京大小出氏4/10岩上インタビュー(1)
2011-04-17
4/1に次ぐ、岩上氏によるインタビューです。(4/1インタビューはこちら)
原発推進村の村人でない京大小出氏は、テレビ新聞等には出てこない。
氏のインタビューはラジオ、動画サイトには結構あるのだが、書き起こしが非常に少なく、探していました。
やっと見つけましたので、紹介します。
「夢見つつ深く植えよ」氏が多大な力を費やして、書き起こしてくださっていたので紹介します。
同氏に感謝いたします。
小出氏の説明は冷静で慎重です。
なお、原発の現状、マーク1の図面、破壊状況などの詳細はこちらにありますので、御覧ください。
こちらのかなり詳細な図面などの出処はこちらからが直接です。
読みやすくするために、私の責任で段落を付けてあります。
文字にするとよく理解できるとともに長文なので、コーヒーでも飲みながら、ゆっくりとお読みください。
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4/10小出氏インタビュー書き起こし
気になっている「再臨界」についてなるべく正しく理解したいと思い、小出裕章さんへのインタビュー映像を見ながら書き起こしさせてもらいました。インタビュアーはフリージャーナリストの岩上安身さんです。
文中のカッコ内は読みやすくするために私が入れた小見出しか、文脈上の説明か、補助的な追加語です。例:サプレッション・チェンバー(圧力抑制室)。また、太字や下線は自分で読みやすくするために付けたもので、ご本人達の意図ではありませんのでご注意を。文章だと分かりにくいと思うところは「てにをは」ぐらいは直したかもしれません。
長いインタビューで、もう少し読みやすくするために見出しや段落などをちゃんと作りたかったのですが、力尽きました。書き起こしたのはインタビューの開始から、53分間です。その中で2か所ですが省略したところもあります(線量計の手配と、政治家についての言及のところ)。誰かがやっているかもしれないけれど、「自分で」書き起こそうと思ったのは、「再臨界」の話が重要であまり誤解したくなかったからです。書き起こしていない、53分以降も大切な話をされていますので、ぜひ元のインタビュー映像をご覧ください。間違いがありましたら、ご指摘下さい。
元のインタビュー映像はこちら。 http://www.ustream.tv/recorded/13897618
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2011.4.10小出裕章氏インタビュー(インタビュアー:ジャーナリスト 岩上安身)
小出裕章 京大原子炉実験所助教(以下、小出):
原子炉というのはウランの核分裂を起こさせて、それから出てくるエネルギーを電気にするという、そういう機械システムなんですね。
でもウランの核分裂反応を抑えたところで、原子炉の中にすでに溜まってしまっていた核分裂生成物という物質が自分でエネルギーを出し続けますので、その熱を冷やさなければ原子力発電所は壊れてしまう、という、もともとそういう装置なわけです。
熱を奪い去るには「冷却」ということが必要なわけですが、水を流して、水に熱を移してそれで冷やすということをやるわけですが、水を入れるためにはポンプが動かなければいけない、ポンプを動かすためには電気がなければいけない、ということになるわけですが、今回の事故の場合には電源がすべて断たれてしまった、ということで、原子炉を冷やすことができなくなって、壊れる、という、そういう事態になっているのですね。
かなり深刻な壊れ方をすでにしていまして、ウランそのものがある場所というのは私達は「炉心」という言葉で呼びますが、その炉心という部分は「原子炉圧力容器」と私達が呼ぶ鋼鉄の容器の中に一応収められて、そこに閉じ込めてある、ということになっているのですが、今回の事故が始まってから、原子炉圧力容器がことごとく壊れてしまっています。
それは東京電力の発表によると、「下部に穴が開いているイメージだ」というようなことを、東京電力が言ったそうですけれども。
岩上安身(以下、岩上):(3月)28日未明でしたね
小出:はい。要するに、すでに穴が開いてしまっていると。それは、どうなのか、私にはよく分かりません。
福島の原子炉というのは「沸騰水型」という原子炉で、圧力容器自身は厚さが16センチもあるという、とてつもない、頑丈なはずの鋼鉄の容器なんですけれども、ただ、沸騰水型の場合にはその圧力釜の一番底から、制御棒を入れたり、中性子を計測するためのパイプを入れたりしていますので、そういうパイプの部分は、もちろん弱いのです。
そういう部分に穴が開いて漏れているという可能性もありますし、私が多分こうだろうと思っているのは、再循環系の配管というのがあるのですが、そこが折れているのではないか、と思っています。
岩上:配管そのものが折れていると。
小出:はい。折れているか、亀裂が入っているか分かりませんが、壊れているんだろうと、私は今は推定しています。
ただ、いずれにしてもその「原子炉圧力容器」と言っている、炉心を格納している容器そのもののどこかが、すでに壊れてしまっているという、そういう状態になっているわけです。
壊れてしまえばそこから水が漏れてしまうわけで、漏れた行き先は、原子炉圧力容器を閉じ込めている「原子炉格納容器」というまた更に大きな容器があるのですが、その中に次から次へと水が流れ落ちていく、そういうことになっているんだろうと、そういうふうに私は今、推定しています。
電源が無くなってから、とにかく水を入れなければいけないということで、東京電力もだいぶ苦闘した、と思います。
最終的には、利用できる真水がなかったので、海水を消防用のポンプ車で原子炉の中に送る、という決断をしたのですね。
それを一度やってしまうと、もう二度と原子炉は使えなくなります。でももう何が何でも冷やさなければいけない、ということで、やったわけですね。
でも、(それを)やっても、圧力容器にすでに損傷があるわけですし、水を入れて冷やせば蒸気になってきますから、その蒸気をどこかに逃がさなければいけない、ということもあって、結局は格納容器の方に蒸気を噴き出させて、そこで受け止めようとしたんですね。
しかし、格納容器の方も次から次へと蒸気が入ってきてしまいまして、設計耐圧が4気圧しかないのに、8気圧にもなってしまう、というようなことで、結局その放射能まみれの蒸気を外に捨てなければいけない、という事態に追い込まれたわけですね。
それで一部は炉心の温度が上がってしまいましたので、被覆管のジルコニウムという金属が水と反応して水素になったのですが、その水素がやはり格納容器から漏れてきて、水素爆発を起こして原子炉建屋を吹き飛ばすというような事になったわけですね。
ですから、大変な事態がどんどんどんどん悪い方向に向かって進行してきた、ということになっているわけです。
でも原子炉を冷やすということはもう絶対にやらなければいけないことなので、東京電力としてはとにかく外部から水を入れるという作業を今日までずっと続けているのですね。
で、それをやると外部から入れた分だけの水は溢れてくる、というのはもう仕方がないわけで、それがタービン建屋というところの地下に溜まっているわけですし、さらにはトレンチと言っているコンクリート製の水路の中にも溢れてきている、あるいはピットという所にも溢れてきている、ということで、海にまたその一部が流れていって、汚染を広げているという状況なんですね。
ですから、これまでやってきた外からとにかく水を入れるという作業はもちろんやらなければいけなかったわけですけれども、それをやり続けるということがものすごい困難を伴っているわけです。
ですから、どうすればいいかと言えば、「外から入れて出す」、ということではなくて、循環できるような回路を作らなければいけないということ。
私は何よりもそれを回復してほしいと思い続けてきたわけで、電源がすでに回復されているわけですから、ポンプを正常に動くような状態にして、原子炉の中を冷やす回路を一つ作る、原子炉を冷やすために水を回すわけですけど、その水が熱くなって出てくるわけですから、その水を冷やすための熱交換器というのを用意して、そこでその熱交換器で海水を流して熱は海へ流すという、とにかくその二重のループを作りあげるということが絶対に必要だと思っていたわけです。
ところがさっき聞いていただいたように、原子炉圧力容器という炉心を入れているその容器自身がすでに穴が開いてしまって漏れている、ということですので、実はもうできないのです。
水を回すということがすでに出来なくなっているという、そういう状況になっているのですね。
これはどうしたらいいかと思って、私は悩みました。で、
今私が思っている方法、もちろんいい方法ではないし、それで乗り切れるかどうかも分かりませんけれども、でもこれしかないだろうと思っている方法は、一つあります。
それは原子炉圧力容器と原子炉格納容器を一体のものとして考える。原子炉圧力容器の中に水を入れますと、その水は結局格納容器に溢れてくるわけですけれども、格納容器の底にはサプレッション・チェンバー(圧力抑制室)というプールがあるのですが、そこに水が流れ落ちてくるはずです。その水をポンプで吸い上げて、また原子炉圧力容器の中に戻す、というそういうループ、大変異常なループですけれども、そのループを作って、その途中に熱交換器を入れて、熱を海へ回せるようにする。それを何とか作り上げるという作業が今求められているのだと思います。
ただ、そのループを作るためには、ものすごい被曝環境で、ポンプを新しく付けるか、あるいは今あるポンプを何とか動かすか、配管も既存のものが使えるか、あるいは新たに取り付けなければいけないか、ということも含めて、大変な被曝環境で作業をしなければいけないと思いますので、つらい選択ですけれども、それしかないだろうと思います。
それをやるためには多分まだ何日、何週間、あるいは月という単位で必要かもしれませんけども、やってほしい、と思います。
岩上:月という単位が必要というのは、その間にそういう作業ができる環境が整う、というお話なんでしょうか。それとも今から着手したらパイプの構築、ループの構築という作業が何カ月かかかって終了する、という意味でおっしゃっているんでしょうか。
小出:そうです(後者)。
私はその東京電力の福島原子発電所の配管がどのようにめぐらされているかという詳細データを持っていないのです。
それで、たとえば圧力容器が壊れていないということであれば、もともと東京電力は何の苦労もなく、電源を復旧してポンプさえ替えるとかいうことで出来ると思うんですけれども、今の状態はとてつもない異常な状態になってしまっているわけで、圧力容器と格納容器を一体のものとしてループを作れと私は言っているわけですけれども、そういうループを作るということが本当に出来るのか、ということも含めて、とっても難しいんだと思います。
それを知り尽くしている人は東京電力福島の人達なわけですから、彼らが知恵を絞って、出来る限り被曝をしないで済むように、どういうループが作れるかということの知恵を出して、やって欲しいと思っているわけです。
でも如何せん被曝環境が酷すぎるので、作業をするのにも困難が伴うでしょうし、大変だろうな、と思っています。
岩上:線量計についての質問…(省略)
岩上:被曝をしないで作業をするということは現実的に可能でしょうか。
小出:できないです。
これだけ酷い汚染になってしまえば、いかなることでも被曝をしないということはもうできません。
例えば鉛のスーツを着るとか言うことをすれば、何がしかのものを防ぐということはできますけれども、もうそんなものは瑣末というかですね、本当に知れた効果しかありません。
岩上:鉛のスーツというのは調達が可能なんですか?
