fc2ブログ

もうすぐ北風が強くなる

世界通貨戦争(14)ユーロは夢の終わりか

 財政削減圧力と欧米、とりわけ欧州経済の危険性は「欧米経済は財政削減で奈落に落ちるか」に書いたところです。

 それと一般のエコノミストはあまり語りたがらないことだが、欧州にはアメリカにはない重大な問題がある。
 問題というより共通通貨ユーロの始めから解っていた基本的な欠陥。
 共通の通貨=共通の金融政策。対する各国個別財政政策の矛盾である。

 (政府統合が「遠い」目標になっているのは何故か。本当に友愛の精神とか平和とか欧州共同利害でEU,ユーロは進めてきたのだろうか。筆者は経済合理性を取ります。国際金融資本「家」が原動力と考えます。)

 金融政策の共通施行にかかわらず、国家、企業、家計に係わる財政政策が各国事情により行使される。
 と言うより、逆に言ったほうが早い。
 領土と暴力装置と徴税権を確保し、その国民経済に最大の力を行使する「国家」。そこから通貨=金融政策のみが分離されて共通統一的に行使される矛盾である。

 一般的には、貿易などの対外赤字が慢性に続くと外貨準備は底を付き国家も財政悪化し、通貨は下落する。
 通貨安によって交易条件が回復し、対外黒字が続くと、外貨準備は増え、通貨は発行余地が拡大し、国家財政も回復する。
 これが一般均衡論であり、現実にこのまま適用されるものではないが、(投機性はもちろん日本特有の対米従属性とか計画的成長論とか)これが根底に無ければ、様々な応用である、金融政策、財政政策も効果が知れなくなるのは当然と言って良い。

 例えばギリシャがいくら対外赤字が債務が増大しても、通貨は共通ユーロのため通貨安にならない。
 ドイツがいくら黒字を増やしても、同様に通貨高にならない。
 
 また、ユーロ圏周辺のEU諸国は、概ねドル・ペッグならぬユーロ・ペッグをとっているので、様相はますます複雑な「罠」となってきている。
 

 「英国の歳出削減」、「頓珍漢な法人税引き下げと泥縄対策」に続き、三橋貴明氏から引用します。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 三橋貴明 「共通通貨ユーロ」夢の終わり 
2011/01/04 (火) 15:48

 フランスのサルコジ大統領は、2010年ラストとなる大晦日の演説において、「欧州共通通貨ユーロが終われば、欧州の終わりを示唆する」 と発言した。
 別に、ユーロが終わったところで、欧州の終わりは意味しないと思うわけだが、それだけ現在の欧州首脳部の危機感が強いという話なのであろう。


 改めて考えてみると、欧州共通通貨ユーロは本当に不思議なシステムである。何しろ、国民国家の「経済的二大機能」とでも言うべき、財政政策と金融政策を分離してしまったのだ。
 国家の役割は、経済分野に絞っても、もちろん一つではない。とはいえ、例えば「需給の調整」「金利の調整」「物価の調整」の三つは、間違いなく国家が責任を持たなければならない重要分野であろう。


 需給の調整とは、国内の需要が不足し、失業率が高まっている状況であれば、政府が支出することで「需要を創り出す」ことだ。あるいは、逆に国内の 供給が不足し、貿易赤字が続き、インフレ率が高まっているのであれば、規制緩和や民営化、時には外資の導入などで「供給能力を高める」ことになる。


 例えば、かつて貿易赤字や極端に高いインフレ率に悩み続けていたブラジルは、ボトルネック(制約条件)と化していた国営企業を民営化し、国内の様 々な規制を緩和し、外資を積極的に導入することで自国の供給能力を高めた。結果的に、ブラジルの高インフレは次第に改善されていき、昨今の経済的隆盛を迎 えたのだ。


 そういう意味で、バブル崩壊後のデフレ(需要不足)環境下で、公共投資を削減(政府支出という需要を削る)し、規制緩和(供給能力を高める)を推 進し続けてきた日本政府は、とてもではないが役割をきちんと果たしていたとは言えない。

 規制緩和にしても、政府支出削減などの緊縮財政にしても、インフレ 下に採るべき政策である。デフレ下で強行しても、状況を悪化させるだけの話だ。

 デフレ下に緊縮財政を開始した橋本政権以降、延々とデフレから脱却できずに いる日本の現状を見る限り、それは誰の目にも明らかであろう。


 残り二つの国家の役割、すなわち金利の調整や物価の調整とは、上記「需給の調整」と密接に関連している。政府が需要不足を補うために国債を増発す ると、通常は金利が上がっていく。高金利は民間経済の成長の妨げになるため、中央銀行が国債を買い取り、金利を抑制する。中央銀行の国債買取が増えると、 今度は物価が上昇を始めるため、「需給」「金利」「物価」の三つをバランスさせながら、国民経済全体を成長させることこそが、政府に求められるわけだ。


