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3号機は核燃料プールが臨界爆発

 ex-skf-jpから
 「福島第一原発、1歩進んで4歩後退

アーニー・ガンダーセン氏の5月13日付けビデオです。タイトルの、1歩進んで4歩下がる、というのは言い得て妙ですね。(残念ながら。)中でも氏が気にしているのは3号機のようです。

http://www.fairewinds.com/home
Fukushima - One Step Forward and Four Steps Back as Each Unit Challenged by New Problems from Fairewinds Associates on Vimeo.

氏は、3号機が再度水蒸気爆発する可能性がある、といっています。その理由が、原子炉の温度が高いのに圧力が低い、このような状態では水が存在しえない、ということ。また、3号機の使用済み燃料プールの爆発(氏の先日のビデオ)が音速より早い「デトネーション(爆轟)」だった証拠として、燃料のかけらが2キロ先まで吹き飛ぶための初速の計算(氏が行ったもの)に言及しています。

また、ビデオの中で、他のどこでも聞いた覚えがないのは、「専門家によれば、発電所自体が1フィート[約30センチ]ほど沈下している」という情報。(単に私が不勉強か。)そうなると、氏の言うとおり、土台のコンクリートが割れていないはずがないことになります。

最後の方で氏は、原発から5,60キロのところにある高校に触れ、原発労働者並みの被爆を受けるような地域で学校の授業を行わせているのは非人道的、人倫にもとる、と発言しています。

以下、ビデオ全訳:

福島第一原発:一歩進んで四歩後退:新たな問題が次々に

こんにちは、フェアウィンズのアーニー・ガンダーソンです。今日は5月13日金曜日です。今回は、福島第一原発とその周辺地域で何が起きているかを整理してみたいと思います。まずこの一週間を一言で振り返るなら、ロデオの暴れ馬がカウボーイを振り落とし続けた日々と言えるでしょう。

来週の木曜日、アメリカ原子力規制委員会の会合でスタッフから状況説明があります。おそらくスタッフは「状況はいぜんとして不安定」と報告するでしょうが、「不安定」とはあまりに控えめすぎる表現だと思います。今日、東京電力は、1号機の炉心が露出してかなりの燃料が損傷を受けていると発表しました。皆さんにとっては少しも意外ではなかったと思いますが、とにかくそれが東電の記者会見での発表でした。なぜこの事実が明らかになったかといえば、短時間とはいえ建屋の中に人を入れて格納容器に新しい計器を取り付けることができたからです。その結果、原子炉内には水がなく、格納容器内にはごくわずかな水しか溜まっていないことがわかりました。では、あれだけ注入した水はみんなどこに行ったのでしょうか。なにしろ過去2ヶ月で何万トンもの水を注入してきたのです[実際は1号機で1万トン強]。要するに水が漏れて地下水に入り込んでいるということです。これについてはまたあとでお話しましょう。

いずれにせよ1号機に水はなく、おそらく燃料は融けて原子炉を突き破り、今は格納容器の底に落ちているものと思われます。このせいで放射線レベルが非常に高くなり、建屋内で作業するうえでの被曝リスクを高めています。被曝量は70R/時[700ミリシーベルト時]。4、5時間浴びたら死に至るレベルです。長期の[被爆による]死ではなく、早い死です。それだけ1号機の線量は非常に非常に高いということです。したがって東電は1号機の作業計画を一から見直す必要があるでしょう。放射線量が高すぎます。

次に2号機ですが、こちらはほとんど変化がありません。ざるのように水が漏れています。上から水が入って下の穴から出てくる。格納容器から漏れているのです。つまりここからも大量の水が発生しているわけですが、現場にはそれだけの水を収容できるスペースがありません。しかも水は除染が必要です。前例にないほどの大量の除染です。福島の原子炉はそれぞれおよそ毎日100トンの水が注入されていますが、除染できるのはせいぜい一日1、2トン。したがって除染の計画も大幅な見直しが迫られています。さもなければ汚染水が地下水や海に流れ込んでしまいます。

3号機は興味深い状況になっています。3号機から煙が出ているという噂がネット上に広まっていますが、たぶん心配はいりません。煙が出るのは夜で、空気が冷えています。太平洋の水も冷たくなっています。おそらくあれは3号機からの熱い水蒸気が冷たい水に触れて、濃いもやとなって立ち昇ったのだと思います。放射性の蒸気であることは確かですが、火災が起きているわけではないでしょう。少なくとも私はそう考えています。

