことには変わりがない。
変な言い方になるが、その場で決着が着く銃弾よりも、もっと始末が悪い。
まして、子どもには何の責任もない。
ざっとした見方で言うと、子どもの場合、毎時の○○μSvというガイガーカウンターの数字を、10万~20万倍した数字が年間の被ばく量相当ということになる。
○○ x 24時間 x 5倍(内部被曝) x 5(感受性) x 365 x 減衰率
減衰を50%くらいにすれば10万倍、ほとんど見なければ20万倍。
仮に10万倍としても、単位を一つあげて(マイクロをミリ)、数字を100倍することになる。
たとえば、毎時3μSv → 年間300mSv(相当)
放射線をぶっ放して住民追い出しを謀る東電と菅内閣(とその背後にいるアメリカ)の、言いなりになるようなことは、確かに悔しいけれども、そうは言っても危ないものは危ない。
50代以上は、ある程度の危険を覚悟で戻ろうというのならば、分からないでもないが、子どもたちは何とかして助けなくてはならない。
■■ いま求められているのは
いま、緊急に求められているのは、何よりも子どもたちの保護だ。
事故の収束事態は、現実の問題として、何年かは今のような状態が続くだろう。
緊急に放射能を止めろと言っても、できるわけがない。
だからこそ、子どもたちを保護しないと、チェルノブイリの子どもたちの悲劇が繰り返される。
20mSvという基準ももちろんだが、基準だけを変えても、行き場のなくなる子どもが生まれるだけだ。
子どもとその親を、緊急に避難させる手立てを、当面の収入補償という面も含めて取らなくてはならない。
福島県の20歳以下は40万人。
福島全域でないとしても、茨木北部や宮城南部も含めて、約40万。
どの範囲かは、肥田舜太郎先生など、御用学者ではない被曝の専門家によって検討が必要だろう。
少なくとも、県の中心である福島氏や郡山市などは、1.4μSv/時であるから、あきらかにリスクが高い
親も含めて80万人の避難なんて、非現実的だと思えるかもしれない。
が、今起きているのは、そのくらい非現実的と思えるくらいの、とんでもない事態だ。
爆発こそしないけれども、なにせ3つの原子炉に穴があいて、放射能がダダ漏れなのだ。
希望的観測で、現実を歪めて見てはいけない。
■■ 政治の力が必要
そして、今、どうしても必要なことをやろうと思ったら、菅直人ではダメだ。
アメリカに魂を抜かれた男に任せていては、悲劇はどんどん広がっていく。
分かっている情報ですら隠されたまま、大本営発表で子どもたちが殺されていく。
情報の隠蔽と証拠の隠滅だけに勢力を傾けながら、着々と処分場へと計画を進めていくだろう。
その過程で、どれだけの子どもが犠牲になろうと、お構いなしだ。
「自費で」逃げないのがわるいんだ と開き直るつもりだ。
いくら危険だと分かっても、経済的な補償がなくては、そう簡単に逃げられるものではない。
絶対に政治の力がなくては、子どもたちを救うことはできない。
それも、相当の額が必要。
仮に1組に月10万としても、年に5000億円必要だ。
最低限2年間は避難したとして、1兆円。
この程度の金額は、官僚が貯め込んでいる特別会計のがま口を開けば、出てくる。
特に、永続的なオカネではないだけに、充分に賄える。
それができるのは、政治の力しかない。
私は小沢一郎万能論者ではないが、政治の力で子どもたちを守るためには、小沢氏に決断してもらうしかないと思っている。
菅直人に対しては、裏で脅迫して、表で花道を用意してやるくらいのワザを使ってでも、内閣不信任に対して解散をさせないように持ち込まなくてはならない。
国民の生活はおろか、被災者の生活さえも自分のクビのためには犠牲にする菅直人は、内閣不信任を突きつけたら、本当に解散総選挙をやりかねない。
それだけは避けないと、全ての犠牲をかぶるのは、被災者だ。
おそらく、そこで倒閣の動きも足踏みしているのだろう。
それを側面からプッシュするためにも、自分の選挙区の国会議員にも、FAXなどで要望を送ろうと思う。
衆議院議員
参議院議員
菅直人らについていく議員が少なくなればなるほど、当然ながら対菅工作はやりやすくなるはずだ。
そして、残念だけれども、表向きは菅を打倒するのではなく、花道をつけてやって退場させるようにすることだ。
そうしないと、まるで敗戦直前の日本のように、狂気の沙汰で足掻きまくる恐れがある。
今重要なことは、被災者、なかでも放射能を日々浴び続けている福島の子どもたちを、財政的に支えながら避難させることだ。
そのための、政治の力を実現することだ。
それでももし、絶望的に菅直人が政権にしがみつくとしたら、それはやはり、フクシマを核廃棄物処分場にしようという、ものすごく巨大な力が働いているということ。
それをはね返すには、脱原発のうねりのような国民運動が必要だ。
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小出:参議院行政監視委員会での発言
2011-05-24
「Monipo blog」から
5/23 参議院行政監視委員会での小出氏の発言
小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教) 安全ゼミ資料
まず、私自身は原子力に夢を持って、原子力に夢を抱いて、原子力工学科というところに入った人間です。
なぜそんなことになったかというと、原子力こそ未来のエネルギー源だと思ったからです。無尽蔵にあると、石油や石炭は枯渇してしまうから将来は原子力だということを信じてこの場に足を踏み入れた人間です。
しかし入ってみて調べてみたところ、原子力というのは大変貧弱な資源だという事に気付きました。
今これからこのスライドに再生不能のエネルギー資源というものの量を順番に書いていこうと思います。
まず、一番多い資源は石炭です。
え、大変膨大に地球上にあるということがわかっています。
しかし今書いた四角は究極埋蔵量です。
実際に経済的に掘れるとわかっているのは確認埋蔵量といわれているわけですが、この青い部分だけだという事です。
この四角が一体どれくらいの事を意味しているかというと右の上にちいちゃな四角を書きましたが、これは世界が1年ごとに使っているエネルギーの総量です。
石油の現在の確認埋蔵量だけで言っても、数字で書くとこんな事になりますが、60年、70年はあるし、究極埋蔵量がすべて使えるとすると800年近くあるというほど石炭はたくさんあることがわかっています。
その次に天然ガスもあることがわかっている、石油もある。
そしてオイルシェール・タールサンドといっている現在あまり使っていない資源があるということがすでにわかっているわけです。
そして、私自身はこういう化石燃料というものがいずれ枯渇してしまうから原子力だと思ったわけですが、原子力の資源のウランは実はこれしかないのです。
石油に比べても数分の1、石炭に比べれば数十分の1しかないという、大変貧弱な資源であったわけです。