小出:はい。可能だと思いますが…
岩上:でも、さしたる効果がない。
小出:はい。さしたる効果はありませんし、そんな鉛のスーツを着て動きが取れないまま作業をするよりは、身軽に動いて、そして被曝の時間を短縮するという方がむしろいいかもしれない。
ただ、吸い込んだり、あるいは身体に付着させたりということは絶対にやってはいけませんので、マスクをするなり、前に短靴のまま水の中に踏み込んでしまって被曝をしたという方がいましたけども、そんなことは絶対にしてはいけません。
専用の衣服を着て、水の中に入る時は長靴を履いたりするということは必要ですけども、それはそれなりに多分できるだろうと思います。
岩上:なるほど。これはタービン建屋あるいは原子炉建屋の内部でループを再構築するんですよね?
小出:そうです。
岩上:あ、建屋内部でやらなきゃいけない。そうすると今現在の放射線量というのはとてつもない数値になっている。近づいたら即死するんじゃないかという…
小出:格納容器の中になんか到底入れませんし、格納容器の中はもうずうっと、これから多分「年」という単位で入れないです。
ですからそこはもう何も手を付けない。中ではもう壊れているわけですけれども、とにかく格納容器の中に圧力容器というのがあって、そこはもう水が漏れている。それで格納容器の中に溜まっているわけですから、そこはもう今の状態のまま受け入れるしかありません。そういう状態でループを、水が回せるループを(格納容器の)外側で作る、ということになる。
岩上:格納容器自体も穴が開いて漏れているという話がありますね。
小出:はい、漏れています。
岩上:これはどうしたらいいんですか?
小出:どうしたらいい?どうしようもない。(苦笑)
岩上:つまり、一体にしても、圧力容器も穴が開いている、格納容器も穴が開いているでは、今言った密閉された、閉鎖された冷却のループというのが完成しない、またダダ漏れになってしまう。
小出:そうです。ただ、あの…(嘆息)、しょうがないんです。で、1号機の格納容器はまだ、それほど大きな破損を受けていないと思います。2号機が多分一番酷くて、サプレッション・チェンバー(圧力抑制室)という所で爆発が起きましたのでかなり壊れていると思います。
でもその壊れた部分を修理にはいけないと思います。ですから、ある程度の漏れはもう諦める。
それでとにかく原子炉さえ冷やせるならば、「最悪の事態」だけは逃れられる、ということなわけですから、それをやるしかない。
岩上:つまり外界に漏れ続けることをゼロにはできない。
小出:もちろんできません。今の状態で言えば。
岩上:そうすると数ヶ月か何年か、原子炉を冷やし続けて、(放射性物質が)外界に漏れ続ける。減らすことはできるかもしれないけれど、かなりの量は出てしまう。
小出:そうです。
岩上:またそれをダダ漏れにしないで例えば濾過してから放出するとか、いろんな気の使いかたがあるのかもしれないけれど。
小出:それは必ずやらなければいけない。
岩上:この間はいきなり出しちゃったわけですね。
小出:はい。いきなり出しました。
それは低レベルの汚染水を流す、と言ったわけですが、法律が出していいという濃度に比べれば、何百倍も高いというようなもので、決して「低レベル」ではないんですね。
私なんかから見ればもうとてつもない汚染水ですけれども、でもそれを出さざるを得ない。
なぜかと言えば、もっとはるかに汚染した水が大量にあって、それをどこかに受けるタンクが必要だったんですね。
それを受けるタンクがそこしかなかったもんですから、比較的汚染の少ない、それでもものすごい汚染水を海へ捨てて、そのようやくにして開けたところにめちゃくちゃに汚染した水を今、受け入れようとしているわけですね。でもそれもいずれ限度に達するわけで、そんなめちゃくちゃに高い濃度の汚染水を海に流すなんてことはもちろんできませんので、何か、始末の方法を考えなければならなくなると思います。
岩上:いずれこの環境中に、そうは言いながらもこの炉心を冷やしていく間にですね、大量の放射性物質を含んだ水を外界に出していかざるを得なくなる、その可能性は高い…。
小出:そんなことしちゃいけないわけですから、しないで済むような算段を考えて、とらなければいけないと思います。
私はある時に、巨大タンカーを連れてきて、その巨大タンカーに(汚染水を)入れて、柏崎刈羽原子力発電所に運ぶのがいい、と提案したのです。
柏崎刈羽原子力発電所にはそれなりの処理装置がありますので、あまりにも酷い汚染水なので柏崎刈羽でも処理しきれないとは思いますけれども、少なくともまずそっちへ移して、今福島に溜まっている水の量を減らすということはやるべきだろうと思いますし、今メガフロートを連れてきてそこへ1万トン位は移せるという案もあるらしいですし、とにかく何でもかんでも外には出さないような算段をしなければいけないと思います。
岩上:それでも何カ月から何年かに亘って、(放射性物質は)いわゆる原子炉の外部には出ざるを得ない。
圧力容器も穴が開いている、格納容器も穴が開いている、この放射性物質の「総量」(はどうなるか)。
放射性物質というのは原子炉の内部に大変な量が溜まっているわけですね、それがどのくらいの量でどのくらい環境に危険なものか、人体に危険なものか、それがみんな分からないんですね。
前、先生は1年間100万kwの原発を稼働させたら1基で広島型原爆1千発分の放射性物質がそこには溜まってしまっているんだ、と。
じゃあそこをかけ流しのようにして洗い流していたら途方もないものが出るんだろうと想像はつくんですけど。これがずっと流れ続ける(のを)、いろんな形で受け止めたり、あまりにも酷い形で拡散しないように堰き止めはするにしても、最終的には外界、原子炉外にどの程度の放射性物質が流出すると(先生ご自身は)お考えですか。
小出:ウランを燃やすと核分裂生成物という放射性核種ができるのですが、その放射性核種には何百種類もの様々な元素が含まれているのですね。
で、今大量に外に出ているのは、ヨウ素という一群の放射性核種と、それからセシウムという一群の放射性核種なんですが、それが何で今出ているかというと、揮発性なのです。
そういう揮発性の高い放射性核種が次々と外へ飛び出してきているという状態で、多分原子炉の中に溜まっていたヨウ素とかセシウムという放射性核種の場合には、もう数パーセントという割合が(外に)出ていると思います。
でもまあもともと100パーセントあるうちの数パーセントですから、まだいいわけですね。
私が本当に恐れている最悪のシナリオというのは、水蒸気爆発という爆発が起きて圧力容器も格納容器も破損する、というのが私の最悪シナリオなんですが、もしそういう最悪シナリオになってしまいますと、ヨウ素とかセシウムという放射性核種は何十パーセントという単位で出てくると思います。
ですから今の状況と桁違いの放射能が出てくる、ということになると思います。それを何とか防がなければいけないと私は思っているわけです。
ただし、今、ヨウ素とかセシウムの話を聞いて頂いて、それが揮発性だと言いましたけれども、揮発しにくい一群の放射性核種もたくさんあるのですね。たとえばストロンチウムもそうですけれども、なかなか揮発はしにくい。でも、ものすごい有害です、その放射能は。
それからプルトニウムという放射性核種もものすごい有害ですけれども、揮発はしにくい、というものなんですね。
でも福島(原発)の敷地の中でもうすでにプルトニウムが見つかっていることになっていますので、そういう揮発しにくいものも一部はすでに出てきているということなんですね。
ただ、今現在で言えば、本当に微量。東京電力も言っているように微量です。
もし私が恐れているような水蒸気爆発が起きてしまうと、そういうもの、プルトニウムであるとかストロンチウムであるとか、そういうものも数パーセント、あるいは悪い場合には十パーセントというような、ものが出てきてしまうだろう、ということを危惧しているわけです。
岩上:これは、水蒸気爆発が起こらないように、最悪の最悪のシナリオを抑え込むための冷却、水をかける、水をかけるけれども穴がある、どうしても外界に出てくる、それをプールあるいはタンカー、メガフロートで受け止めていく、受け止めていても、それだけダダ漏れをしていればその過程で外界に色々な形で出ていく、低濃度の水は海に流してしまう。
こんなことがずうっと続いて、しかも建屋も開きっぱなしですから外界にもどんどん出ていくと思います、大気中にも。
こういうことがダラダラダラダラ数カ月か数年続いた時に、水蒸気爆発とは別に、放射性物質というのはどの程度の量出ると思われますか?
