異常気象は小氷期の前触れか
2011-01-31

記録的な猛暑の夏がすぎて、冬に入るとまた、記録的な寒波と大雪に見舞われている。
日本だけではない。
昨年は中国の黄海の奥、渤海湾が凍結した。
夏の中国は各地で大洪水だった。
ヨーロッパも夏は記録的猛暑で冷房の少ない西ヨーロッパは死者が続出し、その間に冬の南米は記録的寒波でホームレスが多数死亡。
北半球が冬に入ると、また記録的寒波と大雪がヨーロッパと北米東部を襲い、既に北大西洋両岸で4波にわたる。
夏となった南半球はオーストラリアとブラジルで大洪水。
これらのほとんどが、観測史上の更新記録であることが共通点だ。
西ヨーロッパと北米の北大西洋両岸は共にメキシコ湾流の影響が大きい。
メキシコ湾流は暖流で非常に流れが大きい表層海流なので、夏には影響は少ないが、冬には西ヨーロッパに暖気と降水をもたらす。(英国、ノルウェーなど普通は雪でなく雨)。
従って、結構な高緯度の西ヨーロッパは夏は冷涼なかわりに、冬は雪よりも雨が普通といった独特の気候となっている。
北米東部はヨーロッパ程には高緯度でないことと、内陸中西部からの中緯度偏西風によりメキシコ湾流の影響は沿岸部に限られる。
メキシコ湾流はそのままどこまでも行くわけではなく、海水温が下がるため北極海に入る辺りで沈み込み、深海底流となって深海底を南下する。
このメキシコ湾流について、北極海周辺部での沈み込みが無くなっている、と言う調査が数年前にあった。つまり、沈み込みが弱くなると暖流の流れが弱くなるのである。
それと、最近だがメキシコ湾流自体流れが非常に弱くなっているという研究がある。
もちろん、公式に確定されたものではない。
だが、この巨大暖流の流れが非常に弱くなっていると言う指摘が、仮に事実なら、ここ数年のヨーロッパと北米東部沿岸の大寒波は当然ということになる。
メキシコ湾流が仮に存在しなければ、ヨーロッパはそれなりの高緯度の冬となる。北緯45度、50度、60度、シベリアである。冬は0度にならない位の西ヨーロッパが氷点下30度、40度になるという意味である。この冬の寒波はそこまで入っていないがポーランドで30度くらいまで下がっている。
公的機関ならずとも社会不安に直結するそんな研究を認めたくないだろうし、研究の根拠が弱ければ読みもしないだろう。極めて慎重になるだろう。
また、異常気象は全世界なので、メキシコ湾流問題はその一部を成している問題だ。
一応世界的な気象観測網ができてから100年以上経つ。
つまり、世界的な異常気象は、100年から500年くらいに一度の異常性を示していると言ってよいだろう。
三百数十年前、世界的な日照り旱魃と、毎冬続く寒冷の時代があった。
日本は大飢饉、ヨーロッパも大飢饉となり餓死者が続出した。生き残った農民が貧困に苦しみながら大挙して新大陸へ移住した時代である。
歴史気候学ではこの時代を「小氷期」と呼んでいる。
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うん、やはり、どう考えても思うんですが。
マスコミは、せめて小氷期の前触れかくらいの事を言えませんかね。
(記者が脳みそ使わなくてもいいんですから)
小沢一郎氏1/27自由報道記者クラブ
2011-01-31
岩上安身氏から
2011年1月27日、日本自由報道記者クラブ協会(仮)主催で行われた小沢一郎元民主党代表の記者会見のテキスト版です。(会見の動画はこちらのページをご覧ください)
【小沢一郎氏会見テキスト】
上杉「お待たせしました。小沢一郎衆議院議員においでいただきました。
会の設立と会見の趣旨等は、先ほど、説明をさせて頂いたので省きますが、何と言っても、こういう場を、快く引き受けていただいた小沢一郎さんには、この場を借りて、最初に御礼を申し上げたいと思います。
記者会見ですので、皆さんの挙手の下、きちんと名乗り、質問をしていただきたいと思います。 元々小沢一郎さんは、93年に自由党(自由党結成は98年。「新生党」の間違い)を立ち上げた時に、会見をフルオープンにされました。その後、新進党、自由党、民主党になってからも一貫して、こういう形でフリーランス、海外メディア、雑誌、そして今、インターネットなどの媒体に、色々な話をされていますが、93年の同じ時期に、記者会見で、『こういう会見はサービスだ』という発言を各紙が報道しましたが、その発言の真意はどこにあったのでしょうか」
小沢「(会見はサービスだという)言葉が独り歩きしまして、えらくマスコミの皆さんから批判されたんですけれども、まあ、いわゆる我々の仕事も、政治家も、あるいは行政も、国民の皆さんに対する『サービス』だ、と。それを出来るだけ、国民の皆さんのためにやるということではないか、と。そういう意味で、公共サービスとか、色々な使い方をされてますけれども、それが『してやってやる』、みたいなことに取られたのが、誤解の元だったんでないでしょうかね」
上杉「私自身も当時、新進党の秘書をやっていた関係で、そのあたりの経緯は良く分かっていますが、記者会見というのは公的な機関で開かれているということで、当然ながら、国民と共有する情報です。公人の会見というのは、どの国でも開かれていますが、日本では残念ながら記者クラブというものがあります。小沢さんが言ったのは、まさに『公共、公財』が、記者会見のあるべき姿だと。
だからフリーの記者も、雑誌の記者も、そして海外のメディアの諸君も、全員公平に会見に入ろう、という意味の発言だったのですが、どうも20年間、それが逆に伝わっていた。そういう意味で、20年間も既存メディアから色々と批判されてきましたが、心が折れることはありませんでしたか?」
小沢「まあ、そんな、気分は良くないですけどね(笑) 」
一同「(笑)」
小沢「でも、まあ、メディアっちゅうよりも、報道の中身が正しいか、間違っているかは別にしまして、それを受け取るのは一般国民である皆さんですから、特に最近は、インターネットを始め、色んな形の媒体が増えていますんで、そういう意味で、国民の皆さんに、正確な、そして公正な情報が伝わるようにしなくちゃいけない、と。そのためには我々も出来るだけ、気分的には多少嫌々ながらでも、一生懸命努めなきゃならないと思っております(笑)」
上杉「今日、会見に参加している記者たちは、インターネットの媒体がほとんどです」
小沢「はい」
上杉「『ニコニコ動画』さんも『ビデオニュース・ドットコム』さんも、Ust(ユーストリーム=動画配信サービス)を含めて、動画中継を加工すること無く、基本的に、視聴者に届きます。反論があったり、あるいは厳しい質問が出た場合でも、それに対しての答えを聞けば、視聴者ははそこで判断していけば良いわけです。多様な価値観で構成される社会の下、多様な質問をさせていただいて、そして、ぶれない答えを頂ければと思います」
小沢「(笑)」
上杉「私の方から、もう一問だけ質問をします。最近、記者クラブメディアの報道の中で、小沢さんが中国を訪れた時に、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家副主席が、『天皇陛下に会わせて欲しい』と言ったことが傲慢だ、というような報道が流れています。対中政策や対中交渉の中で、果たしてそういうことが行われたのか、ということと、同時にそれは事実なのか、ということを、改めて伺います」
小沢「中国は、今や、超大国の一員でもありますけれども、ま、大きい国であろうが小さい国であろうが、憲法上は日本国と日本国民統合の象徴となっておりますが、事実上、元首の立場にある天皇陛下、しかも、世界で唯一、長く伝統と歴史のある天皇陛下に、外国の、しかも共産主義を国の国是としている、中国の次のヘッドと思われる人が、『何としてもお会いしたい』と拝謁を願い出ているということは、僕は、日本にとって大変良いことだし、誇らしいことだと思っております。
ですから、両国の友好関係を推進するという意味においても、良いことじゃないかなと思って、僕は、天皇陛下にお聞きすれば、『必ずお会いする』と言うに決まっていると。一行政官僚が判断する話では無いだろうという話をしまして、まあ内閣としても、『それは、そうだ』ということで実現しただけのことです」
上杉「小沢さんは非常に優しいので、今、『一行政官僚』と言いましたが、これは宮内庁ですね」
小沢「(笑)」
上杉「宮内庁は別に、必ずしも、陛下の大御心(おおみこころ)に沿ったことを言うわけではないですね」
小沢「(笑)」
上杉「私どもも、記者会見に是非出させてくださいと言い続けているんですが、一向に宮内庁は『うん』と言わない。陛下の大御心(おおみこころ)からすると、そうではないんじゃないかと思う次第ですが、あまり言うと失言になってしまうのでこの辺で止めておきます。
さて、質問をしていただきます。まず挙手の上、名前を言い、更に今日は、普段の記者クラブメディアの様に、『政局報道』というのは止めていただきたいということを私からお願いします。国会日程や、どこの誰に会ったか、という質問はいつでも聞けるので、むしろ、ちゃんと政策についての質問をお願いします。それから、国をどうしたいのか? 何を考えているのか? ということについて、どんどん忌憚無き批判を含めた質問をしていただきたいと思います。
では、質問を。はい、岩上さん」
岩上「一問一答ですか?」
上杉「とりあえず一問一答で」
岩上「フリーランスの岩上です。よろしくお願いいたします。
ウィキリークスが伝えた情報について、関連したことをお聞きします。ウィキリークスが伝えたところによりますと、今年の2月3日、ソウルでカート・キャンベル国務次官補(米国)が、 韓国大統領府の金外交安全保障担当首席補佐官と会談して、『民主党政権はこれまでの自民党政権と全く違う、やり辛い』、と話した。この時は鳩山政権であり、小沢さんが幹事長時代だったわけですけども、当時の岡田克也外相、あるいは菅直人副総理ら、次の世代のメンバーに『働きかけをしよう』という話し合いが持たれた、と。こういう会談内容が暴露されました。鳩山政権時代と非常に違う、今の菅政権、それから岡田さんを見ていると、このアメリカからの働きかけによって、政策、あるいは政権運営のスタイル、スタンスを変えたのかという気がしてならないわけです」
