聞いてほしい、50年間異論を弾圧・迫害してきた政府と原発推進派
2011-05-01
聞いてほしい。
マスコミは小泉・竹中政権時代に、徹底して新自由主義者以外のエコノミストをテレビ・全国紙から排除して、国民には新自由主義、市場原理主義が経済と経済政策のすべてであるかに見せかけ、統制した。
異論に対する20年に及ぶ迫害によって、生活の糧を失ったエコノミストも多い。
原子力については、この迫害は50年に及んだ。
原子力発電の危険を指摘するものは論文は発表されず、学会から追われ、職を失った。
そのうち安全問題を指摘するものにも排除は広がり、原子炉工学の学会も政府委員会もすべてが原発積極推進派という原子力村の村人で独占してきた。
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迫害され続けた京都大学の原発研究者(熊取6人組)たち
危険性を訴えたら、監視・尾行された
2011年04月30日(土) 週刊現代
経済の死角
「原発の開発には胡散臭いところがあった。モノは必ず壊れる。でも東電など電力会社は、絶対に壊れないと本気で思っているように見えた。チェルノブイリ事故があったとき、日本では『ソ連の安全に対する意識が遅れていたのが原因だ』なんて言われたけど、日本のほうがよほどひどかったね」
落ち着いた口調で語るのは京都大学原子炉実験所の今中哲二助教(60歳)だ。
原発を推進してきた学者たちが「想定外」という言葉を繰り返すのとは対照的に、今日の福島第一原発のような大事故がいつか起きると警告を発し続けてきた学者グループがいる。
彼らはこれまで「異端の研究者」と見られ、テレビや新聞でもほとんど紹介されることがなかった。それどころか、学会では長く冷や飯を喰わされ、研究費や昇進でも明らかな差別を受けてきた。
遅きに失した感は否めないが、今回の事故で、そんな彼らにようやく注目が集まりつつある。原発関係者たちは、推進、批判の立場を超え、彼らのことを「熊取6人組」と呼んだ。
「熊取」とは、京都大学原子炉実験所の所在地である大阪府泉南郡熊取町に由来する。つまり、「6人組」はいずれも京都大学の原発研究者として一緒に働いた仲間である。
いまも同実験所に在籍しているのは冒頭の今中氏と、小出裕章氏(61歳)。二人とも肩書は助教。'01年から'03年に相次いで定年退職したのは、海老澤徹氏(72歳、助教授)、小林圭二氏(71歳、講師)、川野真治氏(69歳、助教授)。そして、1994年にがんで亡くなった瀬尾健氏(享年53、助手=現在の助教)。本誌は今回、存命中の5人すべてのメンバーから話を聞いた。
「すでに引退した身だから」と控えめな口調ながらも、川野氏はこう断じた。
「我々は今回のように一つの事象で原発全部がやられてしまうような事故があり得ると指摘していたけど、推進派の人々は何重にも防護しているから安全だと耳を貸さなかった。今はともかく起きている事態に対処するしかないけれど、いずれ責任ははっきりさせるべきでしょうね。これまでは事故があってもうやむやにしてきたわけですから」
原発の危険性を無視し、今回のような事態を招いた原発推進派の人々はいま、どんな思いで彼らの言葉を聞くのだろうか。
この「熊取6人組」を詳しく紹介する前に、なぜ、彼らが関係者の間で「異端の研究者」と見られ、ニックネームまで付けられる存在になったかを説明する。
研究費もつかない
原発研究者の世界は「原発ムラ」などと呼ばれ、基本的に原発推進者ばかりである。電力会社は研究者たちに共同研究や寄付講座といった名目で、資金援助する。その見返りに研究者たちは電力会社の意を汲んで原発の安全性を吹聴する。
原発を所管する経済産業省と文部科学省は、電力会社に許認可を与える代わりに、電力会社や数多ある原発・電力関連の財団法人などに天下りを送り込む。さらに、研究者たちは国の原子力関連委員を務め、官僚たちとともに原子力政策を推進していく。
簡単に言えば、原発ムラとは、潤沢な電力マネーを回し合うことでつながっている産・官・学の運命共同体なのである。テレビに出て、どう見ても安全とは思えない福島第一原発の状況を前に、しきりに「安全です」「人体に影響はありません」などと語る学者から、原子力委員会、原子力安全委員会、経産省外局の原子力安全・保安院、東京電力も、それぞれ立場は異なるものの同根だ。
経産省OBが語る。
「京大の原子炉実験所も、基本的には原発推進派の人物が多い。現在の原子力安全委員会でも、会見で話す機会が多い代谷誠治氏は、京大原子炉実験所の所長でした。ただ、京大は『熊取6人組』のように、反原発の立場から原発を研究する人も受け入れている。原発ムラの中心にいる東大には反原発の現役研究者は皆無です」
この経産省OBが言うように、原発ムラの頂点に立つのが東京大学大学院工学系研究科のOBたち。たとえば、原子力委員会委員長の近藤駿介氏、原子力安全委員会委員長の班目春樹氏は、いずれも同研究科OB。NHKの解説でおなじみの関村直人氏、さらに実質的に日本の原子力政策を決めている資源エネルギー庁原子力部会部会長の田中知氏は、同研究科のOBにして、現在は同研究科教授といった具合だ。
こうした原発ムラにあって、真正面から異を唱え、原発の危険性を叫び続けてきたのが「熊取6人組」なのである。反原発の立場で研究を続けていくことは楽なことではない。彼らのうち誰一人、教授になっていないという事実が、学内での微妙な立場を物語っている。現在、実験所には約80人の研究者がいるが、瀬尾氏が亡くなり、3人が定年を迎えたことで、反原発の立場なのは小出氏と今中氏の二人だけだ。小出氏が苦笑しながら言った。
「同僚から異端視されることはないけど、京大も国・文科省の傘下にある。その国が原発推進というのだから、傘下の研究所で国に楯突くのは好ましくないという事情はあるでしょうな。嫌がらせを受けたと感じたことはないけど。
私もかつては研究費をもらおうと文科省に申請したことがあるけど、審査がまったく通らない。なぜ通らないかは何とも言えませんが(笑)。ああいう研究費って、力を持った教授のお手盛りで決めるからね」
他のメンバーに「反原発」で不自由を感じたことはないかと尋ねたところ、次のようなエピソードが並んだ。
・メディア関係者の取材に同行し、原発関連企業を訪れたが、自分だけ門前払いを喰った。
・科学技術庁(当時)に実験装置設置の認可を得るべく折衝したが、反原発訴訟に関係していることがわかった途端に申請を受け付けてもらえなくなった。
・上司が会合で他大学の教授から「あの6人組はなんとかならんか」と言われた。
そして、出世について聞くと、「今の立場のほうが快適」「昇進できないのは覚悟していた」「気楽にやれるのが一番」などという答えが返ってきた。彼らの口調は淡々としていて、苦労を笑い飛ばすような雰囲気があった。ただ、実際には「ムラの掟」に逆らって生きていくには、相当の覚悟がいるに違いない。
ずっと助手のまま
立命館大学特命教授の安斎育郎氏は、原発ムラのエリートコースである東大大学院工学系研究科の博士課程を修了した後、反原発の立場で東大医学部に残ったが、助手のまま17年間を過ごした経歴を持つ。安斎氏の証言。