それは、先生がおっしゃるように広島型原爆の1千発分(の核分裂生成物)が1年間(の稼働により生まれる)と、しかももっと長い間稼働していた炉ですよね。それが4つもあるわけです、1号から4号までと考えても。
どのくらいの量が出るんでしょうか。
小出:原子炉の中に溜まっているうちの、揮発性のものの何十パーセントかが出ると、私は思っているわけですし、不揮発性のものは今の状態を続けられるならば、そんなにたくさん出さないで収められるだろうと思っているわけです。
ですから水蒸気爆発をさせないように、不揮発性のものは少なくとも出さないようにと、で、揮発性のものも極端に大量には出さないようにするという作業を続けるしかない、と思っています。
岩上:数十パーセントというのはチェルノブイリの時に起こったわけですね。
小出:チェルノブイリの時にはセシウムは約30パーセント出ましたし、ヨウ素は50パーセントか60パーセントは出たと思います。
ですから、そんなような状態にさせないで、今の状態はまだ(数)パーセントの状態だと思いますので、それを何とか、今からまだ長時間続くわけですから、なるべくその量を抑えるということが必要だと思うんですね。
そのためには「水を入れて外に出す」というようなことでは駄目ですので、何とかその回路(二重ループ)を作らなければいけないという提案をしているわけです。
(中略)政治の話…省略
(京大小出氏4/10岩上インタビュー(2)へ続く。)
原発推進村の村人でない京大小出氏は、テレビ新聞等には出てこない。
氏のインタビューはラジオ、動画サイトには結構あるのだが、書き起こしが非常に少なく、探していました。
やっと見つけましたので、紹介します。
「夢見つつ深く植えよ」氏が多大な力を費やして、書き起こしてくださっていたので紹介します。
同氏に感謝いたします。
小出氏の説明は冷静で慎重です。
なお、原発の現状、マーク1の図面、破壊状況などの詳細はこちらにありますので、御覧ください。
こちらのかなり詳細な図面などの出処はこちらからが直接です。
読みやすくするために、私の責任で段落を付けてあります。
文字にするとよく理解できるとともに長文なので、コーヒーでも飲みながら、ゆっくりとお読みください。
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4/10小出氏インタビュー書き起こし
気になっている「再臨界」についてなるべく正しく理解したいと思い、小出裕章さんへのインタビュー映像を見ながら書き起こしさせてもらいました。インタビュアーはフリージャーナリストの岩上安身さんです。
文中のカッコ内は読みやすくするために私が入れた小見出しか、文脈上の説明か、補助的な追加語です。例:サプレッション・チェンバー(圧力抑制室)。また、太字や下線は自分で読みやすくするために付けたもので、ご本人達の意図ではありませんのでご注意を。文章だと分かりにくいと思うところは「てにをは」ぐらいは直したかもしれません。
長いインタビューで、もう少し読みやすくするために見出しや段落などをちゃんと作りたかったのですが、力尽きました。書き起こしたのはインタビューの開始から、53分間です。その中で2か所ですが省略したところもあります(線量計の手配と、政治家についての言及のところ)。誰かがやっているかもしれないけれど、「自分で」書き起こそうと思ったのは、「再臨界」の話が重要であまり誤解したくなかったからです。書き起こしていない、53分以降も大切な話をされていますので、ぜひ元のインタビュー映像をご覧ください。間違いがありましたら、ご指摘下さい。
元のインタビュー映像はこちら。 http://www.ustream.tv/recorded/13897618
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2011.4.10小出裕章氏インタビュー(インタビュアー:ジャーナリスト 岩上安身)
小出裕章 京大原子炉実験所助教(以下、小出):
原子炉というのはウランの核分裂を起こさせて、それから出てくるエネルギーを電気にするという、そういう機械システムなんですね。
でもウランの核分裂反応を抑えたところで、原子炉の中にすでに溜まってしまっていた核分裂生成物という物質が自分でエネルギーを出し続けますので、その熱を冷やさなければ原子力発電所は壊れてしまう、という、もともとそういう装置なわけです。
熱を奪い去るには「冷却」ということが必要なわけですが、水を流して、水に熱を移してそれで冷やすということをやるわけですが、水を入れるためにはポンプが動かなければいけない、ポンプを動かすためには電気がなければいけない、ということになるわけですが、今回の事故の場合には電源がすべて断たれてしまった、ということで、原子炉を冷やすことができなくなって、壊れる、という、そういう事態になっているのですね。
かなり深刻な壊れ方をすでにしていまして、ウランそのものがある場所というのは私達は「炉心」という言葉で呼びますが、その炉心という部分は「原子炉圧力容器」と私達が呼ぶ鋼鉄の容器の中に一応収められて、そこに閉じ込めてある、ということになっているのですが、今回の事故が始まってから、原子炉圧力容器がことごとく壊れてしまっています。
それは東京電力の発表によると、「下部に穴が開いているイメージだ」というようなことを、東京電力が言ったそうですけれども。
岩上安身(以下、岩上):(3月)28日未明でしたね
小出:はい。要するに、すでに穴が開いてしまっていると。それは、どうなのか、私にはよく分かりません。
福島の原子炉というのは「沸騰水型」という原子炉で、圧力容器自身は厚さが16センチもあるという、とてつもない、頑丈なはずの鋼鉄の容器なんですけれども、ただ、沸騰水型の場合にはその圧力釜の一番底から、制御棒を入れたり、中性子を計測するためのパイプを入れたりしていますので、そういうパイプの部分は、もちろん弱いのです。
そういう部分に穴が開いて漏れているという可能性もありますし、私が多分こうだろうと思っているのは、再循環系の配管というのがあるのですが、そこが折れているのではないか、と思っています。
岩上:配管そのものが折れていると。
小出:はい。折れているか、亀裂が入っているか分かりませんが、壊れているんだろうと、私は今は推定しています。
ただ、いずれにしてもその「原子炉圧力容器」と言っている、炉心を格納している容器そのもののどこかが、すでに壊れてしまっているという、そういう状態になっているわけです。
壊れてしまえばそこから水が漏れてしまうわけで、漏れた行き先は、原子炉圧力容器を閉じ込めている「原子炉格納容器」というまた更に大きな容器があるのですが、その中に次から次へと水が流れ落ちていく、そういうことになっているんだろうと、そういうふうに私は今、推定しています。
電源が無くなってから、とにかく水を入れなければいけないということで、東京電力もだいぶ苦闘した、と思います。
最終的には、利用できる真水がなかったので、海水を消防用のポンプ車で原子炉の中に送る、という決断をしたのですね。
それを一度やってしまうと、もう二度と原子炉は使えなくなります。でももう何が何でも冷やさなければいけない、ということで、やったわけですね。
でも、(それを)やっても、圧力容器にすでに損傷があるわけですし、水を入れて冷やせば蒸気になってきますから、その蒸気をどこかに逃がさなければいけない、ということもあって、結局は格納容器の方に蒸気を噴き出させて、そこで受け止めようとしたんですね。
しかし、格納容器の方も次から次へと蒸気が入ってきてしまいまして、設計耐圧が4気圧しかないのに、8気圧にもなってしまう、というようなことで、結局その放射能まみれの蒸気を外に捨てなければいけない、という事態に追い込まれたわけですね。
それで一部は炉心の温度が上がってしまいましたので、被覆管のジルコニウムという金属が水と反応して水素になったのですが、その水素がやはり格納容器から漏れてきて、水素爆発を起こして原子炉建屋を吹き飛ばすというような事になったわけですね。
ですから、大変な事態がどんどんどんどん悪い方向に向かって進行してきた、ということになっているわけです。
でも原子炉を冷やすということはもう絶対にやらなければいけないことなので、東京電力としてはとにかく外部から水を入れるという作業を今日までずっと続けているのですね。
で、それをやると外部から入れた分だけの水は溢れてくる、というのはもう仕方がないわけで、それがタービン建屋というところの地下に溜まっているわけですし、さらにはトレンチと言っているコンクリート製の水路の中にも溢れてきている、あるいはピットという所にも溢れてきている、ということで、海にまたその一部が流れていって、汚染を広げているという状況なんですね。
ですから、これまでやってきた外からとにかく水を入れるという作業はもちろんやらなければいけなかったわけですけれども、それをやり続けるということがものすごい困難を伴っているわけです。
ですから、どうすればいいかと言えば、「外から入れて出す」、ということではなくて、循環できるような回路を作らなければいけないということ。
私は何よりもそれを回復してほしいと思い続けてきたわけで、電源がすでに回復されているわけですから、ポンプを正常に動くような状態にして、原子炉の中を冷やす回路を一つ作る、原子炉を冷やすために水を回すわけですけど、その水が熱くなって出てくるわけですから、その水を冷やすための熱交換器というのを用意して、そこでその熱交換器で海水を流して熱は海へ流すという、とにかくその二重のループを作りあげるということが絶対に必要だと思っていたわけです。
ところがさっき聞いていただいたように、原子炉圧力容器という炉心を入れているその容器自身がすでに穴が開いてしまって漏れている、ということですので、実はもうできないのです。
水を回すということがすでに出来なくなっているという、そういう状況になっているのですね。
これはどうしたらいいかと思って、私は悩みました。で、
今私が思っている方法、もちろんいい方法ではないし、それで乗り切れるかどうかも分かりませんけれども、でもこれしかないだろうと思っている方法は、一つあります。
それは原子炉圧力容器と原子炉格納容器を一体のものとして考える。原子炉圧力容器の中に水を入れますと、その水は結局格納容器に溢れてくるわけですけれども、格納容器の底にはサプレッション・チェンバー(圧力抑制室)というプールがあるのですが、そこに水が流れ落ちてくるはずです。その水をポンプで吸い上げて、また原子炉圧力容器の中に戻す、というそういうループ、大変異常なループですけれども、そのループを作って、その途中に熱交換器を入れて、熱を海へ回せるようにする。それを何とか作り上げるという作業が今求められているのだと思います。
ただ、そのループを作るためには、ものすごい被曝環境で、ポンプを新しく付けるか、あるいは今あるポンプを何とか動かすか、配管も既存のものが使えるか、あるいは新たに取り付けなければいけないか、ということも含めて、大変な被曝環境で作業をしなければいけないと思いますので、つらい選択ですけれども、それしかないだろうと思います。
それをやるためには多分まだ何日、何週間、あるいは月という単位で必要かもしれませんけども、やってほしい、と思います。
岩上:月という単位が必要というのは、その間にそういう作業ができる環境が整う、というお話なんでしょうか。それとも今から着手したらパイプの構築、ループの構築という作業が何カ月かかかって終了する、という意味でおっしゃっているんでしょうか。
小出:そうです(後者)。
私はその東京電力の福島原子発電所の配管がどのようにめぐらされているかという詳細データを持っていないのです。
それで、たとえば圧力容器が壊れていないということであれば、もともと東京電力は何の苦労もなく、電源を復旧してポンプさえ替えるとかいうことで出来ると思うんですけれども、今の状態はとてつもない異常な状態になってしまっているわけで、圧力容器と格納容器を一体のものとしてループを作れと私は言っているわけですけれども、そういうループを作るということが本当に出来るのか、ということも含めて、とっても難しいんだと思います。
それを知り尽くしている人は東京電力福島の人達なわけですから、彼らが知恵を絞って、出来る限り被曝をしないで済むように、どういうループが作れるかということの知恵を出して、やって欲しいと思っているわけです。
でも如何せん被曝環境が酷すぎるので、作業をするのにも困難が伴うでしょうし、大変だろうな、と思っています。
岩上:線量計についての質問…(省略)
岩上:被曝をしないで作業をするということは現実的に可能でしょうか。
小出:できないです。
これだけ酷い汚染になってしまえば、いかなることでも被曝をしないということはもうできません。
例えば鉛のスーツを着るとか言うことをすれば、何がしかのものを防ぐということはできますけれども、もうそんなものは瑣末というかですね、本当に知れた効果しかありません。
岩上:鉛のスーツというのは調達が可能なんですか?
小出:はい。可能だと思いますが…
岩上:でも、さしたる効果がない。
小出:はい。さしたる効果はありませんし、そんな鉛のスーツを着て動きが取れないまま作業をするよりは、身軽に動いて、そして被曝の時間を短縮するという方がむしろいいかもしれない。
ただ、吸い込んだり、あるいは身体に付着させたりということは絶対にやってはいけませんので、マスクをするなり、前に短靴のまま水の中に踏み込んでしまって被曝をしたという方がいましたけども、そんなことは絶対にしてはいけません。
専用の衣服を着て、水の中に入る時は長靴を履いたりするということは必要ですけども、それはそれなりに多分できるだろうと思います。
岩上:なるほど。これはタービン建屋あるいは原子炉建屋の内部でループを再構築するんですよね?