小沢「ほう…」
岩上「この2月3日の前日、2月2日に小沢さんはキャンベル氏と会談されています」
小沢「あの院内での…」
岩上「もし、小沢さんに対しても働きかけがあり、小沢さんが、アメリカの言い分を呑んでいることがあれば、アメリカは小沢さんが支えていた鳩山政権を認めて、その存続を願ったかもしれないと」
小沢「(微笑)」
岩上「しかし、それを引っくり返してでも違う政権を望んだのではないか、という推測も成り立ちます。キャンベル氏との話は、どの様なものであったのか。そして、今、明らかとなった会談の内容に基づいて、アメリカ側からの圧力というのがどの様なものであるのか。その結果として、現在の菅政権はどのように変質してしまったのか。この辺りについて、小沢さんのお考えをお聞かせください」
小沢「ウィキリークスのことについては、私自身、事実確認してませんし、する術がありませんので、本当かどうか分かりません。従って、そのことについての評論は出来ないですが、院内官庁室で確か、彼と大使も一緒だったかな…」
岩上「ルース大使(ジョン・V・ルース駐日米国大使)…」
小沢「うん、うん。『どうしても会いたい』っちゅう(当時小沢氏は党幹事長職)。私は政府の外交は担当してないから、『結構です』って言ったんですけど、どうしても会いたいっちゅうことで会いました。アメリカからどうのこうの、圧力とか何とかっていう類のことは、私は一切自分は感じておりません。ただ、もし、そのやり難い奴という印象を彼が本当に持ったとしたら、僕のことですから、ズケズケいろんなことを言いましたんで、驚いたのかもしれません。
政府や民間にいる僕のアメリカの友人は、私の性格や主張をきちんと分かってくれてる人もいっぱいいますが、(キャンベル氏は)初めてだったんで、ああ、こんな生意気な日本人がいるのか、と思ったのかもしれません。それは分かりません」
岩上「どんな内容を話されたのですか」
小沢「内容はですね…。何でしたかな。両国、二国間関係についての特別な話は無かったと思います。訪米の話があったかな、あの時に。ほんで、『いいですよ』と、『そちらが来いっちゅうなら行ってもいいです』みたいなことを行ったような気がしますが。その中、まあ若干、アメリカ政府の対応について、厳しいことは言ったような気がする」
岩上「どんな内容ですか(笑)。それを聞かないと」
場内一同笑い
小沢「政策的な話じゃなくてね。例えば、中国(の話)ね。あの時、あの*長城計画で、国交回復35年ということだったんで、少し皆で盛大にやろうちゅうことで行っただけの話で、あの大勢の人数ね。僕はもう、20年以上前からやってますし、自民党を出てからは、ずっと野党だったんですね。野党であるにも関わらず、あるいは党首であれ、党首で無くても、中国は準国賓並みに迎えてくれた、と。アメリカではそんなことはないけども、というようなことを言ったかもしれません。
*長城計画:小沢氏が自民党時代に属した経世会(竹下派)から引き継いだ、日中間の草の根交流事業。1989年に始まり、日本の国会議員、社会活動家を含む数百人の各界代表の訪中派遣を主な形とし、両国の政治家の対話に重点を置いている。
だから、そこが、中国っていうのはなかなか先を考えて、僕に対してどうこうするっていう意味じゃなくて、日本との、両国間の先を考えて、読んで、保険になろうがなるまいが、そういうこともきちんとやる。それから、僕は、個人的にも日中関係の草の根交流をやってたから、彼らは非常に『信義』を重んずる、というのは間違いないですから、『私の誠意を汲んでくれていた』、ということが裏打ちになったのかもしれません。そんな類のことを話しました。日米関係だって、僕はずっと、ジョン万次郎の草の根交流をやってますしね。その他の子供たちを呼んだりもやってますし。『そこの違いが若干ある』、という類の話をしたかもしれません」
上杉「岩上さん、いい質問でしたね~。対米、対中関係関連で何か質問が…」
岩上「関連でいいですか」
上杉「はい」
岩上「ウィキリークスについては、事実関係は言えないということでしたが…」
小沢「僕は分かんないから」
岩上「はい、わかりました。ですが、明らかに、今の政権はですね、前の政権と比べてみると、政策をどんどん変えています。党運営のやり方もかなり強権的です。挙党体制とはとてもいえません。明らかに、われわれが09年に思っていたような民主党とは違うような気がします。これは、どうでしょう。小沢さんはどういうふうに評価されていますか」
小沢「おっしゃった点は、ちょっと私も心配をしております。やはり、本来の民主党の初心を忘れずに、謙虚で、しかも勇敢に、勇気を持って国民との約束の実現に向けて頑張る。やっぱり、そういう姿勢が必要だなと思っております。その他のことについて、アメリカの、そういった『陰に陽に』というか、直接、間接の働きかけが、何かによって変わったというのでは、僕はないだろうと思います。現実に、このあいだも日米関係が基軸だといって突然おっしゃられましたが、それは菅さん自身の、やっぱりそうしたほうがいいと思って、今はやっておられるんじゃないでしょうか」
上杉「はい。続いて。伊田さん」
伊田「週刊金曜日の伊田と申します。よろしくお願いいたします。小沢さんは以前ですね、『グランドキャニオンに柵はない』というような表現で、新自由主義の主張をされているというふうに見られていた時期があると思いますが、今は『セイフティーネットをしっかり張らなければならない』、というようなことを、折に触れて言われています。ということは、マーケットに全てを任すだけでは、やはり、うまくいかないというふうにお考えに変わったのか、もし変わられたとしたら、なぜそういうふうに変わったのかについて教えてください」
小沢「『グランドキャニオンに柵はない』、というのは何かというと、いわゆる、あそこが危険であることは当たり前の話ですけれども、別にみんな仕事で行っているわけではないですね。プライベートな観光で九分九厘の人は行っているわけです。そうすると、たぶん欧米的な考え方でいえば、プライベートのことまで公的な政府なり公的機関が責任を持ってやる必要はない。それは自己責任で、自分で危ないことわかって端っこのほうへ行ったり谷間へ降りたりしてるんですから、それはどうなろうが自分の考えでやってください、ということだろうと思います。私もその意味で、自分自身のことはやはり自分で最終的に判断して、決断し、責任持つ。自立が必要だと、その意味で、全く変わっておりません。
ただ、政治、行政、金融だったり、みんなそうですけども、国民全体の生活と安定、平和、そういうものを考えた場合には、『好きなように勝手にやれ』という範疇のものではないし、それでは政治じゃない。やっぱり、そこは、弱いもの強いもの、能力にも差がありますし、そこを、少なくとも、憲法の条文で言えば『健康で文化的な生活をみんな営む権利を有する』という、そういう、少なくとも、みんながそういった、安定した生活を営めるようにと、その上での自由競争ということが、僕は本当の意味での憲法の精神でもあり、自由主義というものの本来、というか少なくとも近代的な考え方だと思ってます。
ですから、小泉改革なるものが、規制の撤廃ということだけを、バンバンバンバン、その部分だけを一方的に推し進めたがゆえに、格差社会という歪んだ社会を作り出してしまった。これは、自由競争も野放しにすれば『弱肉強食』ですから、当然、政治の立場としては、いま言ったように、大部分の多くの人が安定して生活できるという状況をきちんと作っていくと、それ以上のことは『後はもう自分のあれでやんなさいよ』という考え方が、近代自由主義、民主主義の理念じゃないかと思います」
上杉「『グランドキャニオンに柵はない』、というくだりは『日本改造計画』のくだりで、80万部も売れたそうです。印税がうらやましいです。続いて、田中さん、短めにお願いします」
田中「日本インターネット新聞社の田中龍作でございます。
小沢さんほど、記者クラブメディアにとっての『悪役』のイメージが作られ、国民の頭に刷り込まれた政治家というのは、これまで史上、例がないと思います。私の独断と偏見で言えば、記者クラブなどというものは百害あって一利なしだと思うのですが、小沢さんにとって記者クラブメディアの、新聞テレビ通信社っていうのはどういう存在なのでしょうか。忌憚のないご意見をおうかがいしたいと思います」
小沢「もう、あまり記者会見する意味がないですね」
田中「理由は?」
小沢「というのは、いくら言っても、いくら説明しても、全く分かってくれないし、報道もしてくれない。もう何のために記者会見するんだかわからない。ですから、同じ記者会見でも、今日、外国の方もおられるけど、外国人特派員協会、あそこの記者会見は、その意味ではすっきりしていいですね。要するに、意見が違ってても、自分の意見をきちんと言いさえすれば、『ああ、あんたの意見はそうなのね。はい、わかった』、とこうなりますでしょ。だから、最近はあんまり行かないですけど、また片言節句を取り上げられて、余計なあれになっちゃいかんから行きませんけど、そういう感じなら僕はなんぼでも記者会見はいいと思ってます」
田中「いいですか、一つだけ最後に」
上杉「あとでもう一回」
田中「いや、いいです、失礼しました」
上杉「この会見は*FCCJを準用して*FPAJとしてやっておりますので、また是非おいでください、ということでですね。はい、畠山さん」
*FCCJ: The Foreign Correspondents Club of Japan. 日本外国特派員協会。プレスクラブ、特派員教会としても知られる。【リンク】
*FPAJ: The Free Press Association of Japan. フリーランス、雑誌、ネットメディア有志の会が設立した「自由報道協会」(仮名)。【リンク】
畠山「フリーランスの畠山理仁です。国民の税金の使途に対する目が厳しくなっているんですけれども、首相官邸、それから各省庁には、記者室と称する無料の個室があります。それは、記者クラブの記者たちが独占的に使用しているわけですけれども、現在、各記者クラブメディアは、国の財政というのは、もう、増税をしなきゃいけないくらい厳しいんだということを一生懸命言っているのに、不思議なことにですね、自分たちが提供されている、都心の一等地の記者室の家賃というのは、一円も払っていないわけです。