「原発推進派と批判派の溝は深いと思います。原発に批判的な発言をする反体制派だと見なされると、学内でも様々なアカデミックハラスメントを受けた。講演に行けば、電力会社の人間が尾行につく。同じ電車に乗ってくるし、だいたいいつも同じ人間だからわかるんです。講演内容を録音して、私の主任教授などに届ける係の人までいましたから。そうなると研究室でも安斎とは口を利くなということになる。京大の小出さんや今中さんたちのグループも同じような経験をしているはずです。
僕は電力会社から留学を勧められたこともありました。『3年間アメリカに行ってくれ。全部おカネは出すから』って。それほど目障りだったんでしょう。さすがに命の危険を感じることはなかったけれど、反原発で生きていくというのは、そういうことなんです」
「6人組」のメンバーと取材や反原発イベントを通じて交流のあるジャーナリストもこう語る。
「イベント会場に行くと、なかに明らかに雰囲気の違う黒服の人がいたりすることは頻繁にあります。小出さんや今中さんたちはもう慣れっこなのか、現在進行形だから話せないのかはわかりませんが」
原発ムラからの圧力は彼らのような研究者たちだけでなく、メディアにも加えられるという。たとえば、'08年10月、大阪の毎日放送が「6人組」を追ったドキュメンタリー番組を放送した。その後の騒動について、民放労連の関係者が言う。
「番組放送後、関西電力からは『反対派の意見ばかり取り上げるのは公正ではない』という申し入れがあり、局側は『番組の最後で推進派の教授と討論する場面を入れている』と反論したそうですが、関電は納得しなかったのでしょう。その後、しばらくCMを出さなかったと聞いています」
この後、毎日放送では、関西電力の社員を講師として、原発の安全性についての「勉強会」も開かれたという。関西電力サイドは、この件について「放送された番組の内容を受けてCMの出広量を減らした事実はない。講師派遣についても、先方の要請で行うことはあるが、こちらがねじ込んだりしたという事実はない」と否定する。
いずれにせよ、今回の事故が発生するまで原発ムラの産・官・学連合は利権を分け合い、好き放題やって「熊取6人組」など反対派の研究者を虐げてきた。
何言ってるの? 関村教授
しかし、いまや原発ムラはバラバラだ。彼らがムラを守るために主張してきた「安全神話」は、誰の目から見ても、完全に崩壊した。
「6人組」の一人、海老澤氏はNHKの解説で一躍有名人となった「あの人」の発言にこう苦言を呈した。
「あまりテレビは見ないんですが、3月12日に枝野(幸男)官房長官が記者会見で『1号機の水位が下がった』と言い、重大な事態だという認識を示した。ところが、その後のNHKで東大の関村教授が出てきて、『原子炉は停止した。冷却されているので安全は確保できる』というようなことをおっしゃった。唖然としましたよ。
炉の冷却ができなくなってから100分くらい経つと水位が低下しはじめ、その後20分位で燃料棒を覆う被覆管が溶けて燃料が顔を出す。やがて炉心溶融に向かうというのはスリーマイルの事故報告書を見るとはっきりと書いてある。研究者なら当然知っているはずなんです。関村さんの話を聞いて、『この段階で何を言っているのか』と思いました。隣のNHKの記者もさすがに怪訝な表情をしているように見えましたね」
本誌は関村教授にもインタビューを申し込んだが、多忙を理由に断られてしまった。
前原子力委員会委員長代理で、別項で紹介した緊急建言の16人の起草者の一人である田中俊一氏が語る。
「いまの状況で『安全だ』という学者は曲学阿世の人ですよ。NHKにしても『安全だ』と繰り返すから、取材に来たときに『そんなに安全だと言うなら、あなた方は(高い放射線量が検出された)福島県の飯舘村に引っ越せますか』と聞いたんですよ。『できません』と答えていた」
田中氏のように原発を推進してきた研究者たちでさえ、いまの原発ムラの状況には違和感を覚えているのだろう。世間も原発ムラの人々の発言の胡散臭さに気付き始めている。
対照的に、これまで「6人組」の言い分をほとんど取り上げてこなかった朝日新聞も、原発事故以降、小出氏や今中氏の分析を掲載するようになった。それでも、彼らが原発の危険性を訴え続けていく姿勢は変わらない。
「照明はほとんど使わないんですよ。夜でもね。エアコンももちろんなし。パソコンの画面が明るいから、仕事には支障がない」
そう語る小出氏には仕事をしながらの話でもよければ、ということで京大原子炉実験所研究室で話を聞いた。午前10時なのに薄暗い。
「東北電力が女川に原発を作るというのを聞いて、本当に原発が安全なら、なんで電気を一番使う仙台の近くに建てないのかと思ってね。それでいろいろ調べたら、原発はもともと危険を内包していて、都会では引き受けられないから、わざわざ過疎地に作るんだという結論に達したわけ。そうなったら、選択は一つ。反対するしかないと」
福島県飯舘村の放射線量調査から戻ったばかりの今中氏にも、実験所の研究室で向かい合った。
「僕は明確に反原発というわけでもない。東京の人が東京湾に原発を作ろうというなら、反対はしないでしょう。
それから、6人組という呼び方は嫌いなんです。同じ原子力安全研究グループでいまも活動していますが、思想信条だって違う。ただ、一緒に研究している仲間だと認識してます」
悲しき御用学者たち
もちろん、彼らはそれぞれに専門を持ち、独自に活動を進めている。それでも、原発ムラに安住し、いまだに根拠なく安全だと繰り返す人々に辛辣なのは変わらない。
「みんなおかしくなっているんじゃないか。ただちに健康に影響がありませんというけれど、それは煙草を100本吸ってもただちに影響がないというのと一緒ですよ。基本的に放射線の影響には急性障害と晩発性障害(被曝後、何十年と経ってから影響が出てくる障害)がある。だから、100ミリシーベルトの放射線を浴びても、すぐに死なないというのは正しい。ただ、晩発性障害をどう考えるのか。それをまったく抜きにして専門家が解説している」(今中氏)
「最近の学者には、国の研究機関から大学に天下ってきた人も少なくない。そういう人は、国の代弁しかしない。原子力というのは巨額のカネがかかる分野で、国の関与がなければ成立しません。だから、この世界でメシを食おうと思ったら、御用学者になるのは必然とも言えます。一般の方は、学者だからそれぞれの考えで発言していると思うかもしれませんが、原子力分野はそうではないんです。
それと原子力安全委員会は何をしているのか。委員長の班目さんはすっかり後ろに引っ込んでしまった。彼には無理だったということでしょう」(小林氏)
「推進派は頭を丸めろということですよ。これまで主張してきたことをどう思っているのか、表明してほしい。何人か謝罪した人もいるみたいだけど、原子力委員会の近藤駿介委員長みたいに、謝罪もせず逃れようとする人もいる。みっともないね。原子力安全委員会にしたって、こんなときこそ仕事をしなきゃならんのに、何してるのか全然見えてこない」(小出氏)
最後に、今後の福島第一原発についての見通しを小出氏に聞いた。小出氏は、
「うまくいっても、安全と言える状態になるまでは最短で年単位。数ヵ月では無理でしょう」
と答えた。
---小出先生のところに「原発をどうすればいいか」という相談はないんですか?