小出:そうです。
岩上:あ、建屋内部でやらなきゃいけない。そうすると今現在の放射線量というのはとてつもない数値になっている。近づいたら即死するんじゃないかという…
小出:格納容器の中になんか到底入れませんし、格納容器の中はもうずうっと、これから多分「年」という単位で入れないです。
ですからそこはもう何も手を付けない。中ではもう壊れているわけですけれども、とにかく格納容器の中に圧力容器というのがあって、そこはもう水が漏れている。それで格納容器の中に溜まっているわけですから、そこはもう今の状態のまま受け入れるしかありません。そういう状態でループを、水が回せるループを(格納容器の)外側で作る、ということになる。
岩上:格納容器自体も穴が開いて漏れているという話がありますね。
小出:はい、漏れています。
岩上:これはどうしたらいいんですか?
小出:どうしたらいい?どうしようもない。(苦笑)
岩上:つまり、一体にしても、圧力容器も穴が開いている、格納容器も穴が開いているでは、今言った密閉された、閉鎖された冷却のループというのが完成しない、またダダ漏れになってしまう。
小出:そうです。ただ、あの…(嘆息)、しょうがないんです。で、1号機の格納容器はまだ、それほど大きな破損を受けていないと思います。2号機が多分一番酷くて、サプレッション・チェンバー(圧力抑制室)という所で爆発が起きましたのでかなり壊れていると思います。
でもその壊れた部分を修理にはいけないと思います。ですから、ある程度の漏れはもう諦める。
それでとにかく原子炉さえ冷やせるならば、「最悪の事態」だけは逃れられる、ということなわけですから、それをやるしかない。
岩上:つまり外界に漏れ続けることをゼロにはできない。
小出:もちろんできません。今の状態で言えば。
岩上:そうすると数ヶ月か何年か、原子炉を冷やし続けて、(放射性物質が)外界に漏れ続ける。減らすことはできるかもしれないけれど、かなりの量は出てしまう。
小出:そうです。
岩上:またそれをダダ漏れにしないで例えば濾過してから放出するとか、いろんな気の使いかたがあるのかもしれないけれど。
小出:それは必ずやらなければいけない。
岩上:この間はいきなり出しちゃったわけですね。
小出:はい。いきなり出しました。
それは低レベルの汚染水を流す、と言ったわけですが、法律が出していいという濃度に比べれば、何百倍も高いというようなもので、決して「低レベル」ではないんですね。
私なんかから見ればもうとてつもない汚染水ですけれども、でもそれを出さざるを得ない。
なぜかと言えば、もっとはるかに汚染した水が大量にあって、それをどこかに受けるタンクが必要だったんですね。
それを受けるタンクがそこしかなかったもんですから、比較的汚染の少ない、それでもものすごい汚染水を海へ捨てて、そのようやくにして開けたところにめちゃくちゃに汚染した水を今、受け入れようとしているわけですね。でもそれもいずれ限度に達するわけで、そんなめちゃくちゃに高い濃度の汚染水を海に流すなんてことはもちろんできませんので、何か、始末の方法を考えなければならなくなると思います。
岩上:いずれこの環境中に、そうは言いながらもこの炉心を冷やしていく間にですね、大量の放射性物質を含んだ水を外界に出していかざるを得なくなる、その可能性は高い…。
小出:そんなことしちゃいけないわけですから、しないで済むような算段を考えて、とらなければいけないと思います。
私はある時に、巨大タンカーを連れてきて、その巨大タンカーに(汚染水を)入れて、柏崎刈羽原子力発電所に運ぶのがいい、と提案したのです。
柏崎刈羽原子力発電所にはそれなりの処理装置がありますので、あまりにも酷い汚染水なので柏崎刈羽でも処理しきれないとは思いますけれども、少なくともまずそっちへ移して、今福島に溜まっている水の量を減らすということはやるべきだろうと思いますし、今メガフロートを連れてきてそこへ1万トン位は移せるという案もあるらしいですし、とにかく何でもかんでも外には出さないような算段をしなければいけないと思います。
岩上:それでも何カ月から何年かに亘って、(放射性物質は)いわゆる原子炉の外部には出ざるを得ない。
圧力容器も穴が開いている、格納容器も穴が開いている、この放射性物質の「総量」(はどうなるか)。
放射性物質というのは原子炉の内部に大変な量が溜まっているわけですね、それがどのくらいの量でどのくらい環境に危険なものか、人体に危険なものか、それがみんな分からないんですね。
前、先生は1年間100万kwの原発を稼働させたら1基で広島型原爆1千発分の放射性物質がそこには溜まってしまっているんだ、と。
じゃあそこをかけ流しのようにして洗い流していたら途方もないものが出るんだろうと想像はつくんですけど。これがずっと流れ続ける(のを)、いろんな形で受け止めたり、あまりにも酷い形で拡散しないように堰き止めはするにしても、最終的には外界、原子炉外にどの程度の放射性物質が流出すると(先生ご自身は)お考えですか。
小出:ウランを燃やすと核分裂生成物という放射性核種ができるのですが、その放射性核種には何百種類もの様々な元素が含まれているのですね。
で、今大量に外に出ているのは、ヨウ素という一群の放射性核種と、それからセシウムという一群の放射性核種なんですが、それが何で今出ているかというと、揮発性なのです。
そういう揮発性の高い放射性核種が次々と外へ飛び出してきているという状態で、多分原子炉の中に溜まっていたヨウ素とかセシウムという放射性核種の場合には、もう数パーセントという割合が(外に)出ていると思います。
でもまあもともと100パーセントあるうちの数パーセントですから、まだいいわけですね。
私が本当に恐れている最悪のシナリオというのは、水蒸気爆発という爆発が起きて圧力容器も格納容器も破損する、というのが私の最悪シナリオなんですが、もしそういう最悪シナリオになってしまいますと、ヨウ素とかセシウムという放射性核種は何十パーセントという単位で出てくると思います。
ですから今の状況と桁違いの放射能が出てくる、ということになると思います。それを何とか防がなければいけないと私は思っているわけです。
ただし、今、ヨウ素とかセシウムの話を聞いて頂いて、それが揮発性だと言いましたけれども、揮発しにくい一群の放射性核種もたくさんあるのですね。たとえばストロンチウムもそうですけれども、なかなか揮発はしにくい。でも、ものすごい有害です、その放射能は。
それからプルトニウムという放射性核種もものすごい有害ですけれども、揮発はしにくい、というものなんですね。
でも福島(原発)の敷地の中でもうすでにプルトニウムが見つかっていることになっていますので、そういう揮発しにくいものも一部はすでに出てきているということなんですね。
ただ、今現在で言えば、本当に微量。東京電力も言っているように微量です。
もし私が恐れているような水蒸気爆発が起きてしまうと、そういうもの、プルトニウムであるとかストロンチウムであるとか、そういうものも数パーセント、あるいは悪い場合には十パーセントというような、ものが出てきてしまうだろう、ということを危惧しているわけです。
岩上:これは、水蒸気爆発が起こらないように、最悪の最悪のシナリオを抑え込むための冷却、水をかける、水をかけるけれども穴がある、どうしても外界に出てくる、それをプールあるいはタンカー、メガフロートで受け止めていく、受け止めていても、それだけダダ漏れをしていればその過程で外界に色々な形で出ていく、低濃度の水は海に流してしまう。
こんなことがずうっと続いて、しかも建屋も開きっぱなしですから外界にもどんどん出ていくと思います、大気中にも。
こういうことがダラダラダラダラ数カ月か数年続いた時に、水蒸気爆発とは別に、放射性物質というのはどの程度の量出ると思われますか?
