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もうすぐ北風が強くなる

財政再建に向かう危険な政治

 スティグリッツ


 2007年のサブプライム・ショック以来、世界恐慌の危機に見舞われた先進各国は、それまでの市場原理主義をかなぐり捨てて、金融緩和、財政出動、金融規制に走りこんだ。
 フリードマンは黙殺されてケインズが蘇ったかのようであった。

 ところが、2010年後半から雲行きが怪しくなっている。
 欧州はギリシャ、アイルランド問題。アメリカは民主党後退。日本は鳩山・小沢の辞職。
 路線転換が始まっている。
 市場原理主義の巻き返しである。政治的には小さな政府、財政削減と増税、新自由主義の復活。
 
 こうした傾向が極めて危険であることは「英国の歳出削減」、「財政問題化」、「政策破綻で焼け肥る金融資本家」に書いてきました。
 こうした政策方向は、国民を犠牲に追いやって、収奪した資産を投機資本の肥大に回す結果になり、景気回復どころか、内需崩壊、生活破綻と金融資本「家」の焼け太りを招くだけである。

 「日米の2011年」、「健全な経済回復には政治主導が必須の条件」を御覧ください。

 また、この政策巻き返しの意図的な原動力について「欧米経済は財政削減で奈落に落ちるか」を御覧ください。

 日本は欧米に比べてまだ条件は良いので、思い切った財政出動をするなら、内需拡大により数年で成長が軌道に乗り、税収も自然増となる。
 「世界通貨戦争(13)闘う政治をに書きましたが、その思い切った闘いができる政治が求められている。

 いま必要なのは政治である。
 新自由主義、小さな政府、財政再建増税論などは、完全に批判してしまわなければならない。
 国民生活を最重要視する、本当に民主的な政治が必要なのだ、他の政治はいらないのである。

 政治を変えるしかない。 
  
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「世界通貨戦争」、「ドルのインフレ政策」に続き、スティグリッツ教授からの引用です。

 “日本病”に苦しむ欧米経済。緊縮財政で2番底の懸念あり

 2010年のグローバル経済は年明け当初よりも二極化が進んだ。一方には、順調に経済成長を続けるインド、中国、東南アジア諸国といった新興市場諸国がある。他方では、欧州諸国と米国が、まさに“日本病”ともいうべき停滞と高止まりを続ける失業率に苦しんでいる。先進諸国における問題は、「雇用なき回復」ではない。「生気に乏しい回復」、あるいはもっと悪いことに、二番底のリセッションの可能性なのである。

 世界がこうした二つの道を歩んでいることで、常ならぬリスクが生じている。アジア経済のアウトプットは世界全体の成長を牽引するには小さ過ぎるが、コモディティ価格を押し上げるには十分かもしれない。

 その一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)による「量的緩和」を通じて景気を刺激しようという米国の努力は逆効果となるかもしれない。
 なにしろグローバル化した金融市場では、資金は世界中で最も有望な投資先を求めて動くものだ。その投資先とは、米国ではなく、アジアである。つまり、資金は必要とされている場所には向かわず、必要とされていない場所に向かう結果となる。こうして、特に新興市場諸国では、資産価格やコモディティ価格がさらに上昇していく。

 欧州と米国における生産能力が過剰でかつ高い水準にあることを思えば、量的緩和が急激なインフレの引き金となる可能性は低いが、将来的なインフレへの予感が高まり、長期金利の上昇につながる可能性はある。これはFRBの思惑とは正反対の結果だ。

 だがこれは、グローバル経済が直面している唯一の下降リスクでもなければ、最も重要なリスクでもない。最大の脅威は、世界を席巻しつつある「財政緊縮」の波によるものだ。欧州を中心に各国政府は「大不況」がもたらした巨額の財政赤字に取り組んでおり、一部の国が債務不履行に陥るのではないかという懸念が金融市場の動揺を生んでいる。

 財政再建は時期尚早

 時期尚早な財政再建が何をもたらすかは明らかだ。成長は鈍化し、税収は減り、赤字削減は期待はずれの結果となる。グローバルな統合が進んだ今日の世界では、欧州の減速は米国の減速を深刻化させ、その逆もまた真である。