それで、記者室が報道に携わる者、全てにオープンであるならば、国民の知る権利の代行者として、記者室を無料で使うということは十分ありうることかと思いますが、現在は、記者クラブは閉鎖的で、記者室の無料占有どころか、記者会見の場にも、フリーの記者を入れずに排除して、情報を独占しています。さらに、総務省というところは、記者クラブのために用意された職員の方が、記者室で使う枕を繕っていたりするんです。こういった現状を、小沢さんはご存じなのか、ということと、このように、特権的、閉鎖的な記者クラブへの便宜供与について仕分けをしたり、応分の負担を求めていくお考えはありますでしょうか。今なら、記者クラブの方々の理解も得られると思うのですが…」
小沢「いいや、それはなかなか大変と思いますが。そういう細かなことだけじゃなくて、もっともっと大きな大きな既得権が認められていると思います。ですから、その意味では、おっしゃる通り、やはりもっとフェアーな、お互いのメディア同士の、フェアーな競争、そのためにはオープンにならなきゃいけないだろうと思っております。いまの状況は、言わば政治家の方に、最終的には全責任があるわけですけども、僕はそれはよろしくないと。もっとフェアーに、そして誰にも公平公正にするべきだと、私はそう思ってます」
上杉「はい、続いて。村上さん」
村上「フリーライターの村上隆保と申します。ちょっと厳しい質問になるかと思うんですけども、小沢さんは近いうちに強制起訴される見通しです。それで、起訴されたあと、政治家としての活動は、どのようにされるつもりでしょうか」
小沢「国民の要請に従ってやります。変わりありません」
上杉「はい、続いて。じゃ、七尾さん。(ニコニコ動画の視聴者数は)何万人くらい見てますか、今」
七尾「ニコニコ動画の七尾と申します。現在ですね、47,000人の若い視聴者、いろんな年代の視聴者がこの会見を見ています。小沢さんには初めて質問させていただきますが、視聴者から質問を募集しておりまして、それを代読させていただきますが、よろしいでしょうか。これは私もぜひ聞きたかった質問なんですが、この場でなければ聞けない質問です。
小沢元代表の政治理念についてお伺いしたいと思います。小沢さんはよく、議会制民主主義の重要性、定着についてご発言されます。これは政治家としての小沢さんの基本理念の一つだと思っていますが、小沢さんの言われる『議会制民主主義』とは何なのでしょうか。そして、それがなぜ、わが国において重要なのか、若い人たちも多くこの会見を見ておりますので、改めて教えてください」
小沢「はい。政治は国民みんなのためですから、そして物事を決めるには、みんなで話し合って、そして最終的には多数決で決める以外にないんですけども、いずれにしろ、みんなで話して決めるということです。
民主主義は、『直接民主主義』と間接、『代議制民主主義』というのがありますが、スイスなんかではまだ『直接民主主義』の要素を採ってますが、小さい地域や小さい人数ならば、全員参加して決めればいいことですが、大きくなると、全員参加でいちいち物を決めるというわけにはいきませんので、物理的にも不可能です、ですから代議制ということになります。
そうすると、今は結局、国民の代表を選んでものごとを決めていく、という政治をやっていくということになります。ですから、それが『議会制民主主義』です。言葉としては『議会制民主主義』になりますが、1億2000万人が全員集まって、議論して決める、というわけには、物理的にも、あらゆる意味で実現はできませんから、結局、みんなの代表者を選んで、その代表者を通じてものごとを決めていく。それが『議会制民主主義』ですから、それが、ごくごく当たり前の、当然の帰結だと思います。みんなの意見を交わして、みんなで決めていく。言葉で言えば『議会制民主主義』。別な言葉では『政党政治』という言い方もできます。要するに一人ではできませんから、考え方が似た者同士が集まって政党をつくる。だから議会制民主主義というのは、政党政治ということでもありますね。
いずれにしろ、国民みんなで基本は話しあって、みんなの意見で結論を出そうよ、ということですから、それは一番大事な根本のことだと思う」
村上「その『定着』ということを小沢さんはしょっちゅう言われていますが、今、『議会制民主主義』の定着にはやはり問題がある、ということはありますか」
小沢「ですから日本は、そういう習慣というか発想というか、そういう風土がまだ成熟していませんから。特に明治以降の近代でも、やっぱり遅れを取り戻せということで、中央がすべて指導してやる。中央が全部ものを決めて、全部その通りみんな一致団結して頑張ろうということでやってきましたから、みんなの意見をたたかわして、集約してものを決めるという、いわゆる民主主義の習慣がまだ定着してませんので、それを早く定着させたいということです」
上杉「続いて、記者会見に20年間ご尽力して、悲しい人生を送って来られた神保さん」
神保「もう今は、とってもハッピーでございます。
今日はありがとうございます。政策、具体的なことでお伺いしたかったんですけれども、今、イギリスで、イラク戦争の検証という作業が行われています。これは、イラク戦争が結果的に、アメリカが大義として掲げていた『大量破壊兵器』も見つからなかったし、アルカイダとのリンクということも立証されなかった。要するに、間違った戦争だったのではないか、ということを前提に、なぜイギリスはそれを支持してしまったのかということが今、検証の対象になっています。先週、ブレア元首相が実際に調査会に呼ばれて厳しい質問を受けています。
一方、翻って日本も、ほぼイギリスと同時期に、同じぐらい強い語調で、イラク戦争を支持して、『特措法』も定め、自衛隊も送っています。日本では、これに対して検証するという動きが、今のところ全く見られていません。以前、岡田幹事長に、『政権交代があったんだから、本当はこういう時こそ、それをもう1回検証すべきではないか』、ということを申し上げたらば、『実は、特措法は、民主党も賛成しているからね』と答えられました。検証をしよう、という話をいただけませんでした。
小沢さんご自身は、なぜ当時の日本は、イラク戦争をそのまま真に受けて支持をしてしまったのか、それが正しかったのかどうかを含め、検証が必要だと思われるかどうかが1点。もう1つは、もしそれが必要だということであれば、小沢さんご自身がそのような調査を呼びかけ、先導していかれるつもりはないか、その2点の質問をお願いします」
小沢「英国なんかは、さっき言った民主主義が最も先進国と言われていますし、定着している国ですので、そういう問題だけじゃなくて、たぶんいろんな問題でそのような検証作業というのは行われているんじゃないかと思います。
日本の場合は、私のことで言えば、私自身は参加すべきでない、と。『国連の活動ではないから参加するのは憲法上許されない』という趣旨で、ずっと発言してまいりました。ですからイラク戦争そのものの善し悪しの検討、それと同時に日本のあり方としての考え方、その両面があると思うんです。たとえイラク戦争が大量破壊兵器が現実に見つかって、『アメリカが言っていた通りじゃないか』、ということであったとしても、私は国際社会の合意を得ないものに、日本が軍事力を提供するというのは、憲法に違反しているという考え方です。日本にとってはその1点だけの検証でいいんじゃないかと思っていますが、これはまあ、僕ひとりでどういう形でできるかどうか。やっぱりある程度、党なら党、政府なら政府という中で、きちっとした考え方を取りまとめる作業が、私は必要だと思いますね」
上杉「本会議が長引いたおかげで、時間がなくなってまいりました。最後1問プラス1問、大川さんと日隅さんと、あと島田さんまでトントンと……」
大川「大川興業の大川と申します。よろしくお願いします。昨日まで韓国の延坪島に行っておりました。私は金正日の料理人の藤本健二さんと親しくさせていただいます」
小沢「要人?」
大川「料理人です」
小沢「料理人? はいはい。あぁ、わかりました」
僕は彼とずっと話をしてきましたが、正恩氏の性格からして、最初にまず、哨戒艦の海軍、次は陸軍か空軍に花を持たせるだろうと、お互いに話をしておりました。そうしたら、延坪島の砲撃があった。次は、空軍ではないかなと思っていますが、中国と、太いパイプを持っている小沢元代表に、北朝鮮とどう対処していくのがいいのかお伺いできればと思います。2月16日が(正恩の?)誕生日ですので、何か大きな動きがあるかもしれません」
小沢「今のお話は、たぶん、後継者をめぐる北朝鮮内部のことだろうと思います。北朝鮮全体の話としては何かというと、やっぱり背景は中国ですから、中国が了承せずして戦争も始められませんし、何も実質的には大きなことはできないと思います。
中国の基本政策は、朝鮮半島の現状維持だと思います。ですから、その意味では、今の金王朝をいいと思っているかどうかはわかりませんが、よくても悪くても、これを倒してどういう政権をつくるのかということになると、それは現実には難しいですから、結局、現状維持だろうと思います。ですから、中国が今のままの中国である限りは、大動乱も起きないし、結果としては、今のまま推移する、ということだと思います。だから、あとは中国の動向次第でしょうね」
上杉「はい、日隅さん」
日隅「NPJという、インターネットメディアから来ました日隅と申します。先ほど『議会制民主主義』の定着、ということを言われたんですけれども、その前提として、国民、有権者が必要な情報を入手できるということが前提となっていると思うんですね。例えば情報公開の問題だとか、あるいは『機密費』の問題、あるいは、例えば、捕まった人が自分自身の情報をどういう形で得られるのか、いろいろな場面で有権者、国民が情報を得る場面があると思いますが、それが、日本においては十分機能しているとお考えになっているかどうか。あるいは、その問題について、これまでどのように検討されてきたのか、あるいは党として、個人として、どのように検討していくのかを伺えますか」