 すなわち、「需給の調整」「金利の調整」そして「物価の調整」の三つは不可分ということになる。ところが、ユーロのシステムでは、通貨発行による 「金利の調整」などの金融政策が、各加盟国の政府から切り離されてしまう。すなわち、不況下で国債を増発し、結果的に金利が上昇した場合であっても、各国 政府は手も足も出ないのである。何しろ、各加盟国の国債を買い取るために、ユーロを発行できる権限を持つのは、ECB(欧州中央銀行)のみなのだ。


 各加盟国は、国債増発や財政危機によりソブリン債(国債など)の金利が上昇していったとしても、指を加えて見ているしかない。実際、ギリシャ国債の金利が二桁に達しても、ギリシャ政府は国債買取による金利調整ができなかった。


 現在のECBは、加盟国の金利の極端な上昇を避けるため、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル国債などを大々的に買い取っている。しかし、これは 共通通貨ユーロの理念から言っても、極めて奇妙な話である。なぜならば、ECBは国債買い取り時に「なぜ、その国の国債を、その金額分買い取ったのか」に ついて、他加盟国に全く説明できないためだ。


 そもそも、ユーロはこの種の問題発生を避けるためにこそ、マーストリヒト条約により「財政赤字は対GDP比で3%まで」というルールを設定してい たわけである。現実には、3%ラインを守っている国は数えるほどになってしまった。今にして思えば、この「財政赤字は対GDP比3%まで」というルール自 体が、景気の極端な悪化などを前提にしていない、荒唐無稽な決まりごとに思えてしまうわけだ。

 
 ユーロの問題は、上記「国家の機能の分離」の他にも複数ある。
 例えば、国内が供給能力不足で、本来は貿易赤字や通貨安、それにインフレ率上昇が止まらないはずの国々であっても、問題から目をそらすことができるという点だ。


 分かりやすく書くと、先に例として出したブラジルが、ユーロに加盟していた場合、別に国営企業の民営化や規制緩和に乗り出す必要はな かったのだ。何しろ、そもそも共通通貨に加盟している国は、どれだけ貿易赤字や経常収支赤字が拡大しても、通貨安や極端なインフレ率上昇は発生しにくいの だ(少なくとも自国の都合では)。

 ユーロは加盟国「全体」として信用が維持され、ユーロ加盟国間には為替レートが存在しない。かつ、「インフレ恐怖症」に とりつかれたドイツ連銀の流れを引くECBが、容赦なくインフレの芽を叩き潰してくれる。


 結果、ユーロ加盟国では「経常収支黒字国は、ひたすら黒字を拡大する。経常収支赤字国は、ひたすら赤字を拡大する」という、普通の独自通貨国ではありえない現象が発生した。すなわち、グローバル・インバランスの拡大ならぬ「ユーロ・インバランスの拡大」だ。


 ユーロが決済用仮想通貨として導入されたのが、1999年。そして、各国の法定通貨となったのが2002年である。この時期を境に、欧州主要国、 特にユーロ加盟国の経常収支の状況が、まさしく「二極化」していくことになる。すなわち、一部の経常収支黒字国がひたすら黒字額を積み上げる一方で、赤字 国の側も毎年赤字額が増大していく状況に陥ったわけだ。


 以下に、筆者が抜粋した欧州主要国ついて、具体的な黒字組、赤字組の国名をご紹介しよう。(09年時点。ユーロ加盟国以外の欧州主要国含む)


 ◆黒字組:ドイツ、フィンランド、アイスランド、オランダ、ノルウェイ、スウェーデン
 ◆赤字組:スペイン、フランス、英国、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル


 ちなみに、08年に破綻したアイスランドであるが、同年までは延々と経常収支赤字を続けてきた。破綻時に通貨クローネが暴落し、「輸入が困難に、輸出が容易に」なった結果、同国の経常収支は黒字化したわけである。


 黒字組と赤字組の位置関係を見ると、面白いことが分かる。すなわち、経常収支黒字組にはゲルマン系が多く、赤字組はラテン系が多数派になっている のである。北方のゲルマン諸国がひたすら経常収支黒字を拡大していく中、南方や西方のラテン系諸国が経常収支赤地を積み上げていく構図になっていたわけ だ。

 上記12カ国について、95年から09年までの経常収支の推移をグラフ化したものが、図83-1である。


【図83-1 欧州主要国の経常収支の推移(単位:十億ドル)】出典:IMF

 20110105_02.png

 確かに、ユーロ導入以降、加盟国の貿易総額は格段に増えている。とは言え、それは北方諸国が経常収支黒字を積み重ね、南欧及びフランスなどが赤字額を一方的に増やしていく、一種の「南北問題」を伴った形での拡大だったわけだ。
 
 そして、この「南北問題」の拡大を可能にした最大の要因こそが、共通通貨ユーロの存在なのである。
 特に、ギリシャのような経済規模の小さい国が、09年に至ってもフランスに匹敵するほどの経常収支赤字であったわけだから、呆れてしまう。ギリ シャの場合、公務員が労働人口の25%に達するほどに

「大きな政府」であり、規制緩和や民営化などにより供給能力を高める余地は充分にあったにも関わら ず、それを怠り続けてきたわけだ。ギリシャがユーロ加盟国でなければ、早期に財政危機に陥り、経常収支の赤字は減少に転じざるを得なかったはずである。