「ありませんねえ。私が答えるにしても、原発をやめなさいとしか言えないし、意味がない。原発を生き延びさせるための提言なんてないんです」
照明が消された薄暗い研究室で、小出氏はきっぱりとそう言い切った。
マスコミは小泉・竹中政権時代に、徹底して新自由主義者以外のエコノミストをテレビ・全国紙から排除して、国民には新自由主義、市場原理主義が経済と経済政策のすべてであるかに見せかけ、統制した。
異論に対する20年に及ぶ迫害によって、生活の糧を失ったエコノミストも多い。
原子力については、この迫害は50年に及んだ。
原子力発電の危険を指摘するものは論文は発表されず、学会から追われ、職を失った。
そのうち安全問題を指摘するものにも排除は広がり、原子炉工学の学会も政府委員会もすべてが原発積極推進派という原子力村の村人で独占してきた。
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迫害され続けた京都大学の原発研究者(熊取6人組)たち
危険性を訴えたら、監視・尾行された
2011年04月30日(土) 週刊現代
経済の死角
「原発の開発には胡散臭いところがあった。モノは必ず壊れる。でも東電など電力会社は、絶対に壊れないと本気で思っているように見えた。チェルノブイリ事故があったとき、日本では『ソ連の安全に対する意識が遅れていたのが原因だ』なんて言われたけど、日本のほうがよほどひどかったね」
落ち着いた口調で語るのは京都大学原子炉実験所の今中哲二助教(60歳)だ。
原発を推進してきた学者たちが「想定外」という言葉を繰り返すのとは対照的に、今日の福島第一原発のような大事故がいつか起きると警告を発し続けてきた学者グループがいる。
彼らはこれまで「異端の研究者」と見られ、テレビや新聞でもほとんど紹介されることがなかった。それどころか、学会では長く冷や飯を喰わされ、研究費や昇進でも明らかな差別を受けてきた。
遅きに失した感は否めないが、今回の事故で、そんな彼らにようやく注目が集まりつつある。原発関係者たちは、推進、批判の立場を超え、彼らのことを「熊取6人組」と呼んだ。
「熊取」とは、京都大学原子炉実験所の所在地である大阪府泉南郡熊取町に由来する。つまり、「6人組」はいずれも京都大学の原発研究者として一緒に働いた仲間である。
いまも同実験所に在籍しているのは冒頭の今中氏と、小出裕章氏(61歳)。二人とも肩書は助教。'01年から'03年に相次いで定年退職したのは、海老澤徹氏(72歳、助教授)、小林圭二氏(71歳、講師)、川野真治氏(69歳、助教授)。そして、1994年にがんで亡くなった瀬尾健氏(享年53、助手=現在の助教)。本誌は今回、存命中の5人すべてのメンバーから話を聞いた。
「すでに引退した身だから」と控えめな口調ながらも、川野氏はこう断じた。
「我々は今回のように一つの事象で原発全部がやられてしまうような事故があり得ると指摘していたけど、推進派の人々は何重にも防護しているから安全だと耳を貸さなかった。今はともかく起きている事態に対処するしかないけれど、いずれ責任ははっきりさせるべきでしょうね。これまでは事故があってもうやむやにしてきたわけですから」
原発の危険性を無視し、今回のような事態を招いた原発推進派の人々はいま、どんな思いで彼らの言葉を聞くのだろうか。
この「熊取6人組」を詳しく紹介する前に、なぜ、彼らが関係者の間で「異端の研究者」と見られ、ニックネームまで付けられる存在になったかを説明する。
研究費もつかない
原発研究者の世界は「原発ムラ」などと呼ばれ、基本的に原発推進者ばかりである。電力会社は研究者たちに共同研究や寄付講座といった名目で、資金援助する。その見返りに研究者たちは電力会社の意を汲んで原発の安全性を吹聴する。
原発を所管する経済産業省と文部科学省は、電力会社に許認可を与える代わりに、電力会社や数多ある原発・電力関連の財団法人などに天下りを送り込む。さらに、研究者たちは国の原子力関連委員を務め、官僚たちとともに原子力政策を推進していく。
簡単に言えば、原発ムラとは、潤沢な電力マネーを回し合うことでつながっている産・官・学の運命共同体なのである。テレビに出て、どう見ても安全とは思えない福島第一原発の状況を前に、しきりに「安全です」「人体に影響はありません」などと語る学者から、原子力委員会、原子力安全委員会、経産省外局の原子力安全・保安院、東京電力も、それぞれ立場は異なるものの同根だ。
経産省OBが語る。
「京大の原子炉実験所も、基本的には原発推進派の人物が多い。現在の原子力安全委員会でも、会見で話す機会が多い代谷誠治氏は、京大原子炉実験所の所長でした。ただ、京大は『熊取6人組』のように、反原発の立場から原発を研究する人も受け入れている。原発ムラの中心にいる東大には反原発の現役研究者は皆無です」
この経産省OBが言うように、原発ムラの頂点に立つのが東京大学大学院工学系研究科のOBたち。たとえば、原子力委員会委員長の近藤駿介氏、原子力安全委員会委員長の班目春樹氏は、いずれも同研究科OB。NHKの解説でおなじみの関村直人氏、さらに実質的に日本の原子力政策を決めている資源エネルギー庁原子力部会部会長の田中知氏は、同研究科のOBにして、現在は同研究科教授といった具合だ。
こうした原発ムラにあって、真正面から異を唱え、原発の危険性を叫び続けてきたのが「熊取6人組」なのである。反原発の立場で研究を続けていくことは楽なことではない。彼らのうち誰一人、教授になっていないという事実が、学内での微妙な立場を物語っている。現在、実験所には約80人の研究者がいるが、瀬尾氏が亡くなり、3人が定年を迎えたことで、反原発の立場なのは小出氏と今中氏の二人だけだ。小出氏が苦笑しながら言った。
「同僚から異端視されることはないけど、京大も国・文科省の傘下にある。その国が原発推進というのだから、傘下の研究所で国に楯突くのは好ましくないという事情はあるでしょうな。嫌がらせを受けたと感じたことはないけど。
私もかつては研究費をもらおうと文科省に申請したことがあるけど、審査がまったく通らない。なぜ通らないかは何とも言えませんが(笑)。ああいう研究費って、力を持った教授のお手盛りで決めるからね」
他のメンバーに「反原発」で不自由を感じたことはないかと尋ねたところ、次のようなエピソードが並んだ。
・メディア関係者の取材に同行し、原発関連企業を訪れたが、自分だけ門前払いを喰った。
・科学技術庁(当時)に実験装置設置の認可を得るべく折衝したが、反原発訴訟に関係していることがわかった途端に申請を受け付けてもらえなくなった。
・上司が会合で他大学の教授から「あの6人組はなんとかならんか」と言われた。
そして、出世について聞くと、「今の立場のほうが快適」「昇進できないのは覚悟していた」「気楽にやれるのが一番」などという答えが返ってきた。彼らの口調は淡々としていて、苦労を笑い飛ばすような雰囲気があった。ただ、実際には「ムラの掟」に逆らって生きていくには、相当の覚悟がいるに違いない。
ずっと助手のまま
立命館大学特命教授の安斎育郎氏は、原発ムラのエリートコースである東大大学院工学系研究科の博士課程を修了した後、反原発の立場で東大医学部に残ったが、助手のまま17年間を過ごした経歴を持つ。安斎氏の証言。