それは、先生がおっしゃるように広島型原爆の1千発分(の核分裂生成物)が1年間(の稼働により生まれる)と、しかももっと長い間稼働していた炉ですよね。それが4つもあるわけです、1号から4号までと考えても。
どのくらいの量が出るんでしょうか。
小出:原子炉の中に溜まっているうちの、揮発性のものの何十パーセントかが出ると、私は思っているわけですし、不揮発性のものは今の状態を続けられるならば、そんなにたくさん出さないで収められるだろうと思っているわけです。
ですから水蒸気爆発をさせないように、不揮発性のものは少なくとも出さないようにと、で、揮発性のものも極端に大量には出さないようにするという作業を続けるしかない、と思っています。
岩上:数十パーセントというのはチェルノブイリの時に起こったわけですね。
小出:チェルノブイリの時にはセシウムは約30パーセント出ましたし、ヨウ素は50パーセントか60パーセントは出たと思います。
ですから、そんなような状態にさせないで、今の状態はまだ(数)パーセントの状態だと思いますので、それを何とか、今からまだ長時間続くわけですから、なるべくその量を抑えるということが必要だと思うんですね。
そのためには「水を入れて外に出す」というようなことでは駄目ですので、何とかその回路(二重ループ)を作らなければいけないという提案をしているわけです。
(中略)政治の話…省略
(京大小出氏4/10岩上インタビュー(2)へ続く。)
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京大小出氏4/10岩上インタビュー(2)
2011-04-17
(京大小出氏4/10岩上インタビュー(1)からの続きです。)
(「再臨界」の可能性について)
岩上:最悪のシナリオの一歩手前のシナリオです、(圧力容器や格納容器に)穴が開いているというのは。
ところがもっと最悪のシナリオがあります。
再臨界です。先生は再臨界の可能性についてこれまでも度々言及をされてきましたが、ここへ来てにわかに緊張が高まっております。
というのは、クロル38、塩素38という物質が検出されたと。これは再臨界の確たる証拠であるというご発言をされている。
そして(中略)アメリカの学者が、全く文脈が違う所で、おそらく先生とは全然コンタクトも取っていない所で、やっぱり自然科学の学者というのは普遍性を持っていますから同じエビデンスからやはり同じような分析を引き出すんだなと思ったんですけれども、ヨウ素の量、それが減らないということ、クロル38という物質が検出されたというこの点を以て再臨界が起こっていると分析しています。
この点について、もう再臨界が起こってしまったらば破局なんだ、我々も「ああおしまいだ」というイメージを持っておりますが、それが正しいのかどうか、ということも含め、その再臨界とは何か、そして本当に起こっているのかどうか、ご見解をお聞きしたいと思います。
(再臨界とは何か)
小出:はい。初めに聞いて頂いたけれども、原子力発電というのはウランの核分裂を起こさせてエネルギーを取り出すシステムですが、地震に襲われるというようなことになったら、まずは核分裂反応を止めなければいけないんですね。
そのために制御棒という棒を原子炉の中に挿入しまして、核分裂反応はとにかく止める、ということをまず何よりも先にやるのです。
今回はどうもそれは成功したのではないかと私は期待もしていますし、多分そうだろうと思っているのです。
ただし、すでに溜まってしまっていた核分裂生成物という、その放射能自身が崩壊熱という熱を出すためにここまで追い込まれてしまったわけですね。
なんとかその崩壊熱の分は冷やさなければいけないということなのですが、もし、一度止めたつもりのウランの核分裂反応がもう一度起きてしまうというようなことになると、またそこから熱が出てきてしまうということになって、それをどうやって冷やすかというまた困難が伴ってしまうわけですね。
ですから何とかそのウランの核分裂反応だけは、もう二度と起こさないようにしなければいけないと、皆思ってきたわけですけれども、一度は止めたと思っているウランの核分裂反応がまた起きてしまう、ということを私達は「再臨界」という言葉で呼んでいるわけです。
(なぜ再臨界を疑うか…クロル38とは)
その可能性は私は実は少ないだろうとずっと思ってきまして、とにかくその崩壊熱を冷やすことができるなら、この破局を乗り越えられると思ってきたわけですが、最近になって、東京電力が公表しているデータを見る限り、再臨界を疑う以外説明がつかないというふうに思うようになってきているわけです。
それは今、岩上さんがおっしゃってくれたけれども、クロルの38という放射性核種があるのですが、それが東京電力によって検出されたと、言われているわけです。
そのクロル38、塩素の38という放射性核種ですけれども、それは、天然にある塩素が中性子を受けて生成されるものです。
ただ寿命が37分で短いので、運転中にはもちろんあったとしても、核分裂反応が止まって、もう中性子が出なくなるとすれば、クロルの38というのはすぐになくなってしまって、今になって検出されるなんてことはないのです。
ところが、3月の末でまだクロルの38が検出されるということを東京電力が公表したわけです。
もしそうであるとすると、継続的にクロル38が生まれている、ということになるわけで、そうなるとじゃあ中性子はどこから来ているのか、ということになります。
(クロル38…再臨界「以外」の可能性について)
そしてその中性子の出る源は核分裂反応以外にももう一つあってですね、原子炉の中に超ウラン元素と私達が呼ぶ一群の放射性核種が運転中に溜まってくるのですが、その超ウラン元素の中のキュウリウム242とか244とかいう、ちょっと特殊な放射性核種ができるんですが、そういうものは自分で、自発的に核分裂する、自発核分裂と私達が呼ぶような現象があって、中性子を出すのです。
ですから今、原子炉は止まっていると言いますけれども、中性子がゼロではないのです。
しかし東京電力が公表したクロルの量というのは、ものすごい量、濃度になっています。
多分、自発核分裂だけでは説明できませんし、今のデータを見る限りは臨界、再臨界ということが、起きたのではないかというふうに私はますます疑いを深めているという、そういう状態です。
(再臨界が起きると「破局」なのか…原爆の「臨界」と今起きている「再臨界」の違い)
ただ、再臨界ということが起きてしまうと、何かもう破局なのか、というふうに皆さん思われているかもしれませんが、そうではありません。
例えば、広島の原爆ってどうやってできていたかというと、一方にウランの塊をまず置きました、何も起きません。
ただウランという金属がここにある。もう一つの方にウランの塊を置きます、何も起きません。それを火薬で一か所に集める、一つの場所にある一定量以上のウランが集まるという、そういう状態を作り出すと初めて「臨界」という状態になって、ウランの核分裂が始まるという、そういうのが私達が知っている物理現象なのです。
そういう物理現象に基づいて原爆というのも作られているわけです。
今起きている再臨界というのは、原子炉の中にウランがあったわけですね。
で、その中に制御棒が差し込まれて、ようやくそのウランの核分裂反応を止めたと思っているわけですが、すでにもう1号機で言えば、東京電力の説明でも70%は損傷しているというふうに言っていて、その燃料の損傷というのはですね、どういうことかというと、炉心の中の燃料というのは直径1センチで長さが4メートルという、燃料棒被覆管という細長いパイプが林立しているのですね。
で、その細長いパイプの中にウランの燃料ペレットという、直径約1センチ、高さが1センチぐらいの、小指の先くらいのちいちゃな瀬戸物がその被覆管の中にいっぱい詰まっているという状態でできているのです。
この被覆管というのがジルコニウムという金属でできているのですが、このジルコニウム金属は温度が850度位になると周りの水と反応を始めます。
それで水素を発生します。発生した水素は、水素爆発を起こして建屋を吹き飛ばしたわけですが、その反応は発熱反応なので、一度反応が始まってしまうと次々と熱を出して、周りのジルコニウムをまた反応させるという悪循環に陥るのです。
水から露出した部分でそういう反応が起きたわけですけれども、今、燃料棒のある部分は水から露出しているということは東京電力も認めていて、そのために被覆管が反応して壊れてしまっているわけですね。それが7割、70パーセントと言っているのはそのこと(被覆管の損傷)だと私は思います。
(被覆管の損傷→燃料ペレットが崩れる→崩れたものが一か所に集まる→再臨界)
そうすると、この被覆管が無くなってしまうわけですね。
そうするとじゃあどうなるかというと、小指の先くらいの大きさのウランのペレットと言っているものが、もう支えてくれるものがありませんから、ぐずぐずと崩れてくる、という、そういう状態になるのです。それが原子炉のある部分に溜まってしまって、一つの大きな塊になってしまうと、一度収めた臨界ということがそこでまた起きてしまうということを私達は恐れてきたわけですね。
(再臨界すると→発熱→膨張→ウランの密度が減少→臨界状態が止まる→温度が下がる→またウランが集まる→再臨界、の繰り返し)
でも、じゃあ臨界が起きたらどうなるかというと、そこで熱が出るわけですから、熱が出ると必ずその場所は膨張します。
膨張すると、要するに、一か所に集まっているウランの量というのが全体的にはその密度が減るわけですから、臨界という状態が今度はなくなります。
でも、それで熱が出なくなると、その所にまたウランが集まってくるということになるでしょうから、また臨界になって熱が出る、そういうことを繰り返しているのではないか、ということを私は今疑っているわけです。
岩上:なるほど。臨界を起こすけれども熱を帯びると(膨張した結果、ウランの密度が下がり)また一旦臨界でなくなる、それで再臨界がまた始ったり、再々臨界が始ったりと。
小出:そう。そういう、ウランがぶすぶす、ぶすぶすと燃えるという状況が私の呼ぶ再臨界なんですね。
爆発をする、というようなこととは違うと思います。
岩上:一定程度(ウランが)集まった所で、いわゆるこれはメルトダウンで、そして水蒸気爆発が起こり、再臨界というものすごい高熱を発してですね、水蒸気爆発をすぐに呼び込んで吹っ飛ばす、という、こういうイメージを持っているんですがそうではない、と。
小出:ではない。ただ私が恐れている水蒸気爆発とはどういう現象で起きるかというと、炉心というところで、今は燃料ペレットですけれども、被覆管は7割も壊れているわけですね、じゃあ燃料ペレットがどこまで溶けているかというと、私はまだ少ないだろうと思います。発電所の敷地の中でプルトニウムがすでに見つかっていますので、燃料ペレットが溶けていることは確実です。
岩上:これは関わりがあるんですね。
プルトニウムの検出というのは、猛毒が現れたという、人体への直接的な被害を心配して大騒ぎになっていますが、そのことよりも、プルトニウムの検出は実は被覆管の損傷だけではなく、その中にあるペレットの溶融とか、
小出:そうです。ペレットが溶けているということの証拠として重要だと思います。
岩上:これは東電にもぶつけて、私は質問しました、しつこくここの所も。
(東電は)被覆管の70パーセント損傷は認めてます。ただペレットがかなり溶けてしまっている、それを理由としてプルトニウムが見つかっているんだと、(プルトニウム検出は燃料ペレットが溶けていることの)その証左である、ここの関係については、色々な言葉を変えながら、何というか、「丸めこもう」的な態度なんですね。
でも全く否定をしませんでした。どういうことなんでしょうか。それを教えて下さい。
小出:はい。東京電力としてはウランの燃料ペレットが溶けるということはできれば認めたくないのですね。
ジルコニウムという金属自身は、さっきも聞いて頂いたけど、850度を過ぎれば反応してしまって崩れる、という、そういうものなんですけれども、ウランの燃料ペレット自身は2800度くらいにならないと溶けないのです。
ですから、そんな高い温度にすでに原子炉の中がなってしまっていると、いうことは、やはり東電としては認めたくないのですね。
でも私は一部の燃料ペレットが溶けてしまっていることは確実だと思いますけれども、炉心全体の中のほぼ100トンはあるようなウランの燃料ペレットの全体が溶けているとは思わない。
岩上:100トンあるんですか?
小出:はい。
岩上:一個の原子炉の中に?