ただし、3号機については良いニュースはここまで。前にもお話したとおり、原子炉最上部の温度は非常に高いのに原子炉の圧力はきわめて低い状態です。こういう状況下で水が存在することはできません。気体の温度が高いのに圧力が低いということは、3号機の原子炉の中には水も水蒸気もないということです。だとすれば炉内には空気が入っているわけですが、原子炉は空気で冷やされるようなつくりにはなっていません。したがって、3号機の原子炉をどう冷やすかは依然として非常に深刻な課題です。温度と圧力のギャップが大きいので、3号機ではまだ水素爆発の可能性があります。

3号機については今週新たなことがわかりました。燃料プール内の映像が公開されたのです。3号機はすでに瓦礫の山も同然であることを思い出してください。そして映像に映った燃料プール内の状態はじつにひどいものでした。コンクリートの大きな破片がプールに落ちたのがわかります。大きな金属の塊も見えます。制御棒や燃料ラックは、私には変形しているように見えました。プール内で激しい爆発があったのは間違いありません。私は3号機の燃料プール内で発熱を伴う何らかの爆発があったとずっとお話ししてきましたが、この映像がそれを裏付けています。

裏付けとなる情報はほかにもあります。プール内で高濃度のヨウ素131が検出されたことです。事故後2ヶ月が経過しているのですから、本来ならヨウ素131はなくなっているはずです。にもかかわらず高濃度のヨウ素131が検出されたということは、私が数週間前から指摘してきたような「即発減速臨界」が燃料プール内で起きた証拠です。

次は4号機ですが、4号機は傾いています。傾いていることは東電も認めています。構造が損傷したのは明らかに3号機の火災と爆発によるものでしょう。ですが、一番上の部分が傾いている。これは良くありません。もしも強い余震が来たら4号機は崩壊するおそれがあります。東電はなんとか4号機を支持構造で補強しようと懸命に努力していますが、これは大変な作業です。それから、4号機についても燃料プールの映像が公開されました。ラックは壊れていないように見えます。だとすれば、周辺で発見されたプルトニウムは4号機からのものとは考えられません。4号機では2日間火災が発生しましたので、その原因となる熱源があったのは確かですから、プルトニウムをはじめほかの放射性同位元素、セシウムやストロンチウムなどが4号機で揮発化したのは間違いないでしょう。ですが、周辺で検出された大量のプルトニウムが4号機由来のものだとは思いません。

今週計算してみたのですが、アメリカ原子力規制委員会の報告書にあるように核燃料の破片が2キロ先で発見されたとすれば、破片は時速約900~1,000マイル[時速約1,450~1.600キロ]で燃料プールから放り出されたはずです。私の想像ですが、人差し指の先くらいの大きさの燃料のかけらが、3号機の燃料プールから2キロ先まで吹き飛んだ。ということは、空気の抵抗も考えると、おそらく初速は時速1,000マイル以上に達していたでしょう。つまり、私がたびたび指摘してきたように音速[時速約1,200キロ]を超えているわけであり、3号機で起きたのは「デフラグレーション(爆燃)」ではなく「デトネーション(爆
轟)」だったということです。

以上が何を意味するかといえば、まず1号機の格納容器からは水が漏れていて、窒素を注入しても圧力を維持できません。2号機からはずっと水が漏れて周囲のトレンチに溜まっています。今や3号機からも水が漏れ出してトレンチに溜まっています。つまり1~3号機の格納容器からはすべて水が漏れているということです。これまでアメリカの原子力規制委員会は、格納容器に漏れが生じることは「ありえない」と説明してきました。原子力諮問委員会などは昨年の10月、格納容器が漏れる可能性は「ゼロパーセントと想定している」と明言しました。明らかに間違っていたわけです。このことは、原発の運転にかかわる様々な規制に影響を及ぼします。現在認可を申請中のウェスティングハウス社製の新しいAP-1000原子炉も、影響を免れないでしょう。これについては来週詳しくお話しするつもりです。

最後に、こうした状況が福島第一原発の周辺地域に対してどんな意味をもつかを考えてみたいと思います。最初の問題は水です。先ほどもお話したように大量の水が発生していますが、すべてを収容しきれていません。専門家によれば、発電所自体が1フィート[約30センチ]ほど沈下しています。だとすれば土台のコンクリートに亀裂が生じており、放射性物質が地下水に入り込んでいるに違いありません。前回私は、放射性物質が近隣の町の下水システムに流入したという話をしました。今週、下水関係の専門家と話をしたところ、地震のあとで地下水が下水に染み出すのは珍しくないそうです。したがって、東電と日本政府に出してほしい今一番重要なデータは、地下水の放射能レベルがどれくらいかということです。