小沢「私はずっと以前から、日本の社会をフリーでフェアでオープンな社会に、『フリー・フェア・オープン』という片仮名を使って、一つのキャッチフレーズをつくりましたけれども、日本はもう少しあらゆる部門で、これは官庁とか民間とか問わず、あらゆる分野でもっと、オープンな社会にしなくてはいけない。そうしないと情報が全然、おっしゃるように国民に開示されないということになります。ただ、アメリカほど何でもかんでもオープンにしちゃうというのがいいかどうかはわかりませんけれども、少なくても欧州並みぐらいには、社会そのものとしてですよ、日本はオープンな社会にしなきゃならない。日本とアメリカというのは、どっちかというと両極端ですからね。私はそう思ってます。
ただ、そのためには、やっぱり、国民自身が本当に情報を欲しいということにならないとね。そして、その情報を自分自身が咀嚼して、考えて、判断するという習慣が、あるいは能力が身につかないと、意味がないですよね。だから、そういう意味で、私は国民の側がもっと成長して、官庁も民間もどこもここも、『もっと情報を出せ』というぐらいにならないと、現実には、なかなかオープンな形になってこないんじゃないかなと思っています。要は、やっぱり国民次第ですよ」
日隅「卵が先か鶏が先か、ということですか」
小沢「いや、国民が先です。主権者ですから。国民がきちっとしなきゃね。よく言うでしょう。『国民と同じレベルの政治家しか出ない』という言葉があるでしょう。それが民主主義の本質ですよ。自分と同じ程度のものしか選ばんのですよ。だからそういう意味で、国民がもっと自覚して賢明になることだと思います」
上杉「弁護士からジャーナリストに転職された日隅さんの質問でした(笑)」
一同「(笑)」
岩上「転職じゃなくて、兼職(笑)」
上杉「申し訳ございません、最後です。島田さん、質問を2秒以内にお願いします」
島田「フリーランスの島田と申します。よろしくお願いします。デフレについて伺いたいと思います。今の日銀総裁の人事は、小沢さんが代表の時にいろいろと反対されて白川さんに決定しました。その日銀の金融政策に関しては、まだまだ不十分じゃないかと思いますけれども、総裁の選出に関しては、今、振り返ってどう思っているのか、ということと、小沢さんなりのデフレ脱却の策があれば教えてください」
小沢「基本的に、私は天下りは全面禁止すべきだと思っています。ですから、基本的に考えは変わりません。ただ、そのためには、役人だって食っていかなきゃならないんですから、そういう、ちゃんとした身分保障も考えなくちゃならない。その両方ができて初めて、私は、天下りというのがなくなると思います。これもちょっと、僕は英国ばっかり言って恐縮ですが、英国の『官吏の制度』を勉強されれば、すぐ分かると思います。
今のデフレというか、景気ですね。経済ですね。これは金融政策でもって解決する余地は非常に狭まってきていると思います。ずーっと長い間ゼロ金利でやってきたんですから。そうなると、どうしても、一つは財政の出動だ。これは必要だ。それからもう一つは、個人消費を高める、という手立てを考えないといけない。アメリカではGDPの7割個人消費。日本は6割ですけど。
そのためには、やはり将来の、先行きの見通しを、きちんと国民自身に分からせるような政治を行うこと。それから富の配分を、もう少し、一般の人たちに手厚く配分すること。例えば、『景気いい、景気いい』と、何年か前までは史上最高の景気だなんて言ってましたけれども、その時にも、株主配当と経営者の所得は大きく増えました。けれども、一般勤労者のは、その6、7年の間に7%から8%所得が減っております。だから、それじゃ社会保障も、年金も、何も訳分かんない。所得も減れば、個人消費が伸びるわけがないので。
ですから、私はその2本柱、個人消費を伸ばすための手立てをきちっと考えることと、それから必要な財政出動は、私はすべきだと思う。それが、何もかも──財政出動と言うと、何でもかんでも国債をバンバン発行してやれ、というイメージになるけれども、そういう意味で言っているんじゃないですよ。僕は、何度も言うように、いくらでも有効なお金の活用の仕方はもっともっとあると思っていますので、そういう意味の効果的な財政出動。この2本柱じゃないかと思っています」
上杉「ということで、小沢一郎代議士には政策について本当に丁寧にお話をいただきました。そしてニコ生は最終的には5万4000人ということで、本会議中継より1万人多くて、日本の公務員の数よりははるかに少ないという人数が視聴されました。
私はかつて、新進党の秘書をしている時に、小沢さんは『政局の小沢だ』というふうに新聞等が書いていたので、当時のボスである鳩山邦夫さんに聞いたんですね。『小沢さんて政局の人ですよね』と言ったら、鳩山さんはこう言ったんですね。『バカだな、君は相変わらず。小沢さんというのは政策の人だよ』と。というのは実は知っている人こそ知っているという状況で、別に提灯で言ったわけではないんです。ということで、またぜひ政策の話を、またおいでいただいて、お話しいただければと思います」
小沢「はい」
上杉「今日はありがとうございました」
小沢「はい、どうもありがとうございました」(拍手)
上杉「皆さん、お礼の代わりに拍手で。無料です。出演料もありません」(拍手)
( 了 )
※サポーター・ボランティアのみなさんに会見の文字起こしをお手伝いいただいたきました。ありがとうございました。
2011年1月27日、日本自由報道記者クラブ協会(仮)主催で行われた小沢一郎元民主党代表の記者会見のテキスト版です。(会見の動画はこちらのページをご覧ください)
【小沢一郎氏会見テキスト】
上杉「お待たせしました。小沢一郎衆議院議員においでいただきました。
会の設立と会見の趣旨等は、先ほど、説明をさせて頂いたので省きますが、何と言っても、こういう場を、快く引き受けていただいた小沢一郎さんには、この場を借りて、最初に御礼を申し上げたいと思います。
記者会見ですので、皆さんの挙手の下、きちんと名乗り、質問をしていただきたいと思います。 元々小沢一郎さんは、93年に自由党(自由党結成は98年。「新生党」の間違い)を立ち上げた時に、会見をフルオープンにされました。その後、新進党、自由党、民主党になってからも一貫して、こういう形でフリーランス、海外メディア、雑誌、そして今、インターネットなどの媒体に、色々な話をされていますが、93年の同じ時期に、記者会見で、『こういう会見はサービスだ』という発言を各紙が報道しましたが、その発言の真意はどこにあったのでしょうか」
小沢「(会見はサービスだという)言葉が独り歩きしまして、えらくマスコミの皆さんから批判されたんですけれども、まあ、いわゆる我々の仕事も、政治家も、あるいは行政も、国民の皆さんに対する『サービス』だ、と。それを出来るだけ、国民の皆さんのためにやるということではないか、と。そういう意味で、公共サービスとか、色々な使い方をされてますけれども、それが『してやってやる』、みたいなことに取られたのが、誤解の元だったんでないでしょうかね」
上杉「私自身も当時、新進党の秘書をやっていた関係で、そのあたりの経緯は良く分かっていますが、記者会見というのは公的な機関で開かれているということで、当然ながら、国民と共有する情報です。公人の会見というのは、どの国でも開かれていますが、日本では残念ながら記者クラブというものがあります。小沢さんが言ったのは、まさに『公共、公財』が、記者会見のあるべき姿だと。
だからフリーの記者も、雑誌の記者も、そして海外のメディアの諸君も、全員公平に会見に入ろう、という意味の発言だったのですが、どうも20年間、それが逆に伝わっていた。そういう意味で、20年間も既存メディアから色々と批判されてきましたが、心が折れることはありませんでしたか?」
小沢「まあ、そんな、気分は良くないですけどね(笑) 」
一同「(笑)」
小沢「でも、まあ、メディアっちゅうよりも、報道の中身が正しいか、間違っているかは別にしまして、それを受け取るのは一般国民である皆さんですから、特に最近は、インターネットを始め、色んな形の媒体が増えていますんで、そういう意味で、国民の皆さんに、正確な、そして公正な情報が伝わるようにしなくちゃいけない、と。そのためには我々も出来るだけ、気分的には多少嫌々ながらでも、一生懸命努めなきゃならないと思っております(笑)」
上杉「今日、会見に参加している記者たちは、インターネットの媒体がほとんどです」
小沢「はい」
上杉「『ニコニコ動画』さんも『ビデオニュース・ドットコム』さんも、Ust(ユーストリーム=動画配信サービス)を含めて、動画中継を加工すること無く、基本的に、視聴者に届きます。反論があったり、あるいは厳しい質問が出た場合でも、それに対しての答えを聞けば、視聴者ははそこで判断していけば良いわけです。多様な価値観で構成される社会の下、多様な質問をさせていただいて、そして、ぶれない答えを頂ければと思います」
小沢「(笑)」
上杉「私の方から、もう一問だけ質問をします。最近、記者クラブメディアの報道の中で、小沢さんが中国を訪れた時に、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家副主席が、『天皇陛下に会わせて欲しい』と言ったことが傲慢だ、というような報道が流れています。対中政策や対中交渉の中で、果たしてそういうことが行われたのか、ということと、同時にそれは事実なのか、ということを、改めて伺います」
小沢「中国は、今や、超大国の一員でもありますけれども、ま、大きい国であろうが小さい国であろうが、憲法上は日本国と日本国民統合の象徴となっておりますが、事実上、元首の立場にある天皇陛下、しかも、世界で唯一、長く伝統と歴史のある天皇陛下に、外国の、しかも共産主義を国の国是としている、中国の次のヘッドと思われる人が、『何としてもお会いしたい』と拝謁を願い出ているということは、僕は、日本にとって大変良いことだし、誇らしいことだと思っております。
ですから、両国の友好関係を推進するという意味においても、良いことじゃないかなと思って、僕は、天皇陛下にお聞きすれば、『必ずお会いする』と言うに決まっていると。一行政官僚が判断する話では無いだろうという話をしまして、まあ内閣としても、『それは、そうだ』ということで実現しただけのことです」