小出:そうです。まあ福島の1号炉は46万キロワットですから、数十トンしかないと思いますけれども、そういう単位であるわけですよ。それが、全体が溶けているとは私は思わないのです。全体を溶かしてしまわないように、水をかけ続けて冷却しなければいけない、ということが今やっている作業なわけです。
で、もしかなりの部分が溶けてしまう、というようなことになると、それは溶けて落ちる、炉心部から溶けて落ちる=メルトダウン、という現象に私はなると思うのですが、その溶けて落ちた下に、…炉心というのは圧力容器という鋼鉄の容器の真ん中からちょっと下の部分にあるのですが、その部分でウランの燃料ペレットのかなりの部分が溶けて、それが下に落っこって行った時に、圧力容器の底にもし水が残っていたとすると、その水に落下した時に水蒸気爆発が起きるのです。
それは、どうしても私は避けてほしいと思っていて。
そういうことになると、そこで水蒸気爆発が起きて圧力容器が壊れるだろうと思っているわけです。壊れてしまうと、圧力容器のすぐ外側に格納容器という比較的ペラペラの容器があるわけで、その格納容器が放射能を閉じ込める最後の防壁ですけれども、それも壊れるだろうと思って、それをとにかく避けなければいけないいるわけです。
そのためには炉心部にあるウランペレットの大部分、というか、かなりのものが溶けるというような状態を、避けなければいけない。
でも崩壊熱だけでも、放っておいたら溶けてしまうわけで、今、水を入れているわけです。
でもそこでまた再臨界というような状態になると、ウランの核分裂反応が熱を出します、ぶすぶすと燃える、と私はさっき表現したけれども、要するに熱がまた出てくるわけです。
ですからその分も冷やしてやらなければ、余計またメルトという方向に向かってしまうことになりますので、とっても綱渡りの冷却、というのを今、やってきたし、これからもやらなければいけない。
(揮発性でないプルトニウムが敷地内で検出=「燃料ペレット溶融の証拠」)
岩上:プルトニウムの検出がウランペレットの溶融の証拠というのはどういうことなんですか。
小出:プルトニウムは揮発性でも何でもありませんし、(ウラン燃料ペレットが)溶けない限りはほとんど出てくることはないだろうと、思っているわけです。
要するにペレットというのは瀬戸物なんですよね。ウランで作った瀬戸物ですけれども、その瀬戸物の中にウランという物質も溜まってくるわけです。
核分裂生成物であるヨウ素とかセシウムも溜まってくるわけですけれども、揮発性のものであれば瀬戸物の中から飛び出してくる、ということはあり得るわけですけれども、プルトニウムは揮発性でも何でもありませんので、瀬戸物の中からまずは出てこないと思うわけです。
その瀬戸物が溶けてしまった時に初めて外部に、多分蒸気にさらされているんだと思いますが、そういう蒸気の流れに乗って、外に出てくる、というのが私の推測です。
(再臨界が起きるとどうなるか→「熱」と「核分裂生成物」が発生)
岩上:なるほど。(プルトニウムの)検出はそういう(燃料ペレット溶融の)証拠になるわけですね。
再臨界が起こったらぶすぶすと続く、ということですが、それはどんなことをもたらすのか、これまで以上の放射線量が表に出てくる、あるいは次の段階で大きな最悪を呼び起こすことを意味するのか…
小出:二つのことがあるわけですね。
再臨界というのはウランの核分裂反応が始まるということですから、核分裂反応で生み出されるものは二つです。熱と核分裂生成物という放射能です。
熱の方はメルトダウンという現象につながりますので、何とか冷やすという作業を増加するというか、(綱渡りの作業がこれまで以上に)難しい状態に追い込まれるということですね。それが失敗すればメルトダウンということになって最悪の事態に直行するとになるわけです。
もう一つの核分裂生成物の方は要するに放射能ですので、それがもともと核分裂反応を止めたということが本当であるならば、それぞれの寿命でどんどんどんどん減っていってくれる、放射性物質はそうなるんですけれども、新たにそれをまたどんどん生み出してしまうということになれば、外界に出てくる放射性物質の量も増えざるを得ないわけですし、一昨日(4月8日)、1号機の格納容器の中で放射線量率が3倍くらいに急激に増えました。
私はその急激に増えたということも、その時に再臨界ということで、核分裂生成物が新たに生み出されたものが格納容器の中に噴き出してきたのではないか、ということを疑っているわけです。
格納容器の中に噴き出してくれば、格納容器に損傷がありますので、それはまた外部に出てくるということにつながってしまうわけです。
(「最悪」はどこまであり得るか)
岩上:そうすると、「最悪の最悪」の破局がメルトダウンだとすると、
小出:メルトダウンと、水蒸気爆発です。
岩上:メルトダウンと水蒸気爆発ですね、メルトダウンによって水蒸気爆発が起こらないのであればまだ破局一歩手前なんですけども、水蒸気爆発が「最悪の最悪の最悪」だとすると、恐らく、これがもし起こってしまったらば、1号機でも2号機でも3号機でも、どれか一基起こってしまうと、もうその周りで作業とか修繕とか冷却とか、ということができなくなりますよね。
小出:そうです。
岩上:ということは、自動的に1,2,3,4が続けてメルトダウンを起こしていくという、
小出:最悪の場合はそうなるわけですね。
岩上:最悪の場合は。そうするとチェルノブイリは4号炉だけでした。
もし「最悪の最悪の最悪」を覚悟するとしたらば、再臨界からメルトダウン、そして水蒸気爆発、その連鎖となって、その時に起きる破局といいますか、我々が覚悟しなきゃいけない「最悪」はどんなことになりますか。
(中断)
(「最悪の最悪の最悪」を考える…)
岩上:「最悪を覚悟して最善を尽くす」ということじゃなければいけないんだろうなと、思うんですけど、今、政府、東電、それからマスコミもそうです、「最悪の最悪の最悪」を考えて、語り、論じることをしていないんです。水蒸気爆発が連鎖した場合の「最悪」というのはどのくらいのダメージをお考えでしょうか。
小出:チェルノブイリの原子力発電所というのは、1から4号機あったんですが、4号機だけが爆発しました。
ちょうど100万キロワットという原子炉でした。
今、福島の1号機から4号機まで合わせると、約300万キロワットの出力がありますので、チェルノブイリ原子力発電所の約3倍の出力がある、ということですから、関係してくる放射能も3倍あるわけですね。
どこか1か所の原子炉が、本当に私が恐れているような破局的な事故になったとすると、恐らく今、岩上さんがおっしゃったように、発電所の中の作業ができなくなると思いますので、次々とやはり壊れていくだろうと思います。
そうなると原子炉の炉心の中にある燃料だけでもチェルノブイリ原子力発電所の3倍あるわけです。
おまけに困ったことには使用済み燃料プールというものの中に、炉心の中に入っていたのと匹敵する、あるいはそれよりも多いほどの使用済み燃料が溜まっているわけです。
それもこの間、東京の消防庁が行ったり、自衛隊が行ったりして放水を繰り返してきたわけですけれども、その作業もできなくなりますので、やはりそれも壊れてしまう、ということになりますので、チェルノブイリ原子力発電所の3倍どころではない、6倍、7倍、8倍、あるいは10倍というような放射能が、危機に瀕するということになると思います。
「最悪の最悪の最悪」というようなことを考えるなら、もちろんそれも考えなければいけないし、同じ敷地の中には5号炉、6号炉というのもあって、そこにも大量の放射能が入っているわけですから、大変だろうと思います。
岩上:途方もないことになってしまう。これは日本列島に人が住めなくなってしまうようなレベルですか?
小出:チェルノブイリ原子力発電所の事故はどうだったかというと…、まず周辺30kmの人達は強制避難させられました。
それからしばらく経ってから、発電所の敷地から200あるいは300km離れた所までが高密度の汚染を受けているということで、そこもまた強制避難させられました。
そうこうするうちにソ連という国家自身が潰れてしまって、人々をその汚染地帯から救出することができなくなったわけですが、でもきちっと調べてみたら、発電所の敷地から700km離れた彼方まで、風下にあたった所は日本の法律に照らして「放射線管理区域」にしなければいけない、というほどの汚染を受けていたのですね。
それでもし福島の原発から700kmという距離を考えたら、ほとんど日本中安全な所がない、この関西にしても範囲に入ってしまうというぐらいの距離なわけですね。それのまた何倍というような放射能が関係してくるとすれば、もっと被害が拡がるわけですので、…まあ、大変なことになるでしょうね。
(「再臨界」を食い止めるには…ホウ素注入について)
岩上:「最悪の最悪の最悪」はそこだとして、その二歩ぐらい手前の再臨界を食い止めていくには手があると、ホウ素を注入すればいいという話でしたが、これは?
小出:ホウ素というのは中性子をものすごい吸収する物質でして、ホウ素をもし原子炉の中に、その再臨界している所にうまく送り込めるのであれば、ホウ素が中性子を吸収してしまいますので、ウランが吸収する分がなくなると。
そのために臨界反応が止まるという、そういうことになります。
岩上:それはどの程度効果があるんですか?
小出:ちゃんとその再臨界を起こしている場所にホウ素が届くのであれば、かなり効果的に再臨界を抑えることができます。
岩上:現時点でそれはうまく出来ているんでしょうか。
小出:私は、もともとは再臨界は起きていないというふうに思っていたわけです。制御棒はちゃんと入っていたろうし、燃料が崩れたとしてもホウ素を入れている限りは再臨界を抑えることができたはずだと思っているわけですけれども、どうもその、東京電力は途中からホウ素を原子炉に送る、ということをやらなくなったのではないか、と私は今疑っているのです。
それは多分色んな理由があるんでしょうけれども、初めから海水を入れだしたんですよね。原子炉をとにかく冷やさなければいけないということで。でも海水の中には塩がたくさん入っているわけです。
入れた海水はどんどんどんどん蒸発して蒸気が出ていくわけですけれども、塩は多分どんどん煮詰まって行って、あっちこっちに塩の塊が析出してくる、という状態になっていると思うんですね。
それが例えば原子炉を冷やす流路、水の流れを妨げるというようなことにもつながっているかもしれませんし、これからもしポンプを動かそうと思っても、ポンプが動かないとかですね、そういうことの障害にもなるだろうと思っているんです。
同じようにホウ素という物質も、大量に入れてしまうとそれがあちこちに析出することになりますので、東京電力としてはあまり入れたくなかった、ということもあるのかもしれません。
でも、もし再臨界という現象が起きているのだとすれば、もう何をおいても(ホウ素を)入れなければいけない、と思います。
岩上:正しく入れることができているか、届かせることができているか、という点はどうなんでしょう。
小出:それはよく分からないのです。今その東京電力は原子炉の中に水を送っているわけですけれども、圧力容器と言っている中にも結構複雑な構造をしていまして、どこの場所に外から水を入れているか、ということで、今再臨界になっている場所に本当にその、入れた水、これから入れるとすればホウ素が届くかどうかというのは、今私にはよく分からないです。
炉心という部分と、ダウンカバーという部分があるのですが、ダウンカバーにもし入れたとしてもダウンカバーの所でぐるっと回ってそのまま出ていってしまうという可能性もありますので、それは福島(原発)の人達がちゃんと考えて対処して欲しい、と思います。