「原発推進派と批判派の溝は深いと思います。原発に批判的な発言をする反体制派だと見なされると、学内でも様々なアカデミックハラスメントを受けた。講演に行けば、電力会社の人間が尾行につく。同じ電車に乗ってくるし、だいたいいつも同じ人間だからわかるんです。講演内容を録音して、私の主任教授などに届ける係の人までいましたから。そうなると研究室でも安斎とは口を利くなということになる。京大の小出さんや今中さんたちのグループも同じような経験をしているはずです。
僕は電力会社から留学を勧められたこともありました。『3年間アメリカに行ってくれ。全部おカネは出すから』って。それほど目障りだったんでしょう。さすがに命の危険を感じることはなかったけれど、反原発で生きていくというのは、そういうことなんです」
「6人組」のメンバーと取材や反原発イベントを通じて交流のあるジャーナリストもこう語る。
「イベント会場に行くと、なかに明らかに雰囲気の違う黒服の人がいたりすることは頻繁にあります。小出さんや今中さんたちはもう慣れっこなのか、現在進行形だから話せないのかはわかりませんが」
原発ムラからの圧力は彼らのような研究者たちだけでなく、メディアにも加えられるという。たとえば、'08年10月、大阪の毎日放送が「6人組」を追ったドキュメンタリー番組を放送した。その後の騒動について、民放労連の関係者が言う。
「番組放送後、関西電力からは『反対派の意見ばかり取り上げるのは公正ではない』という申し入れがあり、局側は『番組の最後で推進派の教授と討論する場面を入れている』と反論したそうですが、関電は納得しなかったのでしょう。その後、しばらくCMを出さなかったと聞いています」
この後、毎日放送では、関西電力の社員を講師として、原発の安全性についての「勉強会」も開かれたという。関西電力サイドは、この件について「放送された番組の内容を受けてCMの出広量を減らした事実はない。講師派遣についても、先方の要請で行うことはあるが、こちらがねじ込んだりしたという事実はない」と否定する。
いずれにせよ、今回の事故が発生するまで原発ムラの産・官・学連合は利権を分け合い、好き放題やって「熊取6人組」など反対派の研究者を虐げてきた。
何言ってるの? 関村教授
しかし、いまや原発ムラはバラバラだ。彼らがムラを守るために主張してきた「安全神話」は、誰の目から見ても、完全に崩壊した。
「6人組」の一人、海老澤氏はNHKの解説で一躍有名人となった「あの人」の発言にこう苦言を呈した。
「あまりテレビは見ないんですが、3月12日に枝野(幸男)官房長官が記者会見で『1号機の水位が下がった』と言い、重大な事態だという認識を示した。ところが、その後のNHKで東大の関村教授が出てきて、『原子炉は停止した。冷却されているので安全は確保できる』というようなことをおっしゃった。唖然としましたよ。
炉の冷却ができなくなってから100分くらい経つと水位が低下しはじめ、その後20分位で燃料棒を覆う被覆管が溶けて燃料が顔を出す。やがて炉心溶融に向かうというのはスリーマイルの事故報告書を見るとはっきりと書いてある。研究者なら当然知っているはずなんです。関村さんの話を聞いて、『この段階で何を言っているのか』と思いました。隣のNHKの記者もさすがに怪訝な表情をしているように見えましたね」
本誌は関村教授にもインタビューを申し込んだが、多忙を理由に断られてしまった。
前原子力委員会委員長代理で、別項で紹介した緊急建言の16人の起草者の一人である田中俊一氏が語る。
「いまの状況で『安全だ』という学者は曲学阿世の人ですよ。NHKにしても『安全だ』と繰り返すから、取材に来たときに『そんなに安全だと言うなら、あなた方は(高い放射線量が検出された)福島県の飯舘村に引っ越せますか』と聞いたんですよ。『できません』と答えていた」
田中氏のように原発を推進してきた研究者たちでさえ、いまの原発ムラの状況には違和感を覚えているのだろう。世間も原発ムラの人々の発言の胡散臭さに気付き始めている。
対照的に、これまで「6人組」の言い分をほとんど取り上げてこなかった朝日新聞も、原発事故以降、小出氏や今中氏の分析を掲載するようになった。それでも、彼らが原発の危険性を訴え続けていく姿勢は変わらない。
「照明はほとんど使わないんですよ。夜でもね。エアコンももちろんなし。パソコンの画面が明るいから、仕事には支障がない」
そう語る小出氏には仕事をしながらの話でもよければ、ということで京大原子炉実験所研究室で話を聞いた。午前10時なのに薄暗い。
「東北電力が女川に原発を作るというのを聞いて、本当に原発が安全なら、なんで電気を一番使う仙台の近くに建てないのかと思ってね。それでいろいろ調べたら、原発はもともと危険を内包していて、都会では引き受けられないから、わざわざ過疎地に作るんだという結論に達したわけ。そうなったら、選択は一つ。反対するしかないと」
福島県飯舘村の放射線量調査から戻ったばかりの今中氏にも、実験所の研究室で向かい合った。
「僕は明確に反原発というわけでもない。東京の人が東京湾に原発を作ろうというなら、反対はしないでしょう。
それから、6人組という呼び方は嫌いなんです。同じ原子力安全研究グループでいまも活動していますが、思想信条だって違う。ただ、一緒に研究している仲間だと認識してます」
悲しき御用学者たち
もちろん、彼らはそれぞれに専門を持ち、独自に活動を進めている。それでも、原発ムラに安住し、いまだに根拠なく安全だと繰り返す人々に辛辣なのは変わらない。
「みんなおかしくなっているんじゃないか。ただちに健康に影響がありませんというけれど、それは煙草を100本吸ってもただちに影響がないというのと一緒ですよ。基本的に放射線の影響には急性障害と晩発性障害(被曝後、何十年と経ってから影響が出てくる障害)がある。だから、100ミリシーベルトの放射線を浴びても、すぐに死なないというのは正しい。ただ、晩発性障害をどう考えるのか。それをまったく抜きにして専門家が解説している」(今中氏)
「最近の学者には、国の研究機関から大学に天下ってきた人も少なくない。そういう人は、国の代弁しかしない。原子力というのは巨額のカネがかかる分野で、国の関与がなければ成立しません。だから、この世界でメシを食おうと思ったら、御用学者になるのは必然とも言えます。一般の方は、学者だからそれぞれの考えで発言していると思うかもしれませんが、原子力分野はそうではないんです。
それと原子力安全委員会は何をしているのか。委員長の班目さんはすっかり後ろに引っ込んでしまった。彼には無理だったということでしょう」(小林氏)
「推進派は頭を丸めろということですよ。これまで主張してきたことをどう思っているのか、表明してほしい。何人か謝罪した人もいるみたいだけど、原子力委員会の近藤駿介委員長みたいに、謝罪もせず逃れようとする人もいる。みっともないね。原子力安全委員会にしたって、こんなときこそ仕事をしなきゃならんのに、何してるのか全然見えてこない」(小出氏)
最後に、今後の福島第一原発についての見通しを小出氏に聞いた。小出氏は、
「うまくいっても、安全と言える状態になるまでは最短で年単位。数ヵ月では無理でしょう」
と答えた。
---小出先生のところに「原発をどうすればいいか」という相談はないんですか?