ただ、私がこれを言うと、原子力を進めてきた行政サイドの方々はそれはちょっと違うんだ。と。そこに書いたのは核分裂性のウランの資源量だけを書いただろう。実は自分達が原子力で使おうと思っているのは、核分裂性のウランではなくてプルトニウムなんだと。いうわけです。つまり非核分裂性のウランをプルトニウムに変換して使うからエネルギーとして意味があることだということを言っているわけです。
どういうことかというとこういうことです。
まず、ウランを掘ってくるという事はどんな意味としても必要です。
それを濃縮とか加工という作業を行って原子力発電所で燃やすと。
これが現在やっていることなわけです。
しかし、これを幾らやったたところで、いま聞いていただいたように原子力はエネルギー資源にはならないのです。
そこで原子力を推進している人たちはこんな事ではないと言っているわけですね。
ウランはもちろん掘ってくるわけですけどあるところからプルトニウムというものにして高速増殖炉という特殊な原子炉をつくってプルトニウムをどんどん増殖させていくと。
それを再処理とかしながらぐるぐる核燃料サイクルで回しながらエネルギー源にするんだ言ったわけですね。
で、最後は高レベル放射線廃棄物という大変厄介なごみがでてきますので、それをいつか処分しなければいけないという仕事を描いたわけです。
ただ、プルトニウムという物質は地球上に一滴もないので、仕方ないので現在の原子力発電所から出てくるプルトニウムというのを再処理して高速増殖炉を中心とする核燃料サイクルに引き渡すというこういう構想を練ったわけです。
しかし、その構想の一番中心が高速増殖炉にあるわけですが、この高速増殖炉は実はできないのです。
日本の高速増殖炉計画がどのように計画されて破綻して言ったかということを今からこの図に示そうと思います。
横軸は1960から2010まで書いてありますが西暦です。
え、何をこれから書くかというと、原子力開発利用長期計画というものが出来た年度を横軸にしようと思います。縦軸のほうは1980から2060まで数字が書いてありますが、これはそれぞれの原子力開発利用長期計画で高速増殖炉がいつ実用化できるかという風に考えたかというその見通しの年度を書きます。
原子力開発利用長期計画で一番最初に高速増殖炉に触れられたのは、第三回の長期計画。1968年でした。その時の長期計画では、高速増殖炉は1980年代の前半に実用化すると書いてある。
ところが、しばらくしましたら、それは難しいという事になりまして、次の原子力開発利用長期計画では1990年前後にならないと実用化できないと書き換えました。
それもまたできなくて5年経って改定された時には高速増殖炉は2000年前後に実用化すると書き換えたわけです。
ところがこれも出来ませんでした。
次の改定では2010年に実用化すると書きました。
これも出来ませんでした。
次は2020年代にもう実用化ではありません。技術体系を確立したいという目標に変わりました。
ところがこれも出来ませんでした。
次には2030年に技術体系を確立したいということになり、では次の長期計画でどうなったかといいますと、2000年に長期計画の改訂があったのですが、とうとうこのときには年度を示す事も出来なくなりました。
私はしかたなくここにバッテンをつけました。
そしてまた5年後に長期計画が改定されまして、今度は原子力政策大綱というような名前に改定されましたが、その改定では2050年に1機目の高速増殖炉をとにかく造りたいという計画になってきたわけです。
みなさんこの図をどのようにご覧になるのでしょうか。
私はここに一本の線を引きました。
どんどんどんどん目標が逃げていく事がわかっていただけると思います。
この図は縦軸も横軸も1マスが10年で、この線は何を示しているかというと10年経つと目標が20年先に逃げる。ということです。
10年経って目標が10年先に逃げたら絶対にたどり着けません。
それ以上に酷くて10年たつと20年先に目標が逃げていくわけですから永遠にこんなものにはたどり着けないという事をわからなければいけないと私は思います。
ところが、こういう長期計画を作ってきた原子力委員会というところ、あるいはそれを支えてきた行政は一切責任を取らないという事で今日まで来ているわけです。
日本はもんじゅという高速増殖炉という原型炉だけでもすでに一兆円以上の金を捨ててしまいました。現在の裁判制度で言うと1億円の詐欺をすると1年実刑になるそうです。
では一兆円の詐欺をしたら何年実刑をくらわなければいけないか。一万年です。
原子力安全委員会、あるいは経産省、通産省等々行政に関わった人の中でもんじゅに責任ある人が何人いるのか私は良く知りません。
でも仮に100人だとすれば一人ひとり100人実刑を処さなければいけないというそれほどの事をやってきて、結局だれも未だに何の責任も取らないままいるというそういうことになっているのです。
原子力の場というのは大変異常な世界だと私には思えます。
次はいま現在進行中の福島の事故の事を一言申し上げます。
みなさんはご存知だと思いますけれど、原子力発電というのは大変膨大な放射能を取り扱うというそういう技術です。
いまここに真っ白なスライドがありますが、左の下のほうに今私は小さい四角を書きました。これは何かといいますと広島の原爆が爆発したときに燃えたウランの量です。800グラムです。みなさんどなたでも手で持てる、それくらいのウランが燃えて広島の町が壊滅したわけです。
では原子力発電の電気も原子力発電所から来ているわけですけれどこれをやるために一体どのくらいのウランを燃やすかというと、一つの原子力発電所が1年動くたびに1トンのウランを燃やすと、それほどの事をやっているわけです。
つまりそれだけの核分裂生成物という放射性物質を作り出しながらやっているということになります。
原発は機械です。機械が時々故障を起こしたり、事故を起こしたりするのは当たり前の事です。
原発を動かしているのは人間です。人間は神ではありません。時には誤りも犯します。当たり前のことなわけです。
私達がどんなに事故が起こって欲しくないと願ったところで、破局的事故の可能性は常に持っています。いつか起きるかもしれない。という事になっているわけです。
そこでじゃ、原子力推進する人たちがどういう対策を取ったかというと、破局的事故はめったに起きない。そんなものを想定する事を想定する事はおかしい。想定不適当という烙印を押して無視してしまうという事にしたわけです。
どうやって、破局的事故が起きないかというと、これは中部電力のホームページから取ってきた説明文ですけれど、たくさんの壁があると、放射能を外部に漏らさないための壁があるといっているのですが、このうちで特に重要なのは第四の壁というところに書いている原子炉格納容器という入れ物です。