上杉「小沢さんは非常に優しいので、今、『一行政官僚』と言いましたが、これは宮内庁ですね」
小沢「(笑)」
上杉「宮内庁は別に、必ずしも、陛下の大御心(おおみこころ)に沿ったことを言うわけではないですね」
小沢「(笑)」
上杉「私どもも、記者会見に是非出させてくださいと言い続けているんですが、一向に宮内庁は『うん』と言わない。陛下の大御心(おおみこころ)からすると、そうではないんじゃないかと思う次第ですが、あまり言うと失言になってしまうのでこの辺で止めておきます。
さて、質問をしていただきます。まず挙手の上、名前を言い、更に今日は、普段の記者クラブメディアの様に、『政局報道』というのは止めていただきたいということを私からお願いします。国会日程や、どこの誰に会ったか、という質問はいつでも聞けるので、むしろ、ちゃんと政策についての質問をお願いします。それから、国をどうしたいのか? 何を考えているのか? ということについて、どんどん忌憚無き批判を含めた質問をしていただきたいと思います。
では、質問を。はい、岩上さん」
岩上「一問一答ですか?」
上杉「とりあえず一問一答で」
岩上「フリーランスの岩上です。よろしくお願いいたします。
ウィキリークスが伝えた情報について、関連したことをお聞きします。ウィキリークスが伝えたところによりますと、今年の2月3日、ソウルでカート・キャンベル国務次官補(米国)が、 韓国大統領府の金外交安全保障担当首席補佐官と会談して、『民主党政権はこれまでの自民党政権と全く違う、やり辛い』、と話した。この時は鳩山政権であり、小沢さんが幹事長時代だったわけですけども、当時の岡田克也外相、あるいは菅直人副総理ら、次の世代のメンバーに『働きかけをしよう』という話し合いが持たれた、と。こういう会談内容が暴露されました。鳩山政権時代と非常に違う、今の菅政権、それから岡田さんを見ていると、このアメリカからの働きかけによって、政策、あるいは政権運営のスタイル、スタンスを変えたのかという気がしてならないわけです」
小沢「ほう…」
岩上「この2月3日の前日、2月2日に小沢さんはキャンベル氏と会談されています」
小沢「あの院内での…」
岩上「もし、小沢さんに対しても働きかけがあり、小沢さんが、アメリカの言い分を呑んでいることがあれば、アメリカは小沢さんが支えていた鳩山政権を認めて、その存続を願ったかもしれないと」
小沢「(微笑)」
岩上「しかし、それを引っくり返してでも違う政権を望んだのではないか、という推測も成り立ちます。キャンベル氏との話は、どの様なものであったのか。そして、今、明らかとなった会談の内容に基づいて、アメリカ側からの圧力というのがどの様なものであるのか。その結果として、現在の菅政権はどのように変質してしまったのか。この辺りについて、小沢さんのお考えをお聞かせください」
小沢「ウィキリークスのことについては、私自身、事実確認してませんし、する術がありませんので、本当かどうか分かりません。従って、そのことについての評論は出来ないですが、院内官庁室で確か、彼と大使も一緒だったかな…」
岩上「ルース大使(ジョン・V・ルース駐日米国大使)…」
小沢「うん、うん。『どうしても会いたい』っちゅう(当時小沢氏は党幹事長職)。私は政府の外交は担当してないから、『結構です』って言ったんですけど、どうしても会いたいっちゅうことで会いました。アメリカからどうのこうの、圧力とか何とかっていう類のことは、私は一切自分は感じておりません。ただ、もし、そのやり難い奴という印象を彼が本当に持ったとしたら、僕のことですから、ズケズケいろんなことを言いましたんで、驚いたのかもしれません。
政府や民間にいる僕のアメリカの友人は、私の性格や主張をきちんと分かってくれてる人もいっぱいいますが、(キャンベル氏は)初めてだったんで、ああ、こんな生意気な日本人がいるのか、と思ったのかもしれません。それは分かりません」
岩上「どんな内容を話されたのですか」
小沢「内容はですね…。何でしたかな。両国、二国間関係についての特別な話は無かったと思います。訪米の話があったかな、あの時に。ほんで、『いいですよ』と、『そちらが来いっちゅうなら行ってもいいです』みたいなことを行ったような気がしますが。その中、まあ若干、アメリカ政府の対応について、厳しいことは言ったような気がする」
岩上「どんな内容ですか(笑)。それを聞かないと」
場内一同笑い
小沢「政策的な話じゃなくてね。例えば、中国(の話)ね。あの時、あの*長城計画で、国交回復35年ということだったんで、少し皆で盛大にやろうちゅうことで行っただけの話で、あの大勢の人数ね。僕はもう、20年以上前からやってますし、自民党を出てからは、ずっと野党だったんですね。野党であるにも関わらず、あるいは党首であれ、党首で無くても、中国は準国賓並みに迎えてくれた、と。アメリカではそんなことはないけども、というようなことを言ったかもしれません。
*長城計画:小沢氏が自民党時代に属した経世会(竹下派)から引き継いだ、日中間の草の根交流事業。1989年に始まり、日本の国会議員、社会活動家を含む数百人の各界代表の訪中派遣を主な形とし、両国の政治家の対話に重点を置いている。
だから、そこが、中国っていうのはなかなか先を考えて、僕に対してどうこうするっていう意味じゃなくて、日本との、両国間の先を考えて、読んで、保険になろうがなるまいが、そういうこともきちんとやる。それから、僕は、個人的にも日中関係の草の根交流をやってたから、彼らは非常に『信義』を重んずる、というのは間違いないですから、『私の誠意を汲んでくれていた』、ということが裏打ちになったのかもしれません。そんな類のことを話しました。日米関係だって、僕はずっと、ジョン万次郎の草の根交流をやってますしね。その他の子供たちを呼んだりもやってますし。『そこの違いが若干ある』、という類の話をしたかもしれません」
上杉「岩上さん、いい質問でしたね~。対米、対中関係関連で何か質問が…」
岩上「関連でいいですか」
上杉「はい」
岩上「ウィキリークスについては、事実関係は言えないということでしたが…」
小沢「僕は分かんないから」
岩上「はい、わかりました。ですが、明らかに、今の政権はですね、前の政権と比べてみると、政策をどんどん変えています。党運営のやり方もかなり強権的です。挙党体制とはとてもいえません。明らかに、われわれが09年に思っていたような民主党とは違うような気がします。これは、どうでしょう。小沢さんはどういうふうに評価されていますか」
小沢「おっしゃった点は、ちょっと私も心配をしております。やはり、本来の民主党の初心を忘れずに、謙虚で、しかも勇敢に、勇気を持って国民との約束の実現に向けて頑張る。やっぱり、そういう姿勢が必要だなと思っております。その他のことについて、アメリカの、そういった『陰に陽に』というか、直接、間接の働きかけが、何かによって変わったというのでは、僕はないだろうと思います。現実に、このあいだも日米関係が基軸だといって突然おっしゃられましたが、それは菅さん自身の、やっぱりそうしたほうがいいと思って、今はやっておられるんじゃないでしょうか」
上杉「はい。続いて。伊田さん」
伊田「週刊金曜日の伊田と申します。よろしくお願いいたします。小沢さんは以前ですね、『グランドキャニオンに柵はない』というような表現で、新自由主義の主張をされているというふうに見られていた時期があると思いますが、今は『セイフティーネットをしっかり張らなければならない』、というようなことを、折に触れて言われています。ということは、マーケットに全てを任すだけでは、やはり、うまくいかないというふうにお考えに変わったのか、もし変わられたとしたら、なぜそういうふうに変わったのかについて教えてください」
小沢「『グランドキャニオンに柵はない』、というのは何かというと、いわゆる、あそこが危険であることは当たり前の話ですけれども、別にみんな仕事で行っているわけではないですね。プライベートな観光で九分九厘の人は行っているわけです。そうすると、たぶん欧米的な考え方でいえば、プライベートのことまで公的な政府なり公的機関が責任を持ってやる必要はない。それは自己責任で、自分で危ないことわかって端っこのほうへ行ったり谷間へ降りたりしてるんですから、それはどうなろうが自分の考えでやってください、ということだろうと思います。私もその意味で、自分自身のことはやはり自分で最終的に判断して、決断し、責任持つ。自立が必要だと、その意味で、全く変わっておりません。
ただ、政治、行政、金融だったり、みんなそうですけども、国民全体の生活と安定、平和、そういうものを考えた場合には、『好きなように勝手にやれ』という範疇のものではないし、それでは政治じゃない。やっぱり、そこは、弱いもの強いもの、能力にも差がありますし、そこを、少なくとも、憲法の条文で言えば『健康で文化的な生活をみんな営む権利を有する』という、そういう、少なくとも、みんながそういった、安定した生活を営めるようにと、その上での自由競争ということが、僕は本当の意味での憲法の精神でもあり、自由主義というものの本来、というか少なくとも近代的な考え方だと思ってます。
ですから、小泉改革なるものが、規制の撤廃ということだけを、バンバンバンバン、その部分だけを一方的に推し進めたがゆえに、格差社会という歪んだ社会を作り出してしまった。これは、自由競争も野放しにすれば『弱肉強食』ですから、当然、政治の立場としては、いま言ったように、大部分の多くの人が安定して生活できるという状況をきちんと作っていくと、それ以上のことは『後はもう自分のあれでやんなさいよ』という考え方が、近代自由主義、民主主義の理念じゃないかと思います」
上杉「『グランドキャニオンに柵はない』、というくだりは『日本改造計画』のくだりで、80万部も売れたそうです。印税がうらやましいです。続いて、田中さん、短めにお願いします」
田中「日本インターネット新聞社の田中龍作でございます。