 米国の借入金利が過去最低水準にあり、10年間にわたりおろそかにされていた公共投資による高い成果が約束されている以上、やるべきことは明白だ。大規模な公共投資プログラムは、短期的には雇用を、長期的には経済成長を刺激する。最終的には国家債務の削減につながるはずだ。
 だが、危機に至るまでの数年間、金融市場はその視野の狭さをあからさまにしてきた。市場はまたもやそれを繰り返しつつあり、歳出削減を求める圧力をかけている──それが、今切実に求められている公共投資の削減を意味するとしても。

 さらに、政治の停滞により、米国経済が直面している上記以外の厄介な問題についても、ほとんど手を打てないだろう。住宅ローンの貸し倒れ処理は今後も減らない可能性が高い(法的な複雑さは軽減されるかもしれないが)。中小企業の資金難は続くだろうし、伝統的にこうした企業に融資を提供してきた中小の銀行も生き残りに苦労することになろう。

 また、欧州の状況が今よりマシになる可能性は低い。欧州はようやくのことでギリシャ、アイルランドの救済に合意した。危機以前において、両国はクローニー・キャピタリズム(身内びいきの仲間独占資本主義)の色彩が濃い右派政権の指導下にあり、米国同様、欧州でも自由市場経済がうまく機能しないことを示してしまった。

 ギリシャでは、米国同様、混乱の後始末が新政権に委ねられた。無謀な銀行融資と資産バブルの生成を助長したアイルランド政府が、危機以前と同様、危機後も拙劣な経済運営を続けていることはおそらく意外ではなかろう。
 政治面はさておき、資産バブルは、借金の山と不動産のだぶつきという置き土産を残しており、その解消は容易ではない。政界とのつながりのある銀行が住宅ローンの整理に抵抗しているとあっては、なおさらである。

 私としては、11年に向けた経済の展望を見極めることには、あまり興味を持てない。見通しは厳しい。上向きのポテンシャルはほとんどなく、下降リスクはたくさんある。
 さらに重要なのは、欧州と米国が回復するまでにどれくらいの時間を要するのか、そして、輸出依存が強いと見られるアジア経済が、従来の市場であった欧米が不振に沈むなかで成長を続けられるのかという点である。

最も望ましいのは、これらアジア諸国が、経済の比重を広大かつ未開拓な国内市場へとシフトすることにより高度成長を維持することだ。そのためには経済の大幅なリストラクチャリングが必要になるが、中国とインドは活力に満ちており、「大不況」に対する復元力を供給している。

 政治を変えるしかない

  欧州と米国についてはそれほど強気になれない。どちらにおいても、根底にある問題は総需要の不足である。過剰な生産力がある一方で、同時に膨大なニーズが満たされていないというのは究極の皮肉である。つまり、この過剰な生産力を、満たされていないニーズに対処するために使うことで、成長を回復するという政策もまた可能である。
 たとえば、欧州、米国は双方とも、地球温暖化という課題に対処するために、経済の刷新が求められている。長期的な予算制約の下で、現実的にうまく機能する政策は存在するはずだ。

 欧米いずれにおいても、問題は政治にある。米国では共和党が、経済の成功よりもむしろバラク・オバマ大統領の失敗を望んでいる。欧州では、欧州自体のガバナンスが失敗している。
 利害・視点のバラバラな27ヵ国が異なる方向に綱引きをやり、これを補うような連帯は不十分である。それを思えば、救済パッケージがまとまったことはじつに大きな成果だった。

 欧州、米国双方において、資産バブルの生成を放置した保守的なイデオロギー(結局のところ市場がいちばんよくわかっているのだから、政府が介入してはならないという)によって生じた危機に対して、政治家が有効な対策を設計できないままでいる。
 危機そのものがこのイデオロギーへの信頼を損なうものと考える人もいるかもしれない。だが、逆に、再びこのイデオロギーが浮上して、各国の政治・経済を財政緊縮という落とし穴に引きずり込もうとしている。

 欧州、米国で問題なのが「政治」であるとすれば、双方が成長を回復するには政治を変えるしかない。さもなければ、生産過剰という重荷が消滅し、設備が陳腐化し、経済の内的な回復力が徐々にその魔力を発揮するのを待つしかない。
 いずれにせよ、すぐに実現することはなさそうだ。

 (ダイヤモンド・オンライン)
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