--------------------------------
この後は、
(00:53:00~01:01:00)福島以外の原発や、もんじゅ、六ヶ所村再処理施設等の危険度について10分弱。
(01:01:00~01:18:00)「原子力がなくても電力はまかなえる」、「それどころかバカげた原子力のおかげで経済的にも損している」という内容。
元のインタビュー映像(USTREAM)「京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く」(2011/4/10 iwakamiyasumi)をご覧ください。
(2011.4.16)
(「再臨界」の可能性について)
岩上:最悪のシナリオの一歩手前のシナリオです、(圧力容器や格納容器に)穴が開いているというのは。
ところがもっと最悪のシナリオがあります。
再臨界です。先生は再臨界の可能性についてこれまでも度々言及をされてきましたが、ここへ来てにわかに緊張が高まっております。
というのは、クロル38、塩素38という物質が検出されたと。これは再臨界の確たる証拠であるというご発言をされている。
そして(中略)アメリカの学者が、全く文脈が違う所で、おそらく先生とは全然コンタクトも取っていない所で、やっぱり自然科学の学者というのは普遍性を持っていますから同じエビデンスからやはり同じような分析を引き出すんだなと思ったんですけれども、ヨウ素の量、それが減らないということ、クロル38という物質が検出されたというこの点を以て再臨界が起こっていると分析しています。
この点について、もう再臨界が起こってしまったらば破局なんだ、我々も「ああおしまいだ」というイメージを持っておりますが、それが正しいのかどうか、ということも含め、その再臨界とは何か、そして本当に起こっているのかどうか、ご見解をお聞きしたいと思います。
(再臨界とは何か)
小出:はい。初めに聞いて頂いたけれども、原子力発電というのはウランの核分裂を起こさせてエネルギーを取り出すシステムですが、地震に襲われるというようなことになったら、まずは核分裂反応を止めなければいけないんですね。
そのために制御棒という棒を原子炉の中に挿入しまして、核分裂反応はとにかく止める、ということをまず何よりも先にやるのです。
今回はどうもそれは成功したのではないかと私は期待もしていますし、多分そうだろうと思っているのです。
ただし、すでに溜まってしまっていた核分裂生成物という、その放射能自身が崩壊熱という熱を出すためにここまで追い込まれてしまったわけですね。
なんとかその崩壊熱の分は冷やさなければいけないということなのですが、もし、一度止めたつもりのウランの核分裂反応がもう一度起きてしまうというようなことになると、またそこから熱が出てきてしまうということになって、それをどうやって冷やすかというまた困難が伴ってしまうわけですね。
ですから何とかそのウランの核分裂反応だけは、もう二度と起こさないようにしなければいけないと、皆思ってきたわけですけれども、一度は止めたと思っているウランの核分裂反応がまた起きてしまう、ということを私達は「再臨界」という言葉で呼んでいるわけです。
(なぜ再臨界を疑うか…クロル38とは)
その可能性は私は実は少ないだろうとずっと思ってきまして、とにかくその崩壊熱を冷やすことができるなら、この破局を乗り越えられると思ってきたわけですが、最近になって、東京電力が公表しているデータを見る限り、再臨界を疑う以外説明がつかないというふうに思うようになってきているわけです。
それは今、岩上さんがおっしゃってくれたけれども、クロルの38という放射性核種があるのですが、それが東京電力によって検出されたと、言われているわけです。
そのクロル38、塩素の38という放射性核種ですけれども、それは、天然にある塩素が中性子を受けて生成されるものです。
ただ寿命が37分で短いので、運転中にはもちろんあったとしても、核分裂反応が止まって、もう中性子が出なくなるとすれば、クロルの38というのはすぐになくなってしまって、今になって検出されるなんてことはないのです。
ところが、3月の末でまだクロルの38が検出されるということを東京電力が公表したわけです。
もしそうであるとすると、継続的にクロル38が生まれている、ということになるわけで、そうなるとじゃあ中性子はどこから来ているのか、ということになります。
(クロル38…再臨界「以外」の可能性について)
そしてその中性子の出る源は核分裂反応以外にももう一つあってですね、原子炉の中に超ウラン元素と私達が呼ぶ一群の放射性核種が運転中に溜まってくるのですが、その超ウラン元素の中のキュウリウム242とか244とかいう、ちょっと特殊な放射性核種ができるんですが、そういうものは自分で、自発的に核分裂する、自発核分裂と私達が呼ぶような現象があって、中性子を出すのです。
ですから今、原子炉は止まっていると言いますけれども、中性子がゼロではないのです。
しかし東京電力が公表したクロルの量というのは、ものすごい量、濃度になっています。
多分、自発核分裂だけでは説明できませんし、今のデータを見る限りは臨界、再臨界ということが、起きたのではないかというふうに私はますます疑いを深めているという、そういう状態です。
(再臨界が起きると「破局」なのか…原爆の「臨界」と今起きている「再臨界」の違い)
ただ、再臨界ということが起きてしまうと、何かもう破局なのか、というふうに皆さん思われているかもしれませんが、そうではありません。
例えば、広島の原爆ってどうやってできていたかというと、一方にウランの塊をまず置きました、何も起きません。
ただウランという金属がここにある。もう一つの方にウランの塊を置きます、何も起きません。それを火薬で一か所に集める、一つの場所にある一定量以上のウランが集まるという、そういう状態を作り出すと初めて「臨界」という状態になって、ウランの核分裂が始まるという、そういうのが私達が知っている物理現象なのです。
そういう物理現象に基づいて原爆というのも作られているわけです。
今起きている再臨界というのは、原子炉の中にウランがあったわけですね。
で、その中に制御棒が差し込まれて、ようやくそのウランの核分裂反応を止めたと思っているわけですが、すでにもう1号機で言えば、東京電力の説明でも70%は損傷しているというふうに言っていて、その燃料の損傷というのはですね、どういうことかというと、炉心の中の燃料というのは直径1センチで長さが4メートルという、燃料棒被覆管という細長いパイプが林立しているのですね。
で、その細長いパイプの中にウランの燃料ペレットという、直径約1センチ、高さが1センチぐらいの、小指の先くらいのちいちゃな瀬戸物がその被覆管の中にいっぱい詰まっているという状態でできているのです。
この被覆管というのがジルコニウムという金属でできているのですが、このジルコニウム金属は温度が850度位になると周りの水と反応を始めます。
それで水素を発生します。発生した水素は、水素爆発を起こして建屋を吹き飛ばしたわけですが、その反応は発熱反応なので、一度反応が始まってしまうと次々と熱を出して、周りのジルコニウムをまた反応させるという悪循環に陥るのです。
水から露出した部分でそういう反応が起きたわけですけれども、今、燃料棒のある部分は水から露出しているということは東京電力も認めていて、そのために被覆管が反応して壊れてしまっているわけですね。それが7割、70パーセントと言っているのはそのこと(被覆管の損傷)だと私は思います。
(被覆管の損傷→燃料ペレットが崩れる→崩れたものが一か所に集まる→再臨界)
そうすると、この被覆管が無くなってしまうわけですね。
そうするとじゃあどうなるかというと、小指の先くらいの大きさのウランのペレットと言っているものが、もう支えてくれるものがありませんから、ぐずぐずと崩れてくる、という、そういう状態になるのです。それが原子炉のある部分に溜まってしまって、一つの大きな塊になってしまうと、一度収めた臨界ということがそこでまた起きてしまうということを私達は恐れてきたわけですね。
(再臨界すると→発熱→膨張→ウランの密度が減少→臨界状態が止まる→温度が下がる→またウランが集まる→再臨界、の繰り返し)
でも、じゃあ臨界が起きたらどうなるかというと、そこで熱が出るわけですから、熱が出ると必ずその場所は膨張します。
膨張すると、要するに、一か所に集まっているウランの量というのが全体的にはその密度が減るわけですから、臨界という状態が今度はなくなります。
でも、それで熱が出なくなると、その所にまたウランが集まってくるということになるでしょうから、また臨界になって熱が出る、そういうことを繰り返しているのではないか、ということを私は今疑っているわけです。
岩上:なるほど。臨界を起こすけれども熱を帯びると(膨張した結果、ウランの密度が下がり)また一旦臨界でなくなる、それで再臨界がまた始ったり、再々臨界が始ったりと。
小出:そう。そういう、ウランがぶすぶす、ぶすぶすと燃えるという状況が私の呼ぶ再臨界なんですね。
爆発をする、というようなこととは違うと思います。
岩上:一定程度(ウランが)集まった所で、いわゆるこれはメルトダウンで、そして水蒸気爆発が起こり、再臨界というものすごい高熱を発してですね、水蒸気爆発をすぐに呼び込んで吹っ飛ばす、という、こういうイメージを持っているんですがそうではない、と。
小出:ではない。ただ私が恐れている水蒸気爆発とはどういう現象で起きるかというと、炉心というところで、今は燃料ペレットですけれども、被覆管は7割も壊れているわけですね、じゃあ燃料ペレットがどこまで溶けているかというと、私はまだ少ないだろうと思います。発電所の敷地の中でプルトニウムがすでに見つかっていますので、燃料ペレットが溶けていることは確実です。
岩上:これは関わりがあるんですね。
プルトニウムの検出というのは、猛毒が現れたという、人体への直接的な被害を心配して大騒ぎになっていますが、そのことよりも、プルトニウムの検出は実は被覆管の損傷だけではなく、その中にあるペレットの溶融とか、
小出:そうです。ペレットが溶けているということの証拠として重要だと思います。
岩上:これは東電にもぶつけて、私は質問しました、しつこくここの所も。
(東電は)被覆管の70パーセント損傷は認めてます。ただペレットがかなり溶けてしまっている、それを理由としてプルトニウムが見つかっているんだと、(プルトニウム検出は燃料ペレットが溶けていることの)その証左である、ここの関係については、色々な言葉を変えながら、何というか、「丸めこもう」的な態度なんですね。
でも全く否定をしませんでした。どういうことなんでしょうか。それを教えて下さい。
小出:はい。東京電力としてはウランの燃料ペレットが溶けるということはできれば認めたくないのですね。
ジルコニウムという金属自身は、さっきも聞いて頂いたけど、850度を過ぎれば反応してしまって崩れる、という、そういうものなんですけれども、ウランの燃料ペレット自身は2800度くらいにならないと溶けないのです。
ですから、そんな高い温度にすでに原子炉の中がなってしまっていると、いうことは、やはり東電としては認めたくないのですね。
でも私は一部の燃料ペレットが溶けてしまっていることは確実だと思いますけれども、炉心全体の中のほぼ100トンはあるようなウランの燃料ペレットの全体が溶けているとは思わない。
岩上:100トンあるんですか?
小出:はい。
岩上:一個の原子炉の中に?