「ありませんねえ。私が答えるにしても、原発をやめなさいとしか言えないし、意味がない。原発を生き延びさせるための提言なんてないんです」
照明が消された薄暗い研究室で、小出氏はきっぱりとそう言い切った。
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孫崎・岩上:震災、米国、安保、核と原発、TPP
2011-05-01
「反戦な家づくり」から
孫崎・岩上公開対談ノート
孫崎享x岩上安身 ディープナイト@大阪 ちょっとレポート
今日は、カミさんをだまくらかして じゃなくて 説得して家族サービスを一日ずらし、ディープナイト@大阪に参加してきた。
L大阪の南ホールがほぼ満席。200人近い参加。
私の申し込みは、どん尻から3番目くらい。ギリギリセーフだった模様。
参加者は若い人が圧倒的に多い。
2時を少し過ぎたところで、会は始まった。
大体の内容はタイピングしたけれども、全部書くとIWJの営業妨害になるので、詳しくはDVDが発売されたら購入していただきたい。
ここでは、私がなるほど!と思ったところをピックアップしてお伝えする。
念のため。あくまでブラインドタッチでのタイピングなので、正確とは言い難く、文責は私自身にある。
また、なにも書いていない部分は、ほぼ孫崎氏の話。
(今日のテーマ 岩上氏から)
3.11でこれまでの諸課題が無くなった訳じゃない
例えばTPP かえって危険
日米関係、安全保障、核の問題
原発であぶり出された利権構造
確かに、すごく気になっていたけれども、原発が頭の8割くらいを占有していて、他のことを考えることができなくなっていた。
敵さんは、そういうナイーブな心性は持ち合わせていないだろう。
気をつけなくては
(原発・震災の話から)
何故危険か 想定外じゃない
06年衆議院予算委員会公聴会 石橋神戸大教授
東電研究チーム 06年国際会議 5.7mの津波予想
50年以内に想定超える確率約10%
公聴会と東電本体!
言い逃れしようがないはず。やはり福島の事故は、起きるべくして起きた。
分かっていて起こした。確信犯だ。
(原発コスト1)
危険を保険かけたら まったく採算合わない
企業は安いが 保険等は国民負担
もし保険かければとてつもない値段
被害はすべて国民負担
(原発コスト2)
大島健一教授 立命大 電源コスト
東電は理論値 これを実績値で計算
原発の電気 実際は3割しかつかえない あと捨てる
で、揚水発電 これを水力発電に組み込んで計算
揚水発電入れれば10円超える
さらに税金入ってる そして保険ない
コストが本当は高いというのは、実はずっと言われ続けてきたこと。
反原発運動の中では常識だった。
けれども、全く表に出てこなかった。
こうした情報が表に出てきたことが画期的だ。
(ドイツ)
原発やめると 保守が決定
背景には25万人デモ
メルケル 再生可能エネを2020に35%
ドイツエネルギー水利協会(企業集団) 2020年原発廃止
保守政党や企業が認識している
(スウェーデン)
免責無しを決定
企業も銀行も新規原発やるところ無し
これは原発廃止の現実的な方法
しかも過激ではなく当たり前
(アメリカ)
州レベルで継続不許可
菅政権の新経済成長戦略 原発輸出頼り 対アメリカ ベトナム
でも実行不可能になるだろう
スエーデンの話は、ホントにそうだ。
原発廃止は実に簡単。免責を無くせばいい。なるほど
だから、福島県いわき市出身の自民党議員・吉野正芳は、この期に及んで東電を完全に免責せよ、などと言うのだ。
(原発誕生の時代背景)
1955年原水禁運動 反米
鳩山一郎内閣 ソ連接近 重光外相 米軍の代わり自衛隊
これらをアメリカ潰す これと原子力推進 重なる
推進役 正力松太郎 CIAエージェント
戦前公安警察のドン 公職追放されていた スネに傷
アメリカベッタリなら利権 そうでないなら追放
典型が岸信介 鳩山一郎つぶす中心
この辺は、ちょうど有馬哲夫さんの「原発・正力・CIA」を読んでいるところなので、よく分かる。
ちなみに、この本は必読書かと。
(外交・防衛)
羽生名人の言葉 いかに可能性のないものを捨てるか
(対中国で)軍事的に日本が勝てる可能性は無い
ミサイルで滑走路と原発をやられたら終わり
あとは、平和的な手段 可能か考える
これは、目から鱗だった。
理念としての戦争反対ではなく、現実をリアルに見つめたときに、平和的手段しかない、と孫崎氏は言う。15年前は独自核武装を提言した人の言葉。
懇親会で言われていたのは、「アメリカは日本に核武装させて中国と撃ち合いをさせようとしている」ということ。だから核武装論は止めたと。
私自身の考えと全く同じではないが、それにしても、こういう反戦もあるんだということにビックリ。そして、なるほど。
(TPP)
(岩上氏)TPP話した日にとくダネ!でプロデューサーに番組クビにされた
TPPはメディアのタブー
TPPはたくさん話があった。
この逸話だけでも、TPPが如何に強引に進められようとしているか分かる。
(米国債)
大変な輸出超過なのになんで日本は豊かににならない?
超過したドルで米国債を買っているから
100出して還ってくるのは 米国債金利の3だけ
97はアメリカに
(震災後)
震災後 アメリカは米国債売るんじゃないかと思った
だからドルが暴落した
ところがその議論全くない
そうかそうか。日本で大震災が起きたのに、なんで円が上がるのか不思議だった。
そりゃそうだ、こんなことになれば貯金をおろすだろうと誰でも考える。
考えないのは、当事者である日本だけ ってことだ。
(ではどうするか 岩上氏)
ツイッターだけですむほど甘くない
デモ 電話 アナログなことも同時に
トークカフェ 集いと語らい もっとも古いメディア
ツイッター もっとも新しいメディア 挟み撃ちに
焦ることじゃない
資本も人材もないが かなりの程度に届いている
統合本部の会見締め出しに対して おそらく膨大な抗議
アナログな行動 パワーもつ
そうだ。デモに行こう。
気軽にデモ。
ちょっこらデモ。
それと、名前を出せる人は実名で行動しよう。
もちろん、リスクはないとはいえないので、それは判断して。
デジタルの爆発力と、アナログなリアリズム。
デジタルの軽さ、早さ、広さ
アナログの重さ、現実感、深さ
(日本人と政治 岩上氏 懇親会)
メキシコでも小沢事件とそっくりなことあった
メキシコは大規模デモ 日本はそれがない
日本人は中南米などと比べて政治的におこちゃま
これが最大の課題だろう。
小沢氏もくり返し言っていること。
僕らオッサン連中は、まず実践してみせること。
政治にかかわっても、大丈夫だぜ、何の問題もなく生きてるぜ
という姿を実験台になって見せてやらなくちゃならない。
40年間保育器の中に入れられてきたブランクを、
何とかしてとりもどさなくっちゃ。
その兆しはある。
懇親会では、私も少しだけ発言させてもらった。
岩上氏が、この反戦な家づくりをご存じだったのは嬉しかった。
他にも、結構読んでるよ と言う方がおられて、ご挨拶もさせてもらった。
合計5時間近い会合だったが、まだまだ消化不良の感じもある。
もっとも古いメディアである集いと語らい。
これからも参加したいし、お手伝いできることがあればしたいと思う。
孫崎・岩上公開対談ノート
孫崎享x岩上安身 ディープナイト@大阪 ちょっとレポート
今日は、カミさんをだまくらかして じゃなくて 説得して家族サービスを一日ずらし、ディープナイト@大阪に参加してきた。
L大阪の南ホールがほぼ満席。200人近い参加。
私の申し込みは、どん尻から3番目くらい。ギリギリセーフだった模様。
参加者は若い人が圧倒的に多い。
2時を少し過ぎたところで、会は始まった。
大体の内容はタイピングしたけれども、全部書くとIWJの営業妨害になるので、詳しくはDVDが発売されたら購入していただきたい。
ここでは、私がなるほど!と思ったところをピックアップしてお伝えする。
念のため。あくまでブラインドタッチでのタイピングなので、正確とは言い難く、文責は私自身にある。
また、なにも書いていない部分は、ほぼ孫崎氏の話。
(今日のテーマ 岩上氏から)
3.11でこれまでの諸課題が無くなった訳じゃない
例えばTPP かえって危険
日米関係、安全保障、核の問題
原発であぶり出された利権構造
確かに、すごく気になっていたけれども、原発が頭の8割くらいを占有していて、他のことを考えることができなくなっていた。
敵さんは、そういうナイーブな心性は持ち合わせていないだろう。
気をつけなくては
(原発・震災の話から)
何故危険か 想定外じゃない
06年衆議院予算委員会公聴会 石橋神戸大教授
東電研究チーム 06年国際会議 5.7mの津波予想
50年以内に想定超える確率約10%
公聴会と東電本体!