小沢さんほど、記者クラブメディアにとっての『悪役』のイメージが作られ、国民の頭に刷り込まれた政治家というのは、これまで史上、例がないと思います。私の独断と偏見で言えば、記者クラブなどというものは百害あって一利なしだと思うのですが、小沢さんにとって記者クラブメディアの、新聞テレビ通信社っていうのはどういう存在なのでしょうか。忌憚のないご意見をおうかがいしたいと思います」
小沢「もう、あまり記者会見する意味がないですね」
田中「理由は?」
小沢「というのは、いくら言っても、いくら説明しても、全く分かってくれないし、報道もしてくれない。もう何のために記者会見するんだかわからない。ですから、同じ記者会見でも、今日、外国の方もおられるけど、外国人特派員協会、あそこの記者会見は、その意味ではすっきりしていいですね。要するに、意見が違ってても、自分の意見をきちんと言いさえすれば、『ああ、あんたの意見はそうなのね。はい、わかった』、とこうなりますでしょ。だから、最近はあんまり行かないですけど、また片言節句を取り上げられて、余計なあれになっちゃいかんから行きませんけど、そういう感じなら僕はなんぼでも記者会見はいいと思ってます」
田中「いいですか、一つだけ最後に」
上杉「あとでもう一回」
田中「いや、いいです、失礼しました」
上杉「この会見は*FCCJを準用して*FPAJとしてやっておりますので、また是非おいでください、ということでですね。はい、畠山さん」
*FCCJ: The Foreign Correspondents Club of Japan. 日本外国特派員協会。プレスクラブ、特派員教会としても知られる。【リンク】
*FPAJ: The Free Press Association of Japan. フリーランス、雑誌、ネットメディア有志の会が設立した「自由報道協会」(仮名)。【リンク】
畠山「フリーランスの畠山理仁です。国民の税金の使途に対する目が厳しくなっているんですけれども、首相官邸、それから各省庁には、記者室と称する無料の個室があります。それは、記者クラブの記者たちが独占的に使用しているわけですけれども、現在、各記者クラブメディアは、国の財政というのは、もう、増税をしなきゃいけないくらい厳しいんだということを一生懸命言っているのに、不思議なことにですね、自分たちが提供されている、都心の一等地の記者室の家賃というのは、一円も払っていないわけです。
それで、記者室が報道に携わる者、全てにオープンであるならば、国民の知る権利の代行者として、記者室を無料で使うということは十分ありうることかと思いますが、現在は、記者クラブは閉鎖的で、記者室の無料占有どころか、記者会見の場にも、フリーの記者を入れずに排除して、情報を独占しています。さらに、総務省というところは、記者クラブのために用意された職員の方が、記者室で使う枕を繕っていたりするんです。こういった現状を、小沢さんはご存じなのか、ということと、このように、特権的、閉鎖的な記者クラブへの便宜供与について仕分けをしたり、応分の負担を求めていくお考えはありますでしょうか。今なら、記者クラブの方々の理解も得られると思うのですが…」
小沢「いいや、それはなかなか大変と思いますが。そういう細かなことだけじゃなくて、もっともっと大きな大きな既得権が認められていると思います。ですから、その意味では、おっしゃる通り、やはりもっとフェアーな、お互いのメディア同士の、フェアーな競争、そのためにはオープンにならなきゃいけないだろうと思っております。いまの状況は、言わば政治家の方に、最終的には全責任があるわけですけども、僕はそれはよろしくないと。もっとフェアーに、そして誰にも公平公正にするべきだと、私はそう思ってます」
上杉「はい、続いて。村上さん」
村上「フリーライターの村上隆保と申します。ちょっと厳しい質問になるかと思うんですけども、小沢さんは近いうちに強制起訴される見通しです。それで、起訴されたあと、政治家としての活動は、どのようにされるつもりでしょうか」
小沢「国民の要請に従ってやります。変わりありません」
上杉「はい、続いて。じゃ、七尾さん。(ニコニコ動画の視聴者数は)何万人くらい見てますか、今」
七尾「ニコニコ動画の七尾と申します。現在ですね、47,000人の若い視聴者、いろんな年代の視聴者がこの会見を見ています。小沢さんには初めて質問させていただきますが、視聴者から質問を募集しておりまして、それを代読させていただきますが、よろしいでしょうか。これは私もぜひ聞きたかった質問なんですが、この場でなければ聞けない質問です。
小沢元代表の政治理念についてお伺いしたいと思います。小沢さんはよく、議会制民主主義の重要性、定着についてご発言されます。これは政治家としての小沢さんの基本理念の一つだと思っていますが、小沢さんの言われる『議会制民主主義』とは何なのでしょうか。そして、それがなぜ、わが国において重要なのか、若い人たちも多くこの会見を見ておりますので、改めて教えてください」
小沢「はい。政治は国民みんなのためですから、そして物事を決めるには、みんなで話し合って、そして最終的には多数決で決める以外にないんですけども、いずれにしろ、みんなで話して決めるということです。
民主主義は、『直接民主主義』と間接、『代議制民主主義』というのがありますが、スイスなんかではまだ『直接民主主義』の要素を採ってますが、小さい地域や小さい人数ならば、全員参加して決めればいいことですが、大きくなると、全員参加でいちいち物を決めるというわけにはいきませんので、物理的にも不可能です、ですから代議制ということになります。
そうすると、今は結局、国民の代表を選んでものごとを決めていく、という政治をやっていくということになります。ですから、それが『議会制民主主義』です。言葉としては『議会制民主主義』になりますが、1億2000万人が全員集まって、議論して決める、というわけには、物理的にも、あらゆる意味で実現はできませんから、結局、みんなの代表者を選んで、その代表者を通じてものごとを決めていく。それが『議会制民主主義』ですから、それが、ごくごく当たり前の、当然の帰結だと思います。みんなの意見を交わして、みんなで決めていく。言葉で言えば『議会制民主主義』。別な言葉では『政党政治』という言い方もできます。要するに一人ではできませんから、考え方が似た者同士が集まって政党をつくる。だから議会制民主主義というのは、政党政治ということでもありますね。
いずれにしろ、国民みんなで基本は話しあって、みんなの意見で結論を出そうよ、ということですから、それは一番大事な根本のことだと思う」
村上「その『定着』ということを小沢さんはしょっちゅう言われていますが、今、『議会制民主主義』の定着にはやはり問題がある、ということはありますか」
小沢「ですから日本は、そういう習慣というか発想というか、そういう風土がまだ成熟していませんから。特に明治以降の近代でも、やっぱり遅れを取り戻せということで、中央がすべて指導してやる。中央が全部ものを決めて、全部その通りみんな一致団結して頑張ろうということでやってきましたから、みんなの意見をたたかわして、集約してものを決めるという、いわゆる民主主義の習慣がまだ定着してませんので、それを早く定着させたいということです」
上杉「続いて、記者会見に20年間ご尽力して、悲しい人生を送って来られた神保さん」
神保「もう今は、とってもハッピーでございます。
今日はありがとうございます。政策、具体的なことでお伺いしたかったんですけれども、今、イギリスで、イラク戦争の検証という作業が行われています。これは、イラク戦争が結果的に、アメリカが大義として掲げていた『大量破壊兵器』も見つからなかったし、アルカイダとのリンクということも立証されなかった。要するに、間違った戦争だったのではないか、ということを前提に、なぜイギリスはそれを支持してしまったのかということが今、検証の対象になっています。先週、ブレア元首相が実際に調査会に呼ばれて厳しい質問を受けています。
一方、翻って日本も、ほぼイギリスと同時期に、同じぐらい強い語調で、イラク戦争を支持して、『特措法』も定め、自衛隊も送っています。日本では、これに対して検証するという動きが、今のところ全く見られていません。以前、岡田幹事長に、『政権交代があったんだから、本当はこういう時こそ、それをもう1回検証すべきではないか』、ということを申し上げたらば、『実は、特措法は、民主党も賛成しているからね』と答えられました。検証をしよう、という話をいただけませんでした。
小沢さんご自身は、なぜ当時の日本は、イラク戦争をそのまま真に受けて支持をしてしまったのか、それが正しかったのかどうかを含め、検証が必要だと思われるかどうかが1点。もう1つは、もしそれが必要だということであれば、小沢さんご自身がそのような調査を呼びかけ、先導していかれるつもりはないか、その2点の質問をお願いします」
小沢「英国なんかは、さっき言った民主主義が最も先進国と言われていますし、定着している国ですので、そういう問題だけじゃなくて、たぶんいろんな問題でそのような検証作業というのは行われているんじゃないかと思います。
日本の場合は、私のことで言えば、私自身は参加すべきでない、と。『国連の活動ではないから参加するのは憲法上許されない』という趣旨で、ずっと発言してまいりました。ですからイラク戦争そのものの善し悪しの検討、それと同時に日本のあり方としての考え方、その両面があると思うんです。たとえイラク戦争が大量破壊兵器が現実に見つかって、『アメリカが言っていた通りじゃないか』、ということであったとしても、私は国際社会の合意を得ないものに、日本が軍事力を提供するというのは、憲法に違反しているという考え方です。日本にとってはその1点だけの検証でいいんじゃないかと思っていますが、これはまあ、僕ひとりでどういう形でできるかどうか。やっぱりある程度、党なら党、政府なら政府という中で、きちっとした考え方を取りまとめる作業が、私は必要だと思いますね」
上杉「本会議が長引いたおかげで、時間がなくなってまいりました。最後1問プラス1問、大川さんと日隅さんと、あと島田さんまでトントンと……」
大川「大川興業の大川と申します。よろしくお願いします。昨日まで韓国の延坪島に行っておりました。私は金正日の料理人の藤本健二さんと親しくさせていただいます」
小沢「要人?」
大川「料理人です」