巨大な鋼鉄製の容器ですけれど、これが何時いかなる時でも放射能を閉じ込めるというそういう考え方にしたわけです。原子炉立地審査指針というものがあって、その指針に基づいて重大事項仮想事故というかなり厳しい事故を考えていると彼らは言うわけですけれど、そういう事故では格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁は絶対に壊れないとそういう仮定になってしまっているのです。
絶対に壊れないなら放射能は出るはずはないということになってしまいますので、原子力発電所はいついかなる時でも安全だと。放射能の漏れてくるような事故を考えるのは想定不適当。想定不適当事故という烙印を押して無視する事にしたわけです。
ところが破局的事故が起きて現在進行中です。
大変なあの悲惨な事がいま福島を中心に起きているという事はたぶん皆さんもご承知いただいていることだと思います。
ただ、その現在進行中の事故にどうやって行政が向き合ってきているかということについても大変不適切な対応が私はたくさんあったと思います。
防災というものの原則は、危険を大きめに評価してあらかじめ対策を取って住民を守ると。もし危険を過大に評価していたのだとしたら、これは過大だった、でも住民に被害を与えなくて良かったと、胸をなでおろすとそれが防災の原則だと思いますが、実は日本の政府がやってきたことは、一貫して事故を過小評価して楽観的な見通しで公表してきました。
国際事故評価尺度で当初レベル4だと、いうような事を言ってずっとその評価を変えない。レベル5といったことはありましたけれど。最後の最後になってレベル7.あまりにも遅い対応の仕方をしている。
避難区域に関しても一番初めは3キロメートルの住民を避難指示出す。これは万一の事を考えての指示です。といったのです。
しかし、しばらくしたら今度10キロメートルの人たちに避難指示を出しました。これは万が一の事を考えての処置だと言ったのです。
ところがそれからしばらくしたら、20キロメートルの人たちに避難指示を出しました。その時もこれは万一の時を考えての指示です。といいながらどんどんどんどん後手後手に対策がなっていったという経過を辿りました。
私は、パニックを下げる唯一の手段というのは正確な情報を常に公開するということだと思います。
そうして初めて行政や国が住民から信頼を得る。そしてパニックを回避するんだと私は思ってきたのですが、残念ながら日本の行政はそうではありませんでした。
常に情報を隠して、危機的な状況じゃないという事を常に言いたがる。
SPEEDIという100億円以上のお金をかけて25年もかけて築き上げてきた事故時の計算。
それすらも隠してしまって住民には知らせないということをやったわけです。
それから、現在まだ続いていますが、誰の責任かを明確にしないまま労働者や住民に犠牲を強制しています。
福島の原発で働く労働者の被曝の限度量を引き上げてしまったり、あるいは住民に対して強制避難をさせる時に基準を現在の立法府が決めた基準とは全く違ってまた、引き上げてしまう、というようなことをやろうとしている。
本当にこんな事をやっていていいのだろうか?と私は思います。
現在進行中の福島の原発事故の本当の被害っていったいどれだけになるんだろうかと私は考えてしまうと、途方にくれます。
失われる土地というのはもし、現在の日本の法律を厳密に適応するのなら福島県全域といってもいいくらいの広大な土地を放棄しなければならないと思います。
それを避けようとすれば住民の被曝限度を引き上げるしかなくなりますけれど、そうすれば住民たちは被曝を強制されるという事になります。
一次産業はこれからものすごい苦難に陥るようになると思います。農業・漁業を中心として商品が売れないという事になる。そして住民達は故郷を追われて生活が崩壊していくという事になるはずだと私は思っています。
東京電力に賠償をきちっとさせるという話はありますけれども、東京電力がいくら賠償したところで足りないのです。
なんど倒産してもたぶん足りないのです。日本国が倒産してもたぶん購いきれないほどの被害が私は出るのだろうと思っています。本当に賠償するのならばということです。
最後になりますが、ガンジーが7つの社会的罪という事を言っていて、彼のお墓にそれが碑文として残っています。
一番初めは「理念無き政治」です。
この場にお集まりの方々は政治に携わっている方々ですので十分にこの言葉をかみ締めていただきたい。
そのほかたくさん「労働無き富」「良心無き快楽」「人格無き学識」
「道徳無き商業」これは東京電力をはじめとする電力会社に当てはまると私は思います。
そして「人間性無き科学」。これは私も含めたいわゆるアカデニズムの世界がこれまで原子力に丸ごと加担してきたということを私はこれで問いたいと思います。
最後は「献身無き崇拝」宗教をお持ちの方はこの言葉もかみ締めていただきたいと思います。
終わりにいたします。有難うございました。
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発表を制止された参照資料
講演会での参照写真
安全ゼミ資料の13ページ目
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◆参院行政監視委の参考人:
京都大学原子炉実験所助教 小出 裕章君
芝浦工業大学非常勤講師 後藤 政志君
神戸大学名誉教授 石橋 克彦君
ソフトバンク株式会社代表取締役社長 孫 正義君
行政監視委員会理事会 午後零時五十分 第四十三理事会室
須磨ビーチ猫通信から 質疑応答
Q:水蒸気爆発が何機かで起こっている。しかしどれだけの放射性物質が大気に放出されたかが明らかになっていない。
どの位の量の放射性物質が出るのか?
小出氏:起きたのは水素爆発。1~4全ての号機で水素爆発。格納容器は一定程度閉じ込め機能を持っている。
どれだけの放射能が漏れたかは行政が様々なデータを持っているはずだ。
何百種類の放射性物質がある。漏れたのは揮発性の物を中心で、中に有った物の10%程度だろう。
Q:原子炉にどの位の燃料が入っているのか?
小出氏:1機当たり広島原発1000発~2000発分の放射性物質を蓄えていると考えて欲しい。
Q:圧力容器が最悪の状態になって壊れれば、どんな事が想定されるのか?
小出氏:水蒸気爆発が起きる事。原子炉の不揮発性の物まで出てくるだろう。
後藤氏:原子炉容器が壊れる確率は大きいとは言わないが、古い物は比較的可能性高い。
事故時に爆発的なエネルギーがかかれば有り得るだろう。
Q:半径20キロを警戒区域、20キロ以上浪江長などを計画的避難区域、緊急時避難区域に指定。これは妥当か?
後藤氏:放射能の漏れ出し方による。爆発の規模など。
Q:全ての原発は全てリスクが有るというが、リスクの順位について議論はされているか?
石橋氏:行われていない。浜岡以外の原発のリスクはゼロ、という事になっているだろう。
保安院、安全委以外の第三者的機関を作り、リスクの順位付けするよう国会で議決して欲しいくらい。
Q:脱原発戦略は21世紀で最も大事なのはエネルギー貯蔵技術では?