 また、ギリシャにしてもアイルランドにしても、ユーロに加盟している限り、輸出競争力の向上はなかなか難しい。先に、アイ「ス」ランドにおいて、 09年に経常収支が黒字化したと書いた。同国の通貨クローネは、08年10月の危機で、価値がほとんど半減してしまった。結果、確かにアイスランド国民の 生活は厳しくなってしまったが、代わりに輸出競争力の向上と経常収支の黒字化(=対外純資産の増加)をもたらしたのである。


 ところが、ギリシャやアイルランドは、アイスランド型の経常収支黒字路線への転換が困難である。何しろ、両国の財政がどれだけ悪化し、不況が深刻化しても、自国通貨の為替レートが下落するという事態は訪れないのだ。
 
 すなわち、ユーロはシステムとして「破綻」の可能性を内在しているのみならず、実際に破綻した国々の回復のボトルネックにさえなってしまうのである。

 
 ユーロが抱える問題は、まだまだ上記にとどまらない。
『2010年12月31日 ブルームバーグルームバーグ「エストニア:11年からユーロ導入、旧ソ連圏から初-計17カ国に」


 エストニアは2011年1月1日に、旧ソ連諸国として初めてユーロを導入する。ソブリン債危機が欧州を揺るがした影響でユーロ圏拡大は一時的に制限される見通しだ。
 
 ラトビアとロシアに挟まれ、バルト海に面したエストニアは1日午前零時に同国通貨をユーロに切り替え、17カ国目のユーロ導入国となる。同国の国内総生産(GDP)は140億ユーロ(約1兆5230億円)で、ユーロ圏ではマルタに次ぎ2番目に経済規模が小さい。
 欧州諸国が財政危機に取り組む中、今後数年でユーロ圏に加盟するのはエストニアが最後となる公算が大きい。次の加盟候補国であるリトアニアとラトビアは2014年の加盟を目指しているほか、他の東欧諸国は目標時期の設定を先送りした。(後略)』


 個人的に「最後のユーロ加盟国」になると予想しているエストニアが、2011年1月1日からユーロを導入した。


 エストニアの09年のGDPは140億ユーロで、ユーロ全体に占めるシェアは1%に満たない。それでもユーロ圏では「一票」を持ってしまうという点も、ユーロの歪みの一つである。


 もっとも、それ以上にも危うく思えるのは、PIIGS諸国の破綻により、投資先を失った欧州の経済大国(独仏英)の銀行が、短期的な収益を狙ってエストニアにユーロを大規模に流しこんでしまうのではないかという懸念だ。


 ユーロ導入前まで「ケルトの虎」として、輸出を中心に経済成長を達成していたアイルランドは、まさにユーロ導入により経済モデルが様変わりしてしまった。

 ユーロ導入後のアイルランドは、国内の銀行が低金利のユーロ建てで資金調達が可能になった。結果、アイルランドの銀行は独仏などの銀行から短期で 融資を受け、不動産セクターに長期で投資するというモデルで成長していったのである。
 すなわち、不動産バブルを中心とした成長モデルだ。


 アイルランドの不動産バブルは07年に崩壊したが、「外国の銀行」の資金により拡大したバブルの後始末に、「国民の金」が使われる羽目に陥った。 何しろ、銀行の不良債権の規模が大きすぎ、政府が資金注入しようにも、やはり「外国からお金を借りる」ことなしでは不可能なのである。


 アイルランドの2010年の財政赤字は、対GDP比で32%という途轍もない水準に達すると予想される。そのツケを「外国人へ」払わされるのは、 もちろんアイルランド国民だ。アイルランドはユーロという縛りの中、経常収支黒字路線にもなかなか戻れず、国民から「ユーロを搾り取る」形で外国の銀行に 債務を返済していくしかない。すなわち、緊縮財政で、国民からユーロを搾り取るのだ。


 エストニアに話を戻すが、最新の同国の失業率は16.2%である。当たり前の話として、エストニア政府は「ユーロに加盟した、万歳!」などと言っている状況ではない。


 失業率が高く、かつユーロ諸国全体から見ると、経済規模が非常に小さい。独仏などの銀行にとってみれば、これほどお金を投じやすい環境はないよう にも思える。独仏の銀行がユーロ建ての対エストニア融資を(彼らにとってみれば)「少しだけ」実行に移せば、比較的容易に何らかの資産バブルが発生してし まうだろう。高失業率に悩むエストニア政府も、むしろそれを望むように思える。


 エストニアの人口はわずかに134万人であるが、何しろ人口32万人のアイスランドでさえ、海外マネーに依存したバブルが発生した。欧州各国の銀行の当座の「しのぎ」としては、エストニアは充分な規模であろう。


 「なあに。長いこともたせる必要はない。短期的にバブル起こして、当座をしのげればいい」「そうだな。バブルが崩壊したら、エストニア政府に公的資金を注入させ、エストニア国民の負担にしてしまえばいいしな」


 こんな会話が、ユーロ諸国の銀行で交わされていないことを祈らずにいられない。
関連記事

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (175)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

12 | 2011/01 | 02
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

Template by たけやん