小沢「料理人? はいはい。あぁ、わかりました」
僕は彼とずっと話をしてきましたが、正恩氏の性格からして、最初にまず、哨戒艦の海軍、次は陸軍か空軍に花を持たせるだろうと、お互いに話をしておりました。そうしたら、延坪島の砲撃があった。次は、空軍ではないかなと思っていますが、中国と、太いパイプを持っている小沢元代表に、北朝鮮とどう対処していくのがいいのかお伺いできればと思います。2月16日が(正恩の?)誕生日ですので、何か大きな動きがあるかもしれません」
小沢「今のお話は、たぶん、後継者をめぐる北朝鮮内部のことだろうと思います。北朝鮮全体の話としては何かというと、やっぱり背景は中国ですから、中国が了承せずして戦争も始められませんし、何も実質的には大きなことはできないと思います。
中国の基本政策は、朝鮮半島の現状維持だと思います。ですから、その意味では、今の金王朝をいいと思っているかどうかはわかりませんが、よくても悪くても、これを倒してどういう政権をつくるのかということになると、それは現実には難しいですから、結局、現状維持だろうと思います。ですから、中国が今のままの中国である限りは、大動乱も起きないし、結果としては、今のまま推移する、ということだと思います。だから、あとは中国の動向次第でしょうね」
上杉「はい、日隅さん」
日隅「NPJという、インターネットメディアから来ました日隅と申します。先ほど『議会制民主主義』の定着、ということを言われたんですけれども、その前提として、国民、有権者が必要な情報を入手できるということが前提となっていると思うんですね。例えば情報公開の問題だとか、あるいは『機密費』の問題、あるいは、例えば、捕まった人が自分自身の情報をどういう形で得られるのか、いろいろな場面で有権者、国民が情報を得る場面があると思いますが、それが、日本においては十分機能しているとお考えになっているかどうか。あるいは、その問題について、これまでどのように検討されてきたのか、あるいは党として、個人として、どのように検討していくのかを伺えますか」
小沢「私はずっと以前から、日本の社会をフリーでフェアでオープンな社会に、『フリー・フェア・オープン』という片仮名を使って、一つのキャッチフレーズをつくりましたけれども、日本はもう少しあらゆる部門で、これは官庁とか民間とか問わず、あらゆる分野でもっと、オープンな社会にしなくてはいけない。そうしないと情報が全然、おっしゃるように国民に開示されないということになります。ただ、アメリカほど何でもかんでもオープンにしちゃうというのがいいかどうかはわかりませんけれども、少なくても欧州並みぐらいには、社会そのものとしてですよ、日本はオープンな社会にしなきゃならない。日本とアメリカというのは、どっちかというと両極端ですからね。私はそう思ってます。
ただ、そのためには、やっぱり、国民自身が本当に情報を欲しいということにならないとね。そして、その情報を自分自身が咀嚼して、考えて、判断するという習慣が、あるいは能力が身につかないと、意味がないですよね。だから、そういう意味で、私は国民の側がもっと成長して、官庁も民間もどこもここも、『もっと情報を出せ』というぐらいにならないと、現実には、なかなかオープンな形になってこないんじゃないかなと思っています。要は、やっぱり国民次第ですよ」
日隅「卵が先か鶏が先か、ということですか」
小沢「いや、国民が先です。主権者ですから。国民がきちっとしなきゃね。よく言うでしょう。『国民と同じレベルの政治家しか出ない』という言葉があるでしょう。それが民主主義の本質ですよ。自分と同じ程度のものしか選ばんのですよ。だからそういう意味で、国民がもっと自覚して賢明になることだと思います」
上杉「弁護士からジャーナリストに転職された日隅さんの質問でした(笑)」
一同「(笑)」
岩上「転職じゃなくて、兼職(笑)」
上杉「申し訳ございません、最後です。島田さん、質問を2秒以内にお願いします」
島田「フリーランスの島田と申します。よろしくお願いします。デフレについて伺いたいと思います。今の日銀総裁の人事は、小沢さんが代表の時にいろいろと反対されて白川さんに決定しました。その日銀の金融政策に関しては、まだまだ不十分じゃないかと思いますけれども、総裁の選出に関しては、今、振り返ってどう思っているのか、ということと、小沢さんなりのデフレ脱却の策があれば教えてください」
小沢「基本的に、私は天下りは全面禁止すべきだと思っています。ですから、基本的に考えは変わりません。ただ、そのためには、役人だって食っていかなきゃならないんですから、そういう、ちゃんとした身分保障も考えなくちゃならない。その両方ができて初めて、私は、天下りというのがなくなると思います。これもちょっと、僕は英国ばっかり言って恐縮ですが、英国の『官吏の制度』を勉強されれば、すぐ分かると思います。
今のデフレというか、景気ですね。経済ですね。これは金融政策でもって解決する余地は非常に狭まってきていると思います。ずーっと長い間ゼロ金利でやってきたんですから。そうなると、どうしても、一つは財政の出動だ。これは必要だ。それからもう一つは、個人消費を高める、という手立てを考えないといけない。アメリカではGDPの7割個人消費。日本は6割ですけど。
そのためには、やはり将来の、先行きの見通しを、きちんと国民自身に分からせるような政治を行うこと。それから富の配分を、もう少し、一般の人たちに手厚く配分すること。例えば、『景気いい、景気いい』と、何年か前までは史上最高の景気だなんて言ってましたけれども、その時にも、株主配当と経営者の所得は大きく増えました。けれども、一般勤労者のは、その6、7年の間に7%から8%所得が減っております。だから、それじゃ社会保障も、年金も、何も訳分かんない。所得も減れば、個人消費が伸びるわけがないので。
ですから、私はその2本柱、個人消費を伸ばすための手立てをきちっと考えることと、それから必要な財政出動は、私はすべきだと思う。それが、何もかも──財政出動と言うと、何でもかんでも国債をバンバン発行してやれ、というイメージになるけれども、そういう意味で言っているんじゃないですよ。僕は、何度も言うように、いくらでも有効なお金の活用の仕方はもっともっとあると思っていますので、そういう意味の効果的な財政出動。この2本柱じゃないかと思っています」
上杉「ということで、小沢一郎代議士には政策について本当に丁寧にお話をいただきました。そしてニコ生は最終的には5万4000人ということで、本会議中継より1万人多くて、日本の公務員の数よりははるかに少ないという人数が視聴されました。
私はかつて、新進党の秘書をしている時に、小沢さんは『政局の小沢だ』というふうに新聞等が書いていたので、当時のボスである鳩山邦夫さんに聞いたんですね。『小沢さんて政局の人ですよね』と言ったら、鳩山さんはこう言ったんですね。『バカだな、君は相変わらず。小沢さんというのは政策の人だよ』と。というのは実は知っている人こそ知っているという状況で、別に提灯で言ったわけではないんです。ということで、またぜひ政策の話を、またおいでいただいて、お話しいただければと思います」
小沢「はい」
上杉「今日はありがとうございました」
小沢「はい、どうもありがとうございました」(拍手)
上杉「皆さん、お礼の代わりに拍手で。無料です。出演料もありません」(拍手)
( 了 )
※サポーター・ボランティアのみなさんに会見の文字起こしをお手伝いいただいたきました。ありがとうございました。
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2011-01-31

治安警察部隊が前面から退き、配備された国軍は民衆との衝突を避けている。
空軍が上空から威嚇行為をしている。
国軍のみが機能していることは、権力は既に国軍が掌握できることを示している。
アルジャジーラの報道活動を禁止し、放送を停止させた。(誰が、国軍が)
親欧米のエルバラダイが公然と大衆的に登場している(国軍が黙認)。
イスラエル大使館職員はヘリとエジプト空軍基地を使って脱出した。
今のところイスラエル、アメリカへの反対スローガンが出ていない。
アメリカ大使館なども襲撃されていない。
大衆闘争のスローガンがムバラク打倒に集約されすぎている。
はっきりさせておこう。
反米・反シオニズムのナセルの後、サダト、ムバラク共に親欧米・親イスラエルの独裁政権である。
主としてアメリカの操り人形政権であったことは、米軍基地こそ無いが、日本の空き缶政権と同様である。
アラブ国家が、国民の意思でイスラエルと国交を結ぶわけもない。
エジプトは中東最大の「アメリカの傀儡国家」なのである。
農業は叩き潰され、対米利権屋は肥え太り、格差は拡大し、大衆は失業と極度の貧困にたたき落とされて、異論を唱えるものは逮捕・拷問・処刑で根絶やしにされてきた。
チリのビノチェット政権と同様である(日本の悪しき未来かも知れない)。
このエジプトの大衆闘争の根底にあるのは、自主独立のアラブ国家の再生であるはず、と考える。
穏健な親欧米路線 ?
エジプト、そしてアラブのたどってきた歴史を考慮するなら、穏健な新欧米政権なるものが長続きすると考える者はいない。
まして、経済的には欧米には穏健な政権を支える力など既に無い。無いからムバラクを支えきれなかったのである。
穏健な親欧米政権などいうものはアラブの自主独立を遅らせる分だけ、パレスチナの死者を、アラブの貧困を増大させることになる。
ムバラク打倒の闘いとしては勝利しそうである。
だが、操り人形の追放のみでは終了しない。
闘いの流れ方は予断を許さないが、少なくとも、欧米の利権ではなく、勇気ある大衆が流した尊い血が、報われることを願う。
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「マスコミに載らない海外記事」から一部引用です。
エジプト国内の抗議運動: "独裁者"は命令はせず、命令に従っている
Michel Chossudovsky
Global Research、2011年1月29日
全国的な抗議運動に直面した、ムバラク政権は崩壊しかねない... エジプやアラブ世界はどうなるのだろう?