孫氏:大規模電気貯蔵技術はどうしてもコスト高。揚水発電など。
しかし各家庭で貯蔵すれば低コストでいけるだろう。
スマートグリッドの考え方。様々な発電方法を切り替え。
Q:国会に事故調査委員会設けるべきでは?
例えば政府、行政の意志決定の過程を明確にする事、保安院、安全委の在り方を明確にする事、キャリアシステムという人事を見直すなど。
何を優先させるべきか?
小出氏:議会に調査機関を作ることは有難いが、一番必要だと思う事は、福島第一を迅速に収束させる事。
作業員の被ばくを減らし、住民の苦しみを減らす事。それから事故の原因を調査すれば良い。
東電は原発のリスクを過疎地に押し付けてきた。この不正を問うて欲しい。
後藤氏:現在動いている原発のリスクを早急に評価しながら事故原因を究明すべき。
利権が絡んでいたら駄目。安全を追求するときは利害関係がないものがやるべき。
石橋氏:明日にも別の原発が事故を起こすか分からない。議会で調査機関が出来るのは有難い。
どの議論も優劣つけがたい。全てやって欲しい。海外から専門家を呼ぶ傾向があるが、日本の人材を使えば良い。
大手のマスコミは原発に疑問を投ずる人材を無視してきた。
Q:省エネについて、どう考えるか?
孫氏:大変重要。ピーク時の電気が一番コスト高。ピークカット、ピークシフトをどうするかが重要。
例えば電気料金を一律値上げでなく、ピークシフトを考慮に入れれば良い。ピーク時は電気料金高くする、など。
産業活動についても、電気使用を計画的に行うようになるような電気料金政策はどうだろう。
Q:原子力業界は情報開示が徹底してなされなかった。原発行政に対する情報公開の度合いについてどう思うか?
小出氏:1973年の秋から伊方原発の裁判に参加、国に資料を要求したが、国の出す資料はほとんど白抜き。
原子力は「企業秘密」「核開発」を口実に情報公開に馴染まない。
今回も3月15日に東京の空気中の放射性物質の測定をした。チェルノブイリ事故の時よりかなり高かった。
行政はそのデータを持っていたはずだが出てこなかった。また原子炉実験所長が「パニックが起きるから公開するな」と言った。
行政は厳しく統制したのだろう。名前は明かせないが、圧力がかかって同僚でも測定値の発表が出来ない人が多かった。
後藤氏:「企業秘密」という事で、設計の数字を出さない事がある。こと原子力に関しては安全性が極めて重要。
しかし実際は安全の事をきちんと考えてない。
スリーマイル、チェルノブイリ後もシビアアクシデントは日本では存在してはいけなかった。
設計想定を超える事故は「想定外」としており、国外ではいぶかしがられた。
原子力にはそういう事例が多かった。
Q:財政が破たんしている。復興はどうするのか?地震学の観点、経済の観点から意見を。
石橋氏:防潮堤や防波堤が役に立つのか一律には答えにくい。役に立つ場合もあるだろう。
首都圏直下の大地震、西日本の巨大地震などの危険性がある。
大自然の摂理に逆らわずに人間が適応しなければならない面がある。
今こそ国土を分散型に、発電機能も分散型にすべきではないか。
孫氏:どんな大きな防波堤を作っても防ぎきれない災害が来る可能性はある。
民家は出来るだけ山沿いに建て、沿岸部には太陽光パネルを置くなど自然に合わせて生活するのが良いだろう。
塩害などですぐに利用出来ない土地の買い上げ時に価格を上乗せすれば、復興、雇用創出など出来るのでは。
Q:「東海地震の可能性が高いので浜岡原発を止める」のはおかしいという議論があるが、これはどうか?
石橋氏:大多数の地震学者が高い確率で地震が起きるだろう、という点で一致している。
87%という数字自体はよく分からないが、止める事はおおむね間違っていない。
後藤氏:シビアアクシデント時には相当専門性が高くなるのでなかなか。
小出氏:権限を持った調査機関が必要だと思う。それは原子力安全委員会であったが、実際は機能していなかった。
構成し直す必要がある。保安院も経産省の中に在って推進する組織でしかない。原子力村に囲い込まれてしまった。
石橋氏:権限を持った機関が必要と思う。アメリカのNRCのような。安全委は1999年のJCOで今回よりもう少し活躍した。
今回駄目だったのは、中央省庁再編で安全委員会は牙を抜かれたようなところがあるため。
経済産業省に推進と規制が集中した。
小出氏:福島第一を収束出来るかどうかという点について。思っていた以上に状況は悪化している。
冷却は必要だったが、そのため汚染水が大量に発生した。当初から循環式冷却装置を作るべきと言ってきた。
しかしもうその循環回路が出来そうにないと思う。圧力容器、格納容器が破損しているから。
現在の状況を厳しく評価、専門家を集めていかなければならないと思う。
1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはならない、4万ベクレル/平方メートル以上は放射線管理区域、という被曝に関する法規制がある。
それを厳密に適用すれば、福島は無人化しなければいけなくなるだろう。
しかし人々の故郷を奪う事になる。どういう施策が良いのか真剣に考えて欲しい。
後藤氏:人的ミスについて。ヒューマンエラーは前提で、設計の中に織り込んでおかなければならない。
技術でカバーする必要。人的ミスを事故原因にしてしまうというよりは、要素の一つと考えている。
石橋氏:3月11日の地震の前から地震付き原発だと判っている物は全国に多くある。
今回の事故でそれが明確になって来たと思う。どの原発を止めろと私が言うのは僭越。
孫氏:原発事故は起きてしまった。新たに起きるのを防ぐというのが議論すべき事。
福島の子供達を過酷な環境に置いておくのはいけない。
代替エネルギーを早急に作るべきだ。風力エネルギー構築のための環境アセスメントの最後の番人は、保安院。
代替エネルギーを潰してきたのでは、という気がする。
地熱発電についても有力候補地の8割は国定公園の中にある。
Q:原発事故の初期対応について、どう思われるか?
後藤氏:海水注入は当たり前。躊躇したとしても理由がはっきりしないので解らない。
小出氏:京大原子炉実験所で働いているが、事故が起こる可能性は勿論ある。その事故を収束させる知識は所員が持っている。
福島第一でも収束させる知識は現場の人が持っていたはず。本店や政府がいい加減な知識で口を挟むのはおかしいだろう。
現場をサポートする事が必要だっただろう。そういう体制を作って欲しい。
Q:次止めるべき原発は、個人的にはどれか?
石橋氏:正確な予測は出来ない。心配なのは若狭湾。古い物が心配。35~40年を超える物。
福島第一と同じ沸騰水型も。
Q:日本の電力は風力、水力太陽光をやっていく事が大事ではないか、これについてどう思うか?