言い逃れしようがないはず。やはり福島の事故は、起きるべくして起きた。
分かっていて起こした。確信犯だ。
(原発コスト1)
危険を保険かけたら まったく採算合わない
企業は安いが 保険等は国民負担
もし保険かければとてつもない値段
被害はすべて国民負担
(原発コスト2)
大島健一教授 立命大 電源コスト
東電は理論値 これを実績値で計算
原発の電気 実際は3割しかつかえない あと捨てる
で、揚水発電 これを水力発電に組み込んで計算
揚水発電入れれば10円超える
さらに税金入ってる そして保険ない
コストが本当は高いというのは、実はずっと言われ続けてきたこと。
反原発運動の中では常識だった。
けれども、全く表に出てこなかった。
こうした情報が表に出てきたことが画期的だ。
(ドイツ)
原発やめると 保守が決定
背景には25万人デモ
メルケル 再生可能エネを2020に35%
ドイツエネルギー水利協会(企業集団) 2020年原発廃止
保守政党や企業が認識している
(スウェーデン)
免責無しを決定
企業も銀行も新規原発やるところ無し
これは原発廃止の現実的な方法
しかも過激ではなく当たり前
(アメリカ)
州レベルで継続不許可
菅政権の新経済成長戦略 原発輸出頼り 対アメリカ ベトナム
でも実行不可能になるだろう
スエーデンの話は、ホントにそうだ。
原発廃止は実に簡単。免責を無くせばいい。なるほど
だから、福島県いわき市出身の自民党議員・吉野正芳は、この期に及んで東電を完全に免責せよ、などと言うのだ。
(原発誕生の時代背景)
1955年原水禁運動 反米
鳩山一郎内閣 ソ連接近 重光外相 米軍の代わり自衛隊
これらをアメリカ潰す これと原子力推進 重なる
推進役 正力松太郎 CIAエージェント
戦前公安警察のドン 公職追放されていた スネに傷
アメリカベッタリなら利権 そうでないなら追放
典型が岸信介 鳩山一郎つぶす中心
この辺は、ちょうど有馬哲夫さんの「原発・正力・CIA」を読んでいるところなので、よく分かる。
ちなみに、この本は必読書かと。
(外交・防衛)
羽生名人の言葉 いかに可能性のないものを捨てるか
(対中国で)軍事的に日本が勝てる可能性は無い
ミサイルで滑走路と原発をやられたら終わり
あとは、平和的な手段 可能か考える
これは、目から鱗だった。
理念としての戦争反対ではなく、現実をリアルに見つめたときに、平和的手段しかない、と孫崎氏は言う。15年前は独自核武装を提言した人の言葉。
懇親会で言われていたのは、「アメリカは日本に核武装させて中国と撃ち合いをさせようとしている」ということ。だから核武装論は止めたと。
私自身の考えと全く同じではないが、それにしても、こういう反戦もあるんだということにビックリ。そして、なるほど。
(TPP)
(岩上氏)TPP話した日にとくダネ!でプロデューサーに番組クビにされた
TPPはメディアのタブー
TPPはたくさん話があった。
この逸話だけでも、TPPが如何に強引に進められようとしているか分かる。
(米国債)
大変な輸出超過なのになんで日本は豊かににならない?
超過したドルで米国債を買っているから
100出して還ってくるのは 米国債金利の3だけ
97はアメリカに
(震災後)
震災後 アメリカは米国債売るんじゃないかと思った
だからドルが暴落した
ところがその議論全くない
そうかそうか。日本で大震災が起きたのに、なんで円が上がるのか不思議だった。
そりゃそうだ、こんなことになれば貯金をおろすだろうと誰でも考える。
考えないのは、当事者である日本だけ ってことだ。
(ではどうするか 岩上氏)
ツイッターだけですむほど甘くない
デモ 電話 アナログなことも同時に
トークカフェ 集いと語らい もっとも古いメディア
ツイッター もっとも新しいメディア 挟み撃ちに
焦ることじゃない
資本も人材もないが かなりの程度に届いている
統合本部の会見締め出しに対して おそらく膨大な抗議
アナログな行動 パワーもつ
そうだ。デモに行こう。
気軽にデモ。
ちょっこらデモ。
それと、名前を出せる人は実名で行動しよう。
もちろん、リスクはないとはいえないので、それは判断して。
デジタルの爆発力と、アナログなリアリズム。
デジタルの軽さ、早さ、広さ
アナログの重さ、現実感、深さ
(日本人と政治 岩上氏 懇親会)
メキシコでも小沢事件とそっくりなことあった
メキシコは大規模デモ 日本はそれがない
日本人は中南米などと比べて政治的におこちゃま
これが最大の課題だろう。
小沢氏もくり返し言っていること。
僕らオッサン連中は、まず実践してみせること。
政治にかかわっても、大丈夫だぜ、何の問題もなく生きてるぜ
という姿を実験台になって見せてやらなくちゃならない。
40年間保育器の中に入れられてきたブランクを、
何とかしてとりもどさなくっちゃ。
その兆しはある。
懇親会では、私も少しだけ発言させてもらった。
岩上氏が、この反戦な家づくりをご存じだったのは嬉しかった。
他にも、結構読んでるよ と言う方がおられて、ご挨拶もさせてもらった。
合計5時間近い会合だったが、まだまだ消化不良の感じもある。
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通貨戦争(32)ドル大増刷が米国自身をも苦しめ始めた。
2011-05-01
米国が仕掛けた世界通貨戦争。基軸通貨であるドルの過剰な流動性供給は、実体経済の資金需要が弱い中で投機に廻り、世界の貧困層を物価上昇が襲っている。「至上の強欲が貧困な大衆を襲う」、「犠牲となる新興国、途上国」。
そして、米国の実体経済がこの刺激でいくらか上向きになるか。
依然、上向きにならないのである。「ドル覇権の終わりが見えてきた」、「バーナンキのインフレ・パラドックス」。
結果は、もう既にあからさまになってしまった。世界にとっても米国国内にとってもドルの価値下落と物価上昇、貧困の増大、住宅価格の下降は続き、失業は減らず、消費需要はますます低下している。
さらに深い谷底が口を開けている状況に、米国の経済マスコミも公然と言い出した。
WSJは日本の経済マスコミよりも正直になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドルの「洪水」、世界が拒否反応 4/21WSJ社説
国際通貨基金(IMF)の一部加盟国は先週末、自国へのドル流入を抑制するために資本規制など、あらゆる選択肢を残しておくべきだと主張した。経済発展には投資が必要であることを考えると、資本規制は危険なゲームだ。
しかし、一方で、このことは、米国のドル政策の失敗と金融上の指導力低下に対し、世界が拒否反応を強めている表れともいえる。
ドルは世界の準備通貨である。同様に、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は、世界の中銀に最も近い存在である。
しかしながら、少なくともこの10年、とりわけ2008年終盤から、FRBは、唯一の関心事が米国内経済であるかのように振る舞ってきた。