小出:そうです。まあ福島の1号炉は46万キロワットですから、数十トンしかないと思いますけれども、そういう単位であるわけですよ。それが、全体が溶けているとは私は思わないのです。全体を溶かしてしまわないように、水をかけ続けて冷却しなければいけない、ということが今やっている作業なわけです。
で、もしかなりの部分が溶けてしまう、というようなことになると、それは溶けて落ちる、炉心部から溶けて落ちる=メルトダウン、という現象に私はなると思うのですが、その溶けて落ちた下に、…炉心というのは圧力容器という鋼鉄の容器の真ん中からちょっと下の部分にあるのですが、その部分でウランの燃料ペレットのかなりの部分が溶けて、それが下に落っこって行った時に、圧力容器の底にもし水が残っていたとすると、その水に落下した時に水蒸気爆発が起きるのです。
それは、どうしても私は避けてほしいと思っていて。
そういうことになると、そこで水蒸気爆発が起きて圧力容器が壊れるだろうと思っているわけです。壊れてしまうと、圧力容器のすぐ外側に格納容器という比較的ペラペラの容器があるわけで、その格納容器が放射能を閉じ込める最後の防壁ですけれども、それも壊れるだろうと思って、それをとにかく避けなければいけないいるわけです。
そのためには炉心部にあるウランペレットの大部分、というか、かなりのものが溶けるというような状態を、避けなければいけない。
でも崩壊熱だけでも、放っておいたら溶けてしまうわけで、今、水を入れているわけです。
でもそこでまた再臨界というような状態になると、ウランの核分裂反応が熱を出します、ぶすぶすと燃える、と私はさっき表現したけれども、要するに熱がまた出てくるわけです。
ですからその分も冷やしてやらなければ、余計またメルトという方向に向かってしまうことになりますので、とっても綱渡りの冷却、というのを今、やってきたし、これからもやらなければいけない。
(揮発性でないプルトニウムが敷地内で検出=「燃料ペレット溶融の証拠」)
岩上:プルトニウムの検出がウランペレットの溶融の証拠というのはどういうことなんですか。
小出:プルトニウムは揮発性でも何でもありませんし、(ウラン燃料ペレットが)溶けない限りはほとんど出てくることはないだろうと、思っているわけです。
要するにペレットというのは瀬戸物なんですよね。ウランで作った瀬戸物ですけれども、その瀬戸物の中にウランという物質も溜まってくるわけです。
核分裂生成物であるヨウ素とかセシウムも溜まってくるわけですけれども、揮発性のものであれば瀬戸物の中から飛び出してくる、ということはあり得るわけですけれども、プルトニウムは揮発性でも何でもありませんので、瀬戸物の中からまずは出てこないと思うわけです。
その瀬戸物が溶けてしまった時に初めて外部に、多分蒸気にさらされているんだと思いますが、そういう蒸気の流れに乗って、外に出てくる、というのが私の推測です。
(再臨界が起きるとどうなるか→「熱」と「核分裂生成物」が発生)
岩上:なるほど。(プルトニウムの)検出はそういう(燃料ペレット溶融の)証拠になるわけですね。
再臨界が起こったらぶすぶすと続く、ということですが、それはどんなことをもたらすのか、これまで以上の放射線量が表に出てくる、あるいは次の段階で大きな最悪を呼び起こすことを意味するのか…
小出:二つのことがあるわけですね。
再臨界というのはウランの核分裂反応が始まるということですから、核分裂反応で生み出されるものは二つです。熱と核分裂生成物という放射能です。
熱の方はメルトダウンという現象につながりますので、何とか冷やすという作業を増加するというか、(綱渡りの作業がこれまで以上に)難しい状態に追い込まれるということですね。それが失敗すればメルトダウンということになって最悪の事態に直行するとになるわけです。
もう一つの核分裂生成物の方は要するに放射能ですので、それがもともと核分裂反応を止めたということが本当であるならば、それぞれの寿命でどんどんどんどん減っていってくれる、放射性物質はそうなるんですけれども、新たにそれをまたどんどん生み出してしまうということになれば、外界に出てくる放射性物質の量も増えざるを得ないわけですし、一昨日(4月8日)、1号機の格納容器の中で放射線量率が3倍くらいに急激に増えました。
私はその急激に増えたということも、その時に再臨界ということで、核分裂生成物が新たに生み出されたものが格納容器の中に噴き出してきたのではないか、ということを疑っているわけです。
格納容器の中に噴き出してくれば、格納容器に損傷がありますので、それはまた外部に出てくるということにつながってしまうわけです。
(「最悪」はどこまであり得るか)
岩上:そうすると、「最悪の最悪」の破局がメルトダウンだとすると、
小出:メルトダウンと、水蒸気爆発です。
岩上:メルトダウンと水蒸気爆発ですね、メルトダウンによって水蒸気爆発が起こらないのであればまだ破局一歩手前なんですけども、水蒸気爆発が「最悪の最悪の最悪」だとすると、恐らく、これがもし起こってしまったらば、1号機でも2号機でも3号機でも、どれか一基起こってしまうと、もうその周りで作業とか修繕とか冷却とか、ということができなくなりますよね。
小出:そうです。
岩上:ということは、自動的に1,2,3,4が続けてメルトダウンを起こしていくという、
小出:最悪の場合はそうなるわけですね。
岩上:最悪の場合は。そうするとチェルノブイリは4号炉だけでした。
もし「最悪の最悪の最悪」を覚悟するとしたらば、再臨界からメルトダウン、そして水蒸気爆発、その連鎖となって、その時に起きる破局といいますか、我々が覚悟しなきゃいけない「最悪」はどんなことになりますか。
(中断)
(「最悪の最悪の最悪」を考える…)
岩上:「最悪を覚悟して最善を尽くす」ということじゃなければいけないんだろうなと、思うんですけど、今、政府、東電、それからマスコミもそうです、「最悪の最悪の最悪」を考えて、語り、論じることをしていないんです。水蒸気爆発が連鎖した場合の「最悪」というのはどのくらいのダメージをお考えでしょうか。
小出:チェルノブイリの原子力発電所というのは、1から4号機あったんですが、4号機だけが爆発しました。
ちょうど100万キロワットという原子炉でした。
今、福島の1号機から4号機まで合わせると、約300万キロワットの出力がありますので、チェルノブイリ原子力発電所の約3倍の出力がある、ということですから、関係してくる放射能も3倍あるわけですね。
どこか1か所の原子炉が、本当に私が恐れているような破局的な事故になったとすると、恐らく今、岩上さんがおっしゃったように、発電所の中の作業ができなくなると思いますので、次々とやはり壊れていくだろうと思います。
そうなると原子炉の炉心の中にある燃料だけでもチェルノブイリ原子力発電所の3倍あるわけです。
おまけに困ったことには使用済み燃料プールというものの中に、炉心の中に入っていたのと匹敵する、あるいはそれよりも多いほどの使用済み燃料が溜まっているわけです。
それもこの間、東京の消防庁が行ったり、自衛隊が行ったりして放水を繰り返してきたわけですけれども、その作業もできなくなりますので、やはりそれも壊れてしまう、ということになりますので、チェルノブイリ原子力発電所の3倍どころではない、6倍、7倍、8倍、あるいは10倍というような放射能が、危機に瀕するということになると思います。
「最悪の最悪の最悪」というようなことを考えるなら、もちろんそれも考えなければいけないし、同じ敷地の中には5号炉、6号炉というのもあって、そこにも大量の放射能が入っているわけですから、大変だろうと思います。
岩上:途方もないことになってしまう。これは日本列島に人が住めなくなってしまうようなレベルですか?
小出:チェルノブイリ原子力発電所の事故はどうだったかというと…、まず周辺30kmの人達は強制避難させられました。
それからしばらく経ってから、発電所の敷地から200あるいは300km離れた所までが高密度の汚染を受けているということで、そこもまた強制避難させられました。
そうこうするうちにソ連という国家自身が潰れてしまって、人々をその汚染地帯から救出することができなくなったわけですが、でもきちっと調べてみたら、発電所の敷地から700km離れた彼方まで、風下にあたった所は日本の法律に照らして「放射線管理区域」にしなければいけない、というほどの汚染を受けていたのですね。
それでもし福島の原発から700kmという距離を考えたら、ほとんど日本中安全な所がない、この関西にしても範囲に入ってしまうというぐらいの距離なわけですね。それのまた何倍というような放射能が関係してくるとすれば、もっと被害が拡がるわけですので、…まあ、大変なことになるでしょうね。
(「再臨界」を食い止めるには…ホウ素注入について)
岩上:「最悪の最悪の最悪」はそこだとして、その二歩ぐらい手前の再臨界を食い止めていくには手があると、ホウ素を注入すればいいという話でしたが、これは?
小出:ホウ素というのは中性子をものすごい吸収する物質でして、ホウ素をもし原子炉の中に、その再臨界している所にうまく送り込めるのであれば、ホウ素が中性子を吸収してしまいますので、ウランが吸収する分がなくなると。
そのために臨界反応が止まるという、そういうことになります。
岩上:それはどの程度効果があるんですか?
小出:ちゃんとその再臨界を起こしている場所にホウ素が届くのであれば、かなり効果的に再臨界を抑えることができます。
岩上:現時点でそれはうまく出来ているんでしょうか。
小出:私は、もともとは再臨界は起きていないというふうに思っていたわけです。制御棒はちゃんと入っていたろうし、燃料が崩れたとしてもホウ素を入れている限りは再臨界を抑えることができたはずだと思っているわけですけれども、どうもその、東京電力は途中からホウ素を原子炉に送る、ということをやらなくなったのではないか、と私は今疑っているのです。
それは多分色んな理由があるんでしょうけれども、初めから海水を入れだしたんですよね。原子炉をとにかく冷やさなければいけないということで。でも海水の中には塩がたくさん入っているわけです。
入れた海水はどんどんどんどん蒸発して蒸気が出ていくわけですけれども、塩は多分どんどん煮詰まって行って、あっちこっちに塩の塊が析出してくる、という状態になっていると思うんですね。
それが例えば原子炉を冷やす流路、水の流れを妨げるというようなことにもつながっているかもしれませんし、これからもしポンプを動かそうと思っても、ポンプが動かないとかですね、そういうことの障害にもなるだろうと思っているんです。
同じようにホウ素という物質も、大量に入れてしまうとそれがあちこちに析出することになりますので、東京電力としてはあまり入れたくなかった、ということもあるのかもしれません。
でも、もし再臨界という現象が起きているのだとすれば、もう何をおいても(ホウ素を)入れなければいけない、と思います。
岩上:正しく入れることができているか、届かせることができているか、という点はどうなんでしょう。
小出:それはよく分からないのです。今その東京電力は原子炉の中に水を送っているわけですけれども、圧力容器と言っている中にも結構複雑な構造をしていまして、どこの場所に外から水を入れているか、ということで、今再臨界になっている場所に本当にその、入れた水、これから入れるとすればホウ素が届くかどうかというのは、今私にはよく分からないです。
炉心という部分と、ダウンカバーという部分があるのですが、ダウンカバーにもし入れたとしてもダウンカバーの所でぐるっと回ってそのまま出ていってしまうという可能性もありますので、それは福島(原発)の人達がちゃんと考えて対処して欲しい、と思います。
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この後は、
(00:53:00~01:01:00)福島以外の原発や、もんじゅ、六ヶ所村再処理施設等の危険度について10分弱。
(01:01:00~01:18:00)「原子力がなくても電力はまかなえる」、「それどころかバカげた原子力のおかげで経済的にも損している」という内容。
元のインタビュー映像(USTREAM)「京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く」(2011/4/10 iwakamiyasumi)をご覧ください。
(2011.4.16)
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