孫氏:ベストミックスを見付ける事が大事。分散型で、それをスマートグリッドで繋ぐ。
Q:若狭、敦賀付近で地震や津波があったという記憶が県民の中にない。議事録を見せてはっきり言いたいので宜しく。
石橋氏:越前海岸、舞鶴の辺りまで。この辺りは地震の活動帯。他にも色々ある(すみません)。
という訳で、次かどうかは分かりませんが、若狭湾が危険なのは間違いない。
Q:独自に放射能を測定したというが、その数値は?
小出氏:3月18日のセミナーで公表。ホームページにも公開。ヨウ素、テルル、セシウム。東京の空気の数百ベクレル/立法メートル。
チェルノブイリ事故時の東京の数千倍。その空気を1時間吸えば20マイクロシーベルト内部被曝。空間線量は2マイクロシーベルト/時だった。
個人や研究機関が計測しているだろうからそれを集めるのは、本来安全委員会であるはずだった。
孫氏:事故直後の数値は分からない。都内新宿は大体0.07マイクロシーベルト/時で政府発表されている。
しかし概ねその倍くらいの数字が自分の測定器で出る。これは政府はガンマ線だけを測っているからではないか?
一番怖い内部被曝を公表しないのは何か意図があるのか。
税関で測定器が500台止まっているのは実に勿体無い。
Q:原子力村の人々から官邸に正確な情報が上がって来ないのは、利権を守ろうとする構造的な問題だろうと思う。
今後組織の改編が不可欠と思う。保安院を経産省から切り離して安全委と統合しても駄目と思う。
どのような組織再編が望ましいと考えるか?
たじま政務官:誰かがサボっていたというよりは構造的な問題だろう。
しかしどういう組織を構築するかの議論は始まっていない。
とにかく規制する側と規制される側が一体となっているのは問題。
Q:東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発がある。このリスクを避けるためには、浜岡を止める事が必要になるだろう。
しかし実際には防潮堤の増設。なぜ原発の停止ではなく増設になったのか?
たじま政務官:中部電力は特におかしな事をした訳ではない。法令上の安全基準は満たしていた。
更なる安心のために停止したのみ。安全性が確認されれば運転の再開は可能であると考えている。
Q:「制御された安全」と「本質的安全」との違いは?
石橋氏:例えば飛行機は「制御された安全」で飛んでいる。
「本質的安全」は乗らない事で得られる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
(もうすぐ北風)
書き起こしされたmonipo blog様、須磨ビーチ猫通信様に感謝申し上げます。
5/23 参議院行政監視委員会での小出氏の発言
小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教) 安全ゼミ資料
まず、私自身は原子力に夢を持って、原子力に夢を抱いて、原子力工学科というところに入った人間です。
なぜそんなことになったかというと、原子力こそ未来のエネルギー源だと思ったからです。無尽蔵にあると、石油や石炭は枯渇してしまうから将来は原子力だということを信じてこの場に足を踏み入れた人間です。
しかし入ってみて調べてみたところ、原子力というのは大変貧弱な資源だという事に気付きました。
今これからこのスライドに再生不能のエネルギー資源というものの量を順番に書いていこうと思います。
まず、一番多い資源は石炭です。
え、大変膨大に地球上にあるということがわかっています。
しかし今書いた四角は究極埋蔵量です。
実際に経済的に掘れるとわかっているのは確認埋蔵量といわれているわけですが、この青い部分だけだという事です。
この四角が一体どれくらいの事を意味しているかというと右の上にちいちゃな四角を書きましたが、これは世界が1年ごとに使っているエネルギーの総量です。
石油の現在の確認埋蔵量だけで言っても、数字で書くとこんな事になりますが、60年、70年はあるし、究極埋蔵量がすべて使えるとすると800年近くあるというほど石炭はたくさんあることがわかっています。
その次に天然ガスもあることがわかっている、石油もある。
そしてオイルシェール・タールサンドといっている現在あまり使っていない資源があるということがすでにわかっているわけです。
そして、私自身はこういう化石燃料というものがいずれ枯渇してしまうから原子力だと思ったわけですが、原子力の資源のウランは実はこれしかないのです。
石油に比べても数分の1、石炭に比べれば数十分の1しかないという、大変貧弱な資源であったわけです。
ただ、私がこれを言うと、原子力を進めてきた行政サイドの方々はそれはちょっと違うんだ。と。そこに書いたのは核分裂性のウランの資源量だけを書いただろう。実は自分達が原子力で使おうと思っているのは、核分裂性のウランではなくてプルトニウムなんだと。いうわけです。つまり非核分裂性のウランをプルトニウムに変換して使うからエネルギーとして意味があることだということを言っているわけです。
どういうことかというとこういうことです。
まず、ウランを掘ってくるという事はどんな意味としても必要です。
それを濃縮とか加工という作業を行って原子力発電所で燃やすと。
これが現在やっていることなわけです。
しかし、これを幾らやったたところで、いま聞いていただいたように原子力はエネルギー資源にはならないのです。
そこで原子力を推進している人たちはこんな事ではないと言っているわけですね。
ウランはもちろん掘ってくるわけですけどあるところからプルトニウムというものにして高速増殖炉という特殊な原子炉をつくってプルトニウムをどんどん増殖させていくと。
それを再処理とかしながらぐるぐる核燃料サイクルで回しながらエネルギー源にするんだ言ったわけですね。
で、最後は高レベル放射線廃棄物という大変厄介なごみがでてきますので、それをいつか処分しなければいけないという仕事を描いたわけです。
ただ、プルトニウムという物質は地球上に一滴もないので、仕方ないので現在の原子力発電所から出てくるプルトニウムというのを再処理して高速増殖炉を中心とする核燃料サイクルに引き渡すというこういう構想を練ったわけです。
しかし、その構想の一番中心が高速増殖炉にあるわけですが、この高速増殖炉は実はできないのです。
日本の高速増殖炉計画がどのように計画されて破綻して言ったかということを今からこの図に示そうと思います。
横軸は1960から2010まで書いてありますが西暦です。
え、何をこれから書くかというと、原子力開発利用長期計画というものが出来た年度を横軸にしようと思います。縦軸のほうは1980から2060まで数字が書いてありますが、これはそれぞれの原子力開発利用長期計画で高速増殖炉がいつ実用化できるかという風に考えたかというその見通しの年度を書きます。