FRBの容赦ない金融緩和と議会の向こう見ずな支出策を受けて、投資家は、高いリターンと持続的な成長を求め、米国からアジアや南米などへ逃げ出した。IMFの予想によると、2009年7月から2010年6月までの間、トルコへの資金流入は対GDP比で6.9%、南アフリカは6.6%、タイは5%に相当する。
この巨額な投資資金 は、流入国の中央銀行を苦境に陥れている。何も手を打たなければ、資産バブルとインフレを招く可能性がある。ブラジル(インフレ率は6.3%)と中国(5.4%はあくまで公式な数字であり、間違いなく実際はこれを上回る)は、ほかの国と同様、インフレの高進になんとか耐えている。
これらの国は、利上げや自国通貨高の放置が可能だが、それは経済成長を鈍化させる危険がある。多くの国は、資金流入を止める手段として、そのような経済上の調整ではなく、資本規制や管理的措置を取っている。
この1年、ブラジルは、株式・債券投資への課税を導入、預金準備率も引き上げた。インドネシアは、国債の保有期間を設定。韓国は、銀行の外貨調達の取引に制限を設けるなどした。ペルーとトルコも対策を取った。それでも、多くの新興国で、通貨は上昇を続け、資金の流入が続いている。
こうしたいきさつを考えると、IMFのドミニク・ストロスカーン専務理事が今月、資本規制は「暫定的な手段」としては必要だと発言し、自由な資本移動に対するIMFの長年のコミットメントに終止符を打ったことは、驚くにあたらない。IMFが最後に同様の行動を取ったのは、1990年代半ばのメキシコ金融危機の時だった。
IMFは先週末、そのような資本規制「手段」の発動時期に関する指針について、参加国の承認を期待していた。しかし、ブラジルのマンテガ財務相は指針の受け入れを拒否。資本規制は、他国の政策の影響に対抗するために必要な「自己防衛」手段であると主張した。もちろん、マンテガ財務相が言う他国とは、米国を念頭に置いたものだ。
これに対してガイトナー財務長官は、新興国を反撃した。彼の反応は、1970年代にジョン・コナリー財務長官が欧州代表団に放った有名なセリフ「ドルは我々の通貨だが、あなた方の問題だ」と基本的に変わらない。
つまり、世界は米国のドル安基準から自国を守り、おそらく最後には自由になろうとし始めている。欧州中央銀行(ECB)は最近、利上げを実施したが、インフレ発生を回避するために追加利上げを行うだろう。中国は、グローバル通貨への第一歩として、人民元建ての貿易の拡大を認めている。
最近中国で開かれたBRICs会議で、指導者らは「安定と確実性をもたらす広範な国際準備通貨システム」の必要性を訴えた。彼らが言っているのはドルのことではない。
米国内でさえ、ドルのヘッジとして商品(たとえば原油)や金を買う動きがある。ユタ州は最近、事実上の代替通貨として、金の売買を容易にする措置を取った。こうした動きが果たして賢明な投資かどうかは別として、間違いなく、これは、米政府の経済運営に対する不信感の兆候だ。
オバマ大統領は今週、市民との対話集会で、原油価格の上昇は「投機筋」が理由だと述べた。彼は、ドル安に対するヘッジへと世界を突き動かしたFRBと財務省についても言及すべきだった。
バーナンキFRB議長とガイトナー財務長官は、経済を膨張させ、資産価格を押し上げる、前代未聞の金融政策と財政支出策を故意に取ってきた。
その代償が、今進行中のドル安と食品・エネルギー価格の上昇、そして米経済に対する信頼の低下というわけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
米経済:見えぬ本回復 FRB、追加緩和打ち切るが… ガソリン高、雇用不安足かせ(毎日)
【ワシントン斉藤信宏】ガソリン高や雇用不安、住宅市場の回復の遅れが足かせとなり、米景気の本格回復がなかなか見通せない。28日発表の11年1~3月期の米国内総生産(GDP)の伸び率は前期(10年10~12月)比1・8%と、前期実績の3・1%から大幅に鈍化。ガソリン高進行などでけん引役の個人消費の先行きが不安視される状況だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は27日、昨年11月から続けてきた追加の量的金融緩和策を予定通りに6月末で打ち切る方針を決めたが、金融正常化への道のりは容易ではなさそうだ。
◇住宅市場「二番底も」
1~3月期の米GDPの伸びが鈍化した大きな要因は、全体の7割を占める個人消費が前期比2・7%増と、前期(4・0%増)から予想以上に減速したためだ。
ガソリン価格の高騰と天候不順、年末商戦の反動などが背景にあるが、ガソリン高は消費者心理を圧迫している。ガソリン高で自動車など耐久財消費も10・6%増と前期(21・1%増)から伸び率が半減した。
米国民にとって、自動車とガソリンは最も身近な生活必需品。平均的な米国民は週に15~20ガロン(1ガロン=約3・785リットル)給油するとされ、毎月の給油量は60~80ガロンに達する。
中東の政情不安や世界的なカネ余りなども背景に今年1月からわずか4カ月弱の間にガソリン価格が1ガロン当たり80セントも上昇。米国民は月間で50~65ドルもの出費増を余儀なくされ、その分、他の消費を抑える生活防衛意識が広がり始めている。
米紙ワシントン・ポストなどの調査では、7割の消費者が「ガソリン価格の上昇で経済的負担が増した」と回答。約45%が「自動車での外出を控えるようになった」と答えた。米国では5月下旬から本格的な夏の旅行シーズンを迎えるが、ガソリン高が続けば節約志向が一段と強まり、米個人消費を予想以上に冷え込ませかねない。
一方、08年のリーマン・ショックで「危機の病根」となった住宅市場に本格回復の兆しが見られないことも景気を圧迫している。26日に発表された2月の住宅価格指数を見ると、全米主要10都市の指数が前月比マイナス1・1%と7カ月連続で低下。
「良いニュースはほとんどなく、住宅市場は二番底の瀬戸際にある」(ブリッツァー・指数算定委員長)と分析されるほどの低迷ぶりが続く。
FRBのバーナンキ議長は27日の会見で、追加の量的緩和策を6月末で打ち切る一方、事実上のゼロ金利政策を維持し、金融引き締めを急がない姿勢を示した。
ガソリン高と、9%近い失業率、住宅市場の長期低迷という米経済を取り巻く重層的なリスクを意識したもので、FRBでさえ景気の本格回復時期が見通せないことをうかがわせた。
そして、米国の実体経済がこの刺激でいくらか上向きになるか。
依然、上向きにならないのである。「ドル覇権の終わりが見えてきた」、「バーナンキのインフレ・パラドックス」。
結果は、もう既にあからさまになってしまった。世界にとっても米国国内にとってもドルの価値下落と物価上昇、貧困の増大、住宅価格の下降は続き、失業は減らず、消費需要はますます低下している。
さらに深い谷底が口を開けている状況に、米国の経済マスコミも公然と言い出した。
WSJは日本の経済マスコミよりも正直になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドルの「洪水」、世界が拒否反応 4/21WSJ社説
国際通貨基金(IMF)の一部加盟国は先週末、自国へのドル流入を抑制するために資本規制など、あらゆる選択肢を残しておくべきだと主張した。経済発展には投資が必要であることを考えると、資本規制は危険なゲームだ。
