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昨深夜の地震:東通原発は危うく福島第一になるところ

 昨日深夜の地震で、幸いにも冷却機能喪失の原発は出なかった。
 だが、中身を見ると「安全神話」を崩すものばかりである。
 女川原発は通常電源喪失。
 東通原発に至っては通常電源と予備電源喪失。

 あと一歩間違えたら、東電福島と同様になっていた。
 報道の仕方に惑わされているが、考えてみると実に恐ろしい局面だったのである。

 工学と言う領域には殆んどの領域に、クリアランスの概念がある。
 つまり、110Vの機器は起動時の安全をみて1000Vで発火しないこととか、80km/h道路の設計速度は120km/hにクリアランスを20%とるとか、建築も同様である。
 例えば風速50mを要求された鉄塔は間違っても50mで損傷してはいけないので、60mで設計するか大幅なクリアランスをとる。

 従って、要求される基準以内で損壊した場合は、設計不備か、施工不良である。設計責任か、管理責任となる。
 もちろん、要求基準が誤っていたら、会社なり、所管庁の責任である。
 全て、責任が明らかでなければ、全体の信頼性が失われるからである。

 いまさら、原発の安全性など誰も信じていないが、この事故が起きるまでは、「安全神話」がまかり通っていたために、原発が55基も作られてしまったこと。
 テレビ新聞と政府の力で、まかり通っていたことをを忘れてはならない。
  
 原発はもっとはるかに安全のクリアランスを大きく取っていなければならないはずだ。
 金がかかるからと言うなら、当然最初からやめるべきなのだ。
 震度5で予備電源まで喪失する原発など運転させてはならない。
 ーーーーーーーーーーーーーー
生活と原子力 06 なぜ「東通原発」は非常電源が入ったか? 武田邦彦 中部大学

4月7日深夜、東北地方は再び最大震度6を記録する余震に見舞われた。被災者の人はとても心配だろう。なんと言ったら良いか判らないぐらいの過酷な仕打ちだ。
でも、ここではそのような状態でも、「原発」のことを冷静に考えておきたい。

この余震で青森の東通原発と六ヶ所村の再処理施設の電源が切れ、ディーゼル発電の非常用電源を使った。震度は5と推定される。
ディーゼル発電機が動くということは「耐震設計を越えた地震に見舞われた」ということだ。

また、停止中の女川原発も震度6で通常電源がとまり、予備電源に切り替わった。ここも「耐震設計を越えた地震」ということになる。
・・・・・・・・・
5年前から私は「原発は地震で壊れる」として、安全委員会部会、講演、書籍などで原発の耐震性を考え直さなければならないと訴えてきた。
自分が「予言」したからということではない。実は予言などという大げさなものではなく、「科学的な合理性を持って原発は地震で倒れる」のであり、実に簡単な原理なのである。

それを「原発は地震で大丈夫」と口で言ってきただけなのだ。
もし、それを日本社会が理解してくれれば、原発は少しは安全になる可能性がある。

原理は簡単だ.
1) 耐震設計自体が低い(柏崎、福島は震度5、今回の地震の結果から見ると、女川は震度5、東通は震度4で設計したと考えられる)
2) 原子炉だけを守るようになっていて「原子力発電所」や「付近住民」を守ろうとはしていない。
これが現実なのに、政府、原子力委員会、原子力安全委員会、保安院、電力会社、県、市町村の首長は、いずれも、
「原発は地震で壊れない。安全だ」
と言い続けてきた。
・・・・・・
国民の安全を守るのがもっとも大切な指導者なのに、「耐震設計は4で震度5なら損傷する。そして、付近住民や電気設備ではなく原子炉だけを守る」ということを知っていながら、よくそんな発言ができると思う。

昨日、 文化系の見識のある方とディスカッションをした。なぜ、「震度4、原子炉だけ」という設計を「地震で大丈夫」と言うのか、科学者の私には理解ができないからだ。
・・・・・・実績・・・・・・
柏崎刈葉  震度6で「放射線漏れ」と「変電所火災」
福島    震度6で電源喪失、水素爆発
女川    震度5で通常電源喪失
東通    震度5で通常、予備電源ともに喪失
・・・・・・それでも全国の原発は大丈夫??・・・・・・
100%の確率で損傷、倒壊している。だから、電力会社が自主的に他の原発を止めて欲しい.
今回の東通原発は震度5で通常電源、予備電源が喪失し、ディーゼル発電機を動かした。
普通の人なら「最後の砦が役に立った」と思うかも知れないが、筆者の専門の工学から見ると、「設計が4だったら、設計通り、設計が5だったら、設計ミスか施工の手抜き」という事になる。

工学というのは「まあまあ、なあなあ」ではない。震度5で設計したら、震度5で「非常事態」になってはいけない。震度5では「ビクともしない」というのが震度5の設計である.
その意味で、東通原発が震度5でディーゼル発電が動いたということは、設計か施工の欠陥である.東北電力は直ちにどちらに問題があったかを公表すべきだ。

さらに、福島原発にもトリックがある。
福島原発が「地震で倒れない」と言った政府、福島県の発言がウソではないことを印象つけるために「津波の損傷」と言ってきた。

しかし、作業員は「地震直後に上からザーッと水が降ってきた」という証言や、1号炉の圧力容器の亀裂などを見ると、震度6の最初のアタックでかなり損傷していたと考えられる.