原子力開発利用長期計画で一番最初に高速増殖炉に触れられたのは、第三回の長期計画。1968年でした。その時の長期計画では、高速増殖炉は1980年代の前半に実用化すると書いてある。
ところが、しばらくしましたら、それは難しいという事になりまして、次の原子力開発利用長期計画では1990年前後にならないと実用化できないと書き換えました。
それもまたできなくて5年経って改定された時には高速増殖炉は2000年前後に実用化すると書き換えたわけです。
ところがこれも出来ませんでした。
次の改定では2010年に実用化すると書きました。
これも出来ませんでした。
次は2020年代にもう実用化ではありません。技術体系を確立したいという目標に変わりました。
ところがこれも出来ませんでした。
次には2030年に技術体系を確立したいということになり、では次の長期計画でどうなったかといいますと、2000年に長期計画の改訂があったのですが、とうとうこのときには年度を示す事も出来なくなりました。
私はしかたなくここにバッテンをつけました。
そしてまた5年後に長期計画が改定されまして、今度は原子力政策大綱というような名前に改定されましたが、その改定では2050年に1機目の高速増殖炉をとにかく造りたいという計画になってきたわけです。
みなさんこの図をどのようにご覧になるのでしょうか。
私はここに一本の線を引きました。
どんどんどんどん目標が逃げていく事がわかっていただけると思います。
この図は縦軸も横軸も1マスが10年で、この線は何を示しているかというと10年経つと目標が20年先に逃げる。ということです。
10年経って目標が10年先に逃げたら絶対にたどり着けません。
それ以上に酷くて10年たつと20年先に目標が逃げていくわけですから永遠にこんなものにはたどり着けないという事をわからなければいけないと私は思います。
ところが、こういう長期計画を作ってきた原子力委員会というところ、あるいはそれを支えてきた行政は一切責任を取らないという事で今日まで来ているわけです。
日本はもんじゅという高速増殖炉という原型炉だけでもすでに一兆円以上の金を捨ててしまいました。現在の裁判制度で言うと1億円の詐欺をすると1年実刑になるそうです。
では一兆円の詐欺をしたら何年実刑をくらわなければいけないか。一万年です。
原子力安全委員会、あるいは経産省、通産省等々行政に関わった人の中でもんじゅに責任ある人が何人いるのか私は良く知りません。
でも仮に100人だとすれば一人ひとり100人実刑を処さなければいけないというそれほどの事をやってきて、結局だれも未だに何の責任も取らないままいるというそういうことになっているのです。
原子力の場というのは大変異常な世界だと私には思えます。
次はいま現在進行中の福島の事故の事を一言申し上げます。
みなさんはご存知だと思いますけれど、原子力発電というのは大変膨大な放射能を取り扱うというそういう技術です。
いまここに真っ白なスライドがありますが、左の下のほうに今私は小さい四角を書きました。これは何かといいますと広島の原爆が爆発したときに燃えたウランの量です。800グラムです。みなさんどなたでも手で持てる、それくらいのウランが燃えて広島の町が壊滅したわけです。
では原子力発電の電気も原子力発電所から来ているわけですけれどこれをやるために一体どのくらいのウランを燃やすかというと、一つの原子力発電所が1年動くたびに1トンのウランを燃やすと、それほどの事をやっているわけです。
つまりそれだけの核分裂生成物という放射性物質を作り出しながらやっているということになります。
原発は機械です。機械が時々故障を起こしたり、事故を起こしたりするのは当たり前の事です。
原発を動かしているのは人間です。人間は神ではありません。時には誤りも犯します。当たり前のことなわけです。
私達がどんなに事故が起こって欲しくないと願ったところで、破局的事故の可能性は常に持っています。いつか起きるかもしれない。という事になっているわけです。
そこでじゃ、原子力推進する人たちがどういう対策を取ったかというと、破局的事故はめったに起きない。そんなものを想定する事を想定する事はおかしい。想定不適当という烙印を押して無視してしまうという事にしたわけです。
どうやって、破局的事故が起きないかというと、これは中部電力のホームページから取ってきた説明文ですけれど、たくさんの壁があると、放射能を外部に漏らさないための壁があるといっているのですが、このうちで特に重要なのは第四の壁というところに書いている原子炉格納容器という入れ物です。
巨大な鋼鉄製の容器ですけれど、これが何時いかなる時でも放射能を閉じ込めるというそういう考え方にしたわけです。原子炉立地審査指針というものがあって、その指針に基づいて重大事項仮想事故というかなり厳しい事故を考えていると彼らは言うわけですけれど、そういう事故では格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁は絶対に壊れないとそういう仮定になってしまっているのです。
絶対に壊れないなら放射能は出るはずはないということになってしまいますので、原子力発電所はいついかなる時でも安全だと。放射能の漏れてくるような事故を考えるのは想定不適当。想定不適当事故という烙印を押して無視する事にしたわけです。
ところが破局的事故が起きて現在進行中です。
大変なあの悲惨な事がいま福島を中心に起きているという事はたぶん皆さんもご承知いただいていることだと思います。
ただ、その現在進行中の事故にどうやって行政が向き合ってきているかということについても大変不適切な対応が私はたくさんあったと思います。
防災というものの原則は、危険を大きめに評価してあらかじめ対策を取って住民を守ると。もし危険を過大に評価していたのだとしたら、これは過大だった、でも住民に被害を与えなくて良かったと、胸をなでおろすとそれが防災の原則だと思いますが、実は日本の政府がやってきたことは、一貫して事故を過小評価して楽観的な見通しで公表してきました。
国際事故評価尺度で当初レベル4だと、いうような事を言ってずっとその評価を変えない。レベル5といったことはありましたけれど。最後の最後になってレベル7.あまりにも遅い対応の仕方をしている。
避難区域に関しても一番初めは3キロメートルの住民を避難指示出す。これは万一の事を考えての指示です。といったのです。
しかし、しばらくしたら今度10キロメートルの人たちに避難指示を出しました。これは万が一の事を考えての処置だと言ったのです。