しかし、一方で、このことは、米国のドル政策の失敗と金融上の指導力低下に対し、世界が拒否反応を強めている表れともいえる。
ドルは世界の準備通貨である。同様に、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は、世界の中銀に最も近い存在である。
しかしながら、少なくともこの10年、とりわけ2008年終盤から、FRBは、唯一の関心事が米国内経済であるかのように振る舞ってきた。
FRBの容赦ない金融緩和と議会の向こう見ずな支出策を受けて、投資家は、高いリターンと持続的な成長を求め、米国からアジアや南米などへ逃げ出した。IMFの予想によると、2009年7月から2010年6月までの間、トルコへの資金流入は対GDP比で6.9%、南アフリカは6.6%、タイは5%に相当する。
この巨額な投資資金 は、流入国の中央銀行を苦境に陥れている。何も手を打たなければ、資産バブルとインフレを招く可能性がある。ブラジル(インフレ率は6.3%)と中国(5.4%はあくまで公式な数字であり、間違いなく実際はこれを上回る)は、ほかの国と同様、インフレの高進になんとか耐えている。
これらの国は、利上げや自国通貨高の放置が可能だが、それは経済成長を鈍化させる危険がある。多くの国は、資金流入を止める手段として、そのような経済上の調整ではなく、資本規制や管理的措置を取っている。
この1年、ブラジルは、株式・債券投資への課税を導入、預金準備率も引き上げた。インドネシアは、国債の保有期間を設定。韓国は、銀行の外貨調達の取引に制限を設けるなどした。ペルーとトルコも対策を取った。それでも、多くの新興国で、通貨は上昇を続け、資金の流入が続いている。
こうしたいきさつを考えると、IMFのドミニク・ストロスカーン専務理事が今月、資本規制は「暫定的な手段」としては必要だと発言し、自由な資本移動に対するIMFの長年のコミットメントに終止符を打ったことは、驚くにあたらない。IMFが最後に同様の行動を取ったのは、1990年代半ばのメキシコ金融危機の時だった。
IMFは先週末、そのような資本規制「手段」の発動時期に関する指針について、参加国の承認を期待していた。しかし、ブラジルのマンテガ財務相は指針の受け入れを拒否。資本規制は、他国の政策の影響に対抗するために必要な「自己防衛」手段であると主張した。もちろん、マンテガ財務相が言う他国とは、米国を念頭に置いたものだ。
これに対してガイトナー財務長官は、新興国を反撃した。彼の反応は、1970年代にジョン・コナリー財務長官が欧州代表団に放った有名なセリフ「ドルは我々の通貨だが、あなた方の問題だ」と基本的に変わらない。
つまり、世界は米国のドル安基準から自国を守り、おそらく最後には自由になろうとし始めている。欧州中央銀行(ECB)は最近、利上げを実施したが、インフレ発生を回避するために追加利上げを行うだろう。中国は、グローバル通貨への第一歩として、人民元建ての貿易の拡大を認めている。
最近中国で開かれたBRICs会議で、指導者らは「安定と確実性をもたらす広範な国際準備通貨システム」の必要性を訴えた。彼らが言っているのはドルのことではない。
米国内でさえ、ドルのヘッジとして商品(たとえば原油)や金を買う動きがある。ユタ州は最近、事実上の代替通貨として、金の売買を容易にする措置を取った。こうした動きが果たして賢明な投資かどうかは別として、間違いなく、これは、米政府の経済運営に対する不信感の兆候だ。
オバマ大統領は今週、市民との対話集会で、原油価格の上昇は「投機筋」が理由だと述べた。彼は、ドル安に対するヘッジへと世界を突き動かしたFRBと財務省についても言及すべきだった。
バーナンキFRB議長とガイトナー財務長官は、経済を膨張させ、資産価格を押し上げる、前代未聞の金融政策と財政支出策を故意に取ってきた。
その代償が、今進行中のドル安と食品・エネルギー価格の上昇、そして米経済に対する信頼の低下というわけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
米経済:見えぬ本回復 FRB、追加緩和打ち切るが… ガソリン高、雇用不安足かせ(毎日)
【ワシントン斉藤信宏】ガソリン高や雇用不安、住宅市場の回復の遅れが足かせとなり、米景気の本格回復がなかなか見通せない。28日発表の11年1~3月期の米国内総生産(GDP)の伸び率は前期(10年10~12月)比1・8%と、前期実績の3・1%から大幅に鈍化。ガソリン高進行などでけん引役の個人消費の先行きが不安視される状況だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は27日、昨年11月から続けてきた追加の量的金融緩和策を予定通りに6月末で打ち切る方針を決めたが、金融正常化への道のりは容易ではなさそうだ。
◇住宅市場「二番底も」
1~3月期の米GDPの伸びが鈍化した大きな要因は、全体の7割を占める個人消費が前期比2・7%増と、前期(4・0%増)から予想以上に減速したためだ。
ガソリン価格の高騰と天候不順、年末商戦の反動などが背景にあるが、ガソリン高は消費者心理を圧迫している。ガソリン高で自動車など耐久財消費も10・6%増と前期(21・1%増)から伸び率が半減した。
米国民にとって、自動車とガソリンは最も身近な生活必需品。平均的な米国民は週に15~20ガロン(1ガロン=約3・785リットル)給油するとされ、毎月の給油量は60~80ガロンに達する。
中東の政情不安や世界的なカネ余りなども背景に今年1月からわずか4カ月弱の間にガソリン価格が1ガロン当たり80セントも上昇。米国民は月間で50~65ドルもの出費増を余儀なくされ、その分、他の消費を抑える生活防衛意識が広がり始めている。
米紙ワシントン・ポストなどの調査では、7割の消費者が「ガソリン価格の上昇で経済的負担が増した」と回答。約45%が「自動車での外出を控えるようになった」と答えた。米国では5月下旬から本格的な夏の旅行シーズンを迎えるが、ガソリン高が続けば節約志向が一段と強まり、米個人消費を予想以上に冷え込ませかねない。
一方、08年のリーマン・ショックで「危機の病根」となった住宅市場に本格回復の兆しが見られないことも景気を圧迫している。26日に発表された2月の住宅価格指数を見ると、全米主要10都市の指数が前月比マイナス1・1%と7カ月連続で低下。
「良いニュースはほとんどなく、住宅市場は二番底の瀬戸際にある」(ブリッツァー・指数算定委員長)と分析されるほどの低迷ぶりが続く。
FRBのバーナンキ議長は27日の会見で、追加の量的緩和策を6月末で打ち切る一方、事実上のゼロ金利政策を維持し、金融引き締めを急がない姿勢を示した。
ガソリン高と、9%近い失業率、住宅市場の長期低迷という米経済を取り巻く重層的なリスクを意識したもので、FRBでさえ景気の本格回復時期が見通せないことをうかがわせた。
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