"独裁者達"は命令はせず、命令に従っているのだ。これはチュニジアにも、アルジェリアにも、エジプトにも当てはまる。
独裁者というものは、決まって政治的傀儡だ。独裁者は決断しない。
ホスニ・ムバラク大統領は西欧経済権益の忠実な使用人だ。ベン・アリもそうだ。
抗議運動の対象はエジプト政府だ。目的は、傀儡師ではなく、傀儡を追放することだ。エジプトでスローガンは"ムバラクを倒せ、政権を倒せ"だ。反米ポスターは皆無だ... エジプトや全中東で最も重要で破壊的なアメリカの影響は、ほとんど報道されぬままだ。
舞台裏で動いている外国勢力は抗議運動から免れている。
抗議運動によって、外国による介入の問題が十分に取り上げられない限り、本格的な政治的変革は起こるまい。
エジプト政府に常に暗い影を投げ掛けてきた、重要な政治的存在である、カイロのアメリカ大使館は、抗議運動の標的になってはいない。
1991年、湾岸戦争の真っ最中、エジプトに破壊的なIMFプログラムが押しつけられた。これはアメリカに対する、数十億ドルというエジプトの軍事債務の取り消しと、参戦とを引き換えに実現したものだ。それによって生じた食料品価格の規制緩和、見境の無い民営化と、大規模緊縮政策は、エジプト国民の窮乏化と、エジプト経済の不安定化をもたらした。エジプトは模範の"IMFの弟子"として称賛されていた。
チュニジアのベン・アリ政権の役割は、20年以上もの間にわたり、国家経済を不安定化させ、チュニジア国民を窮乏化させたIMFの経済的劇薬を実施することだった。過去23年間、チュニジアの経済・社会政策はワシントン・コンセンサスによって決定されていた。
ホスニ・ムバラクもベン・アリも権力の座に留まれたのは、彼等の政権が、IMFの絶対的命令に服従し、命令を効率的に執行していたからだ。
チリのピノチェトや、アルゼンチンのビデラ、ハイチのベビー・ドクから、ベン・アリやムバラクに至るまで、独裁者達はワシントンの手で就任してきたのだ。歴史的に中南米では、独裁者達はアメリカが支援する一連の軍事クーデターのおかげで就任してきた。
今日、彼等は国際社会による監視下での"自由で公正な選挙"で就任する。
抗議運動への我々のメッセージ:
実際の決定は、ワシントン DCで、アメリカ国務省で、ペンタゴンで、ラングレーのCIA本部で、H Street NWにある世界銀行とIMFの本部で行われている。
"独裁者"の外国権益との関係こそ取り上げられるべきだ。傀儡政治家は追放すべきだが、"本当の独裁者"を標的にすることを忘れてはならない。
抗議運動は、政治権力を本当に握っている連中に取り組むべきなのだ。運動はアメリカ大使館、欧州連合代表団、IMFや世界銀行の派遣団を的にすべきだ。
ネオリベラル経済政策という計略が捨て去られることによってのみ、意味ある政治的変革が確保される。
政権取り換え
万一、抗議運動が"投資家"、国外債権者や国際金融機関によって行使される圧力を含め、外国勢力の役割に取り組み損ねれば、国家主権という目的は実現不可能だ。その場合、起こるであろうことは"政権取り換え"という矮小なプロセスであり、それは政治的連続性を確実にする。
"独裁者"は、権力の座に据えられ、権力の座から追われるのだ。彼等が政治的に信用を失い、もはやアメリカのスポンサーの権益に役立たなくなると、多くの場合、政治的な敵対勢力連中から登用した新たな指導者によって置き換えられる。
チュニジアで、オバマ政権は既に態勢を整えている。"民主化プログラム"(つまり、いわゆる公正選挙の実施)で主要な役割を演じるつもりなのだ。政治危機を、フランスの役割を弱め、北アフリカにおける自らの立場を強化するための手段として利用することも狙っている。
"チュニジア街頭における抗議運動の高まりを素早く判断したアメリカ合州国は、チュニジアやその他の国々で、自分の有利な立場を押しつけようとして、民主的改革を強く求めている。
中東担当のトップ、アメリカ特使ジェフリー・フェルトマンは、アザイン・アル・アービディーン・ベン・アリ大統領が1月14日にその地位を追われた後、チュニジに入国した最初の外国人官僚だが、彼は速やかに改革を呼びかけた。火曜日に、自由で公正な選挙だけが、北アフリカの国家の追い詰められた指導部の信頼性を強化し、高めることができると彼は語った。
他のアラブ政府との対話において、"我々はチュニジアの教訓を必ずや活用できるだろうと私は期待している"と、国務次官補代理フェルトマンは補足した。
騒然とした権力移行時にアメリカの支援を申し出るため、彼はこの北アフリカの国に派遣され、チュニジア閣僚や市民社会団体幹部と会談した。
水曜日にフェルトマンはパリに出張し、フランスの首脳と危機について議論し、新チュニジアに対する国際的な支援をアメリカが主導しているという印象を強め、旧宗主国フランスに損害を与え...
西欧諸国は、北アフリカ地域におけるイスラム過激派に対する防壁と見なし、失脚したチュニジア指導者を長らく支持していた。
2006年、当時のアメリカ国防長官ドナルド・ラムズフェルドは、チュニスで演説し、チュニジアの進展を称賛した。
アメリカ国務長官ヒラリー・クリントンは、1月13日ドーハでの演説で、アラブの指導者達に対し、国民により大きな自由を認めるか、それとも過激派が状況につけこむ危険を冒すのかと警告して、素早く介入した。
"アメリカ合州国が、極めて迅速に、勝ち馬に乗ろうとしていることは明らかだ..." " AFP:チュニジア暴動の結果が具現化するのをアメリカが支援(強調は筆者による)
ワシントンは新たな傀儡政権を見事に就任させられるだろうか?
それは、チュニジアの内政問題におけるアメリカの陰険な役割に取り組む、抗議運動の能力に大いに依存している。
帝国の決定的な力は言及されていない。辛辣な皮肉だが、オバマ大統領は抗議運動支持を表明した。
オバマ大統領は民主主義と人権に献身しており、そもそもアメリカのおかげで就任した独裁者を追放するという反対派の決意を支援しているものだと、抗議運動をしている多くの人々が信じこまされるだろう。
野党指導者達の協力
独裁主義的傀儡政権の崩壊を見越して、主要野党や市民活動団体の指導者達と協力しておくことは、ワシントンの計画の一部であり、世界の様々な地域で行われている。この協力作業は、全米民主主義基金(NED)やフリーダム・ハウス(FH)を含む、アメリカを本拠とする財団によって、実施され、提供を受けている。FHもNEDも、アメリカ議会、外交問題評議会 (CFR)やアメリカ財界と結びついている。NEDもFHもCIAとのつながりがあることが知られている。
NEDはチュニジア、エジプトとアルジェリアに積極的に関与している。フリーダム・ハウスはエジプト国内のいくつかの市民社会団体を支援している。
"外国の政権を転覆させるための秘密資金援助工作におけるCIAの役割が発覚し、CIAから財政的支援を受けている、政党、運動、雑誌、書籍、新聞や個人が信用を失う結果となった後、レーガン政権によってNEDが設立された. ... 超党派の寄付として、二大政党も、AFL-CIOやアメリカ商工会議所も参加し、“民主主義の推進”という旗印の下、海外における政権打倒運動への公然とした資金援助を、NEDが引き継いだ。(Stephen Gowans、一月 ≪ 2011 "What's left"
アメリカがムバラク政権を過去30年間支持する一方、アメリカ国務省やペンタゴンとつながりを持ったアメリカの財団が、市民社会運動を含む敵対的政治勢力を積極的に支援してきた。フリーダム・ハウスによれば"エジプトの市民社会は、活気があると同時に、抑圧されてもいる。極めて規制された環境下で活動しながら、エジプトにおける市民的、政治的権利拡大に専念する何百もの非政府組織が存在している。" (フリーダム・ハウスのプレス・リリース)。
辛辣な皮肉だが、ワシントンは、残虐行為を含めムバラク独裁政権を支持しながら、とりわけFH、NED等の活動を通じ、政権を非難する連中を支援し、資金提供しているのだ。
若い世代の賛同者達を力づけるためのフリーダム・ハウスの活動は具体的な成果を生み出しており、エジプトにおける新世代プログラムは、現地でも、国際的にも注目を集めている。あらゆる市民社会団体からのエジプト人客員研修生は[2008年5月]、アメリカ国務長官、国家安全保障顧問や、議会の著名議員との会談を含め、ワシントンで前代未聞の注目を浴び、認められている。コンドリーザ・ライスの言葉によれば、研修生は"エジプトの未来の希望"だ。
フリーダム・ハウス http://www.freedomhouse.org/template.cfm?page=66&program=84 (強調は筆者による)
政治的はぐらかし。"独裁者"とおしゃべりし、"反体制派"ともお話しする
フリーダム・ハウスによる援助の下、エジプト人反体制派やホスニ・ムバラクに反対する連中が、2008年5月、国務省と米議会で、コンドリーザ・ライスに迎えられた。
2009年5月、フリーダム・ハウスの後援でワシントンを訪問したエジプト人反体制派の代表団のいくつかとヒラリー・クリントンは会見した。こうした高官レベルの会談はオバマのエジプト訪問前に行われた。
アメリカ国務長官ヒラリー・クリントンは、今日会見したエジプトの市民社会活動家団体の仕事ぶりを称賛し、民主主義に向かい、人権の尊重を一層示すことが、エジプトにとって有益だと語った。
フリーダム・ハウスの新世代プログラムが組織した二カ月研修の終了後、16人の活動家が、ワシントンで、クリントン国務長官と、中東担当国務次官補代理ジェフリー・フェルトマンに会見した。
研修生達は、アメリカ合州国政府が、エジプトの市民社会運動からは距離をおいているように感じていることの懸念をあげ、オバマ大統領に、来週のカイロ訪問時には、若い無党派の市民社会活動家と会見するよう求めた。彼等はまた、オバマ政権に、エジプトの市民社会活動に対する政治的、経済的支援の提供を継続し、エジプトの長年にわたる非常事態法の下で、厳しく制限されている非政府組織の活動の余地を拡げることを支援するよう要請した。
研修生達は、クリントン国務長官に、エジプトでは、市民権と人権を強化するためのはずみは既についており、現時点で、アメリカの支援が至急必要だと語った。彼等は市民社会運動が、エジプトにおいては、穏健で、平和的な“第三の道”であり、政権内の独裁主義的分子や、神権政治的支配を信奉する人々に取って代わるものであると強調した。(フリーダム・ハウス、2009年5月)
研修期間中、活動家達は、ワシントンで一週間過ごし、主張の唱導方法について研修を受け、アメリカ民主主義の機能の仕方を見学した。研修後、研修生はアメリカ中の市民社会活動団体と引き合わされ、アメリカ側の同様団体の人々と経験を分かち合った。活動家達は、研修プログラムを... アメリカ政府の役人、国会議員、マスコミや、シンク・タンク訪問で締めくくる" (フリーダム・ハウス、2009年5月、強調は筆者による)
抗議運動で重要な役割を果たしているこれら反政府団体は、アメリカの権益に役立つことになっている。国務省と米議会への反体制派招待は、アメリカ民主主義という価値観に対する献身と忠誠の感情を植え付けるものだとされる。アメリカが自由と正義の模範として紹介される。オバマは"模範的人物"として、支持される。
(後半略引用終わり)
2/2 重要な追記
反政府デモの中で結構「反米」「反イスラエル」のスローガンが叫ばれているらしい。
特に1/28からムスリム同胞団と支持者が大量に参加し、反対闘争は一気に底辺までに拡大したが、2/1の大デモはさらに拡大した。反米・反イスラエルのスローガンも拡大しているようである。
我々の目に触れるのは現地の先進国マスコミなので、アメリカ・イスラエルに「遠慮」して、そのことを報じていないことが分かった。
唯一エジプトで取材していたアルジャジーラが1/28から禁止されたので、国軍幹部の目標は「穏健な民主制」であることがはっきりした。
だが、同時にムスリム同胞団と支持層を始めとする自主独立派も公然と闘い、かつ拡大していることが判明した。
(2/2朝)
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