ところがそれからしばらくしたら、20キロメートルの人たちに避難指示を出しました。その時もこれは万一の時を考えての指示です。といいながらどんどんどんどん後手後手に対策がなっていったという経過を辿りました。
私は、パニックを下げる唯一の手段というのは正確な情報を常に公開するということだと思います。
そうして初めて行政や国が住民から信頼を得る。そしてパニックを回避するんだと私は思ってきたのですが、残念ながら日本の行政はそうではありませんでした。
常に情報を隠して、危機的な状況じゃないという事を常に言いたがる。
SPEEDIという100億円以上のお金をかけて25年もかけて築き上げてきた事故時の計算。
それすらも隠してしまって住民には知らせないということをやったわけです。
それから、現在まだ続いていますが、誰の責任かを明確にしないまま労働者や住民に犠牲を強制しています。
福島の原発で働く労働者の被曝の限度量を引き上げてしまったり、あるいは住民に対して強制避難をさせる時に基準を現在の立法府が決めた基準とは全く違ってまた、引き上げてしまう、というようなことをやろうとしている。
本当にこんな事をやっていていいのだろうか?と私は思います。
現在進行中の福島の原発事故の本当の被害っていったいどれだけになるんだろうかと私は考えてしまうと、途方にくれます。
失われる土地というのはもし、現在の日本の法律を厳密に適応するのなら福島県全域といってもいいくらいの広大な土地を放棄しなければならないと思います。
それを避けようとすれば住民の被曝限度を引き上げるしかなくなりますけれど、そうすれば住民たちは被曝を強制されるという事になります。
一次産業はこれからものすごい苦難に陥るようになると思います。農業・漁業を中心として商品が売れないという事になる。そして住民達は故郷を追われて生活が崩壊していくという事になるはずだと私は思っています。
東京電力に賠償をきちっとさせるという話はありますけれども、東京電力がいくら賠償したところで足りないのです。
なんど倒産してもたぶん足りないのです。日本国が倒産してもたぶん購いきれないほどの被害が私は出るのだろうと思っています。本当に賠償するのならばということです。
最後になりますが、ガンジーが7つの社会的罪という事を言っていて、彼のお墓にそれが碑文として残っています。
一番初めは「理念無き政治」です。
この場にお集まりの方々は政治に携わっている方々ですので十分にこの言葉をかみ締めていただきたい。
そのほかたくさん「労働無き富」「良心無き快楽」「人格無き学識」
「道徳無き商業」これは東京電力をはじめとする電力会社に当てはまると私は思います。
そして「人間性無き科学」。これは私も含めたいわゆるアカデニズムの世界がこれまで原子力に丸ごと加担してきたということを私はこれで問いたいと思います。
最後は「献身無き崇拝」宗教をお持ちの方はこの言葉もかみ締めていただきたいと思います。
終わりにいたします。有難うございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
発表を制止された参照資料
講演会での参照写真
安全ゼミ資料の13ページ目
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◆参院行政監視委の参考人:
京都大学原子炉実験所助教 小出 裕章君
芝浦工業大学非常勤講師 後藤 政志君
神戸大学名誉教授 石橋 克彦君
ソフトバンク株式会社代表取締役社長 孫 正義君
行政監視委員会理事会 午後零時五十分 第四十三理事会室
須磨ビーチ猫通信から 質疑応答
Q:水蒸気爆発が何機かで起こっている。しかしどれだけの放射性物質が大気に放出されたかが明らかになっていない。
どの位の量の放射性物質が出るのか?
小出氏:起きたのは水素爆発。1~4全ての号機で水素爆発。格納容器は一定程度閉じ込め機能を持っている。
どれだけの放射能が漏れたかは行政が様々なデータを持っているはずだ。
何百種類の放射性物質がある。漏れたのは揮発性の物を中心で、中に有った物の10%程度だろう。
Q:原子炉にどの位の燃料が入っているのか?
小出氏:1機当たり広島原発1000発~2000発分の放射性物質を蓄えていると考えて欲しい。
Q:圧力容器が最悪の状態になって壊れれば、どんな事が想定されるのか?
小出氏:水蒸気爆発が起きる事。原子炉の不揮発性の物まで出てくるだろう。
後藤氏:原子炉容器が壊れる確率は大きいとは言わないが、古い物は比較的可能性高い。
事故時に爆発的なエネルギーがかかれば有り得るだろう。
Q:半径20キロを警戒区域、20キロ以上浪江長などを計画的避難区域、緊急時避難区域に指定。これは妥当か?
後藤氏:放射能の漏れ出し方による。爆発の規模など。
Q:全ての原発は全てリスクが有るというが、リスクの順位について議論はされているか?
石橋氏:行われていない。浜岡以外の原発のリスクはゼロ、という事になっているだろう。
保安院、安全委以外の第三者的機関を作り、リスクの順位付けするよう国会で議決して欲しいくらい。
Q:脱原発戦略は21世紀で最も大事なのはエネルギー貯蔵技術では?
孫氏:大規模電気貯蔵技術はどうしてもコスト高。揚水発電など。
しかし各家庭で貯蔵すれば低コストでいけるだろう。
スマートグリッドの考え方。様々な発電方法を切り替え。
Q:国会に事故調査委員会設けるべきでは?
例えば政府、行政の意志決定の過程を明確にする事、保安院、安全委の在り方を明確にする事、キャリアシステムという人事を見直すなど。
何を優先させるべきか?
小出氏:議会に調査機関を作ることは有難いが、一番必要だと思う事は、福島第一を迅速に収束させる事。
作業員の被ばくを減らし、住民の苦しみを減らす事。それから事故の原因を調査すれば良い。
東電は原発のリスクを過疎地に押し付けてきた。この不正を問うて欲しい。
後藤氏:現在動いている原発のリスクを早急に評価しながら事故原因を究明すべき。
利権が絡んでいたら駄目。安全を追求するときは利害関係がないものがやるべき。
石橋氏:明日にも別の原発が事故を起こすか分からない。議会で調査機関が出来るのは有難い。
どの議論も優劣つけがたい。全てやって欲しい。海外から専門家を呼ぶ傾向があるが、日本の人材を使えば良い。
大手のマスコミは原発に疑問を投ずる人材を無視してきた。
Q:省エネについて、どう考えるか?
孫氏:大変重要。ピーク時の電気が一番コスト高。ピークカット、ピークシフトをどうするかが重要。
例えば電気料金を一律値上げでなく、ピークシフトを考慮に入れれば良い。ピーク時は電気料金高くする、など。
産業活動についても、電気使用を計画的に行うようになるような電気料金政策はどうだろう。
Q:原子力業界は情報開示が徹底してなされなかった。原発行政に対する情報公開の度合いについてどう思うか?