また、たとえ津波であっても、日本には38メートルの津波を経験しているのだから、10数メートルの津波が「想定外」というなら「地震や津波で壊れる怖れがある」ということだろう。
・・・・・・・・・
いや、そんな細かいことを議論していては、大筋を見失う.
原発は、

1) 原子炉だけ守ればよい.だから、電力の供給がなくなるのは「原発の安全性」の問題では無いとしている、
2) 設計震度は「電力会社が地震学者を呼んで勝手に決めれば良い」としている、

という事実をもう一度、認識することだ。

東通原発では、震度5で最後の砦になるディーゼル発電以外の電源を失った。まるで、個人病院のようだ。
個人病院でも停電に備えて予備の小型発電機ぐらいは備えている.予備の電源があるからと言って「地震で大丈夫です」などと言うのはまったく非常識で、原発は多重防御ではなく、ほぼ1重だ。

そして、問題なのは「原子炉だけを守る」という思想だから、柏崎で変電所(場内)が燃えても「関係ありません」と言い、今度も「停電だから仕方ありません」と言うだろう.

でも、ディーゼル発電機が故障したら、東通原発は、冷却系を失い、福島原発と同じようになるのだ。電力会社の方は、「原発は地震で倒れます」と地元に行って欲しいし、自治体は「原発は地震で倒れるから、止めろ」と言うべきだろう.
再び、被曝する人を出さないために。
(平成23年4月8日 午後1時 執筆)
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テレビが伝えない原発の状況

 まとめると次の状況。

 3/14の段階で、第一原発1号機は核燃料の70%が損傷、2号機は30%、3号機は25%が損傷している。
 政府は溶融(=メルトダウン)の言葉を避けているが、言葉の遊びは犯罪的だ。
 損傷して溶融しない可能性は極めて少ないので、まして大量損傷であるから、はっきり溶融(=メルトダウン)である。
 
 それと一部断続的か永続的かは不明だが、再臨界を起こしている。汚染水が極めて超超高濃度であることを考慮すると再臨界は爆発以来続いている。
 また、使用済み核燃料は大爆発で、周辺に吹き飛び飛散している。
 これは、1~4号機の周りを高度汚染している。

 第一原発3、4号機の外から見える様子は、「大爆発を起こした3、4号機の鮮明詳細な写真」に明らかなとおりだ。

 他のことは後手後手で検討ばかりしている政府が、誰に言われたか知らないが、唐突で迅速だった行動は、注水の真水への切り替え、海への汚染水放出、1号機へ窒素注入の三つ。
 
 これで、破壊の状況と大体の辻褄が合うので、実際の現状はこのレベルと考える。

 一応は真水の注入、窒素の注入で当面の方向は定まったようだ。
 だが、これを半年続けられるか、また電力と配管を修復できるか、要は完全メルトダウンを防げるかとなるとハードルは高い。人員も装備も長期戦の体制ではない。政府もだ。
 
 政治能力が無いために、誰かさんに命令されないと迅速な行動が取れない。そのため発表では嘘に近い隠蔽をする。
 だから、飯舘村は見殺しに放置され、海洋汚染で国内外に犯罪行為を結果し、未だに撒き散らす荒唐無けいな「安全神話」で国民を疑心悪鬼にして、パニックと風評を拡大している。
  
  植草一秀氏の「知られざる真実」から
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
2011年4月 8日 (金)
テレビが伝えない福島原発の著しく困難な現況②

福島第一原発から高濃度放射能汚染水が垂れ流されていたが、ガラス凝固剤を用いた対応策を実行した結果、海洋への汚染水放出は停止した。
 
 これで一安心かと言えば、まったく違う。
 
 政府は低濃度汚染水の海洋放出を行うと喧伝したが、これは大きな間違いである。実際に福島第一原発から放出されたのは、低濃度ではなく高濃度放射能汚染水だった。
 
 ガラス凝固剤で放出が止まったのは、「超超高濃度汚染水」であり、放出が続いているのは「低濃度」ではない「高濃度放射能汚染水」である。
 
 福島第一原発で何よりも必要な作業は、核燃料=炉心の冷却である。
 
 冷却水を投入すれば放射能汚染水が海洋に廃棄される。
 
 冷却水の投入をやめれば、核燃料の温度が上昇し、核爆発が再開する。
 
 この「究極の選択」のなかで、再臨界という最悪の事態を回避するために、放射能汚染水の海洋放出と言う二番目の最悪の事態を選択してきたのだ。
 
 今回、ガラス凝固剤の活用で、海洋への超超高濃度放射能汚染水の放出は止まったが、他方で、冷却水の投入を中止したわけではない。冷却水の投入に比例して、超超高濃度放射能汚染水が際限なく発生することになる。
 
 外部から冷却水を投入せずに、循環的な冷却システムを再構築することが求められているが、高濃度放射線が計測されている作業環境の下で、循環的な冷却システムを再構築することは、極めて難しいものと考えられる。
 
 そうなると、際限なく発生する高濃度放射線汚染水の処理が極めて重要な作業になるが、そのめどはまったく立っていないというのが現状であると思われる。
 
 問題の核心は、原子炉そのものの状況であるが、日経BPnetの4月4日付記事に大前研一氏が記述されているように、現状では、第1号炉から第3号炉のすべての原子炉で炉心溶融(=メルトダウン)が生じ、さらに、第1号炉と第3号炉において、原子炉内の格納容器の底に穴が開いて、核燃料の放射性物質が外部に放出されている可能性が高いと思われる。
 
 とりわけ問題は、第3号炉がMOX燃料を用いていることである。
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