それから空気中の放射性物質についてです。今週、日米合同で上空を飛行して汚染の度合いを調べたところ、原発から50~60キロの地域まで汚染されていることが分かりました。その地域に高校があります。生徒はマスクと長袖シャツを着用して皮膚の露出を防ぐようにいわれています。その学校で生徒が授業を受けている間、屋外の駐車場では土壌の表面を除去する作業を行なっています。汚染レベルが高すぎて、生徒が屋外に出たら原発労働者並みの放射線を浴びてしまうからです。このような状況で、あの学校を開校させているのは人道的に許されないことです。

最後になりますが、放射性物質はすべての原子炉から放出され続けています。格納容器が用をなしていないため、下からは水として、上からは蒸気として出て行きます。そしてそれを止める見通しはまったく立っていないのです。

ありがとうございました。また来週お目にかかりましょう。

([ ]内は訳者の補足)
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 下に参考資料
http://www.houseoffoust.com/fukushima/fukushima.html
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小出:原発は想定外が許されない機械

5月16日 「想定外」が許されない機械 小出裕章
2011年5月16日(月)、MBSラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

要約

・(リスナーから、今回の1号機のメルトダウン報道に関連し、東電は地震直後から分かっていて隠してきたのではないかという意見。どうか?)この事故における東電のデータの出し方には二つの問題。一つは知りながら隠していたこと。二つ目は東電も事態があまりにひどくて知りえないままだったことがあること。東電が分かっていて隠していたのか、正確なデータを用いなかったために判断を間違えたか、どちらか。

・(東電も知り得なかったとしたら?)そちらの方が余計に深刻。どちらも深刻なこと。

・(東電も事態が分かっていなかったとしたら、お手上げ状態ということではないか?)そうだ。専門家にとっては信頼できるデータがすべてであり、命だ。1号機の水位について東電は燃料棒上端から1700ミリとずっと言い続けており、それに基づいて私は分析してきた。そしてこれまでの推測はそれに基づいたものだった。それが今回、全部露出していたと言い出した。

・圧力容器の底に穴があいていると思う。溶けた燃料がそこから格納容器に落ちているはず。

・東電が今言っている、水位がとても低くて燃料がすべて露出していたということ自体も、信用していいのかどうか分からない。

・(細野さんは2号機、3号機もメルトダウンしている可能性を前提に工程表を見直すとしているが?)当然だ。2号機も3号機も溶け落ちている可能性はあると思う。

・(菅総理は工程表の日程には大きな影響はないとしているが?)全く分からない。どういう論理でそんな発言が出るのか。

・(3月11日に観測された放射線量から爆発の可能性は判断できなかったか?)当時1時間あたり300ミリシーベルトという情報もあったと聞く。そのような数字が出ていたのであれば、水素爆発の予想はできたはず。それは周辺住民に言わなければいわなかった。私も含め、そういうデータを知らなかったため、爆発の様子を見て驚愕した。本来であればデータを時々刻々提供しなければいけなかった。

・(これを隠さずに出していれば、逃げるべき人たちが逃げられた?)そうだ。

・(情報の出し方に大きな原因があった?)先ほど言った一つ目の隠すという方の典型だ。

・(3号機にホウ酸を注入することはうまくいっていない?)それ自体は簡単なこと。ホウ酸を入れるのは再臨界を防ぐのに圧倒的な効果があるから、入れるのはいいことだと思う。

・(東電は念のために入れると言っているが?)私はもともと再臨界の可能性は少ないと思っていた。再臨界はこれからも起こらないだろう。でも、念の為に入れることはいいこと。

・(原子力安全基盤機構が、以前すでに津波による電源喪失を警告していたという報道があったが?)それは警告していたかどうかという問題ではなく、もともと原発そのものが想定外というような言葉が許されない機械であるのに目をつぶって推進してきているということが本当の問題。

・(作業員の方が体調不良を訴えた後、亡くなった。原因は心不全と言われていて、被爆量は低く、外傷もなかった。それとは別に、作業のルールや手順が緩くなっているという作業員による報告もあった。どう思うか?)ありえる。作業はすごく長く続いており、現場は混乱を極めているはず。どんどん基準が緩くなるのは想像に難くない。

・一言付け加えたい。被曝による死亡ではないとしても、このものすごく困難な事故を収束させるために、過酷な環境で働いてきた方が亡くなったのだということは忘れてほしくないと思う。
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