小出氏:1973年の秋から伊方原発の裁判に参加、国に資料を要求したが、国の出す資料はほとんど白抜き。
原子力は「企業秘密」「核開発」を口実に情報公開に馴染まない。
今回も3月15日に東京の空気中の放射性物質の測定をした。チェルノブイリ事故の時よりかなり高かった。
行政はそのデータを持っていたはずだが出てこなかった。また原子炉実験所長が「パニックが起きるから公開するな」と言った。
行政は厳しく統制したのだろう。名前は明かせないが、圧力がかかって同僚でも測定値の発表が出来ない人が多かった。
後藤氏:「企業秘密」という事で、設計の数字を出さない事がある。こと原子力に関しては安全性が極めて重要。
しかし実際は安全の事をきちんと考えてない。
スリーマイル、チェルノブイリ後もシビアアクシデントは日本では存在してはいけなかった。
設計想定を超える事故は「想定外」としており、国外ではいぶかしがられた。
原子力にはそういう事例が多かった。
Q:財政が破たんしている。復興はどうするのか?地震学の観点、経済の観点から意見を。
石橋氏:防潮堤や防波堤が役に立つのか一律には答えにくい。役に立つ場合もあるだろう。
首都圏直下の大地震、西日本の巨大地震などの危険性がある。
大自然の摂理に逆らわずに人間が適応しなければならない面がある。
今こそ国土を分散型に、発電機能も分散型にすべきではないか。
孫氏:どんな大きな防波堤を作っても防ぎきれない災害が来る可能性はある。
民家は出来るだけ山沿いに建て、沿岸部には太陽光パネルを置くなど自然に合わせて生活するのが良いだろう。
塩害などですぐに利用出来ない土地の買い上げ時に価格を上乗せすれば、復興、雇用創出など出来るのでは。
Q:「東海地震の可能性が高いので浜岡原発を止める」のはおかしいという議論があるが、これはどうか?
石橋氏:大多数の地震学者が高い確率で地震が起きるだろう、という点で一致している。
87%という数字自体はよく分からないが、止める事はおおむね間違っていない。
後藤氏:シビアアクシデント時には相当専門性が高くなるのでなかなか。
小出氏:権限を持った調査機関が必要だと思う。それは原子力安全委員会であったが、実際は機能していなかった。
構成し直す必要がある。保安院も経産省の中に在って推進する組織でしかない。原子力村に囲い込まれてしまった。
石橋氏:権限を持った機関が必要と思う。アメリカのNRCのような。安全委は1999年のJCOで今回よりもう少し活躍した。
今回駄目だったのは、中央省庁再編で安全委員会は牙を抜かれたようなところがあるため。
経済産業省に推進と規制が集中した。
小出氏:福島第一を収束出来るかどうかという点について。思っていた以上に状況は悪化している。
冷却は必要だったが、そのため汚染水が大量に発生した。当初から循環式冷却装置を作るべきと言ってきた。
しかしもうその循環回路が出来そうにないと思う。圧力容器、格納容器が破損しているから。
現在の状況を厳しく評価、専門家を集めていかなければならないと思う。
1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはならない、4万ベクレル/平方メートル以上は放射線管理区域、という被曝に関する法規制がある。
それを厳密に適用すれば、福島は無人化しなければいけなくなるだろう。
しかし人々の故郷を奪う事になる。どういう施策が良いのか真剣に考えて欲しい。
後藤氏:人的ミスについて。ヒューマンエラーは前提で、設計の中に織り込んでおかなければならない。
技術でカバーする必要。人的ミスを事故原因にしてしまうというよりは、要素の一つと考えている。
石橋氏:3月11日の地震の前から地震付き原発だと判っている物は全国に多くある。
今回の事故でそれが明確になって来たと思う。どの原発を止めろと私が言うのは僭越。
孫氏:原発事故は起きてしまった。新たに起きるのを防ぐというのが議論すべき事。
福島の子供達を過酷な環境に置いておくのはいけない。
代替エネルギーを早急に作るべきだ。風力エネルギー構築のための環境アセスメントの最後の番人は、保安院。
代替エネルギーを潰してきたのでは、という気がする。
地熱発電についても有力候補地の8割は国定公園の中にある。
Q:原発事故の初期対応について、どう思われるか?
後藤氏:海水注入は当たり前。躊躇したとしても理由がはっきりしないので解らない。
小出氏:京大原子炉実験所で働いているが、事故が起こる可能性は勿論ある。その事故を収束させる知識は所員が持っている。
福島第一でも収束させる知識は現場の人が持っていたはず。本店や政府がいい加減な知識で口を挟むのはおかしいだろう。
現場をサポートする事が必要だっただろう。そういう体制を作って欲しい。
Q:次止めるべき原発は、個人的にはどれか?
石橋氏:正確な予測は出来ない。心配なのは若狭湾。古い物が心配。35~40年を超える物。
福島第一と同じ沸騰水型も。
Q:日本の電力は風力、水力太陽光をやっていく事が大事ではないか、これについてどう思うか?
孫氏:ベストミックスを見付ける事が大事。分散型で、それをスマートグリッドで繋ぐ。
Q:若狭、敦賀付近で地震や津波があったという記憶が県民の中にない。議事録を見せてはっきり言いたいので宜しく。
石橋氏:越前海岸、舞鶴の辺りまで。この辺りは地震の活動帯。他にも色々ある(すみません)。
という訳で、次かどうかは分かりませんが、若狭湾が危険なのは間違いない。
Q:独自に放射能を測定したというが、その数値は?
小出氏:3月18日のセミナーで公表。ホームページにも公開。ヨウ素、テルル、セシウム。東京の空気の数百ベクレル/立法メートル。
チェルノブイリ事故時の東京の数千倍。その空気を1時間吸えば20マイクロシーベルト内部被曝。空間線量は2マイクロシーベルト/時だった。
個人や研究機関が計測しているだろうからそれを集めるのは、本来安全委員会であるはずだった。
孫氏:事故直後の数値は分からない。都内新宿は大体0.07マイクロシーベルト/時で政府発表されている。
しかし概ねその倍くらいの数字が自分の測定器で出る。これは政府はガンマ線だけを測っているからではないか?
一番怖い内部被曝を公表しないのは何か意図があるのか。
税関で測定器が500台止まっているのは実に勿体無い。
Q:原子力村の人々から官邸に正確な情報が上がって来ないのは、利権を守ろうとする構造的な問題だろうと思う。
今後組織の改編が不可欠と思う。保安院を経産省から切り離して安全委と統合しても駄目と思う。
どのような組織再編が望ましいと考えるか?
たじま政務官:誰かがサボっていたというよりは構造的な問題だろう。
しかしどういう組織を構築するかの議論は始まっていない。
とにかく規制する側と規制される側が一体となっているのは問題。
Q:東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発がある。このリスクを避けるためには、浜岡を止める事が必要になるだろう。
しかし実際には防潮堤の増設。なぜ原発の停止ではなく増設になったのか?
たじま政務官:中部電力は特におかしな事をした訳ではない。法令上の安全基準は満たしていた。
更なる安心のために停止したのみ。安全性が確認されれば運転の再開は可能であると考えている。
Q:「制御された安全」と「本質的安全」との違いは?
石橋氏:例えば飛行機は「制御された安全」で飛んでいる。
「本質的安全」は乗らない事で得られる。
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(もうすぐ北風)
書き起こしされたmonipo blog様、須磨ビーチ猫通信様に感謝申